特許第6907443号(P6907443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6907443保護フィルム送出装置、長尺物送出システム、及び長尺物送り出し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907443
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】保護フィルム送出装置、長尺物送出システム、及び長尺物送り出し方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20210708BHJP
【FI】
   E01D21/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-236542(P2017-236542)
(22)【出願日】2017年12月9日
(65)【公開番号】特開2019-105036(P2019-105036A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100158883
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 哲平
(72)【発明者】
【氏名】金澤 宏明
(72)【発明者】
【氏名】末吉 昭徳
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−214891(JP,A)
【文献】 特開昭55−092407(JP,A)
【文献】 特開2007−032005(JP,A)
【文献】 特開2001−172918(JP,A)
【文献】 特開2006−99855(JP,A)
【文献】 特開昭64−39712(JP,A)
【文献】 実開昭55−050119(JP,U)
【文献】 実開昭55−044817(JP,U)
【文献】 特開昭54−109217(JP,A)
【文献】 特開昭55−016153(JP,A)
【文献】 特開昭55−013310(JP,A)
【文献】 特開昭55−009937(JP,A)
【文献】 実開昭55−101910(JP,U)
【文献】 特開昭55−042978(JP,A)
【文献】 特開平11−180097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0163058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端回転搬送体上に載せられる長尺物を保護する保護フィルムを送り出し、該長尺物を送り出す方向において該無端回転搬送体より後方に配置される装置であって、
保護フィルムロールと、
前記保護フィルムロールを軸周りに回転可能に固定する固定手段と、を備え、
前記保護フィルムロールの保護フィルムが前記長尺物と前記無端回転搬送体の間に敷設されることで、該無端回転搬送体の回転に伴って該保護フィルムロールが回転して、該保護フィルムが送り出される、
ことを特徴とする保護フィルム送出装置。
【請求項2】
軸周りに回転可能な巻取り回転体を具備し、前記無端回転搬送体の回転によって送り出される前記保護フィルムを該巻取り回転体に巻き取る保護フィルム回収手段を、さらに備え、
前記保護フィルム回収手段は、前記無端回転搬送体と前記保護フィルムロールとの間に配置され、
前記保護フィルムロール又は前記固定手段の一部と、前記保護フィルム回収手段の一部とが、無端回転部材によって連結され、該保護フィルムロールの回転に伴って前記巻取り回転体が回転する、
ことを特徴とする請求項1記載の保護フィルム送出装置。
【請求項3】
無端回転搬送体上に載せられる長尺物を保護フィルムで保護しながら送り出すシステムにおいて、
前記無端回転搬送体を回転させることによって、該無端回転搬送体上に載せられる前記長尺物を送り出す回転搬送装置と、
保護フィルムロール、及び該保護フィルムロールを軸周りに回転可能に固定する固定手段を具備する保護フィルム送出装置と、を備え、
前記保護フィルム送出装置は、前記長尺物を送り出す方向において前記回転搬送装置より後方に配置され、
前記保護フィルムロールの前記保護フィルムが前記長尺物と前記無端回転搬送体の間に敷設されることで、該無端回転搬送体の回転に伴って該保護フィルムロールが回転して、該保護フィルムが送り出され、
前記無端回転搬送体と前記長尺物の間に前記保護フィルムを敷設した状態で、該長尺物を送り出す、
ことを特徴とする長尺物送出システム。
【請求項4】
前記保護フィルム送出装置が、前記無端回転搬送体の回転によって送り出される前記保護フィルムを巻取り回転体に巻き取る保護フィルム回収手段を、さらに具備し、
前記保護フィルム回収手段は、前記回転搬送装置と前記保護フィルムロールとの間に配置され、
