特許第6907531号(P6907531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6907531印刷インキ用変性フェノール樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、ゲルワニス、硬化物、活性エネルギー線硬化型印刷インキ及び印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907531
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】印刷インキ用変性フェノール樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、ゲルワニス、硬化物、活性エネルギー線硬化型印刷インキ及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/28 20060101AFI20210708BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20210708BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20210708BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20210708BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08G8/28 Z
   C08L61/14
   C08K5/00
   C08F2/44 C
   C08F290/00
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-253639(P2016-253639)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-35332(P2018-35332A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-255862(P2015-255862)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-167702(P2016-167702)
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 優樹
(72)【発明者】
【氏名】内野 拓耶
(72)【発明者】
【氏名】白石 広大
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 滋
【審査官】 三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−280192(JP,A)
【文献】 特開2003−280190(JP,A)
【文献】 特開2003−238661(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/010204(WO,A1)
【文献】 特開2005−187648(JP,A)
【文献】 特開2002−003705(JP,A)
【文献】 特開昭63−068623(JP,A)
【文献】 特開平05−097968(JP,A)
【文献】 特開2000−119392(JP,A)
【文献】 特開2000−178330(JP,A)
【文献】 特開2003−280189(JP,A)
【文献】 特開2001−106755(JP,A)
【文献】 特開2000−281954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 4/00− 16/06
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C08G 59/00− 59/72
C08F 283/01
290/00−290/14
299/00−299/08
C08F 2/00− 2/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂(A)と、
多価カルボン酸環状無水物(B)と、
芳香族系エポキシ化合物(c1)を含むエポキシ化合物(C)との反応物であり、
(c1)成分が、(C)成分における比率で40質量%以上の芳香環含有モノグリシジルエーテルを含む印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項2】
フェノール樹脂(A)と、
多価カルボン酸環状無水物(B)と、
芳香族系エポキシ化合物(c1)を含むエポキシ化合物(C)と、
分子内にカルボン酸を有する化合物(D1)並びにカルボン酸及びアリール基を有する共重合体(D2)からなる群より選ばれる少なくとも一種との反応物であり、
(c1)成分が、(C)成分における比率で40質量%以上の芳香環含有モノグリシジルエーテルを含む印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項3】
反応成分として、更にホスファイト系化合物(E)を含む、請求項1又は2に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項4】
(B)成分が無水フタル酸を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項5】
(C)成分が更に、分子内に重合性二重結合を有するモノグリシジル化合物(c2)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項6】
(c2)成分がアリルグリシジルエーテルを含む、請求項5に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項7】
(C)成分が更に、(c1)成分及び(c2)成分のいずれにも該当しないエポキシ化合物(c3)を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)
【請求項8】
(c3)成分がエポキシ化大豆油を含む、請求項7に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項9】
水酸基価が50〜400mgKOH/gである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項10】
酸価が0.01〜200mgKOH/gである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項11】
