特許第6907489号(P6907489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6907489-微細繊維状セルロース含有物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907489
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】微細繊維状セルロース含有物
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20210708BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20210708BHJP
   C08B 5/00 20060101ALI20210708BHJP
   C08B 15/04 20060101ALI20210708BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08L1/00
   C08K5/00
   C08B5/00
   C08B15/04
   C08J3/12 ZCEP
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-181458(P2016-181458)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-57391(P2017-57391A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2019年7月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-183932(P2015-183932)
(32)【優先日】2015年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】本間 郁絵
(72)【発明者】
【氏名】嶋岡 隆行
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/099770(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/115115(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/176033(WO,A1)
【文献】 特開2013−163773(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024876(WO,A1)
【文献】 特開2013−104133(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/185505(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/12−3/16
C08B5/00−15/10
C08L1/00−1/32
C08K5/00−13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細繊維状セルロースの含有量が5質量%以上である微細繊維状セルロース含有物であって、粉粒状であり、かつ累積中位径D50が50μm以上1.2mm以下であり、微細繊維状セルロースの平均繊維幅が1〜1000nmであり、微細繊維状セルロースがイオン性置換基を有する、微細繊維状セルロース含有物。
【請求項2】
下記試料のヘーズ値が20%以下である請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有物:但し、前記試料は、前記微細繊維状セルロース含有物を固形分濃度が0.4質量%となるように純水中に添加し、ディスパーザーにて1500rpm、5分の条件で撹拌した試料である。
【請求項3】
比表面積が0.005m/cm以上0.5m/cm以下である、請求項1または2に記載の微細繊維状セルロース含有物。
【請求項4】
安息角が4〜50°である、請求項1から3のいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有物。
【請求項5】
嵩密度が、0.10〜0.50g/mlである、請求項1から4のいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有物。
【請求項6】
有機溶媒をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有物。
【請求項7】
有機溶媒がイソプロピルアルコールである、請求項に記載の微細繊維状セルロース含有物。
【請求項8】
水をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有物。
【請求項9】
前記微細繊維状セルロースがリン酸基を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有物。
【請求項10】
前記微細繊維状セルロースにおけるリン酸基の量が、0.5mmol/g以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の微細繊維状セルロース含有物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子の分散性に優れた微細繊維状セルロース含有物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10〜50μmの繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。また、繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。
【0003】
繊維状セルロースの水性懸濁液又は分散液は、通常、繊維状セルロースに対して数倍〜数百倍の溶媒を含む。このような水性懸濁液又は分散液をそのままの状態で扱うことは、保存スペースの増大、保存及び輸送コストの増大という問題がある。そのため、セルロース濃縮物を調製することが試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ナノフィブリルセルロースの水性ゲルを、水と混和する有機溶媒を用いて水性ゲルから水を除去することによって処理する方法が記載されている。この方法は、水性ゲルが分離相として維持し、分離相内にナノフィブリルセルロースを含む物理エンティティを形成するように水性ゲルを有機溶媒に制御された方法で導入し、水を有機溶媒に交換し、物理エンティティを有機溶媒から分離する方法である。特許文献2には、未離解バクテリアセルロースを10重量%以上75重量%未満の範囲で含有することを特徴とするバクテリアセルロース濃縮物が記載されている。
【0005】
特許文献3には、 セルロース繊維、多価金属及び揮発性塩基を含有し、セルロース繊維が平均繊維径が200nm以下で、セルロースのカルボキシル基含有量が0.1〜2mmol/gであるセルロース繊維懸濁液が記載されている。特許文献4には、アニオン変性セルロースナノファイバーの水性懸濁液のpHを9〜11に調整した後に、脱水・乾燥させることを特徴とするアニオン変性セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2014−508228号公報
【特許文献2】特開平9−316102号公報
【特許文献3】特開2010−168573号公報
【特許文献4】特開2015−134873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、特許文献1から4には、セルロース濃縮物の調製について記載がある。しかし、特に微細繊維状セルロースの濃縮物を増粘剤として使用する場合、前記微細繊維状セルロースを含む水性媒体中における微粒子(酸化チタンなど)の分散性の低下が懸念されることに本発明者は注目した。また、十分な微粒子の分散性を得るために、増粘剤を水性媒体へ添加した後に長時間の撹拌が必要となる場合があった。微細繊維状セルロースの濃縮物に関する上記観点からの検討は、これまで十分に行われてはいなかった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明が解決しようとする課題は、微細繊維状セルロースを添加した後に短時間撹拌して得た水性媒体中において微粒子の分散性が良好である微細繊維状セルロース含有物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、粉粒状の微細繊維状セルロース含有物において、累積中位径D50を所定値以下にすることによって、微細繊維状セルロースを添加した後に短時間(たとえば3分未満など)撹拌して得た水性媒体中において、優れた微粒子の分散性を実現できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0010】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 微細繊維状セルロースの含有量が5質量%以上である微細繊維状セルロース含有物であって、粉粒状であり、かつ累積中位径D50が1.2mm以下である、微細繊維状セルロース含有物。
