(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また、本願の明細書及び図面において、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は、図示を省略する。さらに、以下の各図では、鉛直方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内において、後述する第1及び第2流路の反応領域の延設方向にY軸を取り、かつ、Y軸に垂直な方向にX軸を取る。
【0011】
本発明の熱処理装置は、第1流体と第2流体とを流通させて、流体間の熱交換を利用する。以下、本実施形態に係る熱処置装置は、熱交換型の反応装置であるものとする。この場合、反応流体及び反応により生成された生成物が第1流体に相当し、熱媒体が第2流体に相当する。ただし、本発明は、熱交換器などの熱処理装置にも適用可能である。
【0012】
図1は、本実施形態に係る反応装置1の構成を示す側面図である。反応装置1は、反応処理を行う本体部としての熱交換部3を備え、反応体としての反応原料を含んだ気体又は液体の反応流体を加熱又は冷却することで、反応体の反応を進行させる。
【0013】
熱交換部3は、反応流体及び生成物が流通する反応流路を有する複数の第1伝熱体7と、熱媒体が流通する熱媒体流路を有する複数の第2伝熱体9と、蓋体39とを含み、反応流体又は生成物と熱媒体とが互いに反対方向に流れる対向流型の構造を有する。第1伝熱体7、第2伝熱体9及び蓋体39は、それぞれ、耐熱性を有する熱伝導性素材で形成された平板状部材である。
【0014】
図2は、
図1におけるA−A部に対応した、第1伝熱体7を含む部位の構成及び形状を示す平面図である。第1伝熱体7は、反応領域を含む反応流路としての複数の第1流路17を有する。第1流路17は、その中間部分を反応領域とし、後述の第2伝熱体9内の第2流路を流通する熱媒体から供給された熱又は冷熱を受容して反応流体Mを反応させ、生成物Pを生成する。第1流路17は、それぞれ、Z方向の上方を開として、第1伝熱体7の一方の第1側面で開放され、反応流体Mが導入される第1導入口20から、Y方向に沿って他方の第2側面の直前まで直線状に伸び、流路断面を矩形とした溝である。これらの第1流路17は、X方向に等間隔に配設されている。
【0015】
第1伝熱体7は、第1基部11と、2つの第1側壁13と、複数の第1中間壁15と、第1隔壁19とを含む。第1基部11は、第1伝熱体7のXY平面全体を網羅する矩形板状の壁部である。第1側壁13は、第1基部11のZ方向に垂直な主表面の片面上で、第1流路17の延伸方向の左右端にそれぞれ設けられる壁部である。複数の第1中間壁15は、第1基部11の主表面の片面上で、2つの第1側壁13に挟まれ、それぞれ、第1側壁13と並列に、かつ、等間隔で設けられる壁部である。また、第1隔壁19は、第1基部11の主表面の片面上の第2側面側で、第1流路17の延設方向に対して垂直方向となるX方向に沿って設けられる。第1流路17が第2側面まで延伸すると、熱媒体が導入されている後述の第2空間S2に突き当たってしまう。そこで、第1隔壁19は、複数の第1流路17を流通してきた生成物Pの進行方向を変化させる。第1側壁13、第1中間壁15及び第1隔壁19の各壁部のZ方向の高さは、同一である。
【0016】
また、第1伝熱体7は、第1隔壁19の内側面に沿って延設された第1連絡流路23を有する。第1連絡流路23は、すべての第1流路17に連通するとともに、一方の端部が第1側壁13の一方に設けられた、生成物Pを第1伝熱体7の外部に排出するための第1排出口21に連通する。なお、ここでは、流路の形状を明示するために、第1流路17とは別に第1連絡流路23を登場させているが、これは呼び名の差であって、反応流体M及び生成物Pを流通させるという流路の機能としては、第1連絡流路23も第1流路17の一種である。また、
