【実施例1】
【0014】
《シート1の概略構成について》
始めに、実施例1のシート1(乗物用シート)の構成について、
図1〜
図9を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、シート1の左右方向を指すものとする。
【0015】
本実施例のシート1は、
図1に示すように、自動車の座席として構成されており、着座者の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えた構成とされている。上述したシートバック2は、その左右両サイドの下端部が、不図示のリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に背凭れ角度の調節を行える状態に連結されている。シートクッション3は、車両のフロア上に、左右一対のスライドレール4を間に介して前後方向の位置調節を行える状態に連結されている。
【0016】
上述したシートクッション3は、その骨格を成す平面視略枠状に組まれた金属製のクッションフレーム3Fと、クッションフレーム3Fの上部にセットされて着座者の荷重を弾性的に受け止める発泡ウレタン製のクッションパッド3Pと、クッションパッド3Pの表面全体に被せ付けられてシートクッション3の意匠面を構成するファブリック製のクッションカバー3Cと、によって概略構成されている。上述したクッションフレーム3Fには、その前後の枠部間に、上述したクッションパッド3Pの中央領域を下方側から広く面状に支持することのできる面状支持体10が架橋されている。ここで、上述したクッションフレーム3Fが本発明の「シートフレーム」に相当する。
【0017】
《クッションフレーム3Fの構成について》
上述したクッションフレーム3Fは、
図2に示すように、左右一対のサイドフレーム3Faと、各サイドフレーム3Faの前端部間に一体的に架橋されたフロントパネル3Fbと、フロントパネル3Fbの後下側の位置で各サイドフレーム3Faの間に一体的に架橋されたフロントパイプ3Fcと、各サイドフレーム3Faの後端部間に一体的に架橋されたリヤパイプ3Fdと、によって平面視略枠状に組まれた構成とされている。
【0018】
上述した左右一対のサイドフレーム3Faは、それぞれ、前後方向に長尺状に延びる立板状のフレーム材により構成されており、シートクッション3の左右両サイドの側部骨格を成している。フロントパネル3Fbは、高さ方向に面を向ける板状のフレーム材により構成されており、シートクッション3の前部骨格を成している。フロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとは、それぞれ、シート幅方向にストレート状に延びる丸パイプ材により構成されており、各側のサイドフレーム3Faに貫通する形に差し込まれてこれらに強固に一体的に結合されている。
【0019】
上記連結により、クッションフレーム3Fは、平面視略枠状となる形に組まれて、その上部にセットされたクッションパッド3Pの外周部を下側から強く支持することができるようになっている。上述したフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとには、それらの両端部に、各側のスライドレール4に対するかさ上げを行うレッグ3Feが溶接されて取り付けられている。
【0020】
《クッションパッド3Pの構成について》
図1を参照して、クッションパッド3Pは、上述したクッションフレーム3Fに上側から覆い被された状態にセットされている。詳しくは、上述したクッションパッド3Pは、上述したクッションフレーム3Fに上側から覆い被されると共に、その前後左右の各周縁部が、それぞれ、クッションフレーム3Fの外周側を通って下側へと回し込まれた状態にセットされている。上記組み付けにより、クッションパッド3Pは、上述した不図示のクッションフレーム3Fによって外周部が下側から強く支えられると共に、クッションフレーム3Fの枠内に架橋された面状支持体10によって中央部が下側から面状に弾性支持された状態としてセットされるようになっている。
【0021】
《クッションカバー3Cの構成について》
