特許第6907860号(P6907860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907860
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】偏光板用光学粘着シート及び偏光板
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210708BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20210708BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210708BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/06
   C09J11/06
   G02B5/30
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-183720(P2017-183720)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59811(P2019-59811A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴迪
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌史
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−014407(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/091927(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/194531(WO,A1)
【文献】 特開平10−044291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を備える偏光板用光学粘着シートにおいて、
前記粘着剤層は、下記(A)成分、(B)成分及び(D)成分、
(A)(メタ)アクリルポリマー、
(B)イソシアネート架橋剤、
(D)帯電防止剤
を含む粘着剤組成物の硬化物であり、
前記(A)(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも
(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーと、
(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーと
を含む(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、該(メタ)アクリルモノマー100質量部あたり、前記(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが0〜0.5質量部及び前記(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーが1〜10質量部含まれ、前記(A)(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量が100万〜300万であり、前記粘着剤組成物は、前記(A)成分100質量部あたり、前記(B)成分を0.4〜0.8質量部含有し、
前記(D)成分は、ポリエーテル系可塑剤又はポリエーテルエステル系可塑剤中にフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が溶解した組成物であり、前記(A)成分100質量部あたり、前記(D)成分を0.5〜5質量部含有し、
前記硬化物は、ゲル分率が70%以上であり、
前記粘着剤層は、引張速度10mm/minの引張試験測定において、
破断伸度が600%以上、
ひずみ0.05〜10%での引張弾性率が1.5×10〜2.5×10Pa、
ひずみ300%での応力が0.08〜0.17N/mm、かつ、
ひずみ600%での応力が0.12〜0.25N/mmである力学特性を有し、
前記粘着剤層と無アルカリガラスとの粘着強度が4〜8N/25mmであり、
前記粘着剤層とITOガラスとの粘着強度が4〜8N/25mmであり、
前記粘着剤層の表面電気抵抗値が1×1011[Ω/□]未満である、偏光板用光学粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、下記(C)成分
(C)シランカップリング剤
をさらに含有し、
前記(A)成分100質量部あたり、前記(C)成分を0.1〜5質量部含有する、請求項に記載の偏光板用光学粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚みが1〜30μmである、請求項1又は2に記載の偏光板用光学粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光板用光学粘着シートの粘着剤層を接着層として備える、偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用光学粘着シート及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の液晶表示装置に備えられている偏光板は、例えば、偏光フィルムとガラス基材の2枚が接着層によって貼り合わされる。近年では、偏光板の耐久性等の性能を向上させるべく、接着層を形成するための粘着剤も種々提案されている。
【0003】
例えば、特定の構造を有するアクリルポリマーと、イソシアネート化合物とを含む粘着剤組成物を用いて偏光板用の粘着剤を形成させ、寸法変化による偏光板に対する応力を緩和させ、光漏れによる色むらを抑制させる技術が知られている(特許文献1,2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−91500号公報
【特許文献2】特開2011−85887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2等に開示される粘着剤組成物で接着層を形成させる方法では、貼り合わせ後、時間の経過とともに偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生し、これにより偏光板の性能が損なわれる問題点を有していた。また、ガラス板(例えば、ITO基板)が、接着層中に含まれる成分の影響で腐食することもあり、これによっても偏光板の性能が損なわれる問題点を有していた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、偏光板を長期間使用しても偏光フィルムとガラス基材との間に気泡や剥離が発生するのを抑制でき、しかも、ガラス基材の腐食も抑制できる偏光板用光学粘着シート及び偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、引張試験で測定される引張弾性率及び応力を特定の範囲とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の発明を包含する。
項1.
