【課題を解決するための手段】
【0018】
これら課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法、及び請求項10に記載の特徴を有するプラントにより解決される。本発明の有利な更なる実施形態及び構成は、各従属請求項に記載したとおりである。
【0019】
上述した課題を解決するために、本発明は、希土類磁石の製造のための粉末状出発材料の生産方法を提案する。
【0020】
第1ステップにおいては、少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金を準備する。これら磁性材料及び/又は合金はそれぞれ低濃度の不純物、特に、不所望ではあるが不可避かつ無視できない濃度の不純物を含む。この場合に少なくとも1種の磁性材料は、好適には、例えば、モータ及び/又は電気機器に使用され、かつもはやそのモータ及び/又は電気機器においては使用価値がない使用済み磁石である。少なくとも1種の磁性材料又は使用済み磁石は、好適には、Nd-Fe-B(ネオジム-鉄-ホウ素)磁石である。不純物は、例えば、酸素、炭素、及び/又は、窒素、酸素含有化合物、炭素含有化合物、及び/又は、窒素含有化合物、又は準備した各材料に含まれる類似の不純物であり得る。不純物は多くの場合、焼結磁石中において、酸素、炭素、及び/又は、窒素とネオジムとの化合物によって形成されるものであり、酸素は通常、酸化ネオジムNd
2O
3として結合し、窒素は窒化ネオジムNNdとして結合し、炭素はネオジムカーバイドNd
xC
yとして結合する。更に、酸素-窒素含有不純物は、例えば、硝酸ネオジム-III Nd(NO
3)
3として含まれ得る。これに加えて、水素、水素含有化合物などによる不純物も想定可能である。準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有すると共に準備した少なくとも1種の合金における低濃度の不純物は、少なくとも0.01重量%〜最大1.5重量%の間にあり得る。
【0021】
例示的な実施形態によれば、不純物濃度は、例えば特に、酸素であれば0.1重量%〜1.0重量%の間、窒素であれば0.01重量%〜0.1重量%の間、及び炭素であれば0.01重量%〜0.15重量%の間にあり得る。
【0022】
次のステップにおいては、準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有すると共に準備した少なくとも1種の合金を粉砕する。この場合、少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金から、粉末状中間製品を生成し、粉末状中間製品は、準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有すると共に準備した少なくとも1種の合金よりも高濃度の不純物を含み得る。粉末状中間製品中における不純物濃度は、好適には、少なくとも0.01重量%〜最大2.0重量%の間にある。
【0023】
例示的な実施形態によれば、粉末状中間製品中における不純物濃度は、例えば特に、酸素であれば0.1重量%〜1.2重量%の間、窒素であれば0.01重量%〜0.15重量%の間、並びに炭素であれば0.01重量%〜0.20重量%の間にあり得る。
【0024】
少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金を粉砕することにより、酸素、炭素、窒素、及び/若しくは水素、又は対応の酸素含有化合物、炭素含有化合物、窒素含有化合物、及び/若しくは水素含有化合物などの不純物が、環境から粉砕すべき材料に付加的に吸収される可能性がある。これにより、準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金に比べて、粉末状中間製品中における不純物濃度が増加する。
【0025】
更なるステップにおいては、不純物を含む粉末状中間製品を分級するために、不純物を含む粉末状中間製品を、少なくとも1つの基準に基づいて少なくとも2つのフラクションに分割する少なくとも1個の分級機を設ける。第1フラクションには、高濃度の不純物が蓄積し、第2フラクションには、不純物が蓄積しないか又は第1フラクションよりも低濃度の不純物が蓄積する。粉末状中間製品を分級することによって不純物濃度全体は増加する可能性があるが、不純物の割合は、分級することによって少なくとも2つのフラクションに分けることが可能であるため、吸収された不純物の割合及び粉末状中間製品中に吸収された他の不純物の割合は、少なくとも2つのフラクションにより選別することができる。
【0026】
第1フラクション中における不純物濃度は、少なくとも0.02重量%〜最大10.0重量%の間にあり得る。例示的な実施形態によれば、不純物の濃度は、例えば特に、酸素であれば0.5重量%〜8.0重量%の間、窒素であれば0.05重量%〜0.35重量%の間、並びに炭素であれば0.05重量%〜0.35重量%の間にあり得る。
