特許第6907023号(P6907023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907023
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】レバー式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/629 20060101AFI20210708BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20210708BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01R13/629
   H01R13/42 F
   H01R12/71
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-103960(P2017-103960)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2018-200767(P2018-200767A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 剛通
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−099718(JP,A)
【文献】 特開2013−239414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40−13/72
H01R12/00−12/91
H01R24/00−24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタの凹状に形成された相手側ハウジングに対してレバーの操作で挿抜されるレバー式コネクタであって、
複数の端子収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記端子収容室に収容される複数の端子と、
前記ハウジングの一側部に開口された収容部に収容され、前記端子収容室と交差する方向へ変位することで前記端子を係止するスペーサと、
前記ハウジングに対して回動されることで前記相手側ハウジングに設けられたカムピンを引き込んで前記ハウジングに前記相手側ハウジングを引き寄せるカム溝を有し、前記カム溝に前記カムピンを受け入れ可能な仮係止位置と前記カム溝に前記カムピンを引き込む本係止位置との間で回動可能とされた板状のレバーと、
を備え、
前記スペーサは、前記収容部に収容されることで前記ハウジングにおける前記レバーの装着側に突出するボスを有し、
前記レバーは、前記ハウジングにおける前記収容部への前記スペーサの収容側と反対側で前記ボスに回動可能に支持されて、
前記スペーサは、前記端子を係止しない仮保持位置と、前記端子を係止する本保持位置との間で変位可能とされ、
前記仮保持位置に配置された前記スペーサが、前記レバーの前記本係止位置への回動によって前記本保持位置へ変位される
ことを特徴とするレバー式コネクタ。
【請求項2】
前記ボスは、側方へ向かって互いに反対方向へ突出する一対の係止片を先端に有し、前記レバーは、前記ボスが挿通されて回動可能に支持される回動孔と、前記回動孔の縁部における対向位置に形成されて前記係止片が挿通される挿通口と、前記挿通口の一方側の側部に形成されて前記仮係止位置で前記係止片に対向する仮係止段部と、前記挿通口の他方側の側部に形成されて前記本係止位置で前記係止片を押圧して前記スペーサを前記本保持位置へ変位させる本係止段部と、前記本係止段部における前記挿通口側の縁部に形成され、前記挿通口から離れるにしたがって次第に高くなるように傾斜したテーパ形状のガイド面と、を有することを特徴とする請求項に記載のレバー式コネクタ。
【請求項3】
前記端子は、前記レバーが前記本係止位置へ回動されて前記相手側ハウジングが引き寄せられることで、前記相手側ハウジングに設けられた回路基板の電極に当接して電気的に接続される接点部を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレバー式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
