(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907062
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】熱交換器のフランジまたはブラケットの構造
(51)【国際特許分類】
F28F 9/00 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
F28F9/00 321
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-146950(P2017-146950)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-27666(P2019-27666A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】関谷 将仁
(72)【発明者】
【氏名】杉本 弘仁
(72)【発明者】
【氏名】所 徹明
【審査官】
古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−169857(JP,A)
【文献】
特開2000−161892(JP,A)
【文献】
実開昭64−006123(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器本体(1)の外周にろう付により取り付けられ、そのろう付面(8)から離れた自由端側に取付用のボルト孔(4)が形成された熱交換器のフランジまたはブラケットであって、
前記ろう付面(8)と前記ボルト孔(4)との中間に、両者間を二分するように溝(5)が形成されると共に、
前記溝(5)はブラケットまたはフランジの、取付面(6)またはその反対側の面に形成され、その溝(5)の両端がフランジまたはブラケットの縁まで形成され、
前記溝(5)の存在により、ろう付の際、フランジ(2)またはブラケット(3)のボルト孔(4)の孔縁部の近傍にろう材が侵入しないように形成すると共に、前記取付面(6)に他の機器本体またはたのフランジが締結される際、ろう付部に応力が集中しないように、前記取付面(6)のボルト孔(4)側が前記溝(5)を境に変形することが可能な熱交換器のフランジまたはブラケットの構造。
【請求項2】
前記溝(5)が弧状に形成された請求項1に記載された熱交換器のフランジまたはブラケットの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炉内で部分的にろう付される熱交換器のフランジ又はブラケットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の熱交換器ヘッダーのブラケット連結構造は、炉中ろう付において、溶融状態のろう材がボルト孔に流れ込むことを防止するため溝部が設けられている。この溝はろう付部に沿って直線的に形成され、ろう付時に流下したろう材をそこに保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−161892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、炉内で熱交換器本体の外周に部分的にろう付され、本体から突出して取付けられたフランジまたはブラケットにおいて、その表面に別部材がボルトを介して接続されたとき、フランジまたはブラケットのろう付部に生じる応力集中を防止低減し、ろう付
部の付根に生じる脆弱部の範囲及び大きさを小さくすることを目的とする。それと共に、ろう付中に生じる溶融ろう材がブラケットやフランジのボルト孔の周りに浸入しないようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、熱交換器本体(1)の外周にろう付により取り付けられ、
そのろう付面(8)から離れた自由端側に取付用のボルト孔(4)が形成された熱交換器のフランジまたはブラケットであって、
前記ろう付面(8)と前記ボルト孔(4)との中間に、両者間を二分するように溝(5)が形成され
ると共に、
前記溝(5)はブラケットまたはフランジの、取付面(6)またはその反対側の面に形成され、その溝(5)の両端がフランジまたはブラケットの縁まで形成され、
前記溝(5)の存在により、ろう付の際、フランジ(2)またはブラケット(3)のボルト孔(4)の孔縁部の近傍にろう材が侵入しないように形成すると共に、前記取付面(6)に他の機器本体またはたのフランジが締結される際、ろう付部に応力が集中しないように
、前記取付面(6)のボルト孔(4)側が前記溝(5)を境に変形することが可能な熱交換器のフランジまたはブラケットの構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、前記溝5が弧状に形成された請求項1に記載された熱交換器のフランジまたはブラケットの構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明
においては、
請求項1及び請求項2に記載のごとく、溝5が構成されている。その溝5の存在により、ろう材がボルト孔4の孔縁部側に進入せず、孔縁部の回りを平坦に保持できる。そのため、ボルト孔4を介して、フランジ2またはブラケット3に別部材を隙間なく取り付けることができる。
