(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0034】
また、以下の説明において、
図1に示すように、ロータの中心軸A、つまりシャフトが延びる軸方向を上下方向とし、基板側を上側、とし、ハウジングの底部側を下側とする。ただし、本明細書における上下方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。
【0035】
また、ロータの中心軸Aに直交する方向を径方向とし、径方向は中心軸Aを中心とする。ロータの中心軸Aの軸回りを周方向とする。
【0036】
また、本明細書において「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向に延びる状態と、軸方向に対して45度未満の範囲で傾いた方向に延びる状態とを含む。同様に、本明細書において「径方向に延びる」とは、厳密に径方向に延びる状態と、径方向に対して45度未満の範囲で傾いた方向に延びる状態とを含む。
【0037】
また、本明細書において「嵌る(嵌合する)」とは、形状が合ったものを嵌め合わせることを意味する。形状が合ったものは、形状が同じ場合と、形状が相似形の場合と、形状が異なる場合とを含む。形状が合ったものが凹凸形状の場合には、一方の凸部の少なくとも一部が、他方の凹部の中に位置する。
【0038】
また、本明細書において「間隙」とは、意図的に設けた隙間を意味する。つまり、部材同士を接触させないように設計された隙間を間隙とする。
【0039】
(実施の形態1)
図1〜
図27を参照して、本発明の一実施の形態であるモータについて説明する。実施の形態1におけるモータは、U相、V相、及びW相の組を2組有する2系統の構成である。
【0040】
図1に示すように、モータ1は、ハウジング10と、フランジ20と、カバー30と、ロータ40と、ベアリング43,44と、ステータ50と、コイル支持部材60と、基板70及び電子部品80を有する制御部と、ヒートシンク100と、コネクタ200と、を主に備える。
【0041】
<ハウジング>
図1に示すように、ハウジング10は、ロータ40、ステータ50及びベアリング43,44を内部に収容する。ハウジング10は、軸方向に伸び、上側に開口する。
【0042】
図2に示すように、ハウジング10は、第1筒部11と、接触部12と、第2筒部13と、底部14と、を含む。本実施の形態のハウジング10は、プレス成型品である。また、第1筒部11、接触部12、第2筒部13、及び底部14の厚みは同一である。なお、「同一」とは、意図的に異なる厚みに形成していないことを意味し、プレス成型での絞りによる厚みの違い等は同一とみなす。
【0043】
第1筒部11及び第2筒部13は、中心軸Aを中心とした筒状である。なお、筒状とは、中空形状であり、平面視において円形であっても多角形であってもよい。第1筒部11は、ステータ50を内部に収容する。
【0044】
接触部12は、第1筒部11の軸方向下端から径方向内側に延びる。接触部12の内側上面には、ステータ50が接触する。
【0045】
接触部12のハウジング下面12aは、
図2に示すように径方向に延びる平坦面である。なお、接触部12のハウジング下面12aは、
図3に示すように第1筒部11から径方向内側に向かうにつれ、軸方向上側に延びてもよく、
図4に示すように第1筒部11から径方向内側に向かうにつれ、軸方向下側に延びてもよい。また接触部12のハウジング下面12aは、図示されない曲面であってもよい。
【0046】
第2筒部13は、接触部12の径方向内端から軸方向下側に延び、第1筒部11よりも小さい外径を有する筒状である。第2筒部13は、上側筒部13aと、下側筒部13bと、接続部13cとを有する。下側筒部13bは、上側筒部13aよりも小さい外径を有する。接続部13cは、上側筒部13aと下側筒部13bとを接続する。
【0047】
底部14は、第2筒部13の軸方向下端より径方向内側に延びる。底部14は、ハウジング10を閉口する。
【0048】
<フランジ>
図1及び
図2に示すように、フランジ20は、ハウジング10の外側面に、取り付けられる。
【0049】
[フランジの構成]
図2に示すように、フランジ20は、フランジ筒部21と、フランジ平面部22と、を含む。本実施の形態のフランジ20は、プレス成型品である。また、フランジ筒部21及びフランジ平面部22の厚みは同一である。
【0050】
フランジ筒部21は、ハウジング10の第2筒部13の外側面に固定される。フランジ筒部21は、中心軸Aを中心とした筒状であり、第2筒部13の外径よりも大きい。フランジ筒部21の軸方向長さは、第2筒部13の軸方向長さよりも短い。
【0051】
フランジ筒部21は、
図2及び
図3に示すように、外側面及び内側面が軸方向に沿って延びてもよい。また、フランジ筒部21は、
図4に示すように、外側面及び内側面の上部が傾斜してもよい。
【0052】
フランジ平面部22は、フランジ筒部21の軸方向下端から径方向外側に延びる。フランジ平面部22は、軸方向上側から見た際に、第1筒部11よりも径方向外側に突出する。フランジ平面部22は、モータ1の外部機器と複数箇所で固定するための固定孔部23を有する。
【0053】
[ハウジングとフランジとの接触]
図1〜
図4に示すように、フランジ筒部21の上端21aは、ハウジング10の接触部12のハウジング下面12aに接触する。つまり、フランジ筒部21の上端21aの少なくとも一部と、接触部12のハウジング下面12aの少なくとも一部が接触する。
【0054】
図2に示す接触構造においては、接触部12のハウジング下面12aは、径方向に延びる平坦面であり、フランジ筒部21の上端21aは、径方向に延びる平坦面であり、接触部12の平坦面の少なくとも一部と、フランジ筒部の平坦面の少なくとも一部とが接触する。
【0055】
図3に示す接触構造においては、接触部12は、第1筒部11から径方向内側に向かうにつれ、軸方向上側に延びる。フランジ筒部21の上端21aが径方向に延びる平坦面であるので、フランジ筒部21の上端面と内側面とのコーナー部が接触部12に入り込む構造である。したがって、フランジ20に対してハウジング10が抜けにくくなる構造である。
【0056】
図4に示す接触構造においては、接触部12は、第1筒部11から径方向内側に向かうにつれ、軸方向下側に延びる。フランジ筒部21の上端21aが接触部12のハウジング下面12aに当接するとともに、接触部12に沿って軸方向外側に延びる形状である。したがって、フランジ20に対してハウジング10が抜けにくくなる構造である。
【0057】
<カバー>
図1に示すように、カバー30は、基板70及びコネクタ200の軸方向上側を少なくとも一部を覆う。
図5に示すように、カバー30は、軸方向上側から見たときにハウジング10と重なり合う円盤状部30aと、コネクタに対向する矩形状部30bと、を含む。矩形状部30bは、径方向外端縁であるカバー外端縁31を有する外端領域Rを含む。なお、「カバー外端縁31」とは、外端(カバー30の端)を意味し、「外端領域R」とは、カバー外端縁31を含み、カバー外端縁31から内部に向かう所定の領域を意味する。