図2では、第1流路17を流通し、第1排出口21に導かれる流体のすべてが生成物Pであるものして描写されているが、実際には、反応に用いられなかった反応流体Mも含まれる場合もある。
【0017】
図3は、
図1におけるB−B部に対応した、第2伝熱体9を含む部位の構成及び形状を示す平面図である。第2伝熱体9は、熱媒体流路としての複数の第2流路31を有する。第2流路31は、熱媒体HCから供給された熱又は冷熱を、外部すなわち第1伝熱体7に向けて供給する。第2流路31は、それぞれ、Z方向の上方を開として、第2伝熱体9の一方の第1側面で開放され、熱媒体HCが導入される第2導入口30から、Y方向に沿って他方の第2側面の直前まで直線状に伸び、流路断面を矩形とした溝である。ただし、第2伝熱体9でいう第1側面は、上述の第1伝熱体7でいう第1側面とは、Y方向で反対となる。これらの第2流路31も、第1流路17と同様に、X方向に等間隔に配設されている。さらに、不図示であるが、第2流路31には、熱媒体との接触面積を増加させて熱媒体と第2伝熱体9との間の伝熱を促進するための伝熱促進体を設置してもよい。
【0018】
第2伝熱体9は、第2基部25と、2つの第2側壁27と、複数の第2中間壁29と、第2隔壁33とを含む。第2基部25は、第2伝熱体9のXY平面全体を網羅する矩形板状の壁部である。第2側壁27は、第2基部25のZ方向に垂直な主表面の片面上で、第2流路31の延伸方向の左右端にそれぞれ設けられる壁部である。複数の第2中間壁29は、第2基部25の主表面の片面上で、2つの第2側壁27に挟まれ、それぞれ、第2側壁27と並列に、かつ、等間隔で設けられる壁部である。また、第2隔壁33は、第2基部25の主表面の片面上の第2側面側で、第2流路31の延設方向に対して垂直方向となるX方向に沿って設けられる。第2流路31が第2側面まで延伸すると、反応流体Mが導入されている後述の第1空間S1に突き当たってしまう。そこで、第2隔壁33は、複数の第2流路31を流通してきた熱媒体HCの進行方向を変化させる。第2側壁27、第2中間壁29及び第2隔壁33の各壁部のZ方向の高さは、同一である。
【0019】
また、第2伝熱体9は、第2隔壁33の内側面に沿って延設された第2連絡流路37を有する。第2連絡流路37は、すべての第2流路31に連通するとともに、一方の端部が第2側壁27の一方に設けられた、熱媒体HCを第2伝熱体9の外部に排出するための第2排出口35に連通する。
【0020】
そして、
図1に示すように、Z方向の最上部を蓋体39とし、蓋体39の下方に向かって第2伝熱体9と第1伝熱体7とを交互に積層し接合することで、接合体又は積層体としての熱交換部3が形成される。このとき、第1伝熱体7の第1流路17と、第2伝熱体9の第2流路31とは、第1基部11又は第2基部25を介して非接触で隣り合う。熱交換部3の組み立ての際には、各部材間をTIG(Tungsten Inert Gas)溶接や拡散接合等のような接合方法を利用して固着させることで、各部材間の接触不良に起因する伝熱性の低下等が抑止される。
【0021】
熱交換部3を構成する各要素の熱伝導性素材としては、鉄系合金やニッケル合金等の耐熱性金属が好適である。具体的には、ステンレス綱等の鉄系合金、インコネル625(登録商標)、インコネル617(登録商標)、Haynes230(登録商標)等のニッケル合金のような耐熱合金が挙げられる。これらの熱伝導性素材は、第1流路17での反応進行や熱媒体として使用し得る燃焼ガスに対する耐久性又は耐食性を有するので好ましいが、これらに限定されるものではない。また、鉄系メッキ鋼や、フッ素樹脂等の耐熱樹脂で被覆した金属、又は、カーボングラファイト等でもよい。
【0022】
