特許第6908047号(P6908047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908047
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/105 20200101AFI20210708BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20210708BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H05B47/105
   G09G3/34 J
   G09G3/20 642P
   G09G3/20 641E
   G09G3/20 642C
   G09G3/20 680B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-542350(P2018-542350)
(86)(22)【出願日】2017年9月12日
(86)【国際出願番号】JP2017032809
(87)【国際公開番号】WO2018061744
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年7月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-188712(P2016-188712)
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】川手 貴生人
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/140299(WO,A1)
【文献】 特開2013−004263(JP,A)
【文献】 特開2014−066920(JP,A)
【文献】 特開2010−230860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
H05B 45/00
G09G 3/20
G09G 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光可能な光源部を有する照明部と、
前記照明部を制御する照明制御部と、
前記照明部からの照明光で表示画像を形成可能な表示素子と、
前記表示素子を制御する表示制御部と、
映像信号に基づき前記照明制御部及び前記表示制御部を制御する制御部と、
前記光源部の現在の出力強度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源部の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記検出部によって検出された前記現在の出力強度との差に基づき、前記制御値を補正する補正値を決定し、
前記照明制御部は、前記制御値が前記補正値によって補正された制御補正値に基づき前記光源部を駆動し、
前記差の絶対値が閾値よりも小さい時に、前記補正値は、ゼロであり、前記制御補正値は、前記目標出力強度に対応する前記制御値であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
発光可能な光源部を有する照明部と、
前記照明部を制御する照明制御部と、
前記照明部からの照明光で表示画像を形成可能な表示素子と、
前記表示素子を制御する表示制御部と、
映像信号に基づき前記照明制御部及び前記表示制御部を制御する制御部と、
前記光源部の現在の出力強度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源部の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記検出部によって検出された前記現在の出力強度との差に基づき、前記制御値を補正する補正値を決定し、
前記照明制御部は、前記制御値が前記補正値によって補正された制御補正値に基づき前記光源部を駆動し、
前記制御補正値に基づき前記光源部を駆動した後に、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記現在の出力強度を取り込み、前記現在の出力強度が前記目標出力強度に一致するように、前記補正値を調整することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
発光可能な光源部を有する照明部と、
前記照明部を制御する照明制御部と、
前記照明部からの照明光で表示画像を形成可能な表示素子と、
前記表示素子を制御する表示制御部と、
映像信号に基づき前記照明制御部及び前記表示制御部を制御する制御部と、
前記光源部の現在の出力強度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源部の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記検出部によって検出された前記現在の出力強度との差に基づき、前記制御値を補正する補正値を決定し、
