特許第6907044号(P6907044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907044
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】樹脂モールド装置及び樹脂モールド方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/77 20060101AFI20210708BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20210708BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20210708BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B29C45/77
   B29C45/02
   B29C45/26
   H01L21/56 T
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-119687(P2017-119687)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-1122(P2019-1122A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 正信
(72)【発明者】
【氏名】川口 誠
(72)【発明者】
【氏名】田島 真也
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−168114(JP,A)
【文献】 実開昭62−075910(JP,U)
【文献】 特開2013−026360(JP,A)
【文献】 特開平11−309768(JP,A)
【文献】 特開2008−311577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/70−45/72
B29C 45/00−45/24
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティが形成された第1の金型と、
第2の金型と、
前記第1の金型と前記第2の金型とをクランプした状態で前記キャビティの内部に樹脂を充填するための複数のプランジャと、
前記樹脂を充填するために前記複数のプランジャを移動させるマルチトランスファユニットと、
前記第1の金型に設けられ、前記キャビティの内部の圧力を直接測定する第1の圧力センサと、
前記マルチトランスファユニットの動作を制御する制御部と、を有し、
前記マルチトランスファユニットは、前記複数のプランジャのそれぞれを固定して保持する複数の固定部を有し、
前記第1の金型には、前記複数のプランジャに対して共通のカルが形成されており、
前記カルは、前記複数のプランジャのそれぞれに対応する複数のカル部と、該複数のカル部を連結する連結部と、を備え、
前記第1の金型と前記第2の金型とをクランプした状態で前記複数のプランジャが移動することにより、溶融した前記樹脂が前記カル、ランナ、およびゲートを介して前記キャビティの内部に充填され、
前記制御部は、前記第1の圧力センサの測定値に基づいて前記マルチトランスファユニットの動作を制御することを特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項2】
前記マルチトランスファユニットに与えられた荷重を測定する第2の圧力センサを更に有し、
前記制御部は、前記第1の圧力センサの測定値と前記第2の圧力センサの測定値とに基づいて、前記マルチトランスファユニットに与えられる前記荷重のフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の樹脂モールド装置。
【請求項3】
前記第1の圧力センサは、前記第1の金型のうち互いに異なる位置に配置された複数のセンサを含み、
前記制御部は、前記複数のセンサの測定値のうち最大値を選択し、該最大値を用いて前記マルチトランスファユニットを制御することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂モールド装置。
【請求項4】
キャビティを有する第1の金型に設けられた第1の圧力センサを用いて、該キャビティの内部の圧力を直接測定するステップと、
複数のプランジャを移動させるためのマルチトランスファユニットに設けられた第2の圧力センサを用いて、該第2の圧力センサに与えられる荷重を測定するステップと、