なお、熱交換部3は、少なくとも1つの第1伝熱体7と第2伝熱体9との一対の組で構成可能である。ただし、熱交換性能を向上させる観点から、伝熱体の数は多い方が望ましい。また、1つの第1伝熱体7に形成される第1流路17及び1つの第2伝熱体9に形成される第2流路31の数も、特に限定されるものではなく、熱交換部3の設計条件や伝熱効率などを考慮して適宜変更可能である。さらに、本実施形態では、熱交換部3自体を反応装置1の本体部と位置付けているが、熱交換部3からの放熱を抑制して熱損失を抑えるために、ハウジング又は断熱材で熱交換部3の周囲を覆う構成としてもよい。
【0023】
また、反応装置1は、複数の第1流路17のそれぞれに対して着脱可能に設置される複数の管状部材を備える。
【0024】
図4は、1つの管状部材60の形状を示す斜視図である。管状部材60は、第1流路17の延設方向に合わせて延伸する管壁60aと、管壁60aの一方の開口部に連設される突出部60bとを含む。管壁60aは、第1伝熱体7における第1流路17を形成する壁面の形状に合わせた外壁面60a
1と、反応流体M又は生成物Pが接する内壁面60a
2とを有する(
図6参照)。突出部60bは、管壁60aの外壁面60a
1よりも外側に突出する部位である。本実施形態にける突出部60bの形状は、管壁60aの四方の内壁部で囲まれた流路断面と同じ形状の開口を中心部に有するフランジ状である。ただし、突出部60bの形状は、例えば、管壁60aの開口部における外壁面60a
1の一部のみから外側に突出する棒状又は板状であってもよい。また、突出部60bが突出する方向は、外壁面60a
1に対して垂直方向に外側に向かうのみならず、外壁面60a
1に対して傾斜して外側に向かう方向であってもよい。さらに、突出部60bは、管壁60aと一体成形されるものであってもよいし、管壁60aとは別部材で、管壁60aに対して溶接等により接合されているものであってもよい。
【0025】
図5は、第1流路17に設置されている複数の管状部材60の状態を示す図である。特に、
図5(a)は、
図1におけるC−C部の一部に対応した側面図である。一方、
図5(b)は、
図1におけるD−D部の一部に対応した断面図である。
【0026】
本実施形態では、第1流路17の断面形状は、矩形である。管状部材60の管壁60aの外壁面60a
1は、第1流路17を形成する壁面の形状すなわち第1流路17の断面形状に合わせるので、管壁60aの外周形状も、矩形となる。ここで、管壁60aの外壁面60a
1は、熱交換効率を維持するために、第1流路17を構成する四方の壁面に対して広い範囲で接することが望ましい。ただし、管状部材60は、第1流路17に対して着脱可能であるので、第1流路17を構成する壁面に対して管壁60aを移動可能とする程度に管壁60aの外壁面60a
1との間の隙間を許容する。なお、第1流路17を構成する壁面と管壁60aの外壁面60a
1との間に、ある程度の隙間が存在する場合には、例えば、第1伝熱体7又は管状部材60の少なくともいずれかと同一又は類似の熱伝導性素材からなるシムを挟み込んでもよい。また、管壁60aの延伸方向の長さは、少なくとも第1流路17内の反応領域を含む程度であればよい。具体的には、例えば、管壁60aの延伸方向の長さを、管状部材60を第1流路17に設置したときに、第1導入口20から第1流路17が第1連絡流路23に連接する部分までの間に位置する程度の長さとし得る。さらに、不図示であるが、管壁60aの内部には、反応体の反応を促進させるための触媒体を設置してもよい。
【0027】
図6は、
図5におけるE−E部の一部に対応した、管状部材60の突出部60bと、突出部60bが直接的又は間接的に接触する第1伝熱体7及び第2伝熱体9の一部を示す断面図である。
【0028】
図6(a)は、第1流路17に対する管状部材60の第1の設置例を示す図である。ある1つの第1流路17に対して管状部材60を第1導入口20から挿入していくと、突出部60bの一部の面が第1伝熱体7の側面7a又は第2伝熱体9の側面9aに当接する。これにより、管状部材60は、挿入された第1流路17に対して位置決めされ、反応処理中でも第1流路17内で位置ズレを生じさせることがない。また、作業者にとっても、突出部60bを保持しながら、容易に管状部材60の着脱を行うことができる。
