(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907057
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】建築物の囲繞構造体
(51)【国際特許分類】
E04D 3/362 20060101AFI20210708BHJP
E04F 13/12 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
E04D3/362 D
E04F13/12 101M
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-138162(P2017-138162)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-19527(P2019-19527A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押田 博之
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−084668(JP,A)
【文献】
実開平02−098119(JP,U)
【文献】
実開昭49−148717(JP,U)
【文献】
特開平08−184139(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3014906(JP,U)
【文献】
特開2009−174219(JP,A)
【文献】
特開昭61−142243(JP,A)
【文献】
実開昭56−121811(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00−3/40
E04F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の一端に上ハゼを有し、幅方向のもう一端に下ハゼを有する扁平矩形状をなす本体部分を備えた板状体を複数枚用意して、該板状体の上ハゼの内側に、該板状体に隣接配置される別の板状体の下ハゼを位置せしめてそれらを相互に連係させる一方、該板状体の下ハゼを、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの内側に位置せしめてそれらを相互に連係させることにより、該上ハゼと該本体部分とが交互に配列された屋根もしくは外壁を構築する建築物の囲繞構造体であって、
該上ハゼは、該本体部分の外表面よりも外方へ向けて膨出するとともに該本体部分の外表面に沿う外表面を有する天板と、該天板の幅方向の一端に設けられ、該本体部分の幅方向の端縁につながる側板と、該天板の幅方向のもう一端に片持ち支持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の下ハゼに連係可能な鉤状体とを備え、
前記下ハゼは、一端が該本体部分につながる第1の脚部と、該第1の脚部の他端に第1の顎部を介してつながり、その内側に内部空間を区画形成する頭部と、一端が該頭部に第2の顎部を介してつながる第2の脚部と、該第2の脚部の他端につながり、締結手段にて該本体部分を上ハゼとともに建築物の下地材に固定可能な舌片とを備え、
該下ハゼに、該第1の顎部および第2の顎部において固定保持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの鉤状体を、該第1の顎部との間で挟持する挟持体を配設してなる、ことを特徴とする建築物の囲繞構造体。
【請求項2】
前記下ハゼの前記第1の脚部と前記第2の脚部とは、前記頭部の内部空間につながる導入口を形成する配置間隔に保持されていることを特徴とする請求項1に記載した建築物の囲繞構造体。
【請求項3】
前記下ハゼは、その頭部に、前記本体部分の長手方向に沿って伸延する矩形状断面をなす溝部を有する請求項1または2に記載した建築物の囲繞構造体。
【請求項4】
前記挟持体は、前記下ハゼの頭部の外表面に合わさる天井壁部と、該天井壁部の幅方向の端部に垂下保持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの鉤状体を、該第1の顎部と協働して挟持する係止舌片と、前記第2の顎部の外表面に嵌合可能な係止片とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した建築物の囲繞構造体。
【請求項5】
