特許第6907891号(P6907891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6907891車体フレーム構造およびサイドフレームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907891
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】車体フレーム構造およびサイドフレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20210708BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   B62D21/02 Z
   B62D65/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-212585(P2017-212585)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-84871(P2019-84871A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田坂 泉太郎
(72)【発明者】
【氏名】山根 豪太
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−017746(JP,A)
【文献】 特開2009−023484(JP,A)
【文献】 実開平01−178177(JP,U)
【文献】 米国特許第6183013(US,B1)
【文献】 独国特許出願公開第102010010366(DE,A1)
【文献】 特開2016−107807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
B62D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナフレーム材とアウタフレーム材とが接合された閉断面構造で成り且つ車体前後方向に沿って延在する第1フレームおよび第2フレームを備え、前記第1フレームの端部と前記第2フレームの端部とが印籠継手により繋ぎ合わされて成るサイドフレームを備えた車体フレーム構造において、
前記第1フレームの前記アウタフレーム材および前記インナフレーム材のうち少なくとも一方は、上板部および下板部と、これら上板部と下板部との間に亘る側板部とを有しており、
前記上板部および前記下板部は、
それぞれ車体前後方向に沿って水平方向に延在する第1平面部と、
前記上板部の前記第1平面部における車体前後方向の一方側の端縁から下側に、前記下板部の前記第1平面部における車体前後方向の一方側の端縁から上側にそれぞれ延在する背切り部と、
前記各背切り部にそれぞれ連続し且つ車体前後方向に沿って水平方向に延在して前記第2フレームの内部に挿入される第2平面部と、を備えており、
前記上板部の前記第2平面部および前記下板部の前記第2平面部のうち少なくとも一方の第2平面部における前記第2フレームの内部に挿入されている側の端縁は、前記サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って前記背切り部に近付く方向に延在していることを特徴とする車体フレーム構造。
【請求項2】
インナフレーム材とアウタフレーム材とが接合された閉断面構造で成り且つ車体前後方向に沿って延在する第1フレームおよび第2フレームを備え、前記第1フレームの端部と前記第2フレームの端部とが印籠継手により繋ぎ合わされて成るサイドフレームの製造方法であって、
前記第1フレームの前記アウタフレーム材および前記インナフレーム材のうち少なくとも一方は、上板部および下板部と、これら上板部と下板部との間に亘る側板部とを有しており、
前記上板部および前記下板部は、
それぞれ車体前後方向に沿って水平方向に延在する第1平面部と、
前記上板部の前記第1平面部における車体前後方向の一方側の端縁から下側に、前記下板部の前記第1平面部における車体前後方向の一方側の端縁から上側にそれぞれ延在する背切り部と、
前記各背切り部にそれぞれ連続し且つ車体前後方向に沿って水平方向に延在して前記第2フレームの内部に挿入される第2平面部と、を備えており、
前記上板部の前記第2平面部および前記下板部の前記第2平面部のうち少なくとも一方の第2平面部における前記第2フレームの内部に挿入されている側の端縁は、前記サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って前記背切り部に近付く方向に延在している前記サイドフレームに対して、
