(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成果物(対象物)の色をデザイナーがデザインするとき、成果物が実際にどのように見えるのかを考慮したカラーマッチングを行ない、表示装置で表示される成果物の画像の色味と実際の成果物の色味とを合わせる必要がある。
しかしながら成果物を見るときの環境は様々であり、従来はどのようにしてカラーマッチングを行なえばよいのかが難しく、種々の環境を想定したカラーマッチングは困難であった。
本発明は、成果物の種類や成果物を見るときの環境が異なっても、表示装置で表示される成果物の画像の色味を、実際の成果物の色味に合わせることができる色調整装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、表示装置で画像として表示する対象物を実際に使用される状態で見るときの環境の情報を取得する環境情報取得部と、前記環境の情報と前記対象物の種類の情報とを基に前記表示装置の色温度および輝度を決定する決定部と、を備え
、前記環境の情報は、前記対象物に関する業種の情報を含む色調整装置である。
請求項2に記載の発明は、前記環境の情報は、前記対象物を実際に使用される状態で見るときの照明環境の情報をさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の色調整装置である。
請求項
3に記載の発明は、前記決定部は、前記業種の情報および前記対象物の種類の情報から色温度を決定し、別の表示装置の機種の情報から輝度を決定することを特徴とする請求項
1に記載の色調整装置である。
請求項
4に記載の発明は、前記表示装置に対する入力色信号と表示される色との関係を表すデバイス特性情報を取得する特性情報取得部と、デバイス特性情報と決定した色温度および輝度とを基に、色調整を行なう変換関係を作成する変換関係作成部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の色調整装置である。
請求項
5に記載の発明は、前記決定部は、前記表示装置で表示する画像の表現傾向をさらに決定し、前記変換関係作成部は、デバイス特性情報、色温度および輝度に表現傾向を加えて、前記変換関係を作成することを特徴とする請求項
4に記載の色調整装置である。
請求項
6に記載の発明は、表示装置で画像として表示する対象物を実際に使用される状態で見るときの環境の情報を取得する環境情報取得工程と、前記環境の情報と前記対象物の種類の情報とを基に前記表示装置の色温度および輝度を決定する決定工程と、を備え
、前記環境の情報は、前記対象物に関する業種の情報を含む色処理方法である。
請求項
7に記載の発明は、対象物の画像を表示する表示装置と、前記表示装置で表示される画像に対し色調整を行なう色調整装置と、を備え、前記色調整装置は、前記対象物を実際に使用される状態で見るときの環境の情報を取得する環境情報取得部と、前記環境の情報と前記対象物の種類の情報とを基に前記表示装置の色温度および輝度を決定する決定部と、を備え
、前記環境の情報は、前記対象物に関する業種の情報を含む色処理システムである。
請求項
8に記載の発明は、コンピュータに、表示装置で画像として表示する対象物を実際に使用される状態で見るときの環境の情報を取得する環境情報取得機能と、前記環境の情報と前記対象物の種類の情報とを基に前記表示装置の色温度および輝度を決定する決定機能と、を実現させ
、前記環境の情報は、前記対象物に関する業種の情報を含むプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、対象物の種類や対象物を見るときの環境が異なっても、表示装置で表示される対象物の画像の色味を、実際の対象物の色味に合わせることができる色調整装置を提供することができる。
また、表示装置で表示される画像の色味を合わせるためのパラメータとしてより好ましいものを取得することができる。
請求項2の発明によれば、表示装置で表示される画像の色味がより合いやすくなる。
請求項
3の発明によれば、表示装置で表示される対象物の画像の色味を、別の表示装置で表示される対象物の色味に合わせるときの色温度および輝度をより簡単に決定することができる。
請求項
4の発明によれば、入力色信号の補正を行ない、表示装置で表示される対象物の画像の色味を、実際の対象物の色味に合わせることができる変換関係を作成できる。
