特許第6907090号(P6907090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907090
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/02 20060101AFI20210708BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20210708BHJP
   C09J 191/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C09J123/02
   C09J153/02
   C09J191/00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-198855(P2017-198855)
(22)【出願日】2017年10月12日
(65)【公開番号】特開2019-73581(P2019-73581A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】大田 英生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−195711(JP,A)
【文献】 特開2009−242533(JP,A)
【文献】 特表2015−513584(JP,A)
【文献】 特開2002−220494(JP,A)
【文献】 特開昭62−53386(JP,A)
【文献】 特開2006−315385(JP,A)
【文献】 特表2017−503069(JP,A)
【文献】 特開2003−327938(JP,A)
【文献】 特開2004−346119(JP,A)
【文献】 特開2009−40879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00− 5/10
7/00− 7/50
9/00−201/10
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)軟化点が100℃超である非晶質ポリαオレフィン、
(B)MFR(200℃、4.9kgf)が15g/10min以上であり、スチレン含量が20wt%以下であるスチレン・イソプレン・ブロック・コポリマー(SIS)、及び
(C)MFR(230℃、2.16kgf)が100g/10min以上であるスチレン・エチレン・ブチレン・ブロック・コポリマー(SEBS)を含み、
組成物全体に対して、前記非晶質ポリαオレフィンの含有量(M)が50〜70質量%であり、前記SISの含有量(M)が1〜10質量%であり、前記SEBSの含有量(M)が0.5〜10質量%であり、
(M+M)/Mが、5/100〜25/100の範囲内である
ことを特徴とする、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
オイル成分として、粘度300cSt以上のパラフィン系オイルを更に含む、請求項1記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤組成物により積層接着された車両用内装部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、圧着後、冷却固化するのみで被着物を固定化可能であり、作業性が高いことから、建築分野、電気分野、自動車分野をはじめとした種々の分野で使用されている。そのため、高機能なホットメルト接着剤が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ブチルゴム(a)、スチレン系ブロック共重合体(b)、芳香族変性テルペン樹脂(c)を含有し、高い耐熱性を有するとともに、粘度が低く、弾性に優れたホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−77251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなホットメルト接着剤は、耐熱性に優れるものであったが、車両用内装部材の樹脂基材のような非極性材料及び表皮材のような極性材料の双方への接着性や塗り斑のない均一な塗布性等を同時に満たすことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、特定の成分を特定量配合したホットメルト接着剤とすることにより、上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0007】
本発明(1)は、
(A)軟化点が100℃超である非晶質ポリαオレフィン、
(B)MFR(200℃、4.9kgf)が15g/10min以上であり、スチレン含量が20wt%以下であるスチレン・イソプレン・スチレンブロックコポリマー(SIS)、及び
(C)MFR(230℃、2.16kgf)が100g/10min以上であるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロックコポリマー(SEBS)を含み、
組成物全体に対して、前記非晶質ポリαオレフィンの含有量(M)が50〜70質量%であり、前記SISの含有量(M)が1〜10質量%であり、前記SEBSの含有量(M)が0.5〜10質量%であり、
(M+M)/Mが、5/100〜25/100の範囲内である
ことを特徴とするホットメルト接着剤組成物である。
本発明(2)は、オイル成分として、粘度300cSt以上のパラフィン系オイルを更に含む、前記発明(2)のホットメルト接着剤組成物である。