レバーの操作によって相手側コネクタに対して低挿入力で接合させるレバー式のコネクタにおいて、ハウジングに形成された収容部に収容されるスペーサによってハウジング内の複数の端子を係止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このコネクタでは、仮係止位置のスペーサを治具によって押し下げて本係止位置に移動させることで、ハウジング内の複数の端子がスペーサによって一括して係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−28012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のコネクタは、コ字状のレバーを構成する一対のカム板をハウジングの表裏に形成した支軸に回動可能に支持させた構造であるので、全体の大型化が免れなかった。また、ハウジングの表裏の大部分がレバーのカム板によって覆われるため、スペーサを本係止位置に押し込むためのピンを有する別部品の治具が必要となる。このため、部品点数の増大によるコストアップを招いてしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スペーサを備えつつ、コストダウン及び小型化が可能なレバー式コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るレバー式コネクタは、下記(1)〜()を特徴としている。
(1) 相手側コネクタの凹状に形成された相手側ハウジングに対してレバーの操作で挿抜されるレバー式コネクタであって、複数の端子収容室を有するハウジングと、前記ハウジングの前記端子収容室に収容される複数の端子と、前記ハウジングの一側部に開口された収容部に収容され、前記端子収容室と交差する方向へ変位することで前記端子を係止するスペーサと、前記ハウジングに対して回動されることで前記相手側ハウジングに設けられたカムピンを引き込んで前記ハウジングに前記相手側ハウジングを引き寄せるカム溝を有し、前記カム溝に前記カムピンを受け入れ可能な仮係止位置と前記カム溝に前記カムピンを引き込む本係止位置との間で回動可能とされた板状のレバーと、を備え、前記スペーサは、前記収容部に収容されることで前記ハウジングにおける前記レバーの装着側に突出するボスを有し、前記レバーは、前記ハウジングにおける前記収容部への前記スペーサの収容側と反対側で前記ボスに回動可能に支持されて、前記スペーサは、前記端子を係止しない仮保持位置と、前記端子を係止する本保持位置との間で変位可能とされ、前記仮保持位置に配置された前記スペーサが前記レバーの前記本係止位置への回動によって前記本保持位置へ変位されることを特徴とするレバー式コネクタ。
) 前記ボスは、側方へ向かって互いに反対方向へ突出する一対の係止片を先端に有し、前記レバーは、前記ボスが挿通されて回動可能に支持される回動孔と、前記回動孔の縁部における対向位置に形成されて前記係止片が挿通される挿通口と、前記挿通口の一方側の側部に形成されて前記仮係止位置で前記係止片に対向する仮係止段部と、前記挿通口の他方側の側部に形成されて前記本係止位置で前記係止片を押圧して前記スペーサを前記本保持位置へ変位させる本係止段部と、前記本係止段部における前記挿通口側の縁部に形成され、前記挿通口から離れるにしたがって次第に高くなるように傾斜したテーパ形状のガイド面と、を有することを特徴とする上記()に記載のレバー式コネクタ。
) 前記端子は、前記レバーが前記本係止位置へ回動されて前記相手側ハウジングが引き寄せられることで、前記相手側ハウジングに設けられた回路基板の電極に当接して電気的に接続される接点部を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のレバー式コネクタ。
【0008】
上記(1)の構成のレバー式コネクタによれば、相手側ハウジングに対してハウジングを挿抜させるレバーが板状に形成され、しかも、端子を係止するスペーサに形成されたボスにレバーを回転可能に支持させたので、コ字状のレバーの一対のカム板をハウジングの表裏に形成した支軸に回動可能に支持させた構造と比べ、構造の簡略化及び小型化を図ることができる。また、ハウジングにおけるレバーの装着側と反対側からハウジングの収容部にスペーサを押し込むことができるので、ピンを有する別部品からなる治具を用いることなくスペーサを操作でき、部品点数の削減によってコストを抑えることができる。更に、上記()の構成のレバー式コネクタによれば、レバーの本係止位置への回動に連動させて仮保持位置に配置されたスペーサを本保持位置へ変位させ、ハウジングの端子収容室に収容した端子をスペーサで容易に係止させることができる。
上記()の構成のレバー式コネクタによれば、スペーサのボスに形成した係止片と、レバーの回動孔の縁部に形成した仮係止段部及び本係止段部とからなる簡単な構成によって、レバーの本係止位置への回動に連動させて仮保持位置に配置されたスペーサを本保持位置へ容易に変位させることができる。
