特許第6907045号(P6907045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907045
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】巻線用ボビンおよび巻線部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20210708BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20210708BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01F17/06 K
   H01F27/32 150
   H01F5/02 J
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-120992(P2017-120992)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2019-9162(P2019-9162A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】林 和延
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−067211(JP,U)
【文献】 実開昭51−051424(JP,U)
【文献】 実開平07−022516(JP,U)
【文献】 特開2017−011009(JP,A)
【文献】 米国特許第03068381(US,A)
【文献】 特開昭59−014346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/06
H01F 5/02
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のコアを収容可能な円環状に構成されたボビン本体と、当該ボビン本体の表面から突出するように形成されて当該ボビン本体の円周方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の仕切部とを備え、前記表面における前記各仕切部によって仕切られた巻回領域に導線の巻回によって巻線が形成される巻線用ボビンであって、
前記各仕切部は、前記ボビン本体における外周部、内周部、および2つの側部のうちの当該内周部を除く3つの部位の前記表面から突出するコ字状の板体で形成された鍔部と、当該鍔部における2つの開放端部の少なくとも一方から突出するように形成された突起部とを備えてそれぞれ構成されている巻線用ボビン。
【請求項2】
円環状のコアを収容可能な円環状に構成されたボビン本体と、当該ボビン本体の表面から突出するように形成されて当該ボビン本体の円周方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の仕切部とを備え、前記表面における前記各仕切部によって仕切られた巻回領域に導線の巻回によって巻線が形成される巻線用ボビンであって、
前記各仕切部は、前記ボビン本体における外周部、内周部、および2つの側部のうちの当該2つの側部のいずれかを除く3つの部位の前記表面から突出するコ字状の板体で形成された鍔部と、当該鍔部における2つの開放端部の少なくとも一方から突出するように形成された突起部とを備えてそれぞれ構成されている巻線用ボビン。
【請求項3】
前記鍔部における2つの開放端部の双方に前記突起部がそれぞれ形成されている請求項1または2記載の巻線用ボビン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の巻線用ボビンと、当該巻線用ボビンに収容された前記円環状のコアと、前記巻線用ボビンの前記巻回領域に形成された前記巻線とを備えている巻線部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状のボビン本体とボビン本体の表面に設けられた複数の仕切部とを備えた巻線用ボビン、およびその巻線用ボビンを備えた巻線部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の巻線部品として、下記特許文献1において出願人が開示した巻線部品が知られている。この巻線部品は、コア部と、コア部の表面に突設された鍔状の複数の仕切部と、コア部の表面における各仕切部で仕切られた各巻線形成部位に導線を巻回して形成された巻線とを備えて構成されている。