(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907549
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】車載用ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20210708BHJP
G09G 3/02 20060101ALI20210708BHJP
H01S 5/062 20060101ALI20210708BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20210708BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20210708BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
G02B27/01
G09G3/02 A
H01S5/062
H04N5/64 521P
H04N9/31
B60K35/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-7359(P2017-7359)
(22)【出願日】2017年1月19日
(65)【公開番号】特開2018-116170(P2018-116170A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】熊野 哲弥
【審査官】
山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−152838(JP,A)
【文献】
特開2014−194503(JP,A)
【文献】
特開2010−237238(JP,A)
【文献】
特開2013−228674(JP,A)
【文献】
特開2005−309424(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0230623(US,A1)
【文献】
国際公開第2007/040089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 26/10,26/12
B60K 35/00
G09G 3/02
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色の光を出射する赤色レーザダイオードと、緑色の光を出射する緑色レーザダイオードと、青色の光を出射する青色レーザダイオードと、を含み、前記赤色レーザダイオード、前記緑色レーザダイオードおよび前記青色レーザダイオードからの光を合波して出射する光源部と、
前記光源部からの光を反射させて走査する走査鏡部と、
前記光源部の温度を測定することにより温度情報を取得し、前記温度情報を出力する測温部と、
前記光源部および前記走査鏡部を制御することにより、画像を形成する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測温部からの前記温度情報に基づき、前記光源部の温度が予め定められた第1温度以上である場合に、前記赤色レーザダイオードを発光させた状態で前記赤色レーザダイオードの発光強度が、前記緑色レーザダイオードの発光強度と前記青色レーザダイオードの発光強度との和の40%以下となるように前記光源部を制御する、車載用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1温度は60℃以下に設定される、請求項1に記載の車載用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第1温度は40℃以下に設定される、請求項1に記載の車載用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記走査鏡部はMEMSを含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車載用ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記赤色レーザダイオード、前記緑色レーザダイオードおよび前記青色レーザダイオードは、それぞれ異なるパッケージ内に配置される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車載用ヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ヘッドアップディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスに速度などの情報を表示する車載用ヘッドアップディスプレイ装置が知られている。ヘッドアップディスプレイ装置を採用することにより、運転者が運転中に情報を取得する際の視線の移動を小さくすることができる。ヘッドアップディスプレイ装置の光源としては、たとえばレーザダイオード(半導体レーザ)を採用することができる。具体的には、たとえば赤色の光を出射する赤色レーザダイオード、緑色の光を出射する緑色レーザダイオードおよび青色の光を出射する青色レーザダイオードからの光を合波して所望の色の光を形成し、これを走査鏡部において反射させて走査し、フロントガラス(ハーフミラー)へと入射させて画像を形成する。そして、入射した光はフロントガラスにおいて反射し、運転者の眼に入射する。これにより、運転者は、画像として情報を取得する(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】新澤滋、「レーザー走査方式を用いたヘッドアップディスプレイ」、レーザー研究、一般社団法人レーザー学会、2010年、第38巻、第8号、p.585−588
