(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中心部の重量に対して、前記被覆部に含まれている前記塩化合物の重量が占める割合W1と、前記中心部の重量に対して、前記被覆部に前記導電性物質として含まれている前記繊維状炭素材料の重量が占める割合W2とは、W1/W2≦200を満たすと共に、
前記接続部の延在方向における前記接続部の断面積S1と、前記接続部の延在方向における前記保護部の断面積S2とは、S2/S1≧0.5を満たす、
請求項12記載の二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池用負極
1−1.構成
1−2.製造方法
1−3.作用および効果
2.二次電池
2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
2−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)
3.二次電池の用途
3−1.電池パック(単電池)
3−2.電池パック(組電池)
3−3.電動車両
3−4.電力貯蔵システム
3−5.電動工具
【0015】
<1.二次電池用負極>
まず、本技術の一実施形態の二次電池用負極に関して説明する。
【0016】
ここで説明する二次電池用負極(以下、単に「負極」と呼称する。)は、例えば、二次電池に用いられる。負極が用いられる二次電池の種類は、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池などである。
【0017】
<1−1.構成>
図1は、負極の断面構成を表している。この負極は、例えば、負極集電体1と、その負極集電体1の上に設けられた負極活物質層2とを含んでいる。
【0018】
なお、負極活物質層2は、負極集電体1の片面だけに設けられていてもよいし、負極集電体1の両面に設けられていてもよい。
図1では、例えば、負極活物質層2が負極集電体1の両面に設けられている場合を示している。
【0019】
[負極集電体]
負極集電体1は、例えば、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)およびステンレスなどであり、合金でもよい。なお、負極集電体1は、単層でもよいし、多層でもよい。
【0020】
負極集電体1の表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体1に対する負極活物質層2の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層2と対向する領域において、負極集電体1の表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を用いて微粒子を形成する方法などである。電解処理では、電解槽中において電解法により負極集電体1の表面に微粒子が形成されるため、その負極集電体1の表面に凹凸が設けられる。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
【0021】
[負極活物質層]
負極活物質層2は、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な2種類の負極活物質(第1負極活物質200および第2負極活物質300)と、負極結着剤とを含んでいる。なお、負極活物質層2は、単層でもよいし、多層でもよい。
【0022】
「電極反応物質」とは、二次電池の充放電反応に関与する物質である。具体的には、リチウムイオン二次電池において用いられる電極反応物質は、リチウムである。
【0023】
図2は、第1負極活物質200および第2負極活物質300のそれぞれの断面構成を模式的に表している。負極活物質層2は、例えば、複数の第1負極活物質200と、複数の第2負極活物質300とを含んでいる。
【0024】
第1負極活物質200は、後述するケイ素系材料を含有する中心部201と、その中心部201の表面に設けられた被覆部202とを含んでいる。第2負極活物質300は、後述する炭素系材料を含有している。
【0025】
負極活物質層2が第1負極活物質200および第2負極活物質300を含んでいるのは、高い理論容量(言い換えれば、電池容量)を確保しながら、充放電時において負極が膨張収縮しにくくなると共に電解液が分解しにくくなるからである。
【0026】
詳細には、第2負極活物質300に含まれている炭素系材料は、充放電時において膨張収縮しにくいと共に電解液を分解させにくいという利点を有している反面、理論容量が低いという懸念点を有している。これに対して、第1負極活物質200のうちの中心部201に含まれているケイ素系材料は、理論容量が高いという利点を有している反面、充放電時において膨張収縮しやすいと共に電解液を分解させやすいという懸念点を有している。よって、ケイ素系材料を含む第1負極活物質200と炭素系材料を含む第2負極活物質300とを併用することにより、高い理論容量が得られると共に、充放電時において負極の膨張収縮が抑制されると共に電解液の分解反応が抑制される。
【0027】
第1負極活物質200と第2負極活物質300との混合比(重量比)は、特に限定されないが、例えば、第1負極活物質200:第2負極活物質300=1:99〜99:1である。第1負極活物質200と第2負極活物質300とが混合されていれば、混合比率に依存せずに、上記した第1負極活物質200と第2負極活物質300とを併用する利点が得られるからである。
