(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のエミッタフォロワ回路は、それぞれ、制御端子と、第1の電流端子と、第2の電流端子と、を有する一対の第4のトランジスタを含み、前記差動入力信号の逆相成分を前記一対の第4のトランジスタの一方の制御端子で受けるとともに前記差動入力信号の正相成分を前記一対の第4のトランジスタの他方の制御端子で受け、前記第1の差動信号の逆相成分を前記一対の第4のトランジスタの一方の第1の電流端子から出力するとともに前記第1の差動信号の正相成分を前記一対の第4のトランジスタの他方の第1の電流端子から出力する、
請求項1に記載の駆動回路。
前記第1の電流源を流れる電流の大きさと、前記第2の電流源を流れる電流の大きさとの比率は、0.8〜1.25である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動回路。
前記第1の差動回路は、前記一対の第1のトランジスタの一方の第1の電流端子と前記第1の電流源との間に接続される第1の抵抗素子と、前記一対の第1のトランジスタの他方の第1の電流端子と前記第1の電流源との間に接続される第2の抵抗素子と、をさらに含み、
前記第2の差動回路は、前記一対の第3のトランジスタの一方の第1の電流端子と前記第2の電流源との間に接続される第3の抵抗素子と、前記一対の第3のトランジスタの他方の第1の電流端子と前記第2の電流源との間に接続される第4の抵抗素子と、をさらに含み、
前記第1の抵抗素子の抵抗値と前記第3の抵抗素子の抵抗値との比率、および前記第2の抵抗素子の抵抗値と前記第4の抵抗素子の抵抗値との比率は、0.8〜1.25である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
本発明の一態様に係る駆動回路は、互いに反対の位相を有する正相成分および逆相成分を含む差動入力信号を増幅して光変調器を駆動する駆動信号を生成する駆動回路であって、差動入力信号を受ける入力端子と、入力端子を介して差動入力信号を受け、差動入力信号の電圧を第1のシフト電圧値だけ低下させて、互いに反対の位相を有する正相成分および逆相成分を含む第1の差動信号として出力する第1のエミッタフォロワ回路と、第1の差動信号の電圧を第2のシフト電圧値だけ低下させて、互いに反対の位相を有する正相成分および逆相成分を含む第2の差動信号として出力するレベルシフト回路と、それぞれ、制御端子と、第1の電流端子と、第2の電流端子と、を有する一対の第1のトランジスタと、一対の第1のトランジスタのそれぞれの第1の電流端子と共通に電気的に接続される第1の電流源と、を含み、第1の差動信号の逆相成分を一対の第1のトランジスタの一方の制御端子で受けるとともに第1の差動信号の正相成分を一対の第1のトランジスタの他方の制御端子で受け、互いに反対の位相を有する正相成分および逆相成分を含む第3の差動信号の正相成分を一対の第1のトランジスタの一方の第2の電流端子から出力するとともに第3の差動信号の逆相成分を一対の第1のトランジスタの他方の第2の電流端子から出力する第1の差動回路と、それぞれ、制御端子と、第1の電流端子と、第2の電流端子と、を有する一対の第2のトランジスタを含み、第3の差動信号の正相成分を一対の第2のトランジスタの一方の制御端子で受けるとともに第3の差動信号の逆相成分を一対の第2のトランジスタの他方の制御端子で受ける第2のエミッタフォロワ回路と、それぞれ、制御端子と、第1の電流端子と、第2の電流端子と、を有する一対の第3のトランジスタと、一対の第3のトランジスタのそれぞれの第1の電流端子と共通に電気的に接続される第2の電流源と、を含み、第2の差動信号の逆相成分を一対の第3のトランジスタの一方の制御端子で受けるとともに第2の差動信号の正相成分を一対の第3のトランジスタの他方の制御端子で受ける第2の差動回路と、一対の第2のトランジスタの一方の第1の電流端子および一対の第3のトランジスタの一方の第2の電流端子と電気的に接続される第1の出力ノードと、一対の第2のトランジスタの他方の第1の電流端子および一対の第3のトランジスタの他方の第2の電流端子と電気的に接続される第2の出力ノードと、を含み、第1の出力ノードと第2の出力ノードの少なくとも一方から駆動信号を出力する出力端子と、を具備する。
【0011】
上記の駆動回路では、第2のエミッタフォロワ回路のトランジスタの制御端子には、第1の差動回路から、第3の差動信号が入力され、第2の差動回路のトランジスタの制御端子には、レベルシフト回路から、第2の差動信号が入力される。この場合、第2のエミッタフォロワ回路と第2の差動回路とのプッシュプル動作によって出力端子に駆動信号を発生させることができるので、例えば第2のエミッタフォロワ回路のトランジスタに直流電流を流して動作させる場合よりも、駆動回路の消費電力を低減することができる。また、プッシュプル動作においては、第2のエミッタフォロワ回路のトランジスタの制御端子に入力される信号の位相(つまり第3の差動信号の位相)と、第2の差動回路のトランジスタの第1の電流端子を流れる電流の位相(つまり第2の差動信号に応答して流れる電流)とが正確に反転していることが望ましい。この場合、駆動回路による駆動速度が速くなるほど(例えば駆動信号に含まれる周波数成分が高周波成分になるほど)、回路内のトランジスタの応答時間(例えばベース応答時間)に起因する遅延の影響が無視できなくなる。上記の駆動回路では、第2のエミッタフォロワ回路のトランジスタの制御端子に入力される信号には、第1の差動回路のトランジスタの応答時間に起因する遅延が含まれる。第2の差動回路のトランジスタの第1の電流端子を流れる電流には、第2の差動回路のトランジスタの応答時間に起因する遅延が含まれる。このように、第1のエミッタフォロワ回路から第1の差動回路およびエミッタフォロワ回路を通る経路と、第1のエミッタフォロワ回路から第2の差動回路を通る経路のいずれにもトランジスタの応答時間に起因する遅延を生じさせることによって、2つの経路に生じる遅延量を近づけることができる。したがって、駆動速度が速い場合であっても、第2のエミッタフォロワ回路のトランジスタの制御端子に入力される信号の位相と第2の差動回路のトランジスタの第1の電流端子を流れる電流の位相とが正確に反転されたプッシュプル動作が実現される。以上より、駆動速度の向上と消費電力の低減とを両立させることができる。
【0012】
第1のエミッタフォロワ回路は、それぞれ、制御端子と、第1の電流端子と、第2の電流端子と、を有する一対の第4のトランジスタを含み、差動入力信号の逆相成分を一対の第4のトランジスタの一方の制御端子で受けるとともに差動入力信号の正相成分を一対の第4のトランジスタの他方の制御端子で受け、第1の差動信号の逆相成分を一対の第4のトランジスタの一方の第1の電流端子から出力するとともに第1の差動信号の正相成分を一対の第4のトランジスタの他方の第1の電流端子から出力してもよい。このような構成の第1のエミッタフォロワ回路により、駆動回路の入力インピーダンスを高くすることができる。
【0013】
一対の第1のトランジスタのサイズと、一対の第3のトランジスタのサイズとの比率は、0.8〜1.25であってもよい。このように各トランジスタのサイズを同程度に設定することで、トランジスタのサイズに起因する、第1の差動回路のトランジスタの応答時間に起因する遅延量と、第2の差動回路のトランジスタの応答時間に起因する遅延量とを近づけることができる。したがって、上述の2つの経路に生じる遅延量を近づけることができる。
【0014】
第1の電流源を流れる電流の大きさと、第2の電流源を流れる電流の大きさとの比率は、0.8〜1.25であってもよい。このように各電流源を流れる電流の大きさを同程度に設定することで、トランジスタを流れる電流の大きさに起因する、第1の差動回路トランジスタの応答時間に起因する遅延量と、第2の差動回路のトランジスタの応答時間に起因する遅延量とを近づけることができる。したがって、上述の2つの経路に生じる遅延量を近づけることができる。
【0015】
