特許第6908026号(P6908026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6908026ポリカーボネート共重合体、それを用いた光学レンズ及びフィルム、並びに該共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908026
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート共重合体、それを用いた光学レンズ及びフィルム、並びに該共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/00 20060101AFI20210708BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20210708BHJP
   G02B 3/04 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   C08G64/00
   G02B1/04
   G02B3/04
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-510582(P2018-510582)
(86)(22)【出願日】2017年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2017013869
(87)【国際公開番号】WO2017175693
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2020年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-75919(P2016-75919)
(32)【優先日】2016年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−161746(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/147242(WO,A1)
【文献】 特開平06−036346(JP,A)
【文献】 特開平04−338594(JP,A)
【文献】 特開平05−155964(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/052370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00
G02B 1/04
G02B 3/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(K)で表される構成単位及び下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート共重合体であって、
【化1】
(一般式(K)中、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【化2】
(一般式(1)中、Qはヘテロ原子を含んでもよい炭素数5以上の脂肪族炭化水素基を表す。)
前記一般式(1)が、下記式(2)、(4)、(5)及び(6)からなる群より選ばれるいずれか一種以上である、前記ポリカーボネート共重合体。
【化3】
【請求項2】
前記一般式(1)が、上記式(2)である、請求項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項3】
前記一般式(K)で表される構成単位と前記一般式(1)で表される構成単位との共重合比率(モル%)が、一般式(K)で表される構成単位:一般式(1)で表される構成単位=20:80〜90:10である、請求項1または2に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項4】
前記一般式(K)中のRがHである、請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項5】
アッベ数が55以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項6】
ポリスチレン換算の重量平均分子量が20,000〜70,000である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項7】
更に、下記一般式(B)で表される構成単位を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体。
【化4】
(一般式(B)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、およびハロゲン原子から選択され;Xは、それぞれ独立に、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基であり;nは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。)
【請求項8】
前記一般式(K)で表される構成単位の割合が、10〜50モル%であり、前記一般式(1)で表される構成単位の割合が、20〜60モル%であり、前記一般式(B)で表される構成単位の割合が、20〜40モル%である、請求項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体を用いた光学レンズ。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体を用いたフィルム。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法であって、
下記一般式(L)で表されるジヒドロキシ化合物及び下記一般式(I)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを溶融重縮合することを特徴とするポリカーボネート共重合体の製造方法であって、
【化5】
(一般式(L)中、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【化6】
(一般式(I)中、Qはヘテロ原子を含んでもよい炭素数5以上の脂肪族炭化水素基を表す。)
前記一般式(I)が、下記式(2’)、(4’)、(5’)及び(6’)からなる群より選ばれるいずれか一種以上である、前記ポリカーボネート共重合体の製造方法。
【化7】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリカーボネート共重合体、及びそれにより形成される光学レンズ及びフィルムに関するものである。また、本発明は、該共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学素子の材料として、光学ガラスあるいは光学用透明樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性や透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れ、様々な屈折率(nD)やアッベ数(νD)を有する多種類の材料が存在しているが、材料コストが高い上、成形加工性が悪く、また生産性が低いという問題点を有している。とりわけ、収差補正に使用される非球面レンズに加工するには、極めて高度な技術と高いコストがかかるため実用上大きな障害となっている。