【0028】
中でも、ケイ素系材料を含む第1負極活物質200の混合比は、炭素系材料を含む第2負極活物質300の混合比よりも小さいことが好ましい。具体的には、第1負極活物質200と第2負極活物質300との混合比(重量比)は、第1負極活物質200:第2負極活物質300=5:95〜40:60であることが好ましい。負極の膨張収縮を生じさせる主要な原因であるケイ素系材料の割合が相対的に少なくなるため、その負極の膨張収縮を十分に抑制すると共に電解液の分解反応を十分に抑制することができるからである。
【0029】
この負極活物質層2は、例えば、塗布法などのうちのいずれか1種類または2種類以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、粒子(粉末)状の負極活物質と負極結着剤と水性溶媒または非水性溶媒(例えば、有機溶剤)などとを含む分散液(スラリー)を調製したのち、その分散液を負極集電体1に塗布する方法である。
【0030】
なお、負極が用いられた二次電池において、充電途中において意図せずに負極の表面に電極反応物質が析出することを抑制するために、負極活物質の充電可能な容量は、正極の放電容量よりも大きいことが好ましい。言い換えれば、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質の電気化学当量は、正極の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。
【0031】
(第1負極活物質)
第1負極活物質200は、上記したように、中心部201および被覆部202を含んでいる。
【0032】
第1負極活物質200の形状は、特に限定されないが、例えば、繊維状、球状(粒子状)および鱗片状などである。
図2では、例えば、第1負極活物質200の形状が球状である場合を示している。もちろん、2種類以上の形状を有する第1負極活物質200が混在していてもよい。
【0033】
図3は、複合粒子200Cの断面構成を模式的に表している。負極活物質層2が複数の第1負極活物質200を含んでいる場合には、その複数の第1負極活物質200は、
図3に示したように、互いに密着し合うことにより集合体(複合粒子200C)を形成していることが好ましい。この複合粒子200Cは、複数の第1負極活物質200が造粒されることにより形成された構造体である。なお、負極活物質層2に含まれている複合粒子200Cの数は、特に限定されないため、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。
図3では、1個の複合粒子200Cを示している。
【0034】
ここで説明する複合粒子200Cは、単なる複数の第1負極活物質200の凝集体ではない。この複合粒子200Cは、結着剤として機能する被覆部202を介して複数の第1負極活物質200が互いに強固に接続されることにより形成された構造体である。
【0035】
複数の第1負極活物質200が複合粒子200Cを形成していると、その複合粒子200Cの内部において電極反応物質の移動経路(吸蔵放出パス)が確保される。これにより、複合粒子200Cの電気抵抗が低下すると共に、その複合粒子200Cに含まれている各中心部201が電極反応物質を吸蔵および放出しやすくなる。よって、充放電を繰り返しても、二次電池が膨れにくくなると共に、放電容量が低下しにくくなる。
【0036】
なお、1個の複合粒子200Cを形成している第1負極活物質200の数は、特に限定されない。
図3では、例えば、図示内容を簡略化するために、11個の第1負極活物質200により1個の複合粒子200Cが形成されている場合を示している。ただし、負極活物質層2は、複合粒子200Cと共に、その複合粒子200Cの形成に関与していない第1負極活物質200を含んでいてもよい。すなわち、全ての第1負極活物質200が複合粒子200Cを形成していなければならないわけではなく、その複合粒子200Cを形成していない第1負極活物質200が存在していてもよい。
【0037】
この複合粒子200Cは、例えば、第1負極活物質200の形成方法として特定の方法を用いることにより形成されやすくなる。この特定の方法は、例えば、スプレードライ法などである。複合粒子200Cの形成方法の詳細に関しては、後述する。
【0038】
複合粒子200Cの比表面積は、特に限定されないが、例えば、0.1m
2 /g〜10m
2 /gである。負極が用いられた二次電池において、放電容量が確保されると共に、その負極の電気抵抗が低下するからである。詳細には、比表面積が10m
2 /gよりも大きい場合には、その比表面積が大きすぎるため、副反応の発生に起因して放電容量のロスが大きくなる可能性がある。一方、比表面積が0.1m
2 /gよりも小さい場合には、その比表面積が小さすぎるため、反応面積の不足に起因して高負荷時における負極の電気抵抗が大きくなる可能性がある。ここで説明する「比表面積」とは、いわゆるBET比表面積である。
【0039】
(中心部)
中心部201は、ケイ素系材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この「ケイ素系材料」とは、ケイ素を構成元素として含む材料の総称である。
【0040】
中心部201がケイ素系材料を含んでいるのは、そのケイ素系材料が優れた電極反応物質の吸蔵放出能力を有しているため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0041】
