(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より詳細な診断をするためには、診断に用いるセンサデータのデータ量(センサ数、データサンプリングレートの高速化、振動・画像・音声などの大容量のデータ等)を増やす必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、全てのデータをデータセンタに転送しており、データ量を増やすと、データの転送に時間がかかるとともに、通信コストがかかるという問題がある。さらに、大量のデータを転送するとネットワーク帯域を圧迫する。
【0005】
本発明は、送信するデータ量を低減しつつ、より詳細に監視対象設備を監視することができる監視システム、処理装置、監視装置、監視方法およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、監視対象設備と通信でインターネットに接続された監視装置によって監視を行う監視システムであって、前記監視対象設備は、設備本体と、前記設備本体から取得された取得データを処理するデータ処理部とを備え、前記データ処理部は、前記取得データのうち、低密度データを取得する低密度データ取得部と、前記取得データのうち、前記低密度データよりも時間当たりのデータ量が大きい高密度データを取得する高密度データ取得部と、前記高密度データの密度を低密度化した特徴量データに変換するデータ変換部と、前記低密度データ及び前記特徴量データを含む監視データを送信する送信部とを備え、前記監視装置は、前記監視対象設備の前記データ処理部における前記送信部から送信された前記監視データに基づいて監視を行う監視システムである。
【0007】
前記監視装置は、前記監視データに基づいて詳細データを前記監視対象設備に要求し、前記送信部は、前記監視装置から要求があった場合には、前記高密度データ、前記低密度データまたは前記特徴量データのうち少なくとも1つを含む詳細データを送信するようにしてもよい。
【0008】
前記監視装置は、前記低密度データまたは前記特徴量データに基づく前記設備本体の異常度が所定の閾値以上である場合に、前記詳細データを前記監視対象設備に要求するようにしてもよい。
【0009】
前記高密度データは、例えば、サンプリング周期が100Hzから1MHzのもの、または100万画素30フレームレート以上の動画像データである。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、監視対象設備と通信でインターネットに接続された監視装置によって監視を行う監視システムにおける前記監視対象設備が備える処理装置であって、設備本体から取得された取得データを処理するデータ処理部を備え、前記データ処理部は、前記取得データのうち、低密度データを取得する低密度データ取得部と、前記取得データのうち、前記低密度データよりも時間当たりのデータ量が大きい高密度データを取得する高密度データ取得部と、前記高密度データの密度を低密度化した特徴量データに変換するデータ変換部と、前記低密度データ及び前記特徴量データを含む監視データを送信する送信部と、を備える処理装置である。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、監視対象設備と通信でインターネットに接続された監視装置によって監視を行う監視システムにおける前記監視装置であって、設備本体から取得された取得データのうち低密度データと、前記取得データのうち前記低密度データよりも時間当たりのデータ量が大きい高密度データの密度を低密度化した特徴量データとを含む監視データを受信し、受信した前記監視データに基づいて監視を行う監視装置である。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、監視対象設備と通信でインターネットに接続された監視装置によって監視を行う監視システムにおける監視方法であって、前記監視対象設備が、設備本体から取得された取得データのうち、低密度データを取得する低密度データ取得ステップと、前記監視対象設備が、前記取得データのうち、前記低密度データよりも時間当たりのデータ量が大きい高密度データを取得する高密度データ取得ステップと、前記監視対象設備が、前記高密度データの密度を低密度化した特徴量データに変換するデータ変換ステップと、前記監視対象設備が、前記低密度データ及び前記特徴量データを含む監視データを送信する送信ステップと、前記監視装置が、前記監視対象設備から送信された前記監視データに基づいて監視を行う監視ステップと、を有する監視方法である。