【0027】
第2フラクション中における不純物濃度は、最大1.0重量%であり得る。例示的な実施形態によれば、第2フラクション中における不純物濃度は、酸素であれば0.01重量%又は最大0.2重量%未満、窒素であれば0.01重量%又は最大0.05重量%未満、炭素であれば0.01重量%又は最大0.05重量%未満であり得る。
【0028】
フラクション、特に不純物を含まないか又は低濃度の不純物を含む第2フラクションにより、希土類磁石の製造及び/又は生産をするための出発材料が形成される。
【0029】
動的分級機により粉末状中間製品を少なくとも2つのフラクションに分級することは、動的分級工程とも称することができる。
【0030】
少なくとも1つの基準は、粒径などの物理的性質によって規定されることが想定可能である。粒子密度などの他の全ての基準は、場合により、粉末状中間製品を2つのフラクションに分級するのに適している。
【0031】
本発明の好適かつ例示的な実施形態によれば、高濃度の不純物を含む第1フラクションは、小さな粒径で形成され、不純物を含まないか又は低濃度の不純物を含む第2フラクションは、第1フラクションよりも大きな粒径で形成される。
【0032】
粉末状中間製品、特に不純物を含まないか又は低濃度の不純物を含む第2フラクションは、動的分級機によって繰り返し分級可能であり、少なくとも2つのフラクションに分割することができる。このように、粉末状中間製品中に存在する不純物が少なくとも2つのフラクションにより連続的に選別可能であると共に低減可能であり、これにより不純物を含まないか又は可及的に僅かな不純物を含む、希土類磁石を製造するための出発材料を得ることができる。更に、反復的な分級工程により、例えば粒径に関して均一な材料を得ることもできる。動的分級機による分級は任意の回数に亘って繰り返すことが可能であり、これにより希土類磁石を製造するための少なくともほぼ均一な出発材料を生産することができる。
【0033】
粉末状中間製品を少なくとも2つのフラクションに分級することにより、第2フラクション中における不純物濃度が、第1フラクションに比べて、少なくとも4分の1〜少なくとも4分の3以上に低減することが想定可能である。不純物は、場合により第2フラクションから完全に分離することができる。
【0034】
本発明の例示的な実施形態に応じて、少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金を、生産された粉末状中間製品が粗粉末又は微粉末になるよう粉砕することが想定可能である。この点に関しては、粗粉砕と微粉砕との間で区別することができる。
【0035】
少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金の粉砕、特に粗粉末への粉砕は、機械的粉砕プラントによる1回以上の粉砕工程か又は水素技術を使用して行うことができる。この場合、水素の添加により、少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金の脆化を引き起こすことができる。
【0036】
粗粉砕が行われ、従って粉末状中間製品が粗粉末である場合、分級は、粗大粒子を含む粉末状中間製品を使用して動的分級機によって行うことができる。この場合、粗大粒子を含む粉末状中間製品は、少なくとも1つの基準に従って少なくとも2つのフラクションに分割することができる。不純物を含まないか又は低濃度の不純物を含むフラクションは、分級の終了後に更なる粉砕を施すことにより、微粉末が生産されると共に、希土類磁石を製造するための出発材料として提供されることが想定可能である。粗粉末は、場合により、動的分級機によって少なくとも2つのフラクションに分級された直後に、希土類磁石を製造するための希土類磁石として機能することができる。この場合、特に、不純物を含まないか又はより低濃度の不純物を含むフラクションが希土類磁石を製造するための出発材料として機能する。
【0037】
場合により、粗粉砕の終了後に、機械的粉砕プラントによる1回又は複数回の粉砕工程によって微粉砕を実施することができる。これにより、事前に準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金から微細粒子を含む粉末状中間製品が生産され、その微細粒子を含む粉末状中間製品が少なくとも1つの基準に従って動的分級機により少なくとも2つのフラクションに分級される。
【0038】
少なくとも1種の保護ガスを、少なくとも1個の分級機に供給することにより、粉末状中間製品を保護ガス雰囲気下で少なくとも2つのフラクションに分割することが想定可能である。保護ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素、又は類似の保護ガスを使用することができる。