クッションカバー3Cは、上述したクッションパッド3Pに上側から覆い被せられると共に、その前後左右の各周縁部が、それぞれ、クッションパッド3Pの外周側を通って下側へと引き込まれて、上述したクッションフレーム3Fに対して一体的に止着されて固定されている。上記組み付けにより、クッションカバー3Cは、上述したクッションパッド3Pの表面全体に広く密着した状態に張設されると共に、クッションパッド3Pをクッションフレーム3F上に押さえ付けて位置固定した状態として保持するようになっている。
【0022】
《面状支持体10の構成について》
面状支持体10は、
図1、
図5及び
図8に示すように、平面視略矩形状の形にカットされたファブリック製の面状部材11と、面状部材11の前後側の各縁部を上述したフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとにそれぞれ取り付ける前後の金属製の取付ワイヤ12A,12Bと、これら取付ワイヤ12A,12Bに跨って嵌合されて前側の取付ワイヤ12Aとフロントパイプ3Fcとの間及び後側の取付ワイヤ12Bとリヤパイプ3Fdとの間にそれぞれ介設された状態にセットされる樹脂構造体13と、を有する。
【0023】
《面状部材11の構成について》
上述した面状部材11は、緯糸が伸張性の低いPET樹脂から成り、経糸が緯糸よりは伸張性のあるPTT樹脂から成る略均一な組織を持つ織物(編み物であってもよい)によって形成されている。上述した面状部材11には、その前後側の各縁部に沿って、各縁部が裏側に折り返されて筒状に縫い付けられた通し口11A,11Bが形成されている。上述した各通し口11A,11Bは、
図3〜
図5に示すように、基本的には、上述した面状部材11の各側の縁部のシート幅方向の全域に亘って形成されている。しかし、上述した各通し口11A,11Bは、上述した面状部材11の各側の縁部の中央部に形成された各々の折り返し部分を略矩形状に開口させる形に切り抜く開口部11Aa,11Baによって、それらの中央部の折り返し部分が外部に開口する形に形成された構成とされている。
【0024】
《取付ワイヤ12A,12Bの構成について》
前後の取付ワイヤ12A,12Bは、それぞれ、左右一対の構成とされており、上述した面状部材11の各側の縁部に形成された各通し口11A,11B内にそれぞれ横並び状に通されて設けられている。具体的には、前側一対の各取付ワイヤ12Aは、それぞれ、上述した面状部材11の前側の縁部に形成された通し口11Aの中央の開口部11Aaによって仕切られた左右各側の筒口内に通される通し部12Aaと、同通し部12Aaの各筒口を出た先の各端から前上側へとストレート状に折り曲げられて凸湾曲状に下向きに曲げられた形となって延びる左右一対のフック部12Abと、を有する平面視略U字状に曲げられたワイヤ材によって形成されている。
【0025】
また、後側一対の各取付ワイヤ12Bも同様に、それぞれ、上述した面状部材11の後側の縁部に形成された通し口11Bの中央の開口部11Baによって仕切られた左右各側の筒口内に通される通し部12Baと、同通し部12Baの各筒口を出た先の各端から後上側へとストレート状に折り曲げられて凸湾曲状に下向きに曲げられた形となって延びる左右一対のフック部12Bbと、を有する平面視略U字状に曲げられたワイヤ材によって形成されている。
【0026】
上述した前後の各取付ワイヤ12A,12Bは、
図3〜
図4に示すように、それらの通し部12Aa,12Baが上述した面状部材11の各側の通し口11A,11B内に通されて組み付けられた状態から、先ず、
図2に示すように、それらのフック部12Ab,12Bbが後述する樹脂構造体13の前後のカラー13A,13Bにそれぞれ嵌合されて樹脂構造体13に一体的に組み付けられる。ここで、上述した樹脂構造体13の前後側のカラー13A,13Bが、本発明の「介設具」に相当する。
【0027】
そして、次に上記各取付ワイヤ12A,12Bが嵌合された樹脂構造体13の各カラー13A,13Bを、フロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとにそれぞれ上側から個々に押し込んで嵌合させる。これにより、上記樹脂構造体13を介して各取付ワイヤ12A,12Bがフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとに上側から嵌合された状態に取り付けられるようになっている(
図5及び
