特許第6907070号(P6907070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907070
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】端子着脱装置、及び、その集合体
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/22 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   H01R9/22
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-160332(P2017-160332)
(22)【出願日】2017年8月23日
(65)【公開番号】特開2019-40698(P2019-40698A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋則
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−91680(JP,A)
【文献】 特開2017−117652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
H01R 9/22−9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前後方向の所定位置にて前記ハウジングに上下動可能に設けられた係止部材と、
上下方向の所定位置にて前記ハウジングに前後動可能に設けられた操作部材と、
を備え、
前記操作部材は、前方の上方位置から後方の下方位置に向かって延びる第一係合部を有し、前記係止部材は、前方の上方位置から後方の下方位置に向かって延びる第二係合部を有し、
前記第一係合部と前記第二係合部を係合させた状態で前記操作部材を前方から後方に移動させることにより、前記係止部材を上方へと移動させ、且つ、前記第一係合部と前記第二係合部を係合させた状態で前記操作部材を後方から前方に移動させることにより、前記係止部材を下方へと移動させるようになっており、
前記係止部材を上方へ移動させたときに、前記ハウジングに配置された端子と前記係止部材の係止状態が解除され、
前記係止部材を下方へ移動させたときに、前記ハウジングに配置された端子と前記係止部材が係止されることを特徴とする端子着脱装置。
【請求項2】
前記操作部材の第一係合部は、左右方向にて突出した凸状部として、又は、左右方向にて窪んだ凹状部として形成され、
前記係止部材の第二係合部は、左右方向にて窪んだ凹状部として、又は、左右方向にて突出した凸状部として形成され、
前記第一係合部と前記第二係合部は、前記凸状部と前記凹状部を相補的に組み合わせることにより係合される、
請求項1に記載の端子着脱装置。
【請求項3】
前記係止部材は、前記第二係合部よりも前後方向において後方に、左右方向にて外方に突出した壁を有し、
前記壁の前側及び後側は、前後方向において、前記ハウジングによって挟み込まれている、
請求項2に記載の端子着脱装置。
【請求項4】
凸状部として形成された前記操作部材の第一係合部は、左右方向にて互いに接近する方向に突出した対の凸状部分から成り、
凹状部として形成された前記係止部材の第二係合部は、左右方向にて互いに接近する方向に窪んだ対の凹状部分から成り、
前記第一係合部と前記第二係合部は、前記対の凸状部分の間に前記対の凹状部分を挟み込んだ状態で組み合わされる、請求項2又は3に記載の端子着脱装置。
【請求項5】
前記対の凸状部分はそれぞれ、前後方向に沿って延びた対のアーム部のそれぞれの内面側に設けられている、請求項4に記載の端子着脱装置。
【請求項6】
前記ハウジングに、前記係止部材を下方に常時付勢する付勢手段が設けられている、請求項1乃至5のいずれかに記載の端子着脱装置。
【請求項7】
前記係止部材が上方に移動したとき、該係止部材は、少なくとも前記係止部材の天面の近傍に位置する前記ハウジングの天面よりも、上方に突出した状態とされる、
請求項1乃至6のいずれかに記載の端子着脱装置。
【請求項8】
前記操作部材が後方に移動したとき、前記操作部材の移動に伴って前記ハウジングの一部が露出する、請求項1乃至7のいずれかに記載の端子着脱装置。