【0003】
一方、光学用透明樹脂、中でも熱可塑性透明樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能で、しかも非球面レンズの製造も容易であるという利点を有しており、現在、カメラ用レンズ用途として使用されている。例えば、ビスフェノールAからなるポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリメチルメタクリレートあるいは非晶質ポリオレフィンなどが例示される。
【0004】
しかしながら、光学用透明樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、透明性、耐熱性、低複屈折性が求められるため、樹脂の特性バランスによって使用箇所が限定されてしまうという弱点がある。例えば、ポリスチレンは耐熱性が低く複屈折が大きい、ポリ-4-メチルペンテンは耐熱性が低い、ポリメチルメタクリレートはガラス転移温度が低く、耐熱性が低く、屈折率が小さいため使用領域が限られ、ビスフェノールAからなるポリカーボネートは複屈折が大きい等の弱点を有するため使用箇所が限られる。
【0005】
光学ユニットの光学設計においては、互いにアッベ数が異なる複数のレンズを組み合わせて使用することにより色収差を補正する方法が知られている。例えば、比較的高アッベ数のシクロオレフィン樹脂製のレンズと、低アッベ数のビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂製のレンズとを組み合わせて色収差を補正する。しかしながら、シクロオレフィン樹脂とポリカーボネート樹脂の間には吸水膨張率に差があり、両者のレンズを組み合わせてレンズユニットを形成すると、スマートフォン等の使用環境で吸水した際にレンズの大きさに違いが発生する。この膨張率差によりレンズの性能が損なわれる。
【0006】
特許文献1〜3には、ペルヒドロキシジメタノナフタレン骨格を含むポリカーボネート共重合体が記載されているが、ジヒドロキシメチル基の位置がいずれも2,3位であるため強度が弱く、光学レンズ用途には適していない。
【0007】
さらに近年では、例えばスマートフォンに搭載されるフロントカメラやリアカメラ等は広角化の要望が顕著である。しかし、広角化に伴って部分色収差が大きくなることが問題であった。そこで、光学特性に優れた、耐熱性のある、更なる高アッベ数の材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−70584号公報
【特許文献2】特開平2−69520号公報
【特許文献3】特開平5−341124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、光学特性に優れ、耐熱性のある、高アッベ数のポリカーボネート共重合体及びこの共重合体から形成された光学レンズ及びフィルムを提供することである。また、該共重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構成単位を含むポリカーボネート共重合体が前記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下に示すポリカーボネート共重合体、それを用いた光学レンズ及びフィルム、並びに該共重合体の製造方法に関する。
<1> 下記一般式(K)で表される構成単位及び下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート共重合体である。
【化1】
(一般式(K)中、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【化2】
(一般式(1)中、Qはヘテロ原子を含んでもよい炭素数5以上の脂肪族炭化水素基を表す。)
<2> 前記一般式(1)中のQが、炭素原子、酸素原子、及び水素原子からなる炭素数5〜30の脂環式炭化水素基を有する、上記<1>に記載のポリカーボネート共重合体である。
<3> 前記一般式(1)が、下記式(2)〜(6)からなる群より選ばれるいずれか一種以上である、上記<1>または<2>に記載のポリカーボネート共重合体である。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
<4> 前記一般式(1)が、上記式(2)又は(3)のいずれか一種以上である、上記<3>に記載のポリカーボネート共重合体である。
<5> 前記一般式(K)で表される構成単位と前記一般式(1)で表される構成単位との共重合比率(モル%)が、一般式(K)で表される構成単位:一般式(1)で表される構成単位=20:80〜90:10である、上記<1>〜<4>のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体である。
<6> 前記一般式(K)中のRがHである、上記<1>〜<5>のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体である。
<7> アッベ数が55以上である、上記<1>〜<6>のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体である。
<8> ポリスチレン換算の重量平均分子量が20,000〜70,000である、上記<1>〜<7>のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体である。
<9> 更に、下記一般式(B)で表される構成単位を含む、上記<1>〜<8>のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体である。
【化8】
(一般式(B)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、およびハロゲン原子から選択され;Xは、それぞれ独立に、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基であり;nは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。)
<10> 前記一般式(K)で表される構成単位の割合が、10〜50モル%であり、前記一般式(1)で表される構成単位の割合が、20〜60モル%であり、前記一般式(B)で表される構成単位の割合が、20〜40モル%である、上記<9>に記載のポリカーボネート共重合体である。
<11> 上記<1>〜<10>のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体を用いた光学レンズである。
<12> 上記<1>〜<10>のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体を用いたフィルムである。
<13> 上記<1>〜<8>に記載のポリカーボネート共重合体の製造方法であって、
下記一般式(L)で表されるジヒドロキシ化合物及び下記一般式(I)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを溶融重縮合することを特徴とするポリカーボネート共重合体の製造方法である。
【化9】
(一般式(L)中、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【化10】