第1の差動回路は、一対の第1のトランジスタの一方の第1の電流端子と第1の電流源との間に接続される第1の抵抗素子と、一対の第1のトランジスタの他方の第1の電流端子と第1の電流源との間に接続される第2の抵抗素子と、をさらに含み、第2の差動回路は、一対の第3のトランジスタの一方の第1の電流端子と第2の電流源との間に接続される第3の抵抗素子と、一対の第3のトランジスタの他方の第1の電流端子と第2の電流源との間に接続される第4の抵抗素子と、をさらに含み、第1の抵抗素子の抵抗値と第3の抵抗素子の抵抗値との比率、および第2の抵抗素子の抵抗値と第4の抵抗素子の抵抗値との比率は、0.8〜1.25であってもよい。このように各抵抗素子の抵抗値を同程度に設定することで、トランジスタの第2の電流端子の抵抗(例えばエミッタ抵抗)の大きさに起因する、第1の差動回路のトランジスタの応答時間に起因する遅延量と、第2の差動回路のトランジスタの応答時間に起因する遅延量とを近づけることができる。したがって、上述の2つの経路に生じる遅延量を近づけることができる。
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明による駆動回路の実施の形態を詳細に説明する。図面中同一の要素には同一の符号を付し重複する説明は省略する。本明細書において、トランジスタは、バイポーラトランジスタおよび電界効果トランジスタ(FET)の双方を含むものとする。以下の説明では、トランジスタが、制御端子であるベース、第1の電流端子であるエミッタおよび第2の電流端子であるコレクタを有するバイポーラトランジスタである場合を例に挙げて説明する。トランジスタがFETである場合には、ベース、エミッタおよびコレクタは、ゲート、ソースおよびドレインにそれぞれ読み替えてよい。
【0017】
図1は、実施形態に係る駆動回路が適用される光送信モジュールの概略構成を示す図である。光送信モジュール1は、駆動回路10と、光源20と、光変調器30とを含む。光送信モジュール1は、例えば光通信で使用される。光源20は、特定の波長を有する連続波光(CW光)を光変調器30に供給する。光源20の例は、レーザダイオードである。光変調器30は、光源20から供給されたCW光を変調して光信号を出力する。光変調器30の例は、EAMまたはMZMである。光変調器30内で光導波路を形成する材料の例は、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、リン化インジウム(InP)、シリコン(Si)等である。駆動回路10は、入力信号に応じて光変調器30の特性に適した駆動信号を生成し、光変調器30を駆動するために用いられる。光変調器30は。駆動回路10から供給された駆動信号に応じてCW光を変調する。変調方式の例は、強度変調、位相変調、直角位相振幅変調(QAM)等である。光送信モジュール1は、32Gbaud〜56Gbaudまたはそれ以上の高速な変調速度に対応した高速通信で使用することが想定されている。この場合、駆動回路10は、20GHz〜30GHzまたはそれ以上の高周波帯域の電気信号(例えば駆動信号)を扱う必要がある。電気信号の速度が速くなるほど、それを伝送する伝送線路でのエネルギー損失が大きくなり、電磁誘導や電磁放射を起こしやすくなるので駆動回路10と光変調器30とは近接して配置されることが好ましい。そのため、駆動回路10と光変調器30とは一つのパッケージ内に実装されていても良い。
【0018】
図2は、実施形態に係る駆動回路10および駆動回路10に接続される光変調器30の概略構成を示す図である。駆動回路10は、電源線11から供給される電圧によって動作し、光変調器30を駆動する。
図2に示される例では、電源線11は、接地電位であるグラウンド(GND)電位を基準とした電源電圧Vccを供給する。光変調器30は、光変調器素子を含む。光変調器素子は、CW光あるいは変調によって生成される光信号等を伝送する光導波路と光導波路上に駆動信号を印加するための電極や駆動信号を伝送するための伝送線路等を含んで形成される。伝送線路の先端には後述する整合回路31が接続されていてもよい。整合回路31は、光変調器素子と共に一つのパッケージ内に実装されていてもよい。すなわち、光変調器30は光変調器素子と整合回路31とを含んでいてもよい。
【0019】
駆動回路10は、入力ノードN1、N2を含む。入力ノードN1、N2には、差動入力信号Vin、VinBが入力される。入力ノードN1、N2は、例えば、パッケージの表面の電極やリードとして具現化された場合には、入力端子となる。差動入力信号Vin、VinBは、互いに反対の位相を有する正相成分Vin、逆相成分VinBを含む。例えば、正相成分Vinと逆相成分VinBは一対の相補信号であり、それぞれの電圧振幅は互いに略等しく、一方の信号電圧が増加するときに他方の信号は減少し、一方の信号が減少するときに他方の信号は増加する。また、一対の相補信号の一方がピーク値をとるときに一対の相補信号の他方はボトム値をとり、一対の相補信号の一方がボトム値をとるときに一対の相補信号の他方はピーク値をとる。なお、以下の説明にて現れる他の差動信号も、いずれもこのような正相成分と逆相成分を含んでいる。入力ノードN1は、逆相成分VinBが入力される第1の入力ノードである。入力ノードN2は、正相成分Vinが入力される第2の入力ノードである。なお、差動信号は、正相信号と逆相信号とを入れ替えると論理が反転するという性質を持っている。そのため、バイナリデータを伝送する場合に、差動信号の論理を反転するために、入力ノードN1に正相成分Vinを入力し、入力ノードN2に逆相成分VinBを入力してもよい。
【0020】
駆動回路10は、エミッタフォロワ回路EF1をさらに含む。エミッタフォロワ回路EF1は、駆動回路10の入力側に設けられる入力側エミッタフォロワ回路であり、入力端子(入力ノードN1、N2)と、後述の差動回路Diff1および差動回路Diff2との間に設けられる。エミッタフォロワ回路EF1は、トランジスタTr1およびトランジスタTr2を含む。トランジスタTr1およびトランジスタTr2は、実質的に同じ特性を有するように設計される。例えば、トランジスタTr1およびトランジスタTr2のサイズが同じになるように、各トランジスタが設計される。トランジスタのサイズの例は、ベース、エミッタ、コレクタの面積である。従って、トランジスタTr1およびトランジスタTr2は一対のトランジスタ(一対の第4のトランジスタ)として扱ってもよい。
【0021】
トランジスタTr1のベースは、入力ノードN1に電気的に接続される。トランジスタTr1のベースには、逆相成分VinBが入力される。トランジスタTr1のコレクタは、電源線11に電気的に接続される。トランジスタTr1のコレクタには、電源電圧Vccが印加される。トランジスタTr1のエミッタは、後述のレベルシフト回路LSを介して電流源CS1に電気的に接続される。電流源CS1は、トランジスタTr1のコレクタからエミッタに向かって所定の電流が流れるように、レベルシフト回路LSとグラウンドとの間に接続される。電流源CS1は、例えば半導体素子等の能動素子および抵抗素子等の受動素子を組み合わせて構成される公知の電流源回路を含んで構成される。他の電流源についても同様である。電流源CS1は、エミッタフォロワ回路EF1に含まれる要素であってもよい。トランジスタTr1のエミッタは、差動回路Diff1のトランジスタTr3のベースにも接続され、差動回路Diff2のトランジスタTr7のベースにも電気的に接続される。トランジスタTr1は、ベースに印加されたベース電圧とほぼ同相(つまり逆相成分VinBとほぼ同相)のエミッタ電流をエミッタから出力するとともにベース電圧よりもベース・エミッタ間電圧だけ低いエミッタ電圧をエミッタに出力するエミッタフォロワとして機能する。トランジスタTr1のエミッタと、他の要素との接続点を、ノードnV1nと称し図示する。
【0022】
トランジスタTr2のベースは、入力ノードN2に電気的に接続される。トランジスタTr2のベースには、正相成分Vinが入力される。トランジスタTr2のコレクタは、電源線11に電気的に接続される。トランジスタTr2のコレクタには、電源電圧Vccが印加される。トランジスタTr2のエミッタは、レベルシフト回路LSを介して電流源CS2に電気的に接続される。電流源CS2は、トランジスタTr2のコレクタからエミッタに向かって所定の電流が流れるように、レベルシフト回路LSとグラウンドとの間に接続される。電流源CS2の電流値は、電流源CS1の電流値と実質的に同じ値に設定されてよい。電流源CS2は、エミッタフォロワ回路EF1に含まれる要素であってもよい。トランジスタTr2のエミッタは、差動回路Diff1のトランジスタTr4のベースにも接続され、差動回路Diff2のトランジスタTr8のベースにも電気的に接続される。トランジスタTr2は、ベースに印加されたベース電圧とほぼ同相(つまり正相成分Vinとほぼ同相)のエミッタ電流をエミッタから出力するとともにベース電圧よりもベースエミッタ間電圧だけ低いエミッタ電圧をエミッタから出力するエミッタフォロワとして機能する。トランジスタTr2のエミッタと、他の要素との接続点を、ノードnV1pと称し図示する。