前記第1の圧力センサよる測定値と前記第2の圧力センサによる測定値とに基づいて、前記第2の圧力センサへ与える前記荷重をフィードバック制御するステップと、
前記荷重を前記第2の圧力センサへ与えてプランジャを移動させることにより樹脂モールドを行うステップと、を有し、
前記第1の金型には、前記複数のプランジャに対して共通のカルが形成されており、
前記カルは、前記複数のプランジャのそれぞれに対応する複数のカル部と、該複数のカル部を連結する連結部と、を備え、
前記樹脂モールドを行うステップにおいて、前記第1の金型と第2の金型とをクランプした状態で前記複数のプランジャを移動させることにより、溶融した樹脂が前記カル、ランナ、およびゲートを介して前記キャビティの内部に充填されることを特徴とする樹脂モールド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファ成形を行うための樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランスファ成形を行うための樹脂モールド装置が知られている。トランスファ成形を行う際には、複数のカルに対応する複数のプランジャのそれぞれの上に樹脂タブレットを配置し、各プランジャを上昇させて各樹脂タブレットを押圧する。これにより、樹脂モールド装置の金型で形成されるキャビティ内に樹脂が充填される。
【0003】
ところで、各プランジャの上に配置した各樹脂タブレットの重量にはばらつきがあり、高品質な樹脂モールド製品を製造するには、各樹脂タブレットの重量のばらつきを吸収する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1には、各樹脂タブレットの重量のばらつきを吸収するため、各プランジャを上昇する方向に力を加えるスプリング(均等圧機構)用いて樹脂成形圧を制御しながらトランスファ成形を行う樹脂モールド装置が開示されている。
【0005】
また近年、SiP(System in Package)においては、半導体ICだけでなく、Sawデバイスのような受動素子など、高い樹脂成形圧(例えば、5〜10MPa)に耐えることができないコンポーネントが含まれる場合があり、低い樹脂成形圧(例えば、1〜3MPa以下)でトランスファ成形を行うことが可能な樹脂モールド装置が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−107197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された樹脂モールド装置は、トランスファ成形時の樹脂成形圧が均等になるようにスプリングを用いている。しかしながら、特許文献1の樹脂モールド装置では、スプリングがノイズの影響を受けるため、低い樹脂成形圧(圧力)を加えた場合にトランスファ駆動量と圧力との関係を正確に測定することができない。このため、特許文献1の樹脂モールド装置では、低い樹脂成形圧で正確なトランスファ成形を行うことが難しい。
【0008】
そこで本発明は、低い樹脂成形圧で正確なトランスファ成形が可能な樹脂モールド装置及び樹脂モールド方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としての樹脂モールド装置は、キャビティが形成された第1の金型と、第2の金型と、前記第1の金型と前記第2の金型とをクランプした状態で前記キャビティの内部に樹脂を充填するための複数のプランジャと、前記樹脂を充填するために前記複数のプランジャを移動させるマルチトランスファユニットと、前記第1の金型に設けられ、前記キャビティの内部の圧力を直接測定する第1の圧力センサと、前記マルチトランスファユニットの動作を制御する制御部とを有し、前記マルチトランスファユニットは、前記複数のプランジャのそれぞれを固定して保持する複数の固定部を有し、前記第1の金型には、前記複数のプランジャに対して共通のカルが形成されており、前記カルは、前記複数のプランジャのそれぞれに対応する複数のカル部と、該複数のカル部を連結する連結部とを備え、前記第1の金型と前記第2の金型とをクランプした状態で前記複数のプランジャが移動することにより、溶融した前記樹脂が前記カル部、ランナ部、およびゲート部を介して前記キャビティの内部に充填され、前記制御部は、前記第1の圧力センサの測定値に基づいて前記マルチトランスファユニットの動作を制御する。
【0010】
