特許第6907737号(P6907737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6907737蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907737
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20210708BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20210708BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20210708BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20210708BHJP
   H01M 50/102 20210101ALI20210708BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20210708BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20210708BHJP
   H01M 10/30 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01G11/12
   H01G11/80
   H01G11/84
   H01M50/102
   H01M50/121
   H01M50/184 Z
   !H01M10/30 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-116227(P2017-116227)
(22)【出願日】2017年6月13日
(65)【公開番号】特開2019-3776(P2019-3776A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】岸根 翔
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真也
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−190713(JP,A)
【文献】 特開2005−251465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/12
H01G 11/66 − 11/72
H01G 11/78 − 11/86
H01M 10/058
H01M 10/0585
H01M 10/06 − 10/18
H01M 10/24 − 10/32
H01M 50/102
H01M 50/121
H01M 50/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔、前記金属箔の一方面に設けられた正極活物質層、及び、前記金属箔の他方面に設けられた負極活物質層を含むバイポーラ電極と、前記金属箔の外縁に沿って枠状に設けられ前記金属箔の外側に延在する第1シール部材と、を含む複数の電極体を、前記バイポーラ電極同士が重複し、且つ、前記第1シール部材同士が重複するように積層する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記電極体の積層方向に重複して配置された複数の前記第1シール部材の前記金属箔の外側に延在する端部を一括して切断する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記積層方向に沿って互いに隣り合う前記第1シール部材同士をシールする第3工程と、
を備える蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第2工程と前記第3工程との間において、複数の前記第1シール部材同士を溶着により仮固定する第4工程を備える、
請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第3工程においては、第2シール部材を用いて複数の前記第1シール部材同士をシールする、
請求項1又は2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記第3工程においては、複数の前記第1シール部材の前記端部が一括して切断されて形成された切断面に、加熱された前記第2シール部材を接合することによって、前記積層方向に沿って互いに隣り合う前記第1シール部材同士をシールする、
請求項3に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記第3工程においては、複数の前記第1シール部材の前記端部が一括して切断されて形成された切断面に、射出成形によって前記第2シール部材を設けることによって、前記積層方向に沿って互いに隣り合う前記第1シール部材同士をシールする、
請求項3に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記第2工程においては、超音波カッタを用いて、前記積層方向に積層された前記第1シール部材の端部を一括して切断する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バイポーラ薄型電池が記載されている。このバイポーラ薄型電池は、正極、負極、及び、集電体を有するバイポーラ電極と、セパレータ及び電解液を含む電解質層と、シール部と、これらを包む外装部材と、を備えている。バイポーラ電極は、集電体の一方の主面に正極が形成され、他方の主面に負極が形成されてなる。シール部は、集電体の一方の主面に正極を取り囲むように配置された第1シール部と、集電体の他方の面であって第1シール部の位置と同じ背面位置に負極を取り囲むように配置された第2シール部と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−287451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のバイポーラ薄型電池にあっては、複数のバイポーラ電極がシール部及びセパレータを介して積層されることにより、積層体を構成している。一方、上記のようなバイポーラ薄型電池にあっては、積層体の一体化及びシール性の向上の目的から、シール部同士をさらにシールすることが考えられる。