上記()の構成のレバー式コネクタによれば、レバーを本係止位置へ回動させて相手側ハウジングを引き寄せることで、相手側ハウジングに設けられた回路基板の電極に、スペーサで係止させた端子の接点部を容易に当接させて電気的に接続させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スペーサを備えつつ、コストダウン及び小型化が可能なレバー式コネクタを提供できる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係るレバー式コネクタを示す図であって、図1の(a)はレバーが仮係止位置に配置されたレバー式コネクタの全体斜視図、図1の(b)はレバーが本係止位置に配置されるとともに可動ガイド部材が後方へ変位したレバー式コネクタの全体斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るレバー式コネクタの分解斜視図である。
図3図3は、相手側コネクタに接合された状態のレバー式コネクタの水平方向に沿う断面図である。
図4図4は、相手側コネクタの概略正面図である。
図5図5は、レバーの組付け前のコネクタの全体斜視図である。
図6図6は、レバーの構造を説明する図であって、図6の(a)はレバーの斜視図、図6の(b)は図6の(a)におけるC−C断面図である。
図7図7は、可動ガイド部材の斜視図である。
図8図8は、レバーの組付け時におけるレバー式コネクタの全体斜視図である。
図9図9は、レバー及びスペーサの動きを説明する図であって、図9の(a)〜図9の(c)は、それぞれ鉛直方向の断面図である。
図10図10は、レバーが仮係止位置に配置されたレバー式コネクタの全体斜視図である。
図11図11は、レバーが係止方向へ向かって回動された状態のレバー式コネクタの全体斜視図である。
図12図12は、相手側コネクタに接合された状態のレバー式コネクタの水平方向に沿う断面図である。
図13図13は、図12におけるD部拡大図である。
図14図14は、レバーが本係止位置に配置されたレバー式コネクタの後方からの全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1図3に示すように、本実施形態に係るレバー式コネクタ10(以下、単にコネクタ10とも称す)は、ハウジング20と、端子40と、スペーサ50と、レバー60と、可動ガイド部材としてのフロントホルダ70とを備えている。ハウジング20、スペーサ50、レバー60及びフロントホルダ70は、それぞれ電気絶縁性の樹脂から成形されている。
【0013】
図4に示すように、コネクタ10が接合される相手側コネクタ1の相手側ハウジング2は凹状に形成されており、この相手側ハウジング2にコネクタ10のハウジング20が嵌合されることで、コネクタ10が相手側コネクタ1に接合される。
【0014】
相手側コネクタ1には、その奥側に回路基板3が設けられており、コネクタ10は、相手側コネクタ1に接合されることで、端子40が回路基板3に形成された導体パターンからなる電極4に直接接触されて電気的に接続される(図3参照)。
【0015】
また、コネクタ10は、ハウジング20に装着されたレバー60が仮係止位置(図1の(a)に示す位置)から本係止位置(図1の(b)に示す位置)へ回動されることで、ハウジング20に相手側コネクタ1の相手側ハウジング2に設けられたカムピン5がレバー60によって引き込まれ、相手側ハウジング2が引き寄せられる。これにより、コネクタ10に対して相手側コネクタ1が低挿入力で接合される。また、コネクタ10は、ハウジング20に装着されたレバー60が本係止位置(図1の(b)に示す位置)から仮係止位置(図1の(a)に示す位置)へ回動されることで、カムピン5がレバー60によって押し出され、相手側ハウジング2からハウジング20が抜き出される。これにより、コネクタ10は、レバー60の操作によって、接合された相手側コネクタ1から取り外す際の引き抜き力も小さくされる。
【0016】
このように、本実施形態に係るレバー式コネクタ10は、回路基板3の電極4に直接接触するダイレクトタイプの端子40を有するダイレクト接続型のコネクタであるとともに、レバー60の操作によって相手側コネクタ1に対して低挿入力(Low Insertion Force)で挿抜させるLIFコネクタである。
【0017】
ハウジング20は、前後方向に沿う複数の端子収容室21を有する箱型に形成されている。ハウジング20には、下面側で開口する収容部22を有している。収容部22は、端子収容室21に対して直交する面に沿って形成されている。ハウジング20の上面には、収容部22と連通する孔部23が形成されている。
【0018】
