特許第6907862号(P6907862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6907862-管の内面検査装置 図000002
  • 特許6907862-管の内面検査装置 図000003
  • 特許6907862-管の内面検査装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907862
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】管の内面検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20210708BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20210708BHJP
   G01B 11/12 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   G01N21/954 A
   G01N21/84 B
   G01B11/12 H
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-187936(P2017-187936)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-60825(P2019-60825A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 誠
(72)【発明者】
【氏名】中田 武男
(72)【発明者】
【氏名】東 隼都
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−030747(JP,A)
【文献】 特開2016−130668(JP,A)
【文献】 特開平01−321345(JP,A)
【文献】 特開平10−197215(JP,A)
【文献】 特開2017−053790(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0001984(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部に挿入され、該管の軸方向に移動するセンタリング部材と、
前記センタリング部材の後端側に着脱自在に取り付けられ、前記センタリング部材を前記管の軸方向に移動させるためのバーと、
前記バーに設けられた撮像装置と、
演算処理装置とを備え、
前記センタリング部材は、前記管の内部に挿入された状態で、前記撮像装置の中心軸が前記管の中心軸と略一致するように調整する機能を有し、
前記バーは、その先端部において2つのバー片に分断され、前記撮像装置は、前記2つのバー片の間に介挿され、前記2つのバー片及び前記撮像装置が一体化されており、
前記撮像装置は、前記2つのバー片の間に位置する前記管の内面に対して前記管の周方向に延びる環状のレーザ光を照射する照明手段と、前記照明手段と互いの中心軸が一致するように前記管の軸方向に対向して配置され、前記照明手段によって環状のレーザ光が照射された前記管の内面を撮像することで、環状のレーザ光が照射された部分が含まれる撮像画像である環状ビーム画像を取得する撮像手段とを具備し、
前記演算処理装置は、前記撮像手段によって取得された前記環状ビーム画像に画像処理を施すことで、前記管の内面に存在する欠陥を検出する、
ことを特徴とする管の内面検査装置。
【請求項2】
前記センタリング部材は、前記管のドリフト検査を実施するために用いられるドリフトゲージであり、
前記バーは、前記管のドリフト検査を実施するために用いられるドリフトバーである、
ことを特徴とする請求項1に記載の管の内面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油井管として用いられる管に対して内面検査を実施可能な管の内面検査装置に関する。特に、本発明は、装置の破損リスクや製造コストやメンテナンスの手間を低減可能な管の内面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
API規格に従う油井管用の管は、その内径精度及び曲り精度を管の全長に亘って検査するために、規格の外径に仕上げられたドリフトゲージを管の内部の全長に亘って移動させる検査(いわゆるドリフト検査)を実施している。特に、大量生産される管に対するドリフト検査については、ドリフトゲージの後端側に着脱自在に取り付けられたドリフトバーを動力駆動する自動装置が使用される。この自動装置を用いてドリフトバーを軸方向に移動させることで、ドリフトゲージは管の内部に挿入されて移動し、ドリフト検査が実施される。
【0003】
