(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視での前記吸収体における排泄部対向部の中心部を中心とした直径55mmの仮想円内に配置された第二領域の面積の総和が、該仮想円内の面積に対して3%以上65%以下である請求項1ないし5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の吸収性物品は一般に、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する長手方向とこれに直交する幅方向とを有する縦長の形状をしている。そして吸収性物品は、着用者の股間部に配される股下部並びにその前後に延在する腹側部及び背側部を有する。股下部は、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、吸収性物品の長手方向の中央部又はその近傍に位置している。
【0010】
吸収性物品は一般に、着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、非肌対向面側に位置する裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収体とを備える。表面シートとしては、液透過性を有するシート、例えば不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シートは、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シートの肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シートの肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シートを形成することもできる。
【0011】
一方、裏面シートとしては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シートの外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0012】
上述の表面シート、裏面シート及び吸収体に加え、吸収性物品の具体的な用途に応じ、肌対向面側の長手方向に沿う両側部に、長手方向に沿って延びる防漏カフが配される場合がある。防漏カフは一般に、基端部と自由端とを備えている。防漏カフは、吸収性物品の肌対向面側に基端部を有し、肌対向面側から起立している。防漏カフは、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。防漏カフの自由端又はその近傍には、糸ゴム等からなる弾性部材を伸長状態で配してもよい。吸収性物品の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフが着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート上に排泄された液が、表面シート上を伝い吸収性物品の幅方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
【0013】
吸収性物品は更に、非肌対向面の表面に粘着剤層を有していてもよい。粘着剤層は、吸収性物品の着用状態において、該吸収性物品を、下着や別の吸収性物品に固定するために用いられる。
【0014】
吸収性物品の吸収体は、液を吸収する第一領域と、第一領域とは異なる第二領域とを備えている。液を吸収する第一領域としては、例えば吸収部を用いることができる。第一領域とは異なる第二領域としては、厚み維持部を用いることができる。つまり吸収体は、吸収部及び厚み維持部を備えることができる。吸収部は、吸収体において主として液を吸収する部位である。一方、厚み維持部は、液を吸収する前及び液を吸収した後の状態において、吸収体の厚みを維持する部位である。吸収体の厚みとは、液の吸収の前後を問わず、吸収体の厚みのうち、最も厚い部位における当該厚みのことである。液の吸収前の状態においては、最も厚い部位は一般に、吸収部又は厚み維持部のいずれかに存在する。液の吸収後の状態においては、最も厚い部位は一般に、厚み維持部に存在する。
【0015】
厚み維持部は、吸収体の平面視において該吸収体の表面の少なくとも一部に露出するように配置されている。好ましくは吸収体の肌対向面側の表面の少なくとも一部に露出するように配置されている。厚み維持部の配置態様としては、例えば複数の厚み維持部が、吸収体の平面視において分散配置されている態様が挙げられる。吸収体に生理食塩水を飽和吸収させた状態において、吸収体から取り出した厚み維持部は、4g/cm
2の圧力を加えたとき、該厚み維持部の厚みT
wが、同じく飽和吸収状態での吸収部T
aの厚み以上となるような厚みの維持性を有している。特に、T
wとT