ハウジング20は、その上部がレバー装着部24とされている。レバー装着部24を構成するハウジング20の上部には、その一側にレバー回動規制部25が設けられている。レバー回動規制部25は、前端側が連結されて後端側が後方へ向かって延在する片持ち梁状の回動規制片26を有している。回動規制片26には、その上面に、係止凸部26aが形成されている。また、レバー装着部24を構成するハウジング20の上部には、他側における後端部分に、レバー係止部27が形成されている。レバー係止部27は、ハウジング20の幅方向中央側に切り欠き部28を有している。
さらに、ハウジング20は、その前部に保持凹部29を有しており、この保持凹部29には、フロントホルダ70が保持される。
【0019】
端子40は、その前部に、角筒状に形成された箱部42を有している。箱部42の内部には、弾性変形可能な帯状のバネ片43が設けられている。バネ片43は、後端側へ折り返されることで、U字状に湾曲した接点部44を有しており、この接点部44は、箱部42の先端から前方へ突出されている。
【0020】
端子40は、箱部42の後側に、電線加締部45を有している。端子40は、電線加締部45を端部で導体を露出させた電線41に加締めることにより、電線41の端末に接続されて電線41の導体と導通されている。
【0021】
端子40は、一枚の金属板をプレス成形することにより形成されており、一体構造のものとして製造されている。但し、バネ片43を、箱部42と別体に製造し、箱部42の内部に収容すると共に箱部42に溶接等により固定してもよい。
【0022】
端子40は、電線41の先端に取り付けられた状態でハウジング20の端子収容室21に、その後方側から挿入されて収容される。端子40は、回路基板3上の電極4に箱部42の先端から突出したバネ片43が直接接触して電気的に接続される。
【0023】
スペーサ50は、矩形の枠状に形成されている。このスペーサ50は、ハウジング20の端子収容室21と同数の係止孔52を有している。係止孔52は、端子40の箱部42が挿通可能な大きさに形成されている。スペーサ50には、その上部に、ボス51が突設されている。ボス51には、その先端に、側方へ向かって互いに反対方向へ突出する一対の係止片55が形成されている。
【0024】
図5に示すように、スペーサ50は、ハウジング20の下面で開口する収容部22に挿入されて収容され、これにより、ボス51がハウジング20の上面の孔部23から上方へ突出されてレバー装着部24に配置される。そして、このボス51にレバー60が回動可能に支持される。
【0025】
収容部22に収容されるスペーサ50は、端子収容室21に対して係止孔52が一致した仮保持位置と、端子収容室21に対して係止孔52が上方へずれた本保持位置に変位される。これにより、端子40は、スペーサ50が仮保持位置に配置された状態でハウジング20の端子収容室21に挿入可能とされる。また、端子収容室21に収容された端子40は、スペーサ50が本保持位置に配置されることで、箱部42の後端側がスペーサ50の係止孔52の縁部に係止され、端子収容室21から抜け止めされる。
【0026】
図6の(a)に示すように、レバー60は、板状に形成されており、ハウジング20の上部のレバー装着部24に配置されて回動可能に支持される。レバー60には、回動孔61が形成されており、この回動孔61には、ハウジング20の上面の孔部23から突出されたスペーサ50のボス51が挿通される。これにより、レバー60は、ボス51の軸線を中心として回動可能とされている。
【0027】
レバー60には、カム溝62が形成されている。カム溝62は、ハウジング20の上部のレバー装着部24に配置させたレバー60の上面側に形成されている。カム溝62は、レバー60の周囲の一部で開放されたピン導入部62aを有し、このピン導入部62aから次第に中心に近づくように回動孔61の周囲に沿って一方向に形成されている。そして、ピン導入部62aに相手側コネクタ1の相手側ハウジング2に設けられたカムピン5を挿し込んでレバー60を回動させることで、カムピン5がハウジング20の後方へ引き込まれ、ハウジング20に対して相手側コネクタ1の相手側ハウジング2が引き寄せられる。
【0028】
レバー60は、ピン導入部62aが前方へ配置されてカムピン5の受け入れが可能な仮係止位置と、カムピン5を引き込んでハウジング20に対して相手側ハウジング2を引き寄せる本係止位置との間で回動される。つまり、レバー60は、カムピン5を引き込む本係止位置への回動方向である係止方向Aへの回動(図1の(a)参照)、及びカムピン5の受け入れが可能とされるとともに引き込んで係止したカムピン5の引き込みを解除する係止解除方向Bへの回動(図1の(b)参照)が可能とされている。
【0029】
