【文献】
MATSUI, H., et al.,The influence of pruning and harvest timing on hop aroma, cone appearance, and yield,Food Chem.,2016年,vol.202,p.15-22,Supplementary data
【文献】
乾隆子,成分プロファイリングによるホップの香気特性と健康機能に関する研究,2016年 7月,URL,https://u-shizuoka-ken.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=4492&item_no=1&attribute_id=20&file_no=1&page_id=13&block_id=21
【文献】
INUI, T., et al.,Effect of Harvest Time and Pruning Date on Aroma Characteristics of Hop Teas and Related Compounds o,J. Am. Soc. Brew. Chem.,2016年,vol.74, no.4,p.231-241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0015】
本実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)の一側面は、開花から51日以上経過した日に収穫されたホップを含む原料を使用することを含む、飲料の製造方法である。また、本方法の他の側面は、ホップを含む原料を使用する飲料の製造において、当該ホップとして、開花から51日以上経過した日に収穫されたホップを使用することにより、当該飲料の香味を向上させる、方法である。
【0016】
すなわち、本発明の発明者らは、ホップを含む原料を使用して製造される飲料の香味を向上させる技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、意外にも、従来は技術常識とされていた収穫時期よりも遅い時期に収穫されたホップを使用することにより、飲料の香味を効果的に向上させることができることを独自に見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
開花から51日以上経過した日に収穫されたホップは、開花から51日目又はそれより後の日に収穫されたホップである。本方法において使用するホップは、開花から53日以上経過した日に収穫されたホップであってもよいし、開花から55日以上経過した日に収穫されたホップであってもよいし、開花から58日以上経過した日に収穫されたホップであってもよいし、開花から60日以上経過した日に収穫されたホップであってもよいし、開花から63日以上経過した日に収穫されたホップであってもよいし、開花から65日以上経過した日に収穫されたホップであってもよい。
【0018】
また、本方法において使用するホップは、開花から80日以内の日(開花から80日目又はそれより前の日)に収穫されたホップであることが好ましく、開花から75日以内の日に収穫されたホップであることが特に好ましい。本方法において使用されるホップの収穫日は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて規定されてもよい。
【0019】
なお、本発明において、ホップの開花は、栽培されているホップの花芽の総数の50%以上の数の花が咲いた時点である。すなわち、例えば、開花から51日以上経過した日に収穫されたホップは、花芽の総数の50%以上の数の花が咲いた時点から51日以上経過した日に収穫されたホップである。
【0020】
ホップの形態は、特に限られず、例えば、ホップパウダー、ホップペレット、プレスホップ、生ホップ、ホップエキス、イソ化ホップ、ローホップ、テトラホップ及びヘキサホップからなる群より選択される1以上であることとしてもよい。
【0021】
ホップパウダーは、乾燥させたホップの球果を粉砕して得られる。ホップペレットは、ホップパウダーをペレット状に圧縮成形して得られる。プレスホップは、乾燥させたホップの球果を圧縮して得られる。生ホップは、収穫後に乾燥させることなく使用されるホップである。ホップエキスは、ホップの毬花に含まれる成分(例えば、α酸、及び/又は後述するチオール成分)を溶媒抽出することによって得られる。イソ化ホップは、ホップにアルカリ処理や加熱処理等のイソ化処理を施してα酸をイソ化することで得られる。ローホップ、テトラホップ及びヘキサホップ等の還元イソα酸製品は、イソα酸を化学修飾することによって得られる。