本発明(3)は、前記発明(1)〜(2)のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物により積層接着された車両用内装部材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非極性材料及び極性材料の双方への接着性、均一な塗布性、及び耐熱性を全て満たすホットメルト接着剤を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明について以下の順番で具体的に説明するが、本発明はこれらには限定されない。
1 ホットメルト接着剤組成物
1−1 成分
1−2 配合量
1−3 物性
1−4 性質・用途
2 ホットメルト接着剤組成物の製造方法
3 ホットメルト接着剤組成物の適用方法
【0010】
≪ホットメルト接着剤組成物≫
本発明に係るホットメルト接着剤組成物の、成分、配合量、物性、性質及び用途について説明する。
【0011】
<成分>
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、(A)非晶質ポリαオレフィン、(B)SIS、及び(C)SEBSをベースポリマーとして含み、その他の成分を含んでいてもよい。
【0012】
(非晶質ポリαオレフィン)
非晶質ポリαオレフィンとしては、公知のもの、例えば、特許第6001685号公報、特許第3153648号公報等に記載されたものを使用可能である。より詳細には、非晶質ポリαオレフィンは、例えば、プロピレン、プロピレン、エチレン、及び1−ブテンを単独重合またはこれらの任意の組み合わせを共重合させた、非晶性のオレフィン系ポリマー等である。
【0013】
ここで、非晶質ポリαオレフィンの軟化点が100℃超であることが好ましい。非晶質ポリαオレフィンの軟化点をこの範囲とすることで、非極性樹脂との接着性を維持しつつも耐熱強度を高めることが可能となる。なお、このような観点からは、非晶質ポリαオレフィンの軟化点は、165℃以下であることがより好ましい。なお、軟化点は、JIS K6863(ホットメルト接着剤の軟化点試験方法、環球法)に従って測定されたものである。
【0014】
(SISポリマー)
本発明に係るSISポリマーとは、スチレン−イソプレン(S−I)・ブロック・コポリマーである(このようなポリマーを、単にSISと表記する場合がある)。本発明に係るSISは、MFR(200℃、4.9kgf、JIS K 7210に準拠)が、15g/10min以上(好ましくは、17g/10min以上、さらに好ましくは19g/10min以上)である。なお、SISのMFRの上限値としては、特に限定されないが、50g/10min以下等とすればよい。なお、SISのMFRを調整するためには、分子量を調整すればよい。
【0015】
また、本発明に係るSISは、スチレン含量が18wt%以下である。また、スチレン含量の下限値は、特に限定されないが、例えば8wt%以上である。上記MFRの範囲にあれば、本発明における高い流動性が得られ、スプレー塗布、刷毛塗り等の塗布性が高くなる。一方、上記スチレン含量の数値範囲にあれば、他の樹脂すなわちSEBSと非晶質ポリαオレフィンとの相溶性が高くなり、成形性に優れる。
【0016】
SISとしては、公知のものを利用可能であり、例えば、SIS5403P(JSR株式会社製、スチレン含量:15%)やVECTOR4114N(TSRC社製、スチレン含量:15%)等を利用可能である。
【0017】
(SEBSポリマー)
本発明に係るSEBSポリマーとは、スチレン・エチレン・ブチレン(S−E−B)・ブロック・コポリマーである(このようなポリマーを、単にSEBSと表記する場合がある)。本発明に係るSEBSは、MFR(230℃、2.16kgf、JIS K 7210に準拠)が、100g/10min以上(好ましくは、150g/10min以上)である。SEBSのMFRの上限値としては、特に限定されないが、400g/10min以下等とすればよい。なお、SEBSのMFRを調整するためには、分子量を調整とすればよい。
【0018】
このようなSEBSとしては、公知のものを利用可能であり、例えば、特許第6001685号公報等を参照して準備すればよい。この高流動性を示すSEBSは、水素化されており、その一端には3本の分岐鎖のある放射状ポリマーが結合されている。
【0019】
また、本発明に係るSEBSのスチレン含量は特に限定されず、例えば5wt%〜45wt%(好ましくは、5wt%〜30wt%)等とすればよい。
【0020】
(その他の成分)
その他の成分として、ホットメルト接着剤に使用される公知の添加剤、例えば、オイル成分(可塑剤)、粘着付与樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、充填剤、ワックス等を配合可能である。
【0021】
・オイル成分
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、可塑剤としてオイル成分を配合することが好ましい。このようなオイル成分を配合することで、スプレー等の塗布性の向上及びベース樹脂との相溶性を向上させることが可能となる。オイル成分としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイル等が例示され、これらの混合物でも良い。なお、オイル成分として植物性油等を用いてもよい。これらオイル成分は、0.5重量%から10重量%添加できる。好ましくは、1.0重量%から5重量%であり、より好ましくは、1.3重量%から2.0重量%である。なお、ベース樹脂との相溶性をより向上させるという点で、オイル成分としては、パラフィンオイルが更に好ましく、中でも粘度300cSt以上のパラフィンオイルが特に好ましい。この時、本発明の組成物は、レオメーターによる180℃での粘度が50Pa・s以下であることが好ましい。粘度は、JIS K 2283 原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法に従う。