前記巻取り回転体は、軸周りに回転可能であり、
前記保護フィルムロール又は前記固定手段の一部と、前記保護フィルム回収手段の一部とが、無端回転部材によって連結され、該保護フィルムロールの回転に伴って前記巻取り回転体が回転する、
ことを特徴とする請求項3記載の長尺物送出システム。
【請求項5】
長尺物送出システムを用いて長尺物を送り出す方法において、
前記長尺物送出システムは、無端回転搬送体を回転させることによって該無端回転搬送体上に載せられる前記長尺物を送り出す回転搬送装置と、保護フィルムロール及び該保護フィルムロールを軸周りに回転可能に固定する固定手段を具備する保護フィルム送出装置と、を有し、
前記長尺物を送り出す方向において前記回転搬送装置より後方に前記保護フィルム送出装置を配置するとともに、前記保護フィルムロールの保護フィルムが敷設された前記無端回転搬送体上に前記長尺物を載置する長尺物載置工程と、
前記無端回転搬送体を回転させることによって、該無端回転搬送体と前記長尺物の間に前記保護フィルムを敷設した状態で該長尺物を送り出す長尺物送出工程と、を備え、
前記無端回転搬送体の回転に伴って前記保護フィルムロールが回転し、前記保護フィルム送出装置から前記保護フィルムが送り出される、
ことを特徴とする長尺物送り出し方法。
【請求項6】
前記保護フィルム送出装置が、前記無端回転搬送体の回転によって送り出される前記保護フィルムを巻取り回転体に巻き取る保護フィルム回収手段を、さらに具備し、
前記長尺物載置工程では、前記回転搬送装置と前記保護フィルムロールとの間に前記保護フィルム回収手段を配置し、
前記巻取り回転体は、軸周りに回転可能であり、
前記保護フィルムロール又は前記固定手段の一部と、前記保護フィルム回収手段の一部とが、無端回転部材によって連結され、
前記長尺物送出工程では、前記保護フィルムロールの回転に伴って前記巻取り回転体が回転することで、送り出される前記保護フィルムを該巻取り回転体に巻き取る、
ことを特徴とする請求項5記載の長尺物送り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば橋桁のような長尺物を送り出す技術に関するものであり、より具体的には、長尺物を傷つけることなく無端回転搬送体によって送り出すため、この無端回転搬送体用の保護フィルムを送り出す装置と、この装置を利用した長尺物送出システム、そしてこのシステムを用いた送り出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の上方を跨いで架設される跨道橋や、線路の上方を跨いで架設される跨線橋など、既に供用されている施設の上方に架け渡される橋梁を建設する場合、橋桁の設置には送り出し架設工法が採用されることが多い。この送り出し架設工法は、一方の支点側から橋桁を徐々に送り出し、橋桁の先端を他方の支点側まで到達させる工法である。したがって橋桁の先端が他方の支点側に到達するまでは、この橋桁は一端側のみで支持されるいわゆる片持ち状態とされる。
【0003】
送り出し架設工法において橋桁を送り出すにあたってはこれまで種々の手法が採用されており、例えば、水平ジャッキを利用して送り出す手法、あるいはエンドレスローラ式の送出装置(以下、単に「エンドレスローラ式送出装置」という。)を利用して送り出す手法などが知られている。水平ジャッキを利用して送り出す手法は、送り出し方向に前後に並んで設けられた2つの支持体と、これら支持体間が伸縮するように支持体を移動させるジャッキを備えた装置を利用するもので、2つの支持体によって交互に受け替えられながら橋桁がジャッキによって移動することで、いわば尺取虫方式で送り出す手法である。
【0004】
一方、エンドレスローラ式送出装置を利用する手法は、橋桁を載せた無端回転搬送体が回転することによって、橋桁を送り出す手法である。このエンドレスローラ式送出装置は、キャタピラ(クローラ)式送出装置とも呼ばれ、両端のローラ(プーリ)に無端状のベルトである無端回転搬送体を掛け回したものであり、この無端回転搬送体が回転することによってその上に載せられた橋桁が送り出されるわけである。特許文献1でも提案されているように、送り出し架設工法においては近年この手法が主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−172918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在共用されている多くの建設インフラストラクチャー(以下、「建設インフラ」という。)は高度経済成長期に集中的に整備されたものであり、既に相当期間が経過していることから我が国の建設インフラ全体が更新の時期を迎えようとしている。とはいえ数多くの建設インフラを同時期に更新し、あるいは大規模な補強を行うことは、予算の面でも労力の点でも難しい。そこで近年では、建設インフラの健全性を適切に判断したうえで早い段階から軽微な補修等を行うなど、建設インフラの延命化を図ることが求められている。もちろんこれから新設される建設インフラに対しても、より長期的に共用できるよう新規な技術を取り入れながら設計され、施工されているところである。