【請求項9】
前記操作部材の移動に伴って露出する前記ハウジングの一部は、前記操作部材と異なる色を有する、請求項8に記載の端子着脱装置。
【請求項10】
前記端子着脱装置が上下方向に複数段配列されており、前記複数段配列された前記端子着脱装置は前後方向において互いにずらされている、請求項1乃至9のいずれかに記載の端子着脱装置の集合体。
【請求項11】
前記端子着脱装置が左右方向に複数配列されている、請求項1乃至10のいずれかに記載の端子着脱装置の集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子着脱装置、及び、その集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許4018056号(特許文献1)に、端子着脱装置の一例が示されている。この端子着脱装置は、水平方向にてハウジングに挿入、配置された丸端子の穴に、上下方向にて、係止部材である螺子を螺合させることによって端子を取り付け、また、取り外すことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4018056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記端子着脱装置では、螺子を上下方向に移動させる際に、螺子に対して垂直に設置したドライバ等の工具を用いて、工具の上下動に合わせて、それと等しい移動距離だけ、螺子を上下動させるものとなっている。
明らかなように、この装置構成では、端子を取り付け、また、取り外すために、装置の上方に大きな作業空間を要することになるが、このような作業空間を確保することが困難、或いは、不可能な状況も多々生じている。
本願発明はこのような従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、係止部材を上下動させるために装置の上方に必要とされる作業空間をより小さくして、小型の装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様による端子着脱装置は、ハウジングと、前後方向の所定位置にて前記ハウジングに上下動可能に設けられた係止部材と、上下方向の所定位置にて前記ハウジングに前後動可能に設けられた操作部材と、を備え、前記操作部材は、前方の上方位置から後方の下方位置に向かって延びる第一係合部を有し、前記係止部材は、前方の上方位置から後方の下方位置に向かって延びる第二係合部を有し、前記第一係合部と前記第二係合部を係合させた状態で前記操作部材を前方から後方に移動させることにより、前記係止部材を上方へと移動させ、且つ、前記第一係合部と前記第二係合部を係合させた状態で前記操作部材を後方から前方に移動させることにより、前記係止部材を下方へと移動させるようになっており、前記係止部材を上方へ移動させたときに、前記ハウジングに配置された端子と前記係止部材の係止状態が解除され、前記係止部材を下方へ移動させたときに、前記ハウジングに配置された端子と前記係止部材が係止されることを特徴として有する。
この態様の端子着脱装置によれば、第一係合部と第二係合部を前方の上方位置から後方の下方位置に向かって斜めに設けたことにより、また、操作部材を上下方向の所定位置にて移動させることにより、係止部材を上下動させるために装置の上方に必要とされる作業空間を小さくすることができ、この結果、装置の上下方向における寸法を小さくすることができる。
【0006】
上記態様の端子着脱装置において、前記操作部材の第一係合部は、左右方向にて突出した凸状部として、又は、左右方向にて窪んだ凹状部として形成され、前記係止部材の第二係合部は、左右方向にて窪んだ凹状部として、又は、左右方向にて突出した凸状部として形成され、前記第一係合部と前記第二係合部は、前記凸状部と前記凹状部を相補的に組み合わせることにより係合されてもよい。
この態様の端子着脱装置によれば、第一係合部や第二係合部を凹凸状の相補形状としたことにより、第一係合部と第二係合部をより確実に組み合わせることができる。また、左右方向に凹凸を形成したことにより、上下方向にて、換言すれば、第一係合部及び第二係合部それぞれの上面同士及び下面同士を対面させ、当接させることができ、この結果、操作部材の前方から後方への移動、又は、後方から前方への移動のいずれか一方のみならず、前方から後方への移動、及び、後方から前方への移動の双方の動きに対応させて、係止部材を上下動させることができる。