図8参照)。上記樹脂構造体13のフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとに対する組み付け手順は、具体的には、先ず、樹脂構造体13の後述する後側のカラー13Bをリヤパイプ3Fdに上側から嵌合させ、次いで、前側のカラー13Aをフロントパイプ3Fcに上側から嵌合させるという手順で行われるようになっている。
【0028】
その理由は、次の通りである。すなわち、上述した樹脂構造体13の後側のカラー13Bは、
図5に示すように、上述したリヤパイプ3Fdに上側から嵌合されて組み付けられる際に、各側のサイドフレーム3Faに装着されている樹脂製のサイドシールド3Sからリヤパイプ3Fdの外周部に沿ってシート幅方向の内側(軸方向)へと張り出す各張出部3Saの間にセットされることで、リヤパイプ3Fdに対するシート幅方向の組み付け位置が各張出部3Saの間の位置として位置決めされるようになっているからである。
【0029】
そのため、上述した樹脂構造体13は、上述した後側のカラー13Bを先にリヤパイプ3Fdに組み付けてから、同リヤパイプ3Fdを中心に前側のカラー13Aを前倒し状に落とし込む形でフロントパイプ3Fcに上側から嵌合させるように組み付けることで、前側のカラー13Aのフロントパイプ3Fcに対するシート幅方向の組み付け位置も併せて位置決めすることができるようになっている。
【0030】
上記組み付けにより、各取付ワイヤ12A,12Bを上述した樹脂構造体13を介してフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとに取り付けて、これらの間に面状部材11を架け渡した状態に設けることができるようになっている。上述した各取付ワイヤ12A,12Bは、
図8に示すように、上述した面状部材11の上部にセットされたクッションパッド3Pから面状部材11に掛けられる荷重を、上述した樹脂構造体13の前後のカラー13A,13Bを介してフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとに組み付けられた両端支持構造によって前後側から強く支持することができるようになっている。
【0031】
詳しくは、上述した各取付ワイヤ12A,12Bは、
図9に示すように、シートクッション3に着座者の荷重が掛けられて、上述した面状部材11が下側に押し込まれるような荷重を受けた際にも、それらのフック部12Ab,12Bbを前後のカラー13A,13Bと共にフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとに対して回転させながら上記の荷重を弾性的に受け止めることができるようになっている。その際、各取付ワイヤ12A,12Bは、上述したフロントパイプ3Fcとリヤパイプ3Fdとの間に樹脂製のカラー13A,13Bを介在させていることから、フロントパイプ3Fcやリヤパイプ3Fdとの間で金属同士の擦れ等に伴う異音を生じさせることなくスムーズに回転したり元の位置に復帰したりすることができるようになっている。
【0032】
《樹脂構造体13の構成について》
樹脂構造体13は、
図1〜
図2及び
図5に示すように、上述した前側一対の各取付ワイヤ12Aのフック部12Abが嵌合されてフロントパイプ3Fcに上側から嵌合される前側のカラー13Aと、後側一対の各取付ワイヤ12Bのフック部12Bbが嵌合されてリヤパイプ3Fdに上側から嵌合される後側のカラー13Bと、これら前後のカラー13A,13B同士を一体的に繋ぐ架橋部13Cと、を一体的に有するインジェクション成形された1部品から成る構成とされている。
【0033】
《前側のカラー13Aについて》
上述した前側のカラー13Aは、
図3〜
図4に示すように、上述した前側一対の各取付ワイヤ12Aの左右のフック部12Abをそれぞれ一対ずつひとまとめにシート幅方向に位置決めした状態に取り付けることのできる横並び一対の被取付部13Aaと、これら被取付部13Aa同士を一体的に接続する接続部13Abと、を有する。上述した横並び一対の被取付部13Aaは、それぞれ、前側一対の各取付ワイヤ12Aの左右のフック部12Abを個々に上側から押し込むことで個々を弾性的に爪嵌合させて一体的に取り付けることのできる一対のフック状に曲げられた延出形状を持つ嵌合部位13Aa1と、これら一対の嵌合部位13Aa1のストレート状に延びる部位間をひと繋ぎ状に結ぶようにシート幅方向に延びる繋ぎ面部13Aa2と、各嵌合部位13Aa1からこれらに嵌合された各取付ワイヤ12Aの形状に沿って後側へと張り出して面状部材11の前縁側の横側を向く各側面にシート幅方向の外側或いは内側から当てられる立壁部位13Aa3と、を有する。
