(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907498
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】制御装置、巻取りシステムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
B65H 23/198 20060101AFI20210708BHJP
B65H 18/10 20060101ALI20210708BHJP
B65H 18/28 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
B65H23/198
B65H18/10
B65H18/28
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-199578(P2016-199578)
(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2018-58696(P2018-58696A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三宅 大悟
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−123336(JP,U)
【文献】
国際公開第2016/132495(WO,A1)
【文献】
特開2006−206277(JP,A)
【文献】
特開2010−235301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 16/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送りモータを有し、対象物を送り出す送り部と、巻取りモータを有し、前記送り部から送り出された前記対象物を巻き取る巻取り部と、前記巻取りモータにより駆動され前記対象物を巻き取る非円形の巻取り回転軸と、両端にロールが設けられた回転軸と、前記回転軸に一定のトルクが与えられ、前記回転軸に与えられた前記トルクを保持するように動作し、前記対象物の巻取りの張力を一定に保つダンサーとを備える巻取り装置を制御するための制御装置であって、
前記対象物の少なくとも一部が前記巻取り回転軸に巻かれた後の前記巻取り回転軸の形状に関する情報を算出する算出部と、
前記算出部の算出結果に基づいて、前記送り部から送り出された前記対象物の単位時間当たりの送り量と前記巻取り部で巻き取られる前記対象物の単位時間当たりの巻取り量が予め定められた範囲になるように、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する制御部と
を備え、
前記算出部は、前記ダンサーの前記回転軸の回転角度に基づいて、前記ダンサーにより調整された前記対象物のたわみの量を算出し、
前記制御部は、前記対象物のたわみが発生しないように、前記巻取り回転軸の巻取り角度毎に、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の回転速度を制御する制御装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記巻取り回転軸の形状を、前記巻取りモータの巻取り角度および前記対象物の送り量に基づいて算出する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記巻取り回転軸の外周を算出する
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記対象物の前記巻取り回転軸への巻き数を算出する
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記巻取り回転軸の巻取り角度と前記対象物の送り量との関係を予め算出する
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記算出部が予め算出した算出結果に基づいて、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する
請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記巻取り回転軸の駆動中に前記算出部が算出した算出結果に基づいて、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記巻取り装置は、前記対象物の送り量を測長する測長ロールを更に備え、
前記制御部は、前記測長ロールが測長した前記送り量に応じて、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
送りモータを有し、対象物を送り出す送り部と、
巻取りモータを有し、前記送り部から送り出された前記対象物を巻き取る巻取り部と、