粘着剤層を備える偏光板用光学粘着シートにおいて、
前記粘着剤層は、下記(A)成分、(B)成分及び(D)成分、
(A)(メタ)アクリルポリマー、
(B)イソシアネート架橋剤、
(D)帯電防止剤
を含む粘着剤組成物の硬化物であり、
前記(A)(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも
(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーと、
(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーと
を含む(メタ)アクリルモノマーの重合体であり、該(メタ)アクリルモノマー100質量部あたり、前記(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが0〜0.5質量部及び前記(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーが1〜10質量部含まれ、前記(A)(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量が100万〜300万であり、前記粘着剤組成物は、前記(A)成分100質量部あたり、前記(B)成分を0.4〜0.8質量部含有し、
前記(D)成分は、ポリエーテル系可塑剤又はポリエーテルエステル系可塑剤中にフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が溶解した組成物であり、前記(A)成分100質量部あたり、前記(D)成分を0.5〜5質量部含有し、
前記硬化物は、ゲル分率が70%以上であり、
前記粘着剤層は、引張速度10mm/minの引張試験測定において、
破断伸度が600%以上、
ひずみ0.05〜10%での引張弾性率が1.5×10〜2.5×10Pa、
ひずみ300%での応力が0.08〜0.17N/mm、かつ、
ひずみ600%での応力が0.12〜0.25N/mmである力学特性を有し、
前記粘着剤層と無アルカリガラスとの粘着強度が4〜8N/25mmであり、
前記粘着剤層とITOガラスとの粘着強度が4〜8N/25mmであり、
前記粘着剤層の表面電気抵抗値が1×1011[Ω/□]未満である、偏光板用光学粘着シート。

前記粘着剤組成物は、下記(C)成分
(C)シランカップリング剤
をさらに含有し、
前記(A)成分100質量部あたり、前記(C)成分を0.1〜5質量部含有する、項に記載の偏光板用光学粘着シート。

前記粘着剤層の厚みが1〜30μmである、項1又は2に記載の偏光板用光学粘着シート。

項1〜のいずれか1項に記載の偏光板用光学粘着シートの粘着剤層を接着層として備える、偏光板。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る偏光板用光学粘着シートを偏光板の接着層として使用すれば、偏光板を長期間使用しても偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生するのを抑制でき、しかも、透明導電層を有したガラス基材(例えば、ITOガラス)に形成されている導電層の腐食も抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
本発明の偏光板用光学粘着シートは、少なくとも粘着剤層を備える。前記粘着剤層は、引張速度10mm/minの引張試験測定において、
破断伸度が600%以上、
ひずみ0.05〜10%での引張弾性率が1.5×10〜2.5×10Pa、
ひずみ300%での応力が0.08〜0.17N/mm、かつ、
ひずみ600%での応力が0.12〜0.25N/mmである力学特性を有する。さらに、前記粘着剤層と無アルカリガラスとの粘着強度が4〜8N/25mmであり、
前記粘着剤層とITOガラスとの粘着強度が4〜8N/25mmであり、
前記粘着剤層の表面電気抵抗値が1.0×1011[Ω/□]未満である。なお、以下、本発明の偏光板用光学粘着シートを「粘着シート」と略記することがある。
【0012】
粘着シートは、上記力学特性を有するので、これを偏光板の接着層(例えば、偏光フィルムとガラス基材を貼り合わせるための接着層)として使用した場合、気泡が発生しにくい。また、粘着シートと基材ガラスとの間での剥離が起こりにくく、耐久性の高い貼合状態を得ることができる。
【0013】
前記力学特性、つまり、破断伸度、ひずみ0.05〜10%での引張弾性率、ひずみ300%での応力及びひずみ600%での応力は、JIS K7161−1に準拠した引張試験測定で評価することができる。この引張試験測定において、引張速度10mm/minとする。力学特性を評価するための装置は、例えば、島津製作所製「オートグラフAGS−X」を使用することができる。測定は23℃、50%RHで行うことができる。測定サンプル、つまり、粘着剤層は、厚さ20μm、幅60mm、長さ250mmのシートに形成し、該シートを長さ方向に丸めて、断面積5mm、高さ60mmの円柱形状に加工して、引張試験測定を行う。引張試験測定において、チャック間距離は30mmであり、引張速度は10mm/minである。
【0014】
なお、以下の説明において、「引張試験測定」とは前記測定条件にて引張試験を行った測定のことを示す。この引張試験測定によって、ひずみ−応力曲線を得ることができる。
【0015】
粘着剤層は、引張試験測定における破断伸度が600%未満である場合、偏光フィルムとガラス基材との間に剥離が発生しやすくなる。
【0016】
粘着剤層は、引張試験測定におけるひずみ0.05〜10%での引張弾性率が1.5×10Pa未満である場合、偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生しやすくなる。前記引張弾性率が2.5×10Paを超えると、ガラス基材と粘着シートとが剥離しやすくなる。
【0017】
引張試験測定におけるひずみ0.05〜10%での引張弾性率の下限は、1.6×10Paであることが好ましく、また、上限は、2.3×10Paであることが好ましい。
【0018】
粘着剤層は、引張試験測定におけるひずみ300%での応力が0.08N/mm未満である場合、偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生しやすくなり、また、前記応力が0.17N/mmを超えると、ガラス基材と粘着シートとが剥離しやすくなる。
【0019】