【0023】
エミッタフォロワ回路EF1を備えることによって、駆動回路10の入力インピーダンスが高められる。エミッタフォロワ回路EF1は、高い入力インピーダンスを低い出力インピーダンスに変換する作用があり、低い出力インピーダンスでエミッタ電流やエミッタ電圧を出力することによってそれらを受ける後段の回路を高速に駆動することができる。上述したように、トランジスタTr1は、入力差動信号の逆相成分VinBを所定の電圧値(ベース・エミッタ間電圧の値)だけ低下させてノードnV1nに出力し、トランジスタTr2は、入力差動信号の正相成分Vinを所定の電圧値(ベース・エミッタ間電圧の値)だけ低下させてノードnV1pに出力する。従って、トランジスタTr1およびトランジスタTr2を実質的に同じ特性を有するように設計することで、エミッタフォロワ回路EF1は、入力差動信号を所定の電圧値(第1のシフト電圧値)だけ低下させた差動信号(第1の差動信号)をノードnV1p、nV1nに出力することができる。第1のシフト電圧値は、後述する電流源CS1、CS2の供給する電流を変えることによって調節できる。
【0024】
駆動回路10は、レベルシフト回路LSをさらに含んでよい。レベルシフト回路LSは、エミッタフォロワ回路EF1の出力電圧(ノードnV1n、nV1pにおける電圧)を、差動回路Diff1のトランジスタTr3、Tr4のベース電圧および差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8のベース電圧に適したレベルにシフトさせる。この例では、レベルシフト回路LSは、ダイオードD1およびダイオードD2を含む。ダイオードD1およびダイオードD2は、同じ特性を有するように設計される。ダイオードD1のアノードはトランジスタTr1のエミッタに接続され、ダイオードD1のカソードは、トランジスタTr7のベースに接続される。ダイオードD1のカソードは、電流源CS1にも接続されており、ダイオードD1のアノードからカソードに向かって順方向電流が流れるようになっている。トランジスタTr1のエミッタ電圧(ノードnV1nの電圧)よりもダイオードD1のアノード・カソード間電圧だけ低い電圧が、トランジスタTr7のベースに入力される。ダイオードD2のアノードはトランジスタTr2のエミッタに接続され、ダイオードD2のカソードはトランジスタTr8のベースに接続される。ダイオードD2のカソードは、電流源CS2にも接続されており、ダイオードD2のアノードからカソードに向かって順方向電流が流れるようになっている。トランジスタTr2のエミッタ電圧(ノードnV1pの電圧)よりもダイオードD2のアノード・カソード間電圧だけ低い電圧が、トランジスタTr8のベースに入力される。従って、レベルシフト回路LSは、エミッタフォロワ回路EF1から出力された差動信号(第1の差動信号)を所定の電圧値(第2のシフト電圧値)だけ低下させた差動信号(第2の差動信号)を生成し、差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8に供給する。第2のシフト電圧値は、ダイオードD1、D2の電流電圧特性と電流源CS1、CS2の供給する電流とに応じて設定される。
【0025】
駆動回路10は、差動回路Diff1をさらに含む。差動回路Diff1は、エミッタフォロワ回路EF1の後段に設けられる第1の差動回路であり、トランジスタTr3、Tr4と、抵抗素子R1〜R4とを含む。トランジスタTr3およびトランジスタTr4は、実質的に同じ特性を有するように設計される。従って、トランジスタTr3およびトランジスタTr4を一対のトランジスタ(一対の第1のトランジスタ)として扱ってもよい。抵抗素子R1および抵抗素子R2は、実質的に同じ抵抗値を有するように設計される。抵抗素子R3および抵抗素子R4は、実質的に同じ抵抗値を有するように設計される。すなわち、差動回路Diff1は、回路のトポロジーおよび各部品の定数も含めて回路図上にて左右対象となるように構成される。
【0026】
トランジスタTr3のベースは、ノードnV1n(トランジスタTr1のエミッタ)に電気的に接続される。トランジスタTr3のベースには、入力ノードN1から逆相成分VinB、より具体的にはトランジスタTr1のエミッタ電圧(第1の差動信号の逆相成分)が入力される。トランジスタTr3のコレクタは、抵抗素子R1を介して電源線11に電気的に接続される。トランジスタTr3のエミッタは、抵抗素子R3を介して電流源CS3に電気的に接続される。電流源CS3は、抵抗素子R3とグラウンドとの間に接続される。電流源CS3は、差動回路Diff1に含まれる要素であってもよい。トランジスタTr3には、ベース電圧に応じて、ベース電圧とほぼ同相のコレクタ電流が流れる。コレクタ電流が抵抗素子R1を流れて電圧降下が生じることによって、トランジスタTr3のコレクタには、コレクタ電流と逆相の電圧が発生する。結果として、トランジスタTr3のコレクタは、逆相成分VinB、より具体的には第1の差動信号の逆相成分とほぼ逆相の信号(第2の差動信号の正相成分)を出力する。なお、抵抗素子R1に代えてトランジスタ等を抵抗素子として用いてもよい。
【0027】
トランジスタTr4のベースは、ノードnV1p(トランジスタTr2のエミッタ)に電気的に接続される。トランジスタTr4のベースには、入力ノードN2から正相成分Vin、より具体的にはトランジスタTr2のエミッタ電圧(第1の差動信号の正相成分)が入力される。トランジスタTr4のコレクタは、抵抗素子R2を介して電源線11に電気的に接続される。トランジスタTr4のエミッタは、抵抗素子R4を介して電流源CS3に電気的に接続される。電流源CS3は、抵抗素子R4とグラウンドとの間に接続される。従って、トランジスタTr3のエミッタが抵抗素子R3を介して電流源CS3に接続されるとともに、トランジスタTr4のエミッタが抵抗素子R4を介して電流源CS3に接続される。トランジスタTr4には、ベース電圧に応じて、ベース電圧とほぼ同相のコレクタ電流が流れる。コレクタ電流が抵抗素子R2を流れて電圧降下が生じることによって、トランジスタTr4のコレクタには、コレクタ電流と逆相の電圧が発生する。結果として、トランジスタTr4コレクタは、正相成分Vin、より具体的には第1の差動信号の正相成分とほぼ逆相の信号(第2の差動信号の逆相成分)を出力する。なお、抵抗素子R2に代えてトランジスタ等を抵抗素子として用いてもよい。ところで、このように構成された差動回路Diff1において、電流源CS3が供給する電流は、トランジスタTr3のベース電位とトランジスタTr4のベース電位とに応じて、トランジスタTr3のコレクタ電流とトランジスタTr4のコレクタ電流とに配分される。例えば、トランジスタTr3のベース電位がトランジスタTr4のベース電位よりも高いときにはトランジスタTr3のコレクタ電流はトランジスタTr4のコレクタ電流よりも多く配分される。また、トランジスタTr3のベース電位がトランジスタTr4のベース電位よりも低いときにはトランジスタTr3のコレクタ電流はトランジスタTr4のコレクタ電流よりも少なく配分される。トランジスタTr3のベース電位とトランジスタTr4のベース電位とが略等しいときには電流源CS3が供給する電流はほぼ半分ずつトランジスタTr3のコレクタ電流とトランジスタTr4のコレクタ電流とに配分される。トランジスタTr3のベース電位がトランジスタTr4のベース電圧よりもある一定値を超えて高くなると、電流源CS3が供給する電流のほぼ全部がトランジスタTr3に流れて、トランジスタTr4にはほとんど流れなくなる。また、トランジスタTr4のベース電位がトランジスタTr3のベース電位よりもある一定値を超えて高くなると、電流源CS3が供給する電流のほぼ全部がトランジスタTr4に流れて、トランジスタTr3にはほとんど流れなくなる。このように、トランジスタTr3のベース電位とトランジスタTr4のベース電位とに一対の相補信号(例えば、第1の差動信号)が入力されると、それに応じて電流源CS3が供給する電流が抵抗素子R1と抵抗素子R2とに相補的に配分されて、トランジスタTr3のコレクタとトランジスタTr4のコレクタとに増幅された一対の相補信号として差動信号(第3の差動信号)が出力される。第3の差動信号の電圧は、抵抗素子R1、R2が接続された電源線11の電圧値(この場合、電源電圧VCC)が基準となる。第3の差動信号の正相成分と逆相成分のそれぞれの電圧振幅は、抵抗素子R1、R2の抵抗値と電流源CS3が供給する電流の電流値を掛けた値となる。差動回路Diff1の差動電圧利得は、例えば、抵抗素子R1、R2の抵抗値と抵抗素子R3,R4の抵抗値との比によって設定することができる。なお、抵抗素子R3、R4は使用せずに、トランジスタTr3、Tr4のそれぞれのエミッタが直接、電流源CS3に接続されてもよい。差動回路Diff1において、抵抗素子R1とトランジスタTr3のコレクタとの間と、抵抗素子R2とトランジスタTr4のコレクタとの間とにぞれぞれカスコードトランジスタ等が挿入され、抵抗素子R1、R2それぞれのカスコードトランジスタとの接続点から第3の差動信号が出力されてもよい。