(一般式(I)中、Qはヘテロ原子を含んでもよい炭素数5以上の脂肪族炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明により、光学特性に優れた、耐熱性のある、高アッベ数のポリカーボネート共重合体、それを用いた光学レンズ及びフィルム、並びに該共重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】モノマー合成例1で得られた主反応生成物のH−NMRの測定の結果を示す。
図2】モノマー合成例1で得られた主反応生成物の13C−NMRの測定の結果を示す。
図3】モノマー合成例1で得られた主反応生成物のCOSY−NMRの測定の結果を示す。
図4】実施例1で得られたポリカーボネート共重合体のH−NMRの測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
(a)ポリカーボネート共重合体
本発明のポリカーボネート共重合体は、一般式(K)で表される構成単位及び一般式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート共重合体である。
【0015】
一般式(K)で表される構成単位(以下、「構成単位(K)」という)は、下記一般式(L)で表されるジヒドロキ化合物から誘導される構成単位が例示される。例えば、デカヒドロ−1、4:5、8−ジメタノナフタレンジオール(以下、「D−NDM」と記載することがある)から誘導される構成単位である。
【化11】
(一般式(L)において、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【0016】
構成単位(K)は、下記一般式(M)で表される−CHO−基が6位に結合した異性体(2,6位の異性体)と、下記一般式(N)で表される−CHO−基が7位に結合した異性体(2,7位の異性体)との混合体であることが好ましい。樹脂の強度、引張伸度、成形体の外観などの樹脂物性の観点から、質量比で、2,6位の異性体:2,7位の異性体=1.0:99.0〜99.0:1.0であることが好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=20:80〜80:20であることがより好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=50:50〜80:20であることが特に好ましい。本発明では、2,3位の異性体は含まない。
【化12】
(一般式(M)において、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【化13】
(一般式(N)において、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【0017】
前記一般式(M)で表される構成単位(以下、「構成単位(M)」という)は、下記一般式(P)で表されるジヒドロキ化合物から誘導される構成単位が例示され、前記一般式(N)で表される構成単位(以下、「構成単位(N)」という)は、下記一般式(O)で表されるジヒドロキ化合物から誘導される構成単位が例示される。
【化14】
(一般式(P)において、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【化15】
(一般式(O)において、RはH、CHまたはCHCHを表す。)
【0018】
前記一般式(K)、(L)、(M)、(N)、(P)及び(O)において、Rはすべて同じであることが好ましく、流通性の観点から、好ましくは、RはHである。
【0019】
一般式(1)で表される構成単位(以下、「構成単位(1)」という)は、下記一般式(I)で表されるジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位が例示される。
【化16】
【0020】
一般式(1)中のQは、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数5以上の脂環式炭化水素基を有する。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が好ましく挙げられ、酸素原子が特に好ましく挙げられる。一般式(1)中のQは、炭素原子、酸素原子、及び水素原子からなる炭素数5以上の脂環式炭化水素基を有することが好ましく、炭素原子、酸素原子、及び水素原子からなる炭素数5〜30の脂環式炭化水素基を有することがより好ましい。このような構造であることにより、成形体の強度やアッベ数がより向上する傾向がある。
【0021】
一般式(1)で表される構造単位は、下記式(2)〜(6)からなる群より選ばれるいずれか一種以上であることが好ましい。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【0022】
式(2)で表される構成単位はスピログリコール(以下、「SPG」と記載することがある)から、式(3)で表される構成単位はイソソルビド(以下、「ISB」と記載することがある)から、式(4)で表される構成単位は1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」と記載することがある)から、式(5)で表される構成単位はペンタシクロペンタデカンジメタノール(以下、「PCPDM」と記載することがある)から、式(6)で表される構成単位はトリシクロデカンジメタノール(以下、「TCDDM」と記載することがある)から、各々誘導される。このなかでも、構成単位(1)は、式(2)で表される構成単位又は式(3)で表される構成単位のいずれか一種以上が好ましい。このような構成単位であることにより、得られる成形体のアッベ数がより高くなる傾向がある。
【0023】
後述するように構成単位(K)及び構成単位(1)を含むポリカーボネート共重合体は、一般式(L)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(I)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを溶融重縮合することにより得られる。
【0024】
前記一般式(K)で表される構成単位と前記一般式(1)で表される構成単位との共重合比率(モル%)が、一般式(K)で表される構成単位:一般式(1)で表される構成単位=20:80〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20であることがより好ましい。特にこの範囲内であると、高アッベ数、耐熱性及び光学物性に優れた共重合体が得られる。
【0025】
本発明のポリカーボネート共重合体は、構成単位(K)及び構成単位(1)を含むが、本発明による効果を損なわない範囲で他の構成単位を含んでもよい。本発明のポリカーボネート共重合体に占める構成単位(K)及び構成単位(1)の合計の割合は、70質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0026】
他の構成単位とは、一般式(L)及び一般式(I)以外のジオール化合物と炭酸ジエステルとを反応させて得られる構成単位であり、一般式(L)及び一般式(I)以外のジオール化合物として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ、及び下記一般式(A)で表されるフルオレン系ジオール化合物等が例示される。
【化22】