粘着剤層は、引張試験測定におけるひずみ300%での応力の下限が0.10N/mmであることが好ましく、また、上限は、0.16N/mmであることが好ましい。
【0020】
粘着シートは、引張試験測定におけるひずみ600%での応力が0.12N/mm未満である場合、偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生しやすくなり、また、前記応力が0.25N/mmを超えると、粘着シートとガラス基材との間で剥離するという問題が生じる。
【0021】
粘着シートは、前記粘着剤層と無アルカリガラスとの粘着強度、又は、前記粘着剤層とITOガラスのITO蒸着面との粘着強度が4N/25mm未満である場合、偏光板において偏光フィルムとガラス基材との接着力が弱くなり、偏光フィルムが剥がれやすくなる。また、前記粘着剤層と無アルカリガラスとの粘着強度、又は、前記粘着剤層とITOガラスのITO蒸着面との粘着強度が8N/25mmを超える場合、接着力が強すぎるため、偏光フィルムとガラス基材と貼り合わせ時に位置ずれが発生した際に、粘着シートを剥がすとフィルム及び基材に傷が発生し、また、フィルム及び基材に剥がれ残りが生じる。
【0022】
前記粘着強度は、JIS Z0237に準拠して測定することができる。この測定に使用する装置は、例えば、島津製作所製「オートグラフAGS−X」を使用することができる。測定は23℃、50%RHで行うことができる。粘着強度の測定に用いるITOガラスは、ジオマテック社製ITOガラス(抵抗値500Ω/sq)を使用し、粘着強度の測定に用いる無アルカリガラスは、コーニング社製「イーグルXG」を使用する。粘着強度の測定に用いる粘着シート試験片の幅は25mmである。粘着強度の測定において、裏打ち基材は、50μm厚みの東洋紡社製PETフィルム「コスモシャインA4300」を使用する。測定は、2kgfゴムローラーを2往復させて圧着させ、剥離速度300mm/minで180°方向に引きはがして剥離強度(180°剥離強度)を計測する。
【0023】
前記粘着剤層の表面電気抵抗値が1×1011[Ω/□]未満である。この場合、粘着シートは、加工時のセパレータを剥がす工程での剥離帯電を抑制することができる。これにより、例えば、粘着シートを用いて偏光板とガラス基材(液晶セル)を貼合する場合、静電気による液晶セルの故障及び帯電による異物吸着での異物噛み込み等を防止しやすい。なお、前記粘着剤層の表面電気抵抗値の下限値は特に限定されず、例えば、1×10Ω/□以上とすることができる。
【0024】
粘着剤層の厚みは、1〜30μmであることが好ましい。粘着剤層の厚みが1μm以上であることで、所望の粘着性能が発現し、また、粘着剤層の厚みが30μm以下であることで、近年のタッチパネルの薄型化に対する要求を満たしやすい。
【0025】
粘着シートは、粘着剤層の片面又は両面は、セパレータが貼り合わせられて形成されていてもよい。この場合、片面又は両面のセパレータを剥がすことで、粘着剤層を得ることができる。
【0026】
セパレータの種類は特に限定されず、従来から粘着シートのセパレータとして使用されている公知のフィルムを広く採用できる。例えば、公知の剥離処理されたポリエステルフィルム(PETフィルム)を粘着シートのセパレータとして採用できる。
【0027】
セパレータとしてPETフィルムを使用する場合は、PETフィルムの配向角は11°以下であることが好ましい。この場合、例えば、粘着シートのクロスニコル法透過検査において不具合が生じにくい。
【0028】
粘着シートにおいて、前記力学特性及び前記粘着強度を有する限りは、粘着剤層を構成する成分は特に限定されない。
【0029】
例えば、粘着剤層は、下記(A)成分及び(B)成分
(A)成分:(メタ)アクリルポリマー、
(B)成分:イソシアネート架橋剤
を含む粘着剤組成物の硬化物とすることができる。
【0030】
(A)成分である(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも
(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーと、
(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーと
を含む(メタ)アクリルモノマーの重合体である。該(メタ)アクリルモノマー100質量部あたり、前記(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが0〜0.5質量部及び前記(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーが1〜10質量部含まれ得る。なお、前記(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーは、0質量部でもよい。
【0031】
前記(A)成分である(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量を100万〜300万とすることができる。
【0032】
前記粘着剤組成物は、前記(A)成分100質量部あたり、前記(B)成分を0.1〜2質量部含有することができる。
【0033】
前記粘着剤組成物の硬化物は、ゲル分率が70%以上になり得る。
【0034】
粘着剤層が前記粘着剤組成物の硬化物で形成される場合、粘着シートは、前記力学特性及び前記粘着強度になりやすく、その上、ITOガラスの導電層に対する腐食も起こりにくい。以下、この構成を有する粘着シートについて詳述する。
【0035】
なお、本明細書では「(メタ)アクリル」とは「アクリルもしくはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリ」は、「アクリもしくはメタクリ」を意味する。例えば、「(メタ)アクリル酸」との記載は「アクリル酸もしくはメタクリル酸」との記載と同義である。
【0036】
前記(A)成分である(メタ)アクリルポリマーは、前記(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー及び(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを含む(メタ)アクリルモノマーを重合して得られる重合体である。
【0037】