【0058】
図5及び
図6に示すように、カバー30は、被覆壁32と、カバー凹部33と、カバー凸部34と、カバー段差部35(
図1参照)と、を含む。
【0059】
被覆壁32は、径方向外端縁であるカバー外端縁31から軸方向下向きに延び、かつ後述するコネクタ200の径方向外端縁であるコネクタ外端縁216の少なくとも一部を覆う。
【0060】
カバー凹部33は、被覆壁32よりも径方向内側に形成され、軸方向に窪む。
図6に示すように、カバー凹部33の軸方向上側は平坦面である。
図6に示すカバー凹部33は、被覆壁32の径方向内側面とカバー凸部34の径方向外側面とで形成される。
【0061】
カバー凸部34は、カバー凹部33よりも径方向内側において軸方向下側に延びる。具体的には、カバー凸部34は、コネクタ長手方向(
図5における左右方向)に延び、かつ長手方向両端から短手方向(
図5における上下方向)にさらに延びる。
図6に示すように、カバー凸部34の軸方向下側は平坦面である。このカバー凸部34の下面は、基板70よりも下側に位置する。また、カバー凸部34の下面は、後述するコネクタ凸部215の上面と軸方向高さが同じまたは下側に位置する。
【0062】
カバー段差部35は、カバー凸部34の径方向内側に位置し、軸方向上側に凹む。
【0063】
なお、カバー凹部33、カバー凸部34及びカバー段差部35は、複数の平坦面で構成されるが、曲面で構成されてもよい。
【0064】
また、カバー30の外端領域Rの構造の変形例について、
図7〜
図9を参照して説明する。
図7においては、カバー凹部33は被覆壁32の内側面で構成されず、被覆壁32と間隔を隔てて軸方向上側に窪む。
図8においては、被覆壁32とカバー凸部34との軸方向下側への突出長さが略同じである。
図9においては、被覆壁32とカバー凹部33との間に、段差構造が設けられる。
【0065】
<ロータ>
図1に示すように、ロータ40は、シャフト41と、ロータコア42と、を含む。シャフト41は、軸方向に延びる中心軸Aを中心とする略円柱状である。このシャフト41に、ロータコア42は固定される。ロータコア42は、シャフトの径方向外側を囲む。ロータコア42は、シャフト41とともに回転する。
【0066】
<ベアリング>
図1に示すように、ベアリング43,44は、シャフト41を回転可能に支持する。軸方向上側に配置されるベアリング43は、ステータ50の軸方向上側に位置し、ヒートシンク100に保持される。軸方向下側に配置されるベアリング44は、ハウジング10の底部14に保持される。
【0067】
<ステータ>
[ステータの構成]
図1に示すように、ステータ50は、ロータ40の径方向外側を囲む。ステータ50は、ステータコア51と、インシュレータ52と、コイル53と、バスバーBと、バスバー保持部材54と、を含む。
【0068】
ステータコア51は、周方向に複数配置されたコアバックとティース51b(
図10参照)とを有する。コアバックは、中心軸Aと同心の筒状である。ティース51bは、コアバックの内側面から径方向内側に向かって延びる。ティース51bは、複数設けられ、コアバックから径方向に延び、周方向に空隙(スロット)を隔てて配置される。
【0069】
図1に示すとおり、インシュレータ52は、ステータコア51の少なくとも一部を覆う。インシュレータ52は、絶縁体で形成され、各ティース51bに取り付けられる。
【0070】
コイル53は、ステータコア51を励磁し、コイル線Cが巻回されて構成される。具体的には、コイル線Cは、インシュレータ52を介して各ティース51bに巻回され、コイル53は、各ティース51bに配置される。すなわち、コイル線Cは、集中巻である。本実施の形態において、コイル線Cが2つの異なるティース51bに対してそれぞれ集中巻で巻回される、いわゆる二連弧巻である。コイル線Cは、バスバー保持部材54の径方向外側端部よりも径方向内側に位置する。
【0071】
コイル線Cの一端部は、バスバーBに接続される。コイル線Cの他端部は、後述するコイル支持部材60に挿通され、基板70に接続される。本実施の形態のコイル線Cの他端部は、コイル53から引き出された導線であり、具体的には、
図10に示すように、第1及び第2の系統におけるU相、V相及びW相のそれぞれを構成する6本の引出線53U1,53U2,53V1,53V2,53W1,53W2である。このステータ50から引き出された引出線53U1,53U2,53V1,53V2,53W1,53W2は、後述するコイル支持部材60の貫通孔65(
図12参照)及びヒートシンク貫通孔110(
図17参照)内に挿通され、制御部にはんだ付けなどの方法で電気的に接続される。
【0072】
なお、引出線53U1,53U2,53V1,53V2,53W1,53W2は、渡り線53aによって、シャフトを中心とした180度以下の領域に集められる。
【0073】
モータ1の駆動時においては、第1の系統におけるU相、V相及びW相の各層を構成する引出線53U1,53V1,53W1に、それぞれ電流が流され、第2の系統におけるU相、V相及びW相の各相を構成する引出線53U2,53V2,53W2にも、それぞれ電流が流される。この構成により、モータ1の駆動時において、例えばインバータの故障等により一方の系統へのコイルへの通電が停止した場合であっても、他方の系統におけるコイルに通電が可能であるため、モータ1を駆動させることができる。
【0074】
なお、本実施の形態におけるモータ1は、U相、V相及びW相の組を2組有する2系統の構成としたが、この系統数については任意に設計可能である。すなわち、モータ1は、1系統の構成としてもよく、3系統以上としてもよい。
【0075】
バスバーBは、コイル53から導出されたコイル線を互いに電気的に接続させる導電材料で形成された部材である。本実施の形態におけるバスバーBは、スター結線における中性点用バスバーである。
【0076】
[バスバー保持部材]
図11に示すバスバー保持部材54は、バスバーBを保持する。バスバー保持部材54は、絶縁材料で形成される。バスバー保持部材54は、
図1に示すように、インシュレータ52の径方向外側またはコアバックの軸方向上側に固定される。バスバー保持部材54と、ベアリング43とは、径方向に重なる。
【0077】
図11に示すように、バスバー保持部材54は、リング状の基部55と、バスバーBを保持する保持部56と、バスバー凸部57と、を有する。バスバー凸部57と保持部56は、基部55の一部から軸方向上側に延び、周方向において異なる位置に設けられる。
【0078】
ステータ50は、軸方向に延びる凸部または凹部であるステータ嵌合部を有する。本実施の形態では、ステータ嵌合部は、バスバー保持部材に形成され、軸方向に延びるバスバー凸部57である。なお、ステータ嵌合部は、バスバー保持部材54に形成され、軸方向下側に窪む凹部(図示せず)であってもよい。また、ステータ嵌合部は、ステータコア51、インシュレータ52などの上端に形成される凸部または凹部であってもよい。