【0028】
駆動回路10は、エミッタフォロワ回路EF2をさらに含む。エミッタフォロワ回路EF2は、差動回路Diff1の後段に設けられる出力側エミッタフォロワ回路であり、トランジスタTr5およびトランジスタTr6を含む。トランジスタTr5およびトランジスタTr6は、実質的に同じ特性を有するように設計される。トランジスタTr5およびトランジスタTr6は、一対のトランジスタ(一対の第2のトランジスタ)として扱ってもよい。トランジスタTr5のベースは、トランジスタTr3のコレクタに電気的に接続される。トランジスタTr5のベースには、トランジスタTr3のコレクタによって出力された信号(逆相成分VinBとほぼ逆相の信号、より具体的には第3の差動信号の正相成分)が入力される。トランジスタTr5のコレクタは、電源線11に接続される。トランジスタTr5のコレクタには、電源電圧Vccが印加される。トランジスタTr5のエミッタは、差動回路Diff2を介して電流源CS4に電気的に接続される。電流源CS4は、後述する差動回路Diff2とグラウンドとの間に接続される。電流源CS4は、エミッタフォロワ回路EF2に含まれる要素であってもよい。トランジスタTr5のエミッタは、差動回路Diff2のトランジスタTr7のコレクタにも接続される。トランジスタTr5は、ベース電圧とほぼ同相(つまり逆相成分VinBとほぼ逆相)のエミッタ電流を出力するとともにベース電圧よりもベース・エミッタ間電圧だけ低いエミッタ電圧を出力するエミッタフォロワとして機能する。トランジスタTr5のエミッタ電流を、エミッタ電流Ieと称し図示する。
【0029】
トランジスタTr6のベースは、トランジスタTr4のコレクタに電気的に接続される。トランジスタTr6のベースには、トランジスタTr4のコレクタによって出力された信号(正相成分Vinとほぼ逆相の信号、より具体的には第3の差動信号の逆相成分)が入力される。トランジスタTr6のコレクタは、電源線11に接続される。トランジスタTr6のコレクタには、電源電圧Vccが印加される。トランジスタTr6のエミッタは、差動回路Diff2を介して電流源CS4に電気的に接続される。電流源CS4は、差動回路Diff2とグラウンドとの間に接続される。トランジスタTr6のエミッタは、差動回路Diff2のトランジスタTr8のコレクタにも接続される。トランジスタTr6は、ベース電圧とほぼ同相(つまり正相成分Vinとほぼ逆相)のエミッタ電流を出力するとともにベース電圧よりもベースエミッタ間電圧だけ低いエミッタ電圧を出力するエミッタフォロワとして機能する。
【0030】
駆動回路10は、差動回路Diff2をさらに含む。差動回路Diff2は、レベルシフト回路LSの後段に設けられる出力側差動回路であり、トランジスタTr7、Tr8と、抵抗素子R5、R6とを含む。トランジスタTr7およびトランジスタTr8は、実質的に同じ特性を有するように設計される。トランジスタTr7およびトランジスタTr8は、一対のトランジスタ(一対の第3のトランジスタ)として扱ってもよい。抵抗素子R5および抵抗素子R6は、実質的に同じ抵抗値を有するように設計される。すなわち、差動回路Diff2は、回路のトポロジーおよび各部品の定数も含めて回路図上にて左右対象となるように構成される。
【0031】
トランジスタTr7のベースは、レベルシフト回路LSのダイオードD1のカソードに電気的に接続される。トランジスタTr7のベースには、入力ノードN1からの逆相成分VinB、より具体的にはトランジスタTr1のエミッタ電圧をレベルシフト回路LSのダイオードD1によってレベルシフトさせた電圧(第2の差動信号の逆相成分)が入力される。トランジスタTr7のコレクタは、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr5のエミッタに電気的に接続される。トランジスタTr7のエミッタは、抵抗素子R5を介して電流源CS4に電気的に接続される。トランジスタTr7には、ベース電圧とほぼ同相のコレクタ電流が流れる。結果として、トランジスタTr7のコレクタは、逆相成分VinBとほぼ同相の電流信号(コレクタ電流)を出力する。トランジスタTr7のコレクタ電流を、コレクタ電流Icと称し図示する。
【0032】
トランジスタTr8のベースは、レベルシフト回路LSのダイオードD2のカソードに電気的に接続される。トランジスタTr8のベースには、入力ノードN2からの正相成分Vin、より具体的にはトランジスタTr2のエミッタ電圧をレベルシフト回路LSのダイオードD2によってレベルシフトさせた電圧(第2の差動信号の正相成分)が入力される。トランジスタTr8のコレクタは、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr6のエミッタに電気的に接続される。トランジスタTr8のエミッタは、抵抗素子R6を介して電流源CS4に電気的に接続される。トランジスタTr8には、ベース電圧とほぼ同相のコレクタ電流が流れる。結果として、トランジスタTr8のコレクタは、正相成分Vinとほぼ同相の電流信号(コレクタ電流)を出力する。
【0033】
駆動回路10は、出力ノードN3、N4をさらに含む。出力ノードN3、N4は、差動出力信号(駆動信号)Dout、DoutBを出力する。差動出力信号Dout、DoutBは、互いに反対の位相を有する正相成分Dout、逆相成分DoutBを含む。出力ノードN3は、正相成分Doutが出力される第1の出力ノードである。出力ノードN4は、逆相成分DoutBが出力される第2の出力ノードである。出力ノードN3、N4は、例えば、パッケージの表面の電極やリードとして具現化された場合には、出力端子となる。出力ノードN3は、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr5(一対の第2のトランジスタの一方)のエミッタと、差動回路Diff2のトランジスタTr7(一対の第3のトランジスタの一方)のコレクタとの間に接続される。出力ノードN3には、トランジスタTr5のエミッタ電流IeとトランジスタTr7のコレクタ電流Icとの差電流が流れる。出力ノードN3を流れる電流を、出力電流Ioutpと称し図示する。出力ノードN4は、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr6(一対の第2のトランジスタの他方)のエミッタと、差動回路Diff2のトランジスタTr8(一対の第3のトランジスタの他方)のコレクタとの間に接続される。出力ノードN4には、トランジスタTr6のエミッタ電流とトランジスタTr8のコレクタ電流との差電流が流れる。出力ノードN4を流れる電流を、出力電流Ioutnと称する(不図示)。差動回路Diff2の機能については後述する。この例において、出力電流Ioutp、Ioutnは差動信号となる。
【0034】
図2に示される例では、光変調器30は、伝送線路型の進行波型MZMであり、光変調器素子としてPN接合またはPIN接合ダイオードを含む。この例では、光変調器30がバイアス回路を要しており、駆動回路10は、出力ノードN5(出力端子)をさらに含む。出力ノードN5は、バイアス回路BCによって発生するバイアス電圧を、光変調器30に供給する。バイアス電圧によって、駆動信号の基準電位が設定される。例えば、光変調器30のPIN接合ダイオードに逆バイアス電圧(例えば1〜−10V)が印加されるよう、PIN接合ダイオードのカソードが、出力ノードN5に接続される。出力ノードN5には、バイアス回路BCによって、出力ノードN3および出力ノードN4の電圧よりも高い電圧が供給される。バイアス回路BCが上述の逆バイアス電圧を発生できるように、バイアス回路BCは、コンデンサC1を介して電源線11に接続される。なお、バイアス回路BCおよびコンデンサC1は、駆動回路10の要素であってもよい。バイアス回路BCは、光変調器30の光学的特性の経時的な変化(ドリフト)を検出して、ドリフトに対して自動的にバイアス電圧を最適値に制御するような回路(自動バイアス制御回路)であってもよい。また、光変調器30に対しては、整合回路31が設けられる。