【0022】
ホップとしては、チオール成分を含むホップを使用することが好ましい。チオール成分は、その分子中にチオール基(SH基)を有する有機成分である。チオール成分の分子量は、例えば、100Da以上、150Da以下である。
【0023】
具体的に、ホップとしては、例えば、4−メチル−4−スルファニルペンタン−2−オン(4MSP)(4−メルカプト−4−メチルペンタン−2−オンとも呼ばれる。)、3−スルファニル−4−メチルペンタン−1−オール(3SMP)(3−メルカプト−4−メチルペンタン−1−オールとも呼ばれる。)、3−スルファニル−4−メチルペンチルアセテート(3SMPA)(3−メルカプト−4−メチルペンチルアセテートとも呼ばれる。)、3−スルファニル−1−ヘキサノール(3SH)(3−メルカプト−1−ヘキサノールとも呼ばれる。)及び3−スルファニルヘキシルアセテート(3SHA)(3−メルカプトヘキシルアセテートとも呼ばれる。)からなる群より選択される1以上のチオール成分を含むホップを使用することとしてもよく、4MSP、3SMP、3SMPA及び3SHからなる群より選択される1以上のチオール成分を含むホップを使用することが好ましく、3SMP、3SMPA及び3SHからなる群より選択される1以上のチオール成分を含むホップを使用することが特に好ましい。
【0024】
なお、4MSPは、グリーン様の香りに寄与する。3SMPは、柑橘様の香りに寄与する。3SMPAは、ルバーブ様の香りに寄与する。3SHは、パッションフルーツ様の香りに寄与する。3SHAは、グレープフルーツ様の香りに寄与する。
【0025】
本方法において使用するホップは、開花から45日目に収穫された場合に比べて、その3SMP、3SMPA及び3SHからなる群より選択される1以上のチオール成分の含有量(ホップ単位乾燥重量当たりの含有量(例えば、μg/kg))が増加したホップであることとしてもよい。
【0026】
この場合、本方法において使用するホップは、開花から45日目に収穫された場合に比べて、その3SMP、3SMPA及び3SHからなる群より選択される1以上のチオール成分の含有量が、5%以上、好ましくは10%以上、増加したホップであることとしてもよい。
【0027】
さらに、本方法において使用するホップは、開花から45日目に収穫された場合に比べて、その3SMPの含有量が、15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、特に好ましくは30%以上、増加したホップであることとしてもよい。
【0028】
そして、本方法においては、上述のとおり、従来よりも遅い時期に収穫されたホップを使用することにより、香味が効果的に向上した飲料を製造する。本方法において製造される飲料が有する向上した香味は、例えば、後述の実施例で確認されているとおり、柑橘様の香り、フレッシュさ及び軽快さからなる群より選択される1以上の香味である。また、本方法による飲料の香味の向上には、後述の実施例で示されているとおり、ホップに由来する特定のチオール成分の含有量の変化が寄与していると考えられる。
【0029】
すなわち、本方法は、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、3SMP、3SMPA及び3SHからなる群より選択される1以上のチオール成分の含有量(飲料単位体積当たりの含有量(例えば、ng/L))が増加した飲料を製造することを含むこととしてもよい。
【0030】
この場合、本方法においては、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、3SMP、3SMPA及び3SHからなる群より選択される1以上のチオール成分の含有量が、5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上、増加した飲料を製造することとしてもよい。
【0031】
さらに、本方法においては、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、3SMPの含有量が、50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上、特に好ましくは200%以上、増加した飲料を製造することとしてもよい。
【0032】
