特許第6907876号(P6907876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907876
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/30 20060101AFI20210708BHJP
   H01G 4/10 20060101ALI20210708BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C23C16/30
   H01G4/10
   H01G4/30 160
   H01G4/30 201A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-202835(P2017-202835)
(22)【出願日】2017年10月19日
(65)【公開番号】特開2019-73787(P2019-73787A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕雄
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/118902(WO,A1)
【文献】 特表2012−506021(JP,A)
【文献】 特開2012−184481(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/028215(WO,A1)
【文献】 特開2019−073491(JP,A)
【文献】 特表2012−517717(JP,A)
【文献】 特開2002−060944(JP,A)
【文献】 特開平09−227969(JP,A)
【文献】 特表2004−501760(JP,A)
【文献】 特表2015−509135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 −16/56
H01G 9/00 − 9/012
H01G 9/004− 9/06
H01G 4/00 − 4/10
H01G 4/14 − 4/22
H01G 4/224
H01G 4/255− 4/30
H01G 4/32 − 4/40
H01G 13/00 −13/06
C03C 15/00 −23/00
B32B 1/00 −43/00
C23C 14/00 −14/58
H01L 21/205、21/31
H01L 21/365、21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、原子層堆積法により、ニッケル層および酸化アルミニウム層を成膜する方法であって、
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成し、
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、酸化アルミニウム層を形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
基材上に、原子層堆積法により、ニッケル層、酸化アルミニウム層、ニッケル層および酸化アルミニウム層を成膜する方法であって、
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成し、
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、酸化アルミニウム層を形成し、
(3)上記工程(1)および(2)を繰り返して、前記酸化アルミニウム層上にニッケル層、および該ニッケル層上に酸化アルミニウム層を形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
基材上に、原子層堆積法により、ニッケル層、酸化アルミニウム層、窒化チタン層および酸化アルミニウム層を成膜する方法であって、
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成し、
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、該ニッケル層上に酸化アルミニウム層を形成し、
(3’)前記酸化アルミニウム層上に、原子層堆積法により、窒化チタン層を形成し、
(4’)前記窒化チタン層上に、原子層堆積法により、酸化アルミニウム層を形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記基材が、導電性多孔基材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が、金属焼結体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、該成膜方法により得られる積層体、および該積層体を有して成るコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高密度実装化に伴って、より高静電容量を有するコンデンサが求められている。このようなコンデンサとして、例えば、特許文献1には、焼結ナノ細孔電気キャパシタが開示されている。特許文献1のキャパシタは、金属焼結体の細孔に、原子層堆積法により誘電体層が形成され、さらにその上に電極が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012−517717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、高静電容量を得るために、大きな表面積を取得できる金属焼結体を基材として用いている。金属焼結体は、金属の粉末を焼成することにより得ることができる。ここで、金属焼結体は、焼結の程度が高いと、表面積が減少し、高静電容量を得るのに不利になる。一方、金属焼結体は、焼結の程度が低いと、粒子間の導通が悪くなり、等価直列抵抗(ESR)が高くなる。従って、高表面積かつ低ESRの金属焼結体を得ることは困難である。
【0005】