前記サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って前記背切り部に近付く方向に延在している部分が、上側に位置する状態で電着塗装を行う、ことを特徴とするサイドフレームの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体フレーム構造およびサイドフレームの製造方法に係る。特に、本発明は、印籠継手により複数のフレームが繋ぎ合わされて成るサイドフレームにおける繋ぎ合わせ部分の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、トラックやバス等の車体フレームは、車体前後方向に沿って延在する左右一対のサイドフレーム(サイドレールとも呼ばれる)と、これらサイドフレーム同士の間に架け渡されたクロスメンバとを備えている。
【0003】
また、特許文献1には、サイドフレームを、閉断面構造で成る複数のフレームで構成し、各フレーム同士(各フレームの端部同士)を印籠継手によって繋ぎ合わせた構造が開示されている。
【0004】
図6は、車幅方向の左側に配設されたサイドフレームaであって、該サイドフレームaを構成する各フレームb,c同士を繋ぎ合わせた従来の印籠継手部分を示す斜視図である。この図6における矢印FRは車体前方向、矢印UPは上方向、矢印LHは車体左方向をそれぞれ示している。この図6に示すように、各フレームb,cとしては、車体前側に位置する前側フレームbと、該前側フレームbの後端部に印籠継手によって繋ぎ合わされた後側フレームcとが備えられている。これら各フレームb,cは、インナフレーム材c1(前側フレームbのインナフレーム材については図示省略)とアウタフレーム材b2,c2とが接合されて成る閉断面構造でそれぞれ構成されている。また、図6に示すものでは、後側フレームcにあっては、そのインナフレーム材c1の前端縁よりもアウタフレーム材c2の前端縁の方が車体後方側に位置している。そして、前側フレームbのアウタフレーム材b2の後端部は、後側フレームcのアウタフレーム材c2の内側に挿入可能となるように背切り部(段差部)b3を介して断面形状が小さく設定された接合部b4を備えている。この接合部b4の外縁形状は後側フレームcのアウタフレーム材c2の内縁形状に略合致している。そして、この接合部b4の外側に後側フレームcのアウタフレーム材c2が重ね合わされるように、後側フレームcの内側に前側フレームbが挿入され(接合部b4が挿入され)、接合部b4と後側フレームcのアウタフレーム材c2とが溶接され、この後側フレームcのアウタフレーム材c2の上面および前側フレームbのアウタフレーム材b2の上面に亘って後側フレームcのインナフレーム材c1の上板部c3が重ね合わされて溶接され、これによって印籠継手部分にあっては3枚のフレーム材b2,c1,c2が一体的に溶接されている。なお、後側フレームcのアウタフレーム材c2の下面および前側フレームbのアウタフレーム材b2の下面に亘って後側フレームcのインナフレーム材c1の下板部(図示省略)が重ね合わされて溶接され、この部分でも3枚のフレーム材b2,c1,c2が一体的に溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−17746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体フレームの製造ラインにあっては、種々の前処理工程が行われ、その一つとして電着塗装工程(下塗り工程)が行われる。この電着塗装工程では、電着塗料が貯留された槽(電着槽)に車体フレームが所定時間だけ浸漬され、その間、車体フレームと槽内電極との間に所定の直流電圧が印加される。この直流電圧の印加により、塗料中にイオンとして存在する塗料成分が、その反対極性の車体フレームの表面に電気的に析出し、塗装膜が生成される。
【0007】
しかしながら、前記サイドフレームaは閉断面構造で構成されていることから、内部に空気(気泡)eが溜まりやすく、この空気eが溜まった領域では電着塗装が良好に行えない虞がある。例えば塗装膜の膜厚が十分に得られない虞がある。
【0008】
この空気eを排出するための手段として、車体フレーム(サイドフレームa)を車幅方向に延びる水平軸周りに揺動させることが行われている(図6の矢印dを参照)。
【0009】
しかし、前述したような複数のフレームb,c同士を印籠継手によって繋ぎ合わせた構造の場合、車体フレームを揺動させたとしても空気eの排出ができない可能性があった。
【0010】
つまり、図6に示すように接合部b4の端縁b5周辺(接合部b4の端縁b5からアウタフレーム材c2の上板部c4の内面(下面)に亘る部分)に空気eが溜まっている場合、車体フレームを水平軸周りに揺動させたとしても、この空気eはアウタフレーム材c2の上板部c4の内面(下面)に沿ってフレーム長手方向の所定範囲を移動するに過ぎず、また、この空気eの車体前方側への移動は接合部b4の端縁b5によって阻止されることになり、この空気eを排出することが困難であった。
