(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
このような移動型放射線撮影装置の一種である移動型X線撮影装置は、回診用X線撮影装置とも呼称され、病室間を移動してX線撮影を行うものである。この移動型X線撮影装置は、前輪および後輪を有する本体と、本体に立設された支柱と、X線管およびコリメータよりなるX線照射部を支持した状態で前記支柱に沿って昇降するアームと、X線照射部から照射され被検者を通過したX線を検出するX線検出器と、本体内部に配設されたバッテリーと、を備えている。
【0003】
このような移動型X線撮影装置は、病室においてX線曝射を行うという性質上、オペレータであるX線技師の被曝低減のため、X線技師は移動型X線撮影装置の本体からできるだけ離れた位置でX線の曝射操作を行うことが好ましい。このため、従来においては、X線の曝射開始スイッチと本体とを比較的長いケーブルで接続し、X線技師は移動型X線撮影装置の本体からできるだけ離れた位置において、X線の曝射操作を実行している(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ケーブルの取り回し操作の容易性や、より離隔した位置からX線の曝射操作を可能とするため、X線の曝射開始スイッチと本体に配設された受信部とを、無線により接続する移動型X線撮影装置が提案されている。この受信部は、曝射開始スイッチを収納する収納部としても機能する。
【0006】
このような無線通信機能を有する曝射開始機構を備えた移動型X線撮影装置においては、曝射開始スイッチは内部にバッテリーを内蔵し、また、受信部は本体に配設されたバッテリーに接続され、それらのバッテリーから給電を受けて、互いの通信動作を実行している。
【0007】
ここで、受信部は、一般的に、専用のCPUにより各種の機能を実現するとともに、インジケータ等の表示機能も備えている。また、この受信部は曝射開始スイッチを収納するための収納部としても機能する。そして、この
収納部として機能する受信部は、曝射開始スイッチの紛失等を防止するため、ソレノイド等の作用により曝射開始スイッチを受信部に固定する機能を備えることが好ましい。
【0008】
このため、受信部は、本体内部のバッテリーから常に給電を受け、電力を消費することになる。バッテリーの機能によりX線撮影を実行する移動型X線撮影装置においては、常にその消費電力が問題となり、受信部が消費する電力により装置の使用可能時間が短時間となることをできる限り回避することが要請されている。
【0009】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、放射線の曝射開始スイッチに対して無線により接続される受信部を使用する場合においても、受信部による消費電力を削減することが可能な移動型放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、放射線照射部と、車輪を有する本体と、前記放射線照射部を支持するための前記本体に配設された支持機構と、前記本体の内部に配設されたバッテリーと、を備えた移動型放射線撮影装置において、前記本体に配設され前記バッテリーより給電を受ける受信部に対して無線により接続され、前記放射線照射部からの放射線の曝射を開始するときに操作される曝射開始スイッチと、前記本体の状態を認識するための状態認識部と、前記状態認識部により認識した前記本体の状態に応じて、前記バッテリーから前記受信部への給電状態を切り替える給電制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記受信部は、前記曝射開始スイッチを収納するための収納部と、ソレノイドの駆動により前記曝射開始スイッチを前記収納部に固定する固定位置と前記曝射開始スイッチを前記収納部から取り出し可能とする解放位置との間を移動可能な固定部材とを備え、前記ソレノイドは、給電状態で前記固定部材を前記解放位置に移動させ、非給電状態で前記固定部材を前記固定位置に移動させる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記給電制御部は、装置がスタンバイ状態となったとき、前記車輪の回転時、および、前記バッテリーへの充電時に、前記バッテリーから前記受信部への給電を停止する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、放射線の曝射開始スイッチに対して無線により接続される受信部を使用する場合においても、受信部による消費電力を削減することができる。これにより、放射線撮影可能な時間が短縮することを抑制することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、曝射開始スイッチの固定と開放とをソレノイドの駆動により実行する場合においても、ソレノイドによる電力消費を抑制して、受信部による消費電力を削減することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、放射線撮影が実行されないスタンバイ状態となったとき、車輪の回転時、および、バッテリーへの充電時に、受信部による電力の消費を防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る移動型放射線撮影装置としての移動型X線撮影装置の側面概要図であり、
図2は、その斜視図である。
【0018】