重量平均分子量が500〜200000である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項12】
軟化点が50〜200℃である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の印刷インキ用変性フェノール樹脂(1)及び反応性希釈剤(2)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項14】
更にゲル化剤(3)を含有する、請求項13に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱下にゲル化反応させてなるゲルワニス。
【請求項16】
請求項13若しくは14に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物又は請求項15に記載のゲルワニスを基材に塗工し、活性エネルギー線で硬化させてなる硬化物。
【請求項17】
請求項13若しくは14に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び/又は請求項15に記載のゲルワニスと、顔料とを含む、活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
【請求項18】
請求項17に記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキを基材に印刷し、硬化させてなる、印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ用変性フェノール樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、ゲルワニス、硬化物、活性エネルギー線硬化型印刷インキ及び印刷物に関する。

【背景技術】
【0002】
紫外線、電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂組成物(以下、「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」という。)は、通常、反応性希釈剤、樹脂、光重合開始剤及び添加剤から構成されており、省エネルギー型の工業材料としてコーティング剤、塗料、印刷インキ等の様々な分野で利用されている。
【0003】
特に活性エネルギー線硬化型印刷インキにおいては、反応性希釈剤として、硬化性、皮膜硬度等が優れていることから、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の多官能アクリレートが汎用されている。一方、バインダー樹脂としては、当該多官能アクリレートとの相溶性及び硬化性に優れているとの理由から、ジアリルフタレート樹脂が広く用いられている(特許文献1の段落[0003]を参照。)。
【0004】
しかし、ジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートモノマーを重合させたものであり分子内に重合性二重結合を有する一方、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の極性官能基を有しないため、利用態様が限られる。
【0005】
例えば前記した活性エネルギー線硬化型印刷インキには、耐ミスチング性、耐乳化性等の印刷適性を付与する目的でアルミニウム錯体等のゲル化剤が含まれているが、これとジアリルフタレート樹脂とは基本的に反応しないため、該インキのゲル化能(弾性率)の点で問題があった(特許文献2の段落[0002]〜[0004]を参照)。また、ジアリルフタレート樹脂をバインダーとする印刷インキは、皮膜の光沢の点でも課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−100821号公報
【特許文献2】特開2001−335728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ジアリルフタレート樹脂を代替し得る新規な樹脂であって、活性エネルギー線硬化型印刷インキのバインダーとした場合に該印刷インキの弾性率及び皮膜の光沢を改善し得るものを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らがジアリルフタレート樹脂を代替し得る新規な樹脂を開発すべく鋭意検討した結果、所定の変性フェノール樹脂がジアリルフタレート樹脂と同様に反応性希釈剤と良好に相溶し、かつ印刷インキの硬化性、流動性、光沢等の性能が、ジアリルフタレート樹脂と同等以上であることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
即ち本発明は、下記変性フェノール樹脂(1)、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、ゲルワニス、硬化物、活性エネルギー線硬化型印刷インキ及び印刷物に関する。
【0009】
1.フェノール樹脂(A)と、多価カルボン酸環状無水物(B)と、芳香族系エポキシ化合物(c1)を含むエポキシ化合物(C)との反応物である、変性フェノール樹脂(1)。
【0010】
2.フェノール樹脂(A)と、多価カルボン酸環状無水物(B)と、芳香族系エポキシ化合物(c1)を含むエポキシ化合物(C)と、分子内にカルボン酸を有する化合物(D1)並びに分子内にカルボン酸及びアリール基を有する共重合体(D2)からなる群より選ばれる少なくとも一種との反応物である、変性フェノール樹脂(1)。
【0011】
3.反応成分として、更にホスファイト系化合物(E)を含む、前記項1又は2に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0012】
4.(B)成分が無水フタル酸を含む、前記項1〜3のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0013】
5.(c1)成分が芳香環含有モノグリシジルエーテルを含む、前記項1〜4のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0014】
6.(C)成分が更に、分子内に重合性二重結合を有するモノグリシジル化合物(c2)を含む、前記項1〜5のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0015】
7.(c2)成分がアリルグリシジルエーテルを含む、前記項6に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0016】
