特許第6907170号(P6907170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907170
(24)【登録日】2021年7月2日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   E01C19/26
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-177259(P2018-177259)
(22)【出願日】2018年9月21日
(65)【公開番号】特開2020-45739(P2020-45739A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】早坂 喜憲
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 実開平7−42366(JP,U)
【文献】 特開2000−345509(JP,A)
【文献】 特開平11−241309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の骨格を構成する金属製の機体フレームの内部に該機体フレームの左右両側に位置して形成され、液体を貯留可能な側部タンクと、
前記機体フレームの内部に前記側部タンク間に該側部タンクと隔壁を介して形成され、液体を貯留可能な中央タンクとを備え、前記側部タンクの前壁に整備用開口部を有し、前記隔壁の機体前後方向前側に連通開口を有した転圧機械において、
前記側部タンクの上壁または側壁に形成される第1塗装用開口部と、
前記隔壁に形成される第2塗装用開口部と、を備え、
前記第1塗装用開口部は、前記機体フレームの前後方向中央より後方に前記第2塗装用開口部に臨んで開口し、
前記第2塗装用開口部は、前記中央タンクの内側における機体前後方向後側の所定範囲に臨んで開口する転圧機械。
【請求項2】
前記第1塗装用開口部、前記第2塗装用開口部及び前記所定範囲は、一直線上に位置する、請求項1に記載の転圧機械。
【請求項3】
前記第1塗装用開口部または前記第2塗装用開口部に形成される第1ガイド部と、
前記第2塗装用開口部に形成される第2ガイド部と、を備え、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部は、塗装器具の二点に接触することで前記機体フレームを塗装するために用いる前記塗装器具のノズルの位置を規制する、請求項1に記載の転圧機械。
【請求項4】
前記所定範囲は、前記中央タンクの後壁の内面及び前記隔壁の前記中央タンク側の面の少なくともいずれか一方の範囲を含む、請求項1に記載の転圧機械。
【請求項5】
前記所定範囲は、前記中央タンクの上壁の内面と前記隔壁の前記中央タンク側の面とによって形成される角部を含む、請求項1に記載の転圧機械。
【請求項6】
前記側部タンクに形成され、機体の操縦者が前記機体フレームの上方に設けられる操縦席に搭乗するための搭乗部を備え、
前記第1塗装用開口部は、前記搭乗部に形成される、請求項1に記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転圧機械に係り、特にタンク内における塗装処理の精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装工事においては、タイヤローラ(転圧機械)を用いて締固め作業をすることが一般的である。
この締固め作業には、施工路面に敷かれた凝固前のアスファルトがローラに付着しないよう、ローラに水を噴霧することが行われている。
【0003】
そこで、転圧機械には、水を貯留する水タンクが備えられている。
ところで、このような締め固め作業に用いる水を作業現場近くで補給することが困難な場合や他機への給水のために、可能な限り大型の水タンクを備える必要があった。
そこで、転圧機械の機体フレームを、水を貯留することが可能な構造に形成して水の貯留量を増加させる技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−241309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上記特許文献1に開示される技術では、機体フレームとしての強度を確保しつつ水タンクとしての水の貯留量の増加、すなわち空洞部をより大きく設けるため、フレームを形成する板部材を鉄等の金属製にすることが好ましい。
しかしながら、金属製の機体フレームを用いると、貯留する水によって錆が発生する虞がある。そこで、機体フレームの内側を防錆処理するために塗装することが考えられる。
【0006】