【0079】
<コイル支持部材>
図1に示すように、コイル支持部材60は、コイル線Cなどの導電部材を支持する。コイル支持部材60は、絶縁材料で形成される。コイル支持部材60は、ステータ50の軸方向上側に配置され、コイル線Cが挿通される。
【0080】
[コイル支持部材の構成]
図12に示すように、コイル支持部材60は、基部61と、基部61から軸方向上側に延びるコイル支持部62と、を含む。
【0081】
基部61は、ステータ50の上面に配置される。本実施の形態では、ステータ嵌合部がバスバー保持部材54に形成される。したがって、
図13及び
図14に示すように、基部61は、バスバー保持部材54の上面に位置する。なお、ステータ嵌合部がステータコア51に形成される場合には、基部61は、ステータコア51の上面に位置し、ステータ嵌合部がインシュレータ52に形成される場合には、基部61はインシュレータ52の上面に位置する。
【0082】
図12及び
図13に示すように、基部61の軸方向下側部で、かつ周方向両端部には、切り込み63が形成される。切り込み63は、周方向両端部において、下面から軸方向上側に向けて切り欠かれている。
【0083】
基部61は、上端に形成され、径方向に延びる溝部64を有する。この溝部64は、ハウジング10の上端面よりも軸方向上側に位置する。
【0084】
基部61の径方向外側の面は、複数の面で形成される。本実施の形態において、基部61の径方向外側の面は、5つである。なお、基部61の径方向外側の面は、曲面などの形状であってもよい。
【0085】
コイル支持部62は、コイル線を挿通する貫通孔65を有する。本実施の形態のコイル線は、第1及び第2の系統におけるU相、V相及びW相のそれぞれを構成する6本の引出線53U1,53U2,53V1,53V2,53W1,53W2である。1つの貫通孔65で1本の引出線を保持するので、貫通孔65を有するコイル支持部62は、基部61上に6つ設けられる。本実施の形態において、同じ相のコイル線を挿通するコイル支持部62は、間隙を介さずに隣接して突起部62aを形成する。すなわち、突起部62aは、同じ相のコイル線を挿通する貫通孔65を形成する部分と、後述するリブ66と、を有する。突起部62aはU相、V相、W相に対してそれぞれ存在し、各突起部62aは間隔を隔てて並設される。
【0086】
コイル支持部62の少なくとも一部は、後述するヒートシンク貫通孔110内に位置する。
図12に示すコイル支持部62の幅は、軸方向上側から下側に向けてヒートシンク貫通孔110の幅と同等または漸次大きくなる。コイル支持部62の上側の幅は、下側の幅よりも小さい。コイル支持部62は、上側に向けて先細りの形状を有する。
【0087】
コイル支持部62は、軸方向と交差する方向に延びるリブ66を有する。本実施の形態において、突起部62aは、突起部62aの周方向両側に延びるリブと、各貫通孔65からそれぞれ径方向両側に延びるリブと、を有する。このため、各突起部62aは、6本のリブ66を有する。リブ66の幅は、軸方向下側から上側に向けてヒートシンク貫通孔110の幅と同等または漸次小さくなり、上端の幅が下端の幅よりも小さい。このため、本実施の形態のリブ66を有するコイル支持部62の形状は、軸方向上側に向けて先細りである。また、突起部62aも、軸方向上側に向けて先細りの形状である。
【0088】
[ステータとコイル支持部材の嵌合]
図14に示すように、基部61は、ステータ50に対して、間隙を介して嵌る。基部61とステータ50とは、一部が接していてもよいが、軸方向に対して垂直な方向(径方向、周方向を含む)に間隙を介して配置されることが好ましい。後者の場合、モータ1の組立の際に、コイル支持部材60全体がステータ50に対して移動可能である。本実施の形態において、基部61とステータ50とは、周方向に間隙を介して配置される。
【0089】
基部61は、軸方向に延びる凹部または凸部であるコイル支持部材嵌合部67を有する。ステータ嵌合部及びコイル支持部材嵌合部67は、互いの凹部及び凸部により、間隙を介して嵌る。
【0090】
ステータ嵌合部またはコイル支持部材嵌合部67の凹部の径方向の幅は、コイル支持部材嵌合部67またはステータ嵌合部の凸部の径方向の幅よりも大きい。ステータ嵌合部またはコイル支持部材嵌合部67の凹部の周方向の幅は、コイル支持部材嵌合部67またはステータ嵌合部の凸部の周方向の幅よりも大きい。また、ステータ嵌合部は凸部であり、コイル支持部材嵌合部67は凹部であり、周方向に間隙介して嵌合することが好ましい。換言すると、ステータ50は、軸方向に延びる凸部を有し、基部61は、軸方向に延びる凹部を有し、ステータ50の凸部と基部61の凹部とは、周方向に間隙を介して嵌り、基部61の凹部の周方向の幅は、ステータ50の凸部の周方向の幅よりも大きい。
【0091】
なお、本実施の形態では、コイル支持部材嵌合部67は、基部61に形成された凹部であり、ステータ嵌合部は、バスバー保持部材54に形成されたバスバー凸部57である。
【0092】
このように、ステータ50とコイル支持部材60とが凹凸形状により嵌合されることにより、コイル支持部材60は所定の位置に位置決めされる。また、間隙を介して嵌合されることにより、間隙の幅分だけコイル支持部材60を位置調整することができる。これにより、コイル支持部材60を位置調整しながらヒートシンク100を挿入することができるため、組立て性が容易となる。また、上述した機能を満たすように凹凸の関係を逆としてもよい。
【0093】
なお、バスバーとコイル引出線とを溶接によって固定する必要があるため、バスバー保持部材54はステータ50の一部として固定される必要がある。一方で、コイル支持部材60は、コイル引出線の位置決めが行えれば、移動してもよい。
【0094】
コイル支持部材嵌合部67は、基部61において隣り合うコイル支持部62の間に位置する。言い換えると、コイル支持部材嵌合部67は、基部61において隣り合う突起部62aの間に位置する。また、コイル支持部材嵌合部67は、基部61の軸方向下側の面に位置し、周方向(並設方向)に沿って延びる。
【0095】
<制御部>
制御部は、ロータ40とステータ50とを有するモータ本体部を制御し、
図1に示すように、基板70と、この基板70に実装される電子部品80と、を含む。基板70は、ステータ50の軸方向上側であって、径方向に広がるように配置され、ヒートシンク100の軸方向上側に固定される。電子部品80は、基板70の上面及び下面の少なくとも一方に実装される。
【0096】
図15に示すように、基板70は、パワー素子が実装される第1領域S1と、制御素子が実装される第2領域S2と、を有する。第1領域S1は、軸方向上側から見た際に、シャフト41の中心軸Aを中心として180度以上の領域である。
【0097】