ドリフト検査は、管の内径がAPI規格に従う製品仕様を満足するか否かを検査するために実施される。一方、管の内面に存在する欠陥を検出するための管内面検査は、管製品では重要な検査項目の一つであり、通常は、ドリフト検査とは別工程を設けて目視検査を行っている。しかしながら、目視検査は検査員の技量に負う部分が大きく、特に、内面検査は外面検査と比較して目視検査が不十分になり易いため、問題となる欠陥が存在する管が見逃されて流出するおそれがある。また、ドリフト検査と内面検査とが別工程であるため、検査に時間を要する。
【0004】
上記のような問題に鑑み、ドリフト検査及び内面検査を同時に実施可能な検査装置を提供することを目的として、特許文献1に記載の装置が提案されている。以下、特許文献1に記載の装置の概略構成について説明する。
【0005】
図3は、特許文献1で提案されている装置の概略構成を示す断面図である。図3に示すように、特許文献1に記載の装置(特許文献1では「ドリフトゲージ」)100’は、照明手段(特許文献1では「レーザ光照射装置」)31及び撮像手段(特許文献1では「エリアカメラ」32を具備する撮像装置3と、演算処理装置4とを備えている。
照明手段31は、レーザ光源311と、円錐形状の光学素子312とを具備し、管Pの内面に対して管の周方向に延びる環状のレーザ光Lを照射する。撮像手段32は、照明手段31によって環状のレーザ光Lが照射された管Pの内面を撮像することで、環状のレーザ光Lが照射された部分が含まれる撮像画像である環状ビーム画像を取得する。演算処理装置4は、撮像手段32によって取得された環状ビーム画像に画像処理を施すことで、管Pの内面に存在する欠陥を検出する。
【0006】
特許文献1に記載の装置100’によれば、ドリフトバー2’を軸方向に移動させて、ドリフトゲージ1’を管Pの内部に挿入し、管Pの軸方向に移動させることで、ドリフト検査及び内面検査を同時に実施可能である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の装置100’では、図3に示すように、撮像装置3がドリフトゲージ1’の先端部(軸方向両端部のうち、挿入方向下流側の端部)に設けられている。このため、ドリフトゲージ1’を管Pの内部に挿入する際、ドリフトゲージ1’と管Pとの芯出し不良等の調整不良により、ドリフトゲージ1’よりも先に撮像装置3が管Pに接触して破損するおそれがある。
【0008】
また、ドリフト検査に用いるべきドリフトゲージ1’の外径は、ドリフト検査の対象となる管Pの内径に応じて変化する。このため、管Pの内径が変化する場合には、ドリフトバー2’に取り付けるドリフトゲージ1’を外径の異なるものに取り替える必要がある。特許文献1’に記載の装置100’では、撮像装置3がドリフトゲージ1’に設けられているため、装置100’をドリフト検査を行う全ての内径の管Pに適用するには、外径の異なるドリフトゲージ毎に装置100’を設ける必要がある。このため、必要となる装置100’の数が多くなるため、装置の製造コストが高くなると共に、メンテナンスに手間がかかる。
【0009】
以上の説明では、ドリフト検査及び内面検査を同時に実施可能な検査装置を例に挙げたが、内面検査のみを実施する場合には、例えば、特許文献2に記載の管の内面焼入れ装置に用いられているようなセンタリング部材(特許文献2では「第2ガイド20a」)の先端部に、前述の特許文献1に記載の撮像装置3を設けた構成を採用することも可能である。撮像装置3の中心軸(照明手段31及び撮像手段32の中心軸)が第2ガイド20aの中心軸と一致するように撮像装置3を配置すれば、第2ガイド20aが管の内部に挿入され、第2ガイド20aの中心軸が管の中心軸に略一致する(芯出しされる)と、撮像装置3の中心軸も管の中心軸と略一致する(芯出しされる)ことになる。すなわち、第2ガイド20aは、管の内部に挿入された状態で、撮像装置3の中心軸が管の中心軸と略一致するように調整するセンタリング部材としての機能を奏することになる。なお、センタリング部材及び撮像装置3を管の軸方向に移動させるためには、前述のドリフトバー2’のようなバーをセンタリング部材に取り付ければよい。
【0010】
しかしながら、上記の構成を有する装置を採用する場合も、特許文献1に記載の装置と同様に、センタリング部材(第2ガイド20a)を管の内部に挿入する際、センタリング部材と管との芯出し不良等の調整不良により、センタリング部材よりも先に撮像装置3が管に接触して破損するおそれがある。
【0011】
また、管の内径が変化する場合には、前述のドリフトゲージ1’と同様に、センタリング部材を外径の異なるものに取り替える必要があると考えられる。上記の構成を有する装置においても撮像装置3がセンタリング部材に設けられているため、装置を全ての内径の管に適用するには、外径の異なるセンタリング部材毎に装置を設ける必要がある。このため、必要となる装置の数が多くなるため、装置の製造コストが高くなると共に、メンテナンスに手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2016−130668号公報