前記照明制御部は、前記制御値が前記補正値によって補正された制御補正値に基づき前記光源部を駆動し、
前記光源部は、それぞれが異なる発光色を有する複数の発光素子を含み、
前記画像のフレーム期間を時間分割したサブフレーム期間毎に異なる前記発光素子を駆動するように、前記照明制御部は、前記照明部をフィールドシーケンシャル方式で制御し、
前記制御部は、前記発光素子毎に、前記目標出力強度に対応する前記制御値を記憶し、
前記制御値は、前記複数の発光素子のうちの対応する1つの発光素子をPWM駆動するDuty比と前記対応する1つの発光素子をPAM駆動する電流値との乗算値に基づくことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
発光可能な光源部を有する照明部と、
前記照明部を制御する照明制御部と、
前記照明部からの照明光で表示画像を形成可能な表示素子と、
前記表示素子を制御する表示制御部と、
映像信号に基づき前記照明制御部及び前記表示制御部を制御する制御部と、
前記光源部の現在の出力強度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源部の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記検出部によって検出された前記現在の出力強度との差に基づき、前記制御値を補正する補正値を決定し、
前記照明制御部は、前記制御値が前記補正値によって補正された制御補正値に基づき前記光源部を駆動し、
前記検出部は、前記光源部の現在の温度を更に検出し、
前記制御部は、前記制御値に関連付けられた前記光源部の想定温度を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記現在の出力強度との前記差と、前記現在の温度と、現在の制御値に関連付けられた第1の想定温度と、前記目標出力強度に対応する目標制御値に関連付けられた第2の想定温度と、に基づき、前記補正値を決定することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィールドシーケンシャル方式により画像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1は、表示装置を開示し、その表示装置は、照明装置と、光強度検出部と、照明光学系と、表示素子と、投射光学系と、スクリーンと、平面ミラーと、凹面ミラー、筐体と、透光部と、備える。特許文献1の表示装置では、スクリーンに表示される表示画像に要求される輝度に応じて照明装置の輝度を変更することができる。具体的には、特許文献1の表示装置では、照明装置の光源部の駆動方法として例えば2つの駆動方式を採用し、PWM駆動方式に必要な制御値(例えばDuty比)とPAM駆動方式に必要な制御値(例えば電流値)との組み合わせを変更することで、照明装置の輝度を変更することができる。
【0003】
なお、特許文献1の表示装置では、フレーム期間内に占める表示期間(表示素子がスクリーンでの表示画像を表示可能な期間)の割合は、一定(例えば50[%])であってもよく、或いは、表示画像に要求される輝度に応じて決定(例えば50[%]又は70[%])されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−066920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、光強度検出部から光強度データを取得し、スクリーンに表示される表示画像に要求される輝度と照明装置(照明部)の実際の輝度とのずれを補正することが示唆されているが、具体的な手法は、開示されていない。
【0006】
本発明の1つの目的は、照明部の輝度を的確に制御可能な表示装置を提供することである。本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0008】
第1の態様において、表示装置は、
発光可能な光源部を有する照明部と、
前記照明部を制御する照明制御部と、
前記照明部からの照明光で表示画像を形成可能な表示素子と、
前記表示素子を制御する表示制御部と、
映像信号に基づき前記照明制御部及び前記表示制御部を制御する制御部と、
前記光源部の現在の出力強度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源部の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記検出部によって検出された前記現在の出力強度との差に基づき、前記制御値を補正する補正値を決定し、
前記照明制御部は、前記制御値が前記補正値によって補正された制御補正値に基づき前記光源部を駆動し、
前記差の絶対値が閾値よりも小さい時に、前記補正値は、ゼロであり、前記制御補正値は、前記目標出力強度に対応する前記制御値である。
【0009】
第1の態様では、現在の出力強度から目標出力強度までの距離が短い時に、制御値の補正を省略し、目標出力強度に対応する制御値で光源部を駆動することができる。