【0007】
例えば鋼橋の場合、鋼材表面の塗装仕様の高耐久化を図ったり、塗膜厚が不足しやすい角部に対して曲面仕上げを採用したりするなど、新たな塗装技術に取り組むことで長寿命化に向けて一定の効果を上げている。一方で、鋼桁を架設する際に当て傷や擦り傷を完全に避けることは難しく、傷が生じた部分は当然ながら塗膜も損傷することになる。送り出し架設工法を採用した場合、鋼桁を送り出すときに下面(下フランジ表面)に傷が生じやすく、特にエンドレスローラ式送出装置を利用する手法では下フランジ表面の大部分が無端回転搬送体と接触することから広い範囲で塗膜が損傷してしまう。塗膜の損傷部分は、防食上の弱点となり局所的な腐食が生ずるおそれもあり、したがってこのような塗膜損傷部分には架設後にタッチアップ補修を行っているのが現状である。
【0008】
本来タッチアップ補修は傷を隠すために実施されるものであり、そのため実際には薄い上塗り用の塗料を塗布するだけであって、高耐久性を保持することはできない。また、鋼桁の下フランジ面に施されたタッチアップ跡は比較的人の目につきやすいことから景観を損ねることが問題視されている。
【0009】
エンドレスローラ式送出装置を利用して鋼桁を送り出す場合において、鋼桁の下フランジ表面の損傷を防ぐためには、鋼桁(特に下フランジ表面)に保護材を貼付することが考えられる。しかしながら、養生テープなどを貼り付けると、架設後にこれをはがした跡(糊残り)が生じるため景観を損ねるという問題がある。
【0010】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわちエンドレスローラ式送出装置を利用して橋桁などの長尺物を送り出す場合において、確実かつ容易に鋼桁の下フランジ表面の損傷を防ぐことができる保護フィルム送出装置、及びこの装置を利用した長尺物送出システム、そしてこのシステムを用いた送り出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、エンドレスローラ式送出装置の無端回転搬送体に保護フィルムロールを巻き回し、無端回転搬送体の回転に伴って新たな保護フィルムロールを送り出していく、という点に着目してなされたものであり、従来にはない発想に基づいて行われた発明である。
【0012】
本願発明の保護フィルム送出装置は、無端回転搬送体上に載せられる長尺物を保護する保護フィルムを送り出す装置であり、保護フィルムロールと固定手段を備えたものである。なお本願発明の保護フィルム送出装置は、長尺物を送り出す方向において無端回転搬送体より後方に配置される。この固定手段は、保護フィルムロールを軸周りに回転可能に固定する手段である。そして、保護フィルムが長尺物と無端回転搬送体の間に敷設されることで、この無端回転搬送体の回転に伴って保護フィルムロールが回転して保護フィルムが送り出される。
【0013】
本願発明の保護フィルム送出装置は、保護フィルム回収手段をさらに備えたものとすることもできる。この保護フィルム回収手段は、軸周りに回転可能な巻取り回転体を具備し、無端回転搬送体の回転によって送り出される保護フィルムをこの巻取り回転体に巻き取る手段である。なお保護フィルム回収手段は、無端回転搬送体と保護フィルムロールとの間に配置される。この場合、保護フィルムロール(又は固定手段)の一部と、保護フィルム回収手段の一部とが、無端回転部材によって連結され、保護フィルムロールの回転に伴って巻取り回転体が回転し、これにより無端回転搬送体から送り出される保護フィルム(いわば、使用済みの保護フィルム)をこの巻取り回転体に巻き取っていく。
【0014】
本願発明の長尺物送出システムは、無端回転搬送体上に載せられる長尺物を保護フィルムで保護しながら送り出すシステム(装置の組み合わせ)であり、回転搬送装置と本願発明の保護フィルム送出装置を備えたものである。このうち回転搬送装置は、例えばエンドレスローラ式送出装置のように、無端回転搬送体を回転させることによってこの無端回転搬送体上に載せられる長尺物を送り出す装置である。そして、無端回転搬送体と長尺物の間に保護フィルムを敷設した状態で長尺物を送り出す。これにより、保護フィルムで保護しながら長尺物を送り出すことができる。
【0015】
本願発明の長尺物送出システムは、上記した保護フィルム回収手段を具備する保護フィルム送出装置を備えたものとすることもできる。この場合、無端回転搬送体の回転によって送り出される保護フィルム(使用済みの保護フィルム)を巻取り回転体に巻き取ることができる。