しかしながら、タンクとしての機能を有する機体フレームは、貯留する水が漏えいしないよう、可能な限り閉塞されるように形成されている。したがって、機体フレームの内側を機体の外部から防錆処理として塗装するためには、限られた開放部(例えば機体フレーム内を清掃するための開口)から機体フレームの内側を塗装する必要がある。これにより、視認しにくい部分や塗装器具の届きにくい箇所について、充分に塗装がされない虞があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属製の機体フレームの内側を機体の外部から不足なく防錆処置をすることができる転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械は、機体の骨格を構成する金属製の機体フレームの内部に該機体フレームの左右両側に位置して形成され、液体を貯留可能な側部タンクと、前記機体フレームの内部に前記側部タンク間に該側部タンクと隔壁を介して形成され、液体を貯留可能な中央タンクとを備え、前記側部タンクの前壁に整備用開口部を有し、前記隔壁の機体前後方向前側に連通開口を有した転圧機械において、前記側部タンクの上壁または側壁に形成される第1塗装用開口部と、前記隔壁に形成される第2塗装用開口部と、を備え、前記第1塗装用開口部は、前記機体フレームの前後方向中央より後方に前記第2塗装用開口部に臨んで開口し、前記第2塗装用開口部は、前記中央タンクの内側における機体前後方向後側の所定範囲に臨んで開口することを特徴とする。
【0009】
これにより、機体フレームの機体前後方向中央より後方に、第2塗装用開口部に臨んで開口する第1塗装用開口部及び中央タンクの内側における所定範囲に臨んで開口する第2塗装用開口部に塗装器具を挿入することで、中央タンクの内側のうち、機体前後方向中央より後側を不足なく塗装することが可能とされる。
【0010】
その他の態様として、前記第1塗装用開口部、前記第2塗装用開口部及び前記所定範囲は、一直線上に位置するのが好ましい。
これにより、第1塗装用開口部、第2塗装用開口部及び所定範囲を一直線上に位置させ、塗装器具の移動可能な範囲を規制することで、作業者は、所定範囲を視認することなく的確に塗装することが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記第1塗装用開口部または前記第2塗装用開口部に形成される第1ガイド部と、前記第2塗装用開口部に形成される第2ガイド部と、を備え、前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部は、塗装器具の二点に接触することで前記機体フレームを塗装するために用いる前記塗装器具のノズルの位置を規制するのが好ましい。
これにより、第1ガイド部及び第2ガイド部に塗装器具の二点に接触することで塗装器具のノズルの位置を規制することで、作業者は、所定範囲を視認することなく的確に塗装することが可能とされる。
【0012】
その他の態様として、前記所定範囲は、前記中央タンクの後壁の内面及び前記隔壁の前記中央タンク側の面の少なくともいずれか一方の範囲を含むのが好ましい。
これにより、中央タンクの後壁の内面及び隔壁の中央タンク側の面の少なくともいずれか一方の範囲が所定範囲に含まれるようにすることで、整備用開口部から塗装器具のノズルが後面及び側面に届きにくいような場合であっても、的確に後面及び側面を塗装することが可能とされる。
【0013】
その他の態様として、前記所定範囲は、前記中央タンクの上壁の内面と前記隔壁の前記中央タンク側の面とによって形成される角部を含むのが好ましい。
これにより、中央タンクの上壁の内面と隔壁の前記中央タンク側の面によって形成される角部が所定範囲に含まれるようにすることで、整備用開口部から塗装器具のノズルが角部に届きにくいような場合であっても、的確に角部を塗装することが可能とされる。
【0014】
その他の態様として、前記側部タンクに形成され、機体の操縦者が前記機体フレームの上方に設けられる操縦席に搭乗するための搭乗部を備え、前記第1塗装用開口部は、前記搭乗部に形成されるのが好ましい。
これにより、第1塗装用開口部を搭乗部に形成することで、塗装後に第1塗装用開口部を封鎖するために取付ける蓋部材によって機体フレーム3の外側の視認性が低下することを抑制することが可能とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の転圧機械によれば、機体フレームの機体前後方向中央より後方に、第2塗装用開口部に臨んで開口する第1塗装用開口部及び中央タンクの内側における所定範囲に臨んで開口する第2塗装用開口部に塗装器具を挿入して中央タンクを塗装することを可能にしたので、中央タンクの内側のうち、機体前後方向中央より後側を不足なく塗装することができる。