本発明の他の側面としての樹脂モールド方法は、キャビティを有する第1の金型に設けられた第1の圧力センサを用いて、該キャビティの内部の圧力を直接測定するステップと、複数のプランジャを移動させるためのマルチトランスファユニットに設けられた第2の圧力センサを用いて、該第2の圧力センサに与えられる荷重を測定するステップと、前記第1の圧力センサよる測定値と前記第2の圧力センサによる測定値とに基づいて、前記第2の圧力センサへ与える前記荷重をフィードバック制御するステップと、前記荷重を前記第2の圧力センサへ与えてプランジャを移動させることにより樹脂モールドを行うステップとを有し、前記第1の金型には、前記複数のプランジャに対して共通のカルが形成されており、前記カルは、前記複数のプランジャのそれぞれに対応する複数のカル部と、該複数のカル部を連結する連結部とを備え、前記樹脂モールドを行うステップにおいて、前記第1の金型と第2の金型とをクランプした状態で前記複数のプランジャを移動させることにより、溶融した樹脂が前記カル部、ランナ部、およびゲート部を介して前記キャビティの内部に充填される。
【0011】
本発明のその他の目的及び効果は以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低い樹脂成形圧で正確なトランスファ成形が可能な樹脂モールド装置及び樹脂モールド方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態における樹脂モールド装置の全体構成図である。
図2】本実施形態における樹脂モールド装置の断面図である(樹脂モールド前)。
図3】本実施形態における樹脂モールド装置の断面図である(樹脂モールド後)。
図4】本実施形態におけるトランスファ位置、トランスファ圧力、及び、キャビティ圧力の関係を示す図である。
図5】本実施形態における樹脂モールド方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
まず、図1乃至図3を参照して、本実施形態における樹脂モールド装置について説明する。図1は、樹脂モールド装置100の全体構成図である。図2(a)は、図1の線A−Aに沿って切断した樹脂モールド装置100の断面図である(樹脂モールド前)。図2(b)は樹脂モールド装置の要部断面図である。図3(a)は、樹脂モールド後の樹脂モールド装置100の断面図である。図3(b)は、図3(a)中の線B−Bに沿って切断した樹脂モールド装置100の断面図である。図1乃至図3に示されるように、本実施形態の樹脂モールド装置100は、トランスファモールド(トランスファ成形)により電子デバイス31の樹脂モールドを行う(樹脂封止する)。
【0016】
30は基板である。31は電子デバイスである。電子デバイス31は、半導体チップ32と受動素子33とを備えて、通常はパッケージとは別に実装基板上に搭載される受動素子33を含むように構成される。受動素子33は、半導体チップ32内に構成される電子回路を含んで電子回路を構成し、例えばフィルタやコンデンサなどとすることができる。このような受動素子(電子部品)は、半導体チップ32のようなシリコン基板で構成される部材と比較して軟質な材質を含んで構成されるため高い樹脂圧には耐えることができず、樹脂圧により変形して性能が低下したり破損してしまう場合がある。このような受動素子(電子部品)としては、一例としてフィルタが想定され、より具体的にはSawフィルタのようなものが想定されるが、これに限定されるものではない。また、コンデンサとしては、アルミ積層コンデンサや電解コンデンサなどを用いた場合にも同様の構成が想定される。電子デバイス31は、半導体チップ32を含む半導体デバイスであればよく、本実施形態は、例えば車両を制御するための電子制御装置(ECU)などの大型の電子デバイスの樹脂モールドにも適用可能である。
【0017】
樹脂モールド装置100において、11は、基板30上に設けられた電子デバイス31に充填する樹脂の形状を決定するための第1の金型としての上金型である。上金型11には、電子デバイス31を封止する樹脂パッケージの外形を決定するためのキャビティ13が形成されている。上金型11は、樹脂モールド時において、基板30を上面側から押さえ付ける。
【0018】
12は、第2の金型としての下金型である。下金型12の上には、電子デバイス31を実装した基板30が載置されている。下金型12は、樹脂モールド時において、基板30を下面側から押さえ付ける。
【0019】
本実施例のモールド金型(以下、単に「金型」ともいう)は、上金型11と下金型12とを主体として構成されている。樹脂モールド時には、上金型11と下金型12とで基板30をクランプし(挟み)、上金型11と下金型12との間に形成されたキャビティ13を充填して電子デバイス31の樹脂モールドを行う。