【0016】
本願発明の長尺物送り出し方法は、本願発明の長尺物送出システムを用いて長尺物を送り出す方法であり、長尺物載置工程と長尺物送出工程を備えている。このうち長尺物載置工程では、長尺物を送り出す方向において回転搬送装置より後方に保護フィルム送出装置を配置し、保護フィルムロールの保護フィルムが敷設された無端回転搬送体上に長尺物を載置する。一方の長尺物送出工程では、無端回転搬送体を回転させることによって、無端回転搬送体と長尺物の間に保護フィルムを敷設した状態で長尺物を送り出す。
【0017】
本願発明の長尺物送り出し方法は、保護フィルム回収手段を有する長尺物送出システムを用いて長尺物を送り出す方法とすることもできる。この場合、長尺物載置工程では、回転搬送装置と保護フィルムロールとの間に保護フィルム回収手段を配置し、長尺物送出工程では、保護フィルムロールの回転に伴って保護フィルム回収手段の巻取り回転体が回転し、これにより無端回転搬送体の回転によって送り出される保護フィルム(使用済みの保護フィルム)を巻取り回転体に巻き取ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の保護フィルム送出装置、長尺物送出システム、及び長尺物送り出し方法には、次のような効果がある。
(1)エンドレスローラ式送出装置を利用する場合であっても、鋼桁の下フランジ表面の当て傷や擦り傷が生じ難く、塗装の高耐久性を保持することができるうえに、供用後に景観を損ねることがない。
(2)鋼桁の下フランジ表面の損傷が生じ難いことから、タッチアップ補修を実施する必要がなく、従来に比して材料費や人件費を低減することができる。
(3)無端回転搬送体の回転を利用して保護フィルムロールを送り出すことから、特段の動力が必要ないためコストがかからず、また配線も必要ないことから良好な施工環境を維持することができる。
(4)また、人の手を介することなく保護フィルムロールを送り出すことから、作業や監視を行う専任の人員を確保する必要がない。
(5)保護フィルム回収手段を設けると、使用済みの保護フィルムが飛散することがなく、またこれを片付ける手間が大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】鋼桁が、送り出し架設工法によって左側橋脚から右側橋脚に向かって送り出される状況を示す側面図。
図2】(a)は回転搬送装置を示す側面図、(b)は回転搬送装置を上方から見た平面図。
図3】単独型保護フィルム送出装置と回転搬送装置を備えた長尺物送出システムを示す側面図。
図4】(a)は単独型保護フィルム送出装置を示す側面図、(b)は単独型保護フィルム送出装置を示す正面図。
図5】回収型保護フィルム送出装置と回転搬送装置を備えた長尺物送出システムを示す側面図。
図6】(a)は回収型保護フィルム送出装置を示す側面図、(b)は回収型保護フィルム送出装置を示す正面図。
図7】本願発明の長尺物送り出し方法の主な工程の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明の保護フィルム送出装置、長尺物送出システム、及び長尺物送り出し方法の実施形態の一例を図に基づいて説明する。なお本願発明は、断面寸法に比して軸方向寸法が大きな長尺物を送り出す際に実施できるものであるが、ここでは便宜上、長尺物の一例として橋梁の鋼桁の場合で説明する。
【0021】
1.全体概要
はじめに、図1に基づいて本願発明の概要を説明する。図1は、送り出し架設工法によって鋼桁GSが左側橋脚PE1から右側橋脚PE2に向かって送り出される状況を示す側面図である。通常、鋼桁GSを送り出すときは、この図に示すように鋼桁GSの先端(図では右側)に手延べ機MPが取り付けられる。また、一般的に鋼桁GSは軸方向寸法が大きい(長い)ことから、図に示すように送り出し側(左側橋脚PE1側)、受け取り側(右側橋脚PE2側)ともに支保工SHが設置される。
【0022】
従来の送り出し架設工法は、例えば送り出し側にある左側橋脚PE1の上部にエンドレスローラ式送出装置を配置し、このエンドレスローラ式送出装置の無端回転搬送体を回転させることで鋼桁GSを送り出していた。一方、図1に示すように本願発明は、エンドレスローラ式送出装置に代えて、長尺物送出システム100を送り出し側(図では左側橋脚PE1の上部)に配置する。この長尺物送出システム100は、エンドレスローラ式送出装置などのように無端回転搬送体が回転する送出装置(以下、「回転搬送装置200」という。)に加え、後述する保護フィルム送出装置300を備えたシステム(装置の組み合わせ)であり、回転搬送装置200の無端搬送体と接触する鋼桁GSの下フランジ表面を保護フィルムで保護しながら、鋼桁GSを送り出すことができるものである。なお長尺物送出システム100は、送り出し側に限らず受け取り側(例えば、右側橋脚PE2の上部)に配置してもよいし、支保工SH上に配置してもよい。