レバー60は、回動孔61を挟んでカム溝62のピン導入部62aと反対側が操作部63とされており、この操作部63を把持して操作される。また、レバー60は、下面側から側方へ張り出す係止板部64と、上面側から側方へ張り出す係止板部65とを有している。さらに、レバー60は、操作部63の下面側に、係止段部69を有している。また、レバー60は、仮係止位置に配置された状態で前方側に配置される変位規制部68を有している。
【0030】
レバー60は、回動孔61の縁部における対向位置に、挿通口71を有している。また、回動孔61の縁部における挿通口71の側部には、一方側に仮係止段部66が形成され、他方側に本係止段部67が形成されている。図6の(b)に示すように、本係止段部67の上面は、仮係止段部66の上面よりも高くされている。さらに、スペーサ50が仮保持位置に配置された状態で、仮係止段部66の上面はボス51の係止片55の下面よりも低い位置となり、本係止段部67の上面はボス51の係止片55の下面よりも高い位置となる。また、スペーサ50が本保持位置に配置された状態で、仮係止段部66及び本係止段部67のそれぞれの上面はボス51の係止片55の下面よりも低い位置となる。
【0031】
また、本係止段部67には、挿通口71側の縁部に、挿通口71から離れるにしたがって次第に高くなるように傾斜したテーパ形状のガイド面67aが形成されている。ガイド面67aの挿通口71側における高さは、仮保持位置に配置されたスペーサ50のボス51の係止片55の下面よりも低くされている。
従って、仮係止段部66は、レバー60が仮係止位置に配置された状態で係止片55に対向し、本係止段部67は、レバー60が本係止位置に配置された状態で係止片55を押圧してスペーサ50を本保持位置へ変位させる。
【0032】
図7に示すように、フロントホルダ70は、矩形の枠状に形成されており、ハウジング20の端子収容室21と同数の挿通孔72を有している。挿通孔72は、端子40の箱部42が挿通可能な大きさに形成されている。このフロントホルダ70は、ハウジング20の前部の保持凹部29に嵌め込まれ、ハウジング20の前後方向へ移動可能に保持される。このフロントホルダ70によって、ハウジング20の端子収容室21に収容された各端子40は、接点部44を有する箱部42の先端が覆われる。このフロントホルダ70の各挿通孔72の前端側の縁部は、前方へ向かって突出する断面角形状の当接部72aとされている。
【0033】
フロントホルダ70は、その両側部に保持片73を有しており、この保持片73は、フロントホルダ70をハウジング20の保持凹部29に保持させた状態で、フロントホルダ70をハウジング20に保持させる。なお、フロントホルダ70は、ハウジング20に対する保持片73の係止によって、保持凹部29からハウジング20の前方側に突出した前方位置と、保持凹部29内に入り込んだ後方位置とに配置される。
【0034】
また、フロントホルダ70には、その上端における一側部側に、上方へ突出する係止突起75が形成されている。さらに、フロントホルダ70には、その両側部に、前方へ突出する位置決め突起76が形成されている。
【0035】
次に、上記構成のレバー式コネクタ10におけるレバー60の組付け、端子40の収容、相手側コネクタ1との接合、相手側コネクタ1からの取り外しについて説明する。
図8は、レバー60の組付け時におけるレバー式コネクタ10の全体斜視図である。図9は、レバー60及びスペーサ50の動きを説明する図であって、図9の(a)〜図9の(c)は、それぞれ鉛直方向の断面図である。図10は、レバー60が仮係止位置に配置されたレバー式コネクタ10の全体斜視図である。図11は、レバー60が係止方向へ向かって回動された状態のレバー式コネクタ10の全体斜視図である。図12は、相手側コネクタ1に接合された状態のレバー式コネクタ10の水平方向に沿う断面図である。図13は、図12におけるD部拡大図である。図14は、レバー60が本係止位置に配置されたレバー式コネクタ10の後方からの全体斜視図である。
【0036】
(レバー60の組付け)
レバー60をハウジング20のレバー装着部24に組付けるには、ハウジング20の下面側の開口から収容部22にスペーサ50を収容して仮保持位置に配置させ、孔部23からボス51を突き出させてボス51をレバー装着部24に配置させた状態とする(図5参照)。
次に、図8に示すように、挿通口71をボス51の係止片55の位置に合わせ、レバー60の回動孔61にスペーサ50のボス51を入り込ませる。
【0037】