一般式(A)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、およびハロゲン原子から選択され;Xは、それぞれ独立に、分岐していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基であり;nは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。
一般式(L)及び一般式(I)以外のジオール化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
一般式(A)で表されるフルオレン系ジオール化合物の具体例としては、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン等が例示される。これらの中でも9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレンが好適である。
【0027】
本発明では、一般式(L)及び一般式(I)以外のジオール化合物として、一般式(A)で表されるフルオレン系ジオール化合物を用いると、得られたポリカーボネート共重合体は、光学レンズ以外にもフィルムとしても有用である。一般式(A)で表されるフルオレン系ジオール化合物も、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
特に、一般式(A)におけるnが0または1である化合物、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン等を用いると、フィルム用途として好ましい。
さらに好ましいジオール化合物として、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが挙げられる。
上記3成分のジオール化合物を用いて製造したポリカーボネート共重合体は、光弾性係数、波長分散特性、フィルム強度(引張強度、引裂強度など)、耐熱性、コート塗布性、蒸着性、透明性、透過率、および耐加水分解性の少なくとも一つの点で優れている。
【0028】
上記3成分のジオール化合物を用いて製造したポリカーボネート共重合体における、一般式(K)で表される構成単位の割合は、10〜50モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましい。また、一般式(1)で表される構成単位の割合は、20〜60モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましい。更に、一般式(B)で表される構成単位の割合は、20〜40モル%が好ましい。
特にこの範囲内であると、波長分散特性、光弾性係数、コート密着性、透明性、透過率、フィルム加工性、耐加水分解性、及びフィルム伸長性の少なくとも一つに優れた共重合体が得られる。
フィルムの具体的な用途としては、例えば、有機ELフィルム、反射防止フィルム、透明導電性フィルム、高耐熱フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、遮光フィルムなどが挙げられる。
【0029】
さらに本発明のポリカーボネート共重合体には、酸化防止剤、離型剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等を添加することが好ましい。
【0030】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]がより好ましい。ポリカーボネート樹脂中の酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.3重量部であることが好ましい。
【0031】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0032】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸モノグリセリドおよびラウリン酸モノグリセリドが特に好ましい。これら離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0033】
加工安定剤としては、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。ポリカーボネート樹脂中のリン系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0034】
硫黄系加工熱安定剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0035】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられる。
【0037】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0038】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0039】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
【0040】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0041】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート樹脂に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0042】
ポリカーボネート樹脂には、製造時に生成するフェノールや、反応せずに残存した炭酸ジエステルが不純物として存在する。ポリカーボネート樹脂中のフェノール含量は、0.1〜3000ppmであることが好ましく、0.1〜2000ppmであることがより好ましく、1〜1000ppm、1〜800ppm、1〜500ppm、または1〜300ppmであることが特に好ましい。また、ポリカーボネート樹脂中の炭酸ジエステル含量は、0.1〜1000ppmであることが好ましく、0.1〜500ppmであることがより好ましく、1〜100ppmであることが特に好ましい。ポリカーボネート樹脂中に含まれるフェノールおよび炭酸ジエステルの量を調節することにより、目的に応じた物性を有する樹脂を得ることができる。フェノールおよび炭酸ジエステルの含量の調節は、重縮合の条件や装置を変更することにより適宜行うことができる。また、重縮合後の押出工程の条件によっても調節可能である。
【0043】
フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を上回ると、得られる樹脂成形体の強度が落ちたり、臭気が発生する等の問題が生じ得る。一方、フェノールまたは炭酸ジエステルの含量が上記範囲を下回ると、樹脂溶融時の可塑性が低下する虞がある。
【0044】
(b)ポリカーボネート共重合体の製造方法