この場合、例えば互いに隣接する3つのバイポーラ電極において、中央のバイポーラ電極に設けられたシール部の端面が、他のバイポーラ電極に設けられたシール部の端面よりも内側にずれて窪んでいると、シール材が当該窪みに入り込みにくくなり、充填不良が生じ得る。この結果、積層体のシール性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、積層体のシール性の低下を抑制可能な蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法は、金属箔、金属箔の一方面に設けられた正極活物質層、及び、金属箔の他方面に設けられた負極活物質層を含むバイポーラ電極と、金属箔の外縁に沿って枠状に設けられ金属箔の外側に延在する第1シール部材と、を含む複数の電極体を、第1シール部材同士が重複するように積層する第1工程と、第1工程の後に、金属箔を切断しないように複数の第1シール部材の端部を切断することによって第1シール部材に新たな端部を形成する第2工程と、新たな端部において第1シール部材同士をシールする第3工程と、を備える。
【0007】
この製造方法においては、まず、バイポーラ電極とその金属箔に設けられた第1シール部材とを含む電極体を、第1シール部材同士が重複するように積層する。続いて、金属箔を切断しないように第1シール部材の端部を切断する。そして、第1シール部材における切断により生じた新たな端部において、第1シール部材同士をさらにシールする。これにより、電極体の積層体の一体化及びシール性の向上が図られる。特に、この製造方法にあっては、上記のとおり、第1シール部材の端部を切断して新たな端部を形成している。このため、第1シール部材のさらなるシールに際して、第1シール部材の端面(新たな端部の端面)が揃った状態となっている。よって、第1シール部材の端面のずれに起因したシール材の充填不良が生じにくい。よって、積層体のシール性の低下が抑制される。
【0008】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法においては、第2工程と第3工程との間において、第1シール部材同士を溶着により仮固定する第4工程を備えてもよい。この場合、第3工程に際して積層体を移送するときに、電極体の位置ずれを抑制できる。
【0009】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法においては、第3工程においては、第2シール部材を用いて第1シール部材同士をシールしてもよい。このとき、第3工程においては、加熱によって新たな端部に第2シール部材を接合することによって第1シール部材同士をシールしてもよい。或いは、第3工程においては、射出成形によって新たな端部に第2シール部材を設けることによって第1シール部材同士をシールしてもよい。これらの場合、第2シール部材を構成する材料の充填不良を抑制し、確実にシール性の低下を抑制可能である。
【0010】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法においては、第2工程においては、超音波カッタを用いて第1シール部材の切断を行ってもよい。この場合、第1シール部材の熱による劣化や剪断力による変形を抑制しつつ第1シール部材を切断可能である。
【0011】
本発明に係る蓄電モジュールは、互いに積層された複数の電極体を含む積層体を備え、電極体は、金属箔、金属箔の一方面に設けられた正極活物質層、及び、金属箔の他方面に設けられた負極活物質層を含むバイポーラ電極と、金属箔の外縁に沿って枠状に設けられ金属箔の外側に延在する第1シール部材と、を含み、積層体における積層方向に沿って互いに隣り合う電極体の第1シール部材の端部は、互いに揃っており、且つ、互いにシールされている。
【0012】
この蓄電モジュールにおいては、少なくとも、積層体における積層方向に沿って互いに隣り合う電極体の第1シール部材の端部が揃っている。したがって、上記の理由と同様の理由により、積層体のシール性の低下が抑制される。
【0013】
本発明に係る蓄電モジュールにおいては、互いに隣り合う電極体において、第1シール部材の端部を規定する端面同士のずれ量は、積層方向における第1シール部材の厚さと金属箔の厚さとの合計の2倍以下であってもよい。このような範囲において第1シール部材の端部が揃っていれば、シール材の充填不良を確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、積層体のシール性の低下を抑制可能な蓄電モジュールの製造方法、及び、蓄電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】蓄電モジュールを備える蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図2図1の蓄電装置を構成する蓄電モジュールを示す概略断面図である。
図3図2に示された積層体を示す図である。
図4】第1シール部材の端部のずれを説明するための側面図である。
図5】蓄電モジュールの製造方法の主要な工程を示す図である。
図6】蓄電モジュールの製造方法の主要な工程を示す図である。
図7】蓄電モジュールの製造方法の主要な工程を示す図である。
図8】蓄電モジュールの製造方法の主要な工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法の一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、図面には、X軸、Y軸、及び、Z軸により規定される3次元直交座標系が示される場合がある。
【0017】
図1は、蓄電モジュールを備える蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置10は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール12を備えるが、単一の蓄電モジュール12を備えてもよい。蓄電モジュール12は例えばバイポーラ電池である。蓄電モジュール12は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0018】