その後、レバー60を係止解除方向Bへ回動させ、レバー装着部24に装着したレバー60を仮係止位置へ移動させる(図1の(a)参照)。レバー60を仮係止位置へ配置させると、図9の(a)に示すように、仮保持位置に配置されたスペーサ50のボス51の係止片55の下方側へレバー60の仮係止段部66が入り込む。さらに、レバー60の係止板部64がハウジング20のレバー係止部27に形成された切り欠き部28に入り込む(図1の(a)参照)。これにより、レバー60がハウジング20のレバー装着部24に確実に保持された状態とされる。
【0038】
また、レバー60を仮係止位置に配置させると、図10に示すように、レバー60の係止板部65の側方にハウジング20のレバー回動規制部25の回動規制片26が配置される。これにより、仮係止位置に配置されたレバー60の係止方向Aへの回動が規制された状態となる。また、レバー60が仮係止位置に配置されると、レバー60の変位規制部68がフロントホルダ70の係止突起75の後方に配置される。これにより、フロントホルダ70のハウジング20の後方側への移動が規制された状態となる。
【0039】
(端子40の収容)
端子40をハウジング20に収容させるには、スペーサ50を仮保持位置に配置させて係止孔52を端子収容室21と連通させた状態で、箱部42を前方に向けた端子40をハウジング20の後方側から端子収容室21内へ挿し込んで収容させる。このとき、端子40は、その先端が、前方位置に配置されたフロントホルダ70の挿通孔72内に配置さることで、このフロントホルダ70によって覆われて保護された状態となる。
【0040】
端子収容室21へ端子40を挿し込んで収容させたら、ハウジング20のレバー回動規制部25の回動規制片26を押し下げて回動規制片26によるレバー60の係止板部65の係止を解除させ、仮係止位置に配置されているレバー60を係止方向Aへ回動させて本係止位置へ移動させる。
【0041】
このようにすると、スペーサ50のボス51の係止片55に、係合方向Aへ回動されるレバー60の本係止段部67に形成されたガイド面67aが当接し、このガイド面67aに沿ってボス51が引き上げられ、その後、係止片55の下方にレバー60の本係止段部67が入り込む。これにより、仮保持位置に配置されていたスペーサ50がハウジング20の上方へ変位して本保持位置に配置される。したがって、各端子40の箱部42の後方側がスペーサ50の係止孔52の縁部によって係止される。これにより、端子収容室21に収容されている各端子40は、ハウジング20の後方側への移動が規制されて抜け止めされた状態とされる。
【0042】
スペーサ50を本保持位置に引き上げたら、レバー60を係止解除方向Bへ回動させて仮係止位置へ配置させる。このように、スペーサ50を本保持位置へ移動させた状態でレバー60を仮係止位置へ配置させると、図9の(b)に示すように、上方へ配置されたボス51の係止片55の下方にレバー60の仮係止段部66が入り込むが、仮係止段部66とボス51の係止片55との間にクリアランスが生じ、係止片55によってレバー60が保持されなくなる。しかし、仮係止位置に配置されたレバー60は、係止板部64がハウジング20のレバー係止部27に形成された切り欠き部28に入り込んでいるので、レバー装着部24からのレバー60の浮き上りが防止される。また、このようにレバー60を仮係止位置に配置させると、レバー60の係止板部65がハウジング20のレバー回動規制部25の回動規制片26に係止され、レバー60の係止方向Aへの回動が規制される。さらに、レバー60の変位規制部68がフロントホルダ70の係止突起75の後方に入り込む。これにより、フロントホルダ70がハウジング20の前方位置に配置された状態に維持され、フロントホルダ70による端子40の先端の保護が維持された状態となる。
【0043】
(相手側コネクタ1との接合)
本実施形態に係るレバー式コネクタ10を相手側コネクタ1に接合させるには、まず、ハウジング20の前部を相手側コネクタ1の相手側ハウジング2に挿し込む。すると、相手側ハウジング2のカムピン5が、レバー60のカム溝62のピン導入部62aに入り込む。また、相手側ハウジング2の係止解除突起6(図4参照)が、ハウジング20のレバー回動規制部25における回動規制片26の係止凸部26aに当接する。これにより、回動規制片26が押し下げられ、この回動規制片26によるレバー60の係止板部65に対する係止が解除され、レバー60の係止方向Aへの回動が可能とされる。
【0044】
次に、レバー60の操作部63を把持し、レバー60を係止方向Aへ回動させる。すると、回動されるレバー60のカム溝62に入り込んだカムピン5が引き込まれる。また、レバー60が係止方向Aへ回動されることで、図11に示すように、レバー60の変位規制部68がフロントホルダ70の係止突起75の後方位置から外れた位置に移動する。これにより、フロントホルダ70のハウジング20の後方位置への移動が可能とされる。
【0045】