前記巻取りモータにより駆動され前記対象物を巻き取る非円形の巻取り回転軸と、
前記対象物の巻取りの張力を一定に保つダンサーと
を有する巻取り装置と、
前記対象物の少なくとも一部が前記巻取り回転軸に巻かれた後の前記巻取り回転軸の形状に関する情報を算出する算出部と、
前記算出部の算出結果に基づいて、前記送り部から送り出された前記対象物の単位時間当たりの送り量と前記巻取り部で巻き取られる前記対象物の単位時間当たりの巻取り量が予め定められた範囲になるように、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する制御部と
を備え、
前記算出部は、前記ダンサーの動作に基づいて、前記巻取り回転軸の形状に関する情報を算出し、前記ダンサーの回転軸の回転角度に基づいて、前記ダンサーにより調整された前記対象物のたわみの量を算出し、
前記制御部は、前記対象物のたわみが発生しないように、前記巻取り回転軸の巻取り角度毎に、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の回転速度を制御する巻取りシステム。
【請求項10】
前記巻取り装置は、前記対象物の送り量を測長する測長ロールを更に備え、
前記算出部は、前記測長ロールの測長結果に基づいて、前記巻取り回転軸の形状に関する情報を算出する
請求項9に記載の巻取りシステム。
【請求項11】
前記対象物を前記巻取り回転軸に送り出すためのフィードロールを更に備え、
前記測長ロールは、前記フィードロールと前記ダンサーとの間における前記対象物の送り量を測長する
請求項10に記載の巻取りシステム。
【請求項12】
送りモータを有し、対象物を送り出す送り部と、巻取りモータを有し、前記送り部から送り出された前記対象物を巻き取る巻取り部と、前記巻取りモータにより駆動され前記対象物を巻き取る非円形の巻取り回転軸と、両端にロールが設けられた回転軸と、前記回転軸に一定のトルクが与えられ、前記回転軸に与えられた前記トルクを保持するように動作し、前記対象物の巻取りの張力を一定に保つダンサーとを備える巻取り装置の制御方法であって、
前記対象物の少なくとも一部が前記巻取り回転軸に巻かれた後の前記巻取り回転軸の形状に関する情報を算出する段階と、
前記ダンサーの前記回転軸の回転角度に基づいて、前記ダンサーにより調整された前記対象物のたわみの量を算出する段階と、
前記巻取り回転軸の形状に関する情報の算出結果に基づいて、前記送り部から送り出された前記対象物の単位時間当たりの送り量と前記巻取り部で巻き取られる前記対象物の単位時間当たりの巻取り量が予め定められた範囲になるように、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する段階と
を備え、
前記対象物のたわみが発生しないように、前記巻取り回転軸の巻取り角度毎に、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の回転速度を制御する制御方法。
【請求項13】
前記巻取り回転軸の巻取り角度と前記対象物の送り量との関係を予め算出し、前記関係に基づいて、前記巻取りモータおよび前記送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する
請求項12に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、巻取りシステムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素材を巻き取るための巻取装置において、円形の巻取り回転軸を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。従来の巻取装置は、張力を一定に制御しながら円形の巻取り回転軸に素材を巻き取る。
特許文献1 特開平7−285717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の巻取装置では、巻取り回転軸が非円形の場合、素材にたわみが生じるので張力を一定に制御できない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、送りモータを有し、対象物を送り出す送り部と、巻取りモータを有し、送り部から送り出された対象物を巻き取る巻取り部と、巻取りモータにより駆動され対象物を巻き取る非円形の巻取り回転軸とを備える巻取り装置を制御するための制御装置であって、送り部から送り出された対象物の単位時間当たりの送り量と巻取り部で巻き取られる対象物の単位時間当たりの巻取り量が予め定められた範囲になるように、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する制御部を備える制御装置を提供する。
【0005】
巻取り回転軸の形状に関する情報を算出する算出部を更に備えてよい。制御部は、算出部の算出結果に基づいて、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御してよい。