【0039】
固体状態、液体状態、又は気体状態の少なくとも1種の添加剤を、粉砕前又は粉砕中に、準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金に付加的に供給することができる。少なくとも1種の添加剤は、例えば、ステアリン酸亜鉛、イソプロパノールなどを含むことができる。
【0040】
少なくとも1種の添加剤は、準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有すると共に、準備した少なくとも1種の合金の粉砕中に、その少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有すると共に準備した少なくとも1種の合金が不純物を吸収しないか又はより僅かな不純物を吸収するよう作用する。これにより、不純物濃度は、準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有すると共に準備した少なくとも1種の合金に比べて、増加しないか又は僅かにしか増加しない。少なくとも1種の添加剤は、各材料における個々の粒子の周囲にコーティングのように配置されるため、粉末状中間製品中における不純物濃度が増加しないか又は僅かにしか増加しない。
【0041】
更に、本発明は、特に請求項1に係る方法に従って生産された、希土類磁石を製造するための粉末状出発材料の生産プラントに関する。本発明に係るプラントは、少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金を粉砕することにより、粉末状中間製品を生産する少なくとも1個の粉砕装置を備える。少なくとも1個の粉砕装置は、機械的粉砕機とすることが可能であり、各機械的粉砕機により、より高濃度の不純物を含む粉末状中間製品を生産することができる。粉砕装置は、場合により、準備した少なくとも1種の磁性材料及び/又は希土類金属を含有する少なくとも1種の合金を、水素技術を使用して粉末状中間製品に生産可能な装置であり得る。
【0042】
プラントは、少なくとも1つの基準に従って、粉末状中間製品を分級するよう構成された少なくとも1個の分離装置を更に備える。少なくとも1個の分離装置は、不純物を含む粉末状中間製品を少なくとも1つの基準に基づいて少なくとも2つのフラクションに分割可能な動的分級機によって構成することができる。この場合、第1フラクションは、高濃度の不純物を含み、第2フラクションは、不純物を含まないか又は第1フラクションよりも低濃度の不純物を含む。不純物を含まないか又はより低濃度の不純物を含む第2フラクションは、希土類磁石を製造するための出発材料を形成する。
【0043】
粉末状中間製品の分級をするための少なくとも1つの基準は、粉末状中間製品における粒径、粒子密度などを含むことができる。
【0044】
本発明の例示的な実施形態によれば、少なくとも1個の分離装置は、プラントに統合された少なくとも1個の動的分級機を含むことができる。少なくとも1個の分離装置は、場合により、プラントに対して別箇の構成要素として構成された少なくとも1個の動的分級機を含むことができ、分級されるべき粉末状中間製品が少なくとも1個の動的分級機に供給される。
【0045】
更に、動的分級機に少なくとも1種の保護ガスが供給され、これにより少なくとも1つの基準に基づく分級工程が保護ガス雰囲気下で行われることも想定可能である。保護ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素、又は類似の保護ガスを使用することができる。
【0046】
更に、生産された粉末状中間製品と環境との不所望の反応を少なくとも大部分抑制可能とするために、固体状態、液体状態、又は気体状態の少なくとも1種の添加剤を、少なくとも1個の粉砕装置に供給することができる。
【0047】
不純物は、例えば、酸素、炭素若しくは窒素、及び/又は、その化合物などの非金属物質であり得る。水素などの不純物、その化合物、又は類似の不純物も想定可能である。
【0048】
上述した希土類磁石を製造するための粉末状出発材料を生産する本発明に係る方法の全ての態様及び実施形態は、希土類磁石を製造するための粉末状出発材料を生産する本発明に係るプラントの一部でもあるか又はプラントにも適用可能であることに留意されたい。従って、上述した記載において、希土類磁石を製造するための粉末状出発材料を生産する本発明に係る方法における特定の態様及び実施形態について言及されている場合、その態様及び実施形態は、本発明に係るプラントにも適用されるものと理解される。
【0049】
以下、添付図面に基づいて本発明の例示的な実施形態及びその利点を詳述する。図面における個々の要素間の寸法比は、実際の寸法比を必ずしも表すものではない。これは、明瞭性を高める見地から幾つかの形状が簡略表示されており、他の幾つかの形状は拡大表示されているからである。