このとき、本保持位置に配置されたスペーサ50の係止片55は上方へ変位されているので、係止片55が本係止段部67に当接することなく、本係止段部67が係止片55の下方側へ入り込む。
【0046】
さらに、レバー60を係止方向Aへ回動させると、フロントホルダ70の当接部72aが相手側コネクタ1の回路基板3に当接し、フロントホルダ70が保持凹部29内に押し込められた後方位置に配置される。すると、フロントホルダ70に対して端子40が前方へ相対的に移動する。また、図12に示すように、フロントホルダ70に形成された位置決め突起76が、回路基板3に形成された位置決め孔3aに嵌合し、回路基板3に対してフロントホルダ70が位置決めされる。そこで、フロントホルダ70の当接部72aは、回路基板3の電極4の周囲に正確に当接することができる。
【0047】
レバー60が本係止位置まで回動されると、端子40の箱部42の接点部44が回路基板3の電極4に接触して電気的に接続される(図3図12参照)。この状態で、図13に示すように、回路基板3の電極4と端子40の接点部44との接続箇所は、当接部72aが回路基板3に当接されたフロントホルダ70の各挿通孔72を形成する壁部によって囲われ、それぞれ区画された状態となる。
【0048】
レバー60が本係止位置に配置された状態では、図9の(c)に示すように、ボス51の係止片55の下方側に本係止段部67がほぼクリアランスなく入り込むため、レバー60は、ボス51の係止片55によってガタツキなく抜け止めされる。また、レバー60が本係止位置に配置されると、図14に示すように、レバー60の操作部63の裏側の係止段部69が、レバー回動規制部25の回動規制片26に形成された係止凸部26aに係止され、これにより、レバー60の係止解除方向Bへの回動が規制される。
【0049】
(相手側コネクタ1からの取り外し)
相手側コネクタ1に接合されたレバー式コネクタ10を相手側コネクタ1から取り外すには、まず、ハウジング20のレバー回動規制部25の回動規制片26を押し下げ、係止凸部26aによるレバー60の係止段部69への係止を解除させる。このようにすると、レバー60の係止解除方向Bへの回動の規制が解除される。
【0050】
次に、本係止位置に配置されているレバー60を係止解除方向Bへ回動させる。このようにすると、レバー60のカム溝62に引き込まれていたカムピン5がハウジング20の前方側へ押し出され、ハウジング20が相手側コネクタ1の相手側ハウジング2から抜き出される。これにより、回路基板3の電極4に接触されていた端子40の接点部44が電極4から離間し、相手側コネクタ1の回路基板3の電極4とコネクタ10の端子40との電気的接続が解除される。
【0051】
レバー60をさらに回動させて仮係止位置に配置させると、レバー60のカム溝62と相手側ハウジング2のカムピン5との係合が解除され、この状態で、相手側コネクタ1の相手側ハウジング2に嵌合されていたコネクタ10のハウジング20を抜き取ることで、相手側コネクタ1とコネクタ10との接合が解除される。
【0052】
また、レバー60を仮係止位置に配置させると、レバー60の係止板部65がハウジング20のレバー回動規制部25の回動規制片26に係止され、レバー60の係止方向Aへの回動が規制される。また、レバー60の係止板部64がハウジング20のレバー係止部27に形成された切り欠き部28に入り込み、レバー60がハウジング20のレバー装着部24に確実に保持された状態とされる。さらに、レバー60の変位規制部68がフロントホルダ70の係止突起75の後方に入り込む。これにより、フロントホルダ70がハウジング20の前方側へ押し出されて前方位置に配置され、端子40の先端が覆われて保護された状態となる。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態に係るレバー式コネクタ10によれば、相手側ハウジング2に対してハウジング20を挿抜させるレバー60が板状に形成され、しかも、端子40を係止するスペーサ50に形成されたボス51にレバー60を回転可能に支持させたので、コ字状のレバーの一対のカム板をハウジングの表裏に形成した支軸に回動可能に支持させた構造と比べ、構造の簡略化及び小型化を図ることができる。また、ハウジング20におけるレバー60の装着側と反対側からハウジング20の収容部22にスペーサ50を押し込むことができるので、ピンを有する別部品からなる治具を用いることなくスペーサ50を操作でき、部品点数の削減によってコストを抑えることができる。
【0054】
しかも、本実施形態のレバー式コネクタ10によれば、レバー60の本係止位置への回動に連動させて仮保持位置に配置されたスペーサ50を本保持位置へ変位させ、ハウジング20の端子収容室21に収容した端子40をスペーサ50で容易に係止させることができる。