【0016】
これにより、金属製の機体フレームの内側を機体の外部から不足なく防錆処置をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】機体の側面図である。
図2】機体フレームの斜視図である。
図3図2中I-I断面で断面を視認可能にした機体フレームの斜視図である。
図4図2中II-II断面で断面を視認可能にした機体フレームの斜視図である。
図5図2中III-III断面で断面を視認可能にした機体フレームの斜視図である。
図6図2中IV-IV断面で断面を視認可能にした機体フレームの斜視図である。
図7】左水タンクに形成された搭乗部の左前方斜め下から視た斜視図である。
図8】第1縁部及び第1支持端部を用いた中央水タンクの内側の塗装工程を説明する説明図である。
図9】第2縁部及び第2支持端部を用いた中央水タンクの内側の塗装工程を説明する説明図である。
図10】第3支持部を用いた中央水タンクの内側の塗装工程を説明する説明図である。
図11】整備用開口部から視た中央水タンクの内側の斜視図である。
図12】別実施形態に係る機体フレームの斜視図である。
図13】別実施形態に係る機体フレームの斜視図である。
図14図13中の範囲Aの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、機体1の側面図が示されている。
【0019】
機体(転圧機械)1は、機体フレーム3、前輪ローラ5、後輪ローラ7及び操縦席9を備えるタイヤローラである。この機体1は、機体フレーム3の前部に配設される前輪ローラ5及び後部に配設される後輪ローラ7を図示しない駆動装置の駆動力によって駆動させて走行しつつ、前輪ローラ5及び後輪ローラ7によって路面の締固め作業をすることが可能である。
【0020】
また、機体フレーム3の前後方向中央より後方であって上部には、機体1を作業者によって操縦可能な操縦席9が配設されている。この操縦席9は、後述する搭乗部70から搭乗することが可能である。
機体1の前輪ローラ5及び後輪ローラ7の近傍には、噴霧ノズル15、17がそれぞれ配設されている。この噴霧ノズル15、17は、機体フレーム3に貯留される水(液体)を前輪ローラ5及び後輪ローラ7に噴霧することが可能である。
【0021】
図2を参照すると、機体フレーム3の斜視図が示されている。また、図3〜6を参照すると、図2中I-I断面、II-II断面、III-III断面及びIV-IV断面の各断面を視認可能にした機体フレーム3の斜視図がそれぞれ示されている。以下、図2〜6を用いて機体フレーム3の構造について詳しく説明する。
【0022】
機体フレーム3には、右側水タンク(側部タンク)21、左側水タンク(側部タンク)23及び中央水タンク(中央タンク)25が形成されている。この機体フレーム3を構成する各タンクは、例えば鉄製の板部材によって仕切られることで形成されている。
【0023】
図3、4に示すように、右側水タンク21は、右端板30、右上端板(上壁)31、右下端板32、右前端板33、後部壁(後面)60及び右中央板(隔壁)34によって外形が形成されている。右端板30は、機体フレーム3における右端を形成する板部材である。右上端板31は、右側水タンク21の上端を形成する板部材である。この右上端板31には、前側の端部が前方に向けて下方に傾斜する傾斜部31aが形成されている。
【0024】
右下端板32は、機体フレーム3における右側の下端を形成する板部材である。この右下端板32には、前輪ローラ5の上方及び後方を覆う凹部35が形成されている。凹部35には、右凹部側板35aが備えられている。右凹部側板35aは、右下端板32の下面32aに対し垂直に延びる板部材である。
【0025】
右前端板33は右上端板31における傾斜部31aの前端と右下端板32における凹部35の前端とを接続するように溶接された板部材である。後部壁60は、右側水タンク21及び左側水タンク23の後端を形成する板部材である。右中央板34は、機体フレーム3の中央右側に配設された、機体前後方向及び上下方向に延びる板部材である。
【0026】
右側水タンク21の内側には、仕切壁36が複数設けられている。この仕切壁36は、機体左右方向及び上下方向に延びる板部材であり、右側水タンク21を形成する各板部材を支持している。このようにして、機体フレーム3は機体右側における骨格が構成され、この骨格により形成される空間をもって、水を貯留可能な右側水タンク21を備えることができる。
【0027】