【0022】
・粘着付与樹脂
粘着付与樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水添脂肪族系石油樹脂、水添芳香族系石油樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂およびこれらの変性樹脂からなる群より選択される1種以上の粘着付与樹脂を例示できる。
【0023】
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤(例えば、Irganox1010(BASF社製))、イオウ系酸化防止剤(例えば、SUMILIZER TP−D(住友化学社製))及びリン系酸化防止剤等(例えば、Irgafos168(BASF社製)、JP−650(城北化学社製))を例示できる。
【0024】
・ワックス
ワックスとしては、天然ろう{例えば、動物系ろう(みつろう、鯨ろう等)、植物系ろう(木ろう等)、石油系ろう(パラフィンワックス等)等}、及び、合成ろう{例えば、合成炭化水素(低分子ポリエチレン等)、脂肪酸エステル(ポリエチレングリコール等)等}を例示できる。
【0025】
<配合量>
非晶質ポリαオレフィンの含有量(M)は、組成物全体に対して、50〜70質量%であり、好ましくは55〜70質量%である。
【0026】
SISの含有量(M)は、組成物全体に対して、1〜10質量%であり、好ましくは2〜9質量%である。
【0027】
SEBSの含有量(M)は、組成物全体に対して、0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0028】
また、(M+M)/Mは、5/100〜25/100の範囲内であり、6/100〜23/100であることが好ましい。
【0029】
各配合量を上述の範囲とすることにより、特に、SEBSが非晶質ポリαオレフィンとSISとの相溶性を高め、PP等の非極性材料に対する接着性、濡れ性、耐熱性、均一な塗布性及び剥離強度等に優れるホットメルト接着剤組成物とすることが可能となる。
【0030】
ここで、その他の成分を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、例えば、組成物全体に対して、その他の成分の合計として10質量%以上等とすればよい。オイル成分を含有する場合、例えば、組成物全体に対して、0.5〜5質量%等とすればよい。粘着付与樹脂を含有する場合、例えば、組成物全体に対して、10〜40質量%等とすればよい。
【0031】
<物性>
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、レオメーターによる180℃での粘度が50Pa・s以下である。また、粘度の下限値としては特に限定されないが、例えば、2.0Pa・s以上である。粘度をこのような範囲とすることで、スプレー塗布として特に好ましいホットメルト接着剤組成物となる。なお、本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、上述の通り、特定成分を特定量配合しているため高い流動性を有するが、更に粘度を調製したい場合には、上記その他の成分や、低粘度のオレフィン樹脂等を添加すればよい。
【0032】
<性質・用途>
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、耐熱性に優れるのみならず、無極性材料(例えば、PP等)と極性材料(例えば、ナイロン生地やウレタンフォーム等)との接着が可能である。更に、均一かつ安定して塗布することが可能であるため、接着物に適用した際にも、凹凸の発生を抑え、外観品質を向上させることができる。また、所定の流動性を有するため、スプレー塗布に好適に利用可能である。また、本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、非反応型であるため、ハンドリング性(梱包性、洗浄性、貯蔵性)に優れる。このように、本発明に係るホットメルト接着剤組成物は優れた特性を有するため、マットレスや建材の接着をはじめとする種々の接着用途に適用可能である。特に、スプレー塗布が可能であるため接着対象の形状を問わずに適用可能であり、極性材料と非極性材料との接着に適用可能であり、耐熱性に優れることから、乗物{飛行機、船、車両(自動車、鉄道車両)等}の内装部材固定用として好適に使用可能であり、車両用内装部材固定用としてより好適に使用可能であり、自動車内装部材(インパネ、ピラー、ドアトリム等)の表皮固定用として特に好適に使用可能である。例えば、車両用内装部材では、表皮材となる織生地と、ウレタンスラブなどの発泡体シートを火炎熔着により積層して表皮パッド材とし、さらに前記表皮パッドと、非極性のオレフィン材料からなる自動車のインストルメントパネルやドアトリムの基材とを、接着剤により接合し内装材としている。すなわち、前記極性材料の表皮パッド材と前記無極性材料の基材を積層接着する接着剤に、本発明は用いられる。換言すれば、本発明の接着剤の硬化物を介して、前記極性材料の表皮パッド材及び前記無極性材料の基材が積層された積層材を、自動車内装部材とすることができる。また、織生地となる表皮材と上記ドアトリムなどの基材を直接接着する内装材もある。
【0033】
≪ホットメルト接着剤組成物の製造方法≫