前記挟持体は、前記上ハゼの天板の直下に位置して該上ハゼを支える支持体を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載した建築物の囲繞構造体。
【請求項6】
幅方向の一端に上ハゼを有し、幅方向のもう一端に下ハゼを有する扁平矩形状をなす本体部分を備えた板状体を複数枚用意して、該板状体の上ハゼの内側に、該板状体に隣接配置される別の板状体の下ハゼを位置せしめてそれらを相互に連係させる一方、該板状体の下ハゼを、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの内側に位置せしめてそれらを相互に連係させることにより、該上ハゼと該本体部分とが交互に配列された屋根もしくは外壁を構築する建築物の囲繞構造体であって、
該上ハゼは、該本体部分の外表面よりも外方へ向けて膨出するとともに該本体部分の外表面に沿う外表面を有する天板と、該天板の幅方向の一端に設けられ、該本体部分の幅方向の端縁につながる側板と、該天板の幅方向のもう一端に片持ち支持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の下ハゼに連係可能な鉤状体とを備え、
前記下ハゼは、一端が該本体部分につながる第1の脚部と、該第1の脚部の他端に第1の顎部を介してつながり、その内側に内部空間を区画形成する頭部と、一端が該頭部に第2の顎部を介してつながる第2の脚部と、該第2の脚部の他端につながり、締結手段にて該本体部分を上ハゼとともに建築物の下地材に固定可能な舌片とを備え、
該下ハゼに、該第1の顎部および第2の顎部において固定保持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの鉤状体を、該第1の顎部との間で挟持する挟持体を配設してなり、
前記下ハゼは、その頭部に、前記本体部分の長手方向に沿って伸延する矩形状断面をなす溝部を有し、前記挟持体は、前記下ハゼの頭部の外表面に合わさる天井壁部と、該天井壁部の幅方向の端部に垂下保持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの鉤状体を、該第1の顎部と協働して挟持する係止舌片と、前記第2の顎部の外表面に嵌合可能な係止片とからなり、
前記挟持体の天井壁部に、該溝部に適合可能な凸部と、該凸部の、該溝部への適合姿勢でもって該溝部につながる通路を形成する凹部を設けたことを特徴とする建築物の囲繞構造体。
【請求項7】
前記下ハゼの前記第1の脚部と前記第2の脚部とは、前記頭部の内部空間につながる導入口を形成する配置間隔に保持されていることを特徴とする請求項6に記載した建築物の囲撓構造体。
【請求項8】
前記挟持体は、前記上ハゼの天板の直下に位置して該上ハゼを支える支持体を備えることを特徴とする請求項6または7に記載した建築物の囲撓構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅寸法が所定の比率に設定された隆起部およびこの隆起部につながる平坦部とが桁行方向に沿って交互に配列された屋根あるいは該隆起部および隆起部つながる平坦部が土台側から軒天に向け交互に配列された壁(外壁)等を構築するのに好適な建築物の囲繞構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幅寸法が一定の比率に設定された隆起部およびこれにつながる平坦部が交互に配列された屋根や壁等は、従来、大和葺き風の屋根、壁といわれるものであって、建築物の美観を高めるのに有用な手段の一つとされている。
【0003】
ところで、この種の屋根や壁は、隆起部の内側にバックアップ材を配置して屋根材、壁材を保持する構造になっており、バックアップ材の取り付けに手間がかかる不利があるうえ、該隆起部の内部における通気がバックアップ材によって阻害されやすいことから通常の屋根材、壁材に比較すると結露等の発生により耐久性に劣ることが指摘されている。
【0004】