図6に示すように、左側水タンク23は、左端板40、左上端板41、左下端板42、左前端板43、後部壁60及び左中央板(隔壁)44によって外形が形成されている。左端板40は、機体フレーム3における左端を形成する板部材である。左上端板41は、左側水タンク23の上端を形成する板部材である。この左上端板41には、前側の端部が前方に向けて下方に傾斜する傾斜部41aが形成されている。
【0028】
左下端板42は、機体フレーム3における左側の下端を形成する板部材である。この左下端板42には、前輪ローラ5の上方及び後方を覆う凹部45が形成されている。凹部45には、左凹部側板45aが備えられている。左凹部側板45aは、左下端板42の下面42aに対し垂直に延びる板部材である。
【0029】
左前端板43は左上端板41における傾斜部41aの前端と左下端板42における凹部45の前端とを接続するように溶接された板部材である。左中央板44は、機体フレーム3の中央左側に配設された、機体前後方向及び上下方向に延びる板部材である。
【0030】
また、左側水タンク23の内側には、仕切壁46が複数設けられている。この仕切壁46は、機体左右方向及び上下方向に延びる板部材であり、左側水タンク23を形成する各板部材を支持している。このようにして、機体フレーム3は機体左側における骨格が構成され、この骨格により形成される空間をもって、水を貯留可能な左側水タンク23を備えることができる。
【0031】
図5に示すように、中央水タンク25は、右中央板34、左中央板44、中央上端板(上面)51、中央下端板52、中央前端板53及び後部壁60によって外形が形成されている。中央上端板51は、機体フレーム3における上下方向中央を左右方向及び前後方向に延びる板部材である。この中央上端板51は、前方に向けて下方に傾斜し、左右端部が右中央板34及び左中央板44の機体上下方向中央より下側に溶接されている。
【0032】
中央下端板52は、機体フレーム3における左右方向中央の下端を形成する板部材であり、左右端部が右中央板34及び左中央板44の下端に溶接されている。中央前端板53は、中央上端板51の前端と中央下端板52の前端とを接続するように溶接された板部材である。このようにして、機体フレーム3は機体左右方向中央及び上下方向中央より下方における骨格が構成され、この骨格により形成される空間をもって、水を貯留可能な中央水タンク25を備えることができる。
【0033】
図7を参照すると、左側水タンク23に形成された搭乗部70の左前方斜め下から視た斜視図が示されている。左側水タンク23には、操縦席9の左側に対応する位置、換言すると、機体前後方向中央より後方の一部を凹ませるようにして搭乗部70が形成されている。この搭乗部70は、前壁板72、後壁板74、側壁板(側壁)76及びステップ78を備えて形成されている。
【0034】
前壁板72及び後壁板74は、搭乗部70における機体前後方向前側及び後側の壁を形成する板部材である。また、側壁板76は、左中央板44の機体左右方向左方に位置し、前後方向前側及び後側の端部が前壁板72及び後壁板74に溶接されている。
【0035】
ステップ78は、搭乗部70の下部に位置する一段目板78aと中央水タンク25の中央上端板51より上方に対応する位置に配設される二段目板78bとで構成された、例えば2段の階段である。一段目板78aは、前壁板72の下端と後壁板74の下端とが連続するように接続している。また、一段目板78aは、機体左右方向左側の端部が左端板40に溶接され、右側の他端が側壁板76に溶接されている。
【0036】
二段目板78bは、機体前後方向前側の端部及び後側の端部が前壁板72及び後壁板74にそれぞれ溶接されている。また、二段目板78bは、機体左右方向左側の端部が側壁板76に溶接され、機体右側の他端が左中央板44に溶接されている。
【0037】
図2図6に示すように、右凹部側板35a及び左凹部側板45aには、整備用開口部35b、45bがそれぞれ設けられている。整備用開口部35b、45bは、右側水タンク21、左側水タンク23及び中央水タンク25の内部の清掃等の整備や、後述する各タンクの内部の塗装に用いられる開口である。また、整備用開口部35b、45bには、清掃用蓋35c、45cがそれぞれ脱着可能に取付けられている(図2)。この清掃用蓋35c、45cは、例えば図示しないパッキンを介して整備用開口部35b、45bにボルトで固定することで、機体フレーム3に貯留される水が整備用開口部35b、45bから漏えいすることを防止することが可能である。
【0038】
右中央板34及び左中央板44には、中央水タンク25の側面を形成する部分における機体前後方向前側の一部に連通開口34a、44aが設けられている(図4、5)。これにより、右側水タンク21と中央水タンク25及び左側水タンク23と中央水タンク25の間で水を流通させることが可能である。
【0039】