8.(C)成分が更に、(c1)成分及び(c2)成分のいずれにも該当しないエポキシ化合物(c3)を含む、前記項1〜7のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)
【0017】
9.(c3)成分がエポキシ化大豆油を含む、前記項8に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0018】
10.水酸基価が50〜400mgKOH/gである、前記項1〜9のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0019】
11.酸価が0.01〜200mgKOH/gである、前記項1〜10のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0020】
12.重量平均分子量が500〜200000である、前記項1〜11のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0021】
13.軟化点が50〜200℃である、前記項1〜12のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)。
【0022】
14.前記項1〜13のいずれか1項に記載の変性フェノール樹脂(1)及び反応性希釈剤(2)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0023】
15.更にゲル化剤(3)を含有する、前記項14に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【0024】
16.前記項15に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のゲル化反応物であるゲルワニス。
【0025】
17.基材に塗工した前記項14若しくは15に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物又は前記項16に記載のゲルワニスの、活性エネルギー線による硬化物。
【0026】
18.前記項14若しくは15に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び/又は前記項16に記載のゲルワニスと、顔料とを含む、活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
【0027】
19.基材に印刷した前記項18に記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキの硬化物である、印刷物。
【発明の効果】
【0028】
本発明の変性フェノール樹脂は、分子内に水酸基、及び場合により重合性炭素−炭素二重結合を有するため、各種変性又は化学反応に供することができる。具体的には、該変性フェノール樹脂は分子内に水酸基を有しているためアルミニウム錯体等のゲル化剤と反応する。そのため、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に該変性フェノール樹脂を添加することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のゲル化能を向上させ、高い弾性率のゲルを与えることができる。
【0029】
また、該変性フェノール樹脂は、ジアリルフタレート樹脂と同様に各種反応性希釈剤、特にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート類との相溶性が良好である。また、該変性フェノール樹脂は、これをバインダー樹脂とする印刷インキの光沢を向上させることができる。
【0030】
該変性フェノール樹脂は、ジアリルフタレート樹脂の従来の用途、例えば、活性エネルギー線硬化型印刷インキ(特にオフセット印刷インキ)、塗料のバインダー樹脂、成形材料などに供し得る。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、相溶性及び硬化性に優れている。また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に更にゲル化剤を配合したものは優れたゲル化能を奏する。該樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化型印刷インキ(特にオフセット印刷インキ)、活性エネルギー線硬化型塗料のバインダー樹脂組成物、成形材料などに供し得る。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、そのゲル化能に起因して流動性及び光沢にも優れる。そのため、本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキは、活性エネルギー線硬化型オフセット印刷インキとして特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の変性フェノール樹脂(1)(以下、「(1)成分」という)の第一態様は、フェノール樹脂(A)(以下、「(A)成分」という)と、多価カルボン酸環状無水物(B)(以下、「(B)成分」という)と、芳香族系グリシジル化合物(c1)(以下、「(c1)成分」という)を含むエポキシ化合物(C)(以下、「(C)成分」という)の反応物である。
【0034】
本発明の(1)成分の第二態様は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、分子内にカルボン酸を有する化合物(D1)(以下、「(D1)成分」という)並びにカルボン酸及びアリール基を有する共重合体(D2)(以下、「(D2)成分」という)からなる群より選ばれる少なくとも一種との反応物である。(D1)成分及び(D2)成分はいずれも、(1)成分の重量平均分子量、軟化点、及び水酸基価を調節する等の目的で使用される。
【0035】
本発明の(1)成分の第三態様は、前記第一態様の(1)成分又は第二態様の(1)成分であって、反応成分として、更にホスフィン系化合物(E)成分(以下、「(E)成分」という。)を用いたものである。(E)成分は架橋剤であり、(1)成分の軟化点を調節する等の目的で使用される。
【0036】