ホットメルト接着剤組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造可能である。例えば、一軸又は二軸押出機等の連続混練機、もしくは、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー、高剪断Z翼ミキサー等のバッチ式混練機に、上述した原料を投入し、所定時間混練すればよい。
【0034】
≪ホットメルト接着剤組成物の適用方法≫
次に、本発明に係るホットメルト接着剤組成物の具体的な適用方法の一例を説明する。なお本例では、ホットメルト接着剤組成物をスプレー塗布する場合について説明するが、本発明に係るホットメルト接着剤組成物の適用方法はこれには限定されず、公知の方法により接着対象面に塗布されてもよい。
【0035】
先ず、本発明に係るホットメルト接着剤組成物を溶融した状態で保持する(溶融工程)。次に、溶融状態であるホットメルト接着剤組成物を、接着対象面の少なくとも一方に、所望の塗布量となるようにスプレー塗布する(塗布工程)。スプレー方法としては、公知の方法、例えば、カーテンスプレー、オメガスプレー、スパイラルスプレー、サミットスプレー等を適用可能である。塗布工程後、一方の接着対象面に他方の接着対象面を押し付けた状態で維持し、ホットメルト接着剤組成物を冷却固化させる(固化工程)。なお、塗布工程の前に、接着対象面に公知の表面処理を行ってもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により、本発明のホットメルト接着剤組成物の効果について、具体的に説明する。
【0037】
≪ホットメルト接着剤組成物の製造≫
原料として以下のものを用意した。
【0038】
(A)ポリαオレフィン
a−1:Vestoplast 408(EVONIK社) 軟化点 118℃
a−2:Vestoplast 508(EVONIK社) 軟化点 84℃
【0039】
(B)SIS
b−1:スチレン含量15wt% 20g/10min(200℃、4.9kgf)
b−2:スチレン含量24wt% 20g/10min(200℃、4.9kgf)
b−3:スチレン含量16wt% 13g/10min(200℃、4.9kgf)
【0040】
(C)SEBS
c−1:スチレン含量20wt% 220g/10min(230℃、2.16kgf)
【0041】
(D)粘着付与樹脂
d−1:T−Rez HA−105(東燃ゼネラル社) 水添脂肪族系石油樹脂、軟化点105℃
d−2:T−Rez RC115(東燃ゼネラル社) 脂肪族系石油樹脂、軟化点105℃
【0042】
(E)プロセスオイル
e−1:PW−90(出光興産社)パラフィン系プロセスオイル、粘度95.5cSt
e−2:PW380(出光興産社)パラフィン系プロセスオイル、粘度380cSt
【0043】
(F)酸化防止剤
f−1:Irganox1010(BASF社) フェノール系酸化防止剤
f−2:Irgafos168(BASF社) リン系熱老化防止剤
【0044】
上述した原料を、表1に記載する配合量にて、プラネタリーミキサーにて、180℃15分混練して、各実施例及び各比較例に係るホットメルト接着剤組成物を得た。なお、各組成物のレオメーターによる180℃での粘度をあわせて表1に示す。
【0045】
≪評価≫
各実施例及び各比較例に係るホットメルト接着剤を、以下に従い評価した。
【0046】
<生地接着試験>
・サンプル準備
本発明の接着剤を、塗布装置(メーカ名:ノードソン社)の原料タンクに投入し、185℃、20分間加熱温調した。スプレーノズルで、ポリプロピレン樹脂板に、接着面の長さが100mm、幅1インチとなるようにスプレー塗布した。目付量は、50g/mとした。ファブリック生地(レーヨン100%の布を起毛したスエード調生地)を上記接着面を覆うように積層し、15秒間、10kgの錘を載せて接着面全面を圧着した。その後、錘を除き、1日常態(23℃、50%RH)にて養生し、サンプルを得た。
・表面の凹凸観察
上記サンプル準備で、接着面を全面圧着後、除重した後の試験片の外観を目視した。試験片の表面に凹凸が発生しなかったものを○、凹凸が発生したものを×とした。
・生地常態剥離強度
JIS K6854に基づき、常態剥離強度を測定した。
・生地80℃剥離強度
JIS K6854に基づき、上記サンプルを80℃炉内で1時間以上放置した後、そのまま剥離試験を行う。
【0047】
<ウレタン接着試験>
被着対象をPP板とウレタンフォームとした以外は生地接着試験と同様に試験を行った。上記ウレタンフォームには、ポリエーテル系のフレームラミネート用軟質ポリウレタン発泡体、見掛け密度20kg/m3、硬さ100N、厚さ2.0mm(株)イノアックコーポレーション製、EL−67Fを使用した。
【0048】
【表1】
【0049】
表−1から、下記の事柄が分かる。
まず、本発明に係る接着剤組成物は、樹脂板と織生地またはウレタン発泡体との接着で、十分な剥離強度があることが分かる。(実施例1〜実施例3参照)。そして、本発明に係る接着組成物は、所定の粘度を有していることから、塗布性に優れている。
一方、比較例1および2ではSISを含まないことで、80℃におけるウレタン発泡体との接着において剥離が生じた。比較例3では、SISとSEBSの総添加部数が非晶性ポリαオレフィンに対して過剰であることから80℃における剥離強度が得られなかった。比較例4では、SISのスチレン含量が24重量%と過剰であることから試験片は界面剥離を生じた。比較例5では、SISにMFRの低い成分を使用したことで、剥離が生じた。比較例6と7では、非晶性ポリαオレフィンの添加量が過少もしくは過剰であることから、十分な接着強度が得られなかった。比較例8では、非晶性ポリαオレフィンの軟化点が低く十分な接着強度が得られなかった。