(2) 下記試料のヘーズ値が20%以下である請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有物:但し、前記試料は、前記微細繊維状セルロース含有物を固形分濃度が0.4質量%となるように純水中に添加し、ディスパーザーにて1500rpm、5分の条件で撹拌した試料である。
(3) 比表面積が0.005m2/cm3以上0.5m2/cm3以下である、(1)または(2)に記載の微細繊維状セルロース含有物。
(4) 安息角が4〜50°である、(1)から(3)のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物。
(5) 嵩密度が、0.1〜0.5g/mlである、(1)から(4)のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物。
(6) 累積中位径D50が50μm以上である、(1)から(5)のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物。
(7) 有機溶媒をさらに含む、(1)から(6)のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物。
(8) 有機溶媒がイソプロピルアルコールである、(7)に記載の微細繊維状セルロース含有物。
(9) 水をさらに含む、(1)から(8)のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物。
(10) 前記微細繊維状セルロースがイオン性置換基を有する、(1)から(9)のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物。
(11) 前記微細繊維状セルロースがリン酸基を有する、(1)から(10)のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物。
(12) 前記微細繊維状セルロースにおけるリン酸基の量が、0.5mmol/g以上である、(1)から(11)のいずれかに記載の微細繊維状セルロース含有物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微細繊維状セルロース含有物によれば、前記微細繊維状セルロースを添加した後に短時間撹拌して得た水性媒体中において、優れた微粒子の分散性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「部」および「%」は、特に記載した場合を除き、質量に基づく割合(質量部、質量%)を表す。セルロース等の繊維の質量に関する値は、特に記載した場合を除き、絶乾質量(固形分)に基づく。また数値範囲「X〜Y」は、特に記載した場合を除き、両端の値を含む。「Aまたは/およびB」は、特に記載した場合を除き、AとBの少なくとも一方であることを指し、Aのみであってもよく、Bのみであってもよく、AとBとの双方であってもよいことを意味する。
【0014】
<繊維状セルロース原料>
繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプから選ばれる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)、溶解パルプ(DP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましいが、特に限定されない。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択されるが、特に限定されない。この軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを含有するシートは高強度が得られる。
【0015】
<イオン性置換基>
本発明で用いる微細繊維状セルロースは、イオン性置換基を有することが好ましいが、特にこれに限定されない。
イオン性置換基としては、アニオン性置換基又はカチオン性置換基のいずれでもよいが、好ましくはアニオン性置換基である。
【0016】
繊維状セルロースにアニオン性置換基を導入する方法は、特に限定されないが、例えば、酸化処理、又はセルロース中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理などが挙げられる。
【0017】
酸化処理とは、セルロース中のヒドロキシ基をアルデヒド基やカルボキシ基に変換する処理である。酸化処理としては、例えばTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化処理や各種酸化剤(亜塩素酸ナトリウム、オゾンなど)を用いた処理が挙げられる。酸化処理の一例としては、Biomacromolecules 8、2485−2491、2007(Saitoら)に記載されている方法を挙げることができるが、特に限定されない。
【0018】
化合物による処理は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に、該繊維原料と反応するような化合物を混合することにより、繊維原料に上記置換基を導入することにより実施できる。導入時の反応を促進するため、加熱する方法が特に有効である。置換基の導入における加熱処理温度は特に限定されないが、該繊維原料の熱分解や加水分解等が起こりにくい温度帯であることが好ましい。例えば、セルロースの熱分解温度の観点から、250℃以下であることが好ましく、セルロースの加水分解を抑える観点から、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。
【0019】
繊維原料と反応する化合物としては、微細繊維を得ることができ、かつアニオン性置換基を導入するものである限り、特に限定されない。
アニオン性置換基を導入する場合、繊維原料と反応する化合物としては、例えば、リン酸由来の基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物等が挙げられる。取扱いの容易さ、繊維との反応性から、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物が好ましい。これらの化合物が繊維とエステルまたは/およびエーテルを形成することがより好ましいが、特に限定されない。
【0020】
アニオン性置換基導入繊維における置換基の導入量(滴定法による)は特に限定されないが、繊維1g(質量)あたり0.005α〜0.11αが好ましく、0.01α〜0.08αがより好ましい。置換基の導入量が0.005α以上であれば、繊維原料の微細化(解繊)が容易になり、置換基の導入量が0.11α以下であれば、繊維の溶解が抑制できる。ただし、αは繊維材料と反応する化合物が反応しうる官能基、例えばヒドロキシル基やアミノ基が繊維材料1gあたりに含まれる量(単位:mmol/g)である。
【0021】
なお、繊維表面の置換基の導入量(滴定法)の測定は、特に記載した場合を除き、次の方法で行うことができる:
絶乾質量で0.04g程度の固形分を含む微細繊維含有スラリーを分取し、イオン交換水を用いて50g程度に希釈する。この溶液を撹拌しながら、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下した場合の電気伝導度の値の変化を測定し、その値が極小となる時の0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を、滴定終点における滴下量とする。セルロース表面の置換基量XはX(mmol/g)=0.01(mol/l)×V(ml)/W(g)で表される。ここで、V:0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(ml)、W:微細繊維状セルロース含有スラリーが含む固形分(g)である。
【0022】
伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。すなわち、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。
【0023】