この場合、仕切部は、コア部の内周面、2つの側面、および外周面のうちの外周面にのみ形成されている。また、巻線は、仕切部の非形成部位であるコア部の側面または内周面を通って隣接する巻線形成部位に巻回されることで、各巻線形成部位に形成された複数の単位巻線が仕切部の非形成部位で接続された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−11009号公報(第4−5頁、第1−4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の巻線部品には、改善すべき以下の課題がある。具体的には、上記の巻線部品では、仕切部がコア部の外周面にのみ形成されて、コア部の内周面および各側面には仕切部が形成されていない構成となっている。このため、上記の巻線部品には、仕切部の非形成部位であるコア部の内周面および各側面において隣接する他の巻線形成部位への導線のはみ出しによって巻崩れが生じ、これによって均一な巻線の形成が困難となる結果、特性にばらつきが生じるおそれがある。また、上記の巻線部品には、仕切部が形成されていないコア部の内周面および各側面において、隣接する各巻線形成部位の巻線同士が接触し、これによって生じる寄生容量の抑制が困難となっている。
【0005】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、特性のばらつきおよび寄生容量を低減し得る巻線用ボビンおよび巻線部品を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の巻線用ボビンは、円環状のコアを収容可能な円環状に構成されたボビン本体と、当該ボビン本体の表面から突出するように形成されて当該ボビン本体の円周方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の仕切部とを備え、前記表面における前記各仕切部によって仕切られた巻回領域に導線の巻回によって巻線が形成される巻線用ボビンであって、前記各仕切部は、前記ボビン本体における外周部、内周部、および2つの側部のうちの当該内周部を除く3つの部位の前記表面から突出するコ字状の板体で形成された鍔部と、当該鍔部における2つの開放端部の少なくとも一方から突出するように形成された突起部とを備えてそれぞれ構成されている。
【0007】
また、請求項2記載の巻線用ボビンは、円環状のコアを収容可能な円環状に構成されたボビン本体と、当該ボビン本体の表面から突出するように形成されて当該ボビン本体の円周方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の仕切部とを備え、前記表面における前記各仕切部によって仕切られた巻回領域に導線の巻回によって巻線が形成される巻線用ボビンであって、前記各仕切部は、前記ボビン本体における外周部、内周部、および2つの側部のうちの当該2つの側部のいずれかを除く3つの部位の前記表面から突出するコ字状の板体で形成された鍔部と、当該鍔部における2つの開放端部の少なくとも一方から突出するように形成された突起部とを備えてそれぞれ構成されている
【0008】
また、請求項3記載の巻線用ボビンは、請求項1または2記載の巻線用ボビンにおいて、前記鍔部における2つの開放端部の双方に前記突起部がそれぞれ形成されている。
【0009】
また、請求項4記載の巻線部品は、請求項1から3のいずれかに記載の巻線用ボビンと、当該巻線用ボビンに収容された前記円環状のコアと、前記巻線用ボビンの前記巻回領域に形成された前記巻線とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の巻線用ボビン、および請求項4記載の巻線部品によれば、ボビン本体における外周部、内周部、および2つの側部のうちの、内周部を除く3つの部位の表面から突出するコ字状の板体で形成された鍔部を備えて各仕切部をそれぞれ構成し、請求項2記載の巻線用ボビン、および請求項4記載の巻線部品によれば、ボビン本体における外周部、内周部、および2つの側部のうちの、2つの側部のいずれかを除く3つの部位の表面から突出するコ字状の板体で形成された鍔部を備えて各仕切部をそれぞれ構成したことにより、外周部の表面にのみ仕切部が形成されている従来の構成と比較して、巻線部品の特性のばらつきの発生要因となる導線の巻崩れの発生や、寄生容量の発生要因となる隣接する各巻回領域における各巻線同士の接触を少なく抑えることができる。