この移動型X線撮影装置は、本体15に配設された支柱14と、この支柱14に対して昇降可能な状態で配設されたアーム13と、アーム13の先端に配設されたX線管11と、このX線管11の下方に配設されたコリメータ12と、X線管11から照射され被検者を通過したX線を検出するためのX線検出器16と、このX線検出器16を収納するための収納部17と、を備える。X線管11とコリメータ12とは、この発明に係る放射線照射部を構成する。
【0019】
本体15は、方向変更用の車輪である左右一対の前輪21と、駆動用の車輪である左右一対の後輪22とが配設された移動台車であり、操作ハンドル19により進行方向が操作される。また、本体15の前方には、進行方向の障害物と衝突した際の衝撃を吸収させるためのバンパー24が配置されている。
【0020】
アーム13は、
図1において実線で示す、本体15を移動させるときにアーム13を配置すべき位置である固定位置と、この固定位置から上昇した撮影位置との間を昇降可能となっている。アーム13が固定位置にある状態においては、アーム13の下面はアームキャッチと呼称される固定部18に当接する。また、アーム13は、支柱14を回転させることで、
図2に示すように、固定位置から上昇した状態で、θ3方向に旋回する。
【0021】
コリメータ12には、X線管11とコリメータ12とを一体として移動させるときに使用するハンドル26が付設されている。X線管11と、このX線管11に取り付けられたコリメータ12とは、
図2に示すように、アーム13の延設方向と直交する方向を向く軸を中心としたθ1方向と、アーム13の延設方向を向く軸を中心としたθ2方向とに揺動可能となっている。
【0022】
また、X線管11とコリメータ12とは、
図2に示すように、アーム13がA方向に伸縮することにより、水平方向に移動可能となっている。さらに、X線管11とコリメータ12とは、
図2に示すように、アーム13が支柱14に対してZ方向に昇降することにより、鉛直方向に移動可能となっている。
【0023】
この移動型X線撮影装置は、X線管11からのX線の曝射を開始するときに操作されるハンディ型の曝射開始スイッチ42と、この曝射開始スイッチ42を収納するための収納部としても機能する本体15に固定された受信部41とを備える。曝射開始スイッチ42は内部にバッテリーを内蔵し、このバッテリーからの給電を受ける。また、受信部41は、後述するように、本体15に配設されたバッテリー35と接続されており、このバッテリー35から給電を受ける。これらの受信部41および曝射開始スイッチ42は、無線により互いに接続されている。
【0024】
さらに、この移動型X線撮影装置は、表示部および操作部として機能するLCDタッチパネル25を備える。LCDタッチパネル25には、撮影条件等を選択する操作スイッチやX線撮影画像等が表示される。
【0025】
図3は、この発明に係る移動型X線撮影装置の主要な電気的構成を説明する回路図である。
【0026】
このX線撮影装置は、本体15内に、装置全体を制御するための制御部30を備える。また、このX線撮影装置は、本体15内に、バッテリー35を備える。バッテリー35は充電回路36を介して商用電源37と接続可能となっており、このバッテリー35は、本体15に設けられた電源コードを商用電源37のコンセントに接続することにより、商用電源37から充電可能な構成となっている。
【0027】
本体15を駆動するための一対の後輪22のうち、右側の後輪22aは、エンコーダ33aを介して駆動用モータ34aと接続されている。同様に、左側の後輪22bは、エンコーダ33bを介して駆動用モータ34bと接続されている。これらのエンコーダ33a、33bおよび駆動用モータ34a、34bは制御部30と接続されており、制御部30は、エンコーダ33a、33bにより検出した後輪22a、22bの回転速度に基づいて、駆動用モータ34a、34bの回転制御信号を送信する。なお、この制御部30は、後述する状態認識部および給電制御部として機能する。
【0028】
また、上述した操作ハンドル19の左右両端付近には、この操作ハンドル19に付与された操作力を検出するための一対のセンサ31a、31bが配設されている。このセンサ31a、31bは、各々、前後方向に配設された圧力センサの間にレバーが配設された構成を有し、オペレータにより操作ハンドル19の右端または左端付近に付与された前方または後方への操作力を検出するものである。
【0029】
制御部30は、これらのセンサ31a、31bの信号に基づいて一対の後輪22a、22bの回転を制御する。すなわち、操作ハンドル19の右端付近のセンサ31aが前方への操作力を検出したときには、制御部30は後輪22aを正転させるような信号を駆動用モータ34aに送信し、操作ハンドル19の右端付近のセンサ31aが後方への操作力を検出したときには、制御部30は後輪22aを逆転させるような信号を駆動用モータ34aに送信する。同様に、操作ハンドル19の左端付近のセンサ31bが前方への操作力を検出したときには、制御部30は後輪22bを正転させるような信号を駆動用モータ34bに送信し、操作ハンドル19の左端付近のセンサ31bが後方への操作力を検出したときには、制御部30は後輪22bを逆転させるような信号を駆動用モータ34bに送信する。そして、この時の制御部30からの信号は、各駆動用モータ34a、34bの回転速度が操作ハンドル19への操作力の大きさと比例するような信号となっている。このため、移動型X線撮影装置は、オペレータが操作ハンドル19に付与した操作力に応じて、その操作方向に進行することになる。
【0030】
この図に示すように、上述したLCDタッチパネル25と受信部41とは制御部30と接続されており、制御部30に対して制御信号を送受信する。また、この図において接続状態を図示はしていないが、上述したLCDタッチパネル25と受信部41とはバッテリー35と接続されており、このバッテリー35からの給電を受ける。