導入される置換基が、リン酸由来の基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種である場合、置換基導入量は、特に限定されないが、0.001〜5.0mmol/gとすることができる。0.005〜4.0mmol/gとしてもよく、0.01〜2.0mmol/gとしてもよい。導入される置換基がリン酸基である場合、微細繊維状セルロースにおけるリン酸基の量は、0.5mmol/g以上であることが好ましく、0.5〜5.0mmol/gであることがより好ましく、0.5〜2.0mmol/gであることがさらに好ましい。
【0024】
繊維原料と反応するような化合物として、リン酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらの塩またはエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、扱いやすく、また、繊維原料にリン酸基を導入して微細化(解繊)効率をより向上できることから、リン酸基を有する化合物が好ましいが、特に限定されない。
【0025】
リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0026】
これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。
【0027】
また、反応の均一性およびリン酸由来の基の導入効率が高いことから化合物は水溶液として用いることが好ましいが、特に限定されない。化合物の水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基導入の効率が高いことから7以下であることが好ましい。繊維の加水分解を抑える観点からpH3〜7が特に好ましいが、特に限定されない。
【0028】
繊維原料と反応するような化合物として、カルボン酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、カルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物およびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0029】
カルボキシ基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
【0030】
カルボキシ基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
【0031】
カルボキシ基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
【0032】
カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
【0033】
上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。
【0034】
繊維原料と反応するような化合物として、硫酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、無水硫酸、硫酸ならびにこれらの塩およびエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、また、繊維原料に硫酸基を導入して微細化(解繊)効率をより向上できることから、硫酸が好ましいが、特に限定されない。
【0035】
カチオン性置換基を導入する場合、繊維原料と反応する化合物としては、例えば、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩由来の基を有する化合物が挙げられる。具体的には一級アンモニウム塩、二級アンモニウム塩、三級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩などのアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムを含む基を有する化合物が挙げられる。取扱いの容易さ、繊維との反応性から、4級アンモニウム塩由来の基、およびホスホニウム塩由来の基が挙げられる。カチオン性置換基の導入量の測定は、たとえば元素分析等を用いて行うことができる。
【0036】
本実施形態においては、例えば繊維原料にカチオン化剤およびアルカリ化合物を添加して反応させることにより、繊維原料にカチオン性置換基を導入することができる。カチオン化剤としては、4級アンモニウム基と、セルロースのヒドロキシ基と反応する基とを有するものを用いることができる。セルロースのヒドロキシ基と反応する基としては、エポキシ基、ハロヒドリンの構造を有する官能基、ビニル基、ハロゲン基等が挙げられる。
カチオン化剤の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどのグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン型の化合物が挙げられる。
【0037】
カチオン化工程に使用するアルカリ化合物は、カチオン化反応の促進に寄与するものである。アルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。
【0038】
無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩またはアルカリ土類金属のリン酸塩が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウムが挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属のリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどが挙げられる。
【0039】
有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物およびその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等が挙げられ、例えば、以下のものが挙げられる。
アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン;
シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド;
ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン;
炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等。
上記アルカリ化合物は1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
上記アルカリ化合物の中でも、カチオン化反応がより起こりやすくなり、且つ、低コストであることから、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。アルカリ化合物の量はアルカリ化合物の種類に応じて異なるが、例えば、パルプ絶乾質量に対して1〜10質量%の範囲内とされる。
【0041】
カチオン化剤およびアルカリ化合物は、パルプに容易に添加できることから、溶液化することが好ましい。溶液化する場合に使用する溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。
【0042】
本製造方法では、カチオン化反応開始時のパルプ絶乾質量1gあたりの溶媒物質量を5〜150mmolにすることが好ましい。該溶媒の物質量は、5〜80mmolにすることがより好ましく、5〜60mmolにすることがさらに好ましい。カチオン化反応時のパルプの含有量を前記範囲にするためには、例えば、含有量が高い(すなわち、水分が少ない)パルプを用いればよい。また、カチオン化剤およびアルカリ化合物の溶液に含まれる溶媒量を少なくすることが好ましい。
【0043】
カチオン化工程における反応温度は、20〜200℃の範囲内であることが好ましく、40〜100℃の範囲内であることがより好ましい。反応温度が前記下限値以上であれば、充分な反応性が得られ、前記上限値以下であれば、反応を容易に制御できる。また、反応後のパルプの着色を抑える効果もある。カチオン化反応の時間は、パルプやカチオン化剤の種類、パルプ含有量、反応温度等によって異なるが、通常、0.5〜3時間の範囲内である。
【0044】
カチオン化反応は密閉系で行ってもよいし、開放系で行っても構わない。また、反応中に溶媒を蒸散させ、反応終了時のパルプ絶乾質量1gあたりの溶媒物質量が反応開始時に比べて低くなっても構わない。
【0045】
繊維原料にイオン性置換基を導入することにより溶液中における繊維の分散性が向上し、解繊効率を高めることができる。
【0046】
<繊維状セルロースの微細化処理>
微細繊維状セルローススラリーは、繊維状セルロースを微細化(解繊)処理に供することによって製造することができる。
【0047】
微細化処理に際し、繊維状セルロースは溶媒に分散される。