【0023】
2.長尺物送出システム
次に、本願発明の長尺物送出システム100について詳しく説明する。なお、長尺物送出システム100は、本願発明の保護フィルム送出装置300を利用するものであるから、長尺物送出システム100を説明する中でこの保護フィルム送出装置300についてもあわせて説明することとする。また、本願発明の長尺物送り出し方法は、長尺物送出システム100を用いて行う方法である。したがって、まずは長尺物送出システム100について説明し、その後に本願発明の長尺物送り出し方法について説明することとする。
【0024】
(回転搬送装置)
図2は、エンドレスローラ式送出装置を例とする回転搬送装置200を示す図であり、(a)は側面図、(b)は上方から見た平面図である。回転搬送装置200は、この図に示す無端回転搬送体210を備えるとともに、動力によって作動する回転機構(図示しない)を備えており、回転機構によって無端回転搬送体210が回転することで無端回転搬送体210上の鋼桁GSが送り出される。なお、回転搬送装置200が動力を具備することとし当該動力によって回転機構を作動させることもできるし、回転搬送装置200には動力を設けず他の設備の動力を利用して回転機構を作動させることもできる。
【0025】
図2(b)に示すように無端回転搬送体210の表面は、鋼桁GSとの摩擦力を大きくするため(つまり、大きな摩擦係数を確保するため)凹凸を設けるなど粗面にするとよく、例えば無端回転搬送体210としてクローラ(キャタピラ)を利用することができる。なお、無端回転搬送体210が回転することから、下側に位置する無端回転搬送体210と接地面との間に空間が設けられたうえで無端回転搬送体210の本体は設置される。
【0026】
(保護フィルム送出装置)
長尺物送出システム100は、2つの形式の保護フィルム送出装置300を適宜選択して利用することができる。第1の形式は無端回転搬送体210の回転によって送り出された後の保護フィルム(以下、便宜上「使用済み保護フィルム」という。)を回収しない保護フィルム送出装置300(以下、「単独型保護フィルム送出装置300a」という。)であり、第2の形式は使用済み保護フィルムを回収する保護フィルム送出装置300(以下、「回収型保護フィルム送出装置300b」という。)である。以下、単独型保護フィルム送出装置300aと回収型保護フィルム送出装置300bについて順に説明する。
【0027】
図3は、単独型保護フィルム送出装置300aと回転搬送装置200を備えた長尺物送出システム100を示す側面図である。この図に示す長尺物送出システム100は、単独型保護フィルム送出装置300aと回転搬送装置200を含んで構成され、鋼桁GSの送り出し方向(図で示す白抜きの矢印)に対して回転搬送装置200より後方(図では左側)に単独型保護フィルム送出装置300aは配置される。そして、単独型保護フィルム送出装置300aから送り出された保護フィルム312は、鋼桁GSと無端回転搬送体210の間を通過し、無端回転搬送体210の回転(図では時計回り)によってさらに前方(図では左側)に移動していく。このように、鋼桁GSと無端回転搬送体210の間に保護フィルムを敷設することによって、鋼桁GSと無端回転搬送体210の直接の接触を回避し、すなわち無端回転搬送体210(特に表面)と鋼桁GS(特に下フランジ表面)を保護することができるわけである。
【0028】
図4は、単独型保護フィルム送出装置300aを説明する詳細図であり、(a)はその側面図、(b)はその正面図である。図4(a)に示すように単独型保護フィルム送出装置300aは、保護フィルムロール310と固定手段320を含んで構成されるものである。このうち保護フィルムロール310は、ロール芯311に保護フィルム312が多重に巻かれたものである。保護フィルム312は、薄肉のシート状のものであって相当の強度を有するものであればポリエチレン製のシートなど従来用いられている様々な材料を採用することができ、例えば市販される梱包用フィルムなどを利用することができる。
【0029】
一方の固定手段320は、第1回転軸体321と第1軸受柱322、そして支持板323を含んで構成される。より詳しくは図4(b)に示すように、2つの第1軸受柱322が支持板323上に立設され、これら2つの第1軸受柱322間に第1回転軸体321が設置されることで固定手段320は形成される。なおこの第1回転軸体321は、回転軸周りに回転可能な構造となるように、その両端が2つの第1軸受柱322に支持されている。
【0030】