【0034】
上述した横並び一対の各被取付部13Aaにおける左右の嵌合部位13Aa1は、それぞれ、上述した前側一対の各取付ワイヤ12Aの左右のフック部12Abをシート幅方向の両側から挟み込む形に嵌め込むことのできる断面略U字状の嵌合溝と、個々のフック部12Abを各嵌合溝内に押し込むことで各々のフック部12Abの所々の箇所に弾性的に掛着してこれらを各嵌合溝から抜け出ないように係止させることのできる爪形状と、を有する構成とされている。上述した各嵌合部位13Aa1は、それらに前側一対の各取付ワイヤ12Aの左右のフック部12Abが嵌合された状態で、
図1〜
図2及び
図5に示すようにフロントパイプ3Fcに上側から押し込まれることにより、それらのフック形状がフロントパイプ3Fcの外周形状との干渉により弾性的に押し撓まされた後に復元して、フロントパイプ3Fcの外周部に引掛けられた状態として取り付けられるようになっている。
【0035】
また、上述した各嵌合部位13Aa1同士をひと繋ぎ状に結ぶ各繋ぎ面部13Aa2は、
図5及び
図8に示すように、各嵌合部位13Aa1の引掛け先となるフロントパイプ3Fcの上面部位と面状部材11の前側の縁部との間に形成される隙間Tfをこれら面状部材11とフロントパイプ3Fcの上面部位との間を滑らかに繋ぐ平坦状の面で埋めるように、各嵌合部位13Aa1の間を結ぶ形となって形成されている。上記構成により、各繋ぎ面部13Aa2は、
図8〜
図9に示すように、上述した面状部材11の上部にセットされたクッションパッド3Pの面状部材11とフロントパイプ3Fcとの間にかかる底面部分に前斜め下側から面当接した状態に当てられて、クッションパッド3Pの底面部分を面状部材11とフロントパイプ3Fcとの間を滑らかに繋ぐ面形状によって支持して、上記の隙間Tfからクッションパッド3Pが逃げないように押さえることができるようになっている。
【0036】
また、
図3及び
図5に示すように、上述した各嵌合部位13Aa1から各取付ワイヤ12Aの形状に沿って後側へ張り出す各立壁部位13Aa3は、それらの各取付ワイヤ12Aの左右のフック部12Abの形状に沿って後側へ張り出した先の端部が、各フック部12Abから通し部12Aaへと折れ曲がる各取付ワイヤ12Aの形状に沿ってシート幅方向に折り曲げられて、面状部材11の前縁側の横側を向く各側面にシート幅方向の外側或いは内側から当てられている。上述した各立壁部位13Aa3は、上述した各嵌合部位13Aa1と同様に、各取付ワイヤ12Aを両側から挟み込む形に嵌め込むことのできる断面略U字状の嵌合溝を有した形状とされて、各取付ワイヤ12Aの通し部12Aaを前後両側から挟み込む立壁状の各部分が、上述した面状部材11の前縁側の横側を向く各側面にシート幅方向の外側或いは内側から当てられるようになっている。
【0037】
詳しくは、上述した各立壁部位13Aa3のうち、右側の被取付部13Aaにおける右側の嵌合部位13Aa1から後側に張り出す立壁部位13Aa3と、左側の被取付部13Aaにおける左側の嵌合部位13Aa1から後側に張り出す立壁部位13Aa3とは、それぞれ、対応する各取付ワイヤ12Aの形状に沿ってシート幅方向の内側に折り曲げられる形に張り出して、面状部材11の右側の外側面と左側の外側面とにそれぞれシート幅方向の外側から当てられている。また、
図6に示すように、右側の被取付部13Aaにおける左側の嵌合部位13Aa1から後側に張り出す立壁部位13Aa3と、左側の被取付部13Aaにおける右側の嵌合部位13Aa1から後側に張り出す立壁部位13Aa3とは、それぞれ、対応する各取付ワイヤ12Aの形状に沿ってシート幅方向の外側に折り曲げられる形に張り出して、面状部材11の前縁側の中央部に形成された開口部11Aaの右側の内側面と左側の内側面とにそれぞれシート幅方向の内側から当てられている。
【0038】
上述した各立壁部位13Aa3の当接構造により、