【0007】
また、上記態様の端子着脱装置において、前記係止部材は、前記第二係合部よりも前後方向において後方に、左右方向にて外方に突出した壁を有し、前記壁の前側及び後側は、前後方向において、前記ハウジングによって挟み込まれているのが好ましい。
この態様の端子着脱装置によれば、操作部材を操作した際に、前後方向にて係止部材に力が加わった場合でも、そのような力をハウジングとの衝突によって分散させることができる。
【0008】
更に、上記態様の端子着脱装置において、凸状部として形成された前記操作部材の第一係合部は、左右方向にて互いに接近する方向に突出した対の凸状部分から成り、凹状部として形成された前記係止部材の第二係合部は、左右方向にて互いに接近する方向に窪んだ対の凹状部分から成り、前記第一係合部と前記第二係合部は、前記対の凸状部分の間に前記対の凹状部分を挟み込んだ状態で組み合わされてもよい。
この態様の端子着脱装置によれば、操作部材の対の凸状部分の間に、係止部材の対の凹状部分を挟み込む込む構成としたことにより、係止部材と操作部材とを、より確実に組み合わせることができる。
【0009】
また、上記態様の端子着脱装置において、前記対の凸状部分はそれぞれ、前後方向に沿って延びた対のアーム部のそれぞれの内面側に設けられているのが好ましい。
この態様の端子着脱装置によれば、係合部分をアーム部によって支持することにより、係合部の強度を高めることができる。
【0010】
また、上記態様の端子着脱装置において、前記ハウジングに、前記係止部材を下方に常時付勢する付勢手段が設けられているのが好ましい。
この態様の端子着脱装置によれば、係止部材を、常時、端子と係止させる方向に移動させることができる。
【0011】
更に、上記態様の端子着脱装置において、前記係止部材が上方に移動したとき、該係止部材は、少なくとも前記係止部材の天面の近傍に位置する前記ハウジングの天面よりも、上方に突出した状態とされるのが好ましい。
係止部材をハウジングの天面から突出した状態、或いは、天面より引っ込んだ状態とすることにより、係止部材の位置についての視認性を向上させることができる。
【0012】
更にまた、上記態様の端子着脱装置において、前記操作部材が後方に移動したとき、前記操作部材の移動に伴って前記ハウジングの一部が露出するようになっていてもよい。
ハウジングの一部を露出させることにより、操作部材の位置を容易に視認することができる。
この場合において、前記操作部材の移動に伴って露出する前記ハウジングの一部は、前記操作部材と異なる色を有しているのが好ましい。
異なる色とすることにより、視認性を向上させることができる。
【0013】
また、上記態様の端子着脱装置において、前記端子着脱装置が上下方向に複数段配列されており、前記複数段配列された前記端子着脱装置は前後方向(β)において互いにずらされていてもよい。
この態様の端子着脱装置によれば、装置の上下方向の寸法を小さくしているため、端子着脱装置を上下方向において複数段設けることもできる。また、それらの段を前後方向に互いにずらすことにより、使い勝手を向上させることができる。
更に、上記態様の端子着脱装置において、前記端子着脱装置が左右方向に複数配列されていてもよい。
左右方向にも複数配列することにより、端子着脱装置の集合体をコンパクトにまとめることができる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、係止部材を上下動させるために装置の上方に必要とされる作業空間をより小さくして、小型の装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による端子着脱装置の集合体の斜視図である。
図2】集合体の平面図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4図1に示した端子着脱装置から筐体を取り除いた斜視図である。
図5】操作部材の斜視図である。
図6】係止部材の斜視図である。
図7】操作部材がハウジングの前後方向にて後方に位置する状態を示す図である。
図8】操作部材がハウジングの前後方向にて前方に位置する状態を示す図である。
図9】ハウジングの斜視図である。