【特許文献2】特公昭57−6496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、装置の破損リスクや製造コストやメンテナンスの手間を低減可能な管の内面検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、検査の対象となる管の内径が変化する場合、ドリフトゲージ等のセンタリング部材は取り替える必要があるのに対し、センタリング部材を取り付けるドリフトバー等のバーは取り替える必要がないことに着眼した。そして、従来のようなセンタリング部材ではなく、バーに撮像装置を設ければ、前記課題を解決し得ることに想到し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、管の内部に挿入され、該管の軸方向に移動するセンタリング部材と、前記センタリング部材の後端側に着脱自在に取り付けられ、前記センタリング部材を前記管の軸方向に移動させるためのバーと、前記バーに設けられた撮像装置と、演算処理装置とを備え、前記センタリング部材は、前記管の内部に挿入された状態で、前記撮像装置の中心軸が前記管の中心軸と略一致するように調整する機能を有し、前記バーは、その先端部において2つのバー片に分断され、前記撮像装置は、前記2つのバー片の間に介挿され、前記2つのバー片及び前記撮像装置が一体化されており、前記撮像装置は、前記2つのバー片の間に位置する前記管の内面に対して前記管の周方向に延びる環状のレーザ光を照射する照明手段と、前記照明手段と互いの中心軸が一致するように前記管の軸方向に対向して配置され、前記照明手段によって環状のレーザ光が照射された前記管の内面を撮像することで、環状のレーザ光が照射された部分が含まれる撮像画像である環状ビーム画像を取得する撮像手段とを具備し、前記演算処理装置は、前記撮像手段によって取得された前記環状ビーム画像に画像処理を施すことで、前記管の内面に存在する欠陥を検出する、ことを特徴とする管の内面検査装置を提供する。
【0016】
本発明によれば、センタリング部材の後端側に着脱自在に取り付けられたバーに撮像装置が設けられているため、バーを軸方向に移動させてセンタリング部材を管の内部に挿入する際、仮にセンタリング部材と管との芯出し不良等の調整不良が生じていたとしても、センタリング部材が先に管に接触することになる。このため、撮像装置が管に接触して破損するおそれを大幅に低減可能である。
また、本発明によれば、外径の異なるセンタリング部材に共用することが可能なバーに撮像装置が設けられているため、外径の異なるセンタリング部材毎に撮像装置を設ける必要がなく、装置の製造コストやメンテナンスの手間を低減可能である。
【0017】
好ましくは、前記センタリング部材は、前記管のドリフト検査を実施するために用いられるドリフトゲージであり、前記バーは、前記管のドリフト検査を実施するために用いられるドリフトバーである。
【0018】
上記の好ましい構成によれば、ドリフト検査及び内面検査を同時に実施可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置の破損リスクや製造コストやメンテナンスの手間を低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る管の内面検査装置の概略構成を示す図である。
図2】環状ビーム画像の一例を示す図である。
図3】特許文献1で提案されている装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る管の内面検査装置について、センタリング部材がドリフトゲージであり、バーがドリフトバーである場合を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る管の内面検査装置(以下、適宜、単に「内面検査装置」という)の概略構成を示す図である。図1(a)は装置全体の概略構成を示す図であり、図1(b)は図1(a)における撮像装置近傍の詳細を示す断面図である。なお、図1(a)では演算処理装置の図示は省略している。
図1に示すように、本実施形態に係る内面検査装置100は、ドリフトゲージ1と、ドリフトバー2と、撮像装置3と、演算処理装置4とを備えている。また、本実施形態に係る内面検査装置100は、搬送ローラ5と、駆動ローラ6と、駆動源(モータ)7とを備えている。
【0022】
ドリフトゲージ1は、管Pのドリフト検査の際、管Pの内部に挿入され、管Pの軸方向に移動する部材である。ドリフトゲージ1の外径及び長さは、検査対象である管PのAPI規格に従って予め設定される。ドリフトゲージ1の軸方向の端部は、ドリフトゲージ1が管Pの内部に確実に挿入されるように、先窄まりのテーパ形状になっている。