請求項
5の発明によれば、画像の表現傾向を含めて変換関係を作成できる。
請求項
6の発明によれば、対象物の種類や対象物を見るときの環境が異なっても、表示装置で表示される対象物の画像の色味を、実際の対象物の色味に合わせることができる色処理方法を提供することができる。
また、表示装置で表示される画像の色味を合わせるためのパラメータとしてより好ましいものを取得することができる。
請求項
7の発明によれば、対象物の種類や対象物を見るときの環境が異なっても、表示装置で表示される対象物の画像の色味を、実際の対象物の色味に合わせることができる色処理システムを提供することができる。
また、表示装置で表示される画像の色味を合わせるためのパラメータとしてより好ましいものを取得することができる。
請求項
8の発明によれば、対象物の種類や対象物を見るときの環境が異なっても、表示装置で表示される対象物の画像の色味を、実際の対象物の色味に合わせることができる機能をコンピュータにより実現できる。
また、表示装置で表示される画像の色味を合わせるためのパラメータとしてより好ましいものを取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
<色処理システム全体の説明>
図1は、本実施の形態が適用される色処理システム1の構成の一例を示した図である。
この色処理システム1は、画像データ(画像情報、入力色信号)の作成等を行うコンピュータ装置10と、この画像データを基に画像を表示する表示装置20とを備える。
【0011】
この色処理システム1において、コンピュータ装置10および表示装置20は、例えば、DVI(Digital Visual Interface)を介して接続されている。なお、DVIに代えて、HDMI(High-Definition Multimedia Interface:登録商標)やDisplayPortを介して接続するようにしてもかまわない。
【0012】
コンピュータ装置10は、所謂汎用のパーソナルコンピュータ(PC)である。そして、コンピュータ装置10は、OS(Operating System)の管理下において、各種アプリケーションソフトウェアを動作させることで、画像データの作成等を行うようになっている。
なおコンピュータ装置10は、入力装置として、例えば、図示しないキーボード装置やマウス装置等を備えることができる。
【0013】
図2は、コンピュータ装置10のハードウェア構成を示した図である。
コンピュータ装置10は、上述したようにパーソナルコンピュータ等により実現される。そして図示するように、コンピュータ装置10は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)11と、記憶手段であるメインメモリ12およびHDD(Hard Disk Drive)13とを備える。ここで、CPU11は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトウェア等の各種プログラムを実行する。また、メインメモリ12は、各種プログラムやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、HDD13は、各種プログラムに対する入力データや各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域である。さらに、コンピュータ装置10は、表示装置20を含む外部との通信を行うための通信インタフェース(以下、「通信I/F」と表記する)14を備えている。
【0014】
表示装置20は、画像データを基に画像を表示する。表示装置20は、例えばPC用の液晶ディスプレイ、液晶テレビあるいはプロジェクタなど、加法混色にて画像を表示する機能を備えたもので構成される。したがって、表示装置20における表示方式は、液晶方式に限定されるものではない。ここで、本実施の形態では、表示装置20が、赤(R)、緑(G)および青(B)の3色を用いて画像の表示を行っているものとする。なお、
図1は、表示装置20としてPC用の液晶ディスプレイを用いた場合を例示していることから、表示装置20内に表示画面21が設けられているが、表示装置20として例えばプロジェクタを用いる場合、表示画面21は、表示装置20の外部に設けられたスクリーン等となる。
【0015】
ここで、
図1には、表示装置20の表示画面21に表示された画像の読み取りに使用される測色器50を、色処理システム1と併せて示している。