本発明の目的は、金属焼結体の表面に成膜した場合であっても、金属焼結体の表面積を高レベルで保持することができる成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、低焼結度の金属焼結体を用い、金属焼結体の表面を金属層で覆うことにより、金属粒子間の連結を補強し、ESRを低減することに思い至った。具体的には、本発明者らは、原子層堆積法により、基材の上に酸化ニッケルの層を形成し、次いで、アルミニウム層を形成する処理を行うことにより、上記酸化ニッケルが還元されてニッケル層となり、同時に前記ニッケル層上に酸化アルミニウム層が形成されることを見出し、本発明の方法に至った。かかる方法により得られる層は非常に薄くすることが可能であるので、該方法を利用することにより、高静電容量かつ低ESRの本発明のコンデンサを得るに至った。
【0007】
本発明の第1の要旨によれば、
基材上に、原子層堆積法により、ニッケル層および酸化アルミニウム層を成膜する方法であって、
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成し、
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、酸化アルミニウム層を形成する
ことを特徴とする方法
が提供される。
【0008】
本発明の第2の要旨によれば、
基材上に、原子層堆積法により、ニッケル層、酸化アルミニウム層、ニッケル層および酸化アルミニウム層を成膜する方法であって、
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成し、
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、酸化アルミニウム層を形成し、
(3)上記工程(1)および(2)を繰り返して、前記酸化アルミニウム層上にニッケル層、および該ニッケル層上に酸化アルミニウム層を形成する
ことを特徴とする方法
が提供される。
【0009】
本発明の第3の要旨によれば、
基材上に、原子層堆積法により、ニッケル層、酸化アルミニウム層、窒化チタン層および酸化アルミニウム層を成膜する方法であって、
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成し、
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、該ニッケル層上に酸化アルミニウム層を形成し、
(3’)前記酸化アルミニウム層上に、原子層堆積法により、窒化チタン層を形成し、
(4’)前記窒化チタン層上に、原子層堆積法により、酸化アルミニウム層を形成する
ことを特徴とする方法
が提供される。
【0010】
本発明の第4の要旨によれば、上記の方法により得られる層を有する積層体が提供される。
【0011】
本発明の第5の要旨によれば、
基材と、該基材上に位置するニッケル層と、該ニッケル層上に位置する酸化アルミニウム層とを有して成る積層体であって、
前記ニッケル層および酸化アルミニウム層の厚みが、それぞれ、100nm以下である積層体
が提供される。
【0012】
本発明の第6の要旨によれば、上記の積層体を有して成るコンデンサが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、基材上に厚みが非常に小さなニッケル層および酸化アルミニウム層を形成することができる。厚みが小さいので、焼結体の細孔表面に上記の層を形成した場合であっても、形成された層により焼結体の細孔が埋まることが抑制され、焼結体の表面積を保持することができる。そして、本発明の方法により層が形成された焼結体を用いることにより、高静電容量かつ低ESRのコンデンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一の態様におけるコンデンサ1を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)〜(d)は、図1のコンデンサ1の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の方法について説明する。
【0016】
本発明の方法は、基材上にニッケル層(以下、「Ni層」とも称する)および酸化アルミニウム層(以下、「AlO層」とも称する)を成膜する方法である。本発明の方法は、下記2つの工程を含む。
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成する工程
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、酸化アルミニウム層を形成する工程
【0017】
以下、工程(1)について説明する。
【0018】
まず、基材を準備する。
【0019】
上記基材は、特に限定されないが、好ましくは導電性多孔基材である。
【0020】
上記導電性多孔基材は、多孔構造を有し、表面が導電性であれば、その材料および構成は限定されない。例えば、導電性多孔基材としては、多孔質金属基材、または、多孔質シリカ材料、多孔質炭素材料もしくは多孔質セラミック焼結体の表面に導電性の層を形成した基材等が挙げられる。好ましい態様において、導電性多孔基材は、多孔質金属基材である。
【0021】
上記多孔質金属基材は、特に限定するものではないが、エッチング箔、金属焼結体、脱合金化法により合成される多孔金属等が挙げられる。好ましい態様において、多孔質金属基材は、金属焼結体である。
【0022】
上記多孔質金属基材を構成する金属としては、導電性であれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、タンタル、ニッケル、銅、チタン、ニオブおよび鉄の金属、ならびにステンレス、ジュラルミン等の合金等が挙げられる。
【0023】
好ましい態様において、基材は、ニッケル焼結体である。
【0024】
上記多孔質金属基材の多孔部の空隙率は、特に限定されないが、表面積を大きくして、コンデンサに用いた場合の静電容量をより大きくする観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは60%以上であり得る。また、上記多孔質金属基材の空隙率は、機械的強度を確保する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下であり得る。