また、請求項1,2記載の巻線用ボビンおよび請求項4記載の巻線部品によれば、鍔部における2つの開放端部の少なくとも一方から突出するように形成された突起部を備えて各仕切部をそれぞれ構成したことにより、巻回領域における鍔部が形成されていない部位においても隣接する他の巻回領域への導線のはみ出しを少なく抑えることができる結果、巻回領域における鍔部が形成されていない部位においても、巻崩れの発生や隣接する各巻回領域における各巻線同士の接触を少なく抑えることができる。したがって、請求項1,2記載の巻線用ボビンおよび請求項4記載の巻線部品によれば、巻崩れに起因する巻線部品の特性のばらつき、および隣接する各巻回領域における各巻線同士の接触に起因する寄生容量を十分に低減することができる。
【0011】
また、請求項記載の巻線用ボビン、および請求項4記載の巻線部品では、ボビン本体における内周部を除く3つの部位の表面から突出するコ字状の板体で鍔部が形成されている。つまり、内周部の表面が鍔部の非形成部位となっている。この場合、巻回領域における外周部の表面の長さや側部の表面の長さよりも表面の長さが短い内周部に鍔部が形成されている構成では、巻回領域における内周部の表面の長さがさらに短くなることによって特性のばらつきの発生要因となる「巻太り」が発生し易くなる。これに対して、この巻線用ボビンおよび巻線部品によれば、内周部の表面を鍔部の非形成部位としたことにより、内周部に鍔部が形成されている構成と比較して、巻太りの発生を少なく抑えることができる結果、巻太りに起因する巻線部品の特性のばらつきを十分に低減することができる。
【0012】
また、請求項3記載の巻線用ボビン、および請求項4記載の巻線部品によれば、鍔部における2つの開放端部の双方に突起部をそれぞれ形成したことにより、各開放端部のいずれか一方にのみ突起部を形成する構成と比較して、巻回領域の鍔部が形成されていない部位における巻崩れの発生や、隣接する各巻回領域の各巻線同士の接触をより少なく抑えることができる結果、巻崩れに起因する巻線部品の特性のばらつき、および隣接する各巻回領域における各巻線同士の接触に起因する寄生容量をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】巻線部品1の平面図である。
図2図1における円C1で囲んだ部分を拡大した巻線部品1の平面図である。
図3】コア2およびボビン3の分解斜視図である。
図4】コア2およびボビン3の平面図である。
図5】ボビン3の斜視図である。
図6図5における円C2で囲んだ部分を拡大したボビン3の斜視図である。
図7図4におけるB−B線断面図である。
図8】ボビン3に巻線4を形成する方法を説明する説明図である。
図9】ボビン103の部分断面図である。
図10】ボビン203の部分断面図である。
図11】ボビン303の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、巻線用ボビンおよび巻線部品の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
最初に、巻線部品の一例としての図1に示す巻線部品1の構成について説明する。巻線部品1は、例えば、導線に流れる電流を非接触(導体非接触)で検出する電流センサに用いられるトロイダルコイルであって、同図および図2に示すように、コア2、ボビン3(巻線用ボビン)および巻線4を備えて構成されている。
【0016】
コア2は、図3に示すように、磁性材料によって円環状(トロイダル形)に形成されている。
【0017】
ボビン3は、図4に示すように、ボビン本体11、および複数(この例では、40個)の仕切部12を備えて構成されている。また、ボビン3は、図3,5,6に示すように、厚み方向の中間部位で2つの部材(第1部材3aおよび第2部材3b)に分割可能に構成されている。つまり、ボビン3は、互いに嵌合可能で同じ厚み(または、ほぼ同じ厚み)にそれぞれ形成された第1部材3aおよび第2部材3bで構成されている。
【0018】
ボビン本体11は、例えば樹脂等の絶縁性を有する材料によって形成され、図4に示すように、コア2を収容可能な円環状に構成されている。また、ボビン本体11は、図7に示すように、断面が矩形の枠状に形成され、内部にコア2を収容する収容部11eが設けられている。
【0019】