また、本方法においては、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、3SMPAの含有量が、50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上、特に好ましくは200%以上、増加した飲料を製造することとしてもよい。
【0033】
また、本方法においては、飲料の苦味価(BU:Bitter Unit)を大きく増加させることなく、当該飲料の香味を向上させることとしてもよい。なお、苦味価は、ビールの苦味の程度を示す指標として用いられる。苦味価は、文献(「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂、ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編、公益財団法人日本醸造協会発行」の「7.12 苦味価」又は「8.15 苦味価(IM)」)に記載の方法に従い測定される。
【0034】
すなわち、本方法は、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、苦味価に対する、4MSP、3SMP、3SMPA及び3SHからなる群より選択される1以上のチオール成分の含有量の比(4MSP/BU比、3SMP/BU比、3SMPA/BU比、及び3SH/BU比からなる群より選択される1以上の比)が増加した飲料を製造することを含むこととしてもよい。
【0035】
この場合、本方法においては、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、3SMP/BU比、3SMPA/BU比、及び3SH/BU比からなる群より選択される1以上の比が増加した飲料を製造することが好ましい。
【0036】
さらに、この場合、本方法においては、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、3SMP/BU比、3SMPA/BU比、及び3SH/BU比からなる群より選択される1以上の比が、5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上、増加した飲料を製造することが好ましい。
【0037】
さらに、本方法においては、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、3SMP/BU比が、50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上、特に好ましくは200%以上、増加した飲料を製造することとしてもよい。
【0038】
また、本方法においては、開花から45日目に収穫されたホップを使用したこと以外は同一の方法で製造された飲料に比べて、3SMPA/BU比が、50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは150%以上、特に好ましくは200%以上、増加した飲料を製造することとしてもよい。
【0039】
本方法においては、ホップを含む原料を使用して調製された原料液を使用して飲料を製造する。原料液の調製は、少なくともホップと水とを混合することを含む。具体的に、例えば、ホップを含む原料を使用し、当該ホップと水とを含む混合液を煮沸して調製された原料液を使用する。
【0040】
なお、ホップと水とを含む混合液を煮沸することにより、当該ホップに含まれるα酸の異性化によりイソα酸が生成され、苦味が付与されるが、当該ホップに含まれるチオール成分(例えば、4MSP、3SMP、3SMPA及び3SHからなる群より選択される1以上)の抽出には、当該煮沸は必要ない(すなわち、ホップに含まれるチオール成分は、当該ホップと水とを混合することにより、煮沸を行わなくても、抽出される。)。したがって、原料液の調製は、ホップと水とを含む混合液を煮沸することを含んでもよいが、含む必要はない。
【0041】
このため、本方法において、ホップを添加するタイミングは特に限られない。すなわち、例えば、原料液の調製中に煮沸を行う場合であっても、当該煮沸中に限られず、当該煮沸後にホップを添加することとしてもよい。したがって、いわゆるレイトホッピング、及び/又はドライホッピングを行うこととしてもよい。
【0042】
本方法においては、上記従来よりも遅い時期に収穫されたホップに加えて、従来と同様の時期に収穫されたホップをさらに使用することとしてもよい。この場合、本方法において使用されるホップの総量(上記従来よりも遅い時期に収穫されたホップの使用量と、従来と同様の時期に収穫されたホップの使用量との合計)に対する、当該従来よりも遅い時期に収穫されたホップの使用量の割合は、乾燥重量基準で、20重量%以上(20重量%以上、100重量%以下)であることとしてもよく、30重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることが特に好ましい。