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、監視対象設備と通信でインターネットに接続された監視装置によって監視を行う監視システムにおける前記監視対象設備が備える処理装置のコンピュータに、設備本体から取得された取得データのうち、低密度データを取得する低密度データ取得ステップと、前記取得データのうち、前記低密度データよりも時間当たりのデータ量が大きい高密度データを取得する高密度データ取得ステップと、前記高密度データの密度を低密度化した特徴量データに変換するデータ変換ステップと、前記低密度データ及び前記特徴量データを含む監視データを送信する送信ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0014】
本発明の第6の態様によれば、監視対象設備と通信でインターネットに接続された監視装置によって監視を行う監視システムにおける前記監視装置のコンピュータに、設備本体から取得された取得データのうち低密度データと、前記取得データのうち前記低密度データよりも時間当たりのデータ量が大きい高密度データの密度を低密度化した特徴量データとを含む監視データを受信し、受信した前記監視データに基づいて監視を行う監視ステップを実行させるためのプログラムである。
【0015】
上記した監視システム、処理装置、監視装置、監視方法およびプログラムによれば、送信するデータ量を低減しつつ、より詳細に監視対象設備を監視することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態における監視システムS1の概略図である。監視システムS1は、複数の工場それぞれに設置された監視対象設備である各プラント100の運転中の状態を、工場から遠隔地にある遠隔監視センタに設置された監視装置3で監視するシステムである。プラント100は、設備本体と、設備本体から取得された取得データを処理するエッジデバイス2とを備える。各エッジデバイス2は、インターネット等の公衆通信網で監視装置3と接続される。設備本体としては、例えばプラント100が火力発電プラントであった場合には、ガスタービン、圧縮機、燃料ガス供給設備、排ガス処理設備等、火力発電に係わり当該プラント内に設置される複数の設備類が含まれる。
【0019】
図2は、監視システムS1の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、監視システムS1は、低密度センサ10Aと、低密度センサノード1Aと、高密度センサ10Bと、高密度センサノード1Bと、エッジデバイス2(処理装置)と、監視装置3とを備える。以下、低密度センサ10Aと高密度センサ10Bとを区別しない場合には、センサ10と称する。また、低密度センサノード1Aと高密度センサノード1Bとを区別しない場合には、センサノード1と称する。
【0020】
なお、低密度センサ10Aと低密度センサノード1Aとの組み合わせ、及び、高密度センサ10Bと高密度センサノード1Bとの組み合わせは、各プラント100に複数組あってもよい。
【0021】
センサ10、センサノード1およびエッジデバイス2は、プラント100に設置される。センサ10とセンサノード1とは、I/O(入出力部)により接続する。各センサノード1とエッジデバイス2とは、LAN(Local Area Network)等により通信する。または、各センサーノード1の入力を電気信号としてエッジデバイスのI/O(入出力部)に直接接続して入力してもよい。また、監視装置3とエッジデバイス2とは、インターネット等の公衆通信網を介して通信する。
【0022】
センサ10は、プラント100の状態量を検出して取得し、取得した状態量を示すセンサデータ(取得データ)をセンサノード1に出力する。低密度センサ10Aは、取得データが低密度データになる状態量を取得する。低密度センサ10Aは、例えば、状態量を検出するサンプリング周期が長い(例えば、0.1秒から1秒)ものである。例えば、低密度センサ10Aは、プラント100の圧力、温度、流量、回転数、又は、ガス/油の分析データを検出するセンサである。
【0023】
高密度センサ10Bは、取得データが低密度データよりも時間当たりのデータ量が大きい高密度データになる状態量を取得する。例えば、高密度センサ10Bは、状態量を検出するサンプリング周期が短い(例えば、100Hzから1MHz)、コンプレッサ等の振動やAE(Acoustic Emission)等を検出するセンサである。例えば、振動を検出する振動センサを用いることにより、コンプレッサ等の破損を診断することができる。しかし、そのためには、コンプレッサ等の回転数(例えば、6000RPM(Revolution Per Minute))の約10倍のデータが必要になる。そのため、振動センサのサンプリング周期は10