溶媒の具体例としては、水、有機溶媒単独、並びに水と有機溶媒との混合物を挙げることができる。有機溶媒としては、意図した比誘電率を確保できる限り特に限定されない。例えば、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル等が挙げられる。有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。上記の中でも好ましくは、溶媒は水である。
【0048】
溶媒中の繊維状セルロースの分散濃度は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。分散濃度が0.1質量%以上であれば、解繊処理の効率が向上し、20質量%以下であれば、解繊処理装置内での閉塞を防止できるからである。
【0049】
解繊処理装置としては特に限定されない。例えば、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、クレアミックス、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナーが挙げられる。また、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーター等、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。
【0050】
微細化処理により、微細繊維状セルローススラリーが得られる。得られる微細繊維状セルロースの平均繊維幅は特に限定されないが、例えば1〜1000nmとすることができ、好ましくは2〜1000nm、より好ましくは2〜500nm、さらに好ましくは3〜100nmである。微細繊維の平均繊維幅が1nm以上であると、分子の水への溶解が抑えられるため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が十分に発現される。一方、平均繊維幅が1000nm以下であれば、微細繊維としての特長(高透明、高弾性率、低線膨張係数、フレキシブル性)が発揮されやすくなる。なお、得られた微細繊維状セルロース分散液は、繊維幅が1000nmを超える繊維状セルロースを含んでいてもよいが、繊維幅が1000nmを超える繊維状セルロースを含まないほうが好ましい。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。
【0051】
微細繊維に透明性が求められる用途においては、平均繊維幅が30nm以下であれば、可視光の波長の1/10に近づき、マトリクス材料と複合した場合には界面で可視光の屈折および散乱が生じにくく、透明性が高いものが得られる傾向がある。そのため、平均繊維幅は特に限定されないが、2nm〜30nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。前記のような微細繊維から得られる複合体は、一般的に緻密な構造体となるために強度が高く、可視光の散乱が少ないため高い透明性も得られる。
【0052】
平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%の微細繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。平均繊維幅とはこのように読み取った繊維幅の平均値である。
【0053】
繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上が好ましい。繊維長が0.1μm以上であれば、後述のシートを製造した際、シートの引裂強度が十分である点で好ましい。繊維長は、TEMやSEM、AFMの画像解析より求めることができる。上記繊維長は、微細繊維の30質量%以上を占める繊維長である。
【0054】
繊維の軸比(繊維長/繊維幅)は特に限定されないが、20〜10000の範囲であることが好ましい。軸比が20以上であれば微細繊維含有シートを形成しやすい点で好ましい。軸比が10000以下であればスラリー粘度が低くなる点で好ましい。
【0055】
微細化処理により、微細繊維状セルローススラリーが得られる。ここでの微細繊維状セルロースの濃度は、例えば0.1〜20質量%であり、0.2〜10質量%でもよく、0.5〜10質量%でもよい。
【0056】
<脱水及び粉粒化>
上記で得られた微細繊維状セルローススラリーを、脱水処理及び粉粒化処理に供することにより、本発明による微細繊維状セルロースの含有量が5質量%以上である微細繊維状セルロース含有物を調製することができる。即ち、本発明によれば、微細繊維状セルロースを含む希釈液をゲル化させる工程、上記で得られたゲル化物から微細繊維状セルロースを含む濃縮物を得る工程、上記濃縮物を加熱する工程、及び上記濃縮物を粉砕する工程を含む、本発明の微細繊維状セルロース含有物の製造方法も提供される。
【0057】
上記のゲル化の工程は、微細繊維状セルロースを含む希釈液に、濃縮剤又は溶媒を添加することにより行うことができるが特に限定されない。ゲル化物から微細繊維状セルロースを含む濃縮物を得る工程は、ゲル化物をろ過後、圧搾することにより行うことができるが、特に限定されない。濃縮物を加熱する工程は、オーブン等で加熱することにより行うことができるが、特に限定されない。
【0058】
脱水処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。
(1)微細繊維状セルロースを含む希釈液に、濃縮剤を添加してゲル化させ、ろ過後、圧搾して濃縮物を得る。上記濃縮物を酸で処理し、次いでアルカリで処理して濃縮物を得る。上記濃縮物に溶媒を添加してろ過して濃縮物を得て、得られた濃縮物をオーブン等で加熱する。
【0059】
(2)微細繊維状セルロースを含む希釈液に、濃縮剤を添加してゲル化させ、ろ過後、圧搾して濃縮物を得る。得られた濃縮物をオーブン等で加熱する。
【0060】
(3)微細繊維状セルロースを含む希釈液に、濃縮剤を添加してゲル化させ、ろ過後、圧搾して濃縮物を得る。上記濃縮物をアルカリで処理して濃縮物を得る。上記濃縮物に溶媒を添加してろ過して濃縮物を得る。溶媒を添加してろ過して濃縮物を得る工程は2回以上行ってもよい。得られた濃縮物をオーブン等で加熱する。
【0061】
(4)微細繊維状セルロースを含む希釈液に、溶媒を添加してゲル化させ、ろ過により残渣を得る。この残渣に再度溶媒を添加し、ろ過により残渣を得る。微粒子の分散性を向上させる観点からは、上記した溶媒の添加及びろ過の操作は2回以上行うことが好ましい。得られたろ過残渣をオーブン等で加熱する。
【0062】
上記の濃縮剤としては、酸、アルカリ、多価金属の塩、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤などが挙げられる。中でも、濃縮剤は多価金属の塩であることが好ましい。多価金属の塩の具体例については本明細書中後記する。
【0063】
濃縮剤を添加した後に濾過処理を行うことが好ましいが、特に限定されない。また、濾過処理工程の後に、圧縮工程を行なうことが好ましいが、特に限定されない。圧縮工程を設けることにより、濃縮物中の水分の含有量を好ましい範囲に調節することができる。
圧搾する装置としては、ベルトプレス、スクリュープレス、フィルタープレスなど一般的なプレス装置を用いることができ、装置は特に限定されない。
使用する濾材は特に限定されないが、ステンレス製、ろ紙、ポリプロピレン製、ナイロン製、ポリエチレン製、ポリエステル製などが使用できる。酸を使用することもあるため、ポリプロピレン製が好ましい。
ろ材の通気度は低いほど歩留りが高まるため、30cm3/cm2・sec以下、より好ましくは10cm3/cm2・sec以下、さらに好ましくは1cm3/cm2・sec以下である。
圧搾工程に供する原料の濃度が低いと、脱水ろ液の増加や脱水工程の長時間化が起こるため、0.5%以上、よりこのましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上である。
圧搾時の圧力は0.2MPa以上、より好ましくは0.4MPa以上である。
【0064】
上記で得た濃縮物を、酸で処理する工程、及び/又はアルカリで処理する工程を設けることもできる。酸で処理する工程は、上記の濾過処理工程の前後に設けられることが好ましく、濾過処理工程の後の設けられることが好ましい。
【0065】
酸で処理する工程で使用できる酸については、本明細書中後記する。具体的には、上述した工程で得られた濃縮物を、酸を含有する酸性液に浸漬することが好ましい。使用する酸性液の濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。酸性液の濃度を上記範囲とすることにより、セルロースの分解による劣化を抑制することができる。
【0066】