ここで、パワー素子と制御素子とが、基板70上において周方向に分かれて配置している際に、第1領域S1と第2領域S2とを定義することができる。したがって、パワー素子と制御素子とが基板70上に不規則に点在している場合や、パワー素子と制御素子とが同一周方向かつ径方向に分かれて配置されている場合は、この限りではない。
【0098】
また、第1領域S1及び第2領域S2は、シャフト41(中心軸A)を中心とした角度で定義される領域である。例えば、第1領域S1内において、パワー素子が基板70の径方向内側に偏っている場合であっても、基板70の径方向外側は第1領域S1とみなす。
【0099】
ここで、パワー素子とは、コイル線から外部電源へと繋ぐ回路上の素子であり、制御素子とは、磁気センサで検出した信号線を外部制御装置へと繋ぐ回路上の素子である。パワー素子としては、チョークコイル、FET、コンデンサなどが挙げられる。制御素子としては、マイコンなどが挙げられる。
【0100】
[基板の構成]
図15に示すように、基板70は、導電部材を通すための基板貫通孔71,72を有する。導電部材は、基板70に接続されて配電する部材であり、例えば、コネクタピン81(
図1参照)、ステータ50に巻回されたコイル線Cなどである。本実施の形態では、基板貫通孔71には、コイル線が挿通され、基板貫通孔72にはコネクタピン81が挿通される。なお、コイル線Cと基板70、及び、コネクタピン81と基板70とは、はんだ接続によって固定される。
【0101】
具体的には、
図16に示すように、基板70は、プリント基板73と、このプリント基板73に形成された基板貫通孔71を取り囲むランド74とを含む。ランド74は、プリント基板73の上面、下面、及び基板貫通孔71の内側面に位置する。
【0102】
図15に示すように、基板70には、ヒートシンク100との位置決めのために、ヒートシンク100の第2位置決め凹部176(
図17参照)に対応する位置決め孔部76が形成される。位置決め孔部76は、丸孔、切欠き孔などである。
【0103】
また、基板70には、ヒートシンク100との固定のために、ヒートシンク本体部103の固定孔部177(
図17参照)に対応する固定孔部77が形成される。固定孔部77は、丸孔、切欠き孔などである。
【0104】
[ヒートシンク及びコネクタとの関係]
第1位置決め孔178は、ヒートシンク上面101とヒートシンク下面102とを貫通している。ヒートシンク上面101を加工する際に、第1位置決め孔178を基準として、第2位置決め凹部176が形成される。また、ヒートシンク下面102を加工する際も同様に、第1位置決め孔178を基準として第1位置決め凹部179が形成される。これにより、第1位置決め凹部179と、第2位置決め凹部176とは、第1位置決め孔178を基準に位置が決定される。
【0105】
したがって、第1位置決め凹部179によって位置が決められたコネクタ200と、第2位置決め凹部176によって位置が決められた基板70とは、位置が決定される。これにより、ヒートシンク100とコネクタ200との間に位置ずれを起こさず、容易にコネクタピン81を接続させることができる。
【0106】
[導電部材との接続]
基板70または電子部品80と、導電部材(
図16では基板70及びコイル線C)とは、接続部材75によって接続される。接続部材75は、導電性接着剤、はんだなどであり、本実施の形態でははんだを用いる。はんだは、基板70の上面及び下面と、導電部材を通すための基板貫通孔71の内部とに連なるように配置される。はんだの全ては、後述するヒートシンク100の露出面122(
図1参照)よりも軸方向上側に位置する。
【0107】
<ヒートシンク>
図1に示すように、ヒートシンク100は、ステータ50の軸方向上側に配置され、基板70と軸方向に対向する。
【0108】
ヒートシンク100は、基板70に実装された電子部品80からの熱を吸収し、外部に放出する機能を有し、熱抵抗の少ない材料で形成される。
【0109】
ヒートシンク100は、ベアリング43を保持するので、ベアリングホルダとしても用いられる。本実施の形態では、ベアリングホルダとヒートシンクとは一体であるため、部品点数、組立点数、及びこれらに伴うコストを削減できる。また、ベアリングホルダとヒートシンクとを別体にした際に生じる熱抵抗を抑えることができるため、熱を外部へと伝えやすくすることができる。
【0110】
ヒートシンク100は、
図17に示すヒートシンク上面101と、
図18に示すヒートシンク下面102とを有する。ヒートシンク上面101は基板70に対向し、ヒートシンク下面102はステータ50に対向する。
【0111】
[ヒートシンク本体部及びヒートシンク突出部]
図17及び
図18に示すように、ヒートシンク100は、ヒートシンク本体部103と、このヒートシンク本体部103と連なり、かつハウジング10よりも径方向外側に延びるヒートシンク突出部104とを有する。
【0112】
ヒートシンク本体部103は、軸方向上側から見た際に、ロータ40及びステータ50を収容するハウジング10と重なり合う。ヒートシンク突出部104は、このヒートシンク本体部103から径方向に突出し、コネクタ200の長手方向(
図17及び
図18における左右方向)の少なくとも一部を覆う。
【0113】
図17及び
図18に示すヒートシンク突出部104は、間隔を隔てて複数形成されている。詳細には、ヒートシンク突出部104は、ヒートシンク本体部103におけるコネクタ200側の径方向外端縁(
図19(A)ではヒートシンク本体部103の右端)の一端及び他端(
図19(A)では上端及び下端)から突出する。
【0114】
ここで、ヒートシンク突出部104の形状は、
図19(A)に示すように平面視において棒状に突出した形状であり、両端のみに設置される場合にはヒートシンク本体部103とで略U字形状をなす。また、ヒートシンク突出部104の形状は、
図19(B)に示すように板状に突出した形状や、
図19(C)に示すようにリング形状などであってもよい。なお、ヒートシンク突出部104が平面視において棒状に突出した形状である場合には、ヒートシンク突出部104は1つであってもよく、3つ以上であってもよく、また両端に設けられていなくてもよい。
【0115】
ヒートシンク突出部104は、後述するコネクタ200と嵌合するために、軸方向に延びるヒートシンク凹部またはヒートシンク凸部を有する。また、ヒートシンク凹部またはヒートシンク凸部は、軸方向に沿って延びる。
図17及び
図18では、コネクタ200の長手方向の一端及び他端に位置するヒートシンク突出部104の内側面に、ヒートシンク凹部105が形成される。ヒートシンク突出部104の内側面は、コネクタ200と対向する面である。
【0116】
本実施の形態において、ヒートシンク突出部104は露出面122(
図1参照)である。つまり、ヒートシンク突出部104と基板70との間には隙間が設けられる。したがって、カバー30を装着する前工程において、コネクタ200の長手方向からコネクタピン81が基板70に接続されているかを目視することができる。