【0031】
次に、上述した受信部41および曝射開始スイッチ42の構成について説明する。
図4は、受信部41および曝射開始スイッチ42を示す斜視図である。また、
図5は、受信部41における曝射開始スイッチ42の固定機構を示す概要図である。
【0032】
曝射開始スイッチ42は、オペレータが把持するための把持部53と、曝射準備のためにX線管11をスタンバイ状態にするときに押圧される第1スイッチ51と、X線曝射を開始するときに押圧される第2スイッチ52と、後述する固定部材63と係合するために把持部53に形成された複数の凹部54とを備える。
【0033】
受信部41は、曝射開始スイッチ42を収納するための収納部65が形成された本体部64と、各種の情報を表示するためのインジケータとして機能する表示部66と、曝射開始スイッチ42を固定するために使用されるソレノイド61に接続された固定部材63とを備える。固定部材63は、ソレノイド61の駆動により、曝射開始スイッチ42を収納部65に固定するための
図5において仮想線で示す固定位置と、曝射開始スイッチ42を収納部65から取り出し可能とする
図5において実線で示す解放位置との間を移動可能となっている。また、ソレノイド61は、バッテリー35からの給電状態で固定部材63を解放位置に移動させ、非給電状態で固定部材63を固定位置に移動させる構成となっている。
【0034】
以上のような構成を有する移動型X線撮影装置においては、オペレータが操作ハンドル19を操作して装置を撮影場所まで移動させる。そして、X線撮影を実行するためにX線検出器16を収納部17から取り出し、被検者の撮影部位の下方に配置するとともに、
図2に示すように、アーム13をX線管11およびコリメータ12がX線検出器16と対向するX線撮影に適した角度まで旋回させるとともに、X線撮影に適した高さ位置まで移動させる。そして、オペレータが受信部41から曝射開始スイッチ42を取り出し、本体15から離隔した位置において、第1スイッチ51を押圧してX線管11をスタンバイ状態とした後、第2スイッチ52を押圧することによりX線管11からX線の曝射を開始してX線撮影を実行する。
【0035】
このとき、受信部41は、専用のCPUにより各種の機能を実現するとともに、インジケータそして機能する表示部66を備えていることから、バッテリー35の電力を消費する。また、受信部41は、曝射開始スイッチ42の紛失等を防止するため、通電時においてのみソレノイド61により固定部材63を解放位置に移動させる構成であることから、通電時においてソレノイド61により電力を消費する。このため、この移動型X線撮影装置においては、本体15の状態を認識するための状態認識部と、認識された本体15の状態に応じてバッテリー35から受信部41への給電状態を切り替える給電制御部との両方の機能を有する制御部30の作用により、受信部41への給電を制御する構成となっている。
【0036】
より具体的には、給電制御部として機能する制御部30は、装置の起動時においては、パスワードが入力され、あるいは、機構キーが操作されることにより、認証解除動作が実行されて装置が起動状態となった後に、バッテリー35から受信部41への給電を開始する。そして、制御部30は、装置がスタンバイ状態となったとき、駆動輪である後輪22の回転時、および、バッテリー35への充電時に、バッテリー35から受信部41への給電を停止する。
【0037】
一定の時間、装置の操作が停止された場合等においては、制御部30は装置をスタンバイ状態とする。このときには、例えば、LCDタッチパネル25等の表示を停止するとともに、X線検出器16と本体15との無線通信を切断する。このときに、制御部30は、バッテリー35から受信部41への給電を停止する。LCDタッチパネル25を介してのデータ入力操作が再開され、あるいは、アーム13の昇降および旋回動作が開始されたときには、スタンバイ状態が解除され、これとともに、バッテリー35から受信部41への給電が再開される。
【0038】
また、制御部30は、駆動輪である後輪22の回転時にバッテリー35から受信部41への給電を停止する。すなわち、制御部30は、エンコーダ33a、33bからの信号、あるいは、センサ31a、31bからの信号により後輪22a、22bが回転していることを検出したときには、X線撮影の実行のために曝射開始スイッチ42が使用されることはないと判断して、バッテリー35から受信部41への給電を停止する。
【0039】
さらに制御部30は、バッテリー35への充電時に、バッテリー35から受信部41への給電を停止する。すなわち、制御部30は、充電回路36と商用電源37とが接続され、充電回路36によりバッテリーの充電がなされているときには、X線撮影の実行のために曝射開始スイッチ42が使用されることはないと判断して、バッテリー35から受信部41への給電を停止する。
【0040】
このような動作により、バッテリー35から受信部41への給電を停止することにより、バッテリー35をより長期に使用することが可能となる。
【0041】
なお、装置の電源が切られたときには、バッテリー35から受信部41への給電がなされることはない。このため、ソレノイド61は、固定部材63を上述した固定位置に移動させる。このため、この固定部材63の作用により、曝射開始スイッチ42を、曝射開始スイッチ42を収納する収納部としても機能する受信部41から取り外すことが不可能となる。このため、この曝射開始スイッチ42の紛失等を防止することが可能となる。