【0011】
また、この空気eを排出するための手段として、サイドフレームaの上面(例えば後側フレームcの上板部c4)に孔を形成することも考えられるが、サイドフレームaの上面が別部材で覆われている場合には空気eを排出することが難しい。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電着塗装工程に際しサイドフレーム内に溜まった空気を良好に排出することができる車体フレーム構造およびサイドフレームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、インナフレーム材とアウタフレーム材とが接合された閉断面構造で成り且つ車体前後方向に沿って延在する第1フレームおよび第2フレームを備え、前記第1フレームの端部と前記第2フレームの端部とが印籠継手により繋ぎ合わされて成るサイドフレームを備えた車体フレーム構造を前提とする。そして、この車体フレーム構造は、前記第1フレームの前記アウタフレーム材および前記インナフレーム材のうち少なくとも一方が、上板部および下板部と、これら上板部と下板部との間に亘る側板部とを有しており、前記上板部および前記下板部は、それぞれ車体前後方向に沿って水平方向に延在する第1平面部と、前記上板部の前記第1平面部における車体前後方向の一方側の端縁から下側に、前記下板部の前記第1平面部における車体前後方向の一方側の端縁から上側にそれぞれ延在する背切り部と、前記各背切り部にそれぞれ連続し且つ車体前後方向に沿って水平方向に延在して前記第2フレームの内部に挿入される第2平面部とを備えており、前記上板部の前記第2平面部および前記下板部の前記第2平面部のうち少なくとも一方の第2平面部における前記第2フレームの内部に挿入されている側の端縁は、前記サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って前記背切り部に近付く方向に延在していることを特徴とする。
また、前記の目的を達成するためのサイドフレームの製造方法としては、インナフレーム材とアウタフレーム材とが接合された閉断面構造で成り且つ車体前後方向に沿って延在する第1フレームおよび第2フレームを備え、前記第1フレームの端部と前記第2フレームの端部とが印籠継手により繋ぎ合わされて成るサイドフレームの製造方法であって、前記第1フレームの前記アウタフレーム材および前記インナフレーム材のうち少なくとも一方は、上板部および下板部と、これら上板部と下板部との間に亘る側板部とを有しており、前記上板部および前記下板部は、それぞれ車体前後方向に沿って水平方向に延在する第1平面部と、前記上板部の前記第1平面部における車体前後方向の一方側の端縁から下側に、前記下板部の前記第1平面部における車体前後方向の一方側の端縁から上側にそれぞれ延在する背切り部と、前記各背切り部にそれぞれ連続し且つ車体前後方向に沿って水平方向に延在して前記第2フレームの内部に挿入される第2平面部と、を備えており、前記上板部の前記第2平面部および前記下板部の前記第2平面部のうち少なくとも一方の第2平面部における前記第2フレームの内部に挿入されている側の端縁は、前記サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って前記背切り部に近付く方向に延在している前記サイドフレームに対して、前記サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って前記背切り部に近付く方向に延在している部分が、上側に位置する状態で電着塗装を行うことを特徴とする
【0014】
この特定事項により、車体フレームの電着塗装工程時、車体フレームを、電着槽に浸漬させた状態で車幅方向に延びる水平軸周りに揺動(上下に揺動)させると、第1フレームが第2フレームよりも上側に位置するように揺動された際、第2平面部における第2フレームの内部に挿入されている側の端縁(サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って背切り部に近付く方向に延在している端縁)は、サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って上側に向けて傾斜することになる。このため、この第2平面部の端縁の周辺に空気が溜まっていた場合には、該空気はその浮力によってこの傾斜している第2平面部の端縁に沿って浮上していき、この端縁の上端部に達した後、サイドフレームの内部を浮上していくことで該サイドフレームから排出される。