【0016】
測色器50は、赤(R)、緑(G)および青(B)の3色にて画像を読み取るセンサ(図示せず)を備えており、表示画面21に表示された画像に形成された画像を、所謂フルカラーにて測定することが可能となっている。また、
図1に示す例において、測色器50およびコンピュータ装置10は、例えば、USBを介して接続され、測定後の色データをコンピュータ装置10に送ることができるようになっている。測色器50は、特に限られるものではなく、例えば、接触式のものやカメラ型のものを使用することができる。
【0017】
この色処理システム1は、例えば、以下のように動作する。
色処理システム1では、コンピュータ装置10において、測色用画像についての画像データ(測色用画像データ)を作成する。そしてこれを表示装置20に送り、測色用画像データに基づく測色用画像を表示装置20の表示画面21に表示させる。
そして表示画面21に表示した測色用画像を測色器50により読み取り、色データを取得する。そしてコンピュータ装置10は、この色データを基に表示装置20に出力する画像データの補正を行なう変換関係を作成する。詳しくは後述するが、この変換関係は、表示装置2の表示画面21で表示される画像に対し色調整を行ない、表示画面21に表示される成果物(対象物)の画像の色味を、実際の成果物の色味に合わせ、色味の再現を行なうためのものである。この場合、表示装置20は、対象物の画像を表示する表示装置の一例として機能する。
【0018】
ここで成果物(対象物)は、表示装置20で色味の再現を行なう対象となるものであり、画面で表示されるものと実物とに大別される。画面で表示されるものは、ディスプレイ等の表示装置に表示する際に使用される画像データが成果物である。具体的には、例えば、CGデータ、Webデザイン、サイネージ(映像装置を利用した広告や案内表示)などである。なおこの表示装置は、表示装置20とは異なるものであり、以下、これを「別の表示装置」と言うことがある。つまりこの場合、CGデータ、Webデザイン、サイネージなどの画像データ(成果物)を別の表示装置で表示する際の画像の色味を再現するために、このとき表示される画像の色味に合わせて表示装置20で表示される画像の色味を調整する。よってコンピュータ装置10は、表示装置20で表示される画像に対し色調整を行なう色調整装置として機能する。
【0019】
またプリンタ等で用紙等の記録媒体に画像を出力し印刷した場合は、この印刷物(実物)が成果物である。さらに3Dプリンタで物を造形した場合は、この造形物(実物)が成果物である。そして表示装置20の表示画面21に表示する画像が自動車の画像であった場合は、自動車(実物)が成果物である。
【0020】
以下、これを実現するコンピュータ装置10について、説明を行なう。
【0021】
<コンピュータ装置10の説明>
図3は、本実施の形態のコンピュータ装置10の機能構成例を示したブロック図である。
図示するコンピュータ装置10は、測色用画像選択部110と、画像データ送信部120と、色データ取得部130と、特性情報取得部140と、前提情報取得部150と、決定部160と、変換関係作成部170と、色補正部180とを備える。
【0022】
測色用画像選択部110は、上述した測色用画像を選択する。測色用画像は、例えば、色相、彩度などの色特性がそれぞれ異なる矩形状の画像である。
【0023】
画像データ送信部120は、表示装置20の色調整を行うために、測色用画像選択部110が選択した測色用画像の画像データである測色用画像データを表示装置20に向けて出力する。この測色用画像データは、RGB色空間におけるR、G、Bの色信号であるRGBデータとして出力される。本実施の形態では、RGBデータは、R、G、Bの各色値毎に8bit(0〜255の256階調)で表される。
【0024】
表示装置20では、画像データ送信部120により送信された測色用画像データを基に表示画面21に測色用画像が順次表示される。表示画面21に表示された測色用画像は、測色器50により色が読み取られる。
【0025】
そして測色器50は、測色用画像を読み取ることで取得した色情報(色データ)をコンピュータ装置10に対し送信する。このとき測色器50が出力する色データは、例えば、XYZ色空間におけるX、Y、Zの各色値である。また色データは、測色用画像を読み取ることで取得した色データを他の色空間の色データ(例えば、L
*a
*b