【0029】
図6(b)は、第1流路17に対する管状部材60の第2の設置例を示す図である。管状部材60の基本的な設置構成は、第1の設置例と同様である。これに対して、第2の設置例では、第1伝熱体7の側面7a又は第2伝熱体9の側面9aに対して、突出部60bの一部の面が封止材62を介して当接する。封止材62としては、ゴム等の弾性部材、樹脂材、金属部材又は無機繊維材(例えば、ノンアスベストガスケットなど)など種々の材料が採用可能である。この封止材を採用することにより、第1流路17を構成する壁面と管壁60aの外壁面60a
1との間に隙間が存在している場合、その隙間に反応流体Mが進入することを抑えることができる。
【0030】
図6(c)は、第1流路17に対する管状部材60の第3の設置例を示す図である。第3の設置例では、第1伝熱体7が突出部60bの一部を収容する第1溝部7bを有し、同様に、第2伝熱体9が突出部60bの他の一部を収容する第2溝部9bを有する。この構成により、突出部60bの全体が第1伝熱体7又は第2伝熱体9の側面内に隠れるため、例えば、第1空間S1内での反応流体Mの流れを妨げにくいという利点がある。
【0031】
さらに、反応装置1は、反応流体導入部45及び生成物排出部49と、熱媒体導入部53及び熱媒体排出部57とを備える。
【0032】
反応流体導入部45は、凹状に湾曲した筐体であり、複数の第1流路17の第1導入口20が開放されている熱交換部3の側面を覆い、熱交換部3との間に第1空間S1を形成する。反応流体導入部45は、熱交換部3に対して着脱可能又は開閉可能に設置される。この着脱等により、例えば、作業者が第1流路17に対する触媒体の挿入や抜き出しを行うことができる。また、反応流体導入部45は、反応流体Mを熱交換部3の外部から内部へ導入する第1導入配管47を有する。第1導入配管47は、熱交換部3の側面に対して中心、具体的にはXZ平面上の中心に位置し、複数の第1導入口20の開口方向と同一方向に連接されている。このような構成により、1箇所から導入された反応流体Mは、複数の第1導入口20のそれぞれに分配される。
【0033】
生成物排出部49は、1つの開放面を有する箱状の筐体であり、第1伝熱体7の第1排出口21に開放面が合うように、熱交換部3の第3側面に設置される。また、生成物排出部49は、その壁部の1箇所に、生成物Pを熱交換部3の内部から外部へ排出する第1排出配管51を有する。第1排出配管51は、不図示であるが、生成物Pに対して後処理等を行う別の処理器に接続されている。このような構成により、複数の第1排出口21のそれぞれから排出された生成物Pは、1箇所の第1排出配管51から回収される。
【0034】
熱媒体導入部53は、反応流体導入部45と同様に、凹状に湾曲した筐体であり、複数の第2流路31の第2導入口30が開放されている熱交換部3の側面を覆い、熱交換部3との間に第2空間S2を形成する。熱媒体導入部53は、熱交換部3に対して着脱可能又は開閉可能に設置される。この着脱等により、例えば、作業者が第2流路31に対する伝熱促進体の挿入や抜き出しを行うことができる。また、熱媒体導入部53は、熱媒体HCを熱交換部3の外部から内部へ導入する第2導入配管55を有する。第2導入配管55は、熱交換部3の側面に対して中心、具体的にはXZ平面上の中心に位置し、複数の第2導入口30の開口方向と同一方向に連接されている。このような構成により、1箇所から導入された熱媒体HCは、複数の第2導入口30のそれぞれに分配される。
【0035】