ケイ素系材料は、ケイ素の単体でもよいし、ケイ素の合金でもよいし、ケイ素の化合物でもよい。また、ケイ素系材料は、上記した単体、合金および化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に含んでいる材料でもよい。なお、ケイ素系材料は、結晶質でもよいし、非晶質(アモルファス)でもよいし、結晶質部分および非晶質部分の双方を含んでいてもよい。
【0042】
ただし、ここで説明する「単体」とは、あくまで一般的な意味での単体である。すなわち、単体の純度は、必ずしも100%である必要はなく、その単体は、微量の不純物を含んでいてもよい。
【0043】
ケイ素の合金は、2種類以上の金属元素を構成元素として含んでいてもよいし、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを構成元素として含んでいてもよい。また、上記したケイ素の合金は、さらに、1種類以上の非金属元素を構成元素として含んでいてもよい。ケイ素の合金の組織は、例えば、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物およびそれらの2種類以上の共存物などである。
【0044】
ケイ素の合金に構成元素として含まれる金属元素および半金属元素は、例えば、電極反応物質と合金を形成することが可能な金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上である。具体的には、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)などである。
【0045】
ケイ素の合金は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛、インジウム(In)、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0046】
ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、炭素および酸素(O)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0047】
ケイ素の合金およびケイ素の化合物は、例えば、SiB
4 、SiB
6 、Mg
2 Si、Ni
2 Si、TiSi
2 、MoSi
2 、CoSi
2 、NiSi
2 、CaSi
2 、CrSi
2 、Cu
5 Si、FeSi
2 、MnSi
2 、NbSi
2 、TaSi
2 、VSi
2 、WSi
2 、ZnSi
2 、SiC、Si
3 N
4 、Si
2 N
2 O、SiO
v (0<v≦2)、およびLiSiOなどである。なお、SiO
v におけるvは、0.2<v<1.4でもよい。
【0048】
中心部201の形状に関する詳細は、例えば、上記した第1負極活物質200の形状に関する詳細と同様である。すなわち、中心部201の形状は、例えば、繊維状、球状(粒子状)および鱗片状などであり、
図2では、例えば、中心部201の形状が球状である場合を示している。もちろん、2種類以上の形状を有する中心部201が混在していてもよい。
【0049】
中心部201の形状が粒子状である場合、その中心部201の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、約1μm〜10μmである。ここで説明する「平均粒径」とは、いわゆるメジアン径D50(μm)であり、以降においても同様である。
【0050】
(被覆部)
被覆部202は、中心部201の表面のうちの一部または全部に設けられている。すなわち、被覆部202は、中心部201の表面のうちの一部だけを被覆していてもよいし、その中心部201の表面のうちの全部を被覆していてもよい。もちろん、被覆部202が中心部201の表面のうちの一部を被覆している場合には、その中心部201の表面に複数の被覆部202が設けられており、すなわち複数の被覆部202が中心部201の表面を被覆していてもよい。
【0051】
中でも、被覆部202は、中心部201の表面のうちの一部だけに設けられていることが好ましい。この場合には、中心部201の表面のうちの全部が被覆部202により被覆されていないため、その中心部201の表面のうちの一部が露出している。これにより、中心部201のうちの露出部分において電極反応物質の移動経路(吸蔵放出パス)が確保されるため、その中心部201が電極反応物質を吸蔵および放出しやすくなる。よって、充放電を繰り返しても、二次電池が膨れにくくなると共に、放電容量が低下しにくくなる。なお、露出部分の数は、1箇所だけでもよいし、2箇所以上でもよい。
【0052】
この被覆部202は、塩化合物および導電性物質を含んでいる。塩化合物の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。導電性物質の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0053】
(塩化合物)
塩化合物は、ポリアクリル酸塩およびカルボキシメチルセルロース塩のうちの一方または双方を含んでいる。塩化合物の被膜は、SEI(Solid Electrolyte Interphase)膜と同様の機能を果たすからである。これにより、中心部201の表面に被覆部202が設けられていても、その中心部201における電極反応物質の吸蔵および放出が被覆部202により阻害されずに、その中心部201の反応性に起因する電解液の分解反応が被覆部202により抑制される。この場合には、特に、放電末期においても塩化合物の被膜が分解されにくいため、その放電末期においても電解液の分解反応が十分に抑制される。