(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーは、分子中に一以上のカルボキシル基を有する限りは、その種類は特に限定されない。例えば、(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。特に、(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸であることが好ましく、この場合、前記力学特性及び粘着強度の範囲の粘着シートが得られやすい。(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーは、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、分子中に一以上の水酸基を有する限りは、その種類は特に限定されない。例えば、(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;等を挙げることができる。特に、(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、この場合、前記力学特性及び粘着強度の範囲の粘着シートが得られやすい。(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
(メタ)アクリルモノマーは、(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー及び(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマー以外のモノマー(以下、「第3モノマー」と略記する)を含むことができる。
【0040】
第3モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソプロピル、イソオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;その他、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングルコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。第3モノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソプロピル、イソオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、この場合、前記力学特性及び粘着強度の範囲の粘着シートが得られやすい。第3モノマーは、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
(メタ)アクリルモノマーに含まれる(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー及び(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの含有量は、例えば、(メタ)アクリルモノマーの全量を100質量部としたとき、(a1)カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーを0〜0.5質量部、(a2)水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを1〜10質量部とすることができる。この場合、前記力学特性及び粘着強度の範囲の粘着シートが得られやすく、しかも、偏光板の無アルカリガラス又はITOガラスに対する腐食がより起こりにくくなる。
【0042】
前記(A)成分である(メタ)アクリルポリマー(つまり、(メタ)アクリルモノマーの重合体)は、例えば、(メタ)アクリルモノマーを公知の重合方法によって得ることができる。この重合方法としては、例えば、溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合等を採用できる。
【0043】
(メタ)アクリルポリマーを得るための重合方法では、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒の種類は特に限定されず、例えば、重合で使用されている公知の有機溶媒を広く使用することができる。例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ヘキサン等の炭化水素;キシレン、ベンゼン等の芳香族化合物;を挙げることができる。前記重合反応で使用する溶媒の使用量は特に限定されない。
【0044】
前記重合方法では、必要に応じて重合開始剤を使用することができ、例えば、一般的な重合で使用されている公知の重合開始剤を広く使用することができる。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム、光重合開始剤(イルガキュアーまたはオムニラッド(登録商標)シリーズ等)等が挙げられる。
【0045】
重合開始剤の濃度は、特に限定されず、例えば、得られる(メタ)アクリルモノマーの重合体が所望の分子量を有する範囲で適宜調整することができる。例えば、(メタ)アクリルモノマーの総量100質量部あたり、重合開始剤を0.01〜5質量部使用することができる。
【0046】
前記重合方法では、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下で重合反応を行うことができる。
【0047】
重合反応の反応時間及び反応温度も限定されず、使用する(メタ)アクリルモノマーの種類及び使用量に応じて、適宜設定することができる。例えば、20〜100℃、1〜24時間の条件で重合反応を行うことができる。
【0048】
前記(A)成分である(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量を100万〜300万とすることができる。(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量がこの範囲であることで、前記力学特性及び粘着強度の範囲の粘着シートが得られやすく、また、粘着強度も前記範囲となりやすい。
【0049】
なお、本発明でいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。GPC法に使用されるGPC装置には特に制限はなく、市販のGPC測定機、例えば、日本分光株式会社製、LC−2000Plusシリーズ、検出機としてRI−2031Plus、UV−2075Plus等を使用できる。この場合、例えば、昭和電工株式会社製「Shodex KF−806」GPCカラムが用いられ、カラム温度を40℃とすることができる。溶離液としてテトラヒドロフランが用いられ、流速1.0ml/分にて測定される。通常、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を得ることができる。