保護フィルムロール310は、中空のロール芯311内に第1回転軸体321を挿通することによって固定手段320に固定され、これにより保護フィルムロール310も第1回転軸体321とともに回転軸周りに回転可能とされる。第1回転軸体321は、例えば第1軸受柱322に設けた小孔内に第1回転軸体321の両端を挿通する、あるいは第1軸受柱322に設けた小溝内に第1回転軸体321の両端を篏合するなど、着脱容易となるように第1軸受柱322に取り付けるとよい。このような構造とすることで、保護フィルムロール310の交換が容易となるわけである。なお図4(b)に示す第1回転軸体321は、ロール芯311の内径に合わせた太径部分(中央部)と、第1軸受柱322に支持させる細径部分(両端部)の2重径構造としているが、これに限らず第1軸受柱322に支持させる両端部を含めてすべてロール芯311の内径に合わせた径の第1回転軸体321とすることもできる。
【0031】
図5は、回収型保護フィルム送出装置300bと回転搬送装置200を備えた長尺物送出システム100を示す側面図である。この図に示す長尺物送出システム100は、回収型保護フィルム送出装置300bと回転搬送装置200を含んで構成され、鋼桁GSの送り出し方向(図で示す白抜きの矢印)に対して回転搬送装置200より後方(図では左側)に回収型保護フィルム送出装置300bは配置される。そして、回収型保護フィルム送出装置300bから送り出された保護フィルム312は、鋼桁GSと無端回転搬送体210の間を通過し、無端回転搬送体210の回転(図では時計回り)によってさらに前方(図では左側)に移動していき、無端回転搬送体210の先端(図では左端)で折り返した後、回収型保護フィルム送出装置300bが具備する保護フィルム回収手段330に巻き取られていく。このように、鋼桁GSと無端回転搬送体210の間に保護フィルムを敷設することによって、鋼桁GSと無端回転搬送体210の直接の接触を回避し、すなわち無端回転搬送体210(特に表面)と鋼桁GS(特に下フランジ表面)を保護することができ、しかも保護フィルム回収手段330によって使用済み保護フィルムを回収することによって、使用済み保護フィルムが飛散や散乱することがないうえに、容易に後片付けができるわけである。
【0032】
図6は、回収型保護フィルム送出装置300bを説明する詳細図であり、(a)はその側面図、(b)はその正面図である。図6(a)に示すように回収型保護フィルム送出装置300bは、保護フィルムロール310と固定手段320、そして保護フィルム回収手段330と無端回転部材340を含んで構成されるものである。このうち保護フィルムロール310と固定手段320は、単独型保護フィルム送出装置300aで説明したものと同様のものであるためここでは説明を省略する。
【0033】
保護フィルム回収手段330は、第2回転軸体331と第2軸受柱332を含んで構成される。より詳しくは図6(b)に示すように、第1軸受柱322と同様、第2軸受柱332が支持板323上に立設され、これら2つの第2軸受柱332間に第2回転軸体331が設置されることで保護フィルム回収手段330は形成される。なおこの第2回転軸体331は、回転軸周りに回転可能な構造となるように、その両端が2つの第2軸受柱332に支持されている。
【0034】
図6(a)を参照しながら、回収型保護フィルム送出装置300bについてさらに詳しく説明する。回収型保護フィルム送出装置300bを構成する支持板323のうち鋼桁GSの送り出し方向における後方端(図では左側端)には、2つの第1軸受柱322が立設され、これら2つの第1軸受柱322間に回転可能に第1回転軸体321が取り付けられ、中空のロール芯311を挿通することで保護フィルムロール310が第1回転軸体321に取り付けられる。なお、図6に示す固定手段320は単独型保護フィルム送出装置300aで説明したものと同様のものであると説明したが、単独型保護フィルム送出装置300の固定手段320とは第1軸受柱322の立設位置が異なる。すなわち、単独型保護フィルム送出装置300の固定手段320は支持板323の中央部に第1軸受柱322が立設されるのに対して、回収型保護フィルム送出装置300bの固定手段320は支持板323の端部に第1軸受柱322が立設される。
【0035】
支持板323の前方端(図では右側端)には、2つの第2軸受柱332が立設され、これら2つの第2軸受柱332間に回転可能に第2回転軸体331が取り付けられる。そして、固定手段320のうちの第1回転軸体321に無端回転部材340を掛け回すとともに、保護フィルム回収手段330のうちの第2回転軸体331にも無端回転部材340を掛け回す。このように無端回転部材340によって第1回転軸体321と第2回転軸体331を連結することで、第1回転軸体3210の回転に伴って第2回転軸体331も回転するわけである。
【0036】