熱媒体排出部57は、生成物排出部49と同様に、1つの開放面を有する箱状の筐体であり、第2伝熱体9の第2排出口35に開放面が合うように、熱交換部3の第3側面に設置される。また、熱媒体排出部57は、その壁部の1箇所に、熱媒体HCを熱交換部3の内部から外部へ排出する第2排出配管59を有する。第2排出配管59は、不図示であるが、熱媒体HCを再利用するための別の処理器に接続されている。このような構成により、複数の第2排出口35のそれぞれから排出された熱媒体HCは、1箇所の第2排出配管59から回収される。
【0036】
熱交換部3は、液−液型熱交換器、気−気型熱交換器及び気−液型熱交換器のいずれとしても使用可能であり、反応装置1に供給する反応流体M及び熱媒体HCは、気体及び液体のいずれであってもよい。また、反応装置1は、吸熱反応や発熱反応など様々な熱的反応による化学合成を可能とする。そのような熱的反応による合成として、例えば、式(1)で示すメタンの水蒸気改質反応、式(2)で示すメタンのドライリフォーミング反応のような吸熱反応、式(3)で示すシフト反応、式(4)で示すメタネーション反応、式(5)で示すフィッシャー−トロプシュ(Fischer tropsch)合成反応等の発熱反応による合成がある。なお、これらの反応における反応流体Mは、気体状である。
【0037】
CH
4 + H
2O → 3H
2 + CO ・・・(1)
CH
4 + CO
2 → 2H
2 + 2CO ・・・(2)
CO + H
2O → CO
2 + H
2 ・・・(3)
CO + 3H
2 → CH
4 + H
2O ・・・(4)
(2n+1)H
2 + nCO → C
nH
2n+2 + nH
2O ・・・(5)
【0038】
一方、熱媒体HCとしては、反応装置1の構成素材を腐食させない流体物質が好適であり、例えば、水、油等の液状物質や、加熱空気、燃焼ガス等の気体状物質が使用できる。熱媒体HCとして気体状物質を使用する構成は、液体媒体を使用する場合と比較して、取り扱いが容易である。
【0039】
次に、本実施形態による作用について説明する。本実施形態では、反応流体M又は生成物Pが流通する第1流路17に、管状部材60が設置されている。以下、第1流路17を構成する第1伝熱体7及び第2伝熱体9の材質と、管状部材60の材質とを基準項目として、そのような材質を選択した場合の作用をそれぞれ説明する。
【0040】
第1に、第1伝熱体7及び第2伝熱体9と管状部材60とが同一の材質からなる場合について説明する。ここでは、これらの材質がステンレス鋼であると想定する。一般に、ステンレス鋼も耐食性が高い材料である。しかし、第1伝熱体7が、特に反応流体M又は生成物Pが流通するような高温度雰囲気で、かつ、長期に渡りそのような状態が続く第1流路17を有する場合には、第1流路17の酸化腐食を考慮する必要がある。
【0041】
図7は、第1伝熱体7及び第2伝熱体9と管状部材60とが同一の材質からなると想定し、管状部材60を採用した場合における作用及び効果を説明するための概念図である。
図7の上段部分は、比較対象としての一例であって、管状部材60を採用しない場合における、第3伝熱体70と第3伝熱体70に形成されている第3流路71とを示す断面図である。ここで、第3伝熱体70は、本実施形態における第1伝熱体7に対応し、第3流路71は、本実施形態における第1流路17に対応する。一方、
図7の下段部分は、本実施形態の管状部材60を採用する場合における、第1伝熱体7と第1伝熱体7に形成されている第1流路17とを示す断面図である。ここで、第1流路17及び第3流路71の流路断面の寸法は、ともに幅W×高さDである。また、伝熱体の各部の厚みは、耐用年数が経過した時点でも十分な強度を確保するために、(「構造上十分な厚み」+「耐用年数期間の腐食代」)とされるのが一般的である。そこで、ここでは、2つの隣接する流路間、すなわち、
図2に示す第1中間壁15の幅の構造上十分と考えられる厚みを5mmと想定する。また、耐用年数を15年と想定する。
【0042】
まず、
図7の上段を参照すると、2つの隣接する第3流路71間の構造上十分な厚みL