【0050】
粘着剤組成物の(B)成分は、イソシアネート架橋剤であり、(A)成分の(メタ)アクリルポリマーと反応して架橋体を形成することができる成分である。
【0051】
イソシアネート架橋剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の化合物を広く使用できる。このようなイソシアネート架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;が例示される。イソシアネート架橋剤は、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
粘着剤組成物は、前記(A)成分100質量部あたり、前記(B)成分を0.1〜2質量部含有できる。これにより、粘着剤組成物の硬化物が形成されやすく、しかも、得られる硬化物は、ゲル分率が所望の範囲となりやすい。この結果として、粘着シートは、前記力学特性及び前記粘着強度になりやすい。
【0053】
粘着剤組成物は、前記(A)成分及び(B)成分の他、必要に応じてその他の成分(以下、「第3成分」と略記する)を含有することができる。
【0054】
第3成分としては、シランカップリング剤を挙げることができる。この場合、粘着シートは無アルカリガラスに対して高温高湿下でより密着し易くなり、粘着シートの粘着強度が所望の範囲になりやすい。以下、第3成分であるシランカップリング剤を(C)成分又は(C)シランカップリング剤と表記する。
【0055】
(C)シランカップリング剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の化合物を広く使用できる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアコキシシランγ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0056】
粘着剤組成物は、前記(A)成分100質量部あたり、前記(C)成分を0.1〜5質量部含有することが好ましい。この場合、粘着シートは、無アルカリガラスに対し、高温高湿下でより密着しやすくなる。
【0057】
粘着剤組成物はさらに帯電防止剤を含有することが好ましい。以下、帯電防止剤を(D)成分又は(D)帯電防止剤と表記する。粘着剤組成物が(D)帯電防止剤を含有することで、粘着剤層の表面電気抵抗を所望の範囲に調整することができる。
【0058】
前記(D)成分は、例えば、ポリエーテル系可塑剤又はポリエーテルエステル系可塑剤中にフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が溶解した組成物とすることができる。この組成物としては、例えば、帯電防止剤として広く使用されている公知の組成物を使用することができる。なお、ポリエーテル系可塑剤及びポリエーテルエステル系可塑剤はいずれも主鎖中にポリエーテル基を含む。
【0059】
前記(D)成分においては、ポリエーテル系可塑剤又はポリエーテルエステル系可塑剤中のエーテル酸素原子に陰イオンの対イオンである陽イオンが配位し、錯体を形成している。すなわち、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンの対イオンである陽イオンが、ポリエーテル系可塑剤又はポリエーテルエステル系可塑剤とルイス酸又はルイス塩基型の錯イオンを形成している。従って、前記(D)成分は、ポリエーテル系可塑剤又はポリエーテルエステル系可塑剤中のエーテル酸素原子に、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンの対イオンである陽イオンが配位した錯体を含む点に特徴がある。
【0060】
陽イオンは、アルカリ金属及び2族元素から選択されるいずれかであることが好ましく、アルカリ金属の陽イオンであることがより好ましく、リチウムイオンであることが特に好ましい。すなわち、前記錯体は、リチウムポリエーテル錯体であることが好ましい。
【0061】
前記(A)成分100質量部あたり、前記(D)成分を0.5〜5質量部含有することが好ましい。この場合、粘着剤層の表面電気抵抗を所望の範囲に調整することができ、例えば、表面電気抵抗値が1×10〜1×1011Ω/□となり得る。これにより、粘着シートを例えば前記セパレータから剥離したときに粘着シートが帯電しにくい。従って、粘着シートを用いて偏光板とガラス基材(液晶セル)を貼合する場合、静電気による液晶セルの故障及び帯電による異物吸着での異物噛み込み等を防止しやすい。
【0062】
粘着剤組成物は、本発明の効果が阻害されない限りは、さらに他の成分を含むことができ、例えば、公知の粘着剤組成物に含まれ得る各種の添加剤が挙げられる。このような添加剤としては、例えば、光安定剤、分散安定剤、防腐剤、粘着付与剤等が挙げられる。これらの添加剤は、最終的に得られる粘着シートにも含まれ得る。
【0063】
粘着剤組成物を調製する方法は特に限定されない。例えば、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて添加される(C)成分及び(D)成分等の第3成分を所定の配合量で混合することで、粘着剤組成物を調製できる。混合方法も特に限定されず、例えば、市販の混合機を使用できる。
【0064】
前記粘着剤組成物を硬化反応させることで、粘着剤組成物の硬化物が形成される。得られた硬化物は、粘着シートにおける粘着剤層となる。
【0065】
粘着剤組成物の硬化物は、ゲル分率が70%以上であることが好ましい。これにより、粘着シートは、前記力学特性及び前記粘着強度になりやすく、特に、適度な硬さを有することから、偏光板を長期間使用しても偏光フィルムとガラス基材との間に気泡がより発生しにくくなる。
【0066】
本発明でいうゲル分率は、粘着シート0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間浸漬した後、該サンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定する。得られた乾燥重量から下記式(1)により求めることができる。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/粘着シートの採取重量)×100 (1)