【0023】
ドリフトバー2は、ドリフトゲージ1の後端側(ドリフトゲージ1の挿入方向上流側。図1の左側)に着脱自在に取り付けられ、ドリフトゲージ1を管Pの軸方向に移動させるための部材である。ドリフトバー2は、その中心軸がドリフトゲージ1の中心軸と一致するように配置され、例えばピン留め(図示せず)によってドリフトゲージ1に着脱自在に取り付けられている。ドリフトゲージ1が管Pの内部に挿入され、ドリフトゲージ1の中心軸が管Pの中心軸に略一致する(芯出しされる)と、ドリフトバー2の中心軸、ひいてはドリフトバー2に設けられた撮像装置3の中心軸も、管Pの中心軸と略一致する(芯出しされる)ことになる。
【0024】
ドリフトバー2は、管Pの軸方向に移動可能なように、複数の搬送ローラ(具体的には、Vローラ)5によって支持されている。そして、駆動源(具体的には、モータ)7に連結された駆動ローラ6を駆動することで、ドリフトバー2が管Pの軸方向に移動し、ドリフトバー2に取り付けられたドリフトゲージ1も管Pの軸方向に移動することになる。ドリフトバー2の長さ(撮像装置3も含めた全長)は、検査対象の管Pの長さよりも長く設定されている。これにより、ドリフトゲージ1を管Pの内部の全長に亘って移動させることが可能である。また、ドリフトバー2の外径は、ドリフトゲージ1の外径よりも小さく設定されている。これにより、ドリフトゲージ1の移動がドリフトバー2によって阻害されることがない。
【0025】
撮像装置3は、ドリフトバー2に設けられている。具体的には、撮像装置3は、ドリフトバー2の先端部(軸方向両端部のうち、ドリフトゲージ1の挿入方向下流側の端部)に設けられている。より具体的には、ドリフトバー2は、先端部において2つのバー片2A、2Bに分断されており、2つのバー片2A、2Bの間に撮像装置3が介挿され、これらバー片2A、2B及び撮像装置3が一体化されている。撮像装置3は、その中心軸がドリフトバー2の中心軸(バー片2A、2Bの中心軸)と一致するように介挿されている。撮像装置3の外径(後述の保持基板33の外径)は、ドリフトゲージ1の外径よりも小さく、ドリフトバー2の外径と略同等に設定されている。これにより、ドリフトゲージ1の移動が撮像装置3によって阻害されることがない。
【0026】
撮像装置3は、照明手段31と、撮像手段32とを具備する。また、本実施形態の撮像装置3は、保持基板33と、連結部材34とを具備する。
照明手段31及び撮像手段32は、互いの中心軸(管Pの軸方向に一致する)が一致するように対向して配置されている。
【0027】
照明手段31は、管Pの内面に対して管Pの周方向に延びる環状のレーザ光Lを照射する。具体的には、照明手段31は、レーザ光源311と、円錐形状の光学素子312とを具備する。
【0028】
レーザ光源311は、所定の波長を有するレーザ光を発振・出射する光源である。レーザ光源311としては、例えば、連続的にレーザ光を発振するCW(Continuous Wave)レーザ光源を用いることができる。レーザ光源311が発振するレーザ光の波長は、400nm〜800nm程度の可視光帯域に属する波長であることが好ましい。レーザ光源311は、演算処理装置4から出力される制御信号に基づき、レーザ光を発振する。
【0029】
光学素子312は、円錐形状のミラー又はプリズムを具備する光学素子であり、円錐面の頂点がレーザ光源311と中心軸方向に対向するように配置されている。レーザ光源311から出射したスポット状のレーザ光は、光学素子312の円錐面の頂点近傍に照射されて反射し、環状のレーザ光(環状のラインビーム)が発生することになる。ここで、円錐面の頂角が90°である場合には、図1(b)に示すように、レーザ光源311からのレーザ入射方向(中心軸方向)に対して直交する方向(鉛直方向)に、環状のレーザ光Lが照射されることになる。
【0030】
撮像手段32は、演算処理装置4から出力される制御信号に基づき、照明手段31によって環状のレーザ光Lが照射された管Pの内面を撮像することで、図2に示すような環状のレーザ光Lが照射された部分が含まれる撮像画像である環状ビーム画像を取得する。
図2に示すように、環状ビーム画像において、環状のレーザ光Lが照射された部分は明るく表示され(濃度値が大きくなり)、その他の部分は暗く表示される(濃度値が小さくなる)。環状のレーザ光Lが照射された部分にいわゆる模様系の欠陥が存在すると、レーザ光Lが照射された欠陥に相当する画素領域の濃度値が、レーザ光Lが照射された欠陥以外の部位に相当する画素領域の濃度値よりも小さくなる又は大きくなると考えられる。また、環状のレーザ光Lが照射された部分にいわゆる凹凸系の欠陥が存在すると、光切断法の原理により、欠陥の凹凸の大きさに応じてレーザ光Lが照射された欠陥に相当する画素領域の位置が変化(形状が変化)すると考えられる。
【0031】