この点に関する先行技術として、例えば特許文献1には、金属板の高位平坦部の下側に吊子を設け、該高位平坦部の内側に空気の流通路を形成することによって耐久性の改善を図った大和葺き風外囲体が提案されている。しかしながら、上記特許文献1で提案されている外囲体は、以下に述べるような不具合が指摘されており、未だ改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−184139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、かかる外囲体は、高位平坦部の縁部に設けた外側嵌合凹部を、当該金属板に隣接配置される他の金属板の内側嵌合凸部に単に差し込んだ構造からなるものであり金属板相互間の嵌合力が弱く、とくに、金属板の右側部の立ち上がり部については、吊子の係合片を内方向に180度屈曲することによって固着するようになっているため、突風等により金属板が上方へ引き上げられるような負圧が作用した場合に、金属板相互間の嵌合、金属体の立ち上がり部における固着が簡単に解除されてしまうおそれがある。また、外側嵌合凹部の下位水平部は、隣接配置される他の金属板の外表面に常時接触した状態におかれていることから、豪雨時には冠水により雨水等が高位平坦部内へ浸入し易く止水性がよいとはいえない。さらに、内側嵌合凸部は、吊子の2つの上位水平部と協同してその上面で隣の金属板を支持しており、作業者の体重がかかっても容易につぶれることがないとされているものの、該内側嵌合凸部の、下地材に接地する接地幅は上面の幅よりも狭く、該上面が平坦な壁部で形成されていることから、その部位の上方から荷重が付加された場合に内側嵌合凸部が倒れ込んでしまったり、上面の壁部が簡単に凹んでしまうことも懸念されており、隣の金属板を安定的に支持できるとはいえない。
【0007】
本発明の課題は、高い止水性を維持しつつも板状体の連係強度を、安定した支持姿勢のもとで高めることができる建築物の囲繞構造体を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、幅方向の一端に上ハゼを有し、幅方向のもう一端に下ハゼを有する扁平矩形状をなす本体部分を備えた板状体を複数枚用意して、該板状体の上ハゼの内側に、該板状体に隣接配置される別の板状体の下ハゼを位置せしめてそれらを相互に連係させる一方、該板状体の下ハゼを、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの内側に位置せしめてそれらを相互に連係させることにより、該上ハゼと該本体部分とが交互に配列された屋根もしくは外壁を構築する建築物の囲繞構造体であって、
該上ハゼは、該本体部分の外表面よりも外方へ向けて膨出するとともに該本体部分の外表面に沿う外表面を有する天板と、該天板の幅方向の一端に設けられ、該本体部分の幅方向の端縁につながる側板と、該天板の幅方向のもう一端に片持ち支持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の下ハゼに連係可能な鉤状体とを備え、
前記下ハゼは、一端が該本体部分につながる第1の脚部と、該第1の脚部の他端に第1の顎部を介してつながり、その内側に内部空間を区画形成する頭部と、一端が該頭部に第2の顎部を介してつながる第2の脚部と、該第2の脚部の他端につながり、締結手段にて該本体部分を上ハゼとともに建築物の下地材に固定可能な舌片とを備え、
該下ハゼに、該第1の顎部および第2の顎部において固定保持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの鉤状体を、該第1の顎部との間で挟持する挟持体を配設してなる、ことを特徴とする建築物の囲繞構造体である。
【0009】
上記の構成からなる建築物の囲繞構造体において、下ハゼの第1の脚部と第2の脚部とは、頭部の内部空間につながる導入口を形成する配置間隔に保持されていることが好ましい。
【0010】
また、下ハゼは、その頭部に、本体部分の長手方向に沿って伸延する矩形状(長方形状)断面をなす溝部を有すること、また、挟持体は、下ハゼの頭部の外表面に合わさる天井壁部と、該天井壁部の幅方向の端部に垂下保持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの端縁部を、該第1の顎部と協働して挟持する係止舌片と、第2の顎部の外表面に嵌合可能な係止片とを備えたもので構成すること、また、天井壁部には、溝部に適合可能な凸部と、該凸部の、該溝部への適合姿勢でもって該溝部につながる通路を形成する凹部を有することが好ましく、さらに、挟持体には、上ハゼの天板の直下に位置して該上ハゼを支える支持体を備えるのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の建築物の囲繞構造体によれば、上ハゼの内側には、下ハゼと該下ハゼに嵌合する挟持体(吊子を含む)が位置するのみであり、空気の流通路を確保することが可能であり、湿気がこもることによる囲繞構造体の耐久性の劣化を回避することができる。