(A)成分としては、各種公知のフェノール樹脂を特に制限なく使用することができる。このようなフェノール樹脂として、具体的には、フェノール化合物とホルムアルデヒドとを触媒下に付加縮合させたものが挙げられる。該フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、アミルフェノール、t−シクロへキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、クミルフェノール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びカルダノール等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。また、該触媒としては、アンモニア、各種アミン等のアルカリ触媒;蓚酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸触媒が挙げられる。そして酸触媒を用いてフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させた場合には、一般に直鎖型構造を有するノボラック型フェノール樹脂が得られる。また、塩基性触媒を用いてフェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させた場合には、一般に分岐型構造を有するレゾール型フェノール樹脂が得られる。よって、目的に応じて用いる触媒を使い分ければよい。
【0037】
(B)成分としては、各種公知の環状酸無水物を特に制限なく使用することができる。このような環状酸無水物として、具体的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族系酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂環族系酸無水物;無水グルタル酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族系酸無水物;これら酸無水物化合物を原料とする重合体(無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体等)等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、(1)成分と後述の(2)成分との相溶性、硬化性等の観点より、前記芳香族系酸無水物が好ましく、無水フタル酸が特に好ましい。
(B)成分の使用量は特に限定されない。(1)成分と後述の(2)成分との相溶性、本発明のインキの硬化性等の観点より、(A)成分100質量部に対し、(B)成分を通常5〜300質量部程度、好ましくは50〜285質量部程度となる範囲で使用することができる。
【0038】
(C)成分には、少なくとも(c1)成分が含まれる。
(c1)成分としては、分子内に重合性二重結合を有さず、かつ芳香環を有するようなエポキシ化合物である限り、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。このようなエポキシ化合物として、具体的には、例えばフェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド等の芳香環含有モノグリシジルエーテル;レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等の芳香族含有ジグリシジルエーテル;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも(1)成分と後述の(2)成分との相溶性、本発明のインキのゲル化能、硬化性、流動性及び光沢等の観点から芳香族環含有モノグリシジルエーテルが好ましく、特にフェニルグリシジルエーテルが好ましい。(C)成分における(c1)成分の比率は特に限定されず、通常40質量%以上であり、好ましくは50〜98質量%である。
【0039】
(C)成分には、必要に応じて、分子内に重合性二重結合を有するモノグリシジル化合物(c2)(以下、「(c2)成分」という)を含めてよい。このようなモノグリシジル化合物として、具体的には、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ロジングリシジルエステル等が挙げられる。これらの中でも、後述の(2)成分との相溶性、本発明のインキのゲル化能、硬化性、流動性及び光沢等の観点から、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
(C)成分が(c2)成分を含む場合、すなわち(c1)成分と(c2)成分とを併用する場合、(c1)成分と(c2)成分との使用比率は特に限定されず、例えば、モル比で(c1)成分/(c2)成分が1/9〜9/1程度である。
【0040】
(C)成分には、必要に応じて、(c1)成分及び(c2)成分のいずれにも該当しないエポキシ化合物(以下、「(c3)成分」という)を含めてもよい。(c3)成分として、具体的には、グリシジルトリエチルエーテル、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、ネオデカン酸グリシジルエステル等の脂肪族系エポキシ化合物;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル等のジエポキシ化合物;ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油等のポリエポキシ化合物等が挙げられる。これらの中でも、(1)成分と後述の(2)成分との相溶性、本発明のインキの硬化性、光沢等の観点から特にエポキシ化大豆油が好ましい。
【0041】
(C)成分が(c3)成分を含む場合、すなわち(c1)成分と(c3)成分とを併用する場合、(c1)成分と(c3)成分との使用比率は特に限定されず、例えば、モル比で(c1)成分/(c3)成分が1/9〜99.99/0.01程度である。
(C)成分が(c2)成分及び(c3)成分を含む場合、すなわち(c1)成分と(c2)成分と(c3)成分とを併用する場合、(c1)成分と(c2)成分と(c3)成分との使用比率は特に限定されず、例えば、モル比で(c1)成分/[(c2)成分+(c3)成分]が1/9〜99.99/0.01程度となるように、(c2)成分及び(c3)成分の配合量を適宜調整すればよい。
【0042】
(C)成分の使用量は特に限定されない。(1)成分と後述の(2)成分との相溶性、本発明のインキの硬化性等の観点より、(A)成分100質量部に対し、(C)成分を通常5〜300質量部程度、好ましくは50〜285部程度となる範囲で使用することができる。
【0043】
(D1)成分としては各種公知のものを特に制限することなく使用することができる。(D1)成分として、例えば、酢酸、安息香酸、4−メチル安息香酸、ベヘン酸、大豆油脂肪酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