【0117】
[空洞部]
ヒートシンク100には、導電部材を通すとともに軸方向に延びる空洞部Hが形成される。空洞部Hは、貫通孔、切り欠き等である。
【0118】
導電部材がコネクタピン81などである場合、
図17、
図18及びこれらを模式的に示す
図19(A)に示す構造において導電部材を通すための空洞部Hは、ヒートシンク本体部103と、2つのヒートシンク突出部104とで形成される。詳細には、空洞部Hは、ヒートシンク本体部103のコネクタ側の径方向外端縁と、2つのヒートシンク突出部104とで形成される。
【0119】
変形例の
図19(B)に示すヒートシンク突出部104の径方向外端部に切り欠きがある構造では、切り欠きが空洞部Hをなす。別の変形例の
図19(C)に示すヒートシンク突出部104がリング形状である構造では、リング形状をなす中空穴が空洞部Hをなす。
【0120】
また、導電部材がステータ50からのコイル線である場合、
図17及び
図18に示すように、空洞部Hとして、コイル線を通すとともに軸方向に延びるヒートシンク貫通孔110が形成される。
【0121】
このように、
図17及び
図18に示すヒートシンク100の空洞部Hは、ヒートシンク本体部103の径方向外端面と2つのヒートシンク突出部104の内端面とで形成されたコネクタからの導電部材のための空洞、及びコイル線のためのヒートシンク貫通孔110である。
【0122】
[ヒートシンク貫通孔]
図17、
図18及び
図20に示すように、ヒートシンク貫通孔110は、コイル線などの導電部材を通すとともに軸方向に延びる。このため、ヒートシンク貫通孔110は、導電部材の位置決めができる。本実施の形態のヒートシンク貫通孔110は、
図1及び
図20に示すように、コイル線を支持するコイル支持部材60を保持する。
【0123】
ヒートシンク貫通孔110は、周方向に隣り合うように複数位置する。具体的には、複数のヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wは、周方向に間隔を隔てて設けられる。つまり、複数のヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wは、互いに間隔を隔てて同心円弧上に整列される。
【0124】
図17に示すように、複数のヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wは、軸方向上側から見た際に、シャフト41(中心軸A)を中心とした中心角αが180度以内の領域に位置する。つまり、ヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wは片側に集めて配置される。スロット数が6以上であり、相数が3であって、中心角αは、「(360度/スロット数)×3」度以下であることが好ましい。
【0125】
なお、上記式の「相」とは、固定ステータの独立したコイルの数であり、相数が3の3相モータとは120度間隔で独立したコイルが3個あるモータであり、本実施の形態ではU相、V相及びW相の3相モータである。また上記式の「スロット」とは、ティース間の溝の数を表し、3相モータでは3の倍数となる。本実施の形態では、3相の12スロットであるので、中心角αは90度以下であることが好ましい。
【0126】
また、ヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wと同様にコイル引出線53U1,53U2,53V1,53V2,53W1,53W2も中心角α内に位置するように配置することが望ましい。渡り線53aを用いることにより、コイル引出線を中心角α内に位置させることができる。
【0127】
図20に示すように、複数のヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wのそれぞれには、コイル線のうち同相の複数のコイル線のみが挿通される。すなわち、ヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wのそれぞれには、コイル支持部材60の1つの突起部62aが保持される。複数のヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wは、コイル線の相毎に互いに分離した孔である。つまり、複数のヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wは、互いに独立しており、つながっていない。詳細には、ヒートシンク貫通孔110Uには、2本のU相コイルである引出線53U1,53U2のみが挿通される。ヒートシンク貫通孔110Vには、2本のV相コイルである引出線53V1,53V2のみが挿通される。ヒートシンク貫通孔110Wには、2本のW相コイルである引出線53W1,53W2のみが挿通される。
【0128】
軸方向上側から見た際に、ヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wは、基板70においてパワー素子が実装された第1領域S1内に対向する。このため、基板70のパワー素子が実装される第1領域S1に、コイル線を通すヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wが形成される。
【0129】
なお、軸方向上側から見た際に、ヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wは、パワー素子が実装される第1領域S1と制御素子が実装される第2領域S2にまたがっている構造であってもよい。また、軸方向上側から見た際に、ヒートシンク貫通孔の一部が第1領域S1で、残部が第2領域S2である構造などであってもよい。
【0130】
[ヒートシンクとコイル支持部材との嵌合]
図1に示すように、ヒートシンク貫通孔110に、コイル支持部62の少なくとも一部が位置する。コイル支持部62とヒートシンク貫通孔110との隙間は、
図1、
図21及び
図22に示すように、下側に向かうにつれ小さくなるまたは同じである。
【0131】
具体的には、
図21に示すように、コイル支持部62の上端の幅は、ヒートシンク貫通孔110の下端の幅よりも小さく、コイル支持部62の幅は、軸方向上側から下側に向けて漸次同等または大きくなる。より具体的には、ヒートシンク貫通孔110が一定の幅であり、コイル支持部62の側面が下側に向けて広がるテーパ状である。
【0132】
また、
図22に示すように、ヒートシンク貫通孔110の下端の幅は、コイル支持部62の上端の幅よりも大きく、ヒートシンク貫通孔110の幅は、軸方向下側から上側に向けて漸次同等または小さくなる。より具体的には、ヒートシンク貫通孔110が下側に向けて広がるテーパ状であり、コイル支持部62の側面が一定の幅である。
【0133】