図5に示すように、面状部材11の前側のカラー13Aに対するシート幅方向の双方向の位置ずれ移動が規制されて、面状部材11によるクッションパッド3Pの下側からの支持を常に適切に行うことができるようになっている。詳しくは、面状部材11の前側の開口部11Aaの左右の内側面に各立壁部位13Aa3がそれぞれ当てられていることにより、面状部材11が着座者の荷重を受けた際にシート幅方向の内側へと寄せられようとする動きが適切に規制されると共に、シート幅方向の外側へと動かされる移動も適切に食い止められるようになっている。なおかつ、面状部材11の左右の外側面にも各立壁部位13Aa3が当てられていることで、上述した面状部材11がシート幅方向の外側へと動かされる移動がより適切に食い止められるようになっている。
【0039】
上記構成により、面状部材11は、着座者の膝付きによってシート幅方向の中央或いは左右どちらかの領域に偏った荷重の作用を受けても、上記各立壁部位13Aa3の当接構造により、シート幅方向の内外それぞれの方向に横ずれしないように適切に位置規制されるようになっている。上述した各立壁部位13Aa3は、面状部材11がその上側にセットされたクッションパッド3Pから受ける重みによって各取付ワイヤ12Aの通し部12Aaから浮き上がりにくい状態に設けられているため、常に面状部材11に対して横側から適切に当てられた状態に保持されるようになっている。
【0040】
接続部13Abは、上述した右側の被取付部13Aaにおける左側の嵌合部位13Aa1と、左側の被取付部13Aaにおける右側の嵌合部位13Aa1と、をこれら嵌合部位13Aa1のフック状に曲げられた形状に沿った半パイプ形状でこれらを横並び状に一体的に接続する形に繋いだ形状とされている。
【0041】
《後側のカラー13Bについて》
後側のカラー13Bも同様に、
図3〜
図4に示すように、上述した後側一対の各取付ワイヤ12Bの左右のフック部12Bbをそれぞれ一対ずつひとまとめにシート幅方向に位置決めした状態に取り付けることのできる横並び一対の被取付部13Baと、これら被取付部13Ba同士を一体的に接続する接続部13Bbと、を有する。上述した横並び一対の被取付部13Baは、それぞれ、後側一対の各取付ワイヤ12Bの左右のフック部12Bbを個々に上側から押し込むことで個々を弾性的に爪嵌合させて一体的に取り付けることのできる一対のフック状に曲げられた延出形状を持つ嵌合部位13Ba1と、これら一対の嵌合部位13Ba1のストレート状に延びる部位間をひと繋ぎ状に結ぶようにシート幅方向に延びる繋ぎ面部13Ba2と、各嵌合部位13Ba1からこれらに嵌合された各取付ワイヤ12Bの形状に沿って前側へと張り出して面状部材11の後縁側の横側を向く各側面にシート幅方向の外側或いは内側から当てられる立壁部位13Ba3と、を有する。更に、上述した後側一対の被取付部13Baは、各々の一対の嵌合部位13Ba1の後端部間をひと繋ぎ状に結ぶようにシート幅方向に延びる止着部13Ba4も有する。
【0042】
上述した横並び一対の各被取付部13Baにおける左右の嵌合部位13Ba1は、それぞれ、上述した後側一対の各取付ワイヤ12Bの左右のフック部12Bbをシート幅方向の両側から挟み込む形に嵌め込むことのできる断面略U字状の嵌合溝と、個々のフック部12Bbを各嵌合溝内に押し込むことで各々のフック部12Bbの所々の箇所に弾性的に掛着してこれらを各嵌合溝から抜け出ないように係止させることのできる爪形状と、を有する構成とされている。上述した各嵌合部位13Ba1は、それらに後側一対の各取付ワイヤ12Bの左右のフック部12Bbが嵌合された状態で、
図1〜
図2及び
図5において前述したようにリヤパイプ3Fdに上側から引掛けられて取り付けられるようになっている。
【0043】
また、上述した各嵌合部位13Ba1同士をひと繋ぎ状に結ぶ各繋ぎ面部13Ba2は、
図5及び
図8に示すように、各嵌合部位13Ba1の引掛け先となるリヤパイプ3Fdの上面部位と面状部材11の後側の縁部との間に形成される隙間Trをこれら面状部材11とリヤパイプ3Fdの上面部位との間を滑らかに繋ぐ平坦状の面で埋めるように、各嵌合部位13Ba1の間を結ぶ形となって形成されている。上記構成により、各繋ぎ面部13Ba2は、
図8〜
図9に示すように、上述した面状部材11の上部にセットされたクッションパッド3Pの面状部材11とリヤパイプ3Fdとの間にかかる底面部分に後斜め下側から面当接した状態に当てられて、クッションパッド3Pの底面部分を面状部材11とリヤパイプ3Fdとの間を滑らかに繋ぐ面形状によって支持して、上記の隙間Trからクッションパッド3Pが逃げないように押さえることができるようになっている。