*色空間のL
*a
*b
*データ)に変換したものでもよい。
【0026】
色データ取得部130は、測色器50により送信された色データを取得する。
【0027】
特性情報取得部140は、表示装置20に対する入力色信号と表示される色との関係を表すデバイス特性情報を取得する。つまりこの場合、入力色信号である測色用画像データと表示される色である色データとの関係がデバイス特性情報となる。よってデバイス特性情報は、RGBデータとXYZデータとの組((R、G、B)−(X、Y、Z))から構成される。
【0028】
前提情報取得部150は、環境情報取得部の一例であり、表示装置20で画像として表示する成果物(対象物)を実際に使用する状態で見るときの環境の情報を取得する。また前提情報取得部150は、環境の情報の他に成果物の種類の情報を取得する。以後、環境の情報および成果物の種類の情報を合わせて前提情報と言うことがある。前提情報については、後述する。
【0029】
決定部160は、成果物の色を表示装置20で再現する色調整を行なうために、環境の情報と対象物の種類の情報とを基に表示装置20で表示する画像の色温度および輝度を決定する。環境の情報と対象物の種類の情報とを基に色温度および輝度を決定する方法については後述する。
【0030】
変換関係作成部170は、デバイス特性情報と決定した色温度および輝度とを基に、色調整を行なう変換関係を作成する。また詳しくは後述するが、決定部160が、表示装置20で表示する画像の色温度および輝度に加え、表現傾向(インテント)をさらに決定したときは、変換関係作成部170は、デバイス特性情報、色温度および輝度に表現傾向(インテント)を加えて、変換関係を作成する。
【0031】
色調整を行なう変換関係は、プロファイルとも呼ばれ、例えば、3次元LUT(Look up Table)として作成することができる。つまり補正前のRGBデータを、(R
a、G
a、B
a)とし、補正後のRGBデータを、(R
b、G
b、B
b)とすると、(R
a、G
a、B
a)→(R
b、G
b、B
b)とするLUTである。このLUTを作成する方法については、後述する。ただし変換関係は、これに限られるものではない。例えば、変換関係は、R
a→R
b、G
a→G
b、B
a→B
bとする1次元LUTであってもよい。またR
a→R
b、G
a→G
b、B
a→B
bの補正をガンマ変換で行なってもよい。
【0032】
色補正部180は、変換関係作成部170が作成した変換関係を使用して、表示装置20に出力する画像データの補正を行なう。そして補正後の画像データを表示装置20に送信する。
【0033】
<前提情報の説明>
次に前提情報取得部150が取得する前提情報について説明する。
前提情報は、成果物の種類の情報および成果物を見るときの環境の情報を含む。
ここで成果物(対象物)の種類の情報は、成果物が何であるかの情報であり、上述したように表示装置20で色味の再現を行なう対象となるものである。つまりディスプレイ等の表示装置に表示する際に使用される画像データ(CGデータ、Webデザイン、サイネージなど)、印刷物などが成果物となる。
【0034】
また環境の情報は、例えば、成果物(対象物)に関する業種の情報を含む。また環境の情報は、例えば、成果物(対象物)を画像として出力する機種の情報を含む。またこの環境の情報は、成果物(対象物)を実際に使用される状態で見るときの照明環境の情報を含んでいてもよい。
業種の情報は、成果物(対象物)が実際に使用される業種の情報であり、例えば、印刷会社、商品デザイナー、広告代理店などの情報である。
機種の情報は、成果物を表示するディスプレイ等の表示装置やプリンタなどの機器の個別情報である。機種の情報には、例えば、機器の種類(ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタなど)が含まれる。
【0035】
また機器の種類がディスプレイ、プロジェクタなどの表示装置(別の表示装置)であったときは、例えば、メーカー名、型番、画面サイズが含まれる。つまりこの場合、機種の情報は、成果物である画像データ(CGデータ、Webデザイン、サイネージなど)を画像として表示する別の表示装置の機種の情報を含む。
【0036】
さらに機器の種類がプリンタであったときは、機種の情報には、例えば、メーカー名、型番、印刷方式(電子写真方式、インクジェット方式など)、印刷する用紙の種類などが含まれる。