また、
図21及び
図22においては、ヒートシンク貫通孔110の上端の幅がコイル支持部62の幅よりも大きいが、ヒートシンク貫通孔110の上端の幅がコイル支持部62の幅よりも小さくてもよい。
【0134】
このように、コイル支持部62とヒートシンク貫通孔110との隙間が下側から上側に向かうにつれ同じまたは大きくなるので、モータ1の組立ての際に、ヒートシンク貫通孔110をコイル支持部材60の上側から容易に挿入できる。
【0135】
また、コイル支持部材60の溝部64(
図12参照)により、ヒートシンク100をコイル支持部材60の上側から挿入する際に、容易に位置決めできる。その理由は、以下の通りである。
図23に示すように、基部61上端面の溝部64近傍に径方向にピンPを差し込んだ状態で、矢印Mのように軸方向上側からコイル支持部材60にヒートシンク100を挿入すると、ヒートシンク100がピンPを押圧するので、ピンPは溝部64に移動する。ピンPの押圧に応じて、コイル支持部材60が矢印Nにしたがって移動するので、ヒートシンク100とコイル支持部材60との位置決めができる。コイル支持部62がヒートシンク貫通孔110に挿入されて、位置が決定される。ハウジング10の上端面よりも溝部64が軸方向上側に位置するので、差し込んだピンPを容易に抜き取ることができる。
【0136】
[露出面及び接触面]
図1に示すように、ヒートシンク100は、接触面121と、露出面122とを有する。接触面121及び露出面122は、
図17に示すヒートシンク100の上面に位置する面である。
【0137】
接触面121は、基板70または電子部品80と、直接または放熱部材123を介して接する。放熱部材123は、グリスなどの放熱性を有する部材である。放熱部材123は、ヒートシンク100及び基板70と接触する。露出面122は、基板70、電子部品80及び放熱部材と接触せずに露出する。言い換えると、露出面122は、基板70または電子部品80と隙間を介して配置される。すなわち、接触面121は、直接的または間接的に、基板70または電子部品80と接触し、露出面122は直接的及び間接的に、接触する部材がない。
【0138】
図17に示すように、露出面122は、空洞部H(
図17では、ヒートシンク貫通孔110)より外縁側に位置する。本実施の形態では、ヒートシンク貫通孔110が周方向に沿って複数設けられるので、露出面122はヒートシンク貫通孔110よりも径方向外側に位置する。接触面121と露出面122との境界は、周方向に位置する。
図17では、接触面121と露出面122との境界は、一端に位置するヒートシンク貫通孔110Uと、他端に位置するヒートシンク貫通孔110Wと、中心軸Aとを結んだ中心角αの円弧上に位置する。
【0139】
露出面122により、基板70及び電子部品80と、ヒートシンク100との間に隙間が形成されるので、基板70または電子部品80と、導電部材との接続を目視で確認することができる。なお、基板70の上面から接続を確認する場合、基板貫通孔71の内部、基板70の下面まで接続部材による接続が不明であるので、基板70の下面側から確認することが好ましい。
【0140】
図1に示すヒートシンク100においては、露出面122は、接触面121よりも軸方向下側に位置する。
図24は、露出面122及び接触面121の境界近傍と、基板70との関係を模式的に示したものである。
図24(A)のように、基板70が平坦に延びる板状であって、露出面122が接触面121よりも下側に位置してもよい。また、
図24(B)のように、基板70が段差構造を有し、露出面122と接触面121とが同一平面上に位置してもよい。
【0141】
接触面121は、基板70または電子部品80と直接接する第1接触面と、基板70または電子部品80と放熱部材123を介して接する第2接触面と、を有してもよい。
【0142】
電子部品80または基板70と、導電部材とを接続する接続部材の下端部(バックフィレット)の形状を確認するために、基板70または電子部品80と、第2接触面との隙間よりも、基板70または電子部品80と、露出面122との隙間を大きくすることが好ましい。また、第2接触面に塗布されるグリスのため隙間が薄くなり、接続部材が露出面122に回り込んでしまって見えづらくなることを防止する観点から、基板70または電子部品80と、露出面122との隙間を大きくすることが好ましい。また、コイル支持部材60が上方向にずれると接続部材の下端部が見えづらくなるため、隙間を十分に空けることが好ましい。
【0143】
このような隙間の大きさとして、例えば、
図16に示すように、ヒートシンク100の露出面122と基板70(または電子部品)の下面との寸法L1は、基板貫通孔71からランド74の外端までの寸法L2よりも大きい。
【0144】
また、ランド74の外端と、コイル線Cと露出面122の交差位置とを結ぶ仮想線Tと、露出面122とのなす角度θは、45度以上であることが好ましい。
【0145】
図1に示すように、導電部材を支持する部材(本実施の形態ではコイル支持部材60)の先端が、露出面と軸方向の高さが同じまたは下側に位置する場合には、接続部材の下端部をより容易に確認することができる。一方、導電部材を支持する部材の先端が、露出面122と軸方向の高さが同じまたは上側に位置する場合には、基板70または電子部品80と導電部材とを接続する接続部材がヒートシンク100に導通することをより防止できる。
【0146】
[内側領域及び外側領域]
図1に示すように、ヒートシンク100は、内側領域130と、この内側領域130よりも径方向外側に位置する外側領域140と、この外側領域140の径方向外側に形成された外側壁部150と、を含む。
【0147】
内側領域130は、電子部品80と少なくとも一部が軸方向において重なる。内側領域130の軸方向の厚みは、外側領域140の軸方向の厚みよりも大きい。
【0148】
本実施の形態において、ヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wが基板70の径方向外側の領域に位置しているため、基板70の径方向内側の領域には電子部品が密集する。そのため、ヒートシンク100の内側領域130の軸方向の厚みを大きくすることにより、電子部品の熱をヒートシンク100に逃がすことができる。さらに、外側領域140の厚みを薄くすることにより、部品を収容するスペースを確保することができる。よって、電子部品の放熱をより効果的に行うとともに、軸方向の体格を抑えることができる。
【0149】
内側領域130は、
図18に示すように、内側壁部131と、リブ132と、を有する。内側壁部131及びリブ132は、ヒートシンク下面102に形成される。内側壁部131は、径方向内側端部において軸方向下側に延びる。リブ132は、内側壁部131から径方向外側に延びる。リブ132は複数設けられ、複数のリブ132のそれぞれは、周方向に等間隔に配置される。複数のリブ132は、中心軸Aを中心として、径方向に放射状に延びる。内側壁部131及びリブ132によってヒートシンク100の内側領域130の剛性を高めることができるので、ヒートシンク100がベアリング43を保持する場合には、シャフト41を支持するための応力などに対する耐久性を向上できる。また、リブ132を径方向に延ばすことにより、ヒートシンク100の熱容量を増加できるとともに、熱を径方向外側に伝えやすくなる。