【0012】
また、本発明の建築物の囲繞構造体によれば、上ハゼの端縁部に設けられた鉤状体を、隣接配置される別の板状体の下ハゼに引っ掛けて板状体同士を相互に連係(つなぎ合わせ)させる際、該鉤状体が、第1の顎部と挟持体との間で挟持されるため、板状体の連係強度(板状体同士の連結強度)を高めることができ、板状体を下地材から引き離すような負圧が作用しても板状体の連係が簡単に解除されることはない。
【0013】
また、本発明の建築物の囲繞構造体よれば、下ハゼの第1の顎部が板状体の幅方向に沿い外方へ向けて迫り出しており、しかも、上ハゼの鉤状体と板状体の外表面との間には隙間を形成しておくことが可能であるため、豪雨時に上ハゼ内部が冠水したり、毛細管現象によって雨水等が上ハゼ内部に浸入するのを回避することができる。
【0014】
また、本発明の建築物の囲繞構造体によれば、下ハゼの第1の脚部と第2の脚部とを、頭部の内部空間につながる導入口を形成する配置間隔に保持しておくことにより、その導入口を通して下ハゼの頭部にタイトフレームを組み付けることができる。タイトフレームを介して板状体を建築物の下地材に固定することにより、該板状体と下地材との間に断熱材を敷設する空間を確保することが可能となり、断熱仕様とする場合にも容易に対応し得る。
【0015】
また、本発明の建築物の囲繞構造体によれば、下ハゼの頭部に、上ハゼの天板に対面する頭頂壁部を設け、この頭頂壁部に、板状体の長手方向に沿って伸延する矩形状(長方形状)断面をなす溝部を形成しておくことにより、該溝部を通して雨水等を排出することが可能となり、止水性を高めることができる。また、溝部を形成しておくことにより下ハゼそのものの剛性を高めることが可能で、隣接配置される別の板状体を安定的な姿勢のもとで支持し得る。
【0016】
また、本発明の建築物の囲繞構造体によれば、挟持体を、下ハゼの頭部の外表面に合わさる天井壁部と、第1の顎部の外表面に位置するとともに、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼの鉤状体を該第1の顎部と協働して挟持する第1の係止片と、第2の顎部の外表面に合わさる第2の係止片とを備えたもので構成することにより、該挟持体の、下ハゼに対する固定が確実になる。挟持体の天井壁部に凹部を形成しておくことで下ハゼに設けられた溝部において雨水等の流通する際にその流れを阻害するのを回避することができる。
【0017】
さらに、本発明の建築物の囲繞構造体によれば、挟持体に吊子を備えることにより、それ単独で、あるいは下ハゼと協働して上ハゼを支えることが可能となり、該上ハゼの上方から外部荷重が付加されてもその変形を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を屋根に適用した実施の形態をその一部分について模式的に示した外観斜視図である。
【
図2】
図1に示した建築物の囲繞構造体の正面を示した図である。
【
図3】
図1に示した建築物の囲繞構造体を分解状態で示した外観斜視図である。
【
図4】
図1〜3に示した建築物の囲繞構造体のうち、板状体のみを単独で取出して示した外観斜視図である。
【
図5】
図1〜3に示した建築物の囲繞構造体のうち、挟持体(支持体を含む)のみを単独で取出して示した外観斜視図である。
【
図6】本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を適用して屋根を葺きあげた状態を示した図である。
【
図7】本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を構成する下ハゼと挟持体の連結状況を示した図である。
【
図8】本発明にしたがう建築物の囲繞構造体の他の実施の形態をその一部について模式的に示した図である。
【
図9】本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を適用して壁を構築する場合の説明図である。
【
図10】本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を適用して構築された壁の側面をその一部について模式的に示した図である。
【
図11】本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を適用して構築された壁の外観をその一部について模式的に示した斜視図である。