また照明環境の情報は、例えば、屋外、屋内、照明の種類、照明の色温度、照明の輝度、紫外光の有無などの情報である。
【0037】
この前提情報は、例えば、ユーザがコンピュータ装置10に入力することで行なう。
図4(a)〜(b)は、前提情報をユーザが入力するときに表示装置20の表示画面21に表示される画面を示した図である。
このうち
図4(a)は、業種および成果物の種類を入力する際の画面を示している。これらはプルダウンメニューの中から選択することで入力することができる。
また
図4(b)は、機種の情報を入力する際の画面を示している。このうち機器の種類はプルダウンメニューの中から選択することで入力することができる。またメーカー名、型番、画面サイズについても入力を行なうことができる。
【0038】
<前提情報を基に色温度および輝度を決定する方法の説明>
次に決定部160が前提情報を基に色温度および輝度を決定する方法について説明する。
図5(a)〜(b)は、前提情報を基に色温度および輝度を決定する方法を説明した図である。
本実施の形態では、
図5(a)に示すように、決定部160は、前提情報のうち成果物に関する業種の情報および成果物(対象物)の種類の情報から色温度を決定する。例えば、成果物を使用する業種が印刷会社であり、成果物の種類がWebデザインだった場合は、表示装置20で表示する画像の色温度を5500Kとする。
また本実施の形態では、
図5(b)に示すように、決定部160は、前提情報のうち別の表示装置の機種の情報から輝度を決定する。例えば、機器の種類がディスプレイであり、画面サイズが25インチ未満だったときは、表示装置20で表示する画像の輝度を100とする。
【0039】
またこのとき決定部160は、表示装置20で表示する画像の表現傾向(インテント)をさらに決定してもよい。
図6(a)は、表示装置20で表示する画像のインテントを決定する方法を説明した図である。
本実施の形態では、業種の情報および成果物の種類の情報を使用してインテントを決定する。ここでは、Rel、Per、Satの3種類が決定結果となる。この内容として、Relが、「Relative Colorimetric(測色的な色一致を重視)」の意味として用意している。またPerは、「Perceptual(階調的な色一致を重視)」、Satは、「Saturation(彩やかさを重視)」の意味として用意している。
【0040】
また
図6(b)は、プリンタで表示する画像のインテントを決定する方法を説明した図である。
本実施の形態では、機種の情報である印刷方式(電子写真方式、インクジェット方式)および成果物の種類の情報を使用してインテントを決定する。ここでも、Rel、Per、Satの3種類が決定結果となる。
【0041】
図5〜
図6で示す関係は、ファイルとして保存しておいてもよく、変換関係作成部170が変換関係を作成するまでメモリ上に記憶していてもよい。
【0042】
図7は、
図5〜
図6で示す関係をファイルとして保存するときのデータ構造を示した図である。
図示するデータ構造は、Header(ヘッダ)情報、機種の情報および色変換情報の3つよりなる。
このうち機種の情報は、上述したように機器の個別情報であり、機器の種類、メーカー名、型番、画面サイズ、印刷方式、印刷する用紙の種類などが含まれる。この場合、機種の情報は、複数の機種の情報が含まれる。
またHeader情報は、機器に依存しない情報からなり、複数の機種に共通の情報である。例えば、上述した業種の情報や照明環境の情報が含まれる。
さらに色変換情報は、決定部160が決定した色温度、輝度およびインテントの情報が機器毎に含まれる。
【0043】
<変換関係の作成方法の説明>
次に変換関係作成部170が、変換関係を作成する方法について説明する。
変換関係作成部170は、決定部160が決定した色温度におけるX、Y、Zの各値(ここではXs、Ys、Zsと表記する)を設定する。具体的には、色温度によりXs値、Zs値は、一義的に定まり色温度が6500Kだったときは、例えば、(Xs、Zs)=(95、85)となる。またYs(輝度)については、決定部160が決定した輝度とする。ここでは、Ys=100(100cd/m
2)だったとする。
【0044】