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザダイオードは、温度が高くなると出力が低下するという特性を有する。特に、赤色の光を出射する赤色レーザダイオードは、高温での出力の低下が大きい。一方で、自動車の車内、たとえばダッシュボード周辺の温度は、外気温よりも高くなる傾向がある。特に、夏季においては、ダッシュボード周辺の温度は100℃付近にまで上昇する場合がある。そのため、レーザダイオードを光源とする車載用ヘッドアップディスプレイ装置においては、起動後にレーザダイオードが冷却され、レーザダイオード、特に赤色レーザダイオードの温度が動作に適した温度にまで低下してから画像の表示が開始される。その結果、起動から画像の表示までの時間(起動時間)がある程度必要となる。しかし、速度の表示などの情報は、自動車の運転開始直後から表示されることが好ましい。そのため、車載用ヘッドアップディスプレイ装置においては、起動時間の短縮が求められる。
【0005】
そこで、光源としてレーザダイオードを採用しつつ、起動時間を短縮することを可能とする車載用ヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従った車載用ヘッドアップディスプレイ装置は、赤色の光を出射する赤色レーザダイオードと、緑色の光を出射する緑色レーザダイオードと、青色の光を出射する青色レーザダイオードと、を含み、赤色レーザダイオード、緑色レーザダイオードおよび青色レーザダイオードからの光を合波して出射する光源部と、光源部からの光を反射させて走査する走査鏡部と、光源部の温度を測定することにより温度情報を取得し、当該温度情報を出力する測温部と、光源部および走査鏡部を制御することにより、画像を形成する制御部と、を備える。制御部は、測温部からの温度情報に基づき、光源部の温度が予め定められた第1温度以上である場合に、赤色レーザダイオードの発光強度が、緑色レーザダイオードの発光強度と青色レーザダイオードの発光強度との和の40%以下となるように光源部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
上記車載用ヘッドアップディスプレイ装置によれば、光源としてレーザダイオードを採用しつつ、起動時間を短縮することを可能とする車載用ヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車載用ヘッドアップディスプレイ装置の構造を示す概略図である。
【
図2】制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。本願の車載用ヘッドアップディスプレイ装置は、赤色の光(波長600nm以上700nm未満の光)を出射する赤色レーザダイオードと、緑色の光(波長500nm以上550nm未満の光)を出射する緑色レーザダイオードと、青色の光(波長400nm以上500nm未満の光)を出射する青色レーザダイオードと、を含み、赤色レーザダイオード、緑色レーザダイオードおよび青色レーザダイオードからの光を合波して出射する光源部と、光源部からの光を反射させて走査する走査鏡部と、光源部の温度を測定することにより温度情報を取得し、当該温度情報を出力する測温部と、光源部および走査鏡部を制御することにより、画像を形成する制御部と、を備える。制御部は、測温部からの温度情報に基づき、光源部の温度が予め定められた第1温度以上である場合に、赤色レーザダイオードの発光強度が、緑色レーザダイオードの発光強度と青色レーザダイオードの発光強度との和の40%以下となるように光源部を制御する。
【0010】
本願の車載用ヘッドアップディスプレイ装置においては、光源部の温度が第1温度以上である場合に、赤色レーザダイオードの発光強度が抑制されるように、光源部が制御部によって制御される。このようにすることで、光源部の温度が第1温度以上である場合であっても、高温での出力の低下が大きい赤色レーザダイオードに高い出力が要求されない制御状態で、光源部からの光によって画像を形成することができる。そのため、赤色レーザダイオードの温度が十分に低下するのを待つことなく、画像の表示を開始することができる。このように、本願の車載用ヘッドアップディスプレイ装置によれば、光源としてレーザダイオードを採用しつつ、起動時間を短縮することを可能となる。より確実に起動時間を短縮する観点から、制御部は、光源部の温度が第1温度以上である場合に、赤色レーザダイオードの発光強度が、緑色レーザダイオードの発光強度と青色レーザダイオードの発光強度との和の30%以下となるように光源部を制御してもよい。