このため、サイドフレームの内面を良好に電着塗装することができ十分な塗装膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、第1フレームのフレーム材に背切り部を設け、この背切り部に連続する第2平面部を第2フレームの内部に挿入することで、第1フレームの端部と第2フレームの端部とを印籠継手により繋ぎ合わせて成るサイドフレームを備えた車体フレーム構造に対し、第2平面部における第2フレームの内部に挿入されている側の端縁を、サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って背切り部に近付く方向に延在させている。これにより、車体フレームの電着塗装工程時に車体フレーム(サイドフレーム)を車幅方向に延びる水平軸周りに揺動させることで、第2平面部における第2フレームの内部に挿入されている側の端縁が、サイドフレームにおける車幅方向の中央側に向かうに従って上側に向けて傾斜することになり、第2平面部の端縁の周辺に空気が溜まっていた場合に、その空気をサイドフレームから排出することができる。その結果、サイドフレームの内面を良好に電着塗装することができ十分な塗装膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る車体フレームを示す斜視図である。
図2】実施形態に係るサイドフレームにおける各フレーム材同士を繋ぎ合わせた印籠継手部分を示す斜視図である。
図3】電着塗装工程時におけるサイドフレームの揺動を説明するための図である。
図4】サイドフレームの揺動に伴う空気の排出動作を説明するための図であって、一部のフレーム材を仮想線で示す図2相当図である。
図5】前側フレームのアウタフレーム材を示す図4におけるV矢視図であって、図5(a)はサイドフレームの揺動前の状態を、図5(b)はサイドフレームが揺動した状態をそれぞれ示す図である。
図6】従来のサイドフレームにおける各フレーム材同士を繋ぎ合わせた印籠継手部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、所謂ラダーフレームとして構成された車体フレームのサイドフレームに対して本発明を適用した場合について説明する。
【0018】
−車体フレームの概略構造−
図1は本実施形態に係る車体フレーム1を示す斜視図である。なお、この図1における矢印FRは車体前方向、矢印UPは上方向、矢印RHは車体右方向、矢印LHは車体左方向をそれぞれ示している。
【0019】
図1に示すように、車体フレーム1は、車幅方向の両外側において車体前後方向に沿って延在された左右一対のサイドフレーム2,2を備えている。このサイドフレーム2,2は、車体前後方向に沿って連続する中間部2A、前側キック部2B、前部2C、後側キック部2Dおよび後部2Eを備えている。
【0020】
中間部2Aは、車両前輪(図示省略)の配設位置と車両後輪(図示省略)の配設位置との間の所定範囲において車体前後方向に沿って水平方向に延在している。前側キック部2Bは、前記中間部2Aの前端部に連続し車体前方側に向かうに従って上方へ湾曲する形状となっている。前部2Cは、前側キック部2Bの前端部に連続し車体前方側に延びている。この前部2Cにおける車幅方向の外側には前記車両前輪が配設されている。このため、このサイドフレーム2,2の前部2C,2Cにおける車幅方向の寸法(左右の各サイドフレーム2,2間の寸法)は、この車両前輪との干渉を考慮して、前記中間部2A,2Aにおける車幅方向の寸法よりも短く設定されている。
【0021】
後側キック部2Dは、前記中間部2Aの後端部に連続し車体後方側に向かうに従って上方へ湾曲する形状となっている。後部2Eは、後側キック部2Dの後端部に連続し車体後方側に延びている。この後部2Eにおける車幅方向の外側には前記車両後輪が配設されている。このため、このサイドフレーム2,2の後部2E,2Eにおける車幅方向の寸法(左右の各サイドフレーム2,2間の寸法)も、この車両後輪との干渉を考慮して、前記中間部2A,2Aにおける車幅方向の寸法よりも短く設定されている。
【0022】
左右一対のサイドフレーム2,2の前部2C,2Cの前側には、車両前突時にエネルギー(衝突荷重)を吸収するためのクラッシュボックス3,3がそれぞれ設けられている。左右一対のクラッシュボックス3,3の前端部には、車幅方向に沿って延在するバンパリインフォースメント(図示省略)が架け渡されている。
【0023】
各サイドフレーム2,2同士の間には、車幅方向に沿って延在された複数のクロスメンバ41,42,43,44,45,46,47が架け渡されている。これにより、本実施形態の車体フレーム1はラダーフレーム(はしご形フレーム)として構成されている。
【0024】
サイドフレーム2,2の前部2C,2Cにおけるクロスメンバ41とクロスメンバ42との間には、車幅方向の外側に突出する金属製のサスペンションマウントブラケット11が配設されている。
【0025】
