特許第6907758号(P6907758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907758
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20210708BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B60C11/13 B
   B60C11/03 100A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-126527(P2017-126527)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-6349(P2019-6349A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】奥野 敬太
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−005950(JP,A)
【文献】 特開2016−068635(JP,A)
【文献】 特開平05−000606(JP,A)
【文献】 特開2015−116977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00− 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、トレッド端とタイヤ赤道との間をタイヤ周方向に連続して延びる主溝と、前記主溝に前記トレッド端側で隣接する第1陸部とが設けられており、
前記主溝は、溝横断面において、溝底と、タイヤ半径方向外側に向かって前記トレッド端側に傾斜する外側溝壁と、タイヤ半径方向外側に向かってタイヤ赤道側に傾斜する内側溝壁とを有し、
前記溝底は、最もタイヤ赤道側に寄った第1位置と、最も前記トレッド端側に寄った第2位置とを交互に含むようにタイヤ周方向にジグザグ状に延びており、
前記第2位置での溝横断面における前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2bは、前記第1位置での溝横断面における前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1aよりも大きく、
前記主溝は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びる一対の溝縁を有している、
タイヤ。
【請求項2】
前記第2位置での前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2bと、前記第1位置での前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1aとの比θ2b/θ1aは、1.2〜6.0である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第2位置での前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2aと、前記第2位置での前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2bとの比θ2a/θ2bは、1.5〜6.0である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1位置での前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1bと、前記第1位置での前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1aとの比θ1b/θ1aは、1.2〜6.0である請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記角度θ2bは、5〜30°である請求項1乃至4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部には、前記第1陸部に隣接する第2陸部が区分され、
前記第1陸部の踏面のタイヤ軸方向の最大の幅W1と、前記第2陸部の踏面のタイヤ軸方向の最大の幅W2との比W1/W2は、1.0〜1.3である請求項1乃至5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1位置での前記溝底と前記第2位置での前記溝底との間のタイヤ軸方向の距離は、前記主溝の溝幅の0.15〜0.40倍である請求項1乃至6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2位置において、前記溝底は、前記主溝の一対の溝縁間のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記トレッド端側に配されている請求項1乃至7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記溝底と前記中心位置とのタイヤ軸方向の距離は、前記主溝の溝幅の0.10〜0.20倍である請求項8記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部に主溝が設けられたタイヤに関し、詳しくは、主溝の溝底の損傷及び陸部の偏摩耗を抑制し得るタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、トレッド部に、タイヤ周方向に連続して延びる主溝が設けられたタイヤが提案されている。この主溝は、溝縁がタイヤ周方向に沿って直線状で延びる一方、溝底は、タイヤ周方向にジグザグ状に延びている。タイヤ走行時、主溝の溝底には、通常、大きな歪が作用するが、上述のような主溝は、溝底に作用する歪を分散させ、ひいては、溝底でのクラックの発生を防止するのに役立つ。