【0011】
上記車載用ヘッドアップディスプレイ装置において、制御部は、光源部の温度が第1温度以上である場合に、赤色レーザダイオードの出力を停止した状態で光源部を制御してもよい。このようにすることにより、光源部の温度が第1温度以上である場合、高温での出力の低下が大きい赤色レーザダイオードを発光させない制御状態で、光源部が画像を形成する。そのため、赤色レーザダイオードの温度が低下するのを待つことなく、画像の表示を開始することができる。その結果、より確実に起動時間を短縮することができる。
【0012】
上記車載用ヘッドアップディスプレイ装置において、第1温度は60℃以下に設定されてもよい。このようにすることにより、赤色レーザダイオードの出力の低下に起因する不十分な画像の形成を抑制することができる。
【0013】
上記車載用ヘッドアップディスプレイ装置において、第1温度は40℃以下に設定されてもよい。このようにすることにより、赤色レーザダイオードの出力の低下に起因する不十分な画像の形成を抑制することができる。
【0014】
上記車載用ヘッドアップディスプレイ装置において、走査鏡部はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を含んでいてもよい。MEMSは、本願の車載用ヘッドアップディスプレイ装置の走査鏡部の構成要素として好適である。
【0015】
上記車載用ヘッドアップディスプレイ装置において、赤色レーザダイオード、緑色レーザダイオードおよび青色レーザダイオードは、それぞれ異なるパッケージ内に配置されていてもよい。本願の車載用ヘッドアップディスプレイ装置においては、このような構造を採用してもよい。
【0016】
[本願発明の実施形態の詳細]
次に、本発明にかかる車載用ヘッドアップディスプレイ装置の一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0017】
図1を参照して、本実施の形態における車載用ヘッドアップディスプレイ装置1は、光源部2と、走査鏡部3と、測温部4と、制御部5と、冷却部9とを備える。
【0018】
光源部2は、赤色の光を出射する赤色レーザダイオードであるR−LD11と、緑色の光を出射する緑色レーザダイオードであるG−LD13と、青色の光を出射するB−LD15と、を含む。R−LD11、G−LD13およびB−LD15は、それぞれ異なるパッケージである第1保護部材としてのCAN12、第2保護部材としてのCAN14および第3保護部材としてのCAN16内に配置されている。
【0019】
光源部2のR−LD11から見てR−LD11の光の出射方向に隣接する領域には、第1レンズ21が配置されている。光源部2のG−LD13から見てG−LD13の光の出射方向に隣接する領域には、第2レンズ22が配置されている。光源部2のB−LD15から見てB−LD15の光の出射方向に隣接する領域には、第3レンズ23が配置されている。G−LD13は、光の出射方向がR−LD11の光の出射方向に交差(直交)するように配置される。B−LD15は、光の出射方向がR−LD11の光の出射方向に交差(直交)するように配置される。B−LD15は、光の出射方向がG−LD13からの光の出射方向に沿うように(平行となるように)配置される。本実施の形態において、第1レンズ21、第2レンズ22および第3レンズ23は、それぞれR−LD11、G−LD13およびB−LD15からの光をコリメート光に変換するコリメートレンズである。第1レンズ21、第2レンズ22および第3レンズ23は、それぞれR−LD11、G−LD13およびB−LD15からの光のスポットサイズが一致するように、R−LD11、G−LD13およびB−LD15からの光のスポットサイズを変換する。
【0020】
光源部2において、R−LD11からの光とG−LD13からの光が交差する領域には、第1フィルタ31が配置される。本実施の形態において、第1フィルタ31は、波長選択性フィルタである。第1フィルタ31は、赤色の光を透過し、緑色の光を反射する。光源部2において、R−LD11からの光とB−LD15からの光が交差する領域には、第2フィルタ32が配置される。本実施の形態において、第2フィルタ32は、波長選択性フィルタである。第2フィルタ32は、赤い光および緑色の光を透過し、青色の光を反射する。
【0021】
R−LD11から出射された赤色の光は、光路51に沿って進行し、第1レンズ21に入射して光のスポットサイズが変換される。具体的には、R−LD11から出射された赤色の光がコリメート光に変換される。第1レンズ21においてスポットサイズが変換された赤色の光は、光路51に沿って進行し、第1フィルタ31に入射する。第1フィルタ31は、赤色の光を透過する波長選択性フィルタである。そのため、R−LD11から出射された光は第1フィルタ31を透過し、光路51に沿って進行して第2フィルタ32に入射する。第2フィルタ32は、赤色の光を透過する波長選択性フィルタである。そのため、R−LD11から出射された光は第2フィルタ32を透過し、光路51に沿って進行して光源部2の外部へと出射する。