1が5mmである。また、1年で生じる腐食代を0.04mmと想定すると、耐用年数15年では、片面で0.6mmの腐食代d
1を要する。したがって、2つの隣接する第3流路71間の製作時点での厚みL
2としては、少なくとも(L
1+d
1×2)=6.2mmを要することになる。なお、この場合、第3流路71の下方で対向する第2伝熱体9間の腐食代d
1分を差し引いた距離d
2は、おおよそ厚みL
2と同等である。
【0043】
一方、
図7の下段を参照すると、本実施形態では、反応流体M又は生成物Pは、第1伝熱体7及び第2伝熱体9に接しないため、第1伝熱体7には、上記のような腐食代を設ける必要がない。そのため、2つの隣接する第1流路17間の製作時点での厚みは、2つの隣接する第1流路17間の構造上十分な厚みL
1それ自体となる。また、反応流体M又は生成物Pと接する管状部材60の交換頻度を、例えば、触媒の交換と合わせて3年に1回と想定すると、管状部材60の厚みTを例えば0.15mm(>0.04mm×3年)とすることができる。この場合、2つの隣接する第1流路17間の距離は、管状部材60の厚みT×2分を加えても、5.3mmである。なお、この場合、第1流路17の下方で対向する第2伝熱体9間の管状部材60の厚みT分を差し引いた距離d
3は、おおよそ厚みL
1と同等である。
【0044】
上記のような寸法で第1伝熱体7を構成可能であれば、第1伝熱体7に積層される第2伝熱体9の寸法も、それに合わせることが可能である。したがって、管状部材60を採用する場合には、管状部材60を採用しない場合と比較して、複数の第1伝熱体7及び第2伝熱体9を含む伝熱体全体を、
図7に示すように小型化することが可能となる。具体的には、上記の各種数値を想定した例では、伝熱体全体の材料の量を15%程度低減することができる。
【0045】
第2に、第1伝熱体7及び第2伝熱体9の材質がステンレス鋼であり、管状部材60の材質がステンレス鋼よりも高い耐食性を有する高耐食性鋼である場合について説明する。管状部材60を採用せず、また、反応流体M又は生成物Pが腐食性の高い場合には、伝熱体自体の材質を高耐食性鋼とするか、又は、反応流体M又は生成物Pと接する流路の壁面部分に耐食化処理を行うなどの対策を要する。一方、本実施形態のように管状部材60を採用する場合には、管状部材60の材質のみを圧力温度条件下で必要な高耐食性鋼とすることができるため、高級材の使用を低減することができ、ひいては、反応装置1全体のコストを抑えることができる。
【0046】
第3に、第1伝熱体7及び第2伝熱体9の材質がステンレス鋼であり、管状部材60の材質がステンレス鋼よりも低い耐食性を有する低耐食性鋼である場合について説明する。低耐食性鋼は、通常のステンレス鋼と比較して安価である。低耐食性鋼がステンレス鋼と比較して2倍の速さで腐食すると想定した場合、管状部材60の厚みTを2倍に設定すれば、管状部材60の交換頻度は、上記の場合と同様に3年に1回でよい。したがって、管状部材60の寸法に特に制限がなければ、管状部材60の材質としてこのような廉価材料を採用することでも、反応装置1全体のコストを抑えることができる。
【0047】
次に、本実施形態による効果について説明する。
【0048】
まず、第1流体と第2流体との熱交換を利用する熱処理装置は、第1流体を流通させる第1流路17と、第1流路17と非接触で隣り合う、第2流体を流通させる第2流路31とを含む伝熱体7,9と、第1流路17を形成する壁面の形状に合わせた外壁面60a
1と、第1流体が接する内壁面60a
2とを有する管壁60aを含み、第1流路17に対して着脱可能に設置される管状部材60とを備える。
【0049】
