(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法により光ファイバ同士を接続した場合、接続損失が大きくなる可能性がある。接続損失を低減するためには、異なる径の光ファイバ同士をPC(Physical Contact)接続することが考えられるが、単純に異なる径の光ファイバ同士をPC接続した場合、両者の接続が十分ではなくなる場合がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、異なる径の光ファイバ同士を安定してPC接続することが可能な光接続構造及び光配線部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、
2つの光接続部品に含まれる光ファイバをPC接続する光接続構造であって、
第1光接続部品と、第2光接続部品と、を含み、
前記第1光接続部品は、第1光ファイバと、第1光ファイバを保持する第1保持部材と、を有し、
前記第2光接続部品は、第2光ファイバと、第2光ファイバを保持する第2保持部材と、を有し、
前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、それぞれ、互いに対向する前端面及び後端面と、前記前端面と前記後端面との間の内部に設けられた、ファイバ孔と、を有し、
前記第1光ファイバは、前記第1保持部材の前記ファイバ孔に前記後端面側から導入されると共に、前記第1保持部材の前記前端面の前記ファイバ孔の端部の開口部から先端面が突出した状態で、前記第1保持部材に対して接着固定され、
前記第2光ファイバは、前記第2保持部材の前記ファイバ孔に前記後端面側から導入されると共に、前記第2保持部材の前記前端面の前記ファイバ孔の端部の開口部から先端面が突出した状態で、前記第2保持部材に対して接着固定され、
前記第1光ファイバの先端面と前記第2光ファイバの先端面とが当接し、
前記第1光ファイバの直径は、前記第2光ファイバの直径より小さく、
前記第1光ファイバの先端面の曲率は、前記第2光ファイバの先端面の曲率よりも小さい、光接続構造
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異なる径の光ファイバ同士を安定してPC接続することが可能な光接続構造及び光配線部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本願の光接続構造は、2つの光接続部品に含まれる光ファイバをPC接続する光接続構造であって、第1光接続部品と、第2光接続部品と、を含み、前記第1光接続部品は、第1光ファイバと、第1光ファイバを保持する第1保持部材と、を有し、前記第2光接続部品は、第2光ファイバと、第2光ファイバを保持する第2保持部材と、を有し、前記第1保持部材及び前記第2保持部材は、それぞれ、互いに対向する前端面及び後端面と、前記前端面と前記後端面との間の内部に設けられた、ファイバ孔と、を有し、前記第1光ファイバは、前記第1保持部材の前記ファイバ孔に前記後端面側から導入されると共に、前記第1保持部材の前記前端面の前記ファイバ孔の端部の開口部から先端面が突出した状態で、前記第1保持部材に対して接着固定され、前記第2光ファイバは、前記第2保持部材の前記ファイバ孔に前記後端面側から導入されると共に、前記第2保持部材の前記前端面の前記ファイバ孔の端部の開口部から先端面が突出した状態で、前記第2保持部材に対して接着固定され、前記第1光ファイバの先端面と前記第2光ファイバの先端面とが当接し、前記第1光ファイバの直径は、前記第2光ファイバの直径より小さく、前記第1光ファイバの先端面の曲率は、前記第2光ファイバの先端面の曲率よりも小さい。
【0011】
上記の実施形態に係る光接続構造では、互いに直径が異なる第1光ファイバと第2光ファイバをPC接続する際に、直径が小さい第1光ファイバの先端面の曲率を、直径が大きい第2光ファイバの先端面の曲率よりも小さくすることで、より小さな押圧力でPC接続を実現することができる。そのため、互いに異なる直径の光ファイバのPC接続の際にも、押圧時に発生する光ファイバと保持部材との間の接着固定部分の弾性変形に由来する光ファイバの後退を抑制することができ、PC接続を安定して実現することができる。
【0012】
(2)また、本願発明は、上述の(1)に記載の光接続構造において、前記第2光ファイバの先端面の曲率は、前記第1光ファイバの先端面の曲率の3倍〜5倍である態様とすることができる。
【0013】