【0150】
外側領域140は、上述したコイル線Cが挿通されるヒートシンク貫通孔110U,110V,110Wを有する。外側領域140の下面は、内側領域130の下面よりも軸方向上側に位置する。
【0151】
図1に示すように、バスバー保持部材54は、軸方向において外側領域140の下側に位置するとともに、径方向において内側領域130と重なる。換言すると、ヒートシンク100の径方向外側かつ下面において、軸方向上側に凹む凹部が設けられ、この凹部にバスバーBが収容される。
【0152】
本実施の形態では、基板70の中心部(径方向内側)に発熱素子(FETなどの比較的発熱量が大きい素子)が多く配置される。このため、基板70と対向するヒートシンク100の中心部に位置する内側領域130の厚みを大きくすることにより、放熱効果を高める。
【0153】
一方、基板70の外側(径方向外側)には、ステータ50のコイル53から引き出されたコイル線Cが接続され、発熱素子は配置されない。この外側領域140の厚みを小さくして、バスバー保持部材54を配置することにより、軸方向の高さを抑えることができる。さらに、バスバーの上面及び側面をヒートシンク100が覆うことにより、駆動時において、バスバーの輻射熱をヒートシンク100で吸収できる。
【0154】
外側壁部150は、バスバー保持部材54の径方向外側を囲む。外側壁部150の軸方向の厚みは、内側領域130の軸方向の厚みよりも大きい。外側壁部150の少なくとも一部は、外部に露出する。外側壁部150は、ヒートシンク100において軸方向の厚みが最も大きい箇所を含むので、より放熱効果を高めることができる。
【0155】
[基板との位置決め及び固定]
図17に示すように、ヒートシンク本体部103のヒートシンク上面101には、基板70との位置決めのために、第2位置決め凹部176が形成される。第2位置決め凹部176は、複数形成され、円形凹部である。ヒートシンク100の第2位置決め凹部176と基板70の位置決め孔部76(
図15参照)とに、位置決めピンなどの位置決め部材を差し込んで、位置決めをする。
【0156】
ヒートシンク本体部103には、基板70との固定のために、固定孔部177が形成される。この固定孔部177は、基板70と軸方向に当接する基板当接部である。固定孔部177は、複数形成され、円形孔部である。ヒートシンク100の固定孔部177と基板の固定孔部77(
図15参照)とに、固定ピンやねじなどの固定部材を差し込んで、基板70とヒートシンク100とを固定する。
【0157】
上述の通り、ヒートシンク100と基板70とは、位置決め部材を用いて位置が決められ、固定部材によって固定される。基板70とヒートシンク100とが固定された後に、位置決め部材は取り除かれる。
【0158】
なお、ヒートシンク100と基板70とは当接されるため、固定孔部177は、露出面122に対して軸方向上側に突出する。つまり、本実施の形態において固定孔部177は第1接触面に位置する。
【0159】
図17に示すように複数のヒートシンク貫通孔110と固定孔部177とは、周方向に間隔を隔てて設けられる。2つの固定孔部177は、複数のヒートシンク貫通孔110のうち周方向両端に位置するヒートシンク貫通孔110U,110Wと、周方向に間隔を隔てて設けられる。
【0160】
[コネクタとの位置決めのための構成]
図18に示すように、ヒートシンク突出部104には、コネクタ200との位置決めのために、第1位置決め孔178と、第1位置決め凹部179または第1位置決め凸部(図示せず)が形成される。第1位置決め凹部は、切欠き凹部である。
【0161】
<コネクタ>
図1に示すように、コネクタ200は、ハウジング10と隣り合うように配置され、基板70とモータ1外部とを電気的に接続する。本実施の形態のコネクタ200は、ハウジング10の径方向外側に配置され、軸方向下側に向かって延び(下向きであり)、基板70から軸方向下側に延びる導電部材であるコネクタピン81を内部に収容する。
【0162】
コネクタ200の上面は、ヒートシンク100のヒートシンク上面101よりも下方に位置し、軸方向上側から見た際に、コネクタ200と基板70とは、重なり合う。
【0163】
[コネクタの構成]
図25及び
図26に示すように、コネクタ200は、軸方向に延びるコネクタ胴体部210と、このコネクタ胴体部210の外側面から径方向外側に延びるコネクタフランジ部220と、コネクタ胴体部210の上面から軸方向上側に延びるコネクタ突出部230と、を有する。
【0164】
図27に示すように、ヒートシンク本体部103と2つのヒートシンク突出部104とで空洞部Hを形成する場合には、空洞部Hにコネクタ胴体部210の少なくとも一部が位置する。
【0165】
コネクタ胴体部210は、外側面に形成されるとともに、軸方向に延びる胴体凸部211または胴体凹部(図示せず)を有する。胴体凸部211は、コネクタフランジ部220からコネクタ突出部230まで軸方向に延びる。
【0166】
図6、
図26などに示すように、コネクタ胴体部210は、径方向外端領域に形成され、軸方向に延びるコネクタ凸部215をさらに有する。コネクタ凸部215は、径方向外側のコネクタ外端縁216を含む外縁部である。なお、「コネクタ外端縁216」とは、外端(コネクタ200の端)である。
【0167】
コネクタ胴体部210は、コネクタ凸部215の径方向内側において、コネクタ凸部215の径方向内側の面とで形成されるポケット凹部217をさらに有する。ポケット凹部217は、外部から侵入する埃を貯める。
【0168】
コネクタフランジ部220は、コネクタ胴体部210の軸方向の中央部に形成される。なお、中央部とは、中心から所定範囲(例えば軸方向高さの中心から1/3以内)である。これにより、コネクタ200に外力を受けたとしても耐久性を上げることができる。
【0169】
図25及び
図26に示すように、コネクタフランジ部220の上面には、ヒートシンク100との位置決めするための嵌合部221が形成される。嵌合部221は、第1位置決め孔178と、第1位置決め凹部179または第1位置決め凸部(図示せず)とのそれぞれに嵌合する。本実施の形態の嵌合部221は、上側に延びる突起部である。
【0170】
コネクタ突出部230は、コネクタ胴体部210の上面から上側に延びる。コネクタ突出部230は、コネクタ胴体部210と一体成形されてもよく、別部材であってもよい。
【0171】
[カバーとコネクタとの嵌合]
図6に示すように、コネクタ凸部215と、カバー凹部33とは、間隙を介して嵌る。コネクタ200は、平面視において略長方形である。コネクタ凸部215と、カバー凹部33とは、コネクタ200の長手方向に沿って延びる。