【0020】
70は、熱硬化性樹脂等をタブレット(円柱)状に成形した樹脂タブレットである。樹脂モールド時には、予熱された下金型12のポット18内に樹脂タブレット70を投入して溶融させるとともにプランジャ17を上動させて溶融した樹脂71を圧送することにより、上金型11と下金型12との間が樹脂71で充填される。プランジャ17は、トランスファ機構19によって、ポット18に沿って上下に摺動可能に構成されている。
【0021】
なお本実施例では、樹脂タブレット70に代えて、顆粒樹脂をポット18に投入することも可能であり、又は、液状の熱硬化性樹脂をディスペンサ(不図示)でポットに供給することもできる。また、上金型11及び下金型12のパーティング面をリリースフィルム(不図示)で覆ってから樹脂71を供給して、リリースフィルムを介して上金型11及び下金型12で基板30をクランプすることもできる。
【0022】
プランジャ17によって樹脂71が圧送されることにより、溶融した樹脂71は、カル16、ランナ15、ゲート14を介して、キャビティ13へ供給される。すなわち樹脂71は、ゲート14に近い側から遠い側へ向けて(オーバーフローキャビティ21へ向けて)、キャビティ13の内部に順次供給されていく。
【0023】
このように樹脂タブレット70が溶融した樹脂71は、上金型11と下金型12とで形成された空間(キャビティ13、ゲート14、ランナ15、カル16)に注入される。その結果、図3(a)、(b)に示されるように、上金型11と下金型12との間の空間(キャビティ13、ゲート14、ランナ15、カル16)は、樹脂71により充填された状態となる。
【0024】
本実施形態のトランスファ機構19は、図2(a)及び図3(b)に示されるように、マルチトランスファユニットである。このような構成により、トランスファ機構19は、複数のポット18a〜18fのそれぞれに沿って複数のプランジャ17a〜17fを上下に摺動させることができる。
【0025】
本実施形態のトランスファ機構19は、複数のプランジャ17a〜17fのそれぞれの下部において、各プランジャを上方向に押圧するためのスプリング(均等圧機構)を設ける代わりに、複数のプランジャ17a〜17fのそれぞれを固定して保持する複数のリジッド部(固定部)19a〜19fを備えている。
【0026】
トランスファ成形を繰り返し行っていると、図2(b)に示されるように、プランジャ17とポット18との間(ポット18の内周面)に樹脂が付着して樹脂カス72として残ることになる。この場合、プランジャ17を押圧する圧力を均等化するためのスプリングを設けると、スプリングがプランジャ17からの力を受けて伸縮することで、プランジャ17の動きがトランスファ機構19による動作とは無関係に縦方向(上下方向)に昇降する動作が生じることになる。その結果、ポット18内においてプランジャ17が受ける摺動摩擦が残留した樹脂カス72の存在によって影響を受け、プランジャ17がポット18の長さ方向において動作が不安定となる。一方、本実施形態によれば、スプリングに代えてリジッド部19を用いているため、樹脂カス72の影響による摺動抵抗の変化に応じたスプリングの伸縮が生じることがないため、この影響を受けることなく、プランジャ17の動作が安定する。
【0027】
ところで、カル16が複数のプランジャ17a〜17fのそれぞれに関して分離して(独立して)設けられているとすると、プランジャ17a〜17fのそれぞれの上に配置された樹脂タブレット70a〜70fの重量のばらつきに伴う樹脂成形圧のばらつきをトランスファ機構側で吸収することができない。
【0028】
このため本実施形態では、複数のプランジャ17a〜17fのそれぞれに対応するカル16を分離させることなく一体的に構成する。すなわち、上金型11において、複数のプランジャ17a〜17fに対して連結した共通のカル16を形成する。図2(a)に示されるように、本実施形態の上金型11には連結部16aが形成されており、左側のカル16(プランジャ17a〜17c及び樹脂タブレット70a〜70cに対応するカル部16b)と右側のカル16(プランジャ17d〜17f及び樹脂タブレット70d〜70fに対応するカル部16c)とが連結され、一体構成となっている。ただし本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、全てのカルが一体化している必要はなく、複数のプランジャに対応する少なくとも2つのカルが一体化して樹脂量の調整が可能な構成となっていればよい。
【0029】