第1光ファイバの先端面の曲率と第2光ファイバの先端面の曲率とを上記の関係とすることで、小さな押圧力での光ファイバ同士のPC接続を実現すると共に、軸ずれに由来する接続損失を低減した光接続構造を実現することができる。
【0014】
(3)また、本願発明は、上述の(1)、(2)に記載の光接続構造において、前記第1光ファイバの直径は、70μm〜90μmである態様とすることができる。
【0015】
本願発明に係る光接続構造は、第1光ファイバの直径が70μm〜90μmである場合に好適に用いることができる。
【0016】
(4)また、本願発明は、上述の(1)〜(3)に記載の光接続構造において、前記第1光接続部品は、複数の前記第1光ファイバを有し、前記複数の第1光ファイバは、テープ心線を構成し、前記第1保持部材は、前記複数の第1光ファイバを含むテープ心線を保持するMTフェルールであり、前記第2光接続部品は、複数の前記第2光ファイバを有し、前記複数の第2光ファイバは、テープ心線を構成し、前記第2保持部材は、前記複数の第2光ファイバを含むテープ心線を保持するMTフェルールである態様とすることができる。
【0017】
本願発明に係る光接続構造は、第1接続部品及び第2接続部品がテープ心線である場合にも、好適に用いることができる。すなわち、上記の光接続構造によれば、互いに異なる直径の光ファイバから構成される2つのテープ心線同士の光ファイバ毎のPC接続を安定して実現することができる。
【0018】
(5)本願の光配線部材は、上述の(1)〜(4)の光接続構造を複数有する装置に含まれる光配線部材であって、前記複数の光接続構造に含まれる複数の第1光接続部品と、前記複数の第1光接続部品に対して光学的に接続する、前記第1光ファイバと同径の光ファイバによる光配線部と、を有する。
【0019】
上記の光配線部材によれば、より直径の小さな第1光ファイバと同径の光ファイバによる光配線部を含んで光配線部材が構成されるので、光配線部材を小型化できる。
【0020】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明に係る光接続構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る光接続構造に用いられる光接続部品を含む、光接続部品の分解斜視図である。また、
図2は、光接続部品を組み立てる際の断面を模式的に示した図である。本実施形態に係る光接続構造は、光接続部品に含まれる光ファイバの先端面同士をPC(Physical Contact)接続する構造である。以下の実施形態では、まず、光接続部品の基本構造を説明した後、本実施形態に係る光接続構造の特徴を説明する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、光接続部品1は、保持部材としてのフェルール10と、ブーツ20と、テープ心線30と、を含んで構成されている。テープ心線30は、複数の光ファイバ31の集合体として実現される。なお、ブーツ20は、光接続部品1に含まれない場合がある。また、光ファイバ31の集合体はテープ心線30ではない場合がある。
【0023】
フェルール10は、樹脂製の光接続部品用の部材であり、例えばMTフェルールである。フェルール10は、前端面10aと、前端面10aと対向する後端面10bとを有する。そして、前端面10aと後端面10bとの間の前端面10a側に、テープ心線30に含まれる光ファイバを挿入する複数のファイバ孔11が所定の間隔(ピッチ)で設けられる。後端面10b側には、ブーツ20が挿入されるブーツ挿入孔12が設けられる。複数のファイバ孔11は、ブーツ挿入孔12と連通している。
【0024】
フェルール10の前端面10aには、ガイドピンを挿入する際に用いられるガイドピン孔13が2つ設けられている。また、4つのファイバ孔11が、2つのガイドピン孔13の間に配置されている。4つのファイバ孔11は、略同一平面上に配置され、前端面10aから後端面10bへ向けて平行に延びている。ファイバ孔11の径は、後述のテープ心線30の光ファイバに対応して設定される。そのため、例えば、テープ心線30の光ファイバとして直径120μmの細径ファイバが用いられる場合、ファイバ孔11の径も120μmとされる。また、テープ心線30の光ファイバとして直径80μmの細径ファイバが用いられる場合、ファイバ孔11の径も80μmとされる。
【0025】
また、