【0010】
第2の態様において、表示装置は、
発光可能な光源部を有する照明部と、
前記照明部を制御する照明制御部と、
前記照明部からの照明光で表示画像を形成可能な表示素子と、
前記表示素子を制御する表示制御部と、
映像信号に基づき前記照明制御部及び前記表示制御部を制御する制御部と、
前記光源部の現在の出力強度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源部の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記検出部によって検出された前記現在の出力強度との差に基づき、前記制御値を補正する補正値を決定し、
前記照明制御部は、前記制御値が前記補正値によって補正された制御補正値に基づき前記光源部を駆動し、
前記制御補正値に基づき前記光源部を駆動した後に、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記現在の出力強度を取り込み、前記現在の出力強度が前記目標出力強度に一致するように、前記補正値を調整する。
【0011】
第2の態様では、制御補正値に基づき光源部を駆動した後に、現在の出力強度を取り込み、好ましくは、現在の出力強度をリアルタイムに取り込み、駆動後の現在又は実際の出力強度と設定後又は変更後の目標出力強度との一致又は不一致に基づき、補正値を調整することができる。
【0012】
第3の態様において、表示装置は、
発光可能な光源部を有する照明部と、
前記照明部を制御する照明制御部と、
前記照明部からの照明光で表示画像を形成可能な表示素子と、
前記表示素子を制御する表示制御部と、
映像信号に基づき前記照明制御部及び前記表示制御部を制御する制御部と、
前記光源部の現在の出力強度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源部の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記検出部によって検出された前記現在の出力強度との差に基づき、前記制御値を補正する補正値を決定し、
前記照明制御部は、前記制御値が前記補正値によって補正された制御補正値に基づき前記光源部を駆動し、
前記光源部は、それぞれが異なる発光色を有する複数の発光素子を含み、
前記画像のフレーム期間を時間分割したサブフレーム期間毎に異なる前記発光素子を駆動するように、前記照明制御部は、前記照明部をフィールドシーケンシャル方式で制御し、
前記制御部は、前記発光素子毎に、前記目標出力強度に対応する前記制御値を記憶し、
前記制御値は、前記複数の発光素子のうちの対応する1つの発光素子をPWM駆動するDuty比と前記対応する1つの発光素子をPAM駆動する電流値との乗算値に基づくものである。
【0013】
第3の態様では、フィールドシーケンシャル方式の表示装置において、目標出力強度に対応する制御値として、例えば、1つの発光素子を駆動する際のDuty比と電流値との乗算値を採用することができる。
【0014】
第4の態様において、表示装置は、
発光可能な光源部を有する照明部と、
前記照明部を制御する照明制御部と、
前記照明部からの照明光で表示画像を形成可能な表示素子と、
前記表示素子を制御する表示制御部と、
映像信号に基づき前記照明制御部及び前記表示制御部を制御する制御部と、
前記光源部の現在の出力強度を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源部の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記検出部によって検出された前記現在の出力強度との差に基づき、前記制御値を補正する補正値を決定し、
前記照明制御部は、前記制御値が前記補正値によって補正された制御補正値に基づき前記光源部を駆動し、
前記検出部は、前記光源部の現在の温度を更に検出し、
前記制御部は、前記制御値に関連付けられた前記光源部の想定温度を記憶し、
前記制御部は、前記目標出力強度と前記現在の出力強度との前記差と、前記現在の温度と、現在の制御値に関連付けられた第1の想定温度と、前記目標出力強度に対応する目標制御値に関連付けられた第2の想定温度と、に基づき、前記補正値を決定する。
【0015】
第4の態様では、制御値に光源部の想定温度を関連付けて、補正値を決定する時に、光源部の現在の温度と、現在又は変更前の第1の想定温度と、設置後又は変更後の第2の想定温度と、を更に考慮することができる。従って、駆動後の現在又は実際の出力強度が設定後又は変更後の目標出力強度により一層一致し易くなり、照明部の輝度をより一層的確に制御することができる。
【0026】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に従う表示装置の1つの用途の説明図である。
図2図1のヘッドアップディスプレイ装置の表示機構の説明図である。
図3】本発明に従う表示装置の構成例を示す。
図4図3の表示装置の動作例を表すフローチャートを示す。