さらに、フランジ2またはブラケット3の取付面6に別部材が取付られたとき、その別部材とフランジ2またはブラケット3との間に生じる応力が低減される。これは、表面に刻設された溝5から先が変形し易くなり、フランジ2またはブラケット3のろう付部に生じる応力集中を低減し、ろう付の付根に生じる脆弱部位9の範囲および大きさを小さくできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の熱交換器本体1の外周に取付けられたフランジ2およびブラケット3の正面側の斜視図。
【
図2】フランジ2の平面図(A)及び、(A)のB−B矢視断面図(B)。
【
図4】ブラケット3の側面図であって、そのろう付側に他の部材が締結されたときの変形状態を示す説明図。
【
図5】同ろう付
部の付根に生じる脆弱部位9であって、溝5が存在する場合の説明図。
【
図6】同脆弱部位9であって、溝5が存在しない場合の説明図。
【
図7】本発明のフランジの構造における第2実施形態。
【
図8】本発明のフランジの構造における他の実施形態。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は、本発明の熱交換器であって、その熱交換器本体1の長手方向両端部に一対のフランジ2が設けられ、その中間部の上方にブラケット3が突設された例である。熱交換器本体1と各フランジ2及びブラケット3とは、それらの接触部間で部分的にろう付固定されている。さらに、熱交換器本体の外周には一対の冷却水の出入口パイプ7が突設されている。この例では、一対のフランジ2の取付面6aに図示しない別のフランジを介して、ガスパイプが接続される。また、ブラケット3の取付面6bが、図示しない機器等にボルトを介して締結固定される。
【0010】
一例として、
図2に示す如く、フランジ2は偏平であり、その輪郭が略菱形に形成され、両端部に一対のボルト孔4が設けられている。フランジ2の輪郭は、菱形に限定されるものではなく、楕円形であってもよい。そして、取付面6aの反対側の面には、ボルト孔4の孔縁部を取り囲むように、ボルト孔4の孔縁部の回りに、弧状の溝5が形成され、その溝5の両端がフランジ2の縁2a、2bまで延在する。この弧状の溝5は、
図2に示す如く、ボルト孔4の中心Oに対してその孔縁と略同心の円弧状に刻設することができる。この溝5の形状により、ろう付の際、溝5に沿って流れてきたろう材を円滑に排出することができる。この溝5の深さは、
図2(B)に示す如く、フランジ2の全幅に比べてその半分以下の深さとすることができる。
【0011】
次に、
図3は同熱交換器の背面側から見たブラケット3およびフランジ2の斜視図である。また、
図4はブラケット3の側面図であり、そのブラケット3は断面L字状に形成され、その下面側のろう付面8が熱交換器本体1の上面に接合される。
そして、そのブラケット3の取付面6bとは反対側の面に弧状の溝5が
図1及び
図4に示す如く、形成されている。即ち、ボルト孔4の孔縁部を取り囲むようにボルト孔4の孔縁部の回りに、弧状の溝5が刻設され、溝5の両端がブラケット3の両縁3a、3bまで達する。フランジ2の例と同様に、この弧状の溝5は、ボルト孔4の中心に対してその孔縁と略同心の円弧状に刻設することができる。
そして、この例では
図1の如く、ブラケット3の先端が上方に位置した姿勢で、冷却水流通用のパイプ7等とともに炉内で一体にろう付される。また、フランジ2はその取付面6aの反対側が熱交換器本体に部分的にろう付される。このとき溶融するろう材は、フランジに刻設された弧状の溝5によりせき止められる。
【0012】
このようにしてなる熱交換器は、
図1においてブラケット3の取付面6bが他の機器等の部材にボルト孔4及び図示しないボルトを介して接合される。また、一対のフランジ2の取付面6aにはそれぞれ配管の図示しない別のフランジがボルトを介して接合される。
そして、ブラケット3の取付面6bが図示しないボルトを介して取付けられと、その締結に伴い、
図4に示す如く、その実線状態から鎖線状態に僅かに変形する。その変形は主として溝5を境として起こる。
【0013】
すると、
図5に示す如く、ブラケット3のろう付面8の縁部に応力集中が生じ、そこに脆弱部位9が生じる。なお、ブラケット3に溝5が存在しない場合には、
図6に示す如く、脆弱部位9は
図5よりもより広い範囲で、且つ大きく形成される。逆にいうと、弧状の溝5が応力集中の低減と、ろう材の流出防止を兼ねる。
このブラケット3に設けた弧状の溝5の応力集中の低減の効果は、フランジ2のろう付部にも同じことが言える。また、
図1〜
図4に示す如く、ブラケット3及びフランジ2の弧状の溝5は、ボルト孔4の中心に対してその孔縁と略同心の円弧状に刻設することができる。
【0014】
図7は、本発明の第2実施形態のフランジの構造である。
第1実施形態との違いは、溝5が曲線からなる弧状ではなく、直線からなる溝5を刻設している。この溝形状の場合でも、本発明の効果である、ろう流れ防止機能及び応力集中防止機能を得ることができる。ブラケット3についても直線からなる溝5を適用することができる。また、
図8に示す如く、フランジ2の縁2aから縁2bまで角を持たない一直線状の溝5を刻設しても良い。
【0015】
本実施形態では、ボルト孔4の回りに形成される弧状の溝5は、取付面6の反対側の面に刻設している例を示したが、フランジ2またはブラケット3の取付面6の側にも同様に溝5を設けることもできる。
【符号の説明】
【0016】
1 熱交換器本体
2 フランジ
2a 縁
2b 縁
3 ブラケット
3a 縁
3b 縁
4 ボルト孔
5 溝
6 取付面
6a 取付面
6b 取付面
7 パイプ
8 ろう付面
9 脆弱部位
10 変形部