【0043】
本方法においては、ホップと植物原料とを含む原料を使用することとしてもよい。植物原料は、飲料の製造に使用される、植物由来の原料であれば特に限られないが、例えば、次の(i)、(ii)及び(iii)からなる群より選択される1以上を含むことが好ましい:(i)穀類(例えば、麦類、米類及びトウモロコシからなる群より選択される1以上)、豆類及びイモ類からなる群より選択される1以上;、(ii)当該群より選択される1以上を発芽させたもの;、及び(iii)当該(i)及び/又は当該(ii)に由来する成分。
【0044】
具体的に、例えば、本方法においては、ホップと、麦類及び/又は当該麦類を発芽させたもの(麦芽)と、を含む原料を使用して調製された原料液を使用することとしてもよい。麦類は、大麦、小麦、燕麦及びライ麦からなる群より選択される1以上であることが好ましい。麦芽は、大麦、小麦、燕麦及びライ麦からなる群より選択される1以上の麦芽であることが好ましい。
【0045】
上記(iii)の成分は、上記(i)及び/又は(ii)の植物原料に由来する成分であれば特に限られないが、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖類、脂質、ビタミン及びミネラルからなる群より選択される1以上である。
【0046】
本方法においては、ホップと植物原料とを含む原料を使用し、糖化を行って調製された原料液を使用することとしてもよい。糖化は、植物原料と水とを含む混合液を、多糖類分解酵素及び/又はタンパク質分解酵素で処理することにより行う。多糖類分解酵素及び/又はタンパク質分解酵素は、植物原料(例えば、麦芽)に含まれる酵素であってもよいし、及び/又は、植物原料とは別に外的に添加される酵素であってもよい。糖化は、多糖類分解酵素及び/又はタンパク質分解酵素が働く温度(例えば、30℃以上、80℃以下)で行う。また、本方法においては、ホップと植物原料とを含む原料を使用し、糖化を行い、さらに煮沸を行って調製された原料液を使用することとしてもよい。
【0047】
本方法は、原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことを含むこととしてもよい。この場合、アルコール発酵後の発酵液に所定の処理(例えば、ろ過処理及び/又は加熱処理)を施して、最終的に飲料を得る。
【0048】
アルコール発酵を行う場合、原料液は、上記植物原料の使用の有無にかかわらず、酵母が資化できる炭素源及び窒素源を含む。炭素源は、炭素原子を含む化合物であって酵母が資化できるものであれば特に限られないが、例えば、酵母が資化できる糖類である。糖類は、例えば、グルコース、フルクトース、シュクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)及びマルトトリオースからなる群より選択される1種以上を含む。
【0049】
窒素源は、窒素原子を含む化合物であって酵母が資化できるものであれば特に限られないが、例えば、アミノ酸及び/又はペプチドである。この場合、原料液は、アミノ酸及び/又はペプチドとして、タンパク質酵素分解物を含むこととしてもよい。タンパク質酵素分解物は、タンパク質をタンパク質分解酵素により分解することにより得られ、アミノ酸及び/又はペプチドを含む。
【0050】
アルコール発酵開始時の発酵液における酵母の密度は特に限られないが、例えば、1×10
6個/mL〜3×10
9個/mLであることが好ましい。酵母は、アルコール発酵を行う酵母であれば特に限られず、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、焼酎酵母及び清酒酵母からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0051】
アルコール発酵の条件は、発酵液中において酵母によるアルコール発酵が行われる条件であれば特に限られないが、例えば、当該発酵液を0℃以上、40℃以下の範囲内の温度で、1日以上、14日以下の時間維持することにより行う。
【0052】