また、前側キック部2Bの後端部、前部2Cの前端部、後側キック部2Dの前端部それぞれには、キャブマウントブラケット12,13,14が配設されている。これらキャブマウントブラケット12,13,14は、車幅方向外側へ突出されており、図示しないキャブマウントが取り付けられるようになっている。そして、キャブマウントおよびキャブマウントブラケット12,13,14を介して、キャビンをサイドフレーム2に連結できるように構成されている。
【0026】
−サイドフレームの構造−
次に、本実施形態の特徴であるサイドフレーム2,2の構造について説明する。各サイドフレーム2,2の構造は同じである(左右対称とされた構造である)ため、ここでは車幅方向の左側に位置するサイドフレーム2を例に挙げて説明する。
【0027】
本実施形態に係るサイドフレーム2は、前記中間部2Aにおける車体前後方向の中央部分においてフレーム5,6同士が印籠継手によって繋ぎ合わされている。また、このサイドフレーム2は、前記後部2Eにおける車体前後方向の中央部分においてもフレーム6,7同士が印籠継手によって繋ぎ合わされている。これら印籠継手による繋ぎ合わせ部分の構造は同一であるので、ここでは左側に位置するサイドフレーム2の中間部2Aにおける繋ぎ合わせ部分を代表して説明する。
【0028】
図2は、本実施形態に係るサイドフレーム2における各フレーム(前側フレーム5および後側フレーム6)同士を繋ぎ合わせた印籠継手部分を示す斜視図である。この図2に示すように、この印籠継手部分は、それぞれ略矩形状の閉断面構造で成る前側フレーム(本発明でいう第1フレーム)5と後側フレーム(本発明でいう第2フレーム)6とを繋ぎ合わせた部分である。前側フレーム5および後側フレーム6は、アウタフレーム材(アウタチャンネル)51,61とインナフレーム材(インナチャンネル)52,62(前側フレーム5のインナフレーム材52については図1を参照)とがアーク溶接等によって接合されて成る閉断面構造でそれぞれ構成されている。
【0029】
各フレーム5,6における各フレーム材51,52,61,62は、図2に示すように、鉛直方向に延在する側板部51a,61a,62a(前側フレーム5のインナフレーム材52については図2では省略)と、各側板部51a,61a,62aの上端縁から水平方向に延在する上板部51b,61b,62bと、各側板部51a,61a,62aの下端縁から水平方向に延在する下板部51c,61cとを備えた断面コ字状の部材である。
【0030】
そして、前側フレーム5では、アウタフレーム材51の上板部51bとインナフレーム材52の上板部(図2では現れず)とが溶接され、アウタフレーム材51の下板部51cとインナフレーム材52の下板部とが溶接され、これによって前側フレーム5が略矩形状の閉断面構造で構成されている。同様に、後側フレーム6では、アウタフレーム材61の上板部61bとインナフレーム材62の上板部62bとが溶接され、アウタフレーム材61の下板部61cとインナフレーム材62の下板部(図示省略)とが溶接され、これによって後側フレーム6も略矩形状の閉断面構造で構成されている。
【0031】
また、前側フレーム5にあっては、そのインナフレーム材52の後端縁よりもアウタフレーム材51の後端縁の方が車体後方側に位置している。また、後側フレーム6にあっては、そのインナフレーム材62の前端縁よりもアウタフレーム材61の前端縁の方が車体後方側に位置している。このため、アウタフレーム材51,61同士の印籠継手部分は、インナフレーム材52,62同士の印籠継手部分よりも車体後方側に位置している。
【0032】
そして、前側フレーム5の後端部を後側フレーム6の前端部に挿入することでこの両者5,6を繋ぎ合わせている印籠継手として、インナフレーム材52,62同士の印籠継手の構造としては、前側フレーム5のインナフレーム材52における側板部の外面(車幅方向の内側を向いている面)、上板部の上面、下板部の下面に亘る形状(コ字状の形状)が、後側フレーム6のインナフレーム材62における側板部62aの内面(車幅方向の外側を向いている面)、上板部62bの下面、下板部の上面に亘る形状(コ字状の形状)に略合致しており、前側フレーム5のインナフレーム材52の後端部を後側フレーム6のインナフレーム材62の前端部に挿入して、各面同士を当接させた状態でこれら当接部分が溶接されている。
【0033】
一方、アウタフレーム材51,61同士の印籠継手の構造としては、前側フレーム5のアウタフレーム材51の後端部に、該後端部が後側フレーム6のアウタフレーム材61の内側に挿入可能となるように、背切り部(段差部)53a,53bを介して断面形状が小さく設定された接合部54が備えられている。
【0034】