本実施形態の樹脂モールド装置100は、トランスファ成形時における樹脂71の注入圧力(樹脂成形圧)を制御するため、樹脂成形の際に発生する荷重(推力)を測定し、トランスファ機構19の圧力制御が行われる。このためトランスファ機構19の下方には、樹脂モールドの際にトランスファ機構19に加えられる荷重を測定する圧力センサ20(第2の圧力センサ)が設けられている。また本実施形態において、低い樹脂成形圧でも正確なトランスファ成形を行うため、上金型11には、キャビティ13内に充填された樹脂71の樹脂成形圧(キャビティ圧力)を測定する圧力センサ41、42(第1の圧力センサ)が設けられている。圧力センサ41、42は、それぞれ、キャビティ13内の上方向における圧力を測定する。圧力センサ20、41、42は、測定対象物の伸縮に比例して抵抗体が伸縮して抵抗値が変化するように構成され、この抵抗変化を用いてひずみ量を測定するロードセル(ひずみセンサ)である。
【0030】
図1に示されるように、本実施形態の樹脂モールド装置100は、制御部50を備えている。制御部50は、フィードバック制御により圧力センサ20を介してトランスファ機構19に与える荷重を制御することにより、トランスファ機構19の動作を制御する。圧力センサ20に荷重を与えると、圧力センサ20にひずみが発生し、圧力センサ20の出力電圧が変化する。このため制御部50は、圧力センサ20の出力電圧の変化値、圧力センサ20のゲージ率、及び、圧力センサ20の入力電圧に基づいて、ひずみ量を算出することができる。更に、このひずみ量とヤング率とによって圧力センサ20にかかった圧力(トランスファ圧力)を算出することが可能である。
【0031】
また本実施形態において、制御部50は、上金型11に設けられた圧力センサ41、42から出力される信号に基づいて、キャビティ13内の樹脂成形圧(キャビティ圧力)を算出する。そして制御部50は、圧力センサ20、41、42からのそれぞれの信号に基づいて、圧力センサ20に適切な荷重を与えてプランジャ17を上方向に移動させるように、フィードバック制御を行う。このように本実施形態の樹脂モールド装置100は、トランスファ機構19の下方に圧力センサ20を設けるだけでなく、キャビティ13の内部の樹脂成形圧を直接測定する圧力センサ41、42を上金型11に設けている。
【0032】
これにより制御部50は、樹脂成形圧を、間接的なトランスファ圧力ではなく、より直接的なキャビティ圧力から算出することができる。このような構成により、本実施形態の樹脂モールド装置100によれば、低い樹脂成形圧を正確に測定して制御することが可能である。なお本実施形態において、キャビティにおいて製品の成形領域の外側であって、好ましくは、圧力センサ41はゲート14の近傍に配置され、圧力センサ42はゲート14から離れた位置(エアが排出されるエアベント又はオーバーフローキャビティ21の近傍)に配置される。これにより、樹脂モールド開始直後から樹脂モールド終了直前までのキャビティ圧力をより正確に測定することができる。ただし本実施形態では、キャビティ圧力を検出するための2つの圧力センサ41、42が設けられているが、圧力センサの個数は限定されるものではなく、例えば1つの圧力センサのみを設けてもよい。
【0033】
図4は、本実施形態におけるトランスファ位置(トランスファ機構19の上下方向の位置)、トランスファ圧力(圧力センサ20による検出値)、及び、キャビティ圧力(圧力センサ41、42による検出値)の関係を示す図である。図4(a)において、縦軸はトランスファ位置、横軸は経過時間をそれぞれ示している。図4(b)において、縦軸はトランスファ圧力(実線)及びキャビティ圧力(破線)、横軸は経過時間をそれぞれ示している。なお図4(a)において、トランスファ位置の上昇が開始してから所定の経過時間経過後にトランスファ位置が一定となっている期間は、キャビティ13内に樹脂充填後の硬化時間(キュアタイム)である。図4(b)に示されるように、トランスファ機構19が上方向に移動するとともに、トランスファ圧力及びキャビティ圧力は増加する。また、キャビティ圧力はトランスファ圧力よりも小さい。
【0034】
次に、図5を参照して、本実施形態における樹脂モールド方法について説明する。図5は、樹脂モールド方法を示すフローチャートである。図5の各ステップは、樹脂モールド装置100の制御部50により実行される。
【0035】