【0006】
算出部は、対象物の少なくとも一部が巻取り回転軸に巻かれた後の巻取り回転軸の形状に関する情報を算出してよい。
【0007】
算出部は、巻取り回転軸の形状を、巻取りモータの巻取り角度および対象物の送り量に基づいて算出してよい。
【0008】
算出部は、巻取り回転軸の外周を算出してよい。
【0009】
算出部は、対象物の巻取り回転軸への巻き数を算出してよい。
【0010】
算出部は、巻取り回転軸の巻取り角度と対象物の送り量との関係を予め算出してよい。
【0011】
制御部は、巻取り回転軸の巻取り角度毎に、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の回転速度を制御してよい。
【0012】
制御部は、算出部が予め算出した算出結果に基づいて、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御してよい。
【0013】
制御部は、巻取り回転軸の駆動中に算出部が算出した算出結果に基づいて、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御してよい。
【0014】
巻取り装置は、対象物の送り量を測長する測長ロールを更に備えてよい。制御部は、測長ロールが測長した送り量に応じて、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御してよい。
【0015】
本発明の第2の態様においては、送りモータを有し、対象物を送り出す送り部と、巻取りモータを有し、送り部から送り出された対象物を巻き取る巻取り部と、巻取りモータにより駆動され対象物を巻き取る非円形の巻取り回転軸とを有する巻取り装置と、送り部から送り出された対象物の単位時間当たりの送り量と巻取り部で巻き取られる対象物の単位時間当たりの巻取り量が予め定められた範囲になるように、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する制御部とを備える巻取りシステムを提供する。
【0016】
巻取り回転軸の形状に関する情報を算出する算出部を更に備えてよい。制御部は、算出部の算出結果に基づいて、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御してよい。
【0017】
巻取り装置は、対象物の送り量を測長する測長ロールを更に備えてよい。算出部は、測長ロールの測長結果に基づいて、巻取り回転軸の形状に関する情報を算出してよい。
【0018】
対象物の巻取りの張力を一定に保つダンサーを更に備えてよい。算出部は、ダンサーの動作に基づいて、巻取り回転軸の形状に関する情報を算出してよい。
【0019】
対象物を巻取り回転軸に送り出すためのフィードロールを更に備えてよい。測長ロールは、フィードロールとダンサーとの間における対象物の送り量を測長してよい。
【0020】
本発明の第3の態様においては、送りモータを有し、対象物を送り出す送り部と、巻取りモータを有し、送り部から送り出された対象物を巻き取る巻取り部と、巻取りモータにより駆動され対象物を巻き取る非円形の巻取り回転軸とを備える巻取り装置の制御方法であって、送り部から送り出された対象物の単位時間当たりの送り量と巻取り部で巻き取られる対象物の単位時間当たりの巻取り量が予め定められた範囲になるように、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御する制御方法を提供する。
【0021】
巻取り回転軸の巻取り角度と対象物の送り量との関係を予め算出し、関係に基づいて、巻取りモータおよび送りモータの少なくとも一方の駆動を制御してよい。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】巻取りシステム200のより具体的な構成の一例を示す。
【
図3A】巻取り角度θ
1での巻取り回転軸52の駆動状態を示す。
【
図3B】巻取り角度が0°の場合の巻取り回転軸52の駆動状態を示す。
【
図4】巻取りシステム200の制御ブロックの一例である。
【
図5】より具体的な巻取り回転軸52の構成例を示す。
【
図6】測長ロール送り量、巻取り角度およびこれらの基準とのずれ量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、巻取りシステム200の構成の一例を示す。巻取りシステム200は、送り部40、巻取り部50および制御装置100を備える。送り部40は、原反11、フィードロール44、原反モータM1およびフィードモータM2を備える。制御装置100は、算出部20および制御部30を備える。巻取り部50は、巻取りモータM4および巻取り回転軸52を備える。
【0026】
原反11は、対象物10を加工する前のロール状の対象物10である。原反11は、原反モータM1の動作に応じた送り量で対象物10を供給する。本例の巻取りシステム200は、1つの原反11を備えるが、複数の原反11を備えてもよい。原反11は、原反モータM1に接続され、原反モータM1によって駆動される。これにより、原反モータM1の動作に応じた送り量で、対象物10が供給される。