【0054】
ポリアクリル酸塩の種類は、特に限定されない。このポリアクリル酸塩の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0055】
具体的には、ポリアクリル酸塩は、例えば、金属塩およびオニウム塩などを含んでいる。ただし、ここで説明するポリアクリル酸塩は、ポリアクリル酸中に含まれている全てのカルボキシル基(−COOH)が塩を形成している化合物に限られず、そのポリアクリル酸中に含まれている一部のカルボキシル基が塩を形成している化合物でもよい。すなわち、後者のポリアクリル酸塩は、1個または2個以上のカルボキシル基を含んでいてもよい。
【0056】
金属塩に含まれる金属イオンの種類は、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属イオンなどであり、そのアルカリ金属イオンは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンなどである。具体的には、ポリアクリル酸塩は、例えば、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリアクリル酸カリウムなどである。
【0057】
オニウム塩に含まれるオニウムイオンの種類は、特に限定されないが、例えば、アンモニウムイオンおよびホスホニウムイオンなどである。具体的には、ポリアクリル酸塩は、例えば、ポリアクリル酸アンモニウムおよびポリアクリル酸ホスホニウムなどである。
【0058】
なお、ポリアクリル酸塩は、1つの分子中に、金属イオンだけを含んでいてもよいし、オニウムイオンだけを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。この場合においても、ポリアクリル酸塩は、上記したように、1個または2個以上のカルボキシル基を含んでいてもよい。
【0059】
カルボキシメチルセルロース塩の種類は、特に限定されない。このカルボキシメチルセルロース塩の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0060】
具体的には、カルボキシメチルセルロース塩は、例えば、金属塩などを含んでいる。ただし、ここで説明するカルボキシメチルセルロース塩は、カルボキシメチルセルロース中に含まれている全ての水酸基(−OH)が塩を形成している化合物に限られず、カルボキシメチルセルロース中に含まれている一部の水酸基が塩を形成している化合物でもよい。すなわち、後者のカルボキシメチルセルロース塩は、1個または2個以上の水酸基を含んでいてもよい。
【0061】
金属塩に含まれる金属イオンの種類は、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属イオンなどであり、そのアルカリ金属イオンは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンなどである。具体的には、カルボキシメチルセルロース塩は、例えば、カルボキシメチルセルロースリチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカリウムなどである。
【0062】
(導電性物質)
導電性物質は、炭素材料および金属材料のうちの一方または双方を含んでいる。炭素材料および金属材料は、被覆部202(塩化合物の被膜)に含まれている状態において、優れた導電性を発揮するからである。これにより、中心部201の表面に被覆部202が設けられていても、第1負極活物質200の導電性が確保される。この場合には、特に、放電末期においても塩化合物の被膜のそれぞれに含まれている導電性物質により導電性が維持されるため、その放電末期においても放電容量が減少しにくくなる。
【0063】
炭素材料の種類は、特に限定されない。この炭素材料の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0064】
具体的には、炭素材料は、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンブラックおよびアセチレンブラックなどである。カーボンナノチューブの平均チューブ径は、特に限定されないが、中でも、1nm〜300nmであることが好ましい。導電性がより向上するからである。ただし、炭素材料は、例えば、上記したカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンブラックおよびアセチレンブラックのうちのいずれか1種類または2種類以上と共に、後述するシングルウォールカーボンナノチューブを含んでいてもよい。
【0065】
または、炭素材料は、例えば、シングルウォールカーボンナノチューブでもよい。シングルウォールカーボンナノチューブの平均チューブ径は、特に限定されないが、中でも、0.1nm〜5nmであることが好ましい。また、シングルウォールカーボンナノチューブの平均長さは、特に限定されないが、中でも、5μm〜100μmであることが好ましい。導電性がより向上するからである。
【0066】
特に、シングルウォールカーボンナノチューブの平均チューブ径は、カーボンナノチューブの平均チューブ径よりも小さいため、炭素材料としてシングルウォールカーボンナノチューブを用いることにより、炭素材料としてカーボンナノチューブを用いた場合と比較して、少量でも十分な導電性が得られると共に、単位重量当たりの容量低下が抑制される。