本発明のポリカーボネート共重合体は、一般式(L)で表されるジヒドロキ化合物、一般式(I)で表されるジヒドロキ化合物及び炭酸ジエステルを原料として溶融重縮合法により製造することができる。一般式(L)で表されるジヒドロキシ化合物には、ヒドロキシメチル基が2,6位の異性体および2,7位の異性体の混合物が存在する。これらの異性体は質量比で、2,6位の異性体:2,7位の異性体=0.1:99.9〜99.9:0.1である。樹脂の強度、引張伸度、成形体の外観などの樹脂物性の観点から、2,6位の異性体:2,7位の異性体=1.0:99.0〜99.0:1.0であることが好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=20:80〜80:20であることがより好ましく、2,6位の異性体:2,7位の異性体=50:50〜80:20であることが特に好ましい。本発明では、2,3位の異性体は含まない。さらに、他のジオール化合物を併用してもよい。この反応では重縮合触媒として、塩基性化合物触媒、エステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、製造することができる。
【0045】
炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが反応性と純度の観点から好ましい。炭酸ジエステルは、ジオール成分1モルに対して0.97〜1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98〜1.10モルの比率である。このモル比率を調整することにより、ポリカーボネート共重合体の分子量が制御される。
【0046】
塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等が挙げられる。
【0047】
アルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。触媒効果、価格、流通量、樹脂の色相への影響などの観点から、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0048】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0049】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
【0050】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。また、上述したアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0051】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0052】
これらの触媒は、ジオール化合物の合計1モルに対して、1×10−9〜1×10−3モルの比率で用いられることが好ましく、より好ましくは1×10−7〜1×10−4モルの比率で用いられる。
【0053】
溶融重縮合法は、前記の原料および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段行程で実施される。
【0054】
具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めてジオール化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200〜350℃の温度で0.05 〜2時間重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行ってもよくまたバッチ式で行ってもよい。前記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であっても、スクリューを装備した押出機型であってもよく、また、重合物の粘度を勘案してこれらを適宜組み合わせた反応装置を使用することが好ましい。
【0055】
本発明のポリカーボネート共重合体の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn-プロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジn-ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニルリン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p-トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。失活効果、樹脂の色相や安定性の観点から、p-トルエンスルホン酸ブチルを用いるのが好ましい。また、これらの失活剤は、触媒量に対して好ましくは0.01〜50倍モル、より好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0056】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けてもよく、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0057】
本発明のポリカーボネート共重合体は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過が好適に実施される。フィルターのメッシュは5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0058】
(c)ポリカーボネート共重合体の物性
本発明のポリカーボネート共重合体の好ましいガラス転移温度(Tg)は95〜180℃であり、より好ましくは100〜160℃であり、特に好ましくは105〜155℃である。また、ガラス転移温度(Tg)の好ましい下限値として、110℃および120℃が挙げられ、ガラス転移温度(Tg)の好ましい上限値として、150℃が挙げられる。Tgが95℃より低いと、レンズやカメラの使用温度範囲が狭くなるため好ましくない。また、180℃を超えると射出成形を行う際の成形条件が厳しくなるため好ましくない。
【0059】
本発明のポリカーボネート共重合体は、成形後にJIS-K-7142の方法で測定した屈折率が1.49〜1.55であることが好ましく、1.50〜1.53であることがより好ましい。
【0060】
本発明のポリカーボネート共重合体は、成形後にJIS-K-7142の方法で測定したアッベ数が55.0以上であることが好ましく、より好ましくは56.0以上、特に好ましくは57.0以上である。アッベ数の上限は、60.0程度である。
【0061】
本発明のポリカーボネート共重合体は、成形後に積分球式光電光度法で測定した全光線透過率が85.0%以上であることが好ましく、より好ましくは87.0%以上である。全光線透過率の上限は、99%程度である。
【0062】
本発明のポリカーボネート共重合体は、JIS-K-7209の方法で測定した吸水率が0.2〜2.0%であることが好ましく、0.3〜1.5%であることがより好ましい。
【0063】
本発明のポリカーボネート共重合体の吸水膨張率は0.01〜0.5%が好ましく、0.03〜0.4%がより好ましい。吸水膨張率の測定はマイクロメーター(精度1000分の1mm)によって行う。吸水率測定に使用する円板の直径を測定し、吸水前後の直径の変化率(%)を吸水膨張率とする。
【0064】
本発明のポリカーボネート共重合体の好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は20,000〜70,000である。より好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は25,000〜65,000であり、特に好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は30,000〜60,000である。Mwが20,000より小さいと、光学レンズが脆くなるため好ましくない。Mwが70,000より大きいと、溶融粘度が高くなるため製造後の樹脂の抜き取りが困難になり、更には流動性が悪くなり溶融状態で射出成形しにくくなるため好ましくない。