【0044】
また、
図3及び
図5に示すように、上述した各嵌合部位13Ba1から各取付ワイヤ12Bの形状に沿って前側へ張り出す各立壁部位13Ba3は、それらの各取付ワイヤ12Bの左右のフック部12Bbの形状に沿って前側へ張り出した先の端部が、各フック部12Bbから通し部12Baへと折れ曲がる各取付ワイヤ12Bの形状に沿ってシート幅方向に折り曲げられて、面状部材11の後縁側の横側を向く各側面にシート幅方向の外側或いは内側から当てられている。上述した各立壁部位13Ba3は、上述した各嵌合部位13Ba1と同様に、各取付ワイヤ12Bを両側から挟み込む形に嵌め込むことのできる断面略U字状の嵌合溝を有した形状とされて、各取付ワイヤ12Bの通し部12Baを前後両側から挟み込む立壁状の各部分が、上述した面状部材11の後縁側の横側を向く各側面にシート幅方向の外側或いは内側から当てられるようになっている。
【0045】
詳しくは、上述した各立壁部位13Ba3のうち、右側の被取付部13Baにおける右側の嵌合部位13Ba1から前側に張り出す立壁部位13Ba3と、左側の被取付部13Baにおける左側の嵌合部位13Ba1から前側に張り出す立壁部位13Ba3とは、それぞれ、対応する各取付ワイヤ12Bの形状に沿ってシート幅方向の内側に折り曲げられる形に張り出して、面状部材11の右側の外側面と左側の外側面とにそれぞれシート幅方向の外側から当てられている。また、
図7に示すように、右側の被取付部13Baにおける左側の嵌合部位13Ba1から前側に張り出す立壁部位13Ba3と、左側の被取付部13Baにおける右側の嵌合部位13Ba1から前側に張り出す立壁部位13Ba3とは、それぞれ、対応する各取付ワイヤ12Bの形状に沿ってシート幅方向の外側に折り曲げられる形に張り出して、面状部材11の後縁側の中央部に形成された開口部11Baの右側の内側面と左側の内側面とにそれぞれシート幅方向の内側から当てられている。
【0046】
上述した各立壁部位13Ba3の当接構造により、
図5に示すように、面状部材11の後側のカラー13Bに対するシート幅方向の双方向の位置ずれ移動が規制されて、面状部材11によるクッションパッド3Pの下側からの支持を常に適切に行うことができるようになっている。詳しくは、面状部材11の後側の開口部11Baの左右の内側面に各立壁部位13Ba3がそれぞれ当てられていることにより、面状部材11が着座者の荷重を受けた際にシート幅方向の内側へと寄せられようとする動きが適切に規制されると共に、シート幅方向の外側へと動かされる移動も適切に食い止められるようになっている。なおかつ、面状部材11の左右の外側面にも各立壁部位13Ba3が当てられていることで、上述した面状部材11がシート幅方向の外側へと動かされる移動がより適切に食い止められるようになっている。
【0047】
また、
図4に示すように、上述した後側一対の被取付部13Baにおける各嵌合部位13Ba1の後端部間をひと繋ぎ状に結ぶ形に形成された各止着部13Ba4は、各嵌合部位13Ba1の後下側へフック状に曲げられた後端側の形状部分間を結ぶ配置間領域にて各嵌合部位13Ba1間に架け渡された構成とされていると共に、これら嵌合部位13Ba1間に架け渡された各箇所から前下側へと板状に延出する延出部位13Ba4aを有した形状とされている。上述した各止着部13Ba4の延出部位13Ba4aは、
図8に示すように、リヤパイプ3Fdの下側の領域を後上側から前下側へと延出しており、その先端には前述したシートクッション3の後側の周縁部を通って下側へと引き込まれるクッションカバー3Cの端末部に結合された樹脂製のJフック3Caが後側から引掛けられて止着されている。
【0048】
上記構成の各止着部13Ba4は、上述した各嵌合部位13Ba1間に架け渡された両端支持構造とされていることにより、これら嵌合部位13Ba1に嵌合された各取付ワイヤ12Bの左右のフック部12Bb間にも架け渡された状態として、これらフック部12Bbにより強く支持された状態として設けられるようになっている。それにより、各止着部13Ba4は、これらに引掛けられた上述した各Jフック3Caから受けるクッションカバー3Cのテンションを強く受け止めることのできる構造強度を備えた構成とされている。