【0067】
ここで説明する炭素材料(シングルウォールカーボンナノチューブ)は、カーボンナノチューブとシングルウォールカーボンナノチューブとの混合物でもよい。ただし、シングルウォールカーボンナノチューブの割合は、例えば、70重量%以上とする。
【0068】
金属材料の種類は、特に限定されない。この金属材料の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。具体的には、金属材料は、例えば、スズ、アルミニウム、ゲルマニウム、銅およびニッケルなどである。金属材料の状態は、特に限定されないが、例えば、粒子(粉末)状などである。金属材料の平均粒径(メジアン径D50)は、特に限定されないが、中でも、30nm〜3000nmであることが好ましく、30nm〜1000nmであることがより好ましく、50nm〜500nmであることがさらに好ましい。
【0069】
被覆部202の厚さおよび被覆率などは、任意に設定可能である。被覆部202の厚さは、中心部201が電極反応物質を吸蔵および放出することを阻害せずに、その中心部201を保護することが可能な厚さであることが好ましい。被覆部202の被覆率は、中心部201が電極反応物質を吸蔵および放出することを阻害せずに、その中心部201を保護することが可能な被覆率であることが好ましい。
【0070】
(割合W1,W2,W3)
ここで、中心部201の重量に対して、被覆部202に含まれている各材料の重量が占める割合は、特に限定されない。中でも、上記した割合は、所定の条件を満たすように適正化されていることが好ましい。
【0071】
具体的には、第1に、中心部201の重量に対して、被覆部202に含まれている塩化合物の重量が占める割合W1は、0.1重量%以上20重量%未満であることが好ましい。被覆部202による中心部201の被覆量が適正化されるため、放電時において負極が膨張および収縮しにくくなると共に電解液が分解しにくくなるからである。この割合W1は、W1(重量%)=(塩化合物の重量/中心部201の重量)×100により算出される。
【0072】
第2に、炭素材料がカーボンナノチューブなどを含んでいる場合において、中心部201の重量に対して、被覆部202に導電性物質として含まれている炭素材料の重量が占める割合W2は、0.1重量%以上15重量%未満であることが好ましい。高負荷時において負極の電気抵抗が低下すると共に、複数の第1負極活物質200が複合粒子200Cを形成しやすくなるからである。この割合W2は、W2(重量%)=(導電性物質である炭素材料の重量/中心部201の重量)×100により算出される。
【0073】
第3に、炭素材料がシングルウォールカーボンナノチューブを含んでいる場合において、中心部201の重量に対して、被覆部202に導電性物質として含まれている炭素材料の重量が占める割合W2は、0.001重量%以上1重量%未満であることが好ましい。炭素材料がカーボンナノチューブなどを含んでいる場合と同様の利点が得られるからである。
【0074】
第4に、中心部201の重量に対して、被覆部202に導電性物質として含まれている金属材料の重量が占める割合W3は、0.1重量%〜10重量%であることが好ましい。高負荷時において負極の電気抵抗が低下すると共に、複数の第1負極活物質200が複合粒子200Cを形成しやすくなるからである。この割合W3は、W3(重量%)=(導電性物質である金属材料の重量/中心部201の重量)×100により算出される。
【0075】
(好適な第1負極活物質の構成)
中でも、複数の第1負極活物質200は、後述する3次元網目構造を形成していることが好ましい。複数の第1負極活物質200同士が互いに強固に結合されると共に、その複数の第1負極活物質200の間において導電性が向上するからである。これにより、充放電時において、負極がより膨張収縮しにくくなると共に、その負極の電気抵抗がより増加しにくくなる。
【0076】
この場合には、特に、上記した3次元網目構造が形成されることにより、一次粒子である複数の中心部201同士が互いに強固に結合されると共に、その一次粒子である複数の中心部201の間において導電性が向上する。よって、負極が著しく膨張収縮しにくくなると共に、その負極の電気抵抗が著しく増加しにくくなる。
【0077】
図4は、複数の第1負極活物質200により形成された3次元網目構造の平面構成を模式的に表していると共に、
図5は、
図4に示した接続部203の断面構成を拡大している。
【0078】
負極活物質層2は、例えば、上記したように、複数の第1負極活物質200を含んでいるため、その複数の第1負極活物質200は、例えば、複数の中心部201および複数の被覆部202を含んでいる。この場合には、複数の第1負極活物質200は、例えば、
図4に示したように、上記した3次元網目構造を形成していることが好ましい。上記した利点が得られるからである。
【0079】
ここでは、導電性物質は、例えば、炭素材料として繊維状炭素材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この「繊維状炭素材料」とは、繊維状の立体的形状を有する炭素材料の総称である。繊維状炭素材料の平均繊維径は、特に限定されないが、例えば、0.1nm〜50nmである。具体的には、繊維状炭素材料は、例えば、上記したカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびシングルウォールカーボンナノチューブなどである。
