(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907515
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】固形組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20210708BHJP
A61K 36/63 20060101ALI20210708BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20210708BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20210708BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20210708BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20210708BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20210708BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20210708BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20210708BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20210708BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20210708BHJP
A23L 29/212 20160101ALI20210708BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/63
A61P39/02
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P17/00
A61K9/20
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/36
A23L5/00 A
A23L29/212
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-230726(P2016-230726)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2017-104100(P2017-104100A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2019年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-236730(P2015-236730)
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥平 玄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳祐
【審査官】
茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/121140(WO,A1)
【文献】
特開2001−252054(JP,A)
【文献】
特開2001−181632(JP,A)
【文献】
特開2014−024774(JP,A)
【文献】
特表2009−502805(JP,A)
【文献】
特表2015−532917(JP,A)
【文献】
特開2010−154769(JP,A)
【文献】
特表2010−524441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 31/00−33/29
A23L 5/00− 5/49
A23L 29/00−29/30
A61K 9/00− 9/72
A61K 36/00−36/9068
A61K 47/00−47/69
A61P 17/00
A61P 35/00
A61P 39/02
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オリーブ果実抽出物、(b)ステアリン酸カルシウム及び/又はグリセリン脂肪酸エステル、及び(c)10〜70質量%のデンプンを配合したことを特徴とする錠剤。
【請求項2】
デンプンがコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリーブ果実抽出物を配合した錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブはモクセイ科の小さな常緑樹であり、古代ギリシャ時代以来、地中海地方において人々の生活と密接な関わりをもっており、食用・薬用に広く利用されてきた。オリーブの果実にはポリフェノールの一種であるベルバスコシドまたはヒドロキシチロソールと呼ばれる抗酸化物質が含有されていることが知られており、オリーブの果実から得られるオリーブ果実抽出物は、活性酸素除去作用、メラニン生成抑制作用および腫瘍細胞増殖抑制・死滅作用、ヒト白血球エステラーゼ阻害を奏することが報告されている(特許文献1)。 そのため、オリーブ果実抽出物は健康食品素材として注目を集めるようになっている。
そこで、本発明者らは、オリーブ果実抽出物を配合した製品の提供にあたり、オリーブ果実抽出物を配合した錠剤の製造を試みた。そして、製剤化した錠剤を保存したところ、変色が起こりやすいという課題を見出した。変色は、食品として摂取する際に消費者に不快感や不安感を与えかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−265183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の実情を鑑みなされたものであり、変色を抑制した、オリーブ果実抽出物を配合した錠剤(特に食品)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オリーブ果実抽出物を配合した錠剤に特定の成分を添加することで、オリーブ果実抽出物による錠剤表面の変色を抑制可能であることを見出した。すなわち、本発明は、