aの差が0.5mm以上、特に5mm以上大きいことが好ましい。つまり、厚み維持部はその乾燥状態よりも、湿潤状態の方が、厚みが大きくなる素材から構成されていることが好ましい。厚み維持部がこのような厚みの維持性を有していることによって、吸収体が液を吸収した状態において、吸収性物品に着用者の体圧が加わっても、吸収体の圧縮が厚み維持部によって阻止される。その結果、吸収体と着用者との間に空隙が生じ、この空隙によって吸収体からの液の逆戻りが起こりにくくなる。なお、生理食塩水を飽和吸収させた状態における厚み維持部の厚みT
wは、乾燥状態の吸収体から厚み維持部を取り出し、これを飽和吸収させた後に厚みを測定してもよく、あるいは、吸収体を生理食塩水で飽和吸収させた後に、該吸収体から厚み維持部を取り出して厚みを測定してもよい。
【0016】
以上は、吸収体が液を吸収した状態における厚み維持部の厚みと吸収部の厚みとの関係であったところ、液を吸収する前の乾燥状態においては、吸収体は、該吸収体に4g/cm
2の荷重を加えた状態下において、厚み維持部の厚みT
dが、吸収部の厚みと同じか又はそれよりも小さいものであることが、厚み維持部に起因する装着違和感が生じにくくなる点から好ましい。
【0017】
吸収体からの液の逆戻りを一層起こりづらくする観点から、厚み維持部は、吸収体が液を吸収した後の状態において該厚み維持部の厚みT
wが、吸収体が液を吸収する前の状態における該厚み維持部の厚みT
dと同じであるか、又はそれよりも大きくなることが好ましい。例えば吸収体に生理食塩水を飽和状態まで吸収させた状態において、4g/cm
2の圧力を該吸収体に加えたとき、該厚み維持部の厚みT
wが、吸収体が液を吸収する前の状態における該厚み維持部の厚みT
d以上であることが好ましい。具体的には、T
wがT
dに対して1.1倍以上、特に3倍以上、とりわけ5倍以上となることが好ましい。
【0018】
厚み維持部の構成材料としては、上述したとおりの厚み維持性を有するものが用いられる。厚み維持部は吸収体の一部を構成する部材であることから、厚み維持部は親水性であって、液の吸収性を有することも好ましい。親水性の程度は、25℃における水との接触角で表して、好ましくは80度以下、更に好ましくは65度以下、一層好ましくは45度以下である。水との接触角は、液を滴下する様子をマイクロスコープで撮影し、着滴直後の画像から測定する。
【0019】
以上の観点から、厚み維持部は、湿潤状態での吸収体の厚みを維持し得る限りにおいて様々な材料から構成することができる。例えば厚み維持部は繊維集合体から構成されているか、三次元的な骨格構造を有する素材から構成されているか、又は親水性ゴムから構成されていることが好ましい。また、一つの第二領域、すなわち一つの厚み維持部は、例えば粒状の構成部材が複数集合したような構造物ではなく、単一の構造物から構成されていることが好ましい。三次元的な骨格構造を有する素材としては、例えばスポンジ(セルローススポンジ、ウレタンスポンジ、メラミンスポンジ、ポリエチレンスポンジ、ポリビニルアルコールスポンジ、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂スポンジ、ゴムスポンジ、海綿)、不織布(エアスルー不織布、エアレイド不織布)などが挙げられる。三次元的な骨格構造を有する素材は、その空隙率が高いほど、液を吸収し得る空間が多くなるので好ましい。一方、厚み維持性の観点からは空隙率は低い方が望ましい。これら両者のバランスを考慮すると、三次元的な骨格構造を有する素材は、その空隙率が70%以上99%以下であることが好ましい。
【0020】
第二領域である厚み維持部を構成する繊維集合体や三次元的な骨格構造を有する素材は、液の吸収性を高める観点からは、親水性材料であるか、又は表面が親水化処理された材料であることが好ましい。そのような材料としては、例えば親水的な物質としてはセルロース、メラミン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。
【0021】
以上のことを勘案すると、厚み維持部の構成材料としては、例えばセルロースからなるスポンジ、メラミンからなるスポンジ、ポリビニルアルコールからなるスポンジ、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなるスポンジを用いることが好ましい。特に、セルロースからなるスポンジは、その乾燥状態で圧縮すると、圧縮状態での厚みが維持されやすいので薄型化が可能であり、且つその圧縮状態から液を吸収すると、圧縮状態が解放されて圧縮前の状態又はそれに近い状態にまで厚みが回復するので、厚み維持部として好ましい材料である。しかもセルロースからなるスポンジは、それ自身が親水性を有しており、スポンジの気泡中に液を大量に且つ安定して保持することが可能なので、この点においても厚み維持部として好ましい材料である。セルロースからなるスポンジは、自重に対して20〜30倍の質量の水の吸収容量を有することが、吸収体の液の吸収容量を高める観点から好ましい。