【0025】
本明細書において、「空隙率」とは、多孔部において空隙が占める割合を言う。当該空隙率は、下記のようにして測定することができる。尚、上記多孔部の空隙は、コンデンサを作製するプロセスにおいて、最終的に誘電体層および上部電極などで充填され得るが、上記「空隙率」は、このように充填された物質は考慮せず、充填された箇所も空隙とみなして算出する。
【0026】
まず、多孔部を、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)加工で薄片に加工する。この薄片試料の所定の領域(例えば、5μm×5μm)を、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて撮影する。得られた画像を画像解析することにより、多孔部の金属が存在する面積を求める。そして、下記等式から空隙率を計算することができる。
空隙率(%)=((測定面積−基材の金属が存在する面積)/測定面積)×100
【0027】
上記多孔質金属基材の多孔部は、特に限定されないが、好ましくは30倍以上10,000倍以下、より好ましくは100倍以上5,000倍以下、さらに好ましくは500倍以上1,000倍以下の拡面率を有する。ここに、拡面率とは、単位投影面積あたりの表面積を意味する。単位投影面積あたりの表面積は、BET比表面積測定装置を用いて、液体窒素温度における窒素の吸着量から求めることができる。
【0028】
次に、上記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成する。
【0029】
原子層堆積法による酸化ニッケル層の形成は、従来行われている方法により行うことができる。
【0030】
一の態様において、上記原子層堆積法による酸化ニッケル層の形成において、Ni原料としてビス(アルキルシクロペンタジエニル)ニッケル、反応ガスとして水素が用いられる。上記アルキル基としては、炭素数が1〜6個のアルキル基、好ましくは炭素数が1〜4個のアルキル基、より好ましくはiso−プロピル基であり得る。
【0031】
一の態様において、上記原子層堆積法による酸化ニッケル層の形成において、酸化剤として、O、O、HO等が用いられる。
【0032】
上記酸化ニッケル層の厚みは、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらにより好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下であり得る。また、上記酸化ニッケル層の厚みは、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり得る。好ましい態様において、酸化ニッケル層の厚みは、1nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上80nm以下、より好ましくは10nm以上50nm以下、例えば30nm以下または20nm以下であり得る。
【0033】
以下、工程(2)について説明する。
【0034】
原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、酸化アルミニウム層を形成する。上記で得られた酸化ニッケル層上にアルミニウム層を成膜すると、酸化ニッケルの酸素をアルミニウムが奪い、酸化ニッケルがニッケルに還元され、アルミニウムが酸化アルミニウムに酸化する。かかる処理により、基材上にニッケル層および酸化アルミニウム層が形成される(以下、このような層構造を「Ni/AlO層」とも称する)。尚、xは任意の値であり、典型的には1.5である。即ち、典型的には酸化アルミニウムはAlである。
【0035】
原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理は、従来行われている方法により行うことができる。
【0036】
一の態様において、上記原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理において、原料としてジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、またはジメチルアルミニウムハイドライド、反応ガスとして水素が用いられる。
【0037】
上記ニッケル層の厚みは、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらにより好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下であり得る。ニッケル層の厚みを100nm以下とすることにより、細部への層形成が容易になる。ニッケル層の厚みをより小さくすることにより、より細部、例えばより小さな細孔への層形成が容易になる。また、上記ニッケル層の厚みは、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり得る。ニッケル層の厚みを1nm以上とすることにより、ESRを小さくすることができ、また十分な強度を得ることが可能になる。ニッケル層の厚みをより大きくすることにより、ESRをより小さくすることができ、強度をより高くすることができる。好ましい態様において、ニッケル層の厚みは、1nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上80nm以下、より好ましくは10nm以上50nm以下、例えば30nm以下または20nm以下であり得る。
【0038】