本方法においては、アルコール発酵を行うことなく飲料を製造する(すなわち、本方法は、アルコール発酵を行うことを含まない)こととしてもよい。この場合、アルコール発酵を行うことなく、原料液を使用して飲料を得る。具体的に、例えば、原料液に、他の成分の添加、ろ過処理及び加熱処理からなる群より選択される1以上を施して、飲料を得る。原料液に添加される他の成分は、例えば、糖類、食物繊維、酸味料、色素、香料、甘味料及び苦味料からなる群より選択される1以上である。
【0053】
本方法において製造する飲料は、特に限られないが、例えば、発泡性飲料を製造することとしてもよい。発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料であることが好ましい。
【0054】
発泡性飲料の炭酸ガス圧は、1.0kg/cm
2以上であることとしてもよく、2.0kg/cm
2以上であることとしてもよい。発泡性飲料の炭酸ガス圧の上限値は、特に限られないが、当該炭酸ガス圧は、3.0kg/cm
2以下であることとしてもよい。
【0055】
また、発泡性飲料のNIBEM値は、50秒以上であることとしてもよい。NIBEM値は、発泡性飲料を所定の容器に注いだ際に形成された泡の高さが所定量減少するまでの時間(秒)として評価される。具体的に、発泡性飲料のNIBEM値は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.29 泡−NIBEM−Tを用いた泡持ち測定法−」に記載の方法により測定される。
【0056】
本方法においては、アルコール発酵を行って発泡性飲料を製造することとしてもよい。アルコール発酵を行うことなく発泡性飲料を製造する場合、例えば、炭酸水の使用、及び/又は炭酸ガスの使用により発泡性を付与して、当該発泡性飲料を得る。
【0057】
本方法においては、アルコール飲料を製造することとしてもよい。アルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1体積%以上、20体積%以下であってもよい。
【0058】
本方法においては、アルコール発酵を行ってアルコール飲料を製造することとしてもよい。アルコール発酵を行うことなくアルコール飲料を製造する場合、例えば、原料液に、アルコール(例えば、エタノール)を添加する。アルコール飲料は、発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。
【0059】
本方法においては、ノンアルコール飲料を製造することとしてもよい。ノンアルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。
【0060】
本方法においては、アルコール発酵を行うことなくノンアルコール飲料を製造することとしてもよい。アルコール発酵を行ってノンアルコール飲料を製造する場合、例えば、当該アルコール発酵後の発酵液に、アルコール含有量を低減する処理を施して、当該ノンアルコール飲料を得る。ノンアルコール飲料は、発泡性ノンアルコール飲料であることとしてもよい。
【0061】
本方法においては、ビールテイスト飲料を製造することとしてもよい。本実施形態において、ビールテイスト飲料は、ビール様の香味を有する発泡性飲料である。
【0062】
ビールテイスト飲料は、発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。具体的に、ビールテイスト飲料は、例えば、ビール、発泡酒、又は、発泡酒とアルコール成分(例えば、スピリッツ)とを含有する発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。また、ビールテイスト飲料は、発泡性ノンアルコール飲料であることとしてもよい。すなわち、ビールテイスト飲料は、アルコール含有量、麦芽の使用の有無、及びその製造時のアルコール発酵の有無に関わらず、ビール様の香味を有する発泡性飲料であれば特に限られない。
【0063】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0064】
飲料として、ビールを製造した。ホップとしては、開花後45日又は65日で収穫されたフラノビューティ−品種のホップ、及び開花後45日又は65日で収穫されたフラノマジカル品種のホップの合計4種類を使用した。
【0065】
まず大麦麦芽を水と混合して得られた混合液の糖化を行った。次いで、糖化後の混合液に、上記4種類のうち1種のホップ(具体的には、ホップパウダー)0.8kg/kLを添加して煮沸を行った。さらに、煮沸後の混合液を冷却して、原料液を得た。その後、原料液にビール酵母を添加してアルコール発酵を行い、さらに、熟成を行った。熟成後の発酵液にろ過等の処理を施して、アルコール含有量が約5体積%のビールを得た。