【0067】
粘着剤組成物の硬化物のゲル分率は75%以上であることが特に好ましい。また、粘着剤組成物の硬化物のゲル分率の上限値は、95%とすることが好ましい。ゲル分率が70%以上である場合、粘着シートは十分な耐久性を発現させることができ、95%以下である場合、粘着剤層とガラス基材との間の剥離を抑制することができる。
【0068】
粘着剤組成物の硬化物を得る方法は特に限定されず、公知の硬化条件を広く採用することができる。例えば、粘着剤組成物を基材上に塗工して塗膜を形成し(以下、「塗膜形成工程」ということがある)、該塗膜を硬化する(以下、「塗膜硬化工程」ということがある)ことによって、硬化物を得ることができる。この硬化物が粘着シートとなる。
【0069】
塗膜形成工程において、粘着剤組成物を基材上に塗工する方法は特に限定されず、例えば、公知の塗工手段を採用できる。
【0070】
塗膜形成工程で使用する基材は、特に限定されない。例えば、粘着剤組成物を前記セパレータに塗工すれば、セパレータ上に硬化物が形成されるので、セパレータ付きの粘着シートを直接得ることができる。あるいは、粘着剤組成物を直接、偏光板の偏光フィルムに塗工することもできる。この場合、偏光フィルム上に直接、粘着シートを形成させることができる。
【0071】
塗膜硬化工程において、粘着剤組成物の塗膜を硬化する方法は特に限定されず、例えば、従来から行われている粘着剤組成物の硬化方法を広く採用することができる。例えば、塗膜を加熱して硬化する方法、塗膜に紫外線等の光照射をして硬化する方法等を挙げることができる。加熱する場合の温度は、例えば、50℃以上150℃以下とすることができる。
【0072】
塗膜硬化工程において、加熱時間は、溶剤等の揮発成分が揮発して粘着剤層の残留溶剤濃度が1000ppm以下になるように設定すればよく、粘着剤組成物の濃度、所望する粘着剤層の厚みに応じて、上記の温度範囲で1〜30分程度とすることが好ましい。
【0073】
塗膜を硬化して硬化物が形成された後は、必要に応じて、硬化物を所定の環境下で熟成処理を行うことができる。
【0074】
前記粘着剤組成物の硬化物は、前記(メタ)アクリルポリマーの架橋構造体である。この硬化物を含有する粘着剤層は、前記力学特性及び粘着強度の範囲となり、さらに、ゲル分率が特定の範囲である。そのため、粘着剤層を備える粘着シートを、偏光板の接着層に適用した場合に、偏光板を長期間使用しても偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生するのをさらに抑制でき、しかも、ITOガラスの透明導電層に対する腐食もさらに抑制できるという利点がある。
【0075】
粘着シートにおける粘着剤層は、前記力学特性及び粘着強度の範囲となる限りは、前記(メタ)アクリルポリマーの架橋構造体(前記粘着剤組成物の硬化物)の他、他の高分子成分を含むことができる。なお、粘着剤層は、前記力学特性及び粘着強度の範囲であって、本発明の効果が阻害されない限りは、前記(メタ)アクリルポリマーに代えて、他の高分子材料で形成することもできる。粘着剤層は前記粘着剤組成物の硬化物のみで形成されていてもよい。
【0076】
粘着シートは、粘着剤層のみで形成されていてもよいし、前述のように粘着剤層の片面又は両面にセパレータが貼り合わせられていてもよい。また、粘着シートは、粘着剤層を備える限りは、セパレータに加えて又はセパレータに代えてその他の層を備えることもできる。
【0077】
粘着シートの製造方法は特に限定されない。粘着シートの力学特性及び粘着強度が所望の範囲に調整しやすいという観点からは、前記(A)成分及び(B)成分を含む粘着剤組成物を用いて粘着シートを製造することが好ましい。
【0078】
つまり、粘着シートは、粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程、次いで、該塗膜を硬化する工程を具備する製造方法で得ることが好ましい。粘着剤組成物の構成及び調製方法は、前述と同様である。また、(A)成分である(メタ)アクリルポリマーの調製方法も前述と同様の方法である。さらに、塗膜を形成する工程及び塗膜を硬化する工程はそれぞれ、塗膜形成工程及び塗膜硬化工程と同様である。
【0079】
粘着シートは、偏光板を形成するための接着層として機能し得る。例えば、粘着シートは、偏光フィルムとガラス基材とを貼り合わせるための接着層を形成するための材料として使用できる。
【0080】
偏光板の種類は特に限定されず、例えば、公知の偏光板を広く適用することが可能である。偏光フィルムの種類も特に限定されない。ガラス基材も特に限定されず、例えば、無アルカリガラス、ITOガラスが挙げられる。
【0081】
粘着シートを用いて偏光フィルム及びガラス基材を接着させる方法は特に限定されない。粘着シートに前記セパレータが貼り付けられている場合は、片面にセパレータが貼り付けられた粘着シートの粘着剤層側の面(粘着面)を、偏光フィルム及びガラス基材のいずれか一方に貼り合わせる。次いで、セパレータを剥がし、露出させた粘着面(粘着剤層)に対して他方(偏光フィルム又はガラス基材)を貼り合わせる。これにより、偏光フィルム及びガラス基材を接着させることができる。
【0082】
以上のように形成される偏光板は、特定の力学特性及び粘着強度を有する粘着シートを接着層として備えるため、長期間使用しても偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生しにくく、ガラス基材の腐食も抑制されることから、耐久性に優れる。また、偏光フィルムとガラス基材と貼り合わせ時に位置ずれが発生して貼り直す場合でも、粘着シート剥離後に傷の発生及び剥がれ残りが生じにくいので、粘着シートの貼り直し作業も容易に行うことができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。なお、実施例2及び4は参考例である。
【0084】
(製造例1)
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート(n−BuA)96質量部及び水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとして2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)4質量部を含む(メタ)アクリルモノマーと、酢酸エチル100質量部と、アソビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1質量部とを加えた。この反応容器内の空気を窒素ガスで置換し、反応容器内部を60℃に保持し、6時間反応を続けた。反応終了後、反応容器内を室温(25℃)まで冷却させた後、反応容器に酢酸エチルを加えることで、固形分20質量%の(メタ)アクリルポリマー(前記(メタ)アクリルモノマーの重合体)溶液(A−1)を得た。得られた(メタ)アクリルポリマー溶液中の(メタ)アクリルポリマー重量平均分子量(Mw)は180万であった。