各仕切部12は、ボビン本体11の表面21を仕切る部材であって、図4に示すように、ボビン本体11の円周方向Aに沿って間隔を空けて(この例では、一定の間隔を空けて(つまり、等間隔で))ボビン本体11の表面21に設けられている。また、各仕切部12は、図6,7に示すように、ボビン本体11の表面21から突出するようにそれぞれ形成されている。具体的には、仕切部12は、図7に示すように、鍔部31および突起部32a,32b(以下、突起部32a,32bを区別しないときには「突起部32」ともいう)を備えて構成されている。
【0020】
この場合、鍔部31は、図7に示すように、ボビン本体11における外周部11a、内周部11b、および側部11c,11dのうちの、内周部11bを除く外周部11a、および側部11c,11dの3つの部位の表面21から垂直に突出する平面視(図4に示す円周方向Aで見た状態)コ字状の板体で形成されている。つまり、ボビン本体11における内周部11bの表面21は、鍔部31が形成されていない非形成部位となっている。
【0021】
また、突起部32a,32bは、図7に示すように、鍔部31における2つの開放端部(同図における右側の端部)からボビン3の中心部に向かう向き(同図における右向き)に突出するようにそれぞれ形成されている。
【0022】
このボビン3では、ボビン本体11の表面21から突出する各仕切部12が設けられているため、図2,6に示すように、各仕切部12によって等間隔で仕切られた複数(この例では40個)の巻回領域F(後述するように、導線50が巻回される領域)が表面21に設けられている。
【0023】
巻線4は、上記した各巻回領域Fに導線50を巻回することによって形成される。なお、1つの巻回領域Fに巻回される各巻線(巻線4を構成する各構成要素)を単位巻線4a(図2参照)ともいう。また、各単位巻線4aは、一例として同じターン数で形成されているが、異なるターン数で形成されていてもよい。また、各単位巻線4aは、単層に形成されていても良いし、コア2の表面21からの厚みが仕切部12の高さ未満となる範囲で多層に形成されていてもよい。
【0024】
この場合、この巻線部品1では、上記したように、ボビン本体11における内周部11bの表面21が鍔部31の非形成部位となっている。このため、1つの巻回領域Fに単位巻線4aを形成した後に、隣接する次の巻回領域Fに単位巻線4aを形成するときには、鍔部31の非形成部位である内周部11bの表面21を横切るように導線50を巻回することで、仕切部12を乗り越えて導線50が巻回されることがなく、この結果、仕切部12を乗り越えることによって導線50にストレスを与える事態が確実に防止される。
【0025】
次に、巻線部品1の組み立て方法の一例について、図面を参照して説明する。
【0026】
まず、図3に示すように、ボビン3を構成する第1部材3a(ボビン本体11の半体)内にコア2を挿入し、次いで、ボビン3を構成する第2部材3bでコア2を覆うようにして、第2部材3bを第1部材3aに嵌合させる。これにより、コア2がボビン3におけるボビン本体11の収容部11e(図7参照)に収容される。なお、以下の説明において、コア2がボビン3に収容された状態のコア2およびボビン3を「巻線部品本体10(図8参照)」ともいう。
【0027】
続いて、巻線4を形成する。この場合、手作業で巻線4を形成することもできるが、トロイダルコイル巻線機60を用いて巻線4を形成する例について説明する。
【0028】
この種のトロイダルコイル巻線機60は、図8に示すように、ボビン3の外周部(この例では、図7に示す板体41の先端部)と接触して巻線部品本体10を中心Oを中心として回転させる複数(例えば、4個)のローラ61と、環状に形成されると共に導線50を保持可能に構成されて、巻線部品本体10に交差するように配置された状態で回転することによって導線50を巻線部品本体10に巻回するシャトルリング62と、各ローラ61の回転、およびシャトルリング62の回転を制御する図外の制御部とを備えている。
【0029】
上記したトロイダルコイル巻線機60を用いて巻線4を形成する際には、図8に示すように、ローラ61がボビン3の外周部に接触するように巻線部品本体10をセットし、次いで、トロイダルコイル巻線機60を起動する。続いて、制御部が、ローラ61およびシャトルリング62に回転を開始させる。これにより、導線50の巻線部品本体10への導線50の巻回が開始される。
【0030】