撮像手段32としては、2次元CCD(Charge Coupled Device)カメラ、又は、2次元CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラが好適に用いられる。
撮像手段32が具備する光学レンズの焦点距離、画角θ、照明手段31(光学素子312)と撮像手段32の撮像素子との間の距離等は、管Pの内面に照射された環状のレーザ光Lの全体を撮像できるように設定される。画角θは、例えば30〜60°程度に設定することが好ましい。画角θを過度に小さくすると、撮像手段32で受光する環状のレーザ光Lの管P内面での反射光(散乱光)の強度が弱くなり、管Pの内面に欠陥が存在していなくても、環状ビーム画像における環状のレーザ光Lに相当する画素領域の濃度値が低下する。その結果、模様系の欠陥の検出精度が低下するおそれがあると考えられる。また、画角θを過度に大きくすると、管P内面の凹凸に対する環状のレーザ光Lが照射された部分の位置(形状)変化量が小さくなる。その結果、凹凸系の欠陥の検出精度が低下するおそれがあると考えられる。このため、前述のように、画角θは、例えば30〜60°程度に設定することが好ましい。
【0032】
照明手段31及び撮像手段32は、それぞれ略円形の保持基板33に固定されており、これら2つの保持基板33は、1つ又は複数の連結部材34によって互いに連結されている。また、2つの保持基板33は、それぞれバー片2A、2Bに取り付けられている。照明手段31及び撮像手段32が、保持基板33及び連結部材34によって固定されることで、一体化された撮像装置3が形成されている。
【0033】
保持基板33及び連結部材34の材質については、撮像装置3に必要と考えられる機械的強度等に応じて適宜選択すればよい。連結部材34の本数も、撮像装置3に必要と考えられる機械的強度等に応じて適宜設定すればよく、1本であってもよいし、複数本であってもよい。ただし、照明手段31によって照射される環状のレーザ光Lのうち、連結部材34によって遮蔽されるレーザ光が過度に生じないように、機械的強度に問題がない限り少ない本数にすることが好ましい。複数本の連結部材34を設ける場合には、保持基板33の周方向に沿って等間隔に配置することが好ましい。連結部材34の太さ(例えば、円柱状の連結部材34である場合には外径)は、照明手段31によって照射される環状のレーザ光Lのうち、連結部材34によって遮蔽されるレーザ光が過度に生じないように、機械的強度に問題がない限り細くすることが好ましい。
【0034】
演算処理装置4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置、出力装置等により構成され、撮像装置3による管Pの撮像制御を実施すると共に、撮像装置3(撮像手段32)によって取得された環状ビーム画像に画像処理を施すことで、管Pの内面に存在する欠陥を検出する。
本実施形態の演算処理装置4は、ドリフトバー2の外部に設けられ、撮像装置3と有線又は無線によって接続されている。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、撮像装置3と同様に、演算処理装置4をドリフトバー2に設けることも可能である。
【0035】
具体的には、撮像制御に関し、演算処理装置4は、撮像装置3が管Pの端面(撮像装置3が挿入される側の端面)に近接したタイミングでレーザ光源311に対して制御信号を出力し、これによりレーザ光源311はレーザ光を発振する。また、駆動ローラ6等にPLG(Pulse Logic Generator)が取り付けられており、このPLGから、撮像装置3が一定距離(例えば0.5mm)移動する毎に(駆動ローラ6等が一定角度回転する毎に)PLG信号が出力され、演算処理装置4に入力される。演算処理装置4は、撮像装置3が管Pの端面(撮像装置3が挿入される側の端面)に近接してからPLG信号が入力される毎に、撮像手段32に対して制御信号を出力し、これにより撮像手段32は管Pの内面を一定のピッチで撮像する。
【0036】
また、画像処理に関し、演算処理装置4は、環状ビーム画像における環状のレーザ光Lが照射された部分の濃度値及び形状に関する特徴量を画像処理によって算出し、この算出した特徴量に基づき、欠陥を検出するのみならず、欠陥の種別や有害度を判定することも可能である。演算処理装置4の実施する画像処理の具体的な内容については、特許文献1と同様の画像処理を適用可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0037】
以上に説明した本実施形態に係る内面検査装置100によれば、ドリフトゲージ1の後端側に着脱自在に取り付けられたドリフトバー2に撮像装置3が設けられているため、ドリフトバー2を軸方向に移動させてドリフトゲージ1を管Pの内部に挿入する際、仮にドリフトゲージ1と管Pとの芯出し不良等の調整不良が生じていたとしても、ドリフトゲージ1が先に管Pに接触することになる。このため、撮像装置3が管Pに接触して破損するおそれを大幅に低減可能である。