図5】目標出力強度に対応する制御値を補正する補正値の説明図である。
図6図2の表示画像を表示する周期であるフレームの説明図である。
図7図3の表示素子30及び発光部10の駆動方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0029】
図1は、本発明に従う表示装置の1つの用途の説明図である。図1の例において、表示装置として、例えばヘッドアップディスプレイ装置100が示され、ヘッドアップディスプレイ装置100は、例えば自動車である車両に適している。ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両のダッシュボード内に設けられ、表示画像を表す表示光Lをウインドシールド200で反射させることにより、運転者250等の乗員は、例えば車両情報を表す表示画像の虚像Vを視認することができる。
【0030】
図2は、図1のヘッドアップディスプレイ装置100の表示機構の説明図である。図2の例において、ヘッドアップディスプレイ装置100は、例えば、照明部10と、照明光学系20と、表示素子30と、検出部40と、投射光学系50と、スクリーン60と、平面ミラー70と、凹面ミラー75と、表示画像Mが出射する窓部81を有するハウジング80と、を備えている。
【0031】
図2の照明部10は、発光可能な光源部11(図3参照)を有し、例えば、光源部11を実装する回路基板(図示せず)と、反射透過光学部(図示せず)と、輝度ムラ低減光学部(図示せず)と、を更に有することができる。光源部11は、例えば赤色光を発する発光ダイオード11r(広義には、第1の発光素子)と、例えば緑色光を発する発光ダイオード11g(広義には、第2の発光素子)と、例えば青色光を発する発光ダイオード11b(広義には、第3の発光素子)と、を備えている(図3参照)。
【0032】
図2の照明光学系20は、例えば凹状のレンズ等で構成され、照明部10から出射された照明光Cを表示素子30の大きさに調整することができる。図2の表示素子30は、例えば、可動式の複数のマイクロミラーを備えたDMD(Digital Micro-mirror Device)であり、複数のマイクロミラーの各々は、個別に制御される。マイクロミラーがONである時に、マイクロミラーは、ヒンジ(図示せず)を支点に例えば+12度傾斜し、照明光学系20から出射された照明光Cを投射光学系50方向に反射することができる。マイクロミラーがOFFである時に、マイクロミラーは、ヒンジを支点に例えば−12度傾斜し、照明光Cを投射光学系50方向に反射することができない。
【0033】
図2の検出部40は、照明部10の光源部11の出力強度を検出することができ、好ましくは、光源部11の温度も検出することができる。図2の投射光学系50は、例えば凹レンズ又は凸レンズ等で構成され、表示素子30から投影された表示画像Mの表示光Lをスクリーン60に効率よく照射することができる。図2のスクリーン60は、例えば拡散板、ホログラフィックディフューザ、マイクロレンズアレイ等で構成され、投射光学系50からの表示光Lをスクリーン60の下面で受光し、スクリーン60の上面に表示画像Mを表示することができる。
【0034】
図2の平面ミラー70は、スクリーン60に表示された表示画像Mを凹面ミラー75に向かって反射させることができる。図2の凹面ミラー75は、例えば凹面鏡等であり、平面ミラー70からの表示光Lを凹面で反射させ、反射光は、窓部81に向かって出射する。このような表示機構を介して表示光Lは、図1の運転者250に到達し、運転者250によって認識される虚像Vは、スクリーン60に表示された表示画像Mが拡大された大きさを有する。
【0035】
図2のハウジング80の材料は、例えば硬質樹脂等であり、ハウジング80の上方に所定の大きさの窓部81が設けられている。図2の窓部81の材料は、例えばアクリル等の透光性樹脂であり、窓部81の形状は、例えば湾曲形状である。窓部81は、凹面ミラー75からの表示光Lを透過させることができる。
【0036】
図3は、本発明に従う表示装置の構成例を示す。図1において、表示装置は、ヘッドアップディスプレイ装置100として示され、ヘッドアップディスプレイ装置100は、例えば図3の制御部90、照明制御部91及び表示制御部92によって制御される。図3の例において、ECU(Electronic Control Unit)は、映像信号300を生成し、制御部90は、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signal)方式の通信で映像信号300を入力することができる。制御部90は、典型的には、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されるが、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロコンピュータ等で構成されてもよい。また、制御部90、照明制御部91及び表示制御部92は、例えば統合ICで構成されてもよい。