【0003】
ところで、主溝の溝底をジグザグ状にするためには、主溝の幅をそれなりに大きくする必要がある。このため、前記主溝に隣接する陸部の幅が相対的に小さくなり、前記陸部に偏摩耗が生じるおそれがあった。特に、前記主溝が、トレッド端とタイヤ赤道との間に設けられた場合、主溝のトレッド端側に隣接する第1陸部(走行時に、路面との間で滑りが生じやすい)には、肩落ち摩耗などの偏摩耗が生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−024705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、主溝の溝底の歪及び陸部の偏摩耗を抑制し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、トレッド端とタイヤ赤道との間をタイヤ周方向に連続して延びる主溝と、前記主溝に前記トレッド端側で隣接する第1陸部とが設けられており、前記主溝は、溝横断面において、溝底と、タイヤ半径方向外側に向かって前記トレッド端側に傾斜する外側溝壁と、タイヤ半径方向外側に向かってタイヤ赤道側に傾斜する内側溝壁とを有し、前記溝底は、最もタイヤ赤道側に寄った第1位置と、最も前記トレッド端側に寄った第2位置とを交互に含むようにタイヤ周方向にジグザグ状に延びており、前記第2位置での溝横断面における前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2bは、前記第1位置での溝横断面における前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1aよりも大きい。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第2位置での前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2bと、前記第1位置での前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1aとの比θ2b/θ1aは、1.2〜6.0であるのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第2位置での前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2aと、前記第2位置での前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2bとの比θ2a/θ2bは、1.5〜6.0であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第1位置での前記外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1bと、前記第1位置での前記内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1aとの比θ1b/θ1aは、1.2〜6.0であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記角度θ2bは、5〜30°であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部には、前記第1陸部に隣接する第2陸部が区分され、前記第1陸部の踏面のタイヤ軸方向の最大の幅W1と、前記第2陸部の踏面のタイヤ軸方向の最大の幅W2との比W1/W2は、1.0〜1.3であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記第1位置での前記溝底と前記第2位置での前記溝底との間のタイヤ軸方向の距離は、前記主溝の溝幅の0.15〜0.40倍であるのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記主溝は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びる一対の溝縁を有しているのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤの前記第2位置において、前記溝底は、前記主溝の一対の溝縁間のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記トレッド端側に配されているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記溝底と前記中心位置とのタイヤ軸方向の距離は、前記主溝の溝幅の0.10〜0.20倍であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤのトレッド部に設けられた主溝は、溝横断面において、溝底と、タイヤ半径方向外側に向かって前記トレッド端側に傾斜する外側溝壁と、タイヤ半径方向外側に向かってタイヤ赤道側に傾斜する内側溝壁とを有している。前記溝底は、最もタイヤ赤道側に寄った第1位置と、最も前記トレッド端側に寄った第2位置とを交互に含むようにタイヤ周方向にジグザグ状に延びている。このような主溝は、タイヤ走行時に溝底に作用する歪を分散させることができ、ひいては溝底にクラック等の損傷が生じるのを防ぐことができる。
【0017】
また、上記主溝は、第2位置での溝横断面における外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2bは、第1位置での溝横断面における内側溝壁のトレッド法線に対する角度θ1aよりも大きい。一般に、第2位置では、前記主溝の前記トレッド端側で隣接する第1陸部の剛性が小さくなりやすいが、この位置での外側溝壁のトレッド法線に対する角度θ2bを相対的に大きくすることで、第1陸部の剛性を高め、前記第1陸部の偏摩耗を抑制することができる。