図2に示される例では、整合回路31は、整合用の素子として、抵抗素子Rm1、Rm2、Rm3およびコンデンサCm1、Cm2を含む。各素子のうち、抵抗素子Rm2、Rm3は終端抵抗であり、駆動信号を伝送する伝送線路の先端(終端)に接続される。この例において、駆動信号は差動信号であるので、伝送線路は差動信号の正相成分用と逆相成分用とにそれぞれ1本ずつ用意される。終端抵抗は、それぞれの伝送線路に接続される。終端抵抗の抵抗値は、伝送線路の特性インピーダンスと一致するように設定される。出力電流Ioutp、Ioutnがそれぞれ終端抵抗Rm2、Rm3に流れるとそれぞれ電圧信号(駆動信号)Dout、DoutBに変換される。その駆動信号に応じて光変調器素子は変調を行う。この例において、出力電流Ioutp、Ioutnは差動信号であり、それらが終端抵抗によって変換された駆動信号Dout、DoutBも差動信号である。整合回路31の終端抵抗Rm2、Rm3以外の素子は、終端抵抗の接続される終端電圧を生成し、安定化するように設けられる。整合回路31の構成は、
図2に示される例に限定されない。
【0035】
以上説明した駆動回路10によれば、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr5のベースには、差動回路Diff1から、逆相成分VinBとほぼ逆相の信号(第3の差動信号の正相成分)が入力される。エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr6のベースには、差動回路Diff1から、正相成分Vinとほぼ逆相の信号(第3の差動信号の逆相成分)が入力される。差動回路Diff2のトランジスタTr7のベースには、逆相成分VinBとほぼ同相の信号(第2の差動信号の逆相成分)が入力される。差動回路Diff2のトランジスタTr8のベースには、正相成分Vinとほぼ同相の信号(第2の差動信号の正相成分)が入力される。この場合、エミッタフォロワ回路EF2と差動回路Diff2とのプッシュプル動作によって、上述した通り、出力ノードN3および出力ノードN4に駆動信号Dout、DoutBを発生させることができる。
【0036】
プッシュプル動作の一例を、
図3を参照して概念的に説明する。
図3のグラフにおいて、横軸は、時刻tを示す。縦軸は、トランジスタTr5のベース電位、トランジスタTr5のエミッタ電流Ie、トランジスタTr7のコレクタ電流Ic、および出力ノードN3を流れる出力電流Ipoutの大きさを示す。出力電流Ioutpの大きさは、出力ノードN3から光変調器30に向かう方向を正とした場合の大きさである。なお、以下の説明において、ベース電位というときには、基準電位をグラウンド(GND)電位としたときのベースに印加されるベース電圧のことを意味する。基準電位をグラウンド電位に特定する必要が無い場合にはベース電圧という。なお、コレクタ電位とコレクタ電圧とについても同様に考える。
図3のグラフにおいて、トランジスタTr5のベース電位と対となるトランジスタTr6のベース電位は、図示されていないが、上述したようにトランジスタTr5のベース電位とは位相が反対の相補信号となっていることを想定している。
【0037】
時刻t11〜t12において、トランジスタTr5のベース電位が、ハイレベル(ピーク値)からローレベル(ボトム値)に遷移する。トランジスタTr5のエミッタ電流Ieも、ハイレベルからローレベルに遷移する。一方で、トランジスタTr7のコレクタ電流Icは、ローレベルからハイレベルに遷移する。出力電流Ioutp(すなわちIe−Ic)は、プラスからマイナスに遷移する。なお、出力電流Ioutpの値は、
図2に図示した矢印の方向に流れるとき、すなわち、駆動回路10から光変調器30に向かって流れるときに正となり、光変調器30から駆動回路10に向かって流れるときに負となる。例えば、出力電流Ioutpの値が正のとき、出力電流IoutpはトランジスタTr5のエミッタから出力ノードN3を介して光変調器30へ流れる。出力電流Ioutpの値が負のとき、出力電流Ioutpは光変調器30から出力ノードN3を介してトランジスタTr7のコレクタに流れる。
【0038】
時刻t12〜t13において、トランジスタTr5のベース電位が、ローレベルに維持される。トランジスタTr5のエミッタ電流Ieも、ローレベルに維持される。一方で、トランジスタTr7のコレクタ電流Icは、ハイレベルに維持される。出力電流Ioutpは、マイナスに維持される。
【0039】
時刻t13〜t14において、トランジスタTr5のベース電位が、ローレベルからハイレベルに遷移する。トランジスタTr5のエミッタ電流Ieも、ローレベルからハイレベルに遷移する。一方で、トランジスタTr7のコレクタ電流Icは、ハイレベルからローレベルに遷移する。出力電流Ioutpは、マイナスからプラスに遷移する。
【0040】
時刻t14〜t15において、トランジスタTr5のベース電位が、ハイレベルに維持される。トランジスタTr5のエミッタ電流Ieも、ハイレベルに維持される。一方で、トランジスタTr7のコレクタ電流Icは、ローレベルに維持される。出力電流Ioutpは、プラスに維持される。
【0041】
時刻t15〜t16において、時刻t11〜t12と同様に、トランジスタTr5のベース電位がハイレベルからローレベルに遷移する。トランジスタTr5のエミッタ電流Ieも、ハイレベルからローレベルに遷移する。一方で、トランジスタTr7のコレクタ電流Icは、ローレベルからハイレベルに遷移する。出力電流Ioutpは、プラスからマイナスに遷移する。差動入力信号Vin、VinBに応じて、このような動作が繰り返し実行され得る。
【0042】
図3において、トランジスタTr5およびトランジスタTr7は、ローレベル時でも完全にはオフにはならず、それぞれオフセット電流が流れている。トランジスタTr5のエミッタ電流のオフセット電流が、オフセット電流Ie_offset1として図示される。トランジスタTr5のエミッタ電流Ieの振幅値が、振幅値Ie_amp1として図示される。トランジスタTr7のコレクタ電流のオフセット電流が、オフセット電流Ic_offset1として図示される。トランジスタTr7のコレクタ電流Icの振幅値が、振幅値Ic_amp1として図示される。オフセット電流Ie_offset1およびオフセット電流Ic_offset1が同じ大きさに設定されれば、出力電流Ioupの振幅値Iout_ampは、トランジスタTr5のエミッタ電流Ieの振幅値Ie_amp1と、トランジスタTr7のコレクタ電流Icの振幅値Ic_amp1との合計値となる。
【0043】
以上は、エミッタフォロワ回路EF2および差動回路Diff2にそれぞれ含まれる2つのトランジスタのうちの一方のトランジスタどうし、すなわちトランジスタTr5(一対の第2のトランジスタの一方)およびトランジスタTr7(一対の第3のトランジスタの一方)の動作の説明である。他方のトランジスタどうし、すなわち、トランジスタTr6(一対の第2のトランジスタの他方)およびトランジスタTr8(一対の第3のトランジスタの他方)の動作の動作についてもトランジスタTr6のベース電位に対して同様に説明できるので、ここでは説明を省略する。
【0044】