また、本実施形態に係る内面検査装置100によれば、外径の異なるドリフトゲージ1に共用されるドリフトバー2に撮像装置3が設けられているため、外径の異なるドリフトゲージ1毎に撮像装置3を設ける必要がなく、装置の製造コストやメンテナンスの手間を低減可能である。
【0038】
なお、照明手段31によって照射される環状のレーザ光Lのうち、連結部材34によって遮蔽されるレーザ光は、管Pの内面に照射されないため、このレーザ光が照射されない領域は検査のできない不感帯になる。この不感帯が小さければ、特に対処しなくても実質的な問題は生じない。しかしながら、連結部材34の本数や太さに応じて、無視できない程度に不感帯が大きくなるようであれば、不感帯を無くすための方策が必要である。
【0039】
連結部材34に起因した不感帯を無くすための方策として、例えば、ドリフトバー2を周方向に回転させるためのローラ等の回転駆動機構(図示せず)を設け、この回転駆動機構でドリフトバー2を回転させることで、ドリフトバー2に設けられた撮像装置3を回転させる(この際、ドリフトバー2に取り付けられたドリフトゲージ1も一体的に回転することになる)ことが考えられる。撮像装置3が周方向に回転することで、レーザ光が照射されない領域の位置も回転する。例えば、ドリフトゲージ1の挿入方向(図1(a)の右方向)に撮像装置3を移動させて管Pの内面検査を実施した後、この挿入方向の内面検査ではレーザ光が照射されなかった領域にレーザ光が照射されるように、回転駆動機構によってドリフトバー2を回転させることで撮像装置3を回転させる。次いで、ドリフトゲージ1を引き抜く方向(図1(b)の左方向)に回転後の撮像装置3を移動させて管Pの内面検査を実施することで、連結部材34に起因した不感帯を無くすことが可能である。
また、撮像装置3を2つ設け、一方の撮像装置3では連結部材34により遮蔽されてレーザ光が照射されない領域に他方の撮像装置3のレーザ光が照射されるように、双方の撮像装置3の周方向位置を調整しておくことでも、連結部材34に起因した不感帯を無くすことが可能である。
【0040】
本実施形態では、ドリフトバー2の長さが検査対象の管Pの長さよりも長く設定されている例について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、管Pの長さの半分程度の長さに設定してもよい。そして、内面検査装置100を2つ用いて、管Pの一方の端部から一方の内面検査装置100のドリフトゲージ1を挿入し、管Pの中央部まで撮像装置3を移動させて管Pのドリフト検査及び内面検査を実施し、管Pの他方の端部から他方の内面検査装置100のドリフトゲージ1を挿入し、管Pの中央部まで撮像装置3を移動させて管Pのドリフト検査及び内面検査を実施することで、管Pの全長に亘るドリフト検査及び内面検査を実施することも可能である。
上記のように、管Pの一方の端部から中央部までの検査と、管Pの他方の端部から中央部までの検査とを実施する場合、特許文献1に記載の装置100’を用いたのでは、先に撮像装置3が管Pの端部から内部に挿入され、次いでドリフトゲージ1’が管Pの内部に挿入されるまで、撮像装置3の中心軸と管Pの中心軸とが一致し難い(芯ずれが生じ易い)。撮像装置3と管Pとの芯ずれが生じると内面検査の精度が低下するため、管Pの端部において、ドリフトゲージ1’が挿入されるまでにレーザ光Lが照射される管Pの領域は不感帯とせざるを得ない。
これに対して、本実施形態に係る内面検査装置100を用いれば、先にドリフトゲージ1が管Pの内部に挿入されることで、ドリフトゲージ1と管Pとの芯出し、ひいては撮像装置3と管Pとの芯出しがなされた後に、撮像装置3が挿入されるため、管端から精度良く内面検査を実施することが可能である。すなわち、本実施形態に係る内面検査装置100を用いれば、従来の装置100’を用いる場合のような管Pの端部において生じ得る不感帯が生じないという利点がある。
【0041】
また、本実施形態では、センタリング部材がドリフトゲージである場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、管の内部に挿入された状態で、撮像装置の中心軸が管の中心軸と略一致するように調整する機能を有するセンタリング部材である限りにおいて、種々の構成を採用可能である。バーについても同様に、ドリフトバーに限るものではなく、センタリング部材の後端側に着脱自在に取り付けられ、センタリング部材を管の軸方向に移動させるためのバーである限りにおいて、種々の構成を採用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・ドリフトゲージ
2・・・ドリフトバー
3・・・撮像装置
31・・・照明手段
32・・・撮像手段
4・・・演算処理装置
100・・・内面検査装置
P・・・管
図1
図2
図3