2〜10
5Hzであり、データサイズは200B(バイト)〜200kBである。また、AEを検出するAEセンサのサンプリング周期は10
3〜10
6Hzであり、データサイズは2kB〜2MBである。或いは、高密度センサ10Bは、1サンプリング当たりのデータ量が大きい画像や音声等を検出するセンサであってもよい。画像を撮像する画像センサが生成する画像データのサイズは、例えば、800×600×24bit=1.4MBである。
【0024】
センサノード1は、センサ10が取得したセンサデータをエッジデバイス2に送信する。センサノード1は、入出力部110と、処理部120と、通信部130とを備える。入出力部110は、センサ10との間でデータを入出力する。処理部120は、センサ10から入出力部110に入力されたセンサデータを通信部130からエッジデバイス2に送信する。通信部130は、エッジデバイス2と通信する。
【0025】
低密度センサノード1Aは、低密度センサ10Aから低密度データを取得し、エッジデバイス2に送信する。高密度センサノード1Bは、高密度センサ10Bから高密度データを取得し、エッジデバイス2に送信する。
【0026】
エッジデバイス2は、プラント100のネットワーク上に置かれた計算機であり、ルータ、あるいはインターネットゲートウェイの機能を持っていてもよい。前記エッジデバイス2は、データ処理部210と、通信部220と、記憶部230とを備える。データ処理部210は、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを組み合わせて構成され、エッジデバイス2を統括して制御する。データ処理部210は、低密度データ取得部211と、高密度データ取得部212と、データ変換部213と、送信部214とを備え、設備本体から取得された取得データを処理する。
【0027】
低密度データ取得部211は、通信部220を介して、低密度センサノード1Aから低密度データを受信して取得し、取得した低密度データをデータ変換部213に出力する。高密度データ取得部212は、通信部220を介して、高密度センサノード1Bから高密度データを受信して取得し、取得した高密度データをデータ変換部213に出力する。
【0028】
データ変換部213は、高密度データ取得部212が取得した高密度データの密度を低密度化した特徴量データに変換する。低密度化とは、時間当たりのデータ量を小さくする処理である。本実施形態では、低密度データと同程度まで低密度化しており、例えば、サンプリング間隔を低密度データに合わせるように処理を行っている。また、データ変換部213は、低密度データ取得部211が取得した低密度データと、変換した特徴量データとに基づいて、プラント100の異常を診断し、診断結果を示す異常診断結果データと、低密度データと、特徴量データとを送信部214に出力する。データ変換部213における処理の詳細は後述する。
【0029】
送信部214は、通信部220を介して、異常診断結果データと低密度データと特徴量データとを含む監視データを監視装置3に送信する。また、送信部214は、監視装置3から要求があった場合には、高密度データ、低密度データ又は特徴量データのうち少なくとも1つを含む詳細データを監視装置3に送信する。
【0030】
通信部220は、センサノード1または監視装置3と通信する。記憶部230は、種々の情報を記憶する。例えば、記憶部230は、低密度データ及び高密度データの生波形データを記憶する時系列・生波形データベースとして機能する。また、記憶部230は、時系列の特徴量データを記憶する時系列・特徴量データベースとして機能する。また、記憶部230は、異常診断結果データを記憶する。記憶部230は、短期間における履歴を記憶する短期履歴データベースとして機能し、短期間(例えば、直近1カ月分)のデータ(低密度データ、高密度データ、特徴量データ、及び異常診断結果データ)を記憶する。また、記憶部230は、異常を診断する際に使用する、各センサ10の正常時のセンサデータ(以下、正常時データとする)を記憶する。
【0031】