まず、ステップS101において、制御部50は、圧力センサ20の測定値(トランスファ位置)を取得する。続いてステップS102において、制御部50は、圧力センサ41の測定値(ゲート14近傍のキャビティ圧力)を取得する。続いてステップS103において、制御部50は、圧力センサ41の測定値(オーバーフローキャビティ21近傍のキャビティ圧力)を取得する。なお、ステップS101〜S103の順序を入れ替えてもよく、またステップS101〜S103の少なくとも一部を同時に行ってもよい。なお、キャビティ圧力を測定する圧力センサが3以上の場合には、ステップS102、S103と同様のステップはその数に応じて増加する。また、キャビティ圧力を測定する圧力センサが1つのみの場合には、ステップS102、S103の一方が省略される。
【0036】
続いてステップS104において、制御部50は、圧力センサ20、41、42の測定値に基づいて、圧力センサ20を介してトランスファ機構19へ与える荷重を決定する。そして制御部50は、決定した荷重をトランスファ機構19へ与え、トランスファ機構19、すなわちプランジャ17の上下方向の位置を制御する。
【0037】
ステップS104において、例えば、制御部50は、圧力センサ41、42の2つの測定値を比較して、2つの測定値のうち大きい方の値(最大値)を選択し、最大値に基づいてトランスファ機構19へ与える荷重を決定する。ただし本実施形態は、これに限定されるものではなく、2つの測定値の平均値や、経過時間等の所定の条件に応じて決定される1つの測定値に基づいて荷重を決定してもよい。
【0038】
また本実施形態において、制御部50は、例えば圧力センサ41、42の少なくとも一方の測定値(又は2つの測定値の平均値、若しくは圧力センサ41、42が複数個ずつ設けられるときは同種位置における測定値の平均値)が所定の閾値よりも大きい場合、トランスファ機構19へ与える荷重を小さくする。所定の閾値としては、例えば、電子デバイス31により許容される最大樹脂成形圧(又は最大樹脂成形圧よりも小さい所定の圧力)に相当する値が設定され、電子デバイス31の種類に応じて適宜変更可能である。このような構成により、本実施形態によれば、キャビティ13内部の樹脂成形圧(キャビティ圧力)を正確に測定することができるため、キャビティ13内部の圧力が意図する圧力よりも大きくなることを確実に防止することが可能となる。
【0039】
また本実施形態において、制御部50は、例えば、トランスファ機構19の駆動時間を測定するタイマーと併用して用いることで、圧力センサ41、42の測定値(又は圧力センサ41、42が複数個ずつ設けられるときは同種位置における測定値の平均値)の少なくとも1つについて所定値まで立ち上がった時点(所定値となった時点)の時間を算出して、予定した所定のタイミングに対する遅速に基づいて充填状態を算出して動作の制御を行うこともできる。具体的には、圧力センサ41、42の測定値が所定値まで立ち上がったタイミングが予定よりも遅いときには樹脂の充填が遅れて最大樹脂成形圧が低くなるため、トランスファ機構19へ与える荷重を増加させることができる。例えば、図3(b)に破線で示すキャビティ圧力の曲線が右側に移動したときや傾斜が緩やかになるようなときには遅れが生じることになり、上述したような動作を行うことが可能である。
【0040】
このように本実施形態において、トランスファ機構19は、複数のプランジャ17a〜17fのそれぞれを固定して保持する複数のリジッド部19a〜19fを有する。すなわちトランスファ機構19は、複数のプランジャを弾性的に保持するスプリングを利用しない。また本実施形態において、上金型11には、複数のプランジャ17a〜17fに対して共通のカル16が形成されており、上金型11と下金型12とをクランプした状態で複数のプランジャ17a〜17fが移動することにより、樹脂71がカル16を介してキャビティ13の内部に充填される。このとき制御部50は、圧力センサ41、42の測定値に基づいてトランスファ機構19の動作を制御する。このため本実施形態によれば、低い樹脂成形圧で正確なトランスファ成形が可能な樹脂モールド装置及び樹脂モールド方法を提供することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。ただし、本発明は、上記実施形態にて説明した事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
11 上金型
12 下金型
13 キャビティ
14 ゲート
15 ランナ
16 カル
16a 連結部
17 プランジャ
18 ポット
19 トランスファ機構(マルチトランスファユニット)
20 圧力センサ
21 オーバーフローキャビティ
30 基板
31 電子デバイス
32 半導体チップ
33 受動素子
41、42 圧力センサ
50 制御部
70 樹脂タブレット
100 樹脂モールド装置

図1
図2
図3
図4
図5