【0027】
フィードロール44は、原反11から送り出された対象物10を巻取り部50に送り出す。本例のフィードロール44は、フィードモータM2に接続され、フィードモータM2によって駆動される。これにより、フィードロール44は、フィードモータM2の動作に応じた送り量で対象物10を巻取り部50に送り出す。
【0028】
制御部30は、巻取り回転軸52の巻取り角度によらず、送り部40から送り出される対象物10の単位時間当たりの送り量と、巻取り部50で巻き取られる対象物10の単位時間当たりの巻取り量とが予め定められた範囲になるように制御する。本明細書において、対象物10の単位時間当たりの送り量とは、フィードロール44のライン接触点において巻取り部50に向けて送り出される単位時間当たりの送り量を指す。また、対象物10の単位時間当たりの巻取り量とは、巻取り回転軸52のライン接触点での単位時間当たりに引っ張る量を指す。制御部30は、巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の駆動を制御することにより、単位時間当たりの送り量と単位時間当たりの巻取り量とが所定の範囲となるように制御する。本明細書において、送りモータMfとは、予め定められた送り速度(すなわち単位時間当たりの送り量)で対象物10を送り出すモータを指す。例えば、送りモータMfは、原反モータM1およびフィードモータM2のいずれかである。一方、巻取りモータM4は、予め定められた巻取り速度(すなわち単位時間当たりの巻取り量)で対象物10を巻き取るために動作する。
【0029】
なお、本明細書において、「単位時間当たりの送り量と巻取り量が予め定められた(または所定の)範囲」とは、巻取り量と送り量とが同じ場合、巻取り量が送り量よりも大きい場合、および、巻取り量が送り量よりも小さい場合を含む。すなわち、一般的に対象物10の張力を一定に保つためには、単位時間当たりの巻取り量を単位時間当たりの送り量よりも若干大きくする。例えば、単位時間当たりの送り量を100%とすると、単位時間当たりの巻取り量を100.1%となるように両者の比率を一定に制御する。また、単位時間当たりの送り量X(m/sec)に対して一定量α(m/sec)(X≫α)を加えて、単位時間当たりの巻取り量をX+α(m/sec)となるように制御するようにしてもよい。なお、制御装置によっては、単位時間当たりの巻取り量を単位時間当たりの送り量よりも若干小さくなるような張力に設定する場合もある。この場合、上記とは逆に、単位時間当たりの送り量を100%とすると、単位時間当たりの巻取り量を99.9%となるように両者の比率を一定に制御したり、単位時間当たりの送り量X(m/sec)に対して一定量α(m/sec)を減じて、単位時間当たりの巻取り量をX−α(m/sec)となるように制御したりすることもある。例示として、αはXの1%以下であってよく、0.5%以下であってよく、0.1%以下であってもよい。
【0030】
対象物10は、巻取り回転軸52により巻取れるものであれば特に限定されない。一例において、対象物10は、紙やフィルムなどの帯状の形状を有する。例えば、対象物10は、リチウムイオン二次元電池の電極素材である。また、巻取りシステム200は、複数の対象物10を複数の送り部40から供給し、各々を重ねて巻取り回転軸52に巻きとってもよい。なお、対象物10は、線状のものであってもよい。
【0031】
巻取り回転軸52は、単位時間当たりの送り量と巻取り量とが所定の範囲になるように対象物10を巻き取るべく、巻取りモータM4により駆動される。本例の巻取り回転軸52の形状は非円形である。巻取り回転軸52が非円形の場合、巻取り回転軸52の回転角度に応じて、対象物10の単位時間当たりの巻取り量が変化する。巻取り回転軸52が非円形の場合とは、巻取り回転軸52が円形の場合であって、対象物10が巻き取られることにより、結果的に巻取り回転軸52が非円形となる場合を含んでよい。なお、巻取り回転軸52の形状とは、巻取り回転軸52が対象物10を巻き取る際に対象物10と接する外周の形状を指す。つまり、巻取り回転軸52の形状は、巻取り回転軸52の回転軸と垂直な面の断面形状となる。
【0032】
算出部20は、巻取り回転軸52の形状に関する情報を算出する。また、算出部20は、対象物10の少なくとも一部が巻取り回転軸52に巻かれた後の巻取り回転軸52の形状に関する情報を算出してよい。巻取り回転軸52の形状に関する情報とは、巻取り回転軸52の巻取り角度によらず、単位時間当たりの送り量と単位時間当たりの巻取り量とが所定の範囲となるように、巻取りモータおよび送りモータMfの少なくとも一方の駆動を制御できるものであればよい。例えば、巻取り回転軸52の形状に関する情報には、対象物10の送り量、対象物10の巻取り量、巻取り回転軸52の巻取り角度、対象物10の巻き数等が含まれる。
【0033】