【
図12】本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を適用して屋根、壁を構築した建築物の全体の外観を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を屋根に適用した実施の形態をその一部分について模式的に示した外観斜視図である。また、
図2は、その正面を示した図であり、
図3は、
図1に示した囲繞構造体を分解状態で示した外観斜視図である。さらに、
図4、
図5は、
図1〜3に示した建築物の囲繞構造体の各構成部材を単独で取出して示した外観斜視図である。
【0020】
本発明において「板状体に隣接配置される別の板状体」とは、本発明にしたがう建築物の囲繞構造体に適用される板状体と同じ構成からなる板状体を意味している。また、本発明にしたがう建築物の囲繞構造体は、同一構成からなる板状体を複数枚用意し、それら板状体の上ハゼ、下ハゼを相互に連係させることにより構築される屋根や壁(外壁、内壁)、あるいは、軒天井、幕板等を対象としている。
【0021】
板状体としては、単一の金属製素材、例えば、厚さ0.4〜1.0mm程度の、溶融亜鉛めっき鋼板やカラー鋼板等の防錆処理鋼板、ステンレス鋼板、銅板、アルミニウム合金板、亜鉛板等が用いられる。また、板状体は、ロール成形あるいはプレス成形することによって所望の断面形状に形成することができ、本体部分や上ハゼ、下ハゼは、その際、同時に形成される。
【0022】
図における符号1は、板状体の本体部分である。本体部分1は、ここでは一対の短辺1a、1bと、これら短辺1a、1bを両側に挟む一対の長辺1c、1dにて取り囲まれた扁平矩形状をなすものを例として示しており、この本体部分1が屋根の平坦部を形成する。本体部分1の幅寸法や長さ、平面形状は適宜変更可能であり、図示のものに限定されることはない。
【0023】
また、2は、本体部分1の幅方向の一端(短辺1a)に設けられた上ハゼ、3は、本体部分1の幅方向のもう一端(短辺1b)に設けられた下ハゼである。上ハゼ2、下ハゼ3は、いずれも、本体部分1の長手方向の全長にわたって連結する長さを有している。
【0024】
上ハゼ2は、該本体部分1の外表面よりも外方へ向けて膨出するとともに該本体部分1の外表面に沿う外表面(本体部分1が平坦な面を有している場合には、外表面は平坦な面に設定される)を有する天板2aと、該天板2aの幅方向の一端に設けられ、該本体部分1の幅方向の端縁(短辺1a)につながる側板2bと、該天板2aの幅方向のもう一端に片持ち支持され、該板状体に隣接配置される別の板状体1′の下ハゼ3′に連係可能な鉤状体2cとを備えた、細長い略箱型形状からなるものにて構成されており、この上ハゼ2が屋根の隆起部を形成する。
【0025】
上ハゼ2の鉤状体2cは、ここでは、その要部を拡大して
図2に示すように、上端部が天板2aに一体連結する側板2c1と、この側板2c1の下端において水平姿勢で片持ち支持される水平板2c2と、この水平板2c2の自由端において立ち上がる起立片2c3と、この起立片2c3の先端部に外向きの屈曲状態で設けられ、第1の顎部3bの外側面に当接可能で、かつ、後述する挟持体(5、5′)の係止舌片(5b、5b′)との間で挟持される引っ掛け片2c4からなるものを例として示したが、その形状は種々変更可能であり図示のものに限定されることはない。引っ掛け片2c4は、それ自体の強度を高めるために折り返しによって2枚重ねにしたもので構成することができる。
【0026】
また、下ハゼ3は、一端が該本体部分1につながる第1の脚部3aと、該第1の脚部3aの他端に第1の顎部3bを介してつながり、その内側に内部空間Mを区画形成する頭部3cと、一端が該頭部3cに第2の顎部3dを介してつながる第2の脚部3eと、該第2の脚部3eの他端につながり、固定ビスの如き締結手段にて該本体部分1を上ハゼ2とともに建築物の下地材Sに固定可能な舌片3fとを備えたものから構成されている。下ハゼ3の第1の脚部3aと第2の脚部3eとは、頭部3cの内部空間Mにつながる導入口Nを形成するとともに頭部3cを第1の顎部3b、第2の顎部3dとともに左右で均等に支えることができるように、ハの字状の配置間隔に保持されている(
図2参照)。
【0027】
また、4は、下ハゼ3の頭部3cの頂部に設けられた溝部である。この溝部4は、本体部分1の長手方向に沿って伸延するとともに溝底4aの幅寸法がその開口端4bの幅寸法と略同等の矩形状(長方形状)断面を有している(