図2に示すように、フェルール10のファイバ孔11の間隔(ピッチ)は、例えば、250μmとされる。複数のファイバ孔11は、それぞれ前端面10aに開口部11aを有する。開口部11aは、線状に一列に並んで配置されるが、隣接する開口部11aの間隔(ピッチ)は、250μmとなる。複数のファイバ孔11は、それぞれブーツ挿入孔12側にも開口部11bを有する。開口部11bについても、開口部11aと同様に、線状に一列に並んで配置され、隣接する開口部11bの間隔(ピッチ)は、250μmとなる。
【0026】
フェルール10は、前端面10aと後端面10bとは異なる面に、外部からファイバ孔11及びブーツ挿入孔12と連通する窓を設けてもよい。この窓は、光接続部品1を製造する際の光ファイバの位置合わせ、接着剤の導入や接着剤による固定の確認等に用いることができる。
【0027】
ブーツ20は、樹脂製の光接続部品用部材である。ブーツ20は、第1端面20aと、第1端面20aと対向する第2端面20bとを有する。そして、第1端面20aと第2端面20bとの間に、テープ心線30を挿入する貫通孔21が設けられる。ブーツ20は、テープ心線30の保護に用いられ、その形状は、テープ心線30等の形状に応じて適宜設計される。
【0028】
テープ心線30は、複数本の光ファイバ31と、光ファイバ31を被覆する樹脂被覆32(被覆)と、を含む。光ファイバ31は、光導波方向と交差する方向に沿って一列に並んでいる。本実施形態では、4本の光ファイバ31が一列に並んでいる例を示している。樹脂被覆32は、複数本の光ファイバ31を一体的に覆う樹脂(テープ材)である。
図1等では、樹脂被覆32が、複数本の光ファイバ31それぞれの周囲に設けられているが、樹脂被覆32は、表面が平坦となるように複数本の光ファイバ31を一括して被覆する構成としても良い。樹脂被覆32により、複数本の光ファイバ31が一体化されて、テープ心線30とすることができる。複数本の光ファイバ31としては、例えば、シングルモードの光ファイバを用いることができるが、マルチモードの光ファイバを用いてもよい。
【0029】
図2に示すように、テープ心線30の各光ファイバ31は、先端部分の樹脂被覆32が除去されている。この状態で、テープ心線30に取り付けられたブーツ20をフェルール10のブーツ挿入孔12に挿入すると共に、第2端面20b側の先端の樹脂被覆32が除去された光ファイバ31(裸ファイバ)をそれぞれファイバ孔11に挿入する。そして、
図2に示すように、各光ファイバ31の先端面がファイバ孔11の開口部11aから突出する状態とする。これにより、フェルール10、ブーツ20及びテープ心線30が一体化される。この状態で、接着剤等を用いて複数の光ファイバ31、フェルール10、ブーツ20及びテープ心線30を接着固定すると、本実施形態に係る光接続部品1が得られる。
【0030】
なお、開口部11aからの光ファイバ31の突出長は、例えば、数μm程度とされる。また、光ファイバ31の先端面は、曲率Rが1mm以上となるように、加工される。
【0031】
図3は、光接続部品1を含む光接続構造が適用された例を示している。本実施形態に係る光接続構造は、例えば、光接続部品1は、例えば、大容量のルータ装置またはサーバ装置等のバックプレーン(光配線板)等の光ファイバによる配線構造を有する装置に用いられる。
図3は、ルータ装置におけるバックプレーン周辺を模式的に示したものである。ルータ装置100では、複数の配線ボード110がバックプレーン120(光配線板)に対して光接続部品1,2を介して接続されている。光接続部品1は、バックプレーン120側の光接続部品であり、光接続部品2は、配線ボード110側の光接続部品である。光接続部品2におけるフェルールの構造は、光接続部品1におけるフェルール10と同様である。
図3では、光接続部品1,2は互いに離間しているが、これらが接続されて、光接続構造7が実現される。
【0032】
バックプレーン120には、光接続部品1に対して光ファイバを介して光学的に接続された光配線部5が接続されている。光配線部5には、配線ボード110を他の配線ボードまたは他の機器等と接続するための光ファイバによる配線が設けられる。光配線部5に用いられる光ファイバは、光接続部品1に用いられる光ファイバと同径とされる。上記のバックプレーン120と、複数の光接続部品1と、光配線部5と、により、本実施形態に係る光配線部材130が構成される。なお、バックプレーン120は光配線部材130に含まれない場合がある。
【0033】
一般的にルータ装置100のような電子機器装置では、バックプレーン120を含む光配線部材130が収容されるスペースは小型化を求められている場合が多い。そこで、従来からの光ファイバ(例えば、ガラス径125μm)を用いたテープ心線ではなく、近年開発された細径ファイバ(例えば、ガラス径80μm)を用いたテープ心線により光配線部5を構成し、取り回しを行うことが検討されている。より直径が小さい光ファイバを用いて光配線部5を構成することで、光配線部5の小型化を実現することができ、光配線部材130全体としての小型化を進めることができる。