算出部20は、対象物10の少なくとも一部が巻取り回転軸52に巻かれた後の巻取り回転軸52の形状に関する情報を算出する。対象物10の少なくとも一部が巻取り回転軸52に巻かれた後の巻取り回転軸52の形状に関する情報は、巻取り回転軸52の巻取り角度および対象物10の送り量に基づいて算出されてよい。例えば、巻取り回転軸52の巻取り角度と対象物10の送り量との関係より、巻取り角度毎の対象物10の巻取り量が算出される。これにより、算出部20は、単位時間当たりの送り量と単位時間当たりの巻取り量とが所定の範囲になるようにするために必要な制御量を算出できる。
【0034】
一例において、算出部20は、巻取り回転軸52の外周を算出する。例えば、算出部20は、任意の巻取り角度から次に同一の巻取り角度となるまでの送り量を算出する。言い換えると、算出部20は、巻取り回転軸52の一周分の送り量を算出する。また、算出部20は、対象物10の巻取り回転軸52への巻き数を算出してよい。一例において、算出部20は、対象物10の巻き数毎に予め巻取り回転軸52の形状に関する情報を取得しておく。これにより、制御部30は、対象物10の巻き数に応じて、送り部40および巻取り部50を制御できる。
【0035】
また一例において、算出部20は、巻取り回転軸52の形状に関するデータを予め算出する。算出部20は、巻取り回転軸52の巻取り角度と対象物10の送り量との関係を予め算出する。巻取り回転軸52の巻取り角度と対象物10の送り量との関係とは、巻取り回転軸52の巻取り角度と対象物10の送り量との対応関係を示すテーブルであってよい。但し、巻取り回転軸52の巻取り角度と対象物10の送り量との対応関係が得られるものであれば、特に限定されない。
【0036】
制御部30は、算出部20の算出結果に基づいて、送り部40又は巻取り部50の少なくとも一方の駆動を制御する。一例において、制御部30は、算出部20の算出結果に基づいて、巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の駆動を制御する。これにより、制御部30は、巻取り回転軸52の巻取り角度によらず、単位時間当たりの送り量と単位時間当たりの巻取り量とが所定の範囲となるように制御する。なお、制御部30は、送りモータMfとして原反モータM1およびフィードモータM2がある場合、原反モータM1およびフィードモータM2の少なくとも一方のモータを制御すればよい。
【0037】
本例の制御部30は、巻取り回転軸52の巻取り角度毎に、巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の回転速度(または回転位置)を制御する。即ち、制御部30は、巻取り回転軸52が非円形の場合であっても、巻取り回転軸52の形状に対応する巻取り回転軸の巻取り角度毎に巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の回転速度を制御できる。
【0038】
一例において、制御部30は、算出部20が予め取得した情報に基づいて、巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の駆動を制御する。制御部30は、算出部20が予め取得した情報に基づいて制御することにより、巻取りシステム200の駆動を均一にできる。一方、制御部30は、巻取り回転軸52の駆動中に算出部20が算出した算出結果に基づいて、巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の駆動を制御してよい。この場合、制御部30は、製品毎に巻取り回転軸52の動作をリアルタイムで制御できるので、より厳密に単位時間当たりの送り量と単位時間当たりの巻取り量とが所定の範囲になるように制御できる。例えば、制御部30は、巻取り回転軸52の一周前の動作に応じた算出部20の算出結果に基づいて、次の一周の動作を制御する。
【0039】
図2は、巻取りシステム200のより具体的な構成の一例を示す。同図では、制御装置100を省略している。本例の巻取りシステム200は、フィード回転軸42、測長ロール48およびダンサー46を備える。
図1に係る巻取りシステム200と共通の符号で示された構成は、
図1の場合と同様に動作してよい。
【0040】
測長ロール48は、対象物10の送り量を測長する。本例の測長ロール48は、ダンサー46とフィードロール44との間に設けられる。但し、測長ロール48の位置は、原反11とフィードロール44との間であれば本例に限られない。一例において、測長ロール48は、原反11とダンサー46との間に設けられる。また、測長ロール48は、フィードロール44の直前に設けられてよい。
【0041】
算出部20は、測長ロール48の測長結果に基づいて、巻取り回転軸52の形状に関する情報を算出する。そして、制御部30は、算出部20の算出結果に基づいて、巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の駆動を制御する。例えば、制御部30は、送りモータMfについて、原反モータM1、フィードモータM2およびフィードモータM5の少なくとも1つの動作を制御する。
