特許第6907660号(P6907660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907660
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20210708BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210708BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20210708BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20210708BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K3/36
   C08K5/541
   C08J3/20CEQ
   B60C1/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-73876(P2017-73876)
(22)【出願日】2017年4月3日
(65)【公開番号】特開2018-177834(P2018-177834A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北郷 亮太
(72)【発明者】
【氏名】時宗 隆一
(72)【発明者】
【氏名】田中 智大
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−246334(JP,A)
【文献】 特開2016−160423(JP,A)
【文献】 特開平07−032446(JP,A)
【文献】 特開2016−029118(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
B60C 1/00
C08J 3/20
C08K 3/36
C08K 5/541
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤及び加硫促進剤を混練するベース練り工程と、
前記ベース練り工程で得られた混練物1及び加硫剤を混練する仕上げ練り工程と、
前記仕上げ練り工程で得られた混練物2を押し出す押出工程とを含み、
前記押出工程は、押出機のスクリュー温度を50〜90℃に調整して行われるタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム組成物においては、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性等の性能をバランスよく向上させる目的で、シリカを配合する技術が広く使用されている。
【0003】
シリカは、凝集性が高く、ゴム中に均一に分散させることは困難であるため、シリカと結合し、シリカの分散を促進するシランカップリング剤と併用することが一般的である。従来から、シリカの分散性の向上のために、シランカップリング剤の反応性を高める手法が種々検討されており、例えば、特許文献1では、ヒドロキシ酸、イタコン酸をゴム組成物に配合する手法が開示されている。また、シランカップリング剤の反応性を高める他の手法として、通常は仕上げ練り工程で投入する加硫促進剤を、ゴム成分、シリカ及びシランカップリング剤とともにベース練り工程で投入する手法も知られている。しかしながら、近年では、シリカの分散性の更なる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/062099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、良好な加工性を得つつ、シリカの分散性を向上させ、耐摩耗性等が改善されたタイヤ用ゴム組成物が得られるタイヤ用ゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤及び加硫促進剤を混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物1及び加硫剤を混練する仕上げ練り工程と、前記仕上げ練り工程で得られた混練物2を押し出す押出工程とを含み、前記押出工程は、押出機のスクリュー温度を50〜90℃に調整して行われるタイヤ用ゴム組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤及び加硫促進剤を混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物1及び加硫剤を混練する仕上げ練り工程と、前記仕上げ練り工程で得られた混練物2を押し出す押出工程とを含み、前記押出工程は、押出機のスクリュー温度を50〜90℃に調整して行われるタイヤ用ゴム組成物の製造方法であるので、良好な加工性を得つつ、シリカの分散性を向上させ、耐摩耗性等が改善されたタイヤ用ゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤及び加硫促進剤を混練するベース練り工程と、前記ベース練り工程で得られた混練物1及び加硫剤を混練する仕上げ練り工程と、前記仕上げ練り工程で得られた混練物2を押し出す押出工程とを含み、前記押出工程は、押出機のスクリュー温度を50〜90℃に調整して行われるタイヤ用ゴム組成物の製造方法である。
【0009】
混練工程で得られた混練物を押出機で混練する際、押出機の温度調整を高い温度に設定する方がカップリング剤の反応率が上がり、シリカ分散性が高くなるが、通常の配合ではヤケが生じるという問題がある。本発明では、加硫促進剤をベース練りで添加・混練することでシリカ分散を向上させること、更に押出機のスクリュー温度を高めることでシリカ分散が向上すること、により、良好な加工性を得つつ、シリカ分散を顕著に向上できる。
【0010】
これは、加硫促進剤をベース練りで投入することにより、低粘度の配合ゴムが得られるため、発熱を抑制できること、そのため、高温条件でも焼けにくいので、押出機のスクリュー温度を高めることができること、によるもので、これにより、良好な加工性を得ながら、シリカ分散が相乗的に向上したものと推察される。従って、混練中のヤケ等を防止して良好な加工性(混練加工性、押出加工性)を得つつ、耐摩耗性等との性能バランスを相乗的に改善できる。
【0011】
以下、各工程の詳細について説明する。