【0022】
セルロースからなるスポンジとしては、厚み方向に向けて圧縮加工したものを用いることが好ましい。圧縮加工した該スポンジは、液の吸収によって膨潤し、その厚みが容易に増大する。特に一方向にのみ圧縮加工した該スポンジは、液の吸収によって該一方向に沿って特異的に厚みが増大する。したがって、圧縮方向を吸収体の厚み方向に一致させて該スポンジを吸収体に配置することで、該吸収体が液を吸収したときに吸収部と厚み維持部との間に生じる段差を確実に大きくすることができる。
【0023】
セルロースからなるスポンジとしては、例えば市販品を用いることもできる。そのような市販品としては例えば東レ・ファインケミカル株式会社から入手可能な「セルローススポンジ」が挙げられる。
【0024】
厚み維持部は、好ましくは吸収体の肌対向面側の表面の少なくとも一部に露出するように配置されているところ、吸収体の肌対向面に対する厚み維持部が露出している面積の比率は、3%以上であることが好ましく、5%以上であることが更に好ましく、10%以上であることが一層好ましい。またこの比率は、65%以下であることが好ましく、50%以下であることが更に好ましく、30%以下であることが一層好ましい。例えば、吸収体の肌対向面に対する厚み維持部が露出している面積の比率は、3%以上65%以下であることが好ましく、5%以上50%以下であることが更に好ましく、10%以上30%以下であることが一層好ましい。吸収体の肌対向面に対する厚み維持部の露出面積の比率がこの範囲内であることによって、吸収体は柔軟性及び液の吸収容量が満足すべきレベルを維持しつつ、液の逆戻りが効果的に防止される。
【0025】
厚み維持部とともに吸収体の一部を構成する吸収部としては、液の吸収保持が可能な材料として当該技術分野においてこれまで用いられている材料を特に制限なく用いることができる。そのような材料としては、例えばフラッフパルプ、親水性の不織布などの繊維集合体が挙げられる。吸収部は、当該技術分野において公知の吸収性ポリマーを含んでいてもよい。
【0026】
特に、吸収体を薄型化して吸収性物品の装着感を高める観点からは、吸収した液を面方向に沿って拡散させやすい材料を吸収体として用いることが好ましい。そのような材料を用いることで、吸収体の平面視における単位面積当たりの液の吸収量が少なくなり、薄くて柔軟な吸収体を容易に得ることができる。そのような材料としては、微細繊維を構成繊維とする不織布、親水化剤を内添した樹脂の繊維からなるスパンボンド不織布等の不織布、親水化剤を外添した繊維からなるスパンボンド不織布等の不織布などが挙げられる。特に、微細繊維を構成繊維とする不織布を用いると、毛管力に起因する面方向に沿った液の拡散が一層促進され、吸収体の平面視における単位面積当たりの液の吸収量が一層少なくなり、吸収体のドライ感が増すので好ましい。また、かかる不織布は、微細繊維に起因する柔軟性が高いので、この点からも好ましい。
【0027】
吸収した液を面方向に沿って拡散させやすくする観点から、吸収部は、疑似血液を吸収させてから5分経過後のクレム法(JIS P8141)による吸収高さが30mm以上であることが好ましく、40mm以上であることが更に好ましく、45mm以上であることが一層好ましい。疑似血液は、株式会社日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を8.0cP(25℃)に調整したものである。粘度は、東機産業株式会社のTVB10形粘度計にて、30rpmの条件下で調整する。具体的には、馬脱繊維血液は、放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。その部分の混合比率を、8.0cP(25℃)になるように調整する。
【0028】
ところで、微細繊維を構成繊維とする不織布は、面方向に沿った液の拡散性が高い材料ではあるものの、一旦吸収した液を安定的に保持することが容易でないため、該不織布に圧力が加わると液が逆戻りしやすい傾向にある。しかし、該不織布を上述した厚み維持部と併用することで、液が保持された第一領域である吸収部と、吸収性物品の表面との間を、第二領域である厚み保持部が柱になることによって離間させることができ、この離間によって液戻りする流路が断たれる。すなわち、液の高拡散性と液の逆戻り防止性とを両立させることができる。
【0029】
微細繊維を構成繊維とする不織布における該微細繊維は、その太さを繊維直径で表すと、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、2μm以上であることが一層好ましく、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが一層好ましい。この範囲の繊維直径の繊維から不織布を構成することで、該不織布は面方向に沿った液の拡散性が高いものとなる。このような繊維直径の不織布としては例えば、外力を作用させたり、溶剤によって溶解させたりして、1本の繊維を複数本の繊維に分割することが可能になっている、いわゆる分割繊維を原料とする不織布が挙げられる。