【0049】
上記構成により、面状部材11は、着座者の膝付きによってシート幅方向の中央或いは左右どちらかの領域に偏った荷重の作用を受けても、上記各立壁部位13Ba3の当接構造により、シート幅方向の内外それぞれの方向に横ずれしないように適切に位置規制されるようになっている。上述した各立壁部位13Ba3は、面状部材11がその上側にセットされたクッションパッド3Pから受ける重みによって各取付ワイヤ12Bの通し部12Baから浮き上がりにくい状態に設けられているため、常に面状部材11に対して横側から適切に当てられた状態に保持されるようになっている。
【0050】
接続部13Bbは、上述した右側の被取付部13Baにおける左側の嵌合部位13Ba1と、左側の被取付部13Baにおける右側の嵌合部位13Ba1と、をこれら嵌合部位13Ba1のフック状に曲げられた形状に沿った半パイプ形状でこれらを横並び状に一体的に接続する形に繋いだ形状とされている。
【0051】
《架橋部13Cについて》
架橋部13Cは、
図3〜
図4に示すように、上述した前側のカラー13Aの後縁部と後側のカラー13Bの前縁部とを下向きに屈曲した平面視略梯子状の形で一体的に繋ぐ形に形成された構成とされている。具体的には、架橋部13Cは、上述した前側のカラー13Aの左右の繋ぎ面部13Aa2のシート幅方向の内側寄りとなる内側2つの嵌合部位13Aa1に近い後縁部箇所から後側に向かって平面視略H字状を描く形に延び出す第1架橋部位13C1と、第1架橋部位13C1のH字の両後端に跨ってシート幅方向の外側へ幅を広げる形に延びると共にその延びた先から後側のカラー13Bの左右の繋ぎ面部13Ba2のシート幅方向の外側寄りとなる外側2つの嵌合部位13Ba1に近い前縁部箇所と繋がれる形に延び出す第2架橋部位13C2と、を有する形に形成されている。
【0052】
上述した第1架橋部位13C1は、そのH字の横向きに架橋された繋ぎ部分を屈曲線とする形で全体が下向きに谷状に折り曲げられた形に形成されている(
図8参照)。そして、
図3〜
図4に示すように、上述した第1架橋部位13C1のH字の横向きに架橋された繋ぎ部分からは、シート幅方向の両外側に張り出す略C字状の引掛部位13C3が形成されている。これら引掛部位13C3は、
図1で前述したシートバック2の背裏面に被せられた不図示のバックカバーの前下側へと引き込まれた下端側の端末部が、不図示のゴムバンドを介して下側から引掛けられて止着される部位となっている。
【0053】
また、
図3〜
図4に示すように、上述した第1架橋部位13C1と第2架橋部位13C2との所々の箇所には、高さ方向に貫通する取付孔13C4が形成されている。これら取付孔13C4は、面状支持体10の下部領域を通って配索される種々のワイヤハーネスW/Hを下側からクリップCLを用いて差し込んで固定するための取付部として機能するものとなっている。上述した架橋部13Cは、
図8で前述したように、全体が下向きに屈曲した形となって前側のカラー13Aと後側のカラー13Bとを繋ぐ構成とされていることにより、面状部材11の裏面から下側に離間した形となって設けられるようになっている。それにより、架橋部13Cは、
図9に示すように、面状部材11が着座者の荷重を受けて下側に押し込まれても、面状部材11とは干渉しにくいように構成されている。ここで、各取付孔13C4が本発明の「取付部」に相当し、これら取付孔13C4に差し込まれて取り付けられるクリップCLが本発明の「取付部材」に相当する。
【0054】
したがって、上記架橋部13Cの各取付孔13C4に下側から差し込まれて取り付けられた各ワイヤハーネスW/HのクリップCLも、各取付孔13C4からある程度上側に形状を張り出させた形となって取り付けられていても、上述した面状部材11とは干渉しにくいようになっている。そのようなことから、各ワイヤハーネスW/Hを、これらに面状部材11との干渉を逃がすための無駄な余長を持たせることなく、面状部材11の直下領域に適切に配索することができるようになっている。
【0055】
《まとめ》