図10】変形例による端子着脱装置な等を示す図であって、図1に対応する図である。
図11】変形例による端子着脱装置な等を示す図であって、図2に対応する図である。
図12】変形例による端子着脱装置な等を示す図であって、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。説明の便宜のため好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
【0017】
図1に、本発明による端子着脱装置1の集合体2の斜視図を、端子着脱装置1に着脱可能なケーブル端子3とともに示し、更に、図2に、集合体2の平面図を、図3に、図2のA−A線断面図を、それぞれ示す。
【0018】
各端子着脱装置1には、1つのケーブル端子3を取付けることができる。ここでは、ケーブル端子3として、中心に穴3aを有した丸端子3Aを使用する。この丸端子3Aは、電気ケーブル3Bの先端に取り付けた状態で使用される。尚、端子は、端子着脱装置1への取り付けに適したものであれば足り、丸端子に限定されるものではない。
【0019】
集合体2は、複数の端子着脱装置1A乃至1Dを含む。集合体2に含まれる個々の端子着脱装置1A乃至1Dの構成は、全て、実質的に同じ構造を有する。個々の端子着脱装置1は、主に、ハウジング30と、上下方向(図示矢印「α」方向)の所定位置にてハウジング30に前後動可能に設けられた操作部材40と、前後方向(図示矢印「β」方向)の所定位置にてハウジング30に上下動可能に設けられた係止部材60を含む。図1の例では、端子着脱装置1を、上下方向「α」に複数、ここでは2段配列し、且つ、左右方向(図示矢印「γ」方向)に複数、ここでは2列配列したもの、従って、計4個の端子着脱装置1を含む集合体2を示している。勿論、配列することができる端子着脱装置1の数は、これに限定されるものではない。このように複数の端子着脱装置1をまとめて、例えば、筐体25に配置された集合体2として構成することにより、複数の端子着脱装置1をコンパクトにまとめることができる。筐体25は、底壁25a、側壁25b、後壁25cを有し、複数の端子着脱措置1を包括的に包囲する。参考に、図4に、図1に示した端子着脱装置1から筐体25を取り除いた斜視図を示す。
【0020】
端子着脱装置1には、電気ケーブル3Bの先端に取り付けた丸端子3Aが挿入される端子挿入口34が設けられている。図3図4によく示されているように、端子挿入口34は、端子着脱装置1のハウジング30と、筐体25に固定された導電部材から成るバスバー23を利用して形成されている。バスバー23を固定するため、筐体25内には、設けた複数の仕切り21a、21b、21cが設けられている。端子の挿入を容易にするため、ハウジング30に、端子案内用のテーパー34aを設けるのが好ましい。端子挿入口34の一部を、バスバー23を利用して形成することにより、端子挿入口34を通じて挿入した丸端子3Aを、バスバー23に物理的に且つ電気的に容易に接触させることができる。バスバー23は、側面視略L字状の板状体として形成されており、垂直部23aと水平部23bを含み、更に、水平部23bと連結された比較的薄い板状部23cを含む。板状部23cとバスバー23の間には、端子挿入口34と連通させた状態で、端子が配置される端子配置部35が設けられている。端子配置部35の上部に位置する板状部23cには、係止部材60が挿通される挿入孔24eを形成する筒状部24dが設けてある。係止部材60は、筒状部24dによって案内されつつ、端子配置部35に対して上下動し得る。
【0021】
各端子着脱装置1に対する丸端子3Aの取り付け作業を容易にするため、上段の端子着脱装置1A、1Cと下段の端子着脱装置1B、1Dは、前後方向(図示矢印「β」方向)にて互いにずらして配置されている。一方、左右方向「γ」に並んだ端子着脱装置1A、1C、又は、端子着脱装置1B、1Dは、それぞれ、上下方向「α」にて同じ高さに位置付けられている。このような構成とすることにより、装置の使い勝手を向上させ、また、丸端子3Aの取り付けを容易にすることができる。
【0022】
図5に、操作部材40の斜視図を示す。図5の(a)は、操作部材40の上方斜視図、図5の(b)は、その下方斜視図である。