【0034】
光配線部材130に含まれる光配線部5において細径ファイバを用いている場合、光接続部品1を構成するフェルール10の前端面10aの開口部11aから突出する光ファイバ31(
図2参照)は、当然ながら細径ファイバとなる。
【0035】
一方、配線ボード110側では、従来のガラス径(直径)を有する光ファイバが用いられていることが多い。したがって、光接続部品2を構成するフェルール10の前端面10aの開口部11aから突出する光ファイバ31(
図2参照)は、従来の光ファイバとなる。
【0036】
図4は、光接続部品1と光接続部品2との接続部分、すなわち、本実施形態に係る光接続構造を示す図である。光接続構造7は、2つの光接続部品である第1光接続部品としての光接続部品1と、第2光接続部品としての光接続部品2と、を含む。以下の説明では、光接続部品1(第1光接続部品)と光接続部品2(第2光接続部品)とを区別するため、
図4に示すように、光接続部品1は、フェルール101(第1保持部材)、ブーツ201、及び、光ファイバ311(第1光ファイバ)を含んで構成され、光接続部品2は、フェルール102(第2保持部材)、ブーツ202、及び、光ファイバ312(第2光ファイバ)を含んで構成されるとする。
【0037】
光接続部品1では、フェルール101の前端面101aに設けられたファイバ孔111の開口部111aから、光ファイバ311の先端面311aが突出している。一方、光接続部品2では、フェルール102の前端面102aに設けられたファイバ孔112の開口部112aから、光ファイバ312の先端面312aが突出している。そして、光ファイバ311の先端面311a(特に、光ファイバのコア領域)と、光ファイバ312の先端面312a(特に、光ファイバのコア領域)と、PC接続されることで、光接続構造7が得られる。PC接続をする際には、光ファイバ311と光ファイバ312とを近付ける方向に両者を押し込み、光ファイバ311の先端面311aと光ファイバ312の先端面312aとを当接させて、押圧する。この押し込みを行う際の力を押圧力という。光ファイバ311,312を押圧する際には、光ファイバ311,312の先端面が変形し、両者が接触する面積が増大した状態で接着することで、両者が接続される。これにより、光ファイバ311,312の先端面の間にエアギャップが発生しない状態で、両者を接続することができる。
【0038】
ただし、上述したように、光ファイバ311と光ファイバ312とは互いに異なる直径を有しているとする。
図4に示す例では、光ファイバ311の直径が光ファイバ312の直径よりも小さい。したがって、互いに異なる直径の光ファイバ311,312をPC接続することになる。このように、互いに異なる直径の光ファイバ311,312をPC接続する場合には、同じ直径の光ファイバ同士のPC接続と比較すると、安定したPC接続を実現することが困難となる場合がある。
【0039】
まず、同じ直径の光ファイバ同士のPC接続では、2つの光ファイバを突き合わせて押圧する際に、押圧力に対応する光ファイバの光軸方向に沿った押圧力とは逆向きの力(抗力)が2つの光ファイバの双方にかかる。上記の光軸方向に沿った力を受けて、光ファイバをフェルールに固定している接着剤が弾性変形する。そのため、光ファイバは、フェルールに対して後退する(2つの光ファイバが離間する方向へ移動する)。ただし、PC接続では、この光ファイバの後退を考慮して光ファイバを押し込む力を制御するため、光ファイバ同士の接続は安定したものとなる。
【0040】
一方、互いに異なる直径の光ファイバを突き合わせた場合、相手方の光ファイバとのPC接続の安定性は、接着する領域の面積が小さい、径が小さい側の光ファイバの影響を受ける。すなわち、径の小さい方の光ファイバの直径によっては、PC接続時の光ファイバの接着強度は、従来の光ファイバ同士の接続よりも小さくなることが考えられる。また、直径が小さい方の光ファイバは、2つの光ファイバを突き合わせた際に発生する光ファイバの光軸方向に沿った押圧力とは逆向きの力(抗力)の影響を受けやすい。すなわち、直径が小さいということは、光ファイバの側面にかかる力(単位面積辺りにかかる力)が大きくなる。そのため、光ファイバをフェルールに固定している接着剤の弾性変形が、直径が大きな光ファイバよりも大きくなり、直径の小さい光ファイバがフェルールに対して後退しやすくなる。その結果、光ファイバ同士のPC接続が不安定となり、場合によっては光ファイバ同士が離間する(PC外れが発生する)ことも考えられる。