【0022】
G−LD13から出射された緑色の光は、光路52に沿って進行し、第2レンズ22に入射して光のスポットサイズが変換される。具体的には、G−LD13から出射された緑色の光がコリメート光に変換される。第2レンズ22においてスポットサイズが変換された緑色の光は、光路52に沿って進行し、第1フィルタ31に入射する。第1フィルタ31は、赤色の光を透過し、緑色の光を反射する波長選択性フィルタ(合波フィルタ)である。そのため、G−LD13から出射された光は第1フィルタ31において反射され、光路51に合流する。その結果、G−LD13からの緑色の光は、R−LD11からの赤色の光と合波され、光路51に沿って進行して第2フィルタ32に入射する。第2フィルタ32は、赤色の光および緑色の光を透過する波長選択性フィルタである。そのため、G−LD13から出射された光は第2フィルタ32を透過し、光路51に沿って進行して光源部2の外部へと出射する。
【0023】
B−LD15から出射された青色の光は、光路53に沿って進行し、第3レンズ23に入射して光のスポットサイズが変換される。具体的には、B−LD15から出射された青色の光がコリメート光に変換される。第3レンズ23においてスポットサイズが変換された青色の光は、光路53に沿って進行し、第2フィルタ32に入射する。第2フィルタ32は、赤色の光および緑色の光を透過し、青色の光を反射する波長選択性フィルタ(合波フィルタ)である。そのため、B−LD15から出射された光は第2フィルタ32において反射され、光路51に合流する。その結果、B−LD15からの緑色の光は、R−LD11からの赤色の光およびG−LD13からの緑色の光と合波され、光路51に沿って進行して光源部2の外部へと出射する。このようにして、R−LD11、G−LD13およびB−LD15からの光が合波され、光源部2から出射される。
【0024】
光源部2には、冷却部9が取り付けられている。冷却部9は、たとえば電子冷却モジュールを含む。電子冷却モジュールは、たとえばペルチェモジュール(ペルチェ素子)である。冷却部9により、光源部2は冷却される。
【0025】
走査鏡部3は、光源部2からの光を反射させて走査する。走査鏡部3は、たとえばMEMSである。走査鏡部3は、反射面3Aを有する。走査鏡部3は、たとえば矢印αに示す方向に沿って回動することにより、光路51に沿って走査鏡部3に入射する光源部2からの光を反射させて走査する。
【0026】
測温部4は、光源部2に取り付けられる。測温部4は、光源部2の温度を測定することにより温度情報を取得し、当該温度情報を出力する。測温部4は、たとえば温度センサを含む。
【0027】
制御部5は、光源部2、測温部4、冷却部9および走査鏡部3に電気的に接続される。制御部5は、光源部2および走査鏡部3を制御することにより、画像を形成する。制御部5は、たとえば入力された制御条件を記憶する記憶部と、記憶部に接続され、記憶部に記憶された制御条件を参照しつつ、入力される情報に基づいて演算を実施する演算部とを含む。
【0028】
次に、
図2および
図1を参照して、制御部5によって制御される車載用ヘッドアップディスプレイ装置1の動作について説明する。
図2を参照して、まず車載用ヘッドアップディスプレイ装置1の電源がオン状態とされる(S10)。具体的には、たとえば車載用ヘッドアップディスプレイ装置1が搭載されている自動車の駆動用のエンジン、モータなどが起動されると、これに連動して車載用ヘッドアップディスプレイ装置1の電源がオン状態となる。これにより、光源部2、走査鏡部3、測温部4、制御部5および冷却部9が動作可能な状態となる。冷却部9は、必要に応じて光源部2の冷却を開始する。
【0029】
次に、光源部2の温度が60℃以上かどうかが確認される(S20)。
図1を参照して、測温部4によって測定された光源部2の温度情報を制御部5が取得し、光源部2の温度が予め定められた第1温度、本実施の形態では60℃以上であるかどうかを判断する。光源部2の温度が60℃以上である場合(S20においてYESの場合)、R−LD11の発光強度が、G−LD13の発光強度とB−LD15の発光強度との和の40%以下となるように、制御部5が光源部2を制御する(S30)。
【0030】
具体的には、
図1を参照して、制御部5は、R−LD11、G−LD13およびB−LD15に投入する電力を調整し、光源部2から光路51に沿って出射される光の色および強度を制御する。また、制御部5は、走査鏡部3を制御し、画像を形成する。より詳細に説明すると、光源部2から光路51に沿って出射された光は、走査鏡部3の反射面3Aにおいて反射され、光路61に沿って進行してハーフミラー6へと入射する。ハーフミラー6は、反射面6Aを有する。本実施の形態において、ハーフミラー6は、たとえば自動車のフロントガラスである。また、反射面6Aは、たとえばフロントガラスの室内側の面である。光路61に沿ってハーフミラー6に入射した光は、反射面6Aにおいて反射され、光路62に沿って進行する。そして、観察者である運転者7がこれを視認する。
【0031】