監視装置3は、遠隔監視センタに設置されたコンピュータであり、処理部310と、通信部320と、記憶部330と、表示部340と、入力部350とを備える。処理部310は、CPUとメモリとを組み合わせて構成され、監視装置3全体を統括して制御する。例えば、処理部310は、通信部320を介してエッジデバイス2から受信した監視データを表示部340に表示して監視する。また、処理部310は、監視データに基づいて詳細データをエッジデバイス2に要求する。
【0032】
通信部320は、エッジデバイス2と通信する。記憶部330は、種々の情報を記憶する。例えば、記憶部330は、エッジデバイス2から受信した監視データを記憶する。記憶部330は、長期間の履歴を記憶する長期履歴データベースとして機能し、長期間(例えば、直近数年分)の監視データを記憶する。表示部340は、液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等であり、様々な情報を表示する。入力部350は、マウスやキーボードやタッチパネル等であり、入力を受け付ける。
【0033】
次に、本実施形態による監視システムS1における動作を説明する。監視システムS1では、エッジデバイス2がセンサノード1から取得したセンサデータに基づく監視データを監視装置3に送信する。監視装置3は、エッジデバイス2から受信した監視データを表示する等してプラント100を監視する。
【0034】
図3は、エッジデバイス2が実行する処理を説明するための図である。まず、低密度データ取得部211が、通信部220を介して、低密度センサノード1Aから低密度データを取得し、取得した低密度データを記憶部230に書き込んで記憶する。また、高密度データ取得部212が、通信部220を介して、高密度センサノード1Bから高密度データを取得する。
【0035】
続いて、データ変換部213が、高密度データをクレンジングする。具体的には、例えば、データ変換部213は、データが欠落し、”N/A(Not Available)”データになっている部分がある場合には、欠落部分を前後データの平均値にする。また、データ変換部213は、同じ時間にデータが重複して複数入力された場合には、最初のデータを採用する。また、データ変換部213は、センサ10のノイズで異常値(最大値や最小値(0(ゼロ)値))になっている場合には、異常値になっているデータを前後データの平均値にする。そして、データ変換部213は、クレンジング後の高密度データを記憶部230に書き込んで記憶する。なお、データ変換部213は、低密度データに対してもクレンジングする処理を実行してもよい。
【0036】
続いて、データ変換部213は、クレンジング後の高密度データから特徴量を抽出して、高密度データのサンプリング間隔を低密度データのサンプリング間隔に合わせた特徴量データに変換する。高密度データのサンプリング間隔を低密度データのサンプリング間隔に合わせることにより、高密度データと低密度データとの診断頻度を合わせることができる。例えば、データ変換部213は、連続するデータを読み込み、FFT(Fast Fourier Transform)で周波数分析を行い、周波数レンジ毎の振幅を抽出する周波数解析を実行する。また、データ変換部213は、センサデータが回転数である場合には、回転数の1倍、2倍、…、または0.5倍の周波数成分のゲインや位相を抽出する回転数成分解析を実行する。また、データ変換部213は、センサデータが振動である場合には、90度に設置した2台の振動センサの変位の平均値から軸の中心位置を算出する軸芯位置解析を実行する。そして、データ変換部213は、解析結果(周波数解析のデータや、ナイキスト線図や、ボード線図等)から得られるバンド毎のピーク値を特徴量として抽出し、特徴量データとして記憶部230に書き込んで記憶する。
【0037】
続いて、データ変換部213は、低密度データ及び特徴量データに基づいて、異常を診断する。具体的には、まず、データ変換部213は、時系列のデータ分析手法によりデータを分析する。例えば、データ変換部213は、各センサ10に閾値を設定し、閾値を超えたら異常とし、閾値を超えた量に応じて異常度を大きくする閾値管理により異常度を算出する。或いは、データ変換部213は、正常時データに基づいて多次元空間の中に基準となる点の座標を決め、その座標と各データの座標をマハラノビス距離とで算出し、この距離が大きくなるほど異常度が大きいとするMT(マハラノビス・タグチ)法により異常度を算出する。或いは、データ変換部213は、あるデータから別の最も近くにあるデータ(最近傍点)までの距離がある閾値を超えたらその点は異常値であると判定するK近傍法により異常度を算出する。なお、データ変換部213は、分析後のデータを特徴量データとして記憶部230に書き込んで記憶してもよい。