無端回転部材340は、ロープ状あるいはベルト状であって無端の環状を呈したものであり、例えばゴム製とするなど相当の弾性を持った材料で無端回転部材340を形成するとさら好適となる。なお回収型保護フィルム送出装置300bは、保護フィルムロール310の片側(例えば図6(a)の紙面手前側)のみに無端回転部材340を設けることもできるし、保護フィルムロール310の両側(図6(a)の紙面手前側と紙面奥側)に無端回転部材340を設けることもできる。また図6(a)では、第1回転軸体321と第2回転軸体331に無端回転部材340を掛け回しているが、これに限らず、保護フィルムロール310のロール芯311と第2回転軸体331に無端回転部材340を掛け回すことで、間接的に第1回転軸体321と第2回転軸体331を連結することもできる。
【0037】
(長尺物送出システムの使用例)
鋼桁GSを送り出す際における長尺物送出システム100の使用例について、図5を参照しながら説明する。なお、ここで説明する長尺物送出システム100は、回収型保護フィルム送出装置300bを備えたものとする。
【0038】
所定位置に回転搬送装置200を配置し、鋼桁GSの送り出し方向(図で示す白抜きの矢印)におけるその後方側(図では左側)に回収型保護フィルム送出装置300bを配置する。このとき、保護フィルムロール310よりも保護フィルム回収手段330の方が前方(図では右側)となるように回収型保護フィルム送出装置300bを配置する。回転搬送装置200と回収型保護フィルム送出装置300bをそれぞれ配置すると、保護フィルムロール310から保護フィルム312を引き出し、無端回転搬送体210の外周に保護フィルム312を巻き回す。その際、無端回転搬送体210を回転させながら保護フィルム312を巻き回してもよい。
【0039】
無端回転搬送体210の前方端(図では右側)で折り返した保護フィルム312は、さらに回転搬送装置200の後方(図では左側)に位置する保護フィルム回収手段330まで引き延ばされる。そして、テープや接着剤等を用いて保護フィルム312の先端を保護フィルム回収手段330の第2回転軸体331に固定する。ここまでで、鋼桁GSを送り出す準備が整う。
【0040】
続いて、上側に位置する無端回転搬送体210の表面に鋼桁GSを載置する。このとき、無端回転搬送体210の表面(外周)は保護フィルム312によって覆われており、すなわち鋼桁GSと無端回転搬送体210の間に保護フィルム312が介在しているため、鋼桁GSの下フランジ表面は無端回転搬送体210と直接接触しない。この状態で回転搬送装置200の回転機構によって無端回転搬送体210を回転(図では時計回り)させ、無端回転搬送体210上に載置した鋼桁GSを徐々に前方(図で示す白抜きの矢印)へと送り出していく。無端回転搬送体210が回転すると、これに伴い保護フィルムロール310から保護フィルム312が引き出され、さらにこれに伴って保護フィルムロール310も回転(図では時計回り)していく。このように無端回転搬送体210の回転に伴って、換言すると鋼桁GSの移動に伴って保護フィルムロール310から保護フィルム312が引き出されるため、鋼桁GSと無端回転搬送体210の間には常に新しい保護フィルム312が敷設されることになる。
【0041】
無端回転部材340によって第1回転軸体321(あるいは保護フィルムロール310)と第2回転軸体331が連結されていることから、無端回転搬送体210の回転に応じて保護フィルムロール310が回転すると、やはり第2回転軸体331も回転(図では時計回り)していく。保護フィルム312の先端がテープ等で第2回転軸体331に固定されているため、第2回転軸体331が回転すると使用済み保護フィルムはこの第2回転軸体331に順次巻き取られていく。このように第2回転軸体331が巻き取ることによって使用済み保護フィルムを回収することができ、使用済み保護フィルムが飛散や散乱することがないうえに、容易に後片付けができるわけである。
【0042】
3.長尺物送り出し方法
続いて本願発明の長尺物送り出し方法について図7を参照しながら説明する。図7は、本願発明の長尺物送り出し方法の主な工程の流れを示すフロー図である。なお、本願発明の長尺物送り出し方法は、ここまで説明した長尺物送出システム100を用いて行う方法であり、したがって長尺物送出システム100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の長尺物送り出し方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、保護フィルム送出装置300の説明を含め長尺物送出システム100で説明したものと同様である。
【0043】