【0042】
ダンサー46は、対象物10の巻取りの張力を一定に保つ。本例のダンサー46は、両端にロールが設けられた回転軸を備える。ダンサー46の回転軸には一定のトルクが与えられ、ダンサー46は回転軸に与えられたトルクを保持するように動作する。これにより、ダンサー46は、対象物10の張力を略一定に保つ。安定性の観点からは、ダンサー46の動作が一定となるように保持されることが好ましい。本例の算出部20は、ダンサー46の動作に基づいて、巻取り回転軸52の形状に関する情報を算出してよい。
【0043】
例えば、算出部20は、ダンサー46の位置に基づいて、対象物10の送り量を算出する。ダンサー46の位置とは、ダンサー46の回転軸の位置に加えて、ダンサー46の回転軸の回転角度であってもよい。ダンサー46の回転軸の回転角度が分かればダンサー46により調整された対象物10のたわみの量が分かるので、対象物10の送り量を正確に算出できる。この場合も、制御部30は、算出部20の算出結果に基づいて、巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の駆動を制御する。なお、ダンサー46の構成は本例に限られない。
【0044】
フィード回転軸42は、フィードモータM2に接続され、フィードモータM5によって駆動される。これにより、フィード回転軸42は、フィードモータM5の動作に応じた単位時間当たりの送り量で対象物10を巻取り部50に送り出す。本例の巻取りシステム200は、1つのフィード回転軸42を備えるが、複数のフィード回転軸42を備えてもよい。
【0045】
ここで、巻取り回転軸52が円形の場合、ダンサー46を用いることにより、対象物10のたるみを解消し、対象物10の張力を一定に制御できる。一方、巻取り回転軸52が非円形の場合、ダンサー46が変動することにより、対象物10の単位時間当たりの送り量が変化するので、対象物10に対して一定の張力を与えることが困難となる。しかしながら、制御装置100は、巻取り回転軸52の巻取り角度毎に巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方の駆動を制御するので、巻取り回転軸52が非円形であっても、対象物10の張力を一定に保つことができる。
【0046】
図3Aは、巻取り角度θ
1での巻取り回転軸52の駆動状態を示す。
図3Bは、巻取り角度が0°の場合の巻取り回転軸52の駆動状態を示す。なお、巻取り回転軸52の巻取り角度θは、Y軸と平行な場合を0°として、時計周りを巻取り角度の正の方向とした場合の角度である。
【0047】
巻取り回転軸52は、非円形の形状を有するので、巻取り回転軸52の巻取り角度によって対象物10のパス長Lが変化する。対象物10のパス長Lとは、フィード接触点と巻取り回転軸接触点との距離を指す。例えば、巻取り角度θ
1でのパス長はL
1で示され、巻取り角度が0°の場合のパス長はL
0で示される。本例のパス長L
0は、パス長L
1よりも短くなる。また、巻取り回転軸52は、非円形の形状を有するので、巻取り回転軸52の巻取り角度によって単位時間当たりの巻取り量が変化する。即ち、巻取りシステム200は、対象物10の単位時間当たりの送り量と単位時間当たりの巻取り量とを所定の範囲にするためには、巻取り回転軸52の巻取り角度に応じて、フィードロール44のライン接触点のおける単位時間当たりの送り量か、巻取り回転軸52のライン接触点における単位時間当たりの巻取り量の少なくとも一方を制御する必要がある。
【0048】
図4は、巻取りシステム200の制御ブロックの一例である。巻取りシステム200は、製造する物や要求される巻取り速度に応じて巻取り長および対象物10のライン速度を設定するための設定値が入力される。
【0049】
巻取りシステム200は、起動指令、巻取り長設定値および速度設定値に基づいて、仮想主軸を設定する。巻取り長設定値は、対象物10のラインの送り量を決定するための設定値である。速度設定値は、対象物10のライン速度を決定するための設定値である。仮想主軸は、巻取り長設定値の移動量と速度設定値の速度から算出した仮想の位置指令である。原反モータM1、巻取りモータM4およびフィードモータM5は、仮想主軸に応じて駆動する。
【0050】
図4において、「周長計測」は原反モータM1、フィードモータM5およびダンサー制御M3のパルスジェネレータPGのうち、少なくとも1つのパルスジェネレータPGからの信号に応じて原反11の周長を計測するものであり、「巻取り形状計測」は巻取りモータM4および測長ロール48のパルスジェネレータPGのうち、少なくとも1つのパルスジェネレータPGからの信号に応じて巻取り回転軸52の形状を計測するものである。「巻取り形状計測」は巻取り回転軸52の形状に加えて巻取り回転軸52の周長も計測するようにしてもよい。
【0051】