【0037】
図3の制御部90は、映像信号300の要求する光の輝度と発光タイミングで照明部10を制御するための照明制御データD1を照明制御部91に出力するとともに、映像信号300の要求する表示画像Mを表示素子30で形成するための表示制御データD2表示制御部92に出力することができる。表示画像Mを表示する周期であるフレームFは、複数の時間に分割されたサブフレームSFにより構成され(図7参照)、図3の照明制御部91は、サブフレームSF毎に異なる色の発光ダイオード11r、11g、11bを照明制御データD1の要求する光強度とタイミングで高速に順次切替えさせるフィールドシーケンシャル駆動方式により照明部10を制御することができる。
【0038】
図3の表示制御部92は、表示制御データD2に基づき、表示素子30の個々のマイクロミラーを例えばPWM方式により、ON/OFF制御し、照明部10の出射する照明光Cをスクリーン60の方向へ反射させる時に、発光ダイオード11r、11g、11bを基本色として利用し、加法混合方式による混色又はフルカラーで表示画像Mを表現することができる。図3の検出部40は、例えばフォトダイオードであるセンサ41と、アナログデータをデジタルデータに変換するA/D変換器42と、を含み、発光部11の出力強度データPを制御部90に出力することができる。検出部40は、発光ダイオード11r、11g、11b毎に設けられ、センサ41は、典型的には、3つの光強度検出センサを有することができる。
【0039】
好ましくは、図3の検出部40は、発光部11の温度データTも制御部90に出力し、センサ41は、典型的には、3つの発光ダイオード11r、11g、11bに対応する3つの温度検出センサを更に有することができる。なお、発光部11の温度データTは、例えば発光ダイオード又はLEDチップの周囲温度であり、制御部90は、その周囲温度と、LEDチップから周辺雰囲気までの熱抵抗と、投入電力と、に基づき、ジャンクション温度を算出してもよい。
【0040】
図4は、図3の表示装置の動作例を表すフローチャートを示す。例えばステップST01において、制御部90は、新調光値を入力する。典型的には、図1の車両又はヘッドアップディスプレイ装置100は、車両の前方照度等の外光の照度を検出する照度センサを備え、制御部90は、照度データに応じて映像信号300の要求する光の輝度を決定することができる。言い換えれば、新調光値は、典型的には、例えば照度データである。代替的に、新調光値は、例えば図3のECU又は図示されない他のECU(広義には、車載装置)によって決定されてもよく、或いは、運転者250の操作によって決定されてもよい。
【0041】
新調光値が入力された後に、制御部90は、発光部11の温度(例えば赤色光を発する発光ダイオード11rの温度)を入力する(図4のステップST02)。次に、制御部90は、新調光値に応じた光源部11の目標出力強度(例えば発光ダイオード11rの目標光強度)を決定する(ステップST03)。次に、制御部90は、新調光値に基づき設定又は変更された目標出力強度と現在の出力強度との差が閾値(第1の閾値又は強度閾値)以上であるか否かを判定する(ステップST04)。
【0042】
目標出力強度と現在の出力強度との差が閾値以上である時に、制御部90は、目標出力強度と現在の出力強度との差と、発光部11の温度と、に基づき補正値を決定する(ステップST05)。なお、表示装置又はヘッドアップディスプレイ装置100が発光部11の温度を検出しない時に、ステップST02は、省略され、ステップST05において、制御部90は、目標出力強度と現在の出力強度との差に基づき補正値を決定してもよい。
【0043】
図5は、目標出力強度に対応する制御値を補正する補正値の説明図である。図3の制御部90は、光源部11の目標出力強度に対応する制御値を記憶し、例えば目標出力強度p1及びp2に対応する制御値は、それぞれ、d1及びd2である(図5参照)。例えば図5に示されるような関係式は、発光ダイオード11r,11g,11bの個体差を考慮して製造時に設定されている。目標出力強度の値が例えば図5のp1からp2に変更される時に、制御部90は、現在の出力強度を考慮することができる(図4のステップST05)。
【0044】
例えば、発光ダイオード11rの現在の出力強度データPは、目標出力強度p1と一致し、照明制御部91が制御値d1で発光ダイオード11rを駆動することを仮定する。具体的には、制御部90は、現在の出力強度(=p1)が設定後又は変更後の目標出力強度p2までどのくらい離れているかを考慮することができる。より具体的には、照明制御部91は、設定後又は変更後の目標出力強度p2に対応する制御値d2で発光ダイオード11rを駆動する時に、その制御値d2は、現在の出力強度(=p1)から目標出力強度p2までの距離(=p1−p2)に基づく補正値Δによって補正することができる。
【0045】