(D1)成分の使用量は特に限定されず、(A)成分100質量部に対して、通常1〜100質量部程度であり、好ましくは5〜20質量部程度である。
【0044】
(D2)成分としては、分子内にカルボキシル基とアリール基を有する共重合体であれば各種公知のものを特に限定なく使用することができる。(D2)成分として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びフマル酸並びにそれらのハーフエステル等のカルボキシル基含有不飽和単量体と、スチレン、ジメチルスチレン及びt−ブチルスチレン等の芳香族含有不飽和単量体とをラジカル重合させることにより得られる共重合体が挙げられる。また、(D2)成分は、カルボキシル基含有不飽和単量体及び芳香族含有不飽和単量体以外の単量体を構成成分としたものであってよい。(D2)成分の物性も特に限定されず、通常、重量平均分子量が1000〜50000程度、酸価が10〜300mgKOH/g程度である。このような(D2)成分として、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、アラスター700、アラスター700S(以上、荒川化学工業(株)製)、ジョンクリル67、ジョンクリル68、ジョンクリルJ680、ジョンクリルJ682等(以上、BASFジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0045】
(D2)成分の使用量は特に限定されず、(A)成分100質量部に対して、通常1〜100質量部程度であり、好ましくは1〜10質量部程度である。
(D1)成分と(D2)成分とを併合する場合には、(A)成分100質量部に対して、(D1)成分及び(D2)成分の合計量が、通常1〜100質量部程度、好ましくは5〜30質量部程度となるように適宜調整して使用することができる。
【0046】
(E)成分としては、各種公知のものを特に制限なく使用することができる。(E)成分として、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
(E)成分の使用量は特に限定されない。(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜20質量部程度であり、好ましくは1〜10質量部程度である。
【0048】
第一態様の(1)成分は、(A)成分の存在下、(B)成分及び(C)成分を反応させることにより得られる。
第二態様の(1)成分は、(A)成分の存在下、(B)成分、(C)成分、並びに(D1)成分及び(D2)成分からなる群より選ばれる少なくとも一種を反応させることにより得られる。
第三態様の(1)成分は、例えば、前記第一態様の(1)成分又は第二態様の(1)成分に(E)成分を反応させることにより得られる。
【0049】
(A)成分の存在下、(B)成分及び(C)成分、並びに必要に応じて用いる(D1)成分及び/又は(D2)成分、更に(E)成分を反応させる順番及び反応条件は特に制限されない。具体的には[1]全成分をワンポットで反応させる方法、[2](A)成分の存在下、(B)成分の一部及び(C)成分の一部を反応させた後、更に、残りの(B)成分、残りの(C)成分、(D1)成分、(D2)成分、及び(E)成分から選ばれる少なくとも一種を反応させる方法が挙げられる。また、反応条件は、例えば反応温度が100〜210℃程度、反応時間が30分〜8時間程度である。また、各成分の反応途中あるいは反応終了後に反応系を減圧し、残留モノマーを除いても良い。
【0050】
また、前記反応には、各種公知の触媒を使用することができる。具体的には、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、トリエチルアミン、ジフェニルアミン、ジアザビシクロウンデセン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酸化亜鉛及びオクチル酸亜鉛等が挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。その使用量は特に限定されない。(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5質量部程度、好ましくは0.10〜2質量部程度である。
【0051】
こうして得られる(1)成分の物性は特に限定されない。反応性希釈剤(2)(以下、「(2)成分」という)との相溶性、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの硬化性、ゲル化剤(3)(以下、「(3)成分」という)との反応性等の観点より、通常、水酸基価が50〜400mgKOH/g程度、酸価が0.01〜200mgKOH/g程度、重量平均分子量が500〜200000程度、又は軟化点が50〜200℃程度である。
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(1)成分及び(2)成分、並びに必要により(3)成分を含有する組成物である。
【0053】
(2)成分としては、特に限定されず、各種公知のものを使用することができる。(2)成分として、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート等が挙げられる。
【0054】
前記単官能アクリレートとしては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
前記多官能アクリレートとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ有する化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、前記ポリエステルポリ(メタ)アクリレート等のオリゴマー;(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基と水酸基を分子中に複数有するアクリル樹脂などの非共重合体型材料等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記単官能アクリレートと併用して用いることもできる。
【0056】
(1)成分と(2)成分との質量部比率は特に限定されない。相溶性、硬化性及び耐ミスチング性等のバランスを考慮すると、通常、前者/後者が20/80〜80/20程度、好ましくは20/80〜60/40であることが好ましい。
【0057】