次に変換関係作成部170は、特性情報取得部140が取得したデバイス特性情報から、線形回帰モデル、重回帰分析、ニューロモデル等の予測計算を使用し、Xs、Ys、Zsの各値をR、G、Bの各値に変換する。つまりXs、Ys、Zsの各値をデバイス特性情報を用いて変換された後のR、G、Bの各値は、決定部160が決定した色温度で表示装置20にて白色画像を表示したときに入力色信号となる。本実施の形態では、変換された後のR、G、BをそれぞれRs、Gs、Bsと表記することにする。
なおここでは、(Xs、Ys、Zs)=(95、100、85)をデバイス特性情報を用いて変換された後の値が、(Rs、Gs、Bs)=(170、159、143)であったとする。
【0045】
そして変換関係作成部170は、Rs、Gs、Bsを基に、補正前のRGBデータである(R
a、G
a、B
a)の補正を行うための補正RGBLUTを作成する。この補正RGBLUTは、各R
a、G
a、B
aのそれぞれを補正RGB値(Rs、Gs、Bs)を最大値として補正するための1次元LUTである。
【0046】
図8は、(Rs、Gs、Bs)=(170、159、143)であったときの補正RGBLUTを示した図である。
図示する1次元LUTは、赤色(R)信号については、0−170を直線で結ぶものとしている。同様に緑色(G)信号については、0−159を直線で結ぶものとし、青色(B)信号については、0−143を直線で結ぶものとしている。なお直線で結ぶ場合に限られるものではなく、2次曲線、3次曲線等の曲線で結んでもよい。
そしてこのように設定された1次元LUTにより、最大値を255とする補正前のRGBデータである(R
a、G
a、B
a)は、(Rs、Gs、Bs)=(170、159、143)を最大値とする補正後のRGBデータである(R
b、G
b、B
b)に変換することができる。
【0047】
図9は、変換関係を作成する際に、表示装置20の表示画面21に表示される画面を示した図である。
図中、ターゲットファイルは、
図8で説明したファイルを意味し、上述した環境の情報が表示される。ここでは、機器の種類がディスプレイであり、さらにメーカー名、画面サイズが表示されている。また変換関係であるプロファイルのファイル名を出力プロファイル名から入力することができる。そしてこの状態から「次へ」を選択すると、変換関係(プロファイル)が作成される。
【0048】
<コンピュータ装置10の動作の説明>
図10は、本実施の形態のコンピュータ装置10の動作について説明したフローチャートである。
まず測色用画像選択部110が測色用画像を選択する(ステップ101:測色用画像選択工程)。
【0049】
次に画像データ送信部120が、測色用画像選択部110が選択した測色用画像の画像データである測色用画像データを表示装置20に向けて出力する(ステップ102:測色用画像データ出力工程)。測色用画像データは、RGBデータである。これにより表示装置20では、表示画面21に測色用画像が表示される。そしてこの画像は、測色器50により色が読み取られ、色データとしてコンピュータ装置10に送られる。
【0050】
そして色データ取得部130が、測色器50により送信された色データを取得する(ステップ103:色データ取得工程)。取得した色データはXYZデータである。
【0051】
次に特性情報取得部140が、測色用画像データと色データとの関係であるデバイス特性情報を作成する(ステップ104:特性情報取得工程)。よってデバイス特性情報は、RGBデータとXYZデータとの組((R、G、B)−(X、Y、Z))から構成される。
【0052】
そして前提情報取得部150が、表示装置20で画像として表示する成果物(対象物)を実際に使用する状態で見るときの環境の情報を前提情報として取得する。また前提情報取得部150は、環境の情報の他に成果物の種類の情報を前提情報として取得する。(ステップ105:環境情報取得工程)。前提情報は、
図4で説明したような方法でユーザが入力することができる。
【0053】
次に決定部160が、前提情報に含まれる成果物の種類の情報により、成果物が画面で表示されるもの(Webデザイン、サイネージなどの画像データ)であるか否かの判断を行なう(ステップ106:判断工程)。
【0054】
その結果、成果物が画面で表示されるものである場合(ステップ106でYes)、決定部160は、
図5(a)〜(b)に示したように、成果物の種類(Webデザイン、サイネージなど)の情報と、環境の情報として業種の情報および機種の情報とを使用して表示装置20で表示される画像の色温度および輝度を決定する(ステップ107:決定工程)。つまり決定部160は、成果物に関する業種の情報および成果物の種類の情報から色温度を決定する。また決定部160は、機種の情報から輝度を決定する。またこの際に、決定部160は、色温度および輝度を決定するのに照明環境の情報を加えてもよい。さらに決定部160は、