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層されている。積層方向D1から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向D1(Z軸方向)において両端に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置されている。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向D1に直列に接続される。
【0019】
積層方向D1において、一端に位置する導電板14には正極端子24が接続されており、他端に位置する導電板14には負極端子26が接続されている。正極端子24は、接続される導電板14と一体であってもよい。負極端子26は、接続される導電板14と一体であってもよい。正極端子24及び負極端子26は、積層方向D1に交差する方向(X軸方向)に延在している。これらの正極端子24及び負極端子26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0020】
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の空隙14aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙14aは例えば積層方向D1に交差する方向(Y軸方向)に延在する。積層方向D1から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。
【0021】
蓄電装置10は、交互に積層された蓄電モジュール12及び導電板14を積層方向D1に拘束する拘束部材16を備えている。拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)と、を備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置されている。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向D1からみて、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きく、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きい。
【0022】
積層方向D1からみて、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H1が蓄電モジュール12よりも外側の位置に設けられている。同様に、積層方向D1からみて、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H2が蓄電モジュール12よりも外側の位置に設けられている。積層方向D1からみて各拘束プレート16A,16Bが矩形形状を有している場合、挿通孔H1及び挿通孔H2は、拘束プレート16A,16Bの角部に位置する。
【0023】
一方の拘束プレート16Aは、負極端子26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、正極端子24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔H1に通され、他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向D1に拘束荷重が付加される。
【0024】
図2は、図1の蓄電装置を構成する蓄電モジュールを示す概略断面図である。蓄電モジュール12は、積層体30を備えている。積層体30は、互いに積層された複数の電極体31を含む。電極体31は、それぞれ、バイポーラ電極32及びシール部材(第1シール部材)52を含む。電極体31は、バイポーラ電極32同士が重複するように、且つ、シール部材52同士が互いに重複するように積層されている。ここでは、一例として、積層体30における電極体31の積層方向は、上記の積層方向D1に沿っているため、以下では同様に積層方向D1と称する。
【0025】
積層方向D1から見て積層体30は例えば矩形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ40が配置され得る。バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の一方面に設けられた正極36と、電極板34の他方面に設けられた負極38とを含む。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極36は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極38は、セパレータ40を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極36と対向している。
【0026】
積層方向D1において、積層体30の一端には、内側面に負極38が配置された電極板34(負極側終端電極)が配置され、積層体30の他端には、内側面に正極36が配置された電極板34(正極側終端電極)が配置される。負極側終端電極の負極38は、セパレータ40を介して最上層のバイポーラ電極32の正極36と対向している。正極側終端電極の正極36は、セパレータ40を介して最下層のバイポーラ電極32の負極38と対向している。これら終端電極の電極板34はそれぞれ隣り合う導電板14(図1参照)に接続される。
【0027】
電極板34は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板34の縁部34aは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成するシール部材52に埋没して保持される領域となっている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の他方面における負極38の形成領域は、電極板34の一方面における正極36の形成領域に対して一回り大きくなっている。このように、バイポーラ電極32は、金属箔(電極板34)、金属箔の一方面に設けられた正極活物質層(正極36)、及び、金属箔の他方面に設けられた負極活物質層(負極38)を含む。
【0028】
セパレータ40は、例えばシート状に形成されている。セパレータ40を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ40は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ40は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0029】