【0065】
本発明のポリカーボネート共重合体の好ましいメルトフローレート(MVR)は10〜80、より好ましくは20〜60である。
【0066】
本発明のポリカーボネート共重合体の好ましい還元粘度(ηsp/C)は、0.20dl/g以上であり、より好ましくは0.23〜0.84dl/gである。
【0067】
(d)光学レンズ
本発明の光学レンズは、上述した本発明のポリカーボネート共重合体を射出成形機あるいは射出圧縮成形機によりレンズ形状に射出成形することによって得ることができる。射出成形の成形条件は特に限定されないが、成形温度は好ましくは180〜280℃である。また、射出圧力は好ましくは50〜1700kg/cm2である。
【0068】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス1000以下であることが好ましく、より好ましくはクラス100以下である。
【0069】
本発明の光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。非球面レンズの非点収差は0〜15mλであることが好ましく、より好ましくは0〜10mλである。
【0070】
本発明の光学レンズの厚みは、用途に応じて広範囲に設定可能であり特に制限はないが、好ましくは0.01〜30mm、より好ましくは0.1〜15mmである。本発明の光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていてもよい。反射防止層は、単層であっても多層であってもよく、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。これらのうちでより好ましいものは酸化ケイ素、酸化ジルコニウムであり、更に好ましいものは酸化ケイ素と酸化ジルコニウムの組み合わせである。また、反射防止層に関しては、単層/多層の組み合わせ、またそれらの成分、厚みの組み合わせ等について特に限定はされないが、好ましくは2層構成又は3層構成、特に好ましくは3層構成である。また、該反射防止層全体として、好ましくは光学レンズの厚みの0.00017〜3.3%、具体的には0.05〜3μm、特に好ましくは1〜2μmとなる厚みで形成するのがよい。
【実施例】
【0071】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。1)ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):
GPCを用い、テトラヒドロフランを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいてGPCのリテンションタイムから算出した。
2)ガラス転移温度(Tg):
示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
3)屈折率nD、アッベ数νD:
ポリカーボネート共重合体を、40φ、3mm厚の円板にプレス成形(成形条件:200℃、100kgf/cm、2分)し、直角に切り出し、カルニュー製KPR-200により測定した。
4)全光線透過率:
日本電色工業(株)製MODEL1001 DPにより測定した。なお、全光線透過率は、プレス成形した円板(厚み3mm)について測定した。
5)吸水率
厚み2mmの円板を作製し、JIS-K-7209に基づき測定した。吸水前と吸水後の重量を精密天秤(最小0.1mg)にて測定し、重量増加分を吸水率とした。
吸水率=(吸水後の重量−吸水前の重量)×100/(吸水前の重量)
【0072】
<モノマー合成例1(D−NDMの合成)>
・500mlステンレス製反応器にアクリル酸メチル173g(2.01mol)、ジシクロペンタジエン167g(1.26mol)を仕込み195℃で2時間反応を行った。下記式(3a)で表されるモノオレフィン96gを含有する反応液を取得し、これを蒸留精製した後、一部を後段の反応に供した。
・300mlステンレス製反応器を使用し、蒸留精製した式(3a)で表されるモノオレフィンのヒドロホルミル化反応をCO/H混合ガス(CO/Hモル比=1)を用いて行った。反応器に式(3a)で表されるモノオレフィン70g、トルエン140g、亜リン酸トリフェニル0.50g、別途調製したRh(acac)(CO)のトルエン溶液550μl(濃度0.003mol/L)を加えた。窒素およびCO/H混合ガスによる置換を各々3回行った後、CO/H混合ガスで系内を加圧し、100℃、2MPaにて5時間反応を行った。反応終了後、反応液のガスクロマトグラフィー分析を行い、下記式(2a)で表される二官能性化合物76g、式(3a)で表されるモノオレフィン1.4gを含む反応液(転化率98%、選択率97%)であることを確認すると共に、これを蒸留精製した後、一部を後段の反応に供した。
・300mlステンレス製反応器に蒸留精製した式(2a)で表される二官能性化合物50g、Cu−Zn−Al触媒(日揮触媒化成株式会社製:E−01X)10g、トルエン150gを添加し、水素ガスで系内を加圧し、10MPa、215℃で8時間反応を行った。反応後、得られたスラリーをメタノールで希釈し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで触媒をろ過した後、エバポレーターを使用して溶媒を留去し、ガスクロマトグラフィー及びGC−MSで分析し、分子量222の主生成物43gを含有することが確認された(主生成物収率96%)。これをさらに蒸留精製し主生成物を取得した。
【0073】
【化23】
(式中、Meはメチル基を表す。)
【0074】
<モノマーの同定>
モノマー合成例1で取得した成分のNMR分析、ガスクロマトグラフィー分析およびGC−MS分析を行った。モノマー合成例1で得られた主反応生成物のH−NMR、13C−NMR、及びCOSY−NMRの各スペクトルを図1〜3に示す。
1)NMR測定条件
・装置 :日本電子株式会社製,JNM−ECA500(500MHz)
・測定モード :1H−NMR、13C−NMR、COSY−NMR
・溶媒 :CDOD(重メタノール)
・内部標準物質:テトラメチルシラン
2)ガスクロマトグラフィー測定条件
・分析装置 :株式会社島津製作所製 キャピラリガスクロマトグラフGC−2010 Plus
・分析カラム :ジーエルサイエンス株式会社製、InertCap1(30m、0.32mmI.D.、膜厚0.25μm)
・オーブン温度:60℃(0.5分間保持)−15℃/分にて昇温−280℃(4分間保持)
・検出器 :FID、温度280℃
3)GC−MS測定条件
・分析装置 :株式会社島津製作所製、GCMS−QP2010 Plus
・イオン化電圧:70eV
・分析カラム :Agilent Technologies製、DB−1(30m、0.32mmI.D.、膜厚1.00μm)
・オーブン温度:60℃(0.5分間保持)−15℃/分にて昇温−280℃(4分間保持)
・検出器温度:280℃
【0075】
GC−MS分析、及び図1〜3のNMR分析の結果から、モノマー合成例1で得られた主生成物は、前記式(1a)で表されるジオール化合物(D-NDM)であることが確認された。さらにガスクロマトグラフィーによる分析より、得られたジオール化合物は、ヒドロキシメチル基が2,6位の異性体=76質量%および2,7位の異性体=24質量%の異性体混合物であることが確認された。