操作部材40は、主に、略矩形の本体41と、本体41の側面41aから左右方向「γ」にて互いに離間するように外方に突出した対の水平翼42A、42Bと、本体41の前側にて前後方向「β」に沿って延びた対のアーム部44A、44Bを含む。
本体41の上面は、操作部材40の操作時に操作者の指が触れる部分となるため、滑り止め防止用の溝41aを設けておくのが好ましい。
【0023】
水平翼42A、42Bをハウジング30の所定部分に組み付けることにより、操作部材40は、ハウジング30に対して前後方向「β」にて移動可能な状態で組み付けられる。操作部材40は、ハウジング30に対して前後方向「β」に移動するだけで、上下方向「α」には移動しない。即ち、操作部材40は、上下方向「α」では、ハウジング30の所定位置に維持される。このように、操作部材40を上下方向「α」の所定位置に維持することにより、係止部材60を上下動させるために装置の上方に必要とされる空間を小さくすることができ、この結果、装置の上下方向における寸法を小さくすることができる。
【0024】
対のアーム部44A、44Bそれぞれの内面44aに、左右方向「γ」にて互いに接近するよう互いに内方に向かって突出した板状の凸状部分45A、45Bが、1つずつ対で設けられている。凸状部分45A、45Bは、アーム部44A、44Bによって支持することにより、その強度が強化されている。各凸状部分45A、45Bは、ハウジング30における前方の上方位置から後方の下方位置に向かって延びており、操作部材40を前後動「β」させたときに、係止部材60の所定部分との係合を通じて、係止部材60を上下動させる係合部(第一係合部)として機能する。
【0025】
図6に、係止部材60の斜視図を示す。図6の(a)は、係止部材60の上方斜視図、図6の(b)は、その下方斜視図である。
係止部材60は、主に、略直方形状の本体61と、本体61の底側の一部に水平方向(β−γ)に拡がる底板66と、本体61よりも前後方向「β」において後方に、且つ、本体61よりも左右方向「γ」において外方に突出した状態で、底板66に対して垂設された壁67と、本体61の底板66の更に下方に延びる略円柱状の係止部70を含む。
【0026】
係止部材60は、ハウジング30の所定部分に、上下方向「α」にて移動可能な状態で嵌入される。ハウジング30に嵌入された係止部材60は、ハウジング30に対して上下方向「α」に移動するだけで、前後方向「β」には移動しない。即ち、係止部材60は、前後方向「α」においては、所定位置に維持される。
【0027】
底板66は、係止部材60がハウジング30に対して上下動した際に、ハウジング30の所定部分と衝突することにより、係止部材60がハウジング30から上方へと引き抜かれてしまうことを防止する。
【0028】
本体61の左右の側壁64A、64Bに、それぞれ、左右方向「γ」にて互いに接近する方向に窪んだ対の凹状部分65A、65Bが設けられている。各凹状部分65A、65Bは、凸状部分45A、45Bに対応して、前方の上方位置から後方の下方位置に向かって延びており、操作部材40の凸状部分45A、45Bのそれぞれと、相補的に組み合わされることによって互いに係合されるようになっている。これら凹状部分65A、65Bは、操作部材40を前後動「β」させたときに、操作部材40の所定部分、即ち、凸状部分45A、45B等の第一係合部45との係合を通じて、係止部材60を上下動させる係合部(第二係合部)として機能する。このように、凸状部分45A、45Bや凹状部分65A、65Bを、ハウジング30における前方の上方位置から後方の下方位置に向かって斜めに設けたことにより、係止部材60を上下動させるために装置の上方に必要とされる空間を小さくすることができ、この結果、装置の上下方向における寸法を小さくすることができる。
【0029】
図7図8に、操作部材40と係止部材60を組み合わせた状態を斜視図で示す。図7は、操作部材40がハウジング30の前後方向「β」にて前方に位置する状態、換言すれば、操作部材40を、後方から前方へと「β2」方向に移動させた状態を、一方、図8は、操作部材40がハウジング30の前後方向「β」にて後方に位置する状態、換言すれば、操作部材40を、前方から後方へと「β1」方向に移動させた状態を、それぞれ示す。
【0030】