図3は、図2に示された積層体を示す図である。図3の(a)は斜視図であり、図3の(b)は平面図である。図2,3に示されるように、積層体30は、複数のシール部材(第1シール部材)52を含む。シール部材52は、積層方向D1からみて枠状に形成されている。より具体的には、シール部材52は、電極板34の外縁34eに沿って枠状に設けられている。したがって、ここでは、電極板34の平面形状が矩形状であるので、シール部材52は矩形枠状(矩形環状)である。シール部材52は、電極板34のそれぞれ(すなわち、バイポーラ電極32のそれぞれ)に対して1つずつ設けられている。
【0030】
積層方向D1からみたとき、シール部材52の内縁52aは、電極板34の外縁34eよりも内側に位置し、シール部材52の外縁52eは、電極板34の外縁34eよりも外側に位置する。したがって、シール部材52は、枠状の内側部分52pにおいて電極板34に重複すると共に、枠状の外側部分52rにおいて電極板34から突出している。換言すれば、シール部材52は、電極板34の外側に延在している。シール部材52は、その内側部分52pにおいて、少なくとも、対応する電極板34の一方面(ここでは正極36が設けられた一方面)に溶着されている。
【0031】
シール部材52は、積層方向D1に沿って互いに積層されている。積層方向D1に沿って互いに隣り合うシール部材52の間には、電極板34の一部と、後述するシール部材54の一部とが介在している。シール部材52は、例えば、絶縁性の樹脂であって、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等から構成されている。
【0032】
ここで、少なくとも積層方向D1に沿って互いに隣り合う電極体31のシール部材52(以下、単に「互いに隣り合うシール部材52」という場合がある)の外側の端部52qは、互いに揃っている。互いに隣り合うシール部材52の端部52qが互いに揃っているとは、図4に示されるように、当該端部52qを規定する端面52s同士のずれ量DAが、積層方向D1におけるシール部材52の厚さと電極板34の厚さとの合計Tの2倍以下であることを意味する。ただし、ずれ量DAは、合計Tの1倍以下であることが望ましく、0.5倍以下であることがさらに望ましい。
【0033】
再び図2,3を参照する。蓄電モジュール12は、さらに、シール部材(第2シール部材)54を含む。シール部材54は、積層体30の全周にわたって、積層体30の側部上に環状に設けられている。より具体的には、シール部材54は、例えば射出成形によって、複数のシール部材52の端部52q及び電極板34の縁部34aに一体的に設けられており、シール部材52同士をさらにシールしている(第2シール部材である)。
【0034】
シール部材52及びシール部材54は、互いに接合され、単一の枠体50を形成する。これにより、積層方向D1に隣り合う電極板34の間には、当該電極板34とシール部材52とによって少なくとも液密に仕切られた内部空間Vが形成されている。内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。なお、シール部材54は、例えば、シール部材52と同一の材料から構成することができる。
【0035】
引き続いて、以上の蓄電モジュール12の製造方法について説明する。この製造方法においては、図5及び図6に示されるように、まず、電極体31の積層により積層体30を用意する。ここでの積層体30は、上述した積層体30と比較して、シール部材52が、外側部分52rよりもさらに外側に延在する枠状(環状)の切断予定部分(切断代)52cを含んでいる点で相違する。
【0036】
すなわち、この工程においては、金属箔(電極板34)、金属箔の一方面に設けられた正極活物質層(正極36)、及び、金属箔の他方面に設けられた負極活物質層(負極38)を含むバイポーラ電極32と、金属箔の外縁に沿って枠状に設けられ金属箔の外側に延在するシール部材52と、を含む複数の電極体31を、シール部材52同士が重複するように積層する(第1工程)。この積層は、例えば、積層体30よりもわずかに大きな箱状の治具Aに、電極体31を順次に収容することにより行うことができる。
【0037】
続いて、図7の(a)に示されるように、積層体30を積層用の治具Aから取り出すと共に、切断用の別の治具Bに載置する。そして、図7の(b)に示されるように、複数のシール部材52の端部52wを一括して切断する。ここでは、切断予定部分52cと外側部分52rとの境界に沿ってシール部材52の切断を行う。これにより、シール部材52に新たな(図2,3に示された)端部52qが形成される。したがって、ここでは、電極板34は切断されない。すなわち、この工程においては、第1工程の後に、金属箔(電極板34)を切断しないように複数のシール部材52の端部52wを切断することによってシール部材52に新たな端部52qを形成する(第2工程)。
【0038】
この第2工程の前にあっては、シール部材52の端部52wは、各部の寸法誤差や積層時の位置ずれ等に起因して、互いに揃っていない場合がある。一方、この第2工程の後には、シール部材52の端部52wの一括した切断により、互いに揃った端部52qが得られる。なお、この第2工程においては、例えば超音波カッタCを用いてシール部材52の切断を行うことができる。
【0039】
続いて、図8の(a)に示されるように、積層体30を切断用の治具Bから移送し、例えば射出成形用の別の治具(型枠)Dに配置する。そして、図8の(b)に示されるように、シール部材54を形成する。すなわち、第2工程により形成されたシール部材52の新たな端部52qにおいて、シール部材52同士をシールする(第3工程)。ここでは、シール部材52とは別のシール部材(シール材)54を用いてシール部材52同士をシールする。より具体的には、一例として射出成形によって新たな端部52qに別のシール部材54を設けることによってシール部材52同士をシールする。以上により、枠体50及び内部空間Vが形成され、蓄電モジュール12が製造される。
【0040】
以上説明したように、上記の製造方法においては、まず、バイポーラ電極32とその金属箔(電極板34)に設けられたシール部材52とを含む電極体31を、シール部材52同士が重複するように積層する(第1工程)。続いて、金属箔を切断しないようにシール部材52の端部52wを切断する(第2工程)。そして、シール部材52における切断により生じた新たな端部52qにおいて、シール部材52同士をさらにシールする(第3工程)。