図4参照)。この溝部4は、板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼ2′とが連係する連係部分(重ね合わせ部分)において毛細管現象により雨水等の吸い込みが起きた場合に該溝部4を通して排水することができる機能を有している。また、この溝部4は、下ハゼ3の、とくに頭部3cの剛性をも高めている。
【0028】
5は、該第1の顎部3b、該頭部3cおよび第2の顎部3dにおいて固定保持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼ2′の鉤状体2c′を、該第1の顎部3bとの間で挟持する挟持体である。
【0029】
挟持体5は、一枚の金属製部材、例えば、厚さ0.5mm程度のカラー鋼板等を屈曲成形することによって形成される弾性変形可能な部材が用いられる。具体的には、下ハゼ3の頭部3cの外表面に合わさる天井壁部5aと、該天井壁部5aの幅方向の端部に垂下保持され、該板状体に隣接配置される別の板状体の上ハゼ2′の鉤状体2c′、とくに、引っ掛け片2c4′を、該第1の顎部3bと協働して挟持する係止舌片5bと、第2の顎部3dの外表面に嵌合可能な係止片5cからなるものが適用される。挟持体5の長さLは、板状体の長さと同じ長さに設定することができるが、
図3に示すように、長さの短いものを複数用いてもよい。また、係止舌片5bについては、その先端部5b1を折り返し2枚重ねにすることによりそれ自体の強度を高めることができる。
【0030】
また、6は、挟持体5の天井壁部5aの下部に設けられ、溝部4において適合可能な凸部、7は、挟持体5の天井壁部5aの上部に設けられ、凸部6の、該溝部4への適合姿勢でもって該溝部4につながる通路を形成する凹部である。凸部6、凹部7は、挟持体5をコの字状に屈曲成形することによって形成される。
【0031】
上記の挟持体5は、係止片5cを、第2の顎部3dに嵌合させることにより下ハゼ3の第1の顎部3bおよび第2の顎部3dにおいて係止されるロック方式からなるものである。挟持体5を、下ハゼ3の頭部3cの上部に位置せしめ、該挟持体5を弾性変形させながら下ハゼ3の頭部3cに押し込むだけの簡単な動作で強固に取り付けることができるようになっている。
【0032】
挟持体5を下ハゼ3に固定保持するに際して、該挟持体5は、第1の顎部3bおよび第2の顎部3dで嵌合することになるが、挟持体5には溝部4につながる両端開放型の通路を形成する凹部7が形成されているため、溝部4において雨水等が流通してもその流れを阻害することがない。
【0033】
また、8は、挟持体5に一体連結され、隣接配置される板状体の上ハゼ2′の天板2a′の直下に位置して該上ハゼ2′を支える支持体である。支持体8は、上ハゼ2′の天板2a′の裏面に位置する支持板8aと、一端が支持板8aの幅方向の縁部につながり、もう一端が挟持体5の第2の係止片5cにつながる脚部8bと、該支持板8aの幅方向の他端につながり建築物の下地材Sに接地する脚部8cとから構成されるものが用いられる。
【0034】
支持体8を、挟持体5と一体連結された構成とすることにより、挟持体5と支持体8を同時に成形することができるだけでなく、組み付け作業の簡素化を図ることができる。しかも支持体8と挟持体5とを一体連結することにより、部品点数を減らすことができる利点がある。なお、支持体8は、挟持体5と別体に構成してもよい。
【0035】
支持体8の支持板8aが上ハゼ2′の天板2a′の裏面に当接するように支持体8の高さを設定しておくことにより、上ハゼ2′は、支持体8によって支えられるため、上ハゼ2′に外部荷重が付加されたとしても天板2a′が変形するのを回避することができる。
【0036】
下ハゼ3の高さ(挟持体5の厚さ分を含む)を、支持体8の支持板8aの高さと同等の高さに設定しておくことにより、上ハゼ2′は、支持体8のみならず、下ハゼ3によって支えられ、上ハゼ2′の、外部荷重に対する抵抗力をより一層高めることができる。なお、本発明では、説明の都合上、基準となる板状体には符号1〜8を付して表示し、これに隣接配置される別の板状体には、同一符号に(′)を付して表示することにより両者を区別したが、板状体の構成はいずれも共通するものである。
【0037】