(3)成分としては、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステアレートトリマー等のアルミニウム系ゲル化剤;テトライソプロピルチタネート、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート等の有機チタネート系ゲル化剤;ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトン、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド等の有機ジルコニウム系ゲル化剤等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
(3)成分の使用量は特に限定されない。(1)成分及び(2)成分の合計100質量部に対して、通常0.01〜5質量部程度、好ましくは0.1〜3質量部程度である。
【0059】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には更に光重合開始剤を含めることができる。具体的には、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルーフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン等が挙げられ。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。光重合開始剤の使用量は特に限定されない。通常、(1)成分及び(2)成分の合計100質量部に対して1〜10質量部程度である。
【0060】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、更にラジカル重合禁止剤を含めることができる。ラジカル重合禁止剤として、具体的には、メトキノン、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノンなどのキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノールなどのアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのアミン系重合禁止剤;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、2,4−ジニトロフェノール、2−メチル−N−ニトロソアニリンなどのニトロソアミン系重合禁止剤等が挙げられ。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ラジカル重合禁止剤の使用量は特に限定されない。通常、(1)成分及び(2)成分の合計100質量部に対して0.01〜10質量部程度である。
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、重合禁止剤、顔料、着色剤、光増感剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0062】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、前記(1)成分及び(2)成分、並びに必要に応じて前記(3)成分、光重合開始剤、ラジカル重合禁止剤及び添加剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を適当な温度で混合し、均質な溶液となるまで撹拌すればよい。
【0063】
本発明のゲルワニスは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物のうち(3)成分を含むものを加熱下にゲル化反応させてなる高弾性の組成物である。これを用いたオフセット印刷インキは耐ミスチング性等の高速印刷適性が良好となる。ゲル化反応の条件は特に限定されず、通常、反応温度80〜130℃程度、反応時間30分〜2時間程度である。また、該ゲルワニスには、前記光重合開始剤、ラジカル重合開始剤、添加剤等を別途添加してもよい。
【0064】
当該ゲルワニスの物性は特に限定されない。例えば、30℃及び10Hzの条件で、測定されるtanδが通常1〜400程度、好ましくは2〜100程度、より好ましくは2〜20程度であるのがよい。そのようなゲルワニスを用いた活性エネルギー線硬化型印刷インキは、耐ミスチング性及び光沢が良好であり、かつ、硬化速度にも優れる。また、tanδの測定機としては、例えば、レオメーターRheoStress1(HAAKE社製)が挙げられる。
【0065】
本発明の硬化物は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物又はゲルワニスを基材に塗工し、活性エネルギー線で硬化させたものである。基材、塗工手段、塗工量及び硬化手段は、後述するものと同様である。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化型印刷インキ(以下、単に「インキ」という。)は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び/又はゲルワニスと顔料とを含む組成物である。顔料としては、例えば、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カドミウムレッド、カーボンブラックなどの無機顔料;イソインドリノン系、キナクリドン系、フタロシアニン系、ペリレン系などの有機顔料等が挙げられる。また、インキには、前記(2)成分、前記ラジカル重合禁止剤、光重合開始剤及び添加剤を別途添加することができる。インキ調製手段も特に限定されず、例えば3本ロールミル等が挙げられる。
【0067】
本発明のインキの組成は特に限定されない。一例を示すならば、以下の通りである。
【0068】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物又はゲルワニス 20〜50質量%程度
顔料 10〜30質量%程度
(別途添加する成分)
前記(2)成分(反応性希釈剤) 20〜69.9質量%程度
前記ラジカル重合禁止剤 0.01〜1質量%程度
前記光重合開始剤 0〜15質量%程度
前記添加剤 0〜10質量%程度
【0069】
なお、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、インキを調製しやすい粘度(100〜300Pa・s/25℃)に調整するのがよい。そのためには、例えば前記(1)成分と(2)成分の比率を適宜変更すればよい。
【0070】
本発明の印刷物は、活性エネルギー線硬化型オフセット印刷インキを基材に印刷し、硬化させたものである。
【0071】