この場合、制御部は、ボビン3における1つの巻回領域F(図2,5参照)に導線50を予め決められたターン数だけ巻回させて単位巻線4aが形成されたときに、ボビン本体11における内周部11bの表面21(鍔部31の非形成部位:図7参照)を導線50が横切って隣接する次の巻回領域Fに移行するようにローラ61およびシャトルリング62の回転を制御する。このように、鍔部31の非形成部位を横切らせて導線50を隣接する次の巻回領域Fに移行させることで、仕切部12を乗り越えて導線50が巻回されることによって導線50にストレスを与える事態が確実に防止される。
【0031】
また、このボビン3では、ボビン本体11の外周部11aおよび側部11c,11dの3つの部位の表面21から垂直に突出する平面視コ字状の板体で仕切部12の鍔部31が形成されているため、外周部11aの表面21にのみ仕切部12が形成されている従来の構成と比較して、巻線部品1の特性のばらつきの発生要因となる導線50の巻崩れの発生が少なく抑えられている。
【0032】
また、このボビン3では、鍔部31における2つの開放端部41a,41bから突出するように突起部32a,32bが形成されている。このため、このボビン3では、鍔部31が形成されていない巻回領域Fの内周部11bにおいても隣接する他の巻回領域Fへの導線50のはみ出しが少なく抑えられる結果、巻回領域Fの内周部11bにおいても、巻崩れの発生を少なく抑えることが可能となっている。
【0033】
また、このボビン3では、鍔部31における開放端部41a,41bの双方に突起部32a,32bがそれぞれ形成されているため、開放端部41a,41bのいずれか一方にのみ突起部32が形成されている構成と比較して、巻回領域Fの内周部11bにおける巻崩れの発生をより少なく抑えることが可能となっている。
【0034】
また、このボビン3では、ボビン本体11における外周部11aおよび側部11c,11d(内周部11bを除く3つの部位)の表面21から垂直に突出する平面視コ字状の板体で鍔部31が形成されている。つまり、内周部11bの表面21が、鍔部31の非形成部位となっている。ここで、ボビン本体11における内周部11bの表面21の周長(一周の長さ)は、外周部11aの表面21の周長よりも短いため、各巻回領域Fにおける内周部11bの表面21の長さは、外周部11aの表面21の長さや側部11c,11dの表面21の長さよりも短くなっている。このため、巻回領域Fに巻回する導線50の巻回数が多いときには、巻回領域Fの内周部11bにおいて導線50同士が重なり合う「巻太り」が発生し易くなっている。また、この巻太りが、巻線部品1の特性のばらつきの発生要因となる。この場合、ボビン本体11の内周部11bに鍔部31が形成されている構成では、鍔部31の厚み分だけ巻回領域Fにおける内周部11bの長さが短くなるため、その分、巻太りがさらに発生し易くなり、巻太りに起因する巻線部品1の特性のばらつきも発生し易くなる。これに対して、このボビン3では、内周部11bが鍔部31の非形成部位となっているため、内周部11bに鍔部31が形成されている構成と比較して、巻太りの発生を少なく抑えることができる結果、巻太りに起因する巻線部品1の特性のばらつきの発生を少なく抑えることが可能となっている。
【0035】
次いで、全ての巻回領域Fに単位巻線4aが形成されたときには、制御部は、ローラ61およびシャトルリング62を停止させる。これにより、各単位巻線4aで構成された巻線4が巻線部品本体10に形成されて、巻線部品1が完成する。続いて、巻線部品1(巻線4が形成された巻線部品本体10)をトロイダルコイル巻線機60から取り外す。以上により巻線部品1の組み立てが完了する。
【0036】
このように、このボビン3および巻線部品1によれば、ボビン本体11における外周部11aおよび側部11c,11d(3つの部位)の表面21から突出するコ字状の板体で形成された鍔部31を備えて各仕切部12をそれぞれ構成したことにより、外周部11aの表面21にのみ仕切部12が形成されている従来の構成と比較して、巻線部品1の特性のばらつきの発生要因となる導線50の巻崩れの発生や、寄生容量の発生要因となる隣接する各巻回領域Fにおける各単位巻線4a同士の接触を少なく抑えることができる。また、このボビン3および巻線部品1によれば、鍔部31における2つの開放端部41a,41bの少なくとも一方(本例では、開放端部41a,41bの双方)から突出するようにそれぞれ形成された突起部32a,32bを備えて各仕切部12をそれぞれ構成したことにより、鍔部31が形成されていない巻回領域Fの内周部11bにおいても隣接する他の巻回領域Fへの導線50のはみ出しを少なく抑えることができる結果、巻回領域Fの内周部11bにおいても、巻崩れの発生や隣接する各巻回領域Fにおける各単位巻線4a同士の接触を少なく抑えることができる。したがって、このボビン3および巻線部品1によれば、巻崩れに起因する巻線部品1の特性のばらつき、および隣接する各巻回領域Fにおける各単位巻線4a同士の接触に起因する寄生容量を十分に低減することができる。