(1)(a)オリーブ果実抽出物、及び(b)ステアリン酸塩及び/又はグリセリン脂肪酸エステルを配合したことを特徴とする錠剤、
(2)(b)ステアリン酸塩がステアリン酸カルシウムである(1)に記載の錠剤、
(3)更にデンプンを含む(1)又は(2)に記載の錠剤、
(4)デンプンがコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種である(3)に記載の錠剤、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、オリーブ果実抽出物特有の変色を抑制した錠剤を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1〜2の錠剤及び比較例1〜2の錠剤を65℃条件下に3日間保存したときの色差結果である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明におけるオリーブ果実抽出物としては、オリーブ果実を圧搾して得られた果汁、あるいは残滓である果肉を粉末化した抽出物を利用することができる。オリーブ果実抽出物は、例えばオリーブ果実よりエタノール、あるいは水とエタノールの混合溶媒等にて抽出し精製することで得られる。市販品としては、Oleaselect(オリーブ果実より水とエタノールの混合溶媒にて抽出し粉末化したもの、総フェノール量:30質量%以上含有、ベルバスコシド量:5質量%以上含有)、Olivex(オリーブ果実を圧搾して得られたオリーブ果汁を酸処理後、エタノールにて濾過・精製し粉末化したもの、総ポリフェノール量:30質量%以上含有)、OPEXTAN(オリーブ果実より水とエタノールの混合溶媒にて抽出し粉末化したもの、 総フェノール量:10質量%以上含有、ベルバスコシド量:2質量%以上含有)等を使用することができる。好ましくはベルバスコシドを5質量%以上含有するオリーブ果実抽出物である。
【0009】
製剤の形態としては、錠剤が好ましい。なお、本発明の錠剤には、チュアブル錠も含まれる。形状は、円形錠に加えて、楕円形、三角形、四角形等の各種異形錠であってもよい。
【0010】
本発明におけるステアリン酸塩及びグリセリン脂肪酸エステルは滑沢剤として知られるものである。本発明のステアリン酸塩としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。本発明のステアリン酸塩又はグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、本発明の錠剤中10質量%以下、好ましくは0.5〜2.0質量%である。
本発明のオリーブ果実抽出物の配合量は、特に制限されないが、好ましくは、本発明の錠剤中10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%である。
【0011】
本発明におけるデンプンとしては、例えばコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等が挙げられる。オリーブ果実抽出物を配合した錠剤にデンプンを用いた場合、錠剤の崩壊性は良好になるものの、錠剤の変色は助長される傾向があるが、本発明のステアリン酸塩又はグリセリン脂肪酸エステルを含めると、変色を抑制できる。本発明のデンプンの配合量としては、本発明の錠剤中10〜70質量%好ましくは20〜50質量%である。
【0012】
本発明の錠剤には、本発明の効果を損なわない範囲でさらなる助剤を配合することができる。助剤としては、賦形剤、崩壊剤、流動化剤等が挙げられ、造粒する場合は、結合剤を配合することもできる。賦形剤としては、結晶セルロース、デンプン類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、果糖等の糖類、還元麦芽糖水飴、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、還元パラチノース等の糖アルコール類が挙げられる。これらはそれぞれ単体で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。流動化剤としては、微粒二酸化ケイ素等、崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン等が挙げられる。さらに、必要により香料、甘味料、酸化防止剤、色素等を配合してもよい。
【実施例】
【0013】
実施例1〜2、比較例1〜2
以下の表1に実施例1〜2、比較例1〜2の処方を示す。オリーブ果実抽出物、結晶セルロース、コーンスターチ、カルメロースカルシウムを混合した後、微粒二酸化ケイ素と各滑沢剤(ステアリン酸カルシウム、グリセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸エステル)を混合し、30メッシュの篩にて篩過した。調製した粉末を、実施例1〜2、比較例1は300mgずつ、比較例2は297mgずつ秤り取り、錠剤成型機(TabFlex,岡田精工社製)で製錠した。なお、製剤中のベルバスコシド量は1.6%以上であった。
製錠直後の錠剤表面の色彩値を分光式色差計(SE6000,日本電色工業社製)にて測定した。その後各試料を瓶に入れ、65℃条件下に3日間保存した。保存後、再度錠剤表面の色彩度(L
*、a
*、b
*)を測定し、式(1)を用いて製錠直後との色差(ΔE
*(ab))を算出した。
【0014】
【表1】
【0015】
【数1】
(L
*A、a
*A、b
*A):製錠直後の色彩度、(L
*B、a
*B、b
*B):65℃3日間保存後の色彩度
図1より、実施例1〜2は、比較例2よりも色差が小さく、経時的な変色が抑制されていた。比較例1においては、比較例2よりも色差が大きく、変色が助長される結果となった。
【0016】
本発明によりオリーブ果実抽出物配合錠剤の変色を抑制でき、保存安定性および崩壊性の良好な錠剤を提供することが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明により、経時的な変色を抑制したオリーブ果実抽出物配合錠剤を提供することが可能となった。よって、オリーブ果実抽出物を配合した食品(特にサプリメント)、医薬品又は医薬部外品の分野に有益である。