アルカリで処理する工程で使用できるアルカリについては、本明細書中後記する。具体的には、上述した工程で得られた濃縮物又は、酸で処理した濃縮物を、アルカリを含有するアルカリ性液に浸漬することが好ましい。使用するアルカリ性液の濃度は特に限定されないが、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。アルカリ性液の濃度を上記範囲とすることにより、セルロースの分解による劣化を抑制することができる。
【0067】
上記の酸で処理する工程、及びアルカリで処理する工程の後には、濾過を行うことが好ましい。この濾過処理工程では、さらに圧縮工程を行ってもよい。
【0068】
本発明では、さらに乾燥工程を設けてもよい。乾燥工程は、オーブン乾燥工程であることが好ましく、例えば、30〜70℃に設定をしたオーブンで、1〜60分間乾燥を行うことが好ましい。
【0069】
濃縮物を粉砕する工程では、粉砕機としてはカッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ボールミル、ジェットミル、ミキサーなどが使用されるが、特に限定されない。目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕する。より好ましくは目開き425μmの篩をほぼ全通するように粉砕する。
【0070】
<微細繊維状セルロース含有物>
本発明の微細繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロースの含有量が5質量%以上である微細繊維状セルロース含有物であって、粉粒状であり、かつ累積中位径D50が1.2mm以下である。なお、累積中位径D50は、たとえば微細繊維状セルロース含有物の調製方法や濃縮方法、濃縮物の粉砕方法などをそれぞれ適切に調整することによって制御することが可能である。
【0071】
本発明においては、微細繊維状セルロースの含有量は5質量%以上である。微細繊維状セルロースの含有量の上限は特に限定されず、100質量%でもよく、100質量%未満でもよく、好ましくは、微細繊維状セルロースの含有量は99質量%以下である。微細繊維状セルロースの含有量の上限は、90質量%以下でもよく、80質量%以下でもよく、70質量%以下でもよく、60質量%以下でもよく、50質量%以下でもよいが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの含有量の下限は5質量%以上であれば特に限定されいが、10質量%以上でもよく、15質量%以上でもよく、20質量%以上でもよい。
【0072】
本発明の微細繊維状セルロース含有物は、粉粒状である。粉粒状とは、粉状物質及び/又は粒状物質からなるものをいう。粉状物質は、粒状物質よりも小さいものをいう。一般的には、粉状物質は粒子径が1nm以上0.1mm未満の微粒子をいい、粒状物質は、粒子径が0.1〜10mmの粒子をいうが、特に限定されない。なお、粉粒状とは必ずしも球状ではない。本願明細書における粉粒物の粒子径は、以下の方法により測定できる。本願明細書における粉粒物の粒子径はレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(Microtrac3300EXII、日機装株式会社)を用いて測定した値とする。
【0073】
本発明の微細繊維状セルロース含有物の累積中位径D50は1.2mm以下であればよく、その下限は特に限定されないが、好ましくは累積中位径D50は50μm以上である。累積中位径D50は、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、600μm以上、又は700μm以上でもよい。累積中位径D50は、1000μm以下、900μm以下、又は800μm以下でもよい。
【0074】
累積中位径を上記の範囲内とすることにより、微細繊維状セルロース含有物に含まれる粒子の表面積を適切な範囲とし、水等の分散媒との接触面積を大きくすることができ、再分散性を高めることができる。また、累積中位径を上記の範囲内とすることにより、粒子同士が意図しない凝集をすることを抑制することができ、再分散性を高めることができる。このようにして、微細繊維状セルロース含有物を添加して短時間撹拌して得た水性媒体中においても、良好な微粒子の分散性を実現することが可能となる。
【0075】
本発明の微細繊維状セルロース含有物の体積平均径は、好ましくは20μm以上1500μm以下であり、より好ましくは50μm以上1200μm以下であるが特に限定されない。
本発明の微細繊維状セルロース含有物の個数平均径は、好ましくは10μm以上100μm以下であり、より好ましくは20μm以上500μm以下であるが特に限定されない。
本発明の微細繊維状セルロース含有物の面積平均径は、好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは30μm以上800μm以下であるが特に限定されない。
【0076】
本発明の微細繊維状セルロース含有物を固形分濃度が0.4質量%となるように純水中に添加し、ディスパーザーにて1500rpm、5分の条件で撹拌した試料のヘーズ値が20%以下であることが好ましいが、特にはこれに限定されない。上記ヘーズ値の下限は特に限定されないが、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.2%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上である。本発明では、ヘーズ値が上記の条件を満たすことにより、微細繊維状セルロースを含む水性媒体中における微粒子の分散性をさらに向上させることができる。
ディスパーザーとしては、一般的な分散機であれば特に限定されないが、ホモミキサーやスリーワンモータなどの攪拌機を使用する。
【0077】
本発明の微細繊維状セルロース含有物は、比表面積が0.005m2/cm3以上0.5m2/cm3以下であることが好ましいが、特に限定されない。比表面積は、より好ましくは0.008m2/cm3以上0.5m2/cm3以下であり、さらに好ましくは、0.04m2/cm3以上0.2m2/cm3以下である。
比表面積を上記の範囲内とすることにより、溶媒に添加し再分散させるときに溶媒と十分な接触面積が確保され、均一に水和される。その結果、溶媒中での微細繊維状セルロースが均一に分散し、系内に添加した微粒子の分散性を向上させることができる。一方で比表面積が大きすぎると、嵩密度が低下し、ハンドリング性の悪化や粉舞などを引き起こす。
なお、上記比表面積や、後述する安息角、かさ密度などは、たとえば微細繊維状セルロース含有物の調製方法や濃縮方法、濃縮物の粉砕方法などをそれぞれ適切に調整することによって制御することが可能である。
【0078】
本発明の微細繊維状セルロース含有物の安息角は4〜50°であることが好ましいが特に限定されない。安息角は5〜45°であることがより好ましく、5〜40°であることがさらに好ましく、10〜40°であることが特に好ましい。安息角は、微細繊維状セルロース含有物の流動性に関与するパラメーターである。安息角は小さい方が微細繊維状セルロース含有物の流動性は高まる傾向にあるが、安息角が小さい場合であっても微細繊維状セルロース含有物中に微細粒子が多量に存在する場合は、粉舞が生じるため流動性(フィード性)は悪化する。
【0079】
安息角は、安息角測定器(アズワン)を用いて測定する。具体的には、安息角測定器のシュートに100ml分の微細繊維状セルロース含有物を仕込み、シュート口を開いて微細繊維状セルロース含有物を下部に落下させる。そして、落下後の微細繊維状セルロース含有物の斜面と水平面のなす角度を測定し、微細繊維状セルロース含有物の安息角とする。
【0080】
本発明の微細繊維状セルロース含有物の嵩密度は、0.1〜0.5g/mlであることが好まし、0.1〜0.4g/mlであることがより好ましく、0.1〜0.3g/mlであることがさらに好ましいが、特に限定されない。嵩密度は大きい程、微細繊維状セルロース含有物を構成する粒子の粒径は小さい傾向にある。このため、水等の分散媒との接触面積を大きくすることができ、再分散性が高まる。一方で、嵩密度が大きすぎると、微細繊維状セルロース含有物中の粒子同士が意図しない凝集を起こすことがあり、好ましくない。また、嵩密度が小さすぎると、粒子の形状が不均一になり、粒径が大きくなる傾向があるため、流動性(フィード性)が悪化する。
【0081】
嵩密度は、安息角測定器(アズワン)を用いて測定する。具体的には、安息角測定器のシュートに100ml分の微細繊維状セルロース含有物を仕込み、シュート口を開いて微細繊維状セルロース含有物を下部に落下させ、下に設置した容器(満杯容積∨=50ml)に盛りきり充填する。次に、盛りきり微細繊維状セルロース含有物の盛り上がり部分を水平カットし、容積を満杯にする。容器に残存する微細繊維状セルロース含有物の質量を秤量し、下記の計算式より嵩密度(g/ml)を算出する。
嵩密度(g/ml)=粉末の質量(g)/粉末の体積(ml)
【0082】