基材としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、紙(アート紙、キャストコート紙、フォーム用紙、PPC紙、上質コート紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙等);プラスチック基材(ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)が挙げられる。
【0072】
印刷方法(塗工方法)としては、例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工などが挙げられる。また、塗工量は特に限定されず、通常は、乾燥後の質量が0.1〜30g/m程度、好ましくは1〜20g/m程度である。
【0073】
硬化手段としては、例えば電子線又は紫外線が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、UV−LEDなどが挙げられる。光量、光源配置、及び搬送速度は特に限定されない。例えば、高圧水銀灯を使用する場合には、通常80〜160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して、搬送速度が通常5〜50m/分程度である。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0075】
<樹脂の合成>
製造例1
撹拌装置、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応容器に、ノボラック型フェノール樹脂(荒川化学(株)製)100部、無水フタル酸60部、フェニルグリシジルエーテル60部及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金(株)製)20部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.5部を添加し、150℃で4時間撹拌した。その後、−0.08MPaで減圧し、変性フェノール樹脂を得た。
【0076】
製造例2
製造例1と同様の反応容器にノボラック型フェノール樹脂(荒川化学(株)製)100部、無水フタル酸200部、フェニルグリシジルエーテル250部及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金(株)製)20部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.5部を添加し、150℃で4時間撹拌した。その後、−0.08MPaで減圧し、変性フェノール樹脂を得た。
【0077】
製造例3
製造例1と同様の反応容器にノボラック型フェノール樹脂(荒川化学(株)製)100部、無水フタル酸100部、フェニルグリシジルエーテル150部及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金(株)製)20部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.5部を添加し、150℃で4時間撹拌した後、ヘキサヒドロ無水フタル酸40部を添加して4時間撹拌した。その後、−0.08MPaで減圧し、変性フェノール樹脂を得た。
【0078】
製造例4
製造例1と同様の反応容器にノボラック型フェノール樹脂(荒川化学(株)製)100部、スチレンーマレイン酸ハーフエステル共重合体(荒川化学(株)製)2部、無水フタル酸200部、フェニルグリシジルエーテル250部及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金(株)製)20部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.5部を添加し、150℃で4時間撹拌した。その後、−0.08MPaで減圧し、変性フェノール樹脂を得た。
【0079】
製造例5
製造例1と同様の反応容器にノボラック型フェノール樹脂(荒川化学(株)製)100部、無水フタル酸60部、フェニルグリシジルエーテル35部、アリルグリシジルエーテル25部及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鉄住金(株)製)20部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.5部を添加し、150℃で4時間撹拌した。その後、−0.08MPaで減圧し、変性フェノール樹脂を得た。
【0080】
製造例6
製造例1と同様の反応容器にノボラック型フェノール樹脂(荒川化学(株)製)100部、無水フタル酸200部、フェニルグリシジルエーテル200部、エポキシ化大豆油(新日本理化(株)製)10部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.5部を添加し、150℃で4時間撹拌した。その後、−0.08MPaで減圧し、変性フェノール樹脂を得た。
【0081】
製造例7
製造例1と同様の反応容器にノボラック型フェノール樹脂(荒川化学(株)製)100部、無水フタル酸200部、フェニルグリシジルエーテル200部、エポキシ化大豆油(新日本理化(株)製)10部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.5部を添加し、150℃で2時間撹拌した後、トリフェニルホスファイト4部を添加し、更に150℃で2時間撹拌した。その後、−0.08MPaで減圧し、変性フェノール樹脂を得た。
製造例8
製造例1と同様の反応容器にノボラック型フェノール樹脂(荒川化学(株)製)100部、無水フタル酸200部、フェニルグリシジルエーテル200部、イソフタル酸(三菱瓦斯化学(株)製)10部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.5部を添加し、150℃で4時間撹拌した。その後、−0.08MPaで減圧し、変性フェノール樹脂を得た。
【0082】
製造例1〜8の変性フェノール樹脂について、以下の物性を測定した。
【0083】
<水酸基価>
JIS K0070に準拠する方法で測定した。結果を表1に示す。
【0084】
<酸価>
JIS K5601に準拠する方法で測定した。結果を表1に示す。
【0085】
<重量平均分子量>
ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、HLC−8320)を用いてポリスチレン検量線により測定した。結果を表1に示す。
【0086】
<軟化点>
JIS K5601に準拠する方法で測定した。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
実施例1