搭乗部70における側壁板76には、後述する第2開口部90に臨んで開口する第1開口部(第1塗装用開口部)80が設けられている(図7)。第1開口部80の上端には、機体前後方向に延びる第1縁部(第1ガイド部)81が形成されている。また、第1開口部80の後端には、機体上下方向に延びる第2縁部(第1ガイド部)82が形成されている。この第1開口部80は、後述する塗装工程を終了させたあと、蓋部材80aによって閉止される(図2)。
【0040】
さらに、左中央板44には、略F字型の第2開口部(第2塗装用開口部)90が設けられている(図4)。第2開口部90には、第1支持端部(第2ガイド部)91、第2支持端部(第2ガイド部)92及び誘導部(第2ガイド部)93が形成されている。第1支持端部91は、右中央板34及び中央上端板51によって形成される中央水タンク25の内側における機体上下方向上側及び左右方向右側のコーナC1(角部)と第1縁部81とを直線で結んだ位置に対応するよう形成された開口の縁である。
【0041】
第2支持端部92は、例えば右中央板34及び後部壁60によって形成される中央水タンク25の内側における機体前後方向後側及び左右方向右側のコーナC2(角部)と第2縁部82とを直線で結んだ位置に対応するよう形成された溝の縁である。誘導部93は、例えば中央水タンク25の内側における右中央板34の機体前後方向中央と第1開口部80の前後方向中央とを直線で結んだ位置に対応するよう形成された溝である。
【0042】
図8図10を参照すると、中央水タンク25の内側の塗装工程を説明する説明図が示されている。また、図11を参照すると、整備用開口部45bから視た中央水タンク25の内側の斜視図が示されている。以下、図8図11に基づき、スプレーガン(塗装器具)100を用いた中央水タンク25の内側の塗装処理のための塗装工程を説明する。ここで、スプレーガン100は、例えば長さ1mのパイプ100aの先端に設けられたノズル100bから塗料を霧状にして塗布する道具である。
【0043】
機体フレーム3は、上記したように例えば鉄製の板部材で形成されているため、防錆処理として塗装が必要である。特に機体フレーム3に形成された各タンクの内側は、水を貯留するため、入念な塗装が必要である。しかしながら、各タンクは作業者が中に入って塗装することが困難な場合がある。そこで、整備用開口部35b、45b、第1開口部80及び第2開口部90からスプレーガン100を挿入することで、機体フレーム3の外側から各タンクの内側を不足なく塗装して防錆処理をする。
【0044】
中央水タンク25の内側のうち機体前後方向後側については、整備用開口部35b、45bからでは届かないため、第1開口部80及び第2開口部90からスプレーガン100を挿入して塗装を行う。
詳しくは、図8図10に示すように、第1開口部80から第2開口部90を貫通させるようにしてスプレーガン100を挿入し、中央水タンク25の内側における機体前後方向後側を塗装する。
まず、第1開口部80の上側に形成された第1縁部81と第2開口部90に形成された第1支持端部91とにスプレーガン100のパイプ100aを摺動させるようにスプレーガン100を移動させながらコーナC1及びその周辺(範囲A1、所定範囲)を塗装する(図8)。ここで、第1支持端部91がコーナC1と第1縁部81とを直線で結んだ位置に対応するよう形成された開口の縁であるため、ノズル100bの向きが範囲A1に向かうように規制されるので、作業者は、コーナC1を目視することなく、範囲A1の塗装をすることができる。
【0045】
次に、第1開口部80の後端に形成された第2縁部82と第2開口部90に形成された第2支持端部92とにスプレーガン100のパイプ100aを摺動させるようにスプレーガン100を移動させながらコーナC2及びその周辺(範囲A2、所定範囲)を塗装する(図9)。ここで、第2支持端部92がコーナC2と第2縁部82とを直線で結んだ位置に対応するよう形成された開口の縁であるため、ノズル100bの向きが範囲A2に向かうように規制されるので、作業者は、コーナC2を目視することなく、範囲A2の塗装をすることができる。
【0046】
次に、誘導部93にスプレーガン100のパイプ100aを挿入させるようにして、中央水タンク25の内側における右中央板34の機体前後方向中央及びその周辺(範囲A3、所定範囲)を塗装する(図10)。ここで、誘導部93が中央水タンク25の内側における右中央板34の機体前後方向中央と第1開口部80の前後方向中央とを直線で結んだ位置に対応するよう形成された溝であるため、ノズル100bの向きが範囲A3に向かうように規制されるので、作業者は、範囲A3を目視することなく、誘導部93の縁にスプレーガン100のパイプ100aを沿わせるようにして範囲A3の塗装をすることができる。