操作部材40と係止部材60をハウジング30に取り付けたとき、係止部材60の対の凹状部分65A、65Bは、操作部材40の対の凸状部分45A、45Bの間に挟み込まれた状態で組み合わされ係合される。このような構成とすることにより、係止部材60と操作部材40とを、より確実に組み合わせることができる。
【0031】
操作部材40の対の凸状部分45A、45Bと、係止部材60の対の凹状部分65A、65Bは、それぞれ、左右方向「γ」に形成されていることから、それらが相補関係で組み合わされたとき、上下方向「α」にて、換言すれば、操作部材40の凸状部分45A、45Bそれぞれの上面45aと、係止部材60の凹状部分65A、65Bそれぞれの上面65aとが、対面し且つ当接することになるとともに、操作部材40の凸状部分45A、45Bそれぞれの下面45bと、係止部材60の凹状部分65A、65Bそれぞれの下面65bとが、対面し且つ当接することになる。この結果、操作部材40の前方から後方への「β1」方向における移動、又は、後方から前方への「β2」方向への移動のいずれか一方のみならず、前方から後方への移動、及び、後方から前方への移動の双方の動きに対応させて、係止部材60を上下方向「α」に移動させることができる。
【0032】
図7に示すように、操作部材40が後方から前方に「β2」方向に移動した場合、係止部材60の凹状部分65A、65Bと、操作部材40の凸状部分45A、45Bの係合を通じて、係止部材60は下方に、つまり、「α1」方向へと移動する。図1図3図4に示した端子着脱装置1A、1B、1Dは、この図7に対応する状態を示している。
この場合、特に、図3に示した端子着脱装置1Dの状態から明らかなように、ハウジング30の端子配置部35に配置された端子(3A)の穴(3a)(図示されていない)に、係止部材60の係止部70が嵌る。この結果、端子(3A)は、係止部材60によって係止される。
【0033】
一方、図8に示すように、操作部材40が前方から後方に「β1」方向に移動した場合、係止部材60の凹状部分65A、65Bと、操作部材40の凸状部分45A、45Bの係合を通じて、係止部材60は上方に、つまり、「α2」方向へと移動する。図1図3図4に示した端子着脱装置1Cは、この図8に対応する状態を示している。
【0034】
この場合、特に、図3に示した端子着脱装置1Cの状態から明らかなように、ハウジング30の端子配置部35に配置された端子(3A)の穴(3a)(図示されていない)から、係止部材60の係止部70が抜き取られ、この結果、係止部材60による係止状態は解除される。従って、端子を、端子着脱装置1から取り外すことができる。
【0035】
また、図1図4に示した端子着脱装置1Cから明らかなように、操作部材40が後方に移動したとき、操作部材40の移動に伴ってハウジング30の一部33aが露出する。この結果、ハウジング30の一部33aが露出し、操作部材40の位置、更に言えば、係止部材60の係止状態を容易に視認することが可能となる。この場合、特に、一部33aを、操作部材40とは、異なる色に設定しておくことにより、視認性を容易に向上させることができる。
【0036】
また、図1図3に示した端子着脱装置1Cの状態から明らかなように、操作部材40が後方に移動したとき、係止部材60は上方「α2」に移動し、係止部材60は、少なくとも係止部材60の天面61aの近傍に位置するハウジング30の天面31aよりも、上方「α2」に突出した状態となる。このとき、係止部材60の側面64は、ハウジング30から露出することになるため、例えば、この側面64を、ハウジング30とは、異なる色としておくことにより、係止部材60の位置についての視認性を向上させることができる。
【0037】
本体61には、例えば、板バネ80(図3参照)のような付勢手段を設けるのが好ましい。板バネ80を固定するため、本体61の中間位置に、左右方向「γ」に沿って貫通孔61bが設けられている。板バネ80の働きにより、係止部材60は、常時下方へと「α1」方向に常時付勢された状態とされ、また、この結果、操作部材40は、後方から前方へと「β2」方向に常時付勢される。
【0038】
例えば、端子着脱装置から端子(5A)を取り外す場合、板バネ80による付勢力に抗して、操作部材40を前方から後方へと「β1」方向に押しやって、これにより、係止部材60を上方へと「α2」方向へ押し上げて、端子(3A)の穴(3a)から、係止部材60の係止部70を抜き取り、係止部材60による係止状態を解除することができる。また、その後、操作部材40に力を加えるのを止めた場合には、板バネ80の付勢力により、操作部材40は後方から前方へと「β2」方向に自動的に復帰し、これにより、係止部材60の係止部70は、下方へと「α1」方向へ自動的に復帰する。