上記の脱水処理において、溶媒として有機溶媒を使用した場合には、上記処理により得られる本発明の微細繊維状セルロース含有物は、有機溶媒をさらに含む場合がある。また、溶媒として水を使用した場合には、上記処理により得られる本発明の微細繊維状セルロース含有物は、水をさらに含む場合がある。
【0083】
脱水処理において使用する溶媒としては、有機溶媒、又は有機溶媒と水との混合物を挙げることができる。有機溶媒としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル等が挙げられる。有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。上記の中でも、溶媒は、好ましくは、アルコール類、又はアルコール類と水との混合物である。溶媒はさらに好ましくは、イソプロピルアルコール、又はイソプロピルアルコールと水との混合物である。
【0084】
本発明の微細繊維状セルロース含有物が、アルコール類と水とを含む場合、アルコール類と水との含有量の質量比率は、好ましくは、1/5〜5/1であり、より好ましくは、1/3〜1/1であるが、特に限定されない。上記のアルコール類は、好ましくはイソプロピルアルコールである。
【0085】
上記の脱水処理において、濃縮剤を使用した場合には、上記処理により得られる本発明の微細繊維状セルロース含有物は、濃縮剤をさらに含む場合がある。
濃縮剤としては、多価金属の塩、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤などが挙げられるが、特に限定されない。濃縮剤として多価金属の塩を使用した場合には、本発明の微細繊維状セルロース含有物は、多価金属をさらに含み得る。多価金属としては、アルミニウム、カルシウム、又はマグネシウムなどが挙げられるが、特に限定されない。多価金属の塩としては、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられるが、特に限定されない。
【0086】
本発明の微細繊維状セルロース含有物が、多価金属を含む場合、その含有量は、特に限定されないが、好ましくは5ppm以上1000ppm以下であり、より好ましくは、10ppm以上100ppm以下である。なお、微細繊維状セルロース含有物において、多価金属の含有量を5ppm未満とすることもでき、多価金属を含まない態様を採用することも可能である。
【0087】
上記の脱水処理において、酸を使用した場合には、上記処理により得られる本発明の微細繊維状セルロース含有物は、酸をさらに含む場合がある。
酸としては、例えば、無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。
【0088】
本発明の微細繊維状セルロース含有物が酸を含む場合、その含有量は、特に限定されないが、微細繊維状セルロースの質量に対して0.01質量%以上0.14質量%以下であることが好ましい。なお、微細繊維状セルロース含有物において、酸の含有量を0.01質量%未満とすることもでき、酸を含まない態様を採用することも可能である。
【0089】
上記の脱水処理において、アルカリを使用した場合には、上記処理により得られる本発明の微細繊維状セルロース含有物は、アルカリをさらに含む場合がある。
アルカリとしては、無機アルカリ又は有機アルカリのいずれでもよい。
無機アルカリとしては、例えば、以下のものが挙げられるが、特に限定されない。水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム。
有機アルカリとしては、例えば、以下のものが挙げられるが、特に限定されない。
アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン;
シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド;
ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等。
【0090】
本発明の微細繊維状セルロース含有物がアルカリを含む場合、その含有量は、特に限定されないが、微細繊維状セルロースの質量に対して0.01質量%以上2質量%以下であることが好ましい。含有量は、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以下であることがさらに好ましい。なお、微細繊維状セルロース含有物において、アルカリの含有量を0.01質量%未満とすることもでき、アルカリを含まない態様を採用することも可能である。
【0091】
本発明の微細繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロースがアニオン変性されている場合、官能基の対イオンがナトリウムイオンになっていることが望ましい。ナトリウムイオンにすることで、微細繊維状セルロース同士が反発し、凝集を引き起こしにくくなる。
【0092】
本発明の細繊維状セルロース含有物は、好ましくは、下記試料のpHが7以上11以下であり、より好ましくは、下記試料のpHが8以上10.5以下であるが、特には限定されない。前記試料は、前記微細繊維状セルロース含有物を固形分濃度が0.4質量%となるように純水中に添加し、ディスパーザーにて1500rpm、5分の条件で撹拌した試料である。
上記試料のpHが7以上であることにより、微細繊維状セルロースの官能基の対イオンがナトリウムイオンとなり、微細繊維状セルロース同士が静電反発し、溶媒中で容易に分散する。
上記試料のpHが11以下とすることにより、系内のアルカリ濃度を抑え、微細繊維状セルロースの静電反発力による溶媒中での分散性を向上させることができる。
【0093】
<微細繊維状セルロース含有物の再分散物>
本発明の微細繊維状セルロース含有物を、溶媒に再懸濁させることによって微細繊維状セルロース再分散物を得ることができる。
【0094】
微細繊維状セルロース含有物を得るために使用する溶媒の種類は、特に限定されない。溶媒の具体例としては、水、有機溶媒単独、並びに水と有機溶媒との混合物を挙げることができる。有機溶媒としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル等が挙げられる。有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。上記の中でも、溶媒は、好ましくは、アルコール類と水との混合物、エーテル類と水との混合物、又はDMSOと水との混合物である。
【0095】
微細繊維状セルロースの再分散は常法により行うことができる。例えば、本発明の微細繊維状セルロース含有物に、上記した溶媒を添加して微細繊維状セルロースを含有する液を調製する工程と、この微細繊維状セルロースを含有する液中の微細繊維状セルロースを分散させる工程により、再分散を行うことができる。
【0096】
本発明の微細繊維状セルロース含有物に溶媒を添加して微細繊維状セルロースを含有する液を調製する際、微細繊維状セルロースの含有量を液全体に対して0.1質量%〜10質量%にすることが好ましい。微細繊維状セルロース含有量を微細繊維状セルロース含有液に対して0.2質量%〜3質量%にすることがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば、微細繊維状セルロースの分散安定性が高くなり、含有量が10質量%以下であれば、微細繊維状セルロースの粘性が高くなりすぎず、ハンドリングが比較的容易になる。微細繊維状セルロース含有量は、溶媒の添加量によって調整でき、溶媒の添加量を多くする程、微細繊維状セルロース含有量が低くなる。
【0097】
微細繊維状セルロースを分散させる工程に用いる分散装置としては、上記の<繊維状セルロースの微細化処理>において記載した解繊処理装置と同様のものを使用することができる。
【0098】
上記により得られた微細繊維状セルロース再分散物は、微細繊維状セルロースの濃度は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。微細繊維状セルロースの濃度の上限は特に限定されないが、一般的には、10質量%以下である。微細繊維状セルロースの濃度を上記の範囲内にすることにより、塗工の際の取り扱いが良好になり、分散安定性に優れる。分散性は、ホモディスパー等による分散処理を施し、その直後の液を目視で観察して、沈殿が認められるか否かで評価することができる。
【0099】
<他の成分>
本発明の微細繊維状セルロース含有物には、界面活性剤が含まれてもよい。界面活性剤を含めることにより、表面張力が低下して、工程基材に対する濡れ性を高めることができ、微細繊維状セルロース含有シートをより容易に形成できる。
【0100】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を使用することができる。セルロースがアニオン性である場合、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましく、セルロースがカチオン性である場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。