【0037】
また、このボビン3および巻線部品1では、ボビン本体11における内周部11bを除く外周部11aおよび側部11c,11dの表面21から突出するコ字状の板体で鍔部31が形成されている。つまり、内周部11bの表面21が鍔部31の非形成部位となっている。この場合、巻回領域Fにおける外周部11aの表面21の長さや側部11c,11dの表面21の長さよりも表面21の長さが短い内周部11bに鍔部31が形成されている構成では、巻回領域Fにおける内周部11bの表面21の長さがさらに短くなることによって特性のばらつきの発生要因となる「巻太り」が発生し易くなる。これに対して、このボビン3および巻線部品1によれば、内周部11bの表面21を鍔部31の非形成部位としたことにより、内周部11bに鍔部31が形成されている構成と比較して、巻太りの発生を少なく抑えることができる結果、巻太りに起因する巻線部品1の特性のばらつきを十分に低減することができる。
【0038】
また、このボビン3および巻線部品1によれば、鍔部31における2つの開放端部41a,41bの双方に突起部32a,32bをそれぞれ形成したことにより、開放端部41a,41bのいずれか一方にのみ突起部32を形成する構成と比較して、巻回領域Fの内周部11bにおける巻崩れの発生をより少なく抑えることができる結果、巻崩れに起因する巻線部品1の特性のばらつきをさらに低減することができる。
【0039】
なお、図9に示すボビン103、およびこのボビン103を備えた巻線部品1を採用することもできる。以下、上記したボビン3と同様の構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。このボビン103は、同図に示すように、上記した仕切部12に代えて、仕切部112を備えて構成されている。この仕切部112は、同図に示すように、鍔部131および突起部132a,132bを備えて構成されている。
【0040】
鍔部131は、図9に示すように、ボビン本体11における外周部11a、内周部11b、および側部11c,11dのうちの、外周部11aを除く側部11c,11dおよび内周部11bの3つの部位の表面21から垂直に突出する平面視コ字状の板体で形成されている。つまり、ボビン本体11における外周部11aの表面21は、鍔部131が形成されていない非形成部位となっている。
【0041】
また、突起部132a,132bは、図9に示すように、鍔部131における2つの開放端部141a,141bの少なくとも一方(本例では、開放端部141a,141bの双方)からボビン103の中心部に向かう向きとは逆向き(同図における左向き)に突出するようにそれぞれ形成されている。
【0042】
このボビン103においても、ボビン本体11における側部11c,11dおよび内周部11b(3つの部位)の表面21から突出するコ字状の板体で形成された鍔部131と、鍔部131における2つの開放端部141a,141bの少なくとも一方(本例では、開放端部141a,141bの双方)から突出するようにそれぞれ形成された突起部132a,132bとを備えて各仕切部112を構成したことにより、巻崩れの発生を少なく抑えることができるため、巻崩れに起因する巻線部品1の特性のばらつき、および隣接する各巻回領域Fにおける各単位巻線4a同士の接触に起因する寄生容量を十分に低減することができる。
【0043】
また、図10に示すボビン203、およびこのボビン203を備えた巻線部品1を採用することもできる。なお、以下の説明において、上記したボビン3と同様の構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。このボビン203は、同図に示すように、上記した仕切部12に代えて、仕切部212を備えて構成されている。この仕切部212は、同図に示すように、鍔部231および突起部232a,232bを備えて構成されている。
【0044】
鍔部231は、図10に示すように、ボビン本体11における外周部11a、内周部11b、および側部11c,11dのうちの、側部11dを除く外周部11a、内周部11bおよび側部11cの3つの部位の表面21から垂直に突出する平面視コ字状の板体で形成されている。つまり、ボビン本体11における側部11dの表面21は、鍔部231が形成されていない非形成部位となっている。
【0045】