【0076】
<実施例1>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:34.40g(0.155モル)、スピログリコール(SPG):20.19g(0.066モル)、ジフェニルカーボネート:47.49g(0.106モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.22mg(2.6μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下1時間かけて215℃に加熱し、撹拌した。オイルバスにて加熱を行い、200℃からエステル交換反応を開始した。反応開始から5分後に攪拌を開始し、20分後、10分かけて760Torrから200Torrまで減圧した。減圧しながら温度を210℃まで加熱し、反応開始後70分後で220℃まで昇温、80分後から30分かけて150Torrまで減圧、温度を240℃まで昇温させるとともに1Torrまで減圧したのち10分間保持し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=38,000、Tg=120℃であった。また、屈折率は1.512、アッベ数は57.7であった。全光線透過率は89%、吸水率は0.3質量%であった。得られたポリカーボネート共重合体中のフェノール量、ジフェニルカーボネート量およびD−NDM量は、それぞれ280ppm、100ppmおよび20ppmであった。
実施例1で得られたポリカーボネート共重合体のH−NMRの測定の結果を図4に示す。
【0077】
<実施例2>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:24.90g(0.112モル)、イソソルビド(ISB):12.42g(0.085)、ジフェニルカーボネート:42.63g(0.199モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.19mg(2.3μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=45,000、Tg=145℃であった。また、屈折率は1.521、アッベ数は58.0であった。全光線透過率は89%、吸水率は1.1質量%であった。得られたポリカーボネート共重合体中のフェノール量、ジフェニルカーボネート量およびD−NDM量は、それぞれ250ppm、100ppmおよび20ppmであった。
【0078】
<実施例3>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:30.02g(0.135モル)、スピログリコール(SPG):6.00g(0.020モル)、イソソルビド(ISB):6.00g(0.041モル)、ジフェニルカーボネート:42.09g(0.197モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.20mg(2.3μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。得られたポリカーボネート共重合体中のフェノール量、ジフェニルカーボネート量およびD−NDM量は、それぞれ290ppm、100ppmおよび20ppmであった。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=40,000、Tg=131℃であった。また、屈折率は1.519、アッベ数は57.8であった。全光線透過率は90%、吸水率は0.6質量%であった。
【0079】
<実施例4>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:10.51g(0.047モル)、イソソルビド(ISB):23.48g(0.161)、ジフェニルカーボネート:44.49g(0.208モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.17mg(2.0μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=39,000、Tg=152℃であった。また、屈折率は1.510、アッベ数は59.0であった。全光線透過率は90%、吸水率は1.9質量%であった。
【0080】
<実施例5>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:8.00g(0.036モル)、スピログリコール(SPG):32.40g(0.106g)、ジフェニルカーボネート:30.98g(0.145モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.14mg(1.7μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=32,000、Tg=100℃であった。また、屈折率は1.490、アッベ数は58.7であった。全光線透過率は89%、吸水率は0.3質量%であった。
【0081】
<実施例6>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:25.20g(0.113モル)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM):7.01g(0.049モル)、ジフェニルカーボネート:34.80g(0.162モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.18mg(2.1μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=55,000、Tg=110℃であった。また、屈折率は1.527、アッベ数は57.2であった。全光線透過率は88%、吸水率は0.3質量%であった。
【0082】
<実施例7>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:20.51g(0.092モル)、ペンタシクロペンタデカンジメタノール(PCPDM):10.37g(0.040モル)、ジフェニルカーボネート:28.36g(0.132モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.13mg(1.6μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=35,000、Tg=136℃であった。また、屈折率は1.533、アッベ数は56.9であった。全光線透過率は90%、吸水率は0.3質量%であった。
【0083】
<実施例8>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:22.18g(0.100モル)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM):8.39g(0.043モル)、ジフェニルカーボネート:30.67g(0.143モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.14mg(1.7μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=42,000、Tg=119℃であった。また、屈折率は1.530、アッベ数は57.2であった。全光線透過率は89%、吸水率は0.3質量%であった。