【0041】
これにより、電極体31の積層体30の一体化及びシール性の向上が図られる。特に、この製造方法にあっては、上記のとおり、シール部材52の端部52wを切断して新たな端部52qを形成している。このため、シール部材52のさらなるシールに際して、シール部材52の端面52s(新たな端部52qの端面)が揃った状態となっている。よって、シール部材52の端面52sのずれに起因したシール材の充填不良が生じにくい。よって、積層体30のシール性の低下が抑制される。
【0042】
また、この製造方法においては、第3工程において、別のシール部材54を用いてシール部材52同士をシールする。このとき、第3工程においては、射出成形によって新たな端部52qに別のシール部材54を設けることによってシール部材52同士をシールする。このため、シール部材54を構成する材料の充填不良を抑制し、確実にシール性の低下を抑制可能である。
【0043】
また、この製造方法においては、第2工程において、超音波カッタを用いてシール部材52の切断を行う。このため、シール部材52の熱による劣化や剪断力による変形を抑制しつつシール部材52を切断可能である。
【0044】
ここで、蓄電モジュール12においては、積層体30における積層方向D1に沿って互いに隣り合う電極体31のシール部材52の端部52qが揃っている。したがって、上記の理由と同様の理由により、積層体30のシール性の低下が抑制される。なお、蓄電モジュール12においては、互いに隣り合う電極体31において、シール部材52の端部52qを規定する端面52s同士のずれ量DAが、積層方向D1におけるシール部材52の厚さと金属箔(電極板34)の厚さとの合計Tの2倍以下である。このような範囲においてシール部材52の端部52qが揃っていれば、シール材の充填不良を確実に抑制できる。
【0045】
以上の実施形態は、本発明に係る蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールの一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係る蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールは、上記のものに限定されず、各請求項の要旨を変更しない範囲において任意に変形可能である。
【0046】
例えば、蓄電モジュール12の製造方法においては、第1工程と第2工程との間、及び、第2工程と第3工程との間において、積層体30の移送が行われる。このため、当該製造方法は、第1工程と第2工程との間、及び、第2工程と第3工程との間において、シール部材52同士を溶着により仮固定する第4工程をさらに備えてもよい。この場合、各工程に際して積層体30を移送するときに、電極体31の位置ずれを抑制できる。特に、第2工程における切断により、シール部材52の端部52qが揃えられた後には、位置ずれを抑制することがより重要となる。したがって、少なくとも第2工程と第3工程との間において第4工程を実施することが有効である。
【0047】
また、蓄電モジュール12の製造方法においては、第1工程と第2工程との間において、積層用の治具Aと切断用の治具Bとが互いに同一の治具であってもよい。さらに、第2工程と第3工程との間において、切断用の治具Bと射出成形用の治具Dとは、互いに同一の治具であってもよい。そして、これらの態様にあっても、第1工程と第2工程との間、及び、第2工程と第3工程との間において、シール部材52同士を溶着により仮固定する第4工程を実施してもよい。この場合、各工程間において、積層体30を移送させる必要がなく、さらにシール部材52同士が仮固定されることから、電極体31の位置ずれを抑制する効果が大きい。
【0048】
また、上記実施形態においては、第2工程において、シール部材52の切断に超音波カッタを用いる例を挙げた。しかしながら、シール部材52の切断は他の任意の方法により行うことができる。例えば、レーザ光の照射により(レーザ切断により)シール部材52を切断してもよいし、刃具等(例えばシャー裁断機)を用いてシール部材52を切断してもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、第3工程において、射出成形によりシール部材52に対してシール部材54を設ける場合について例示した。しかしながら、例えば熱を用いてシール部材52にシール部材54を設けてもよい。より具体的には、シール部材54を用意すると共に、シール部材54のシール部材52側の表面を熱により溶融させ、その溶融部をシール部材52に接触させてもよい。すなわち、第3工程においては、加熱によって端部52qにシール部材54を接合することによってシール部材52同士をシールしてもよい。シール部材54の加熱には、例えば熱板や熱風等を利用できる。
【0050】
さらには、第3工程においては、別のシール部材54を用いることなく、シール部材52の端部52qを溶融させることによりシール部材52同士をシールしてもよい。この場合には、例えば、シール部材52の端部52qに熱板を押し当てて端部52qを溶融させればよい。また、シール部材52の材料とシール部材54の材料とは、互いに同一でなくてもよい。
【0051】
なお、第2工程による切断後のシール部材52の端部52qが揃っているとは、シール材の充填不良を抑制するという目的から、積層方向D1に沿って互いに隣り合う端部52q同士が少なくとも揃っていればよい。したがって、例えば、積層方向D1に沿って端部52qが徐々に変位していてもよい。この場合、仮に、積層体30における積層方向D1の一方の端部側の端部52qと、積層体30における積層方向D1の他方の端部側の端部52qとが、上記の定義に沿って互いに揃っていない場合も想定し得る。
【符号の説明】
【0052】
12…蓄電モジュール、30…積層体、31…電極体、32…バイポーラ電極、34…電極板(金属箔)、34e…外縁、36…正極(正極活物質層)、38…負極(負極活物質層)、52…シール部材(第1シール部材)、52w…端部、52q…端部(新たな端部)、54…シール部材(第2シール部材)。
図1
図2
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図8