また、本実施形態のレバー式コネクタ10では、スペーサ50のボス51に形成した一対の係止片55と、レバー60の回動孔61の縁部に形成した仮係止段部66及び本係止段部67とからなる簡単な構成によって、レバー60の本係止位置への回動に連動させて仮保持位置に配置されたスペーサ50を本保持位置へ容易に変位させることができる。
【0055】
そして、本実施形態のレバー式コネクタ10によれば、レバー60を本係止位置へ回動させて相手側ハウジング2を引き寄せることで、相手側ハウジング2に設けられた回路基板3の電極4に、スペーサ50で係止させた端子40の接点部44を容易に当接させて電気的に接続させることができる。
従って、本実施形態のレバー式コネクタ10によれば、スペーサ50を備えつつ、コストダウン及び小型化が可能なレバー式コネクタを提供できる。
【0056】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0057】
ここで、上述した本発明に係るレバー式コネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 相手側コネクタ(1)の凹状に形成された相手側ハウジング(2)に対してレバー(60)の操作で挿抜されるレバー式コネクタ(10)であって、
複数の端子収容室(21)を有するハウジング(20)と、
前記ハウジング(20)の前記端子収容室(21)に収容される複数の端子(40)と、
前記ハウジング(20)の一側部に開口された収容部(22)に収容され、前記端子収容室(21)と交差する方向へ変位することで前記端子(40)を係止するスペーサ(50)と、
前記ハウジング(20)に対して回動されることで前記相手側ハウジング(2)に設けられたカムピン(5)を引き込んで前記ハウジング(20)に前記相手側ハウジング(2)を引き寄せるカム溝(62)を有し、前記カム溝(62)に前記カムピン(5)を受け入れ可能な仮係止位置と前記カム溝(62)に前記カムピン(5)を引き込む本係止位置との間で回動可能とされた板状のレバー(60)と、
を備え、
前記スペーサ(50)は、前記収容部(22)に収容されることで前記ハウジング(20)における前記レバー(60)の装着側に突出するボス(51)を有し、
前記レバー(60)は、前記ハウジング(20)における前記収容部(22)への前記スペーサ(50)の収容側と反対側で前記ボス(51)に回動可能に支持されている
ことを特徴とするレバー式コネクタ(10)。
[2] 前記スペーサ(50)は、前記端子(40)を係止しない仮保持位置と、前記端子(40)を係止する本保持位置との間で変位可能とされ、
前記仮保持位置に配置された前記スペーサ(50)が前記レバー(60)の前記本係止位置への回動によって前記本保持位置へ変位される
ことを特徴とする上記[1]に記載のレバー式コネクタ(10)。
[3] 前記ボス(51)は、側方へ向かって互いに反対方向へ突出する一対の係止片(55)を先端に有し、前記レバー(60)は、前記ボス(51)が挿通されて回動可能に支持される回動孔(61)と、前記回動孔(61)の縁部における対向位置に形成されて前記係止片(55)が挿通される挿通口(71)と、前記挿通口(71)の一方側の側部に形成されて前記仮係止位置で前記係止片(55)に対向する仮係止段部(66)と、前記挿通口(71)の他方側の側部に形成されて前記本係止位置で前記係止片(55)を押圧して前記スペーサ(50)を前記本保持位置へ変位させる本係止段部(67)と、前記本係止段部(67)における前記挿通口(71)側の縁部に形成され、前記挿通口(71)から離れるにしたがって次第に高くなるように傾斜したテーパ形状のガイド面(67a)と、を有することを特徴とする上記[2]に記載のレバー式コネクタ(10)。
[4] 前記端子(40)は、前記レバー(60)が前記本係止位置へ回動されて前記相手側ハウジング(2)が引き寄せられることで、前記相手側ハウジング(2)に設けられた回路基板(3)の電極(4)に当接して電気的に接続される接点部(44)を有する
ことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のレバー式コネクタ(10)。
【符号の説明】
【0058】
1:相手側コネクタ
2:相手側ハウジング
3:回路基板
4:電極
5:カムピン
10:レバー式コネクタ
20:ハウジング
21:端子収容室
22:収容部
40:端子
44:接点部
50:スペーサ
51:ボス
60:レバー
62:カム溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14