【0084】
<実施例9>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:6.55g(0.029モル)、スピログリコール(SPG):21.95.g(0.072モル)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCFL):16.08g(0.043モル)、ジフェニルカーボネート:31.26g(0.146モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.14mg(1.7μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=41,000、Tg=141℃であった。
【0085】
<比較例1>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:23.11g(0.104モル)、ビスフェノールA:10.17g(0.045モル)、ジフェニルカーボネート:32.01g(0.149モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.15mg(1.8μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=35,000、Tg=140℃であった。また、屈折率は1.553、アッベ数は41.0であった。全光線透過率は88%、吸水率は0.3質量%であった。
【0086】
<比較例2>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:20.99g(0.094モル)、ビスフェノールA:9.24g(0.040モル)、ジフェニルカーボネート:28.89g(0.135モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.13mg(1.6μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=35,000、Tg=139℃であった。また、屈折率は1.546、アッベ数は44.8であった。全光線透過率は89%、吸水率は0.3質量%であった。
【0087】
<比較例3>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:30.9g(0.139モル)、ジフェニルカーボネート:29.8g(0.139モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.09mg(1.1μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂はMw=38,000、Tg=137℃であった。また、屈折率は1.531、アッベ数は57.1であった。全光線透過率は89%、吸水率は0.3質量%であった。
【0088】
<比較例4>
スピログリコール(SPG):30.61g(0.101モル)、ジフェニルカーボネート:21.97g(0.103モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.10mg(1.2μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート樹脂を得ることを試みたが、重合が進むと同時に結晶化が進行し、重合体は得られなかった。
【0089】
<比較例5>
イソソルビド(ISB):36.29g(0.248モル)、ジフェニルカーボネート:53.46g(0.250モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.2mg(2.5μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂はMw=38,000、Tg=165℃であった。また、屈折率は1.500、アッベ数は59.8であった。全光線透過率は90%、吸水率は3.0質量%であった。
【0090】
<比較例6>
モノマー合成例1より得られた式(1a)で表されるD-NDM:18.68g(0.084モル)、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン:15.78g(0.036モル)、ジフェニルカーボネート:25.91g(0.121モル)、および炭酸水素ナトリウム:0.13mg(1.6μモル)を攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は実施例1と同様に操作し、ポリカーボネート共重合体を得た。
得られたポリカーボネート共重合体はMw=30,000、Tg=138℃であった。また、屈折率は1.578、アッベ数は34.2であった。全光線透過率は89%、吸水率は0.3質量%であった。得られたポリカーボネート共重合体中のフェノール量、ジフェニルカーボネート量、D−NDM量および9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン量は、それぞれ300ppm、250ppm、25ppmおよび20ppmであった。
なお、得られたポリカーボネート共重合体中のフェノール量、ジフェニルカーボネート量、D−NDM量および9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン量は、LC−MSにより分析した。該LC−MSに用いたカラムは、アジレント・テクノロジー株式会社製逆相カラムZORBAX Eclipse XDB-18であり、移動相はグラジエントプログラムにて酢酸アンモニウム水溶液、テトラヒドロフランおよびメタノールを用い、カラム温度45℃、検出器225nm、標品として各化合物の純品より検量線を作成し定量した。測定は、ポリカーボネート共重合体0.5gをテトラヒドロフラン50mlに溶解させた後、フィルターでろ過し、この測定溶液2μlを注入して行った。
【0091】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明により、光学特性に優れ、耐熱性のある、高アッベ数のポリカーボネート共重合体並びにそれを用いた光学レンズ及びフィルムを得ることができる。本発明のポリカーボネート共重合体は、射出成形可能で生産性が高く安価であるため、カメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高アッベガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。また、既存の材料と比較し更にアッベ数を高めたことで、色収差の補正に有効であり、画質の向上が見込まれる。特に小さなレンズユニットを搭載するスマートフォン、タブレットに好適である。さらに本発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な高アッベ非球面レンズを射出成形により簡便に得ることができ、極めて有用である。また、近年のカメラに対する広角化ニーズに伴う部分色収差の補正に極めて有用である。更に、フルオレン系ジオール化合物を含む3成分のジオール化合物を用いて製造したポリカーボネート共重合体は、有機RLフィルムや反射防止フィルムなどのフィルムとして有用である。
図1
図2
図3
図4