【0030】
図1及び
図2には、吸収性物品における吸収体の一実施形態が示されている。吸収体10は、長手方向Xとこれに直交する幅方向Yとを有する縦長の形状をしている。吸収体10は、連続体からなる一つの吸収部11と、該吸収部11内に分散配置された複数の厚み維持部12とから構成されている。吸収部11は、吸収体10の外形をなしている。吸収部11には複数の貫通孔が該吸収部11の面方向の全域にわたって散点状に形成されている。各貫通孔内には厚み維持部12が配置されている。貫通孔の形状と厚み維持部12の形状とは略相補形状になっており、各厚み維持部12は各貫通孔内に嵌合した状態になっている。したがって厚み維持部12は、複数の厚み維持部12が、吸収体10の平面視において分散配置された状態になっている。
【0031】
任意の厚み維持部12に着目した場合、該厚み維持部12と最近接で隣り合う厚み維持部の間の距離は3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることが更に好ましく、7mm以上であることが一層好ましい。また、最近接距離は、20mm以下であることが好ましく、18mm以下であることが更に好ましく、16mm以下であることが一層好ましい。このような距離関係で厚み維持部が配置されていることで、柱として機能する第二領域の間で、吸収性物品の表面材等が垂れて第一領域と接することを防止でき、液の逆戻りを効果的に防止することができる。
【0032】
また、平面視での吸収体10における排泄部対向部の中心部を中心とした直径55mmの仮想円内に配置された厚み維持部12の面積の総和が、直径55mmの仮想円の面積に対して3%以上であることが好ましく、5%以上であることが更に好ましく、10%以上であることが一層好ましい。この比率は、吸収体の柔軟性を担保する観点から、65%以下であることが好ましく、50%以下であることが更に好ましく、35%以下であることが一層好ましい。この下限以上の範囲で厚み維持部12が配置されていることで、排泄液を直接に受け、多量の液を保持するため特に液戻りが生じやすい部位である排泄部対向部において、体圧がかかっても複数の柱(第二領域)で支えることができ、液の逆戻りを効果的に防止することができる。なお、排泄部対向部の中心部とは、一般に、吸収体10の長手方向Xの中央部であって、且つ幅方向Yの中央部の位置である。
【0033】
各厚み維持部12は、吸収体10の吸収体の幅方向Yにわたり間欠的に配置され、且つ長手方向Xにわたり間欠的に配置されている。幅方向Yに沿って見たとき、隣り合う厚み維持部12の間隔は同一になっているか、又は異なっている。長手方向Xに沿って見たとき、隣り合う厚み維持部12の間隔も同一になっているか、又は異なっている。また、幅方向Yに沿って隣り合う厚み維持部12の間隔と、長手方向Xに沿って隣り合う厚み維持部12の間隔とは、同一になっているか、又は異なっている。
【0034】
各厚み維持部12はいずれも同形をしており、且つ同寸法を有している。尤も、各厚み維持部12の形状は互いに異なっていてもよく、また寸法も異なっていてもよい。各厚み維持部12は、平面視して円形をしているが、この形状に限られず、他の形状を有していることは妨げられない。
【0035】
吸収体10が液を吸収する前の状態において、厚み維持部12の厚みと吸収部11の厚みとは略同一になっている。したがって、厚み維持部12の表面と、吸収部11の表面とは面一の関係になっている。両者がこのような関係になっていることで、吸収性物品を装着したときの違和感が生じづらくなっている。この関係に代えて、厚み維持部12の厚みの方が、吸収部11の厚みよりも小さくなっていてもよい。
【0036】
図1及び
図2に示す実施形態の吸収体10が液を吸収した後の状態が、
図3及び
図4に示されている。これらの図に示すとおり、吸収体10が液を吸収すると、吸収部11の厚みに大きな変化がないのに対して、厚み維持部12はその厚みが大きく増大している。その結果、上述のように、液を吸収した状態の吸収体においては、吸収部11の表面と、厚み維持部12の表面との間に段差が生じる。したがって、吸収性物品の装着状態においては、着用者の身体と吸収部11との間に該段差に相当する分の空隙が生じる。この空隙によって、着用者の身体は吸収部11から離間されるので、着用者の体圧が吸収性物品に加わっても、吸収部11に保持されている液が逆戻りすることが効果的に防止される。
【0037】
なお、
図4においては、液の吸収によって厚み維持部12の厚みが増大して吸収部11における肌対向面11a及び非肌対向面11bの双方から突出している状態が示されているが、厚み維持部12及び吸収部11の材質や厚み維持部12の形状によっては、厚み維持部12は吸収部11における肌対向面11aのみから突出し、非肌対向面11bにおいては、厚み維持部12の表面と吸収部11の表面とは面一の関係になっている場合もある。