本実施形態に係る熱処理装置によれば、腐食性の高い第1流体に起因して生じると予測される腐食代を伝熱体7,9側ではなく管状部材60側に設けた上で、伝熱体7,9が必要な肉厚を確保するよう予め設計されている。さらに、管状部材60は、適宜交換可能である。したがって、各流路間の厚み増大を抑えることができる。各流路間の厚み増大を抑えることができれば、特に伝熱体7,9を小型化し、結果的に特に材料費を抑えることができるので、熱処理装置全体としてもコストの増加を抑えることができる。一方、各流路間の厚み増大を抑えることができれば、熱交換がなされる流路間距離をより短くすることができるので、結果的に熱交換性能の低下を抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る熱処理装置では、管状部材60は、一方の開口部に、管壁60aの外壁面60a
1よりも外側に突出する突出部60bを有する。
【0051】
本実施形態に係る熱処理装置によれば、突出部60bの一部の面が伝熱体7,9の側面7a,9aに当接するので、例えば、管状部材60は、第1流路17に対して位置決めされ、反応処理中に第1流路17内で位置ズレを生じさせることがない。また、作業者は、突出部60bを保持することができるので、容易に管状部材60の着脱を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態に係る熱処理装置では、管状部材60が第1流路17に設置されているときに突出部60bと伝熱体7,9との間を封止する封止材62を有する。
【0053】
本実施形態に係る熱処理装置によれば、例えば、第1流路17を構成する壁面と管壁60aの外壁面60a
1との間に隙間が存在していても、その隙間に第1流体が進入することを抑えることができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る熱処理装置では、伝熱体7,9は、管状部材60が第1流路17に設置されているときに突出部60bを収容する溝部7b、9bを有する。
【0055】
本実施形態に係る熱処理装置によれば、例えば、突出部60bの全体が伝熱体7,9の側面7a,9a内に隠れるため、例えば、第1空間S1内での第1流体の流れを妨げにくいという利点がある。
【0056】
(他の実施形態)
上記実施形態では、熱交換部3を構成する伝熱体として、第1流体が流通する第1流路17を有する第1伝熱体7と、第2流体が流通する第2流路31を有する第2伝熱体9との2種類の伝熱体を例示した。しかし、本発明は、このような構成の熱交換部3だけに適用されるものではない。例えば、熱交換部3を構成する伝熱体が1種類のみで、1つの伝熱体が、第1流体が流通する第1流路と、第2流体が流通する第2流路との双方を有する場合にも、本発明は適用可能である。このような構成によっても、第1流路と、同一伝熱体内にて非接触で隣り合う第2流路との間の厚みは、管状部材60を採用しない場合に比べて薄くなるので、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
また、上記実施形態では、第1流路17の断面形状が矩形であるものとしたが、本発明はこれに限らず、例えば円形であってもよい。管状部材60の管壁60aの外壁面60a
1は、第1流路17を形成する壁面の形状に合わせるため、この場合、管壁60aの外周形状は、円形となる。
【0058】
また、上記実施形態では、熱交換部3が、第1流路17を流通する第1流体と、第2流路31を流通する第2流体とが互いに反対方向に流れる対向流型であるものとしたが、互いに同方向に流れる並流型であってもよい。すなわち、本発明では、第1流体と第2流体とが流れる方向についても、なんら限定されるものではない。
【0059】
さらに、上記実施形態では、熱交換部3を構成する第1伝熱体7と第2伝熱体9とがZ方向すなわち鉛直方向に積層されるものとしているが、本発明は、これに限らない。例えば、熱交換部3を構成するこれらの伝熱体が、それぞれ接合された状態でZ方向に立設するような、いわゆる横置きとして使用されるものとしてもよい。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。