原反モータM1は、巻取り長設定値、速度設定値および「周長計測」からの原反11の周長計測値に応じた速度で原反11を駆動する。原反モータM1は、ダンサー46の位置や巻取り回転軸52の周長測定結果に応じて駆動が制御されてよい。例えば、原反モータM1を制御する速度指令値は、ダンサー46の位置設定値に基づくPI制御により生成されてよい。また、原反モータM1は、「巻取り形状計測」からの巻取り回転軸52の周長計測値に基づいて制御するようにしてよい。
【0052】
本例の巻取りシステム200は、原反11あるいは巻取り回転軸52の周長計測結果を原反モータM1の送り量を制御するために用いているが、巻取りモータM4および送りモータMfを制御するために用いてもよい。
【0053】
フィードモータM5は、巻取り長設定値および速度設定値、フィード回転軸42の径に応じて生成された速度指令値に基づいてフィード回転軸42を駆動する。本例のフィードモータM5は、生成された速度指令値によって動作するが、位置指令値によって動作してもよい。なお、フィードモータM5は、ダンサー制御M3からの位置情報に応じた速度指令値に基づいて動作してもよい。
【0054】
ダンサー制御M3は、予め定められたトルク指令値に応じたトルクが保持されるようにダンサー46を動作させる。トルク指令値は、外部から入力された張力設定値に基づいて、生成されてよい。トルク指令値は一定であることが好ましい。
【0055】
巻取りモータM4は、位置指令や巻取り回転軸52の形状に応じて動作する。位置指令値は、仮想主軸に基づいて生成される。巻取り回転軸52の形状は、巻取りモータM4の速度(または位置)および測長ロール48のパルスジェネレータPGからの出力に応じて計測される。
【0056】
図5は、より具体的な巻取り回転軸52の構成例を示す。同図は、巻取り回転軸52の回転軸を原点(0,0)としたXY平面を示す。フィードロール44のフィード接触点は、X成分が巻取り回転軸52の回転軸のX成分と同一で、Y成分が巻取り回転軸52の回転軸との距離がY
0となるように配置されている。よって、フィードロール44のフィード接触点が(0.Y
0)で示される。なお、本例では、フィードロール44のフィード接触点と、巻取り回転軸52の回転軸のX成分を揃える場合について説明したがこれに限られない。
【0057】
また、巻取り回転軸52と対象物10との巻取り時の接触点は(X,Y)で示される。接触点(X,Y)は、巻取り角度θの変化に応じて変化する。本例の巻取り回転軸52は、長さL
52を有し、回転軸(0,0)を中心に対称な形状を有する。そのため、巻取り角度θが0°〜180°の場合と、180°〜360°の場合とで接触点(X,Y)の変化が対称になる。言い換えると、巻取り角度θが0°〜180°の場合と、180°〜360°の場合とでパス長Lの変化が対称になる。
【0058】
図6は、測長ロール送り量、巻取り角度およびこれらの基準とのずれ量を示す。縦軸は巻取り回転軸52の巻取り角度θ[°]を示し、横軸は測長ロール48の送り量[mm]を示す。グラフAは、巻取り回転軸52が円形であることを想定した場合の基準線である。グラフBは、非円形状の巻取り回転軸52を用いた場合のグラフである。グラフCは、基準と実際の制御量とのずれを示す。即ち、グラフCは、グラフAとグラフBとの差分を示している。
【0059】
グラフBは、算出部20が算出した測長ロール48の送り量と巻取り角度θとの関係の一例を示している。即ち、グラフBは、算出部20が算出する巻取り回転軸52の形状に関する情報の一例である。但し、算出部20は、測長ロール48の送り量と巻取り角度θとの関係をグラフ化する必要はなく、測長ロール48の送り量と巻取り角度θとの関係を示すデータを算出すればよい。これにより、制御部30は、巻取り回転軸52の巻取り角度θに応じた送り量となるように、巻取りモータM4および送りモータMfの少なくとも一方を制御できる。よって、本例の制御装置100は、巻取り回転軸52が非円形の場合であっても、グラフCで示される量だけ、対象物10の巻取り回転軸52への巻き取りを制御できる。
【0060】
以上の通り、本明細書に開示された制御装置100は、巻取り回転軸52が非円形の場合であっても、対象物10の張力を一定に保持する。これにより、巻取りシステム200は、対象物10を巻取り回転軸52に均一に巻き取ることができる。このように、巻取りシステム200は、フィードロール44のフィード接触点における単位時間当たりの送り量と巻取り回転軸52の接触点における単位時間当たりの巻取り量とを所定の範囲にすることで、巻取り回転軸52の形状が要因の張力変動を抑制し、安定した巻取りを実現できる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0063】
10・・・対象物、11・・・原反、20・・・算出部、30・・・制御部、40・・・送り部、42・・・フィード回転軸、44・・・フィードロール、46・・・ダンサー、48・・・測長ロール、50・・・巻取り部、52・・・巻取り回転軸、100・・・制御装置、200・・・巻取りシステム