【0012】
(ベース練り工程)
ベース練り工程では、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤及び加硫促進剤を混練する。
【0013】
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、SBR、BRが好ましく、SBR、BRの併用がより好ましい。
【0014】
シランカップリング剤としては特に限定されないが、例えば、スルフィド系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0015】
シリカとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50〜250m/g、より好ましくは120〜200m/gである。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0016】
加硫促進剤としては特に限定されないが、例えば、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類、キサントゲン酸塩類等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類が好ましい。
【0017】
グアニジン類としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジンが好ましい。
【0018】
スルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−メチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
【0019】
チアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モリホリノチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドが好ましい。
【0020】
チウラム類としては、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0021】
ベース練り工程において、加硫促進剤の投入量は、シランカップリング剤とシリカの反応促進効果の観点から、シリカの投入量100質量部に対して、0.1〜10質量部に設定することが好ましい。
【0022】
ベース練り工程では、上述のゴム成分、シリカ、シランカップリング剤、加硫促進剤以外に、他の成分を投入して混練してもよい。他の成分としては、仕上げ練り工程で投入する加硫剤以外であれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、オイル、ステアリン酸、老化防止剤等が挙げられる。
【0023】
ベース練り工程において、ゴム成分、シリカ、シランカップリング剤及び加硫促進剤の投入量は、全量(全工程で使用する合計量)であってもよいし、一部であってもよい。
シリカの分散をより促進できるという理由から、ゴム成分、シリカ及びシランカップリング剤は、ベース練り工程で全量を投入して混練することが好ましく、加硫促進剤は、一部をベース練り工程で投入して混練し、残部を仕上げ練り工程で投入して混練することが好ましい。
【0024】
ベース練り工程で使用する混練機としては、密閉型のバンバリーミキサーが好ましい。バンバリーミキサーのローターの形状は、接線式、噛合式のいずれであってもよい。
【0025】
ベース練り工程において、混練物1の排出温度は、シリカ及びシランカップリング剤の反応促進効果の観点から、130〜160℃が好ましい。
【0026】
(仕上げ練り工程)
仕上げ練り工程では、ベース練り工程で得られた混練物1及び加硫剤を投入して混練する。
【0027】
仕上げ練り工程の混練方法としては特に限定されず、例えば、オープンロール等の公知の混練機を用いることができる。混練物2の排出温度は、80〜120℃が好ましい。
【0028】
仕上げ練り工程で投入する加硫剤としては、ゴム成分を架橋可能な薬品であれば特に限定されないが、例えば、硫黄等が挙げられる。また、ハイブリッド架橋剤(有機架橋剤)についても本発明における加硫剤として使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、硫黄が好ましい。
【0029】
なお、仕上げ練り工程では、上述の加硫剤以外に、他の成分を投入して混練してもよい。他の成分としては、例えば、加硫促進剤、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0030】
仕上げ練り工程で投入する加硫促進剤としては、ベース練り工程で投入する加硫促進剤と同様のものを使用できるが、グアニジン類、チアゾール類、スルフェンアミド類が好ましく、グアニジン類、チアゾール類、スルフェンアミド類の併用がより好ましい。
【0031】
(押出工程)
押出工程では、仕上げ練り工程で得られた混練物2をシート状に押出成形する。押出工程では、例えば、ゴム分野で公知のシリンダ及びスクリューを有する押出機を用いて実施することが可能である。
【0032】
押出工程は、押出機のスクリュー温度を50〜90℃に調整して行われる。つまり、混練物2の混練(押出)時において、押出機に備えられているスクリューの温度を所定範囲に調整して押出工程が実施される。下限以上にすることで、カップリング反応が進行し、シリカ分散が向上する傾向がある。上限以下にすることで、ゴムシートの生地肌を良好にすると共に、シリカ分散が向上する傾向がある。該スクリュー温度は、好ましくは60〜90℃、より好ましくは70〜85℃である。
【0033】
押出機のスクリューの温度調整は、温水を循環させるジャケット、冷却装置、循環ポンプ、加熱装置、温度センサーなどにより構成される温度調整装置を用いて調整できる。例えば、温度調整装置をスクリュー部に対して設置し、温度センサーによる温水の温度測定の結果に基づいて冷却装置や加熱装置を稼働させることにより、スクリュー部のジャケットに供給する温水の温度を調整することで、スクリュー部の温度を調整できる。
【0034】
(加硫工程)
前述の工程で作製された混練物(未加硫ゴム組成物)は、通常、その後加硫される。例えば、未加硫ゴム組成物を、トレッド等のタイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧することで、タイヤを製造することができる。加硫温度は、130〜200℃が好ましく、加硫時間は、5〜15分が好ましい。