本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を適用して屋根を構築するには、屋根の構築領域(野地板等の下地材)に防水処理を施したのち(アスファルトルーフィング等の敷設)、屋根の一方の螻羽側の軒端を板状体の設置開始部位として、そこから梁間方向、桁行方向に向けてそれぞれ板状体を連係させていけばよい。
【0038】
板状体を、桁行方向に連係させるには、上掲
図1に示すように、板状体の下ハゼ3を、それに隣接配置される別の板状体の上ハゼ2′の内側に位置せしめるとともに、上ハゼ2′の鉤状体2c′を第1の顎部3bと挟持体5との間で挟持する作業を、もう一方の螻羽側まで繰返し行えばよい。
【0039】
板状体の、下地材Sへの固定は、舌片3fの複数個所に固定ビス等の締結手段を打ち込むことにより行う。
【0040】
本発明の建築物の囲繞構造体を適用して構築された屋根は、
図6に示すように、桁行方向に沿って隆起部(上ハゼ2、2′)と平坦部(本体部分1、1′)が交互に配列された美観に優れた大和葺き風の屋根となる。隆起部を形成する上ハゼ2の幅寸法、平坦部を形成する本体部分1の幅寸法の比率は、必要に応じて適宜変更することができるものであって、この点についてはとくに限定されない。
【0041】
とくに、屋根の勾配により挟持体5が位置ずれを起すことが懸念される場合には、
図7に示すように、溝部4の溝底4aに固定ビスを打ち込んで下ハゼ3と挟持体5との一体化を図るのが望ましく、その際、固定ビスの打ち込み部分からの雨水等の浸入を防ぐためにシーリングなどの防水処理を施すことが肝要となる。
【0042】
本発明にしたがう建築物の囲繞構造体で構成された屋根は、上ハゼ2(2′)の鉤状体2c(2c′)が挟持体5′(5)の係止舌片5b′(5b)に引っ掛かるだけでなく、該係止舌片5b′(5b)と下ハゼ3の第1の顎部3b(3b′)とによって挟持されるため、板状体の連係強度が高く、下ハゼ3(3′)については、固定ビス等の締結手段を介して下地材Sに固定されることから、板状体が上方へ向けて引き上げられるような負圧が作用しても板状体の連係が簡単に解除されることはない。
【0043】
また、上ハゼ2(2′)の鉤状体2c(2c′)の下端面と板状体の外表面との間には、3〜8mm程度の隙間dを設けておくことが可能であり(
図8参照)、しかも、下ハゼ3の第1の顎部3bが板状体の幅方向に沿い外方に向けて迫り出していることから、毛細管現象によって雨水等が上ハゼ2(2′)の内部に浸入し難く、高い止水性を維持することができる。
【0044】
図8は、板状体に裏貼り材9を取り付けるとともに、導入口N(N′)を通して下ハゼ3、3′の頭部3cの内部空間M、M′にタイトフレーム10の頭部を挿入し、該タイトフレーム10と下ハゼ3を固定ビスにより一体連結し、該タイトフレーム10を介して板状体を下地材Sに固定した、本発明にしたがう建築物の囲繞構造体の他の実施の形態を示した例である。
【0045】
かかる構造のものは、板状体と、下地材Sとの間に空間Rを形成することができ、その空間Rに断熱材11を敷設することにより、断熱仕様とすることを可能としている。タイトフレーム10としては、厚さが0.8〜2.3mm程度の亜鉛鉄板等で構成されたものを用いることができる。
【0046】
本発明にしたがう建築物の囲繞構造体を適用して横貼りタイプの外壁を構築するには、
図9に示すように、上ハゼ2(2′)が下側(建築物の土台側)、下ハゼ3(3′)が軒天側に向くように板状体を保持し、その姿勢を維持したまま該板状体を下地材Sに固定して、
図10に示すように、土台側から軒天側に向けて板状体を順次連係させていけばよく、これにより、隆起部と平坦部が交互に配列された
図11に示すような大和葺き風の壁が構築されることになる。
図12に本発明の囲繞構造体を適用した建築物の全体の外観を示す。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、高い止水性を維持しながら、板状体の連係強度を、安定した支持姿勢のもとで高め得る建築物の囲繞構造体が提供できる。
【符号の説明】
【0048】
1 本体部分
1a、1b 短辺
1c、1d 長辺
2 上ハゼ
2a 天板
2b 側板
2c 鉤状体
3 下ハゼ
3a 第1の脚部
3b 第1の顎部
3c 頭部
3d 第2の顎部
3e 第2の脚部
3f 舌片
4 溝部
4a 溝底
4b 開口端
5 挟持体
5a 天井壁部
5b 係止舌片
5c 係止片
6 凸部
7 凹部
8 支持体
8a 支持板
8b、8c 脚部
9 裏貼り材
10 タイトフレーム
11 断熱材
M 内部空間
N 導入口
R 空間