【0038】
図5には、別の実施形態の吸収体10が示されている。本実施形態の吸収体10では、吸収部11に形成された貫通孔のサイズが厚み維持部12のサイズよりも大きいことに起因して、厚み維持部12と吸収部11の間に空隙13が存在している。この空隙13の存在に起因して、本実施形態の吸収体10によれば、該吸収体10が液を吸収した場合、厚み維持部12の膨潤が吸収部11によって阻害されにくくなり、該厚み維持部12の厚みの増大が確実に行われる。その結果、吸収部11の表面と、厚み維持部12の表面との間に確実に段差が生じ、着用者の体圧が吸収性物品に加わっても、吸収部11に保持されている液が逆戻りすることが一層効果的に防止される。
【0039】
厚み維持部12と吸収部11の間に形成された空隙13は、厚み維持部12の全周にわたって存在していることが、厚み維持部12の膨潤が阻害されにくくなる点から好ましいが、厚み維持部12の一部において吸収部11との間に空隙が存在していなくてもよい。
【0040】
本発明は、当該技術分野においてこれまで知られている吸収性物品に適用することができる。例えば展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナ及び補助パッドなどに本発明を適用することができる。
【0041】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の各実施形態においては、吸収部11に貫通孔が設けられており、その貫通孔内に厚み維持部12が配置されていたが、これに代えて吸収部11に有底の凹陥部を形成し、該凹陥部内に厚み維持部12を配置してもよい。
【0042】
また、吸収体10における厚み維持部12の配置箇所は、吸収体10の面方向の全域だけでなく、特定の一部の領域のみ、例えば排泄部対向部のみでもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0044】
〔実施例1〕
吸収性物品の一例として生理用ナプキンを製造した。この生理用ナプキンは、表面シート、裏面シート、及び吸収体を備えたものである。表面シート及び裏面シートとしては、花王株式会社製の生理用ナプキンである「ロリエ(登録商標)スリムガード 長時間しっかり昼用」2016年製から取り出した表面シート及び裏面シートを用いた。吸収体としては、
図1及び
図2に示す構造のものを用いた。吸収体の吸収部としては、ナイロンからなる分割繊維不織布(株式会社ソーアップ製、繊維直径3μm、柔軟処理として3分間手揉み処理)を用いた。この不織布を8cm(幅方向)×16cm(長手方向)にカットし、直径6mmの円形の貫通孔を複数設け、該貫通孔内に、厚み維持部としての圧縮セルローススポンジMA108−1G(東レ・ファインケミカル株式会社製、25℃における水との接触角:45度、空隙率:84%)を嵌合させた。圧縮は60℃、200kg/cm
2、1分間の条件で行った。圧縮前のセルローススポンジの厚みは以下の表1に示すとおりであり、圧縮後の厚みは約1mmになるように設定した。厚み維持部は、吸収体の中央部を中心とする直径55mmの円内に12個均等に配置した。
【0045】
〔実施例2及び3〕
表1に示す条件を採用する以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。本実施例で用いた圧縮セルローススポンジは水との接触角が45度であり、空隙率は76%であった。
【0046】
〔実施例4〕
実施例1において、吸収部に設けた貫通孔の直径を8mmに設定し、厚み維持部の直径よりも大きくして、吸収部と厚み維持部との間に空隙が生じるようにした。それ以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0047】
〔実施例5〕
実施例4において、親水化剤を内添したポリエチレン樹脂の繊維からなるスパンボンド不織布を2枚重ねたものを吸収部として用いた。各スパンボンド不織布の坪量は150g/m
2であった。それ以外は実施例4と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0048】
〔実施例6〕
実施例1において、セルローススポンジを圧縮せずに用いた。また、吸収部として用いた不織布の厚みを表1に示すとおりとした。それ以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。本実施例で用いたセルローススポンジと水との接触角は62度であり、空隙率は96%であった。
【0049】
〔比較例1〕
実施例1において、厚み維持部を用いず吸収部のみを用いて吸収体を得た。それ以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0050】
〔比較例2〕