撹拌装置、及び冷却管を備えた反応容器に、製造例1の変性フェノール樹脂25.0部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(商品名「ビームセット700」、荒川化学(株)製)75.0部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製、以下同様)0.1部及びQ−1301(和光純薬工業(株)製、以下同様)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0089】
実施例2
実施例1と同様の反応容器に製造例2の変性フェノール樹脂30.0部、ビームセット700 70.0部、メトキノン0.1部及びQ−1301 0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0090】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に製造例3の変性フェノール樹脂25.0部、ビームセット700 75.0部、メトキノン0.1部及びQ−1301 0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0091】
実施例4
実施例1と同様の反応容器に製造例4の変性フェノール樹脂30.0部、ビームセット700 70.0部、メトキノン0.1部及びQ−1301 0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0092】
実施例5
実施例1と同様の反応容器に製造例5の変性フェノール樹脂25.0部、ビームセット700 75.0部、メトキノン0.1部及びQ−1301 0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0093】
実施例6
実施例1と同様の反応容器に実施例1で得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物98.0部、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(商品名「ALCH」、川研ファインケミカル(株)製)0.50部及びビームセット700 1.50部を仕込み、120℃で1時間30分間撹拌し、ゲル化剤を添加した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(ゲルワニス)を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0094】
実施例7
実施例1と同様の反応容器に製造例6の変性フェノール樹脂30.0部、ビームセット700 70.0部、メトキノン0.1部及びQ−1301 0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0095】
実施例8
実施例1と同様の反応容器に製造例7の変性フェノール樹脂30.0部、ビームセット700 70.0部、メトキノン0.1部及びQ−1301 0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
実施例9
実施例1と同様の反応容器に製造例8の変性フェノール樹脂30.0部、ビームセット700 70.0部、メトキノン0.1部及びQ−1301 0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0096】
比較例1
実施例1と同様の反応容器にジアリルフタレート樹脂(商品名「ダイソーダップA」、(株)大阪ソーダ製)25.0部、ビームセット700 75.0部、メトキノン0.1部及びQ−1301 0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。その外観からは不溶物が確認できなかったため、相溶性は「良好」と判断した。
【0097】
比較例2
実施例1と同様の反応容器に実施例1で得た活性エネルギー線硬化型樹脂組成物98.0部、ALCH0.50部及びビームセット700 1.50部を仕込み、120℃で1時間30分間撹拌したが、ゲル化剤を添加した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は白濁していたため、相溶性は「不良」と判断した。また、後述の性能評価も実施しなかった。
【0098】
<動的粘弾性測定>
実施例1〜9及び比較例1の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(ゲルワニスを含む)について、レオメーターRheoStress1(HAAKE社製)を用いて30℃、10Hzでのtanδを測定した。tanδは値が小さいほどゲルワニスの弾性が大きく、測定結果からゲル化能の大きさを判断することができる。ゲル化剤と反応させることでtanδが小さくなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はゲル化能が高いと言える。tanδの値を表2に示す。
【0099】
<活性エネルギー線硬化型インキの調製>
黄顔料としてジスアゾイエロー10.0部、実施例1で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物35.0部、ビームセット700 55.0部、メトキノン0.1部及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により活性エネルギー線硬化型インキを調製した。実施例2〜9及び比較例1についても同様に活性エネルギー線硬化型インキを調製した。
【0100】
<印刷物の作製>
実施例1に係る活性エネルギー線硬化型インキをRIテスター((株)明製作所製)を用いてコート紙に塗布し、紫外線照射機(80W/cm、照射距離25cm、コンベア速度50m/分)で紫外線照射し、印刷物を得た。他の実施例及び比較例に係るインキについても同様にして印刷物を得た。
【0101】
<インキ性能評価>
実施例1〜9及び比較例1のインキについて以下の試験を行った。
【0102】
<インキの硬化速度>
前記の印刷物の作製の際に要した照射量を表2に示す。照射量が少なくても硬化しているものが硬化性良好である。
【0103】
<インキの光沢>
前記の印刷物の作製により得られたインキの硬化膜の光沢値を一体型光沢計HVG−2000(日本電色工業(株)製)で測定した。結果を表2に示す。光沢値が高いほど光沢が良好である。
【0104】
<インキのガラス板流動性>
作製した活性エネルギー線硬化型インキをインキピペットで1.3mLはかり取り、60℃に傾斜したガラス板に30分間流したときの流れる距離を測定した。結果を表2に示す。流れる距離が長いほど流動性が良好である。
【0105】
【表2】