また、突起部232a,232bは、図10に示すように、鍔部231における2つの開放端部241a,241bの少なくとも一方(本例では、開放端部241a,241bの双方)から同図における上方に突出するようにそれぞれ形成されている。
【0046】
このボビン203においても、ボビン本体11における外周部11a、内周部11bおよび側部11c(3つの部位)の表面21から突出するコ字状の板体で形成された鍔部231と、鍔部231における2つの開放端部241a,241bの少なくとも一方(本例では、開放端部241a,241bの双方)から突出するようにそれぞれ形成された突起部232a,232bとを備えて各仕切部212を構成したことにより、巻崩れに起因する巻線部品1の特性のばらつき、および隣接する各巻回領域Fにおける各単位巻線4a同士の接触に起因する寄生容量を十分に低減することができる。
【0047】
また、図11に示すボビン303、およびこのボビン303を備えた巻線部品1を採用することもできる。なお、以下の説明において、上記したボビン3と同様の構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。このボビン303は、同図に示すように、上記した仕切部12に代えて、仕切部312を備えて構成されている。この仕切部312は、同図に示すように、鍔部331および突起部332a,332bを備えて構成されている。
【0048】
鍔部331は、図11に示すように、ボビン本体11における外周部11a、内周部11b、および側部11c,11dのうちの、側部11cを除く外周部11a、内周部11bおよび側部11dの3つの部位の表面21から垂直に突出する平面視コ字状の板体で形成されている。つまり、ボビン本体11における側部11cの表面21は、鍔部331が形成されていない非形成部位となっている。
【0049】
また、突起部332a,332bは、図11に示すように、鍔部331における2つの開放端部341a,341bの少なくとも一方(本例では、開放端部341a,341bの双方)から同図における下方に突出するようにそれぞれ形成されている。
【0050】
このボビン303においても、ボビン本体11における外周部11a、内周部11bおよび側部11d(3つの部位)の表面21から突出するコ字状の板体で形成された鍔部331と、鍔部331における2つの開放端部341a,341bの少なくとも一方(本例では、開放端部341a,341bの双方)から突出するようにそれぞれ形成された突起部332a,332bとを備えて各仕切部312を構成したことにより、巻崩れの発生を少なく抑えることができるため、巻崩れに起因する巻線部品1の特性のばらつき、および隣接する各巻回領域Fにおける各単位巻線4a同士の接触に起因する寄生容量を十分に低減することができる。
【0051】
また、鍔部におけるの2つの開放端部の双方に突起部をそれぞれ形成した例について上記したが、2つの開放端部のいずれか一方にのみ突起部を形成する構成を採用することもできる。
【0052】
また、図1に示すように、全ての巻回領域Fに巻線4を形成した巻線部品1を例に挙げて説明したが、一部の巻回領域Fにのみ巻線4を形成する構成を採用することもできる。
【0053】
また、同じ厚み(または、ほぼ同じ厚み)にそれぞれ形成された第1部材3aおよび第2部材3bでボビン3を構成した例について上記したが、互いに異なる厚みにそれぞれ形成した第1部材3aおよび第2部材3bでボビン3を構成することもできる。また、3つ以上の部材でボビン3を構成することもできる。
【0054】
また、例えば、電流センサに用いられるトロイダルコイルとしての巻線部品1に適用した例について上記したが、例えば、電気的に接続されていない複数の巻線4を巻線部品本体10に形成して構成したトランスとして機能する巻線部品に適用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 巻線部品
2 コア
3,103,203,303 ボビン
4 巻線
11 ボビン本体
12,112,212,312 仕切部
F 巻回領域
11a 外周部
11b 内周部
11c,11d 側部
21 表面
31,131,231,331 鍔部
32a,132a,232a,332a, 突起部
32b,132b,232b,332b 突起部
41,42a,42b,43 板体
50 導線
図1
図2
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図10
図11