【0018】
以上のように、本発明のタイヤは、主溝の溝底の損傷及び陸部の偏摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態のタイヤのトレッド部の横断面図である。
図2】ショルダー主溝の拡大断面図である。
図3】ショルダー主溝の拡大平面図である。
図4】(a)は、図3のB−B線断面図であり、(b)は、図3のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の横断面図が示されている。なお、図1は、タイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、トラック・バス等の重荷重用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。但し、このような態様に限定されるものではなく、本発明のタイヤ1は、例えば、乗用車用として用いられても良い。
【0021】
「正規状態」とは、タイヤが正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤの各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
図1に示されるように、トレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3が設けられている。主溝3の少なくとも1本は、トレッド端Teとタイヤ赤道Cとの間に設けられている。
【0025】
トレッド端Teとは、前記正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0026】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0027】
本実施形態の主溝3は、例えば、クラウン主溝4及びショルダー主溝5を含んでいる。クラウン主溝4は、タイヤ赤道Cのタイヤ軸方向の各側に1本ずつ設けられている。ショルダー主溝5は、各クラウン主溝4のタイヤ軸方向外側に設けられている。
【0028】
各主溝3の溝幅W3は、例えば、トレッド幅TWの4.0〜8.0%であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態における一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離である。各主溝3の溝深さは、重荷重用空気入りタイヤの場合、例えば、15〜25mmである。望ましい態様として、本実施形態の各主溝3の溝深さは、例えば、20〜25mmである。このような主溝3は、優れたウェット性能を発揮し得る。
【0029】
上述の主溝3が設けられることにより、本実施形態のトレッド部2には、第1陸部6、第2陸部7及び第3陸部8が区分されている。第1陸部6は、ショルダー主溝5にトレッド端Te側で隣接している。第2陸部7は、ショルダー主溝5とクラウン主溝4との間に区分されている。第3陸部8は、2本のクラウン主溝4の間に区分されている。
【0030】
図2には、主溝3の態様を示す図として、ショルダー主溝5の拡大断面図が示されている。図3には、ショルダー主溝5の拡大平面図が示されている。図2は、図3のA−A線断面図に相当する。
【0031】
図2及び図3に示されるように、主溝3は、溝底部分9と、内側溝壁11と、外側溝壁12とを有している。
【0032】
図2に示されるように、本実施形態の溝底部分9は、例えば、溝横断面において、タイヤ半径方向内側に向かって円弧状に凹んだ底面を有している。底面の曲率半径は、例えば、1.0〜4.0mmであるのが望ましい。本実施形態では、溝底部分9の最も深い位置が、溝底10とされる。本発明の他の態様では、溝底部分9は、一定の深さでタイヤ軸方向にのびる平坦な底面を含んでも良い。この場合、溝底は、例えば、前記底面のタイヤ軸方向の中心位置とされる。
【0033】
内側溝壁11は、溝底10よりもタイヤ赤道C側(図2では右側である。)に配され、タイヤ半径方向外側に向かってタイヤ赤道C側に傾斜している。外側溝壁12は、溝底10よりもトレッド端Te側(図2では左側である。)に配され、タイヤ半径方向外側に向かってトレッド端Te側に傾斜している。本実施形態の内側溝壁11及び外側溝壁12は、それぞれ、溝横断面において直線状にのびている。
【0034】
図3では、発明が理解され易いように、内側溝壁11及び外側溝壁12はそれぞれ着色されている。また、溝底部分9と内側溝壁11との境界、及び、溝底部分9と外側溝壁12との境界が2点鎖線で示されている。また、溝底10が1点鎖線で示されている。図3に示されるように、溝底10は、最もタイヤ赤道C側に寄った第1位置13と、最もトレッド端Te側に寄った第2位置14とを交互に含むようにタイヤ周方向にジグザグ状に延びている。このような主溝3は、タイヤ走行時に溝底に作用する歪を分散させることができ、ひいては溝底10にクラック等の損傷が生じるのを防ぐことができる。
【0035】
望ましい態様として、本実施形態の主溝3は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びる一対の溝縁3eを有している。これにより、陸部の偏摩耗が抑制される。
【0036】
図2及び図3に示されるように、本実施形態の内側溝壁11及び外側溝壁12は、それぞれ、トレッド法線に対する角度を周期的に増減させながらタイヤ周方向に延びている。本実施形態の内側溝壁11のトレッド法線に対する角度θ1は、例えば、3〜35°の範囲で増減しているのが望ましい。外側溝壁12のトレッド法線に対する角度θ2は、例えば、5〜40°の範囲で増減しているのが望ましい。
【0037】