具体的には、前側フレーム5のアウタフレーム材51における上板部51bおよび下板部51cは、それぞれ車体前後方向に沿って水平方向に延在する第1平面部55a,55bを備えている。また、前記上板部51bの第1平面部55aの端縁(車体後方側の端縁)から斜め下側に延在する背切り部53a、および、前記下板部51cの第1平面部55bの端縁(車体後方側の端縁)から斜め上側に延在する背切り部53bが備えられている。更に、前側フレーム5のアウタフレーム材51における上板部51bおよび下板部51cは、前記各背切り部53a,53bにそれぞれ連続し且つ車体前後方向に沿って水平方向に延在する第2平面部56a,56bを備えている。
【0035】
このため、前記各第2平面部56a,56bおよび側板部51aの後端部によって前記接合部54が構成されている。この接合部54の外面形状(コ字状の形状)が、後側フレーム6のアウタフレーム材61における側板部61aの内面(車幅方向の内側を向いている面)、上板部61bの下面、下板部61cの上面に亘る形状(コ字状の形状)に略合致しており、前側フレーム5のアウタフレーム材51の後端部である接合部54を後側フレーム6のアウタフレーム材61の前端部に挿入して、各面同士を当接させた状態でこれら当接部分が溶接されている。
【0036】
このように前側フレーム5のアウタフレーム材51に背切り部53a,53bが設けられていることにより、後側フレーム6のアウタフレーム材61の前端部に、前記背切り部53a,53bに連続する第2平面部56a,56bを有する接合部54が挿入され、また、これら前側フレーム5のアウタフレーム材51の第1平面部55aおよび後側フレーム6のアウタフレーム材61の上板部61bそれぞれの上側に後側フレーム6のインナフレーム材62の上板部62bが重ね合わされ、これらが一体的に溶接される。つまり、印籠継手部分において3枚のフレーム材(前側フレーム5のアウタフレーム材51、後側フレーム6のアウタフレーム材61およびインナフレーム材62)が一体的に溶接されることになる。同様に、前側フレーム5のアウタフレーム材51の第1平面部55b(下側の第1平面部55b)および後側フレーム6のアウタフレーム材61の下板部61cそれぞれの下側に後側フレーム6のインナフレーム材62の下板部が重ね合わされ、これらが一体的に溶接される。つまり、この部分(サイドフレーム2の下側部分)においても3枚のフレーム材(前側フレーム5のアウタフレーム材51、後側フレーム6のアウタフレーム材61およびインナフレーム材62)が一体的に溶接されることになる。
【0037】
そして、本実施形態における特徴として、前側フレーム5のアウタフレーム材51の上板部51bおよび下板部51cそれぞれにおける第2平面部56a,56bの車体後方側の端縁57,58は車幅方向に対して所定角度だけ傾斜している。具体的には、第2平面部56a,56bにおける車体後方側の端縁57,58は、サイドフレーム2における車幅方向の中央側(閉断面構造で成るサイドフレーム2の内部空間の中央側)に向かうに従って背切り部53a,53bに近付く方向に延在している。言い替えると、第2平面部56a,56bにおける車体後方側の端縁57,58は、車体フレーム1の車幅方向の中央側に向かうに従って車体前方側に向けて傾斜している。この傾斜角度(図2にαで示すトリム角度)は例えば30°に設定されている。この傾斜角度としてはこの値に限定されるものではなく、適宜設定が可能である。なお、このように第2平面部56a,56bにおける車体後方側の端縁57,58を傾斜させた場合、この第2平面部56a,56bとアウタフレーム材61の上板部61bおよび下板部61cとの重ね合わせ領域は、サイドフレーム2における車幅方向の中央側では小さくなるが(図2における寸法Tを参照)、この寸法Tは、前側フレーム5のアウタフレーム材51と後側フレーム6のアウタフレーム材61との接合強度が十分に確保される寸法となるように実験またはシミュレーションによって設定されている。
【0038】
−車体フレームの電着塗装工程−
次に、車体フレーム1の電着塗装工程について説明する。この電着塗装工程は、車体フレーム1の製造ラインにおける前処理工程の一つであって、電着塗料が貯留された電着槽に車体フレーム1が所定時間だけ浸漬され、その間、車体フレーム1と槽内電極との間に所定の直流電圧が印加される。この直流電圧の印加により、塗料中にイオンとして存在する塗料成分が、その反対極性の車体フレーム1の表面に電気的に析出し、塗装膜が生成される。
【0039】
この電着塗装工程における電着槽内での車体フレーム1の浸漬状態としては、各フレーム材51,52,61,62の上板部51b,61b,62bが上側に下板部51c,61cが下側に位置するように配設される。このため、アウタフレーム材51における上側の第2平面部56aの車体後方側の端縁57が、本発明でいう「電着塗装工程時に上側に位置する第2平面部における第2フレームの内部に挿入されている側の端縁」に相当することになる。
【0040】
そして、この電着塗装工程では、車体フレーム1の内部に溜まっている空気(気泡)を排出するために、車体フレーム1が車幅方向に延びる水平軸周りに揺動される。図3は、この際のサイドフレーム2の揺動を説明するための図であり(サイドフレーム2以外の車体骨格部材については省略している)、この図3に矢印A1,A2で示すように、サイドフレーム2が車幅方向に延びる水平軸O1周りに揺動される。