以上説明した駆動回路10では、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr5、Tr6のベースには、差動回路Diff1から、差動入力信号(逆相成分VinB、正相成分Vin)と同相の信号(第3の差動信号)が入力される。差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8のベースには、差動入力信号(逆相成分VinB、正相成分Vin)と逆相の信号(第2の差動信号)が入力される。この場合、エミッタフォロワ回路EF2の一対の第2のトランジスタと差動回路Diff2の一対の第3のトランジスタとのプッシュプル動作によって出力ノードN3、N4に駆動信号を発生させることができるので、例えばエミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr5、Tr6に例えば上述のオフセット電流Ie_offset1およびオフセット電流Ic_offset1よりも大きな直流電流を流して動作させる場合よりも、駆動回路10の消費電力を低減することができる。なお、ここで、差動入力信号と第3の差動信号とが同相であるというのは、例えば、差動入力信号がバイナリデータを伝送する場合に、差動入力信号の正相成分がハイレベルかつ逆相成分がローレベルのときに“1”を表し、差動入力信号の正相成分がローレベルかつ逆相成分がハイレベルのときに“0”を表すとしたとき、差動入力信号に応じて生成される第3の差動信号の正相成分がハイレベルかつ逆相成分がローレベルのときに“1”を表し、差動入力信号に応じて生成される第3の差動信号の正相成分がローレベルかつ逆相成分がハイレベルのときに“0”を表すようになっていることを意味する。従って、差動入力信号が、ある8ビットのバイナリデータ“01110101”を伝送するときに、第3の差動信号は、それに対応してある遅延時間を持って同じ8ビットのバイナリデータ“01110101”を伝送する。反対に、差動入力信号と第2の差動信号とが逆相であるというのは、例えば、差動入力信号がバイナリデータを伝送する場合に、差動入力信号の正相成分がハイレベルかつ逆相成分がローレベルのときに“1”を表し、差動入力信号の正相成分がローレベルかつ逆相成分がハイレベルのときに“0”を表すとしたとき、差動入力信号に応じて生成される第2の差動信号の逆相成分がハイレベルかつ正相成分がローレベルのときに“1”を表し、差動入力信号に応じて生成される第3の差動信号の逆相成分がローレベルかつ正相成分がハイレベルのときに“0”を表すようになっていることを意味する。従って、差動入力信号が、ある8ビットのバイナリデータ“01110101”を伝送するときに、第2の差動信号は、それに対応してある遅延時間を持って論理が反転された8ビットのバイナリデータ“10001010”を伝送する。すなわち、第2の差動信号と第3の差動信号は、バイナリデータにおいて常に互いに論理が反転した関係にあり、それぞれが、直列に接続された差動回路Diff2とエミッタフォロワ回路EF2とに入力されることによって出力電流Ioutpに関してプッシュプル動作が行われる。より詳細には、例えばトランジスタTr5のエミッタ電流が増加するときにはトランジスタTr7のコレクタ電流は減少し、それと同時に、トランジスタTr6のエミッタ電流が減少すると共にトランジスタTr8のコレクタ電流は増加するように、一方、例えばトランジスタTr5のエミッタ電流が減少するときにはトランジスタTr7のコレクタ電流は増加し、それと同時に、トランジスタTr6のエミッタ電流が増加すると共にトランジスタTr8のコレクタ電流は減少するように、第2の差動信号と第3の差動信号は生成される。
【0045】
ここで、プッシュプル動作においては、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr5、Tr6のベースに入力される信号(第3の差動信号)の位相と、差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8のコレクタ電流の位相とが、
図3(同図ではトランジスタTr5、Tr7が例示される)に示されるように正確に反転していることが望ましい。この場合、駆動回路10による駆動速度が速くなるほど(例えば差動出力信号(駆動信号)Dout、DoutBに含まれる周波数成分が高周波成分になるほど)、回路内のトランジスタのベース応答時間に起因する遅延の影響が無視できなくなる。この影響について、
図4〜
図6を参照して説明する。
【0046】
図4は、比較例に係る駆動回路の概略構成を示す図である。比較例に係る駆動回路10Eでは、入力ノードN1E、N2Eに入力される差動入力信号(正相成分Vin、逆相成分VinB)は、バッファアンプBuff1を介して、出力側エミッタフォロワ回路を構成するトランジスタTr5EおよびトランジスタTr6Eのベースに入力される。入力ノードN1E、N2Eに入力される差動入力信号は、バッファアンプBuff1およびコンデンサCf1、Cf2を介して、出力側差動回路を構成するトランジスタTr7EおよびトランジスタTr8Eのベースにも入力される。このときに、トランジスタTr7EおよびトランジスタTr8Eのベースには、トランジスタTr5EおよびトランジスタTr6Eのベースへの入力とは正相成分と逆相成分とを入れ替えて入力する。差動信号の正相成分と逆相成分とを入れ替えることによって、信号の論理が反転する。従って、トランジスタTr5Eにハイレベルが入力されるとき、トランジスタTr7Eにはローレベルが入力され、反対に、トランジスタTr5Eにローレベルが入力されるとき、トランジスタTr7Eにはハイレベルが入力される。トランジスタTr6EとTr8Eについても同様に、一方にハイレベルが入力されるときに他方にローレベルが入力され、反対に、一方にローレベルが入力されるときに他方にハイレベルが入力される。従って、トランジスタTr5EとTr7Eとはプッシュプル動作を行い、トランジスタTr6EとTr8Eとはプッシュプル動作を行う。なお、それぞれのプッシュプル動作はそれぞれ出力する信号の論理が互いに反転するように行われる。すなわち、トランジスタTr5EとTr7Eのプッシュプル動作によってノードN3Eの電位がハイレベルになるとき、ノードN4Eの電位はトランジスタTr6EとTr8Eのプッシュプル動作によってローレベルとなる。また、トランジスタTr5EとTr7Eのプッシュプル動作によってノードN3Eの電位がローレベルになるとき、ノードN4Eの電位はトランジスタTr6EとTr8Eのプッシュプル動作によってハイレベルとなる。トランジスタTr7EおよびトランジスタTr8Eのベースには、抵抗素子RE1および抵抗素子RE2を介してそれぞれバイアス電圧が印加される。トランジスタTr5EのエミッタおよびトランジスタTr7Eのコレクタの間に接続された出力ノードN3Eと、トランジスタTr6のエミッタおよびトランジスタTr8のコレクタの間に接続された出力ノードN4Eとによって、光変調器30を駆動するための差動出力信号DoutE、DoutBEが出力される。なお、
図4において、
図2に図示した整合回路31やバイアス回路BC等は省略している。
【0047】
ここで、比較例に係る駆動回路10Eでは、エミッタフォロワ回路を構成するトランジスタTr5E、Tr6Eのベースに入力される信号は、バッファアンプBuff1の出力信号と同相である。一方で、差動回路を構成するトランジスタTr7E、Tr8Eのコレクタ電流には、トランジスタTr7E、Tr8Eのベース応答時間に起因する遅延が含まれる。この遅延によって、トランジスタTr7E、Tr8Eのコレクタ電流が、トランジスタTr5E,Tr6Eのベース電位よりも遅れる。結果として、駆動回路10Eにおけるプッシュプル動作には、次に説明するような問題が生じる。
【0048】
比較例に係る駆動回路10Eにおけるプッシュプル動作の一例を、
図5を参照して概念的に説明する。
図5のグラフにおいて、横軸は時刻tを示す。縦軸は、トランジスタTr5Eのベース電位、トランジスタTr5のエミッタ電流IeE、トランジスタTr7のコレクタ電流IcEおよび出力ノードN3Eを流れる出力電流IoutpEの大きさを示す。なお、出力電流IoutpEは、出力電流Ioutp(
図2および
図3)と同様に、出力ノードN3Eから光変調器30に向かう方向を正とした場合の大きさである。
【0049】
トランジスタTr5Eのベース電位の挙動については、先に
図3を参照して説明したトランジスタTr5のベース電位と同様である。時刻t21〜t22(
図3の時刻t11〜12に対応)において、トランジスタTr5Eのベース電位が、ハイレベルからローレベルに遷移する。時刻t22〜t24(
図3の時刻t12〜t13に対応)において、トランジスタTr5Eのベース電位が、ローレベルに維持される。時刻t24〜t25(時刻t13〜t14に対応)において、トランジスタTr5Eのベース電位が、ローレベルからハイレベルに遷移する。時刻t25〜t27(
図3の時刻t14〜t15に対応)において、トランジスタTr5Eのベース電位が、ハイレベルに維持される。時刻t27〜t28(
図3の時刻t15〜t16に対応)において、トランジスタTr5Eのベース電位が、ハイレベルからローレベルに維持される。