図4(a)には、図3の主溝3の第1位置13でのB−B線断面図が示されている。図4(b)には、図3の主溝3の第2位置14でのC−C線断面図が示されている。図4(a)及び(b)に示されるように、第2位置14での溝横断面における外側溝壁12のトレッド法線に対する角度θ2bは、第1位置13での溝横断面における前記内側溝壁11のトレッド法線に対する角度θ1aよりも大きい。一般に、第2位置14では、主溝3のトレッド端Te側で隣接する第1陸部6の剛性が小さくなりやすいが、この位置での外側溝壁12のトレッド法線に対する角度θ2bを相対的に大きくすることで、第1陸部6の剛性を高め、第1陸部6の偏摩耗を抑制することができる。
【0038】
前記角度θ2bと前記角度θ1aとの比θ2b/θ1aは、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.4以上であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。これにより、主溝3の両側に配された陸部が均一に摩耗し易くなる。
【0039】
前記角度θ2bは、例えば、5〜30°であり、より好ましくは5〜20°である。角度θ1aは、例えば、3〜25°であり、好ましくは3〜15°である。
【0040】
第2位置14での内側溝壁11のトレッド法線に対する角度θ2aと、前記角度θ2bとの比θ2a/θ2bは、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは、4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。これにより、第2位置14において、主溝3の両側の陸部の偏摩耗がさらに抑制される。
【0041】
第1位置13での外側溝壁12のトレッド法線に対する角度θ1bと、前記角度θ1aとの比θ1b/θ1aは、好ましくは1.2以上、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは4.0以上であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.5以下である。これにより、第1位置13において、主溝3の両側の陸部の偏摩耗がさらに抑制される。
【0042】
第1位置13において、溝底10は、主溝3の一対の溝縁3e間のタイヤ軸方向の中心位置3cよりもタイヤ赤道C側に配されているのが望ましい。同様に、第2位置14において、溝底10は、主溝3の一対の溝縁3e間のタイヤ軸方向の中心位置3cよりもトレッド端Te側に配されているのが望ましい。これにより、溝底に作用する歪みを十分に分散させることができる。
【0043】
第2位置14において、溝底10と前記中心位置3cとのタイヤ軸方向の距離L1は、主溝3の溝幅W3の0.10〜0.20倍であるのが望ましい。これにより、ウェット性能を維持しつつ、上述の効果を得ることができる。
【0044】
図3に示されるように、ウェット性能を維持しつつ、溝底10のクラックを抑制するために、第1位置13での溝底10と第2位置14での溝底10との間のタイヤ軸方向の距離L2は、好ましくは主溝3の溝幅W3の0.15倍以上、より好ましくは0.20倍以上であり、好ましくは0.40倍以下、より好ましくは0.35倍以下である。
【0045】
図1に示されるように、各陸部の偏摩耗を抑制するために、第1陸部6の踏面のタイヤ軸方向の最大の幅W1と、第2陸部7の踏面のタイヤ軸方向の最大の幅W2との比W1/W2は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0046】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0047】
上述した基本構造を有するサイズ275/70R22.5の重荷重用空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、前記角度θ2bと前記角度θ1aとが等しいタイヤが試作された。各テストタイヤの耐偏摩耗性、溝底の耐久性及びウェット性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:8.25×22.5
タイヤ内圧:720kPa
【0048】
<耐偏摩耗性>
下記のテスト車両で一定距離走行したときの第1陸部と第2陸部との摩耗量の差が測定された。結果は、比較例を100とする指数で表されている。数値が小さい程、第1陸部と第2陸部とが均一に摩耗し、優れた耐偏摩耗性を有していることを示す。
テスト車両:10tトラック(2−D車)
積載状態:荷台前方に半積載状態
タイヤ装着位置:全輪
【0049】
<溝底の耐久性>
テストタイヤをドラム試験機上で下記の条件で連続走行させ、主溝の溝底にクラックが発生するまでの走行距離が測定された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きい程、溝底の耐久性が優れていることを示す。
速度:80km/h
荷重:33.83kN
【0050】
<ウェット性能>
インサイドドラム試験機が用いられ、各テストタイヤが下記の条件で水深5.0mmのドラム面上を走行したときのハイドロプレーニング現象の発生速度が測定された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きい程、前記発生速度が高く、ウェット性能が優れていることを示す。
スリップ角:1.0°
縦荷重:4.2kN
テストの結果が表1に示される。
【0051】
【表1】
【0052】
テストの結果、実施例のタイヤは、主溝の溝底の歪及び陸部の偏摩耗を抑制していることが確認できた。また、実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されていることも確認できた。
【符号の説明】
【0053】
2 トレッド部
3 主溝
6 第1陸部
10 溝底
11 内側溝壁
12 外側溝壁
13 第1位置
14 第2位置
C タイヤ赤道
Te トレッド端
図1
図2
図3
図4