図6で示したような方法でインテントを決定してもよい。
【0055】
対して成果物が画面で表示されるものでない場合(成果物が実物である場合)(ステップ106でNo)、決定部160は、
図5(a)に示したように、成果物の種類(印刷物など)の情報を使用して表示装置20で表示される画像の色温度を決定する。また表示装置20で表示される画像の輝度は、例えば、環境の情報である照明環境の情報および成果物の種類の情報から以下の計算式で算出する(ステップ108:決定工程)。
【0056】
L=ρ×E/π (輝度:L、照度:E、物体の反射率:ρ)
【0057】
物体の反射率ρについては、成果物の種類の情報と紐付けた情報をデータベースに保持、または測定の結果からデータベースを更新してもよい。
【0058】
次に変換関係作成部170が、デバイス特性情報と、決定部160が決定した色温度および輝度とを基に、色調整を行なう変換関係(プロファイル)を作成する(ステップ109:変換関係作成工程)。また決定部160が、表現傾向(インテント)をさらに決定したときは、表現傾向(インテント)を加えて、変換関係を作成する。
【0059】
色補正部180では、この変換関係(プロファイル)を使用して、表示装置20に出力する画像データ(RGBデータ)の補正を行なう(ステップ110:画像データ補正工程)。
【0060】
上述したように、従来はどのようにしてカラーマッチングを行なえばよいのかが難しく、種々の環境を想定したカラーマッチングは困難であった。例えば、印刷業界では、成果物(対象物)である印刷物の色味に表示装置20で表示される画像の色味を近づけるのが一般的である。一方、Web業界では、成果物であるWebデザインをユーザ自身の表示装置(別の表示装置)で見るときの色味に近づけるのが一般的である。よって業界や商習慣によりカラーマッチングの方法は異なる。さらに成果物を机上ディスプレイ、大型ディスプレイ、プロジェクタなど(別の表示装置)で表示する場合、好ましい輝度はそれぞれ異なる。
本実施の形態では、成果物を見るときの状態が、成果物の種類の情報および成果物を実際に見るときの環境の情報によりほぼ決まることを利用し、成果物を見るときの状態を予測する。そしてこれから表示装置20で表示される画像の色温度と輝度を決定する。例えば、業種の情報および成果物の種類の情報から色温度を決定し、机上ディスプレイ、大型ディスプレイ、プロジェクタなど(別の表示装置)の機種の情報から輝度を決定する。その結果、成果物の種類や成果物を見るときの環境が異なっても、表示装置20で表示される成果物の画像の色味を、実際の成果物の色味に合わせることができる。そして成果物の色をデザイナーがデザインするとき、成果物が実際にどのように見えるのかを把握することができる。
【0061】
なお以上説明した色処理方法は、表示装置20で画像として表示する成果物(対象物)を実際に使用される状態で見るときの環境の情報を取得する環境情報取得工程と、環境の情報と成果物(対象物)の種類の情報とを基に表示装置20の色温度および輝度を決定する決定工程と、を備える色処理方法として捉えることもできる。
【0062】
また上述した例では、実際の表示装置20の表示画面21に画像を表示し、この画像を測色器50で測定することで色データを取得していたが、これに限られるものではない。
【0063】
<プログラムの説明>
ここで以上説明を行った本実施の形態におけるコンピュータ装置10が行なう処理は、例えば、アプリケーションソフトウェア等のプログラムとして用意される。
【0064】
よって本実施の形態でコンピュータ装置10が行なう処理は、コンピュータに、表示装置20で画像として表示する成果物(対象物)を実際に使用される状態で見るときの環境の情報を取得する環境情報取得機能と、環境の情報と成果物(対象物)の種類の情報とを基に表示装置20の色温度および輝度を決定する決定機能と、を実現させるためのプログラム、として捉えることができる。
【0065】
なお、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0066】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。