現在の出力強度(=p1)を設定後又は変更後の目標出力強度p2まで下げる時に、照明制御部91は、減少された制御値(=d2−Δ=d2')で発光ダイオード11rを駆動することができる。言い換えれば、照明制御部91は、設定後又は変更後の目標出力強度p2よりも低い目標出力強度に対応する制御補正値d2'で発光ダイオード11rを駆動することができる。一般に、目標出力強度pが高い程、発光ダイオード11rは高温であるので、現在の出力強度(=p1)を設定後又は変更後の目標出力強度p2まで下げる時に、発光ダイオード11rの高温状態(発熱量)に起因して、制御値d2で駆動する発光ダイオード11rの輝度が大きいことを本発明者らは、認識した。図3の照明制御部91では、現在の出力強度(=p1)を設定後又は変更後の目標出力強度p2まで下げる時に、減少された制御値(=d2−Δ=d2')で発光ダイオード11r等の光源部11を駆動するので、照明部10の輝度を的確に制御することができる。
【0046】
好ましくは、目標出力強度と現在の出力強度との差の絶対値が大きい程、補正値の絶対値は、大きく設定される。即ち、現在の出力強度(=p1)を設定後又は変更後の目標出力強度(<p2)まで下げる時に、照明制御部91は、より一層減少された制御値(<d2')で発光ダイオード11rを駆動することができる。現在の出力強度から目標出力強度までの距離が離れる程、照明制御部91は、その距離に応じて強く補正された補正値に基づき光源部11を駆動するので、制御部90は、照明部10の輝度をより一層的確に制御することができる。
【0047】
なお、図5において、制御値dは、例えば発光ダイオード11r等の1つの発光素子をPWM駆動するDuty比とその発光ダイオード11rをPAM駆動する電流値との乗算値に基づく、発光ダイオード11の駆動電力である。1例として、PWM駆動のDuty比が一定である時に、制御値dは、発光ダイオード11の駆動電流である。或いは、駆動電流が一定である時に、制御値dは、PWM駆動のDuty比である。
【0048】
例えば、発光ダイオード11rの現在の出力強度データPは、目標出力強度p2と一致し、照明制御部91が制御値d2で発光ダイオード11rを駆動することを仮定する。現在の出力強度(=p2)を設定後又は変更後の目標出力強度p1まで上げる時に、照明制御部91は、増加された制御値(>d1)で発光ダイオード11rを駆動することができる。具体的には、制御部が目標出力強度に対応する制御値を記憶する時に、設定後又は変更後の目標出力強度よりも高い目標出力強度に対応する制御補正値で光源部を駆動することができる。一般に、目標出力強度pが低い程、発光ダイオード11rは低温であるので、現在の出力強度(=p2)を設定後又は変更後の目標出力強度p1まで上げる時に、発光ダイオード11rの低温状態(発熱量)に起因して、制御値d1で駆動する発光ダイオード11rの輝度が小さいことを本発明者らは、認識した。図3の照明制御部91では、現在の出力強度(=p2)を設定後又は変更後の目標出力強度p1まで上げる時に、増加された制御値(>d1)で発光ダイオード11r等の光源部11を駆動するので、照明部10の輝度を的確に制御することができる。
【0049】
図3の制御部90は、光源部11の目標出力強度に対応する制御値を記憶する時に、制御値に関連付けられた光源部11の想定温度を記憶することができる。例えば制御値d1及びd2に対応する想定温度は、それぞれ、T1及びT2である(図5参照)。図4のステップST02において、例えば発光ダイオード11rの温度がTであり、例えば、発光ダイオード11rの現在の出力強度データPは、目標出力強度p1と一致し、照明制御部91が制御値d1で発光ダイオード11rを駆動することを仮定する。具体的には、制御部90は、現在の温度(=T)と現在の出力強度(=p1)に対応する現在の制御値(d1)に関連付けられた想定温度(=T1)との差が閾値(第2の閾値又は温度閾値)以上である時に、現在の温度(=T)が現在の想定温度(=T1)からどのくらい離れているかを考慮することができる。より具体的には、制御部90は、現在の温度(=T)と、現在の想定温度(=T1)と、設定後又は変更後の目標出力強度p2に対応する制御値d2に関連付けられた想定温度T2と、を比較することができる。
【0050】
現在の温度(=T)が設定後又は変更後の想定温度T2よりも現在の想定温度(=T1)から離れる時に、即ち、T<T2<T1が成立する時に、制御部90は、補正値Δを減少させることができる。現在の温度(=T)が現在の想定温度(=T1)よりも設定後又は変更後の想定温度T2から離れる時に、即ち、T2<T1<Tが成立する時に、制御部90は、補正値Δを増加させることができる。現在の温度(=T)が設定後又は変更後の想定温度T2と現在の想定温度(=T1)との間にある時に、即ち、T2<T<T1が成立する時に、制御部90は、補正値Δを減少させることができる。
【0051】
図4のステップST05において、制御部90は、上述したような補正値を決定することができる。ステップST04において、目標出力強度と現在の出力強度との差が閾値以上でない時に、制御部90は、ステップST05を省略し、言い換えれば、補正値にゼロを設定することができる。ステップST06において、制御部90は、補正値に基づき制御値を補正し、照明制御部91は、その補正制御値で光源部11を駆動することができる。照明制御部91が制御補正値に基づき光源部11を駆動した後に、制御部90は、検出部40によって検出された現在の出力強度を取り込み(ステップST07)、現在の出力強度が目標出力強度に一致するように、補正値を調整することができる(ステップST09)。