【0041】
このようにして車体フレーム1が、電着槽に浸漬された状態で車幅方向に延びる水平軸O1周りに揺動(上下に揺動)されると、前側フレーム5が後側フレーム6よりも上側に位置するように揺動された際(図3におけるA1方向に揺動された際)、前側フレーム5のアウタフレーム材51における上側の第2平面部56aの車体後方側の端縁(サイドフレーム2における車幅方向の中央側に向かうに従って背切り部53aに近付く方向に延在している端縁)57は、サイドフレーム2における車幅方向の中央側に向かうに従って上側に向けて傾斜することになる。
【0042】
図4は、サイドフレーム2の揺動に伴う空気Bの排出動作を説明するための図であって、一部のフレーム材61,62を仮想線で示す図2相当図である。また、図5は、前側フレーム5のアウタフレーム材51を示す図4におけるV矢視図であって、図5(a)はサイドフレーム2の揺動前の状態を、図5(b)はサイドフレーム2が揺動した状態(図3におけるA1方向に揺動した状態)をそれぞれ示す図である。
【0043】
図5(b)からも明らかなように、前側フレーム5が後側フレーム6よりも上側に位置するように揺動された際には、前側フレーム5のアウタフレーム材51における上側の第2平面部56aの車体後方側の端縁57は、サイドフレーム2における車幅方向の中央側(図5における右側)に向かうに従って上側に向けて傾斜することになる。
【0044】
このため、この第2平面部56aの端縁57の周辺に空気(気泡)Bが溜まっていた場合には、該空気Bはその浮力によって第2平面部56aの端縁57の傾斜に沿って浮上していき、この端縁57の上端部に達した後、サイドフレーム2の内部を浮上していくことで該サイドフレーム2から排出される(図4および図5(b)において破線で示す矢印を参照)。このため、空気Bの存在に起因して電着塗装が良好に行えなくなるといったことが回避され、サイドフレーム2の内面を良好に電着塗装することができ十分な塗装膜を得ることができる。
【0045】
−他の実施形態−
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0046】
例えば、前記実施形態では、サイドフレーム2における中間部2Aおよび後部2Eそれぞれにおいてフレーム5,6,7同士が印籠継手によって繋ぎ合わされた構造とし、これら印籠継手部分に本発明を適用していた。本発明はこれに限らず、サイドフレーム2におけるキック部2B,2Dや前部2Cにおいてフレーム同士を印籠継手によって繋ぎ合わせ、これら印籠継手部分に本発明を適用するようにしてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、印籠継手の構造として前側フレーム5の後端部を後側フレーム6の前端部に挿入するものとし、前側フレーム5のアウタフレーム材51に背切り部53a,53bを設けた構造に対して本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、前側フレーム5のインナフレーム材52に背切り部を設けた構造に対して本発明を適用することも可能である。また、印籠継手の構造として後側フレーム6の前端部を前側フレーム5の後端部に挿入するものとし、後側フレーム6のアウタフレーム材61に背切り部を設けた構造や、後側フレーム6のインナフレーム材62に背切り部を設けた構造に対して本発明を適用することも可能である。
【0048】
また、前記実施形態では、前側フレーム5のアウタフレーム材51の上板部51bおよび下板部51cそれぞれにおける第2平面部56a,56bの車体後方側の端縁57,58を車幅方向に対して所定角度だけ傾斜させた(背切り部53a,53bに近付く方向に延在させた)構造としていた。本発明はこれに限らず、前側フレーム5のアウタフレーム材51の上板部51bにおける第2平面部56aの車体後方側の端縁57のみを車幅方向に対して所定角度だけ傾斜させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、印籠継手により複数のフレームが繋ぎ合わされて成る車体フレームに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 車体フレーム
2 サイドフレーム
5 前側フレーム(第1フレーム)
51 アウタフレーム材
51a 側板部
51b 上板部
51c 下板部
53a,53b 背切り部
55a,55b 第1平面部
56a,56b 第2平面部
57 第2平面部の端縁
6 後側フレーム(第2フレーム)
61 アウタフレーム材
62 インナフレーム材
図1
図2
図3
図4
図5
図6