【0039】
図9に、ハウジング30の斜視図を示す。図9の(a)は、ハウジング30の上方斜視図、図9の(b)は、その下方斜視図である。
【0040】
ハウジング30は、全体として扁平な略直方形状を有する。ハウジング30は、ここでは左右方向「γ」に長く形成されており、1個のハウジング30によって、2個の丸端子(3A)を固定することができるようになっている。但し、これに限らず、1個のハウジングによって1個の丸端子を接続する長さに設定することもできるし、1個のハウジングによって3個以上の丸端子を接続する長さに設定することもできる。ハウジング30の左右方向「γ」方向における側面31には、ハウジング30を筐体25に取り付けるための係止突起31bが設けられており、これらの係止突起31bに対応して、筐体25の側壁25bには、係止穴27(図1等参照)が設けられている。
【0041】
ハウジング30の前側に、操作部材40が載置される載置面33が設けられている。操作部材40は、この載置面33の上に、前後方向「β」にスライド移動可能な状態で取り付けられる。載置面33の左右方向「γ」における両側には、操作部材40の水平翼42が組み付けられるスライド空間32が設けられている。水平翼42の先端42a(図5等参照)は、このスライド空間32への組み付けを可能にするため、角が切り取られている。
【0042】
ハウジング30の後側に、係止部材60が嵌入される嵌入空間37が設けられている。嵌入空間37の上面視の形状は、係止部材60の上面視の形状と相補関係を成し、特に、係止部材60の壁67は、前後方向「β」において、更に詳細には、その前側67a及び後側67aにおいて、嵌入空間37の一部を構成する前壁37a及び後壁37bによって挟み込まれる構造となっている。このような構成とすることにより、操作部材40を操作した際に、前後方向「β」において、係止部材「60」に力が加わった場合でも、この力をハウジング30との衝突によって分散させることができる。嵌入空間37の底側には、係止部材60の底板66と衝突することによって、係止部材60がハウジング30から上方へと引き抜かれてしまうことを防止する衝突面36が形成されている。
【0043】
図10乃至12に、変形例による端子着脱装置5と、端子着脱装置5の集合体6を示す。これらの図10乃至12は、上で説明した実施形態の図1乃至3にそれぞれ対応する。図10乃至12において、図1等に示した実施形態と同様の部材には、同様の参照番号を付している。
【0044】
この変形例は、付勢手段を板バネではなく、巻バネ81としたものである。巻バネ81を取り付けるため、係止部材60Aには、上下方向「α」に沿って有底の筒部72が設けられている。筒部72からの巻バネ81の抜け防止のため、蓋38が設けられている。蓋38の内壁には、筒部72に挿入された巻バネ81を安定させるため、支柱38aが設けられている。
【0045】
以上の説明は、好ましい実施形態に関するものであり、物品及びそれを製造する方法を単に代表するものであることを理解すべきである。異なる実施形態の変形及び修正が上述の教示に照らして当業者に容易に明らかになることを認めることができる。
例えば、上の実施形態では、操作部材40に凸状部を、係止部材60に凹状部を、それぞれ設けることとしていたが、これとは逆に、操作部材40に凹状部を、係止部材60に凸状部を設けるようにしてもよい。従って、例示的実施形態並びに代替的な実施形態は、添付の特許請求の範囲で説明する物品及び方法の精神から逸脱することなく行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 端子着脱装置
2 集合体
3A 端子
30 ハウジング
31a 天面
33a 露出部
40 操作部材
44A、44B アーム部
45 第一係合部
45A、45B 凸状部分
60 係止部材
61a 天面
65 第二係合部
65A、65B 凹状部分
67 壁
80 付勢手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12