【0047】
このように範囲A1〜範囲A3を塗装することで、作業者は、機体フレーム3の外部から中央水タンク25の内側を視認することなく、中央水タンク25の内側を不足なく塗装することができる。なお、範囲A1〜範囲A3の機体左右方向反対側の範囲については、例えば塗料を吹く向きを90°変えるようにノズル100bの向きを変更して塗装してもよく、右側水タンク21に第1開口部80及び第2開口部90同様の開口及び各ガイドを設けるようにしてもよい。
【0048】
中央水タンク25の内側のうち機体前後方向前側の塗装のしやすい範囲については、図11に示すように左側水タンク23の整備用開口部45bから連通開口44aにスプレーガン100を挿入して塗装を行う。右側水タンク21も同様に、整備用開口部35bから連通開口34aにスプレーガン100を挿入して塗装を行う。
このようにして、中央水タンク25の内側のうち機体前後方向前側の塗装のしやすい範囲のみならず、整備用開口部35b、45bから遠く塗装のしにくい機体前後方向中央や機体前後方向後側の範囲A1〜A3についても不足なく塗装することができる。
【0049】
次に、図12〜14を用いて別実施形態について説明する。なお、上記本実施形態と共通の構成、作用効果については説明を省略し、ここでは本実施形態と異なる部分について説明する。
【0050】
図12、13を参照すると、別実施形態に係る機体フレーム3の斜視図が示されている。また、図14を参照すると、図13中の範囲Aの詳細図が示されている。
別実施形態における機体フレーム3には、第3開口部(第1塗装用開口部)180及び第4開口部(第2塗装用開口部)190が設けられている。
【0051】
第3開口部180は、機体フレーム3における右側水タンク21の右上端板31の機体前後方向中央より後側に設けられた開口であり、第4開口部190に臨んで開口する。この第3開口部180は、後述する塗装工程を終了させたあと、蓋部材180aによって閉止される(図12)。
【0052】
第4開口部190は、右中央板34の機体前後方向中央より後側に設けられた機体前後方向に延びる開口であり、例えば左中央板44、中央上端板51及び中央前端板53における、範囲A1、範囲A2または範囲A3に対応する範囲(所定範囲)に臨んで開口する。この第4開口部190の内周縁には、第4支持部(第1ガイド部)191及び第5支持部(第2ガイド部)192が形成されている。第4支持部191は、前方に向かうにつれて下方に中央上端板51と同じ角度で傾斜するように第4開口部190の内周縁の上側に形成されたガイドである。第5支持部192は、同様に前方に向けて下方に中央上端板51と同じ角度で傾斜するように第4開口部190の内周縁の下側に形成されたガイドである。
【0053】
以下、図13及び14に基づき、別実施形態に係るスプレーガン100を用いた中央水タンク25の内側の防錆処理のための塗装工程を説明する。
まず、スプレーガン100のパイプ100a及びノズル100bを第3開口部180及び第4開口部190に貫通させ、ノズル100bを中央水タンク25の内側に位置させる。このとき、ノズル100bは、第3開口部180及び第4開口部190に貫通させる前に予めパイプ100aに対して垂直方向に向くようにする。
【0054】
次に、例えば第4開口部190の第5支持部192を支点にしてスプレーガン100を垂直に立てるように回動させる。このようにスプレーガン100を垂直に立てるように回動させていくと、パイプ100aは、第4支持部191に当接する。
【0055】
その後、パイプ100aを第4支持部191及び第5支持部192と摺動させつつ、中央水タンク25の内側の塗装を実施する。これにより、パイプ100aの機体上下方向における角度を規制して、ノズル100bの位置を規制することができる。
【0056】
以上説明したように、本発明に係る転圧機械では、機体の骨格を構成する金属製の機体フレーム3の内部に該機体フレーム3の左右両側に位置して形成され、水を貯留可能な右側水タンク21及び左側水タンク23と、機体フレーム3の内部の右側水タンク21、左側水タンク23間に右側水タンク21、左側水タンク23と右中央板34及び左中央板44を介して形成され、水を貯留可能な中央水タンク25を備え、右側水タンク21及び左側水タンク23の右凹部側板35a及び左凹部側板45aに整備用開口部35b及び整備用開口部45bを有し、右中央板34及び左中央板44の機体前後方向前側に連通開口を有した転圧機械において、右側水タンク21の側壁板76及び左側水タンク23の上壁31に形成される第1開口部80及び第3開口部180と、右中央板34及び左中央板44に形成される第2開口部90と、を備え、第1開口部80は、機体フレーム3の機体前後方向中央より後方に第2開口部90に臨んで開口し、第2開口部90は、中央水タンク25の内側における機体前後方向後側の範囲A1、範囲A2または範囲A3(以下、まとめて所定範囲という)に臨んで開口する。