【0101】
本発明の微細繊維状セルロース含有物は、微細繊維状セルロース以外の繊維(以下、「追加繊維」という)を少なくとも1種以上混合して調製することもできる。追加繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、合成繊維等、半合成繊維、再生繊維が挙げられるが、特に限定されない。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。有機繊維としては、例えば、セルロース、炭素繊維、パルプ、キチン、キトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミド等が挙げられるがこれらに限定されない。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられるがこれらに限定されない。前記追加繊維は、必要に応じて化学的処理、解繊処理等の処理を施すことができる。追加繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施す場合、微細繊維と混合してから化学的処理、解繊処理等の処理を施すこともできるし、追加繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施してから微細繊維と混合することもできる。追加繊維を混合する場合、微細繊維と追加繊維の合計量における追加繊維の添加量は特に限定されないが、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。特に好ましくは20質量%以下である。
【0102】
本発明の微細繊維状セルロース含有物には、親水性高分子を添加してもよい。親水性高分子としては、特に限定されない。例えば、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース等)、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)が挙げられる。さらにポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体等が挙げられる。
【0103】
また親水性高分子の代わりに親水性の低分子化合物を用いることもできる。親水性の低分子化合物としては、特に限定されない。例えば、グリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。親水性高分子、または親水性の低分子化合物を添加する場合の添加量は、特に限定されない。例えば、微細繊維の固形分100質量部に対し、1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは2〜120質量部、さらに好ましくは3〜100質量部である。
【0104】
<用途>
本発明による微細繊維状セルロース含有物の用途は特に限定されない。一例としては、微細繊維状セルロース再分散スラリーを用いて製膜し、各種フィルムとして使用することができる。別の例としては、微細繊維状セルロース再分散スラリーは、増粘剤として各種用途(例えば、食品、化粧品、セメント、塗料、インクなどへの添加物など)に使用することができる。さらに、樹脂やエマルションと混合し補強材としての用途にしようすることもできる。
【0105】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0106】
製造例1:微細繊維状セルロース(CNF)の製造
(1)CNF1の調製:
尿素100g、リン酸二水素ナトリウム二水和物55.3g、リン酸水素二ナトリウム41.3gを109gの水に溶解させてリン酸化試薬を調製した。
乾燥した針葉樹晒クラフトパルプの抄上げシートをカッターミルおよびピンミルで処理し、綿状の繊維にした。この綿状の繊維を絶乾質量で100g取り、リン酸化試薬をスプレーでまんべんなく吹きかけた後、手で練り合わせ、薬液含浸パルプを得た。
得られた薬液含浸パルプを140℃に加熱したダンパー付きの送風乾燥機にて、80分間加熱処理し、リン酸化パルプを得た。
得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。ここで得られた脱水シートを脱水シートAと称する。
【0107】
次いで、上記で得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得た。
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。
2%スラリーを調製し、湿式微粒化装置(スギノマシン社製「アルティマイザー」)で245MPaの圧力にて10回パスさせCNF1を得た。
【0108】
・導入された置換基量
上記の脱水シートAについて、次に示す滴定法でリン酸基の導入量を測定した。
[置換基導入量(リン酸基導入量)の測定]
置換基導入量は、繊維原料へのリン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
【0109】
(2)CNF2の調製
CNF1の調製において、送風乾燥機にて80分間加熱処理することに代えて160分加熱処理したこと以外は、CNF1の調製と同様にして、CNF2を調製した。
【0110】
(3)CNF3の調製
乾燥質量200g相当分の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプとTEMPO2.5gと、臭化ナトリウム25gを水1500mlに分散させた。その後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が5.0mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応を終了した。
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を添加した。次に、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。
濃度が0.5質量%になるようイオン交換水で希釈した後、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理してCNF3を得た。
【0111】
CNF1〜CNF3の置換基量を下記表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
<繊維幅の測定>
CNF1〜CNF3の繊維幅を下記の方法で測定した。
解繊パルプスラリーの上澄み液を濃度0.01〜0.1質量%に水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。乾燥後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEOL−2000EX)により観察した。CNF1〜CNF7は、幅4nm程度の微細繊維状セルロースになっていることを確認した。
【0114】
(実施例1)
CNF1を0.4質量%に希釈し、希釈液100mLに対して濃縮剤として塩化カルシウム1gを加えてゲル化させた。濾過後、ろ紙にて圧搾し、固形分濃度21.4質量%の濃縮物を得た。前記濃縮物を0.1N塩酸水溶液100mLに30分間浸漬後、イソプロパノール2gと6%水酸化ナトリウム水溶液2gを添加し、薬さじでよく混合した後、濾過し、固形分濃度23.0質量%の濃縮物を得た。前記濃縮物にイソプロパノール2gとイオン交換水2gを添加し、薬さじでよく混合した後、濾過し、固形分濃度26.7%の濃縮物を得た。得られた濃縮物を60℃に設定したオーブンに入れ、45分加熱した。得られた濃縮物の固形分濃度は98.9質量%であった。
【0115】
得られた濃縮物をフリッチュ社製pulverisetteシリーズ遊星型ボールミルP−6を用い、ボール径5mmのボールを使用し、500rpmで15分間処理して、粉粒物を得た。
イオン交換水100mLに対して前記粉粒物を添加し、ディスパーサー(撹拌TKロボミクス、特殊機化工業製)にて1500rpmで5分攪拌し、0.4質量%水溶液を調製した。
【0116】
(実施例2)
実施例1において得られた濃縮物をボールミルで処理することに代えて、ミキサー(BM−RE08−HA、象印製)で1分間処理したこと以外は、実施例1と同様にして、粉粒物を得た。また実施例1と同様にして0.4質量%水溶液を調製した。
【0117】
(実施例3)
実施例1においてCNF1の代わりにCNF2を使用すること以外は、実施例1と同様にして、粉粒物を得た。また実施例1と同様にして0.4質量%水溶液を調製した。
【0118】
(実施例4)