【0041】
そこで、本実施形態に係る光接続構造7では、互いに直径が異なる光ファイバ311,312をPC接続する際に、その先端面の形状を調整することで、PC接続の安定性を高めている。具体的には、直径が小さい光ファイバの先端面の曲率(R)は、直径が大きい光ファイバの先端面の曲率よりも小さい。
【0042】
図5(A)に示すように、光接続構造7のうち、直径が小さい側の光ファイバ311の先端面311aの曲率をR1とし、直径が大きい側の光ファイバ312の先端面312aの曲率をR2とした場合に、R1<R2の関係を満たす。このような構成とすることで、光ファイバ311,312を押圧してPC接続を行う際に、直径が小さく曲率が小さい側の光ファイバ311の先端面311aが、曲率が大きい場合と比較して変形が速くなる。すなわち、押圧力が小さい段階で光ファイバ311の先端面311aの変形が進むため、押圧力が小さい段階でPC接続を実現することができる。押圧力が小さいと、光ファイバ311,312の側面にかかる光軸方向に沿った押圧力とは逆向きの力(抗力)が小さくなるため、光ファイバ311,312の側面にかかる力も小さくすることができる。すなわち、光ファイバ311,312の後退を抑制することができる。したがって、光ファイバ311,312のうち、特に直径が小さい側の光ファイバ311の後退を抑制することができるため、光ファイバ311,312のPC接続が不安定になることを防ぐことができる。
【0043】
このように、本実施形態に係る光接続構造7では、互いに直径が異なる光ファイバ311,312をPC接続する際に、直径が小さい光ファイバ311の先端面311aの曲率(R1)を、直径が大きい光ファイバ312の先端面312aの曲率(R2)よりも小さくすることで、より小さな押圧力でPC接続を実現することができる。そのため、互いに異なる直径の光ファイバのPC接続の際にも、押圧時に発生する光ファイバと保持部材との間の接着固定部分の弾性変形に由来する光ファイバの後退を抑制することができ、PC接続を安定して実現することができる。
【0044】
なお、直径が互いに異なる2つの光ファイバにおける先端面の曲率とPC接続との関係について、さらに説明する。
図5(B)は、光ファイバ311の先端面311aと光ファイバ312の先端面312aとが同じ曲率を有する場合を示している。
図5(B)では、光ファイバ311,312の曲率が比較的大きな状態を示している。このような場合、光ファイバ311,312の先端面311a,312aの両方が、比較的平坦な形状となるため、先端面を変形されたPC接続を実現するためには、大きな押圧力が必要となる。その場合、押圧力に対応する抗力も大きくなるため、上述したように、光ファイバ311,312(特に直径が小さい側の光ファイバ311)の側面にかかる力が大きくなり、光ファイバ311,312の後退量が増大する。そのため、PC接続が不安定となることが考えられる。
【0045】
一方、
図5(B)と同様に光ファイバ311の先端面311aと光ファイバ312の先端面312aとが同じ曲率を有しながら、その曲率を比較的小さくすることも可能である。このような場合、光ファイバ311,312の先端面311a,312aの両方が、比較的尖った形状となるため、先端面は変形しやすくなる。そのため、PC接続を実現するための押圧力は小さくなる。したがって、押圧力に対応する抗力も小さくなり、上述したように、光ファイバ311,312(特に直径が小さい側の光ファイバ311)の後退量は減少する。しかしながら、両方の先端面が尖っていると、軸ずれが発生しやすくなる。そのため、PC接続後の光ファイバ311,312の間において接続損失が増大する可能性がある。
【0046】
これに対して、本実施形態に係る光接続構造7では、互いに直径が異なる光ファイバ311,312をPC接続する際に、直径が小さい光ファイバ311の先端面311aの曲率(R)を、直径が大きい光ファイバ312の先端面312aの曲率(R)よりも小さくする。この結果、両光ファイバの先端面の曲率を小さくする場合と比較して、光ファイバ接続時の軸ずれを抑制することができ、接続損失の増大が防がれる。また、両光ファイバの先端面の曲率を大きくする場合と比較して、小さな押圧力でPC接続することができるため、光ファイバの後退を抑制することができ、安定したPC接続を実現することができる。
【0047】