【0035】
加工性、耐摩耗性等がバランスよく得られるという理由から、本発明の製造方法により得られるゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは60質量部以上、であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0036】
加工性、耐摩耗性等がバランスよく得られるという理由から、本発明の製造方法により得られるゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
【実施例】
【0037】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0038】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol NS210(S−SBR)
BR:宇部興産(株)製のBR150B
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(NSA:114m/g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のX140(アロマオイル)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
加硫促進剤D:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤DT:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDT(1,3−ジ−o−トリル
グアニジン)
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤M−P:大内新興化学工業(株)製のノクセラーM−P(2−メルカプトベンゾチアゾール)
加硫促進剤TOT−N:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT−N(テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジ
スルフィド)
加硫促進剤TBZTD:三新化学工業(株)製のサンセラーTBZTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
加硫促進剤MBTS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジベンゾチアジルジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
【0039】
(実施例及び比較例)
(1)ベース練り工程
バンバリーミキサーを用いて、表1〜5のベース練り工程の項目に記載の材料を混練し、ゴム温度(混練物の温度)が約150℃になった時点で排出した。
(2)仕上げ練り工程
オープンロールを用いて、ベース練り工程で得られた混練物1と、表1〜5の仕上げ練り工程の項目に記載の材料とを混練し、ゴム温度が約110℃になった時点で排出した。
(3)押出工程
仕上げ練り工程で得られた混練物2を、押出機(スクリュー径:φ80mm、L/D:50、ダイギャップ幅:40mm)を用いて、スクリュー回転数80RPM、押出速度は約9m/分で、リボン状のシートを押出し、未加硫ゴム組成物を得た。なお、各実施例、比較例のシリンダ温度、スクリュー温度は、各表に記載のとおりである。
(4)加硫工程
押出工程で得られた未加硫ゴム組成物を170℃で10分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0040】
得られた加硫ゴム組成物、未加硫ゴム組成物について、下記の評価を行った。結果を表1〜5に示す。なお、各表における基準配合は以下のとおりである。
表1:比較例1−1
表2:比較例2−1
表3:比較例3−1
表4:比較例4−1
表5:比較例5−1
【0041】
(生地肌)
上記未加硫ゴム組成物をロールにて1.0mm厚さのゴムシートに押出し成形し、得られたゴムシートの生地の状態を確認した。耳切れが発生しておらず、更に生地肌に問題がないものを○、問題が少しあるものを△、そうでないものを×で表記した。
【0042】
(未反応シランカップリング剤量)
未加硫ゴム組成物を細かく切り、エタノール中で24時間抽出を行った。抽出液中に抽出された未反応のシランカップリング剤量をガスクロマトグラフィで測定し、配合したシランカップリング剤量から未反応のシランカップリング剤量(wt%)を算出した。この値が小さいほど、未加硫ゴム組成物中に未反応で存在するシランカップリング剤量が少なく、シランカップリング剤の反応が進行したことを示す。
【0043】
(ムーニー粘度)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定した。基準配合の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、粘度が低く、加工性が優れていることを示す。
【0044】
(シリカ分散指数)
アルファーテクノロジー社製RPA2000を用いて、測定温度110℃(予熱1分)、周波数6cpm、振幅0.28〜10%の条件で、上記加硫ゴム組成物の貯蔵弾性率の歪依存性を測定し、歪量0.56%時の貯蔵弾性率の値を求め、基準配合の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、シリカの分散不良が少なく、シリカが良好に分散していることを示す。
【0045】
(摩耗指数)
ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定し、基準配合の値を100として指数表示した。摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
表1〜5より、加硫促進剤をベース練りで混練すると共に、押出機のスクリュー温度を所定範囲に調整した実施例は、シランカップリング剤の反応率が高く、シリカの分散性が顕著に向上し、加工性、耐摩耗性等がバランス良く改善されることが明らかとなった。