【0085】
(製造例2)
(メタ)アクリルモノマーを、n−ブチルアクリレート89.9質量部、t−ブチルアクリレート(t−BuA)5質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)5質量部、及び、アクリル酸(AA)0.1質量部を含む(メタ)アクリルモノマーに変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリルポリマー溶液(A−2)を得た。得られた(メタ)アクリルポリマー溶液中の(メタ)アクリルポリマー重量平均分子量(Mw)は170万であった。
【0086】
(製造例3)
(メタ)アクリルモノマーを、n−ブチルアクリレート98.95質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.05質量部、及び、アクリル酸(AA)1質量部を含む(メタ)アクリルモノマーに変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で(メタ)アクリルポリマー溶液(A−3)を得た。得られた(メタ)アクリルポリマー溶液中の(メタ)アクリルポリマー重量平均分子量(Mw)は170万であった。
【0087】
【表1】
【0088】
表1には、各製造例で使用した原料の配合割合及び得られた(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)を示している。
【0089】
(実施例1)
(A)成分として製造例1で得られた(メタ)アクリルポリマー(A−1)100質量部(固形分換算)と、(B)成分としてTDI系架橋剤であるトリレンジイソシアネート(東ソー社製「コロネートL」)0.4質量部と、(C)成分としてシランカップリング剤であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−403」)0.2質量部と、(D)成分として帯電防止剤であるポリエーテルエステル系可塑剤中にフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が溶解した組成物(三光化学工業社製「サンコノールAD2600」)1質量部と、を混合して粘着剤組成物を調製した。
【0090】
得られた粘着剤組成物を、市販の剥離処理されたポリエステルフィルムに乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工して塗膜を形成し、これを100℃で3分間乾燥して塗膜を硬化させ硬化物を形成させ、ポリエステルフィルム上に粘着剤層を形成した。該粘着剤層上にさらに他の市販の剥離処理されたポリエステルフィルムを密着させ、これを23℃、50%RHである暗所に7日間静置して熟成させることで、両面がセパレータで保護された偏光板用光学粘着シートを得た。
【0091】
(実施例2)
(B)成分を0.2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で偏光板用光学粘着シートを得た。
【0092】
(実施例3)
(B)成分を0.8質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で偏光板用光学粘着シートを得た。
【0093】
(実施例4)
(B)成分を1.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で偏光板用光学粘着シートを得た。
【0094】
(実施例5)
(A)成分として製造例2で得られた(メタ)アクリルポリマー(A−2)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で偏光板用粘着シートを得た。
【0095】
(比較例1)
(B)成分を4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で偏光板用光学粘着シートを得た。
【0096】
(比較例2)
(B)成分を0.05質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で偏光板用光学粘着シートを得た。
【0097】
(比較例3)
(D)成分を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で偏光板用光学粘着シートを得た。
【0098】
(比較例4)
(A)成分として製造例3で得られた(メタ)アクリルポリマー(A−3)に変更し、(B)成分を0.7質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で偏光板用光学粘着シートを得た。
【0099】
【表2】
【0100】
表2には、各実施例及び比較例で使用した粘着剤組成物の配合を示す。また、表2には、偏光板用光学粘着シートの引張速度10mm/minの引張試験測定における、ひずみ0.05〜10%での引張弾性率、ひずみ300%における応力(300%応力)及びひずみ600%(600%応力)における応力、並びに、偏光板用光学粘着シートの23℃における無アルカリガラスに対する粘着強度、ITOガラスのITOの蒸着面に対する粘着強度、表面電気抵抗及びゲル分率の測定結果を示す。さらに、表2には、偏光板用光学粘着シートを無アルカリガラス面に貼り合わせたときの耐久性評価、偏光板用光学粘着シートをITOガラス面に貼り合わせたときの耐久性評価及びITOガラスに対する腐食性の評価結果を示す。
【0101】
各測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0102】
(重量平均分子量)