光接続構造7において、直径が小さい光ファイバ311の先端面311aの曲率(R1)、及び、直径が大きい光ファイバ312の先端面312aの曲率(R2)をどのように設定するかは、光ファイバ311,312の太さにも応じて適宜設計することができる。なお、曲率R1及び曲率R2はどちらも1mm以上とされる。曲率R1,R2を1mmよりも小さくすると2つの光ファイバのPC接続を適切に行うことができない可能性がある。また、曲率R1と曲率R2は、R2/R1が3〜5の範囲であることが好ましい。すなわち、曲率R2は、曲率R1の3倍〜5倍の範囲であることが好ましい。曲率R1,R2を上記の関係とすることで、小さな押圧力でのPC接続を実現すると共に、軸ずれに由来する接続損失を低減した光接続構造を実現することができる。
【0048】
なお、本実施形態に係る光接続構造7は、上記実施形態で説明したように、従来から用いられている直径125μmの光ファイバと、直径80μm程度の細径ファイバと、の接続に好適に用いられる。すなわち、光ファイバ311は、直径が70μm〜90μmの範囲にあることが好ましい。上述したように、光接続構造7が適用されるサーバ装置等の装置では、光配線部材130を構成する光接続部品1において細径ファイバが用いられて、配線ボード110側の光接続部品2は従来の直径125μmの光ファイバが用いられる場合が考えられる。本実施形態に係る光接続構造7は、上記の装置に対して好適に用いることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、光接続構造7に用いられている光ファイバ311及び光ファイバ312がいずれもテープ心線に含まれる光ファイバであり、光ファイバ311及び光ファイバ312がそれぞれフェルール101,102(MTフェルール)である場合について説明した。光接続構造7は、上記のように、MTフェルールを用いてテープ心線に含まれる複数の光ファイバ同士をPC接続する場合に好適に用いられる。多心の場合、開口部からの各光ファイバの突出長には、僅かながらバラつきがある。それぞれ突出長にバラつきのある2つの光コネクタをPC接続すると、突出長が最も大きい光ファイバが最初に当接し、突出長が小さい光ファイバが後に当接する。したがって、小さい直径の光ファイバの先端面の曲率が大きいと、先端面が変形し難いため、先端面の変形に大きい押圧力が必要となり、最初に当接した小さい直径の光ファイバの接着剤の弾性変形に大きく影響を与え、PC接続が不安定となる虞がある。そこで、直径が小さい方の光ファイバの先端面の曲率を小さくすると、小さい押圧力で先端面が大きく変形できるので、最後に当接する光ファイバが当接するまで、早く当接した光ファイバには小さい押圧力しかかからない。したがって、直径が小さい方の光ファイバの先端面の曲率を小さくすると、複数の光ファイバの突出長のバラつきの影響を緩和することができる。また、複数の光ファイバ全体のPC接続に必要な押圧力を小さくすることができる。すなわち、本実施形態に係る光接続構造によれば、互いに異なる直径の光ファイバから構成される2つのテープ心線同士の複数の光ファイバそれぞれのPC接続を安定して実現することができる。なお、説明を簡略化するために、例として、4心のテープ心線、及び4心のMTフェルールの場合を示したが、光ファイバの本数、及びファイバ孔の数は、これに限定されない。
【0050】
また、本実施形態に係る光配線部材130は、上記実施形態で説明した光接続構造7を複数有する装置に含まれる光配線部材であって、複数の光接続構造7に含まれる複数の第1光接続部品としての光接続部品1と、複数の光接続部品1に対して光学的に接続する、光接続部品1に含まれる光ファイバと同径の光ファイバによる光配線部5と、を有する。このような光配線部材130によれば、より直径の小さな第1光ファイバである上記実施形態では、光ファイバ311と同径の光ファイバによる光配線部5を含んで光配線部材130が構成されるので、光配線部材を小型化できる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態に係る光接続構造及び光配線部材について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、テープ心線に対して取り付けられる光接続部品について説明したが、本発明に係る光接続構造は、光ファイバの集合体がテープ心線ではない場合についても適用できる。また、上記実施形態では、保持部材がMTフェルールである場合について説明したが、保持部材はMTフェルールとは異なる構造であってもよい。