上記酸化アルミニウム層の厚みは、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらにより好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下であり得る。酸化アルミニウムの厚みを100nm以下とすることにより、細部への層形成が容易になる。また、コンデンサの誘電体層として利用した場合に、より大きな静電容量を得ることが可能になる。酸化アルミニウム層の厚みをより小さくすることにより、より細部、例えばより小さな細孔への層形成が容易になり、より大きな静電容量を得ることができる。また、上記酸化アルミニウム層の厚みは、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり得る。酸化アルミニウム層の厚みを1nm以上とすることにより、十分な強度を得ることが可能になる。また、コンデンサの誘電体層として利用した場合に、絶縁性が向上し、コンデンサの信頼性および耐電圧性が向上する。酸化アルミニウム層の厚みをより大きくすることにより、強度をより高くし、より絶縁性を向上することができる。好ましい態様において、酸化アルミニウム層の厚みは、1nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上80nm以下、より好ましくは10nm以上50nm以下、例えば30nm以下または20nm以下であり得る。
【0039】
本発明の方法によれば、得られるNi層およびAlO層の厚みを小さくすることができる。従って、細孔に層を形成した場合であっても、細孔を潰すことなく層形成することができる。
【0040】
以上、本発明の成膜方法について説明したが、本発明は上記の工程に加え、さらなる成膜工程を含む方法をも提供する。
【0041】
一の態様において、本発明は、
基材上に、原子層堆積法により、ニッケル層、酸化アルミニウム層、ニッケル層および酸化アルミニウム層を成膜する方法であって、
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成し、
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、酸化アルミニウム層を形成し、
(3)上記工程(1)および(2)を繰り返して、前記酸化アルミニウム層上にニッケル層、および該ニッケル層上に酸化アルミニウム層を形成する
ことを特徴とする方法
であり得る。
【0042】
本態様の方法は、上記の工程(1)および(2)を繰り返すことにより、基材上にNi/AlO/Ni/AlO層を形成することができる。かかる方法により得られる積層体は、コンデンサにおいて好適に使用することができる。即ち、基材と基材上のNi層が電極として機能し、その上のAlO層が誘電体層として機能し、その上のNi層が電極として機能する。さらに、かかるNi層上にAlOが存在することから、Ni層の酸化を抑制することができる。
【0043】
一の態様において、本発明は、
基材上に、原子層堆積法により、ニッケル層、酸化アルミニウム層、窒化チタン層および酸化アルミニウム層を成膜する方法であって、
(1)前記基材上に、原子層堆積法により、酸化ニッケル層を形成し、
(2)原子層堆積法によるアルミニウム成膜処理を行うことにより、前記酸化ニッケル層を還元してニッケル層とすると同時に、該ニッケル層上に酸化アルミニウム層を形成し、
(3’)前記酸化アルミニウム層上に、原子層堆積法により、窒化チタン層を形成し、
(4’)前記窒化チタン層上に、原子層堆積法により、酸化アルミニウム層を形成する
ことを特徴とする方法
であり得る。
【0044】
本態様の方法は、上記の工程(1)および(2)の後に、(3’)窒化チタン層の成膜、(4’)酸化アルミニウム層の成膜を行うことにより、基材上にNi/AlO/TiN/AlO層を形成することができる。典型的には、上記の工程(1)、(2)、(3’)および(4’)を繰り返すことにより、成膜される。かかる方法により得られる積層体は、コンデンサにおいて好適に使用することができる。即ち、基材と基材上のNi層が電極として機能し、その上のAlO層が誘電体層として機能し、その上のTiN層が電極として機能する。さらに、かかるTiN層上にAlO層が存在することから、TiN層の劣化を抑制することができる。
【0045】
工程(3’)における原子層堆積法による窒化チタン層の形成は、従来行われている方法により行うことができる。
【0046】
一の態様において、上記原子層堆積法による窒化チタン層の形成において、原料として四塩化チタン、反応ガスとしてアンモニアが用いられる。
【0047】
工程(4’)における原子層堆積法による酸化アルミニウム層の形成は、従来行われている方法により行うことができる。
【0048】
一の態様において、上記原子層堆積法による酸化アルミニウム層の形成において、原料としてトリメチルアルミニウム、反応ガスとしてオゾンが用いられる。
【0049】
本発明は、上記の本発明の方法により得られる層を有する積層体をも提供する。
【0050】
一の態様において、本発明は、基材と、該基材上に位置するニッケル層と、該ニッケル層上に位置する酸化アルミニウム層とを有して成る積層体であって、
上記ニッケル層および酸化アルミニウム層の厚みが、それぞれ、100nm以下である積層体
を提供する。
【0051】
上記の積層体は、コンデンサにおける使用に関して有利である。具体的には、基材上に存在するNi層が基材のESRを低減し、また、基材の強度を補強することができる。また、誘電体層として機能するAlO層の厚みが小さいので大きな静電容量を得ることができる。
【0052】
一の態様において、本発明は、基材と、該基材上に位置するニッケル層と、該ニッケル層上に位置する酸化アルミニウム層と、該酸化アルミニウム層上に位置するニッケル層と、該ニッケル層上に位置する酸化アルミニウム層とを有して成る積層体(即ち、基材上にNi/AlO/Ni/AlO層を有する積層体)であって、
上記ニッケル層および酸化アルミニウム層の厚みが、それぞれ、100nm以下である積層体
を提供する。
【0053】
一の態様において、本発明は、基材と、該基材上に位置するニッケル層と、該ニッケル層上に位置する酸化アルミニウム層と、該酸化アルミニウム層上に位置する窒化チタン層と、該窒化チタン層上に位置する酸化アルミニウム層とを有して成る積層体(即ち、基材上にNi/AlO/TiN/AlO層を有する積層体)であって、
少なくとも基材上のニッケル層およびその上の酸化アルミニウム層の厚みが、それぞれ、100nm以下である積層体
を提供する。
【0054】
好ましい態様において、上記基材は導電性多孔基材である。より好ましくは、上記基材は金属焼結体、特にニッケル焼結体である。
【0055】