【0050】
トランジスタTr5Eのエミッタ電流IeEは、ベース電位と同様に変化しようとするが、次に説明するように、トランジスタTr7Eのコレクタ電流Icの遅延によってその挙動が乱れる。
【0051】
具体的に、上述のように、比較例に係る駆動回路10Eでは、トランジスタTr7E、Tr8Eのコレクタ電流のタイミングが、トランジスタTr7E、Tr8Eのベース応答時間に起因する遅延時間だけ、トランジスタTr5E,Tr6Eのベース電位のタイミングよりも遅れる。トランジスタTr7Eにおける遅延時間を、遅延時間Tdと称し図示する。トランジスタTr7Eのコレクタ電流IcEは、時刻t22よりも遅延時間Tdだけ遅れた時刻t23において、ハイレベルに到達する。トランジスタTr7Eのコレクタ電流IcEがハイレベルに到達するタイミングが遅れる結果、時刻t22付近に、トランジスタTr5Eのエミッタ電流IeEが流れなくなる(トランジスタTr5Eがオフする)期間が生じる。時刻t28付近においても同様である。結果として、それらの期間において、出力電流IoutpEの振幅が小さくなる。
【0052】
また、比較例に係る駆動回路10Eでは、バッファアンプBuff1と、トランジスタTr7E、TR8Eのベースとが、コンデンサCf1、Cf2を介して容量結合されている。この場合、コンデンサCf1、Cf2のインピーダンスが高くなるような低周波数帯域の信号(例えば“00000000”などの同じビットが連続する信号)の入力に対しては、トランジスタTr7E、Tr8Eのコレクタ電流の変調振幅が長時間維持されないため、トランジスタTr5E、Tr6Eのエミッタ電流が流れなくなる(トランジスタTr5E、TR6Eがオフする)可能性もある。具体的に、
図6に示される例では、時刻t32〜t34(
図3の時刻t12〜t13に対応)の間において、トランジスタTr7Eのコレクタ電流IcEがきちんとハイレベルに維持されないため、時刻t33〜t34において、トランジスタTr5Eのエミッタ電流IeEが流れなくなる。
【0053】
以上説明した比較例に係る駆動回路10Eに対し、本実施形態に係る駆動回路10では、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr5、Tr6のベースに入力される信号に、差動回路Diff1のトランジスタTr3、Tr4のベース応答時間に起因する遅延が含まれる。差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8のコレクタ電流には、トランジスタTr7、Tr8のベース応答時間に起因する遅延が含まれる。このように、入力ノードN1、N2(つまりノードnV1n、nV1p)から差動回路Diff1およびエミッタフォロワ回路EF2を通る経路(第1の経路)と、入力ノードN1、N2から差動回路Diff2を通る経路(第2の経路)のいずれにもトランジスタのベース応答時間に起因する遅延を生じさせることによって、第1の経路に生じる遅延量と、第2の経路に2つの経路に生じる遅延量とを近づけることができる。したがって、変調速度が速い場合であっても、
図3に示されるように、エミッタフォロワ回路EF2のトランジスタTr5、Tr6のベースに入力される信号の論理と差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8のコレクタ電流の論理とがほぼ同じタイミングで正確に反転されてプッシュプル動作が実現される。したがって、駆動回路10によれば、駆動速度の向上と消費電力の低減とを両立させることができる。
【0054】
上記のように第1の経路に生じる遅延量と第2の経路に生じる遅延量とを近づけるための設計手法の例を説明する。
【0055】
再び
図2を参照し、ノードnV1n、nV1p(第1の差動信号)から、差動回路Diff1を経て出力ノードN3、N4(駆動信号)に至るまでの信号の伝搬時間を時間t
pd1とすると、時間t
pd1は、以下の式(1)で表される。
【数1】
ここで、時間t
b1は、トランジスタTr3、Tr4のベース応答時間である。時間t
c1は、コレクタ応答時間である。時間t
ef1は、トランジスタTr5、Tr6のエミッタフォロワ応答時間である。上記の式(1)においては、各応答時間のうち、時間t
b1が支配的である。
【0056】
時間t
b1は、以下の式(2)のように、ベース抵抗の抵抗値とベース容量の容量値との積を用いて表すことができる。
【数2】
ここで、抵抗値r
b1は、トランジスタTr3、Tr4のベース抵抗の抵抗値である。容量値C
je1は、トランジスタTr3、Tr4のベースエミッタ間接合容量の容量値である。容量値C
d1は、エミッタ拡散容量の容量値である。容量値C
jc1は、ベースコレクタ間接合容量の容量値である。係数n
e1は、トランジスタTr3、Tr4のエミッタノードのミラー係数である。係数n
c1は、トランジスタTr3、Tr4のコレクタノードのミラー係数である。
【0057】
トランジスタTr3、Tr4に十分なエミッタ電流が流れている状態では、容量値C
d1>>容量値C
jc1であるため、上記の式(2)は、以下の式(3)のように近似できる。
【数3】
【0058】
上記の式(3)によって表される時間tb1が、ノードnV1n、nV1pから、差動回路Diff1を経て出力ノードN3、N4に至るまでの信号の伝搬時間に相当し得る。この伝搬時間は、先に説明した第1の経路に生じる遅延量に相当し得る。
【0059】
一方、ノードnV1n、nV1pから、差動回路Diff2を経て出力ノードN3、N4に至るまでの信号の伝搬時間を時間t
pd2とすると、時間t
pd2は、以下の式(4)で表される。
【数4】
ここで、時間t
diode2は、ダイオードD1、D2の応答時間である。時間t
b2は、トランジスタTr7、Tr8のベース応答時間である。時間t
c2は、コレクタ応答時間である。上記の式(1)においては、各応答時間のうち、時間t
b2が支配的である。時間t
b2は、時間t
b1と同様に、以下の式(5)のように近似できる。
【数5】
ここで、抵抗値r
b2は、トランジスタTr7、Tr8のベース抵抗の抵抗値である。容量値C
d2は、エミッタ拡散容量の容量値である。係数n
e2は、トランジスタTr7、Tr8のエミッタノードのミラー係数である。
【0060】
上記の式(5)によって表される時間t
b2が、ノードnV1n、nV1pから、差動回路Diff2を経て出力ノードN3、N4に至るまでの信号の伝搬時間に相当し得る。この伝搬時間は、先に説明した第2の経路に生じる遅延量に相当し得る。
【0061】
以上より、第1の経路に生じる遅延量と第2の経路に生じる遅延量とを近づけるには、上記の式(3)によって表されるトランジスタTr3、Tr4のベース応答時間である時間t
b1と、上記の式(4)によって表されるトランジスタTr7、Tr8のベース応答時間である時間t
b2とを近づけるとよい。ここで、上記の式(3)および式(5)中のエミッタ拡散容量である容量値C
d1、C
d2を容量値C
dとすると、容量値C
dは、以下の式(6)で表される。
【数6】
ここで、容量値C
dは、容量値C
d1または容量値C
d2のいずれか一方である。Icは、コレクタ電流である。周波数ftは、トランジスタの遮断周波数である。電圧Vbeは、ベースエミッタ間電圧である。
【0062】
この場合、上記の式(3)によって表される時間t
b1と、上記の式(5)によって表される時間t
b2とを近づけるための要件として、以下の要件1〜3が考えられる。
要件1:トランジスタTr3、Tr4のベース抵抗の抵抗値と、トランジスタTr7、Tr8のベース抵抗の抵抗値とを近づける。
要件2:トランジスタTr3、Tr4のエミッタ抵抗の抵抗値(エミッタに接続される抵抗素子の抵抗値も含み得る)と、トランジスタTr7、Tr8のエミッタ抵抗の抵抗値とを近づける。
要件3:トランジスタTr3、Tr4のコレクタ電流の電流値と、トランジスタTr7、Tr8コレクタ電流の電流値とを近づける。また、トランジスタTr3、Tr4の遮断周波数と、トランジスタTr7、Tr8の遮断周波数とを近づける。
【0063】
図2に示される駆動回路10の回路構成に当てはめた場合、以下の条件で回路設計を行うことが考えられる。
【0064】