【0066】
そして、上述のようにして得られた4種類の飲料の各々について、熟練した5人のパネラーによる官能検査を行った。官能検査においては、「柑橘様の香り」、「フレッシュさ(新鮮さ)」及び「軽快さ」という3つの項目を評価した。具体的に、各パネラーは、開花後45日で収穫されたフラノビューティ−品種のホップを使用して製造された飲料の各項目を「3点」と評価する場合における、相対的な点数として、他の飲料の各項目について、1点、2点、3点、4点又は5点の点数を付与した。各項目の香味が強いほど大きな点数が付与された。
【0067】
また、各飲料について、苦味価(BU:Bitter Unit)と、4種類のチオール成分(4MSP、3S4MP、3S4MPA及び3SH)の含有量とを測定した。飲料におけるチオール成分(4MSP、3S4MP、3S4MPA及び3SH)の含有量は、次のようにして定量した。
【0068】
すなわち、まず飲料に含有されるチオール成分は、ジクロロメタンで抽出後、市販の前処理用カートリッジ(MetaSep IC−Ag、ジーエルサイエンス社製)を使用して、チオールを特異的に精製し、GC/MS/MSで測定した。
【0069】
また、チオール成分は、例えば、特開2014−211433号公報の実施例1で使用された、2次元−GC−MSによるチオール化合物の定量法において、その測定条件を4MSP、3S4MP、3S4MPA、3SHに適した条件に適宜変更した方法によって測定することしてもよい。この場合、CV15%未満の併行精度、及び/又は定量値の半分未満の検出限界を有するように調整するように、例えば、サンプルの調製における溶媒抽出の条件、固相の種類(例えば、銀を固定した固相)、固相の洗浄条件、溶出液の種類を含む溶出条件、溶出試薬を除去するための洗浄方法、GCのカラム、オーブンの温度条件、注入に関する各種条件、GCの流用、及びMS検出器の条件からなる群より選択される1以上を変更することとしてもよい。また2次元-GC−MSに代えて、GC/MS/MSを用いることとしてもよい。
【0070】
図1には、4種類の飲料(例1−1〜例1−4)の各々について、その製造に使用したホップの品種及び収穫時期と、成分分析及び官能検査の結果とを示す。なお、
図1において、チオール成分(4MSP、3SMP、3SMPA及び3SH)の「対45日比」は、開花から45日で収穫されたホップ(「開花後45日」)を使用して得られた飲料の当該チオール成分の含有量に対する、開花から65日で収穫されたホップ(「開花後65日」)を使用して得られた飲料の当該チオール成分の含有量の比を示す。また、BUに対するチオール成分含有量の比(4MSP/BU比、3SMP/BU比、3SMPA/BU比、及び3SH/BU比)の「対45日比」は、開花から45日で収穫されたホップ(「開花後45日」)を使用して得られた飲料の当該比に対する、開花から65日で収穫されたホップ(「開花後65日」)を使用して得られた飲料の当該比を示す。
【0071】
図1に示すように、官能検査においては、フラノビューティ−品種及びフラノマジカル品種のいずれのホップを使用した場合も、開花後65日で収穫されたホップを使用して得られた飲料(例1−2、例1−4)は、開花後45日で収穫されたホップを使用して得られた飲料(例1−1、例1−3)に比べて、「柑橘様の香り」、「フレッシュさ」及び「軽快さ」の全ての点数が顕著に高かった。すなわち、開花後65日で収穫されたホップを使用することにより、開花後45日で収穫されたホップを使用する場合に比べて、飲料の香味が顕著に向上することが確認された。
【0072】
また、
図1に示すように、飲料のBUは、フラノビューティ−品種及びフラノマジカル品種のいずれのホップを使用した場合も、開花後65日で収穫されたホップを使用することによって、開花後45日で収穫されたホップを使用した場合に比べて、顕著に増加することはなかった。すなわち、開花後65日で収穫されたホップを使用することによって、開花後45日で収穫されたホップを使用した場合に比べて、飲料の苦味が大きく増強されることはなかった。
【0073】
一方、飲料のチオール成分の含有量については、開花後65日で収穫されたホップを使用して得られた飲料(例1−2、例1−4)の3SMP、3SMPA及び3SHの含有量は、開花後45日で収穫されたホップを使用して得られた飲料(例1−1、例1−3)の1.26倍以上に増加した(26%以上の増加)。
【0074】