以上をまとめると、本実施例のシート1は、次のような構成となっている。すなわち、枠状のシートフレーム(3F)間に架橋されて着座者の荷重を裏側から面状に支持する面状支持体(10)を有する乗物用シート(1)である。面状支持体(10)が、面状の支持面を成す可撓性の面状部材(11)と、面状部材(11)の架橋される端側の縁部をシートフレーム(3F)に取り付ける取付ワイヤ(12A,12B)と、取付ワイヤ(12A,12B)とシートフレーム(3F)との間に介設される樹脂製の介設具(13A,13B)と、を有する。介設具(13A,13B)が、面状部材(11)の裏側領域に張り出して同裏側領域に配設される取付部材(CL)が取り付けられる取付部(13C4)を有する。
【0056】
このように、取付部材(CL)の取付部(13C4)が樹脂製の介設具(13A,13B)から面状部材(11)の裏側領域へと張り出す形に設けられることにより、取付部(13C4)が面状部材(11)の表面上に露呈しない構成となるため、乗り心地を阻害しにくいように取付部材(CL)を面状支持体(10)に取り付けることができる。
【0057】
また、取付部(13C4)が、面状部材(11)の裏面から離間して配設される。このような構成とされていることにより、面状部材(11)が着座者の荷重を受けて裏側に撓んでも取付部(13C4)と干渉しにくくなるため、より乗り心地を阻害しにくいように取付部材(CL)を面状支持体(10)に取り付けることができる。
【0058】
また、面状部材(11)の架橋される両側の縁部に、これらの縁部をシートフレーム(3F)に取り付ける取付ワイヤ(12A,12B)と、これら取付ワイヤ(12A,12B)とシートフレーム(3F)との間に介設される樹脂製の介設具(13A,13B)と、が設けられている。更に、各々の介設具(13A,13B)同士を一体的に繋ぐ架橋部(13C)を有し、架橋部(13C)に取付部(13C4)が形成される。このような構成とされていることにより、介設具(13A,13B)同士を一体的に繋ぐ架橋部(13C)の構成を利用して、取付部(13C4)をより構造強度の高い両端支持状態で設けることができる。
【0059】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の乗物用シートは、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、本発明の構成は、乗物用シートにおけるシートクッションの他、シートバックにも適用可能である。
【0060】
また、面状支持体は、シートフレーム間に架橋されて着座者の荷重を裏側から面状に支持するように設けられる構成であればよく、シートクッションの骨格を成す枠状のクッションフレームに対して前後方向に架橋されるものの他、シート幅方向に架橋されるものであってもよい。また、シートバックの骨格を成す枠状のバックフレームに対して高さ方向に架橋されるものやシート幅方向に架橋されるものであってもよい。
【0061】
また、面状の支持面を成す可撓性の面状部材は、皮革材等のファブリック材以外の可撓性の面材から成るものであってもよい。また、面状部材の架橋される端側の縁部をシートフレームに取り付ける取付ワイヤは、シートフレームに引掛けにより取り付けられるフックの他、ロック爪にロックされたりかしめにより固定されたりして取り付けられるもの等、他の取付構造によりシートフレームに取り付けられるものであってもよい。また、取付ワイヤの取り付けられるシートフレームは、角パイプや板材等の丸パイプ以外のフレーム材から成るものであってもよい。上記シートフレームは、例えば、シートリフタを構成するリフタリンク同士を連結する丸パイプとして構成されていて、同丸パイプに樹脂製の介設具を介して引掛けられた取付ワイヤに対して軸回転するように構成されていてもよい。
【0062】
また、樹脂製の介設具は、取付ワイヤとシートフレームとの間に介設される構成となっていればよく、必ずしも取付ワイヤと一体的に嵌合された状態となってシートフレームに取り付けられるものでなくてもよい。また、取付ワイヤは、横並び状に3つ以上或いは1つだけ設けられる構成であってもよい。
【0063】
また、介設具に設定される取付部は、取付部材を差し込んで取り付ける取付孔から成るものの他、取付部材を引掛けたり接合したり挟み付けたりして取り付ける他の取付構造から成るものであってもよい。また、取付部は、取付部材を下側から取り付けるものの他、上側からや横側から差し込むなどして取り付けるものであってもよい。また、取付部は、面状部材の裏面に当接して設けられるものであってもい。また、取付部は、介設具から片持ち状に張り出す形で設けられるものであってもよい。