【0038】
そして、データ変換部213は、算出した異常度が予め設定された所定の閾値α以下である場合には、異常が無いと判定する。また、データ変換部213は、異常度が閾値αより大きい場合には、異常が有ると判定し、異常の原因を分析する。例えば、データ変換部213は、エキスパートシステムに代表される、いろいろな経験値を「If Then」の形式で表現し、異常原因を診断するルールベースにより異常の原因を分析する。或いは、データ変換部213は、データを直交表に割り当てて、望大特性のSN比(単位はdB(デシベル))を算出し、SN比が高いものを異常原因に関連する項目として選択するMT法により異常の原因を分析する。或いは、データ変換部213は、故障原因として抽出されたセンサデータを予め対象機械用に作成したFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)の故障モードに照らし合わせて、故障原因を抽出するFMEAにより異常の原因を分析する。
【0039】
そして、データ変換部213は、異常診断結果データを生成する。
図4は、エッジデバイス2が生成する異常診断結果データの一例を示す図である。
図4(A)は、MT法による算出結果であるMD(マハラノビス距離)値を示すグラフである。本図に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸はMD値である。また、
図4(B)は、各要因(異常の原因)の異常度スコア及び異常要因ランキングを示す。異常要因ランキングは、異常度スコアの高い要因のランキングである。図示する例では、要因A、要因B、要因C、要因D、要因Eの順に異常度スコアが高く、異常要因ランキングはその順である。
【0040】
その後、送信部214が、通信部220を介して、異常診断結果データと低密度データと特徴量データとを含む監視データを監視装置3に送信する。監視装置3は、受信した監視データ(例えば、MD値を示すグラフや、異常度スコアや、異常要因ランキング等)を表示する等して、プラント100を監視する。
【0041】
また、監視装置3は、異常度スコアが高い(予め設定された所定の閾値βより大きい)場合には、警報(アラーム)を出力し、より詳細なデータをエッジデバイス2に要求する。ここで、監視装置3が異常度スコアと比較する閾値βは、エッジデバイス2で比較する閾値αと異なる値であってもよい。具体的には、処理部310は、通信部320を介して、詳細データを要求する詳細データ要求をエッジデバイス2に送信する。詳細データは、低密度データ、高密度データ、特徴量データのうち少なくとも1つを含む。詳細データ要求には、データの種類(センサ10が検出する状態量の種類)と、取得する期間と、データの形式(生波形データ(低密度データ又は高密度データ)や特徴量データ等)とが含まれる。
【0042】
エッジデバイス2は、監視装置3から詳細データ要求を受信すると、受信した詳細データ要求に合致する詳細データを監視装置3に返信する。具体的には、送信部214は、通信部220を介して、詳細データ要求を監視装置3から受信すると、受信した詳細データに含まれるデータの種類と、期間と、データの形式とに合致するデータを記憶部230から検索する。そして、送信部214は、通信部220を介して、検索した結果である詳細データを監視装置3に送信する。
【0043】
監視装置3の処理部310は、エッジデバイス2から詳細データを受信すると、受信した詳細データを表示部340に表示する。これにより、異常度の高いプラント100の詳細な運転状況を監視装置3において確認することができる。また、処理部310は、受信した詳細データに基づいて、異常を診断してもよい。なお、処理部310における異常を診断する方法は、エッジデバイス2における異常を診断する方法と異なるものであってもよい。
【0044】
図5は、センサノード1がセンサデータを取得する処理手順の例を示すフローチャートである。
まず、処理部120は、センサ10からセンサデータを読み込む(ステップS101)。その後、処理部120は、読み込んだセンサデータを通信部130からエッジデバイス2に送信する(ステップS102)。その後、処理部120は、センサデータを読み込むサンプリング周期のタイマの時間待機(ステップS103)した後、S101の処理に戻る。
【0045】
図6は、エッジデバイス2が監視データを送信する処理手順の例を示すフローチャートである。
まず、高密度データ取得部212が、通信部220を介して、高密度センサノード1Bから高密度データを受信する(ステップS201)。また、低密度データ取得部211が、通信部220を介して、低密度センサノード1Aから低密度データを受信する(ステップS202)。