GPC測定装置として、日本分光株式会社東ソー株式会社製示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機「HLC−8121GPC−HT」を使用し、東ソー株式会社製「TSKgel GMHHR−H(20)HT」を3本連結させたGPCカラムを使用して、重量平均分子量を測定した。カラム温度は40℃、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、流速1.0ml/分にて測定した。測定には、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製した。
【0103】
(引張試験測定)
引張試験測定は、JIS K7161−1に準拠し、島津製作所製「オートグラフAGS−X」を使用した。引張速度は10mm/minとし、23℃、50%RHで測定した。厚さ20μm、幅60mm、長さ250mmの偏光板用光学粘着シートから両面セパレータを剥がして長さ方向に丸め、断面積5mm、高さ60mmの円柱形状に加工し、これをサンプルとして引張試験測定を行った。引張試験測定において、チャック間距離は30mmとした。
【0104】
(ガラス基材に対する粘着強度測定)
粘着強度は、JIS Z0237に準拠し、島津製作所製「オートグラフAGS−X」を使用した。測定は23℃、50%RHで行った。粘着強度の測定に用いたITOガラスは、ジオマテック社製ITOガラス(抵抗値500Ω/sq)とし、無アルカリガラスは、コーニング社製「イーグルXG」とした。粘着強度の測定に用いる偏光板用光学粘着シート試験片の幅は25mmとした。裏打ち基材として、50μm厚みの東洋紡社製PETフィルム「コスモシャインA4300」を用いた。測定は、2kgfゴムローラーを1往復させて圧着させ、剥離速度300mm/minで180°方向に引きはがして剥離強度(180°剥離強度)を計測した。
【0105】
(表面電気抵抗)
各実施例及び比較例で得た偏光板用光学粘着シートを50mm×50mmにカットし、23℃50%環境下で1日静置した。次いで、片面のセパレータを剥離させ、露出した粘着剤層に抵抗値測定機〔三菱化学(株)製、Hiresta−UP、MCP−HT450〕を用いて、JIS K6911に準拠して、表面抵抗値を測定した。
【0106】
(ゲル分率)
粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30ccを加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定した。得られた乾燥重量から下記式(1)によりゲル分率を求めた。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/粘着シートの採取重量)×100 (1)
(耐久性評価)
偏光板用光学粘着シートを貼りあわせた10インチサイズのガラス基材である無アルカリガラス及びITOガラスを準備し、それぞれの偏光板用光学粘着シートにさらに偏光フィルムを貼り合わせて各種の評価用サンプルを得た。この評価用サンプルをオートクレーブに収容し、0.5MPaの圧力下40℃で30分間保持した。その後、評価用サンプルを取り出して、−40℃で30分間保持し、次いで、85℃で30分間保持し、さらに−40℃で30分間保持するというサイクル試験を100回繰り返し行った。このサイクル試験の後、偏光フィルムと無アルカリガラス貼り合わせ面及び偏光フィルムとITOガラス貼り合わせ面の剥離状態と気泡発生状況とを10倍拡大鏡で観察し、それぞれ下記基準により評価した。
[剥離状態]
◎:剥離は全く見られなかった。
〇:最大長さが0.2mm未満の剥離が見られた。
×:最大長さが0.2mm以上の剥離が見られた。
[気泡発生状況]
◎:気泡の発生は見られなかった。
〇:最大長さが0.2mm未満の気泡の発生が見られた。
×:最大長さが0.2mm以上の気泡の発生が見られた。
【0107】
(ITOガラスに対する腐食性評価)
ITO層付きガラス基材のITO層の表面電気抵抗値をデジタルマルチメータ(CUSTOM(株)製、CDM−2000D)を用いて測定した。次に各実施例及び比較例で得た偏光板用光学粘着シートのセパレータを剥がしてPET基材に貼合し、サンプルサイズが20mm×70mmになるように裁断し、シートサンプルを得た。他方、ITOガラスのITO蒸着層に、間隔が65mmとなるよう銀ペーストを塗布し、乾燥させた。次に、銀ペーストを橋掛けするように、前記シートサンプルの粘着剤層側の面を貼り合わせることで、測定サンプルを得た。得られた測定サンプルを、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿層内で240時間処理した。その後、測定サンプルを取り出して常温に戻した後、銀ペーストを介して測定サンプルの電気抵抗値を測定した。試験前後の抵抗変化率を下記式により算出し、以下の基準で評価した。
抵抗変化率(%)=[(試験後表面抵抗値)―(試験前表面抵抗値)]/[試験前表面抵抗値]×100
○:抵抗変化率が50%未満である。
×:抵抗変化率が50%以上である。
【0108】
表2に示す結果から、実施例で得た偏光板用光学粘着シートは、特定範囲の力学特性及び粘着強度を有することから、偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生しにくく、剥離も起こりにくいことがわかる。また、実施例で得た偏光板用光学粘着シートは、ITOガラス基材を腐食させにくいこともわかる。
【0109】
これに対し、比較例1、2の偏光板用光学粘着シートは、特定範囲の力学特性及び粘着強度を有していないことから、気泡が発生しやすく、剥離も起こりやすく、しかも、ITOガラス基材を腐食させやすいものであった。比較例1では、粘着組成物に含まれる(A)成分の(メタ)アクリルポリマーにおいて、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーが少ないこと、比較例2では、偏光板用光学粘着シートのゲル分率が小さすぎることから、特定範囲の力学特性及び粘着強度を有していないと考えられる。比較例3では、600%応力が大き過ぎるので、剥離が起こり易いものであった(なお、表面電気抵抗は測定不能であった)。比較例4は、酸成分であるカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーを多く含有しているため、無アルカリガラスに対する粘着力が高く、さらに、酸成分によるITOガラスへの腐食が顕著に見られた。
【0110】
以上より、本発明の偏光板用光学粘着シートの粘着剤層を偏光板の接着層として適用すれば、偏光板を長期間使用しても偏光フィルムとガラス基材との間に気泡が発生するのを抑制でき、しかも、ガラス基材の腐食も抑制できることが示された。