はじめに、所定位置に回転搬送装置200を配置し、鋼桁GSの送り出し方向におけるその後方側に保護フィルム送出装置300を配置する(Step10)。なお回収型保護フィルム送出装置300bを採用する場合は、保護フィルムロール310よりも保護フィルム回収手段330の方が前方となるように配置する。回転搬送装置200と保護フィルム送出装置300をそれぞれ配置すると、保護フィルムロール310から保護フィルム312を引き出し、無端回転搬送体210の外周に保護フィルム312を巻き回す(Step20)。その際、無端回転搬送体210を回転させながら保護フィルム312を巻き回してもよい。
【0044】
回収型保護フィルム送出装置300bを採用する場合は、無端回転搬送体210の前方端で折り返した保護フィルム312を、さらに回転搬送装置200の後方に位置する保護フィルム回収手段330まで引き延ばし、テープや接着剤等を用いて保護フィルム312の先端を保護フィルム回収手段330の第2回転軸体331に固定する(Step30)。ここまでの工程で、鋼桁GSを送り出す準備が整う。
【0045】
続いて、上側に位置する無端回転搬送体210の表面に鋼桁GSを載置する(Step40)。そして、無端回転搬送体210の表面(外周)が保護フィルム312によって覆われた状態、すなわち鋼桁GSと無端回転搬送体210の間に保護フィルム312が介在した状態で、回転搬送装置200の回転機構によって無端回転搬送体210を回転させ、無端回転搬送体210上に載置した鋼桁GSを徐々に前方へと送り出していく(Step50)。無端回転搬送体210が回転すると、これに伴い保護フィルムロール310から保護フィルム312が引き出され、さらにこれに伴って保護フィルムロール310も回転していく。このように鋼桁GSの移動に伴って保護フィルムロール310から保護フィルム312が引き出されるため、鋼桁GSと無端回転搬送体210の間には常に新しい保護フィルム312が敷設されることになる。なお、鋼桁GSが特に長い場合など、送り出しの途中で保護フィルムロール310の保護フィルム312がなくなったときは、第1軸受柱322から第1回転軸体321外し、新たな保護フィルムロール310を装着した第1回転軸体321を第1軸受柱322に取り付けたうえで、鋼桁GSの送り出しを続行するとよい。
【0046】
回収型保護フィルム送出装置300bを採用する場合、無端回転部材340によって第1回転軸体321(あるいは保護フィルムロール310)と第2回転軸体331が連結されていることから、端回転搬送体210の回転に応じて保護フィルムロール310が回転すると、やはり第2回転軸体331も回転していく。保護フィルム312の先端がテープ等で第2回転軸体331に固定されているため、第2回転軸体331が回転すると使用済み保護フィルムはこの第2回転軸体331に順次巻き取られて回収される。
【0047】
所定の位置まで鋼桁GSを送り出すことができると、後片付けを行う(Step60)。単独型保護フィルム送出装置300aを採用した場合は、作業者が使用済み保護フィルムを手作業で回収し、回収型保護フィルム送出装置300bを採用する場合は、保護フィルム312を任意位置で切断したうえで、使用済み保護フィルムが巻かれた第2回転軸体331を第2軸受柱332から取り外して使用済み保護フィルムを回収する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明の保護フィルム送出装置、長尺物送出システム、及び長尺物送り出し方法は、送り出し架設工法に利用できるほか、ベント架設や台船輸送の際にも利用することができる。本願発明によれば、鋼橋における塗装の高耐久性を保持することができ、その結果、社会インフラである橋梁の長寿命化につながることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0049】
100 長尺物送出システム
200 (長尺物送出システムの)回転搬送装置
210 (回転搬送装置の)無端回転搬送体
300 (長尺物送出システムの)保護フィルム送出装置
300a (長尺物送出システムの)単独型保護フィルム送出装置
300b (長尺物送出システムの)回収型保護フィルム送出装置
310 (保護フィルム送出装置の)保護フィルムロール
311 (保護フィルムロールの)ロール芯
312 (保護フィルムロールの)保護フィルム
320 (保護フィルム送出装置の)固定手段
321 (固定手段の)第1回転軸体
322 (固定手段の)第1軸受柱
323 (固定手段の)支持板
330 (回収型保護フィルム送出装置の)保護フィルム回収手段
331 (保護フィルム回収手段の)第2回転軸体
332 (保護フィルム回収手段の)第2軸受柱
340 (回収型保護フィルム送出装置の)無端回転部材
GS 鋼桁
PE1 左側橋脚
PE2 右側橋脚
MP 手延べ機
SH 支保工
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7