実施例1においてCNF1の代わりにCNF3を使用すること以外は、実施例1と同様にして、粉粒物を得た。また実施例1と同様にして0.4質量%水溶液を調製した。
【0119】
(実施例5)
CNF1を0.4質量%に希釈し、希釈液100mLに対して濃縮剤として塩化カルシウム1gを加えてゲル化させた。濾過後、ろ紙にて圧搾し、固形分濃度3.4質量%の濃縮物を得た。前記濃縮物を0.1N塩酸水溶液100mLに30分間浸漬後、イソプロパノール2gと6%水酸化ナトリウム水溶液2gを添加し、薬さじでよく混合した後、濾過し、固形分濃度4.2質量%の濃縮物を得た。前記濃縮物にイソプロパノール2gとイオン交換水2gを添加し、薬さじでよく混合した後、濾過し、固形分濃度5.2%の濃縮物を得た。
得られた濃縮物をミキサー(BM−RE08−HA、象印製)で1分間処理して、粉粒物を得た。
イオン交換水100mLに対して前記粉粒物を添加し、ディスパーサー(撹拌TKロボミクス、特殊機化工業製)にて1500rpmで5分攪拌し、0.4質量%水溶液を調製した。
【0120】
(実施例6)
実施例5で得た固形分濃度5.2%の濃縮物を10分乾燥して、固形分濃度14.6%の濃縮物を得た。実施例5と同様に粉粒物及び0.4質量%水溶液を調製した。
【0121】
(実施例7)
実施例5で得た固形分濃度5.2%の濃縮物を20分乾燥して、固形分濃度26.8%の濃縮物を得た。実施例5と同様に粉粒物及び0.4質量%水溶液を調製した。
【0122】
(実施例8)
実施例5で得た固形分濃度5.2%の濃縮物を30分乾燥して、固形分濃度40.1%の濃縮物を得た。実施例5と同様に粉粒物及び0.4質量%水溶液を調製した。
【0123】
(実施例9)
実施例5で得た固形分濃度5.2%の濃縮物を35分乾燥して、固形分濃度55.9%の濃縮物を得た。実施例5と同様に粉粒物及び0.4質量%水溶液を調製した。
【0124】
(実施例10)
実施例5で得た固形分濃度5.2%の濃縮物を40分乾燥して、固形分濃度72.5%の濃縮物を得た。実施例5と同様に粉粒物及び0.4質量%水溶液を調製した。
【0125】
(実施例11)
CNF1を0.4質量%に希釈した。希釈液100mLに対し、200mLのイソプロパノールを添加し、ゲル化させ、ろ紙により濾別した。濾別したゲルに200mLのイソプロパノールを添加し、混合した後、ろ紙により濾別した。濾別したゲルをろ紙で圧搾した。得られた濃縮物を60℃に設定したオーブンに入れ、45分加熱した。得られた濃縮物をフリッチュ社製pulverisetteシリーズ遊星型ボールミルP−6を用い、ボール径5mmのボールを使用し、500rpmで15分間処理して、粉粒物を得た。
イオン交換水100mLに対して前記粉粒物を添加し、ディスパーサー(撹拌TKロボミクス、特殊機化工業製)にて1500rpmで5分攪拌し、0.4質量%水溶液を調製した。
【0126】
(実施例12)
2.0質量%のCNF1希釈液を用いたこと以外は実施例11と同様にして、粉粒物及び0.4質量%水溶液を調製した。
【0127】
(比較例1)
CNF1を0.4質量%に希釈し、希釈液100mLに対して濃縮剤として塩化カルシウム1gを加えてゲル化させた。濾過後、ろ紙にて圧搾し、固形分濃度21.4質量%の濃縮物を得た。前記濃縮物を0.1N塩酸水溶液100mLに30分間浸漬後、イソプロパノール2gと6%水酸化ナトリウム水溶液2gを添加し、薬さじでよく混合した後、濾過し、固形分濃度23.0質量%の濃縮物を得た。前記濃縮物にイソプロパノール2gとイオン交換水2gを添加し、薬さじでよく混合した後、濾過し、固形分濃度26.7%の濃縮物を得た。得られた濃縮物を60℃に設定したオーブンに入れ、45分加熱した。得られた濃縮物の固形分濃度は98.9質量%であった。
【0128】
イオン交換水100mLに対して前記濃縮物を添加し、ディスパーサー(撹拌TKロボミクス、特殊機化工業製)にて1500rpmで5分攪拌し、0.4質量%水溶液を調製した。
【0129】
(比較例2)
CNF1を0.4質量%に希釈し、希釈液100mLをテフロン(登録商標)シャーレに入れ、60℃のオーブンにて絶乾状態まで乾燥させた。
得られた濃縮物をフリッチュ社製pulverisetteシリーズ遊星型ボールミルP−6を用い、ボール径5mmのボールを使用し、500rpmで15分間処理して、粉粒物を得た。
イオン交換水100mLに対して前記粉粒物を添加し、ディスパーサー(撹拌TKロボミクス、特殊機化工業製)にて1500rpmで5分攪拌し、0.4質量%水溶液を調製した。
【0130】
各実施例及び各比較例で調製した濃縮物について以下の測定及び評価を行った結果を下記表に示す。
【0131】
(累積中位径の測定)
粉粒物の粒径については、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置Microtrac3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定し、粉粒物の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブが50%となる点の粒子径を算出することで、累積中位径(μm)を求めた。
【0132】
(体積平均径の測定)
レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置Microtrac3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定し、体積平均径(μm)を求めた。
(個数平均径の測定)
レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置Microtrac3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定し、個数平均径(μm)を求めた。
(面積平均径の測定)
レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置Microtrac3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定し、面積平均径(μm)を求めた。
(比表面積の測定)
レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置Microtrac3300EXII(日機装株式会社製)を用いて測定し、比表面積を求めた。
【0133】
(嵩密度の測定)
各実施例及び各比較例で得られた粉粒物の嵩密度を安息角測定器(アズワン)を用いて測定した。安息角測定器のシュートに100ml分の粉粒物を仕込み、シュート口を開いて粉粒物を下部に落下させ、下に設置した容器(満杯容積∨=50ml)に盛りきり充填した。次に、盛りきり粉粒物の盛り上がり部分を水平カットし、容積を満杯にした。容器に残存する粉粒物の質量を秤量し、下記の計算式より嵩密度(g/ml)を算出した。
嵩密度(g/ml)=粉末の質量(g)/粉末の体積(ml)
【0134】
(安息角の測定)
各実施例及び各比較例で得られた粉粒物の安息角を安息角測定器(アズワン)を用いて測定した。安息角測定器のシュートに100ml分の粉粒物を仕込み、シュート口を開いて粉粒物を下部に落下させた。落下後の粉粒物の斜面と水平面のなす角度を測定し、安息角とした。
【0135】
(ヘーズ値の測定)
イオン交換水100mLに対して各実施例及び各比較例で調製した濃縮物を添加し、ディスパーサー(撹拌TKロボミクス、特殊機化工業製)にて1500rpmで5分攪拌し、0.4質量%水溶液(再分散液とも言う)を調製した。
上記0.4質量%分散液のヘーズを、光路長1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG−40、逆光路)に上記分散液を入れ、JIS規格K7136に準拠し、ヘーズメータ(村上色彩技術研究所社製「HM−150」)を用いて測定した。ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行った。
【0136】
(分散性評価)
イオン交換水100mLに対して各実施例及び各比較例で調製した濃縮物を添加し、ディスパーサー(撹拌TKロボミクス、特殊機化工業製)にて1500rpmで30秒攪拌し、0.4質量%水溶液(再分散液とも言う)を調製した。
上記0.4質量%水溶液100mLに疎水化酸化チタン(STV−455、チタン工業株式会社製)を1.0質量%添加した後、薬さじで1分間、十分かき混ぜた。30分間静置し、疎水化酸化チタンが水層と分離するか観察した。
◎:全く疎水化酸化チタンが分離、沈降せず、水溶液中で安定的にとどまっている。
○:やや分離したり、沈降した疎水化酸化チタンが存在しているが、全体としては均一性を維持している。
×:疎水化酸化チタン粒子が沈殿もしくは水面に存在し、水層と分離している。
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
図1