【0046】
続いて、データ変換部213が、高密度データをクレンジングする(ステップS203)。その後、データ変換部213は、クレンジングした高密度データの特徴量を抽出して特徴量データを生成する(ステップS204)。
【0047】
続いて、データ変換部213が、特徴量データ及び低密度データを分析する(ステップS205)。続いて、データ変換部213は、異常度を算出する(ステップS206)。そして、データ変換部213は、算出した異常度が閾値αより大きいか否かを判定する(ステップS207)。
【0048】
データ変換部213は、異常度が閾値αより大きいと判定した場合(ステップS207:Yes)には、異常の原因を分析する(ステップS208)。
【0049】
一方、異常度が閾値α以下であると判定した場合(ステップS207:No)、或いは、ステップS208に続いて、送信部214は、通信部220を介して、データ変換部213による異常診断結果データを含む監視データを監視装置3に送信し(ステップS209)、ステップS201の処理に戻る。
【0050】
図7は、監視装置3が監視する処理手順の例を示すフローチャートである。
まず、処理部310は、通信部320を介して、エッジデバイス2から異常診断結果データを含む監視データを受信する(ステップS301)。続いて、処理部310は、受信した異常診断結果データを表示部340に表示する(ステップS302)。
【0051】
続いて、処理部310は、受信した異常診断結果データに含まれる異常度が閾値βより大きいか否かを判定する(ステップS303)。処理部310は、異常度が閾値β以下であると判定した場合(ステップS303:No)には、ステップS301の処理に戻る。
【0052】
一方、処理部310は、異常度が閾値βより大きいと判定した場合(ステップS303:Yes)には、通信部320を介して、詳細データ要求をエッジデバイス2に送信する(ステップS304)。その後、処理部310は、通信部320を介して、詳細データを受信する(ステップS305)。その後、処理部310は、受信した詳細データを表示部340に表示し(ステップS306)、ステップS301の処理に戻る。
【0053】
図8は、エッジデバイス2が詳細データを送信する処理手順の例を示すフローチャートである。
まず、送信部214は、通信部220を介して、詳細データ要求を監視装置3から受信する(ステップS401)。続いて、送信部214は、詳細データ要求に合致するデータを記憶部230から検索する(ステップS402)。続いて、送信部214は、通信部220を介して、検索した詳細データを監視装置3に送信し(ステップS403)、ステップS401の処理に戻る。
【0054】
以上のように、監視システムS1は、プラント100とインターネットで接続された監視装置3によってプラント100の監視を行う。プラント100は、設備本体と、設備本体から取得された取得データを処理するデータ処理部210とを備える。データ処理部210は、取得データのうち、低密度データを取得する低密度データ取得部211と、取得データのうち、低密度データよりも時間当たりのデータ量が大きい高密度データを取得する高密度データ取得部212と、高密度データの密度を低密度化した特徴量データに変換するデータ変換部213と、低密度データ及び特徴量データを含む監視データを送信する送信部214とを備える。監視装置3は、データ処理部210における送信部214から送信された監視データに基づいて監視を行う。
【0055】
このように、高密度データを低密度化した特徴量データを監視装置3に送信しているため、監視装置3に送信するデータ量を削減することができる。よって、データの転送時間を短縮し、通信コストを低減することができ、ネットワーク帯域の圧迫を低減することができる。また、データの転送量に伴い、データが盗まれるセキュリティの脅威が大きくなるが、データ量を削減することによりデータの秘匿性が高まり、盗難リスクを低減することができる。また、データ転送に伴いデータの破損や遅延が起きた場合にはデータ修正や復旧をしなければならないが、データ量を削減することによりデータの破損や遅延を低減することができる。また、プラント100と監視装置3とが別の国にあり、国境をまたぐ長距離のデータ転送をする場合には、輸出入規制などのコンプライアンスリスクを伴うが、データ量を削減し、また、異なる状態量に変換することにより、そのリスクを低減することができる。
【0056】