【0172】
また、
図1に示すように、コネクタ突出部230と、カバー段差部35とは、間隙を介して嵌る。コネクタ突出部230の径方向外側の角部とカバー段差部35の段差部分とが対向して嵌る。
【0173】
なお、本実施の形態におけるカバー30とコネクタ200との外端領域Rの嵌合は、
図6に示す構造を例に挙げて説明したが、
図7〜
図9のような構造であってもよい。
【0174】
図7に示す構造では、コネクタ凸部215は、コネクタ外端縁216で構成されず、コネクタ外端縁216から径方向に間隔を隔てた位置から軸方向上側に延びる。このコネクタ凸部215とカバー凹部33との間隙を介した嵌合は、カバー外端縁31及びコネクタ外端縁216を含まない外端領域Rに位置する。
【0175】
図8に示す構造では、コネクタ200は、ポケット凹部217の径方向内側面の上端から径方向内側に延びる段差部218をさらに有する。コネクタ凸部215とカバー凹部33とが間隙を介して嵌合するとともに、ポケット凹部217及び段差部218を包含する凹部219と、カバー凸部34とが間隙を介して嵌合する。
【0176】
図9に示す構造では、コネクタ200は、コネクタ凸部215の径方向外側において、コネクタ凸部215の径方向外側の面とで形成されるポケット凹部217を有する。カバー凹部33の一部は、ポケット凹部217と対向し、カバー凹部33の残部は、コネクタ凸部215と間隙を介して嵌合する。コネクタ凸部215とカバー凹部33との間隙を介した嵌合は、カバー外端縁31及びコネクタ外端縁216を含まない外端領域Rに位置する。
【0177】
このように、本実施の形態のモータ1は、カバー30とコネクタ200とを互いの凹凸形状で間隙を介して嵌り合うラビリンス構造を有する。このため、防塵効果を有するとともに、モータを容易に組み立てることができる。
【0178】
[コネクタとヒートシンクとの接触]
図27に示すように、コネクタ200は、ヒートシンク突出部104の下面に接触する。具体的には、コネクタフランジ部220のフランジ上面222と、ヒートシンク突出部104のヒートシンク下面102とが接触するように、コネクタフランジ部220上にヒートシンク突出部104が配置される。
図17に示すように、ヒートシンク突出部104が間隔を隔てて複数形成される場合には、コネクタフランジ部220は、複数のヒートシンク突出部104の下面のそれぞれと接触する。
【0179】
[コネクタとヒートシンクとの嵌合]
胴体凸部211と、ヒートシンク凹部105とは、間隙を介して嵌る。なお、胴体凸部211の代わりに胴体凹部を形成し、ヒートシンク凹部の代わりにヒートシンク凸部を形成し、胴体凹部とヒートシンク凸部とが間隙を介して嵌るように構成されてもよい。このように、コネクタ200とヒートシンク100とが間隙を介して互いの凹凸形状により嵌合されると、組立てが容易である。
【0180】
互いに間隙を介して嵌る胴体凸部または胴体凹部と、ヒートシンク凹部またはヒートシンク凸部とは、軸方向に沿って延びる。
【0181】
[コネクタとヒートシンクとの位置決め]
ヒートシンク100の第1位置決め孔178(
図17及び
図18参照)と、第1位置決め凹部179(
図18参照)または第1位置決め凸部(図示せず)とに、コネクタの嵌合部221を嵌合することによって、ヒートシンク100とコネクタ200とを位置決めする。本実施の形態では、コネクタフランジ部220の上面に設けた嵌合部221としての突起部と、ヒートシンク突出部104の第1位置決め孔178としての丸孔及び第1位置決め凹部179としての切り欠き凹部とが嵌合する。
【0182】
なお、ヒートシンク100とコネクタ200との位置決めは、互いに嵌合すればよく、形状は限定されない。
【0183】
<変形例>
[カバーを基準とした固定]
上述したように、本実施の形態では、カバー30とコネクタ200とが、ヒートシンク100に固定される構造を例に挙げて説明したが、本発明のモータは、ヒートシンクとコネクタとが、カバーに固定される構造であってもよい。後者の場合、ヒートシンクとコネクタとが間隙を介して嵌る構造を採用することで容易に組み立てる構造を実現できる。
【0184】
[ヒートシンクの機能]
本実施の形態では、コネクタ200と接触するホルダ突出部を有するホルダは、ヒートシンク100である。具体的には、コネクタ200と接触するホルダは、ベアリングを保持するベアリングホルダ、制御部の発熱素子から生じる熱を外部に逃がすためのヒートシンク、コイル線及びコイル保持部材を保持するホルダなどを兼ねている。しかし、本発明のホルダは、ヒートシンク100と別体であってもよい。
【0185】
また、本実施の形態では、ヒートシンク100がベアリング43を保持するホルダを兼ねる構成を例に挙げて説明したが、本発明のヒートシンクは、ベアリングホルダと別体であってもよい。
【0186】
また、本実施の形態では、ヒートシンク100がヒートシンク貫通孔110に挿通されるコイル線C及びコイル支持部材60を保持するホルダを兼ねる構成を例に挙げて説明したが、本発明のコイル線及びコイル支持部材を保持するホルダは、ヒートシンクと別体であってもよい。
【0187】
(実施の形態2)
図28を参照して、実施の形態1のモータ1を備える装置の一実施の形態について説明する。実施の形態2においては、モータ1を電動パワーステアリング装置に搭載した例について説明する。
【0188】
電動パワーステアリング装置2は、自動車の車輪の操舵機構に搭載される。本実施の形態の電動パワーステアリング装置2は、モータ1の動力により操舵力を直接的に軽減するコラム式のパワーステアリング装置である。電動パワーステアリング装置2は、モータ1と、操舵軸914と、車軸913と、を備える。
【0189】
操舵軸914は、ステアリング911からの入力を、車輪912を有する車軸913に伝える。モータ1の動力は、ボールねじを介して、車軸913に伝えられる。コラム式の電動パワーステアリング装置2に採用されるモータ1は、エンジンルーム(図示せず)の内部に設けられる。コラム式のパワーステアリング装置の場合、エンジンルーム自体に防水構造を設けることができるため、モータ自体に防水構造を設ける必要がない。一方で、エンジンルーム内に埃が侵入することがあるが、モータ1は防塵構造を有しているので、モータ本体への埃の侵入を抑制できる。
【0190】
実施の形態2の電動パワーステアリング装置2は、実施の形態1のモータ1を備える。このため、実施の形態1と同様の効果を奏する電動パワーステアリング装置2が得られる。
【0191】
なお、ここでは、実施の形態1のモータ1の使用方法の一例として電動パワーステアリング装置2を挙げたが、モータ1の使用方法は限定されず、ポンプ、コンプレッサなど広範囲に使用可能である。
【0192】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。