例えば、トランジスタTr3およびトランジスタTr4(一対の第1のトランジスタ)のサイズと、トランジスタTr7およびトランジスタTr8(一対の第3のトランジスタ)のサイズとの比率を、0.8〜1.25の範囲内に設定してよい。このように各トランジスタのサイズを同程度に設定することで、トランジスタのサイズに起因する、差動回路Diff1のトランジスタTr3、Tr4のベース応答時間に起因する遅延量と、差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8のベース応答時間に起因する遅延量とを近づけることができる。したがって、上記第1の経路および第2の経路の2つの経路に生じる遅延量を近づけることができる。
【0065】
電流源CS3を流れる電流の大きさと、電流源CS4を流れる電流の大きさとの比率を、0.8〜1.25の範囲内に設定してもよい。このように各電流源を流れる電流の大きさを同程度に設定することで、トランジスタを流れる電流の大きさに起因する、差動回路Diff1のトランジスタTr3、Tr4のベース応答時間に起因する遅延量と、差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8のベース応答時間に起因する遅延量とを近づけることができる。したがって、上記第1の経路および第2の経路の2つの経路に生じる遅延量を近づけることができる。
【0066】
抵抗素子R3の抵抗値と、抵抗素子R5の抵抗値との比率を、0.8〜1.25の範囲内に設定してもよい。同様に、抵抗素子R4の抵抗値と、抵抗素子R6の抵抗値との比率を、0.8〜1.25の範囲内に設定してもよい。このように各抵抗素子の抵抗値を同程度に設定することで、トランジスタのエミッタ抵抗の大きさに起因する、差動回路Diff1のトランジスタTr3、Tr4のベース応答時間に起因する遅延量と、差動回路Diff2のトランジスタTr7、Tr8のベース応答時間に起因する遅延量とを近づけることができる。したがって、上記第1の経路および第2の経路の2つの経路に生じる遅延量を近づけることができる。
【0067】
なお、上記各条件をいずれも満たす場合には、第1の経路に生ずる遅延量と第2の経路に生ずる遅延量との差を、50%以内に抑制することができる。例えば、上述の各比率がいずれも最小の0.8の場合には、大きい方の遅延量に対する小さい方の遅延量の比率が0.8×0.8×0.8=約0.51となり、遅延量の差(すなわち1−0.51=0.49)を大きい方の遅延量(すなわち1)の50%以内とすることができる。各比率がいずれも最大の1.25の場合には、1.25×1.25×1.25=1.95となり、遅延量の差(すなわち1.95−1=0.95)を大きい方の遅延量(すなわち1.95)の50%以内とすることができる。なお、上述したそれぞれの比率の範囲をさらに狭めることによって第1の経路に生ずる遅延量と第2の経路に生ずる遅延量との差をさらに小さくすることができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0069】
上記実施形態では、レベルシフト回路として、ダイオードD1、D2を含む回路構成である例を説明したが、他の回路構成を採用することもできる。
図7に示されるレベルシフト回路LS‐2は、レベルシフト回路LS(
図2)と比較して、ダイオードD1に代えて、互いに並列接続された抵抗素子RL1およびコンデンサCL1を含み、ダイオードD2に代えて、互いに並列接続された抵抗素子RL2およびコンデンサCL2を含む点において相違する。抵抗素子RL1および抵抗素子RL2は、実質的に同じ抵抗値を有するように設計される。コンデンサCL1およびコンデンサCL2は、実質的に同じ容量値を有するように設計される。レベルシフト回路LS‐2は、抵抗素子RL1およびコンデンサCL1の並列接続回路に生じる電圧降下を利用して、トランジスタTr1のエミッタ電圧をシフトさせる。抵抗素子RL2およびコンデンサCL2の並列接続回路に生じる電圧降下を利用して、トランジスタTr2のエミッタ電圧をシフトさせる。とくに、コンデンサCL1およびコンデンサCL2は、高い周波数成分を含む信号の通過を容易にする。ここで、レベルシフト回路LS‐2が用いられる場合には、電流源CS1および電流源CS2(
図2)を、可変電流源CS1varおよび可変電流源CS2varとしてもよい。電流源の電流値を可変とすることで、上述の電圧降下の大きさを可変とし、レベルシフト量を調整することもできる。可変電流源CS1varおよび可変電流源CS2varの電流値は、実質的に同じ値に設定されてよい。例えば、可変電流源CS1varおよび可変電流源CS2varは、カレントミラー回路によって構成されてもよい。それにより、それぞれの電流値を同じ値に設定・保持するのに好適となる。
【0070】
レベルシフト回路は、エミッタフォロワ回路EF1よりも入力ノードN1、N2側に設けられても良い。
図8に示される例では、レベルシフト回路LS(
図2)またはレベルシフト回路LS‐2(
図7)が、入力ノードN1、N2と、エミッタフォロワ回路EF1との間に設けられる。入力ノードN1、N2からみて、レベルシフト回路LSまたはレベルシフト回路LS‐2と、エミッタフォロワ回路EF1とは、並列に接続される。電流源CS1−3およびCS2−3が、レベルシフト回路LSまたはレベルシフト回路LS‐2と、グラウンドとの間に接続される。レベルシフト回路LSまたはレベルシフト回路LS‐2と、差動回路Diff2(
図2)との間には、追加のエミッタフォロワ回路EF1‐2が設けられる。エミッタフォロワ回路EF1‐2は、トランジスタTr1‐2およびトランジスタTr2‐2を含む。トランジスタTr1‐2およびトランジスタTr2‐2は、実質的に同じ特性を有するように設計される。電流源CS1‐2および電流源CS2‐2が、エミッタフォロワ回路EF1‐2と、グラウンドとの間に接続される。電流源CS1‐2および電流源CS2‐2の電流値は、実質的に同じ値に設定される。トランジスタTr1‐2のエミッタ電圧が、トランジスタTr7(
図2)のベースに入力される。トランジスタTr2―2のエミッタ電圧が、トランジスタTr8(
図2)のベースに入力される。
図8の回路構成では、入力ノードN1からの逆相成分VinBが、レベルシフト回路LSまたはレベルシフト回路LS‐2によってレベルシフトされ、さらに、トランジスタTr1‐2を通ることによってトランジスタTr1‐2のベースエミッタ間電圧だけ低い電圧とされた後、トランジスタTr7のベースに入力される。結果として、先に説明した
図2の回路構成のように逆相成分VinBをトランジスタTr1のベースエミッタ間電圧だけ低い電圧としさらにレベルシフト回路LSによってレベルシフトした電圧レベルと同等の電圧レベルを有する信号が、トランジスタTr7のベースに入力される。入力ノードN2からの正相成分Vinについても同様である。
【0071】
光変調器は、単相の光変調素子であってもよい。
図9に示される例では、単相の光変調素子である光変調器30−2が、出力ノードN3および出力ノードN4に接続される。抵抗素子Rmは、光変調器30−2に接続される終端抵抗として機能する。なお、光変調素子の電極において、アノードとカソードとの位置関係が、
図9に示される関係とは逆であってもよい。
【0072】
単相の光変調素子は、出力ノードN3および出力ノードN4にAC結合を介して接続されてもよい。
図10に示される例では、出力ノードN3と光変調器30−3との間にAC結合用のコンデンサCac1が接続され、出力ノードN4と光変調器30−3との間にAC結合用のコンデンサCac2が接続される。コンデンサCac1およびコンデンサCac2の容量値は、例えば10pF〜0.1μFである。
【0073】
駆動回路と光変調器とをコンデンサCac1およびコンデンサCac2を介してAC結合させつつ変調器にバイアスを印加してもよい。
図11に示される例では、光変調器30−4に対して、出力ノードN3および出力ノードN4と反対側(つまり駆動回路10と反対側)から、バイアス回路BCによるバイアス電圧が供給される。
【0074】
終端抵抗が、光変調器にAC結合を介して接続されてもよい。
図12に示される例では、コンデンサCac1およびコンデンサCac2が、光変調器30−5と、抵抗素子Rmとの間に、接続される。
【0075】
光変調器および終端抵抗のいずれかがAC結合を介して接続される場合、
図13に示されるように、出力ノードN3と光変調器30−6との間にコンデンサCac1を接続し、光変調器30−6と抵抗素子Rmとの間にコンデンサCac2を接続し、コンデンサCac1と光変調器30−6との間にバイアス回路BCを接続してもよい。