上記基材が導電性多孔基材である場合、積層体の多孔部の空隙率は、特に限定されないが、表面積を大きくして、コンデンサに用いた場合の静電容量をより大きくする観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、さらにより好ましくは60%以上であり得る。また、上記積層体の空隙率は、機械的強度を確保する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下であり得る。
【0056】
上記基材が導電性多孔基材である場合、上記積層体の多孔部は、特に限定されないが、好ましくは30倍以上10,000倍以下、より好ましくは100倍以上5,000倍以下、さらに好ましくは500倍以上1,000倍以下の拡面率を有する。
【0057】
上記ニッケル層および酸化アルミニウム層の厚みは、それぞれ、100nm以下であるが、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらにより好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下であり得る。また、上記ニッケル層および酸化アルミニウム層の厚みは、それぞれ、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは10nm以上であり得る。好ましい態様において、ニッケル層および酸化アルミニウム層の厚みは、それぞれ、1nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上80nm以下、より好ましくは10nm以上50nm以下、例えば30nm以下または20nm以下であり得る。
【0058】
上記したように、本発明の積層体は、コンデンサに好適に用いられる。従って、本発明は、本発明の積層体を有して成るコンデンサをも提供する。
【0059】
以下、本発明のコンデンサについて、図面を参照しながら説明する。
【0060】
図1に本発明の一の態様におけるコンデンサ1の断面図を模式的に示す。図1示されるように、コンデンサ1は、基板2と、その上に配置された焼結体3と、焼結体3の表面に形成された多層膜4、下部電極5、上部電極6、および端子7,8を有して成る。多層膜4は、焼結体3側から順に、Ni層、AlO層、TiN層およびAlO層の繰り返しから成る。端子7、下部電極5、焼結体3、および多層膜4のNi層は、この順に電気的に接続されており、端子8、上部電極6、および多層膜4のTiN層は、この順に電気的に接続されている。端子7と端子8間に通電すると、多層膜4のNi層およびTiN層の間に位置するAlO層に電荷を蓄積することができる。
【0061】
上記コンデンサ1は、例えば下記のようにして製造することができる。
【0062】
まず、基板2を準備する。基板2は特に限定されないが、本態様では、Si層9の表面に熱酸化によるSiO層10を有する基板2を用いる。
【0063】
次に、上記基板2上に、下部電極5となるNi層を形成する(図2(a))。かかるNi層の形成方法は、特に限定されず、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、スパッタ、めっき、導電性ペーストの焼き付け等を用いることができる。好ましくは、CVDまたはスパッタが用いられる。
【0064】
次に、上記基板2および下部電極5の上に、焼結体3を形成する(図2(b))。かかる焼結体3の形成方法は、特に限定されないが、例えば金属の粉末を含むペーストを塗布し、その後焼成して得ることができる。本態様においては、焼結体3は、ニッケル焼結体である。
【0065】
次に、基板2、下部電極5および焼結体3の表面に、多層膜4を形成する(図2(c))。本態様の多層膜4は、Ni/AlO/TiN/AlO層の繰り返しである。かかる多層膜は、上記した本発明の方法(工程(1)、(2)、(3’)および(4’))により形成することができる。
【0066】
次に、多層膜4の一部を除去し、SiO層10および多層膜の断面を露出させる。ウェットエッチングで断面上のNiを除去する。断面のAlO層の一部を除去し、TiN層を露出させる。この露出したTiN層と電気的に接続するように、焼結体3上に上部電極6となるNi層を形成する(図2(d))。かかるNi層の形成方法は、特に限定されず、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、スパッタ等を用いることができる。好ましくは、物理蒸着、例えば真空蒸着、CVDまたはスパッタが用いられる。
【0067】
最後に、下部電極5上の多層膜4の一部を除去して、下部電極5および多層膜の断面を露出させる。ウェットエッチングで断面のTiNを除去する。続いて断面のAlOx層を一部除去し、Ni層を露出させる。そこに端子7を形成し、上部電極6上に端子8を形成することにより、図1に示すコンデンサを得ることができる。
【0068】
本発明の方法により得られる積層体は、本態様においては焼結体とその表面の多層膜からなる積層体は、焼結体の焼結の程度を低くした場合であっても、その表面に存在するNi層によりESRが比較的小さくなる。さらに、多層膜により焼結体の強度が補強されるので、高い耐久性を有する。また、多層膜4は厚みを小さく形成することができるので、多層膜形成後にも焼結体の表面積を大きく保持することができる。また、誘電体層となるAlO層を薄く形成することができるので、高い静電容量を有し得る。
【0069】
尚、本発明のコンデンサおよびコンデンサの製造方法は、本発明の積層体を含む限り、上記の態様に限定されない。
【0070】
例えば、一の態様において、多層膜4は、Ni/AlO/Ni/AlO層であってもよい。別の態様において、焼結体3の代わりに、エッチング箔、例えばアルミニウムエッチング箔を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の成膜方法は、特にコンデンサの製造において有用に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…コンデンサ、2…基板、3…焼結体、4…多層膜、5…下部電極
6…上部電極、7…端子、8…端子、9…Si層、10…SiO
図1
図2