【0052】
1例として、照明制御部91は、図5の補正制御値d2'が制御値d2に向かうように補正値Δを徐々に減少させることができる。ステップST07でリアルタイムに検出された現在の出力強度が目標出力強度で安定するまで(ステップST08)、制御部90は、補正値を調整することができる。現在の出力強度が目標出力強度で安定する時に、制御部90は、現在の出力強度を更新することができる(ステップST10)。具体的には、制御部90は、現在の出力強度として、安定した目標出力強度を採用することができる。
【0053】
図6は、図2の表示画像Mを表示する周期であるフレームFの説明図である。フレームFは、表示素子30の個々のマイクロミラーが通常駆動する表示期間Faと、非表示期間駆動する非表示期間Fbと、を備える。フレームF内に占める表示期間Faの割合は、例えば50[%]であるが、これに限定されず、例えば70[%]又は100[%]に設定されてもよい。フレームF内に占める表示期間Faの割合は、一定でもよく、要求輝度に応じて決定されてもよい。表示期間Faは、照明部10からの照明光Cをスクリーン60に向けて表示画像Mとして投影する期間である。非表示期間Fbは、照明部10が消灯する(例えば3つの発光ダイオード11r,11g,11bのすべてが消灯する)期間である(図7(d)〜図7(f)参照)。
【0054】
表示期間内オン駆動期間Fapは、表示期間Fa内でマイクロミラーがONする期間であり、表示期間内オフ駆動期間Faqは、表示期間Fa内でマイクロミラーがOFFする期間である。非表示期間内オン駆動期間Fbpは、非表示期間Fb内でマイクロミラーがONする期間であり、非表示期間内オフ駆動期間Fbqは、非表示期間Fb内でマイクロミラーがOFFする期間である。マイクロミラーを駆動する時に、マイクロミラーの固着を防止するために、好ましくは、表示期間内オン駆動期間Fapと非表示期間内オン駆動期間Fbpとの和(総オン駆動期間Fp)と、表示期間内オフ駆動期間Faqと非表示期間内オフ駆動期間Fbqとの和(総オフ駆動期間Fq)とが略均等になるように、制御部90は、非表示期間内オン駆動期間Fbpと非表示期間内オフ駆動期間Fbqとを調整する。
【0055】
図7は、図3の表示素子30及び発光部10の駆動方法の説明図である。図7(a)〜図7(c)に示すように、フレームFにおいて、表示素子30は、例えば緑色を単色で表示する単色ミラーEa、赤色と緑色の混色を表示する混色ミラーEb、何も表示しない消灯ミラーEcを含むことができる。単色ミラーEaは、図7(a)に示すように、表示制御データD2に基づき、表示期間Faにおいては発光ダイオード11gの点灯タイミング(図7(e)参照)でONされ、非表示期間FbにおいてはフレームF内のONする期間の和である総オン駆動期間Fpが、フレームFの略半分になるように、制御部90が非表示期間Fbにおける非表示期間内オン駆動期間Fbpと非表示期間内オフ駆動期間Fbqとを調整することができる。
【0056】
制御部90は、図7(b)に示す混色ミラーEbのように、非表示期間Fb内におけるONとOFFとを、非表示期間内オン駆動期間Fbpと非表示期間内オフ駆動期間Fbqとに即した周期で繰り返すことで、総オン駆動期間Fpと総オフ駆動期間Fqとが略均等になるように、調整することができる。また、図7(c)に示すように、消灯ミラーEcは、表示期間Faに渡ってオフ駆動であるため、非表示期間駆動は、非表示期間Fbに渡ってONすることができる。
【0057】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車両に搭載するヘッドアップディスプレイ装置などの虚像を視認させる表示装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10・・・照明部、11・・・発光部、11r,11g,11b・・・発光ダイオード、20・・・照明光学系、30・・・表示素子、40・・・検出部、41・・・センサ、42・・・A/D変換器、50・・・投射光学系、60・・・スクリーン、70・・・平面ミラー、75・・・凹面ミラー、80・・・ハウジング、81・・・窓部、90・・・制御部、91・・・照明制御部、92・・・表示制御部、100・・・ヘッドアップディスプレイ装置(広義には、表示装置)、200・・・ウインドシールド、250・・・運転者、300・・・映像信号、D1・・・照明制御データ、D2・・・表示制御データ、F・・・フレーム、L・・・表示光、M・・・表示画像、SF・・・サブフレーム、V・・・虚像、d1,d2・・・制御値、d2'・・・補正制御値、Δ・・・補正値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7