ここで、走査鏡部3が矢印αに沿う回転方向および当該回転方向に交差する回転方向に傾くことにより、光路51に沿って走査鏡部3に入射した光の反射方向は変化する。制御部5は、光源部2を制御して所望の色および強度の光を光源部2から出射させる。さらに、制御部5は、この光を所望の方向に反射させ、走査することにより、所望の画像を形成する。そして、この画像を運転者7が視認する。
【0032】
このとき、光源部2の温度が60℃以上である場合(S20においてYESの場合)、制御部5は、R−LD11の発光強度を低い状態に維持することを前提としたモードでの制御を実施する(S30)。具体的には、たとえばフルカラーで表示することが必要な画像(ナビゲーションシステムにおいて表示される写真など)の表示をオフの状態としつつ、フルカラー表示である必要のない画像(速度の表示、エンジンの回転数の表示、バッテリーの充電状態の表示など)についてのみ、赤色の出力が小さいことを前提とした色にて表示する。
【0033】
そして、表示を終了すべき状態であるかどうかが確認される(S40)。具体的には、たとえば自動車の駆動用のエンジン、モータなどが停止されているかどうかが確認される。エンジン、モータなどが停止されている場合、制御部5は、表示を終了すべき状態であると判断し(S40においてYES)、表示を終了し、車載用ヘッドアップディスプレイ装置1の動作を停止する。エンジン、モータなどが停止されていない場合(S40においてNO)、S20以下が繰り返される。
【0034】
一方、S20において光源部2の温度が60℃未満である場合(S20においてNOの場合)、すなわち外気温が低い場合や冷却部9による冷却によって光源部2が60℃未満にまで冷却された場合、制御部5はR−LD11の発光強度を制限することなく、光源部2を制御する(S50)。具体的には、たとえばフルカラー表示である必要のない画像だけでなく、フルカラーで表示することが必要な画像についても表示する。
【0035】
そして、表示を終了すべき状態であるかどうかが確認される(S60)。具体的には、S40の場合と同様に、たとえば自動車の駆動用のエンジン、モータなどが停止されているかどうかが確認される。エンジン、モータなどが停止されている場合、制御部5は、表示を終了すべき状態であると判断し(S60においてYES)、表示を終了し、車載用ヘッドアップディスプレイ装置1の動作を停止する。エンジン、モータなどが停止されていない場合(S60においてNO)、S50以下が繰り返される。
【0036】
ここで、本実施の形態の車載用ヘッドアップディスプレイ装置1においては、光源部2の温度が60℃以上である場合に、R−LD11の発光強度が抑制されるように、光源部2が制御部5によって制御される。したがって、光源部2の温度が60℃以上である場合であっても、高温での出力の低下が大きいR−LD11に高い出力が要求されない制御状態で、光源部2からの光によって画像を形成することができる。そのため、R−LD11の温度が冷却部9によって十分に冷却されるのを待つことなく、画像の表示を開始することができる。このように、本実施の形態の車載用ヘッドアップディスプレイ装置1は、光源としてレーザダイオードを採用しつつ、起動時間を短縮することを可能な車載用ヘッドアップディスプレイ装置となっている。
【0037】
車載用ヘッドアップディスプレイ装置1において、制御部5は、光源部2の温度が第1温度以上(たとえば60℃以上)である場合に、R−LD11の出力を停止した状態で光源部2を制御してもよい。これにより、光源部2の温度が第1温度以上である場合、高温での出力の低下が大きいR−LD11を発光させない制御状態で、光源部2からの光により画像が形成される。そのため、R−LD11の温度が低下するのを待つことなく、画像の表示を開始することができる。その結果、より確実に起動時間を短縮することができる。
【0038】
車載用ヘッドアップディスプレイ装置1において、上記第1温度は60℃以下に設定されることが好ましく、40℃以下に設定されることがより好ましい。これにより、R−LD11の出力の低下に起因する不十分な画像の形成を抑制することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態においては、S60においてNOの場合にS50以下が繰り返される制御方法について説明したが、S60においてNOの場合に、S20以下が繰り返されてもよい。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本願の車載用ヘッドアップディスプレイ装置は、起動時間を短縮することが求められる車載用ヘッドアップディスプレイ装置に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0042】
1 車載用ヘッドアップディスプレイ装置
2 光源部
3 走査鏡部
3A 反射面
4 測温部
5 制御部
6 ハーフミラー
6A 反射面
7 運転者
9 冷却部
11 R−LD
12,14,16 CAN
13 G−LD
15 B−LD
21 第1レンズ
22 第2レンズ
23 第3レンズ
31 第1フィルタ
32 第2フィルタ
51,52,53,61,62 光路