また、高密度データを低密度化した特徴量データを用いてプラント100の異常を診断することができるため、詳細な診断をすることが可能となる。よって、監視装置3に送信するデータ量を低減しつつ、より詳細にプラントを監視することができる。
【0057】
また、監視装置3は、低密度データまたは特徴量データに基づくプラント100の異常度が所定の閾値以上である場合に、詳細データを要求し、送信部214は、監視装置3から要求があった場合には、高密度データ、低密度データまたは特徴量データのうち少なくとも1つを含む詳細データを送信する。これにより、異常度が高い場合にはより詳細な情報を取得することができるため、異常が発生した際のプラント100のより詳細な運転状況を監視装置3で確認することができる。
【0058】
また、高密度データは、例えば、サンプリング周期が100Hzから1MHzのものである。よって、サンプリング周期が短く、時間当たりのデータ量が大きいデータを用いて診断することができるため、より詳細な診断をすることができる。
【0059】
なお、上述した実施形態におけるエッジデバイス2のデータ処理部210または監視装置3の処理部310の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0060】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0062】
例えば、上述した実施形態では、エッジデバイス2がプラント100の異常を診断しているが、これに限らず、エッジデバイス2は低密度データ及び特徴量データのみを送信し、監視装置3が低密度データ及び特徴量データに基づいてプラント100の異常を診断してもよい。このときエッジデバイス2が送信する特徴量データは、上述したステップS205におけるデータ分析後のデータであってもよいし、上述したステップS204における特徴量抽出後のデータであってもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、エッジデバイス2がルータである場合を例に説明したが、これに限らず、エッジデバイス2のデータ処理部210の機能はプラント100のLANに接続された装置が備えていればよく、例えば、プラント100本体にその機能が設置されていてもよいし、工場内にあるコンピュータがその機能を備えていてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、監視装置3は、異常度スコアが高い場合には、自動的に詳細データをエッジデバイス2に要求しているが、これに限らず、警報(アラーム)を出力するのみでもよい。この場合には、監視装置3のユーザが警報に応じて、手動で詳細データを要求する操作を入力部350に入力する。監視装置3の処理部310は、入力部350が詳細データを要求する操作の入力を受け付けた場合に、通信部320を介して、詳細データ要求をエッジデバイス2に送信する。その際、詳細データ要求に含まれるデータの種類、取得する期間、及びデータの形式等をユーザが指定できるようにしてもよい。
【0065】
また、上述した実施形態では、監視装置3が長期履歴データベースを備える場合について説明したが、これに限らず、監視装置3とは別の装置、例えば、データセンタ(クラウド)等にあるデータサーバ等が長期履歴データベースを備えていてもよい。この場合には、データセンタが各プラント100の監視データを各エッジデバイス2から収集し、長期履歴データベースに蓄積する。そして、監視装置3は、データセンサから監視データを取得する。
【0066】
また、上述した実施形態では、エッジデバイス2は、低密度データ及び特徴量データをまとめて監視データとして送信しているが、これに限らず、低密度データと特徴量データとを別々に送信してもよい。例えば、低密度データは順次、高密度データは特徴量データとして生成される毎に、それぞれ監視データを構成する各データとして送信してもよい。
【0067】
また、データをクレンジングする方法や特徴量を抽出する方法は、上述した実施形態のものに限られず、高密度データの密度を低密度化できるものであれば他の方法であってもよい。
【0068】
また、異常を診断する方法は、上述した実施形態のものに限られず、プラント100の異常を診断できるものであれば他の方法であってもよい。さらに、上述した実施形態では、監視対象設備として、複数の機械設備等で構成されるプラント100について説明したがこれに限るものではない。例えば、工場内に設置された機械設備単体や、建物自体など設備全般を監視対象として適用することができる。