【0057】
従って、機体フレーム3の機体前後方向中央より後方に、第2開口部90に臨んで開口する第1開口部80及び所定範囲に臨んで開口する第2開口部90にスプレーガン100を挿入して中央水タンク25を塗装することを可能にしたので、中央水タンク25の内側のうち、機体前後方向中央より後側を不足なく塗装することができる。
【0058】
特に、第1開口部80または第4開口部190に形成される第1縁部81または第4支持部191と、第2開口部90または第4開口部190に形成される第1支持端部91または第5支持部192と、を備え、第1縁部81及び第1支持端部91、第4支持部191及び第5支持部192は、機体フレーム3を塗装するために用いるスプレーガン100のノズル100bの位置を、スプレーガン100のパイプ100aの二点に接触することで規制するようにしたので、作業者は、所定範囲を視認することなく的確に塗装することができる。
【0059】
さらに、第1開口部80、第2開口部90及び範囲A1は、一直線上に位置するので、作業者は、範囲A1を視認することなく的確に塗装することができる。
【0060】
そして、範囲A1は、中央水タンク25の中央上端板51の内面と右中央板34の内面とによって形成されるコーナC1を含むので、整備用開口部35b、45bからスプレーガン100のノズル100bがコーナC1に届きにくいような場合であっても、的確に角部を塗装することができる。
【0061】
また、範囲A1の他にも、中央水タンク25の後部壁60のコーナC2を含む範囲A2及び左右方向側部の右中央板34の範囲A3に向けて第2支持端部92及び誘導部93によりスプレーガン100をガイドするようにしたので、整備用開口部35b、45bからスプレーガン100のノズル100bが後部壁60、右中央板34及び左中央板44に届きにくいような場合であっても、的確に後部壁60、右中央板34及び左中央板44を塗装することができる。
【0062】
そして、右側水タンク21に形成され、機体の操縦者が機体フレーム3の上方に設けられる操縦席9に搭乗するための搭乗部70を備え、第1開口部80は、搭乗部70に形成されるので、塗装後に第1開口部80を封鎖するために取付ける蓋部材80aによって機体フレーム3の外側の視認性が低下することを抑制することができる。
【0063】
以上で本発明に係る転圧機械の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、側壁板76に第1開口部80を形成し、左中央板44の二段目板78bより下方の位置に第2開口部90を形成するようにしたが、二段目板78bに第1開口部80を形成するようにしてもよく、左中央板44の二段目板78bより上方の位置に第1開口部80を形成し、中央上端板51に第2開口部90を形成するようにしてもよい。
また、本実施形態では、スプレーガン100を用いて塗装する防錆処理について説明したが、その他の塗装器具を用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 機体(転圧機械)
3 機体フレーム
9 操縦席
21 右側水タンク(側部タンク)
23 左側水タンク(側部タンク)
25 中央水タンク(中央タンク)
31 右上端板31(上壁)
34 右中央板(隔壁)
34a 連通開口
35a 右凹部側板
35b 整備用開口部
44 左中央板(隔壁)
44a 連通開口
45a 左凹部側板
45b 整備用開口部
51 中央上端板(上面)
60 後部壁(後面)
70 搭乗部
76 側壁板(側壁)
80 第1開口部(第1塗装用開口部)
81 第1縁部(第1ガイド部)
82 第2縁部(第1ガイド部)
90 第2開口部(第2塗装用開口部)
91 第1支持端部(第2ガイド部)
92 第2支持端部(第2ガイド部)
93 誘導部(第2ガイド部)
100 スプレーガン(塗装器具)
100b ノズル
180 第3開口部(第1塗装用開口部)
190 第4開口部(第2塗装用開口部)
191 第4支持部(第1ガイド部)
192 第5支持部(第2ガイド部)
図1
図2
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図5
図6
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図12
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図14