比較例1において、吸収部として用いた分割繊維の不織布を、手揉み処理しない状態で用いた。それ以外は比較例1と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0051】
〔比較例3〕
比較例1において、吸収部として用いた分割繊維の不織布に代えて、親水化剤を内添したポリエチレン樹脂の繊維からなるスパンボンド不織布を2枚重ねたものを吸収部として用いた。各スパンボンド不織布の坪量は150g/m
2であった。それ以外は実施例4と同様にして生理用ナプキンを得た。
【0052】
〔比較例4〕
比較例1において、吸収部として用いた分割繊維の不織布に代えて、圧縮セルローススポンジMA108−1G(東レ・ファインケミカル株式会社製)を用いた。圧縮は60℃、200kg/cm
2の条件で行った。圧縮前のセルローススポンジの厚みは表1に示すとおりであり、圧縮後の厚みは約1mmになるように設定した。
【0053】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた生理用ナプキンについて、液の拡散面積、液戻り量、吸液後の吸収部と厚み維持部との厚み差、及び柔軟性を以下の方法で測定した。また、実施例及び比較例に用いた厚み維持部の空隙率と水との接触角を以下の方法で測定した。それらの結果を表1に示す。
【0054】
〔液の拡散面積〕
25℃における上述の疑似血液を、実施例及び比較例で得られた生理用ナプキンの肌対向面側における長手方向及び幅方向の中央部に注入した。注入は、表面シート側が鉛直上方を向くようにして水平に置き、底部に直径10mmの注入口が付いた円筒付きアクリル板を重ねて、注入口から3g注入し、3分後に再度3g注入した(合計6g)。次いで円筒付きアクリル板を取り除き、疑似血液の拡散面積を油性マジックで囲い、その内部の面積を算出することで拡散面積とした。
【0055】
〔液戻り量〕
前記の〔液の拡散面積〕の測定後、ナプキンの表面シート上に予め秤量済みのアドバンテック社製の5Aろ紙を10枚重ねて載置した。更に、ナプキンに加わる圧力が40gf/cm
2になるように調整した錘を用いて10秒間加圧を行った。その後、錘を取り外し、加圧後のろ紙の重さを測定して、加圧前後のろ紙の質量差からろ紙に付着した疑似血液の質量を算出して、その値を液戻り量とした。
【0056】
〔吸液後の吸収部と厚み維持部との厚み差(mm)(4g/cm
2荷重下)〕
吸収体から厚み維持部を取り出し、生理食塩水を飽和吸収させた後に、4g/cm
2の荷重をかけて厚み維持部の厚みを測定した。吸収体から厚み維持部を取り出した残りの吸収部に対し、同様に生理食塩水を飽和吸収させた後に、4g/cm
2の荷重をかけて吸収部の厚みを測定した。そして厚み維持部の厚みから吸収部の厚みを差し引いて、厚み差(mm)(4g/cm
2荷重下)を求めた。
【0057】
〔吸液後の吸収部と厚み維持部との厚み差(mm)2分30秒後〕
前記の〔液戻り量〕の測定後、2分30秒後に吸液後の吸収部と厚み維持部との厚み差を測定した。ナプキンの注入部の中央に直径55mmのアルミ製の円板を置き(吸収体に配置したセルローススポンジが全て覆われる状態)、更に錘で調整して荷重が4g/cm
2になる状態にてレーザー変位計で厚み維持部の厚みを測定した。同様に、該吸収体のうちセルローススポンジが配置されていない吸収部の厚みを測定した。その後、測定した4g/cm
2荷重下の厚み維持部と吸収部の厚み差を算出した。
【0058】
〔柔軟性〕
ハンドルオメーターを用いて曲げ剛性を測定し、その値を柔軟性の尺度とした。曲げ剛性は、実施例及び比較例で得られた生理用ナプキンの吸収体のみ(表面シートや裏面シートを含まない状態)を長手方向(MD)に沿って二分する位置、及び幅方向(CD)に沿って二分する位置で測定した。測定は、ハンドルオメーターのプラットホーム間隔は30mmに設定し、吸収体が液を吸収する前の乾燥状態で行った。
【0059】
〔厚み維持部の空隙率評価〕
厚み維持部に用いた部材の空隙率は、部材の重量、見かけ体積(面積×厚み)、比重を用いて以下の式を用いて算出した。見かけ体積に用いた厚みは、部材に0.5g/cm
2荷重がかかるように調整したアルミ板を置き、レーザー変位計で測定した厚みを用いた。
【0060】
【数1】
【0061】
〔厚み維持部の水に対する接触角測定〕
厚み維持部に用いた部材の上からマイクロピペットでイオン交換水20μLを滴下する様子を部材の断面方向からマイクロスコープ(株式会社キーエンス製VHX−900)で動画撮影した。Windows Movie Makerを用いてこの動画から部材に液が着滴した直後の画像を抽出し、画像解析ソフトImageJを用いてその画像から接触角を算出した。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例の生理用ナプキンは、比較例の生理用ナプキンに比べて、柔軟性を維持しつつ、液戻り量が低減されたものであることが判る。