特に、開花後65日で収穫されたホップを使用して得られた飲料(例1−2、例1−4)の3SMP及び3SMPAの含有量は、開花後45日で収穫されたホップを使用して得られた飲料(例1−1、例1−3)の4.70倍〜8.71倍と、顕著に増加した。
【0075】
また、飲料のBUに対するチオール成分含有量の比(チオール成分含有量をBUで除して得られる、4MSP/BU比、3SMP/BU比、3SMPA/BU比、及び3SH/BU比)は、フラノビューティ−品種及びフラノマジカル品種のいずれのホップを使用した場合も、開花後65日で収穫されたホップを使用することによって、開花後45日で収穫されたホップを使用した場合に比べて増加した。
【0076】
特に、開花後65日で収穫されたホップを使用して得られた飲料(例1−2、例1−4)の3SMP/BU比及び3SMPA/BU比は、開花後45日で収穫されたホップを使用して得られた飲料(例1−1、例1−3)の4.90倍〜8.39倍と、顕著に増加した。
【実施例2】
【0077】
上述の実施例1で使用された4種類のホップと、開花後55日で収穫されたフラノビューティ−品種のホップと、開花後55日で収穫されたフラノマジカル品種のホップと、開花後45日、65日又は75日で収穫されたカスケード品種のホップと、の合計9種類のホップについて、α酸及びチオール成分(4MSP、3S4MP、3S4MPA及び3SH)の含有量を測定した。
【0078】
ホップのα酸含有量は、文献(Analytica-EBC, 7.7 α- and β-Acids in Hops and Hop Products by HPLC (1997))に記載の方法に従い、HPLCを使用して、α酸の総含有量(コフムロンの含有量と、フムロンの含有量と、アドフムロンの含有量との合計)を測定することにより得た。
【0079】
ホップのチオール成分(4MSP、3S4MP、3S4MPA及び3SH)の含有量は、次のようにして定量した。すなわち、ホップのチオール成分は、ホップの粉末2gを、ジクロロメタンで抽出後、市販の前処理用カートリッジ(MetaSep IC−Ag、ジーエルサイエンス社製)を使用して、チオールを特異的に精製し、GC/MS/MSで測定した。また、チオール成分は、例えば、特開2014−211433号公報の実施例1で使用された、2次元−GC−MSによるチオール化合物の定量法において、その測定条件を4MSP、3S4MP、3S4MPA、3SHに適した条件に適宜変更した方法によって測定することしてもよい。この場合、CV15%未満の併行精度、及び/又は定量値の半分未満の検出限界を有するように調整するように、例えば、サンプルの調製における溶媒抽出の条件、固相の種類(例えば、銀を固定した固相)、固相の洗浄条件、溶出液の種類を含む溶出条件、溶出試薬を除去するための洗浄方法、GCのカラム、オーブンの温度条件、注入に関する各種条件、GCの流用、及びMS検出器の条件からなる群より選択される1以上を変更することとしてもよい。また2次元-GC−MSに代えて、GC/MS/MSを用いることとしてもよい。
【0080】
図2には、9種類のホップの各々について、α酸の含有量(ppm)、及びチオール成分(4MSP、3S4MP、3S4MPA及び3SH)の含有量(μg/kg)を測定した結果を示す。なお、
図2において、「対45日比」は、開花から45日で収穫されたホップ(「開花後45日」)を使用して得られた飲料のα酸又はチオール成分の含有量に対する、開花から55日、65日又は75日で収穫されたホップ(「開花後55日」、「開花後65日」又は「開花後75日」)を使用して得られた飲料の当該α酸又はチオール成分の含有量の比を示す。
【0081】
図2に示すように、ホップのα酸含有量は、フラノビューティ−品種及びフラノマジカル品種のホップにおいては、開花後45日から65日までの収穫時期によってほとんど変化せず、カスケード品種のホップにおいては、収穫時期が遅れることによって減少する傾向が確認された。
【0082】
一方、ホップのチオール成分含有量は、フラノビューティ−品種、フラノマジカル品種及びカスケード品種のいずれのホップにおいても、4MSPを除き、収穫時期が開花後45日から、開花後55日、開花後65日及び開花後75日と遅れるにつれて、増加した。
【0083】
すなわち、開花後55日、65日又は75日で収穫されたホップの3SMP、3SMPA及び3SHの含有量は、開花後45日で収穫されたホップの1.13倍以上に増加した(13%以上の増加)(「対45日比」)。
【0084】
特に、開花後55日、65日又は75日で収穫されたホップの3SMP及び3SMPAの含有量は、開花後45日で収穫されたホップの1.56倍〜4.58倍と、顕著に増加した。