【0080】
この場合には、例えば、複数の第1負極活物質200同士が複数の接続部203を介して互いに接続されることにより、3次元網目構造を形成している。この複数の接続部203は、例えば、複数の第1負極活物質200の間において延在している。3次元網目構造は、例えば、複数の第1負極活物質200のうちの一部により形成されていてもよいし、複数の第1負極活物質200のうちの全部により形成されていてもよい。
【0081】
図4では、図示内容を簡略化するために、3次元網目構造のうちの一部(2次元網目構造)だけを示している。実際には、
図4に示した複数の第1負極活物質200に加えて、
図4の紙面の手前側に複数の第1負極活物質200が存在していると共に、
図4の紙面の奥側に複数の第1負極活物質200が存在しており、それらの一連の第1負極活物質200が複数の接続部203を介して互いに接続されている。
【0082】
1個の第1負極活物質200が接続されている他の第1負極活物質200の数は、特に限定されないため、例えば、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。
【0083】
複数の第1負極活物質200は、例えば、ここで説明するように複数の接続部203を利用して3次元網目構造を形成することにより、
図3に示した複合粒子200Cを形成していてもよい。
【0084】
(接続部)
複数の接続部203は、上記したように、複数の第1負極活物質200の間において延在している。この場合には、互いに隣り合う2個の第1負極活物質200同士は、接続部203を介して互いに接続されている。このため、接続部203は、2個の第1負極活物質200の間において、一方の第1負極活物質200の表面から他方の第1負極活物質200の表面まで延在している。
【0085】
この接続部203は、例えば、
図4および
図5に示したように、繊維部204と、保護部205とを含んでいる。
【0086】
(繊維部)
繊維部204は、例えば、互いに隣り合う2個の被覆部202の間において、一方の被覆部202の表面から他方の被覆部202の表面まで延在している。この繊維部204は、主に、負極活物質層2の形成工程において、互いに隣り合う2個の被覆部202同士を互いに接続させるように繊維状炭素材料のうちの一部が被覆部202の外部に導出されることにより形成されていると考えられる。
【0087】
また、繊維部204は、例えば、上記した繊維状炭素材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。繊維状炭素材料を利用して接続部203が形成されやすくなるからである。なお、繊維部204に含まれている繊維状炭素材料の本数は、特に限定されないため、1本だけでもよいし、2本以上でもよい。
【0088】
繊維状炭素材料がカーボンナノチューブおよびシングルウォールカーボンナノチューブなどのチューブ系材料を含んでいる場合、その繊維状炭素材料の平均繊維径(平均チューブ径)は、特に限定されないが、上記したように、0.1nm〜50nmであることが好ましく、0.1nm〜10nmであることが好ましい。繊維状炭素材料のうちの一部が被覆部202の外部に導出されやすくなると共に、その繊維状炭素材料が塩化合物により被覆されやすくなるため、接続部203が形成されやすくなるからである。しかも、導電性物質(繊維状炭素材料)の量が少量でも接続部203が形成されやすくなるため、単位重量当たりの容量低下が抑制されるからである。
【0089】
また、繊維状炭素材料がカーボンナノファイバーなどのファイバー系材料を含んでいる場合、その繊維状炭素材料の平均繊維径(平均ファイバー径)は、特に限定されないが、上記したように、0.1nm〜50nmであることが好ましく、0.1nm〜10nmであることが好ましい。繊維状炭素材料がチューブ系材料である場合と同様の利点が得られるからである。
【0090】
すなわち、導電性物質が炭素材料として繊維状炭素材料を含んでいる場合において、その繊維状炭素材料の平均チューブ径または平均ファイバー径のそれぞれが上記した適正な範囲内であると、複数の第1負極活物質200の間に複数の接続部203が形成されやすくなる。これにより、複数の第1負極活物質200が複数の接続部203を利用して3次元網目構造を形成しやすくなる。
【0091】
(保護部)
保護部205は、繊維部204の表面のうちの一部または全部に設けられているため、その繊維部204の外周面を被覆している。すなわち、保護部205は、繊維部204の表面のうちの一部だけを被覆していてもよいし、その繊維部204の表面のうちの全部を被覆していてもよい。もちろん、保護部205が繊維部204の表面のうちの一部を被覆している場合には、その繊維部204の表面に複数の保護部205が設けられており、すなわち複数の保護部205が繊維部204の表面を被覆していてもよい。
【0092】
中でも、保護部205は、繊維部204の表面のうちの全部に設けられていることが好ましい。繊維部204の全体が保護部205により補強されるため、接続部203の物理的強度が向上するからである。
【0093】
この保護部205は、例えば、上記した塩化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。このため、保護部205は、主に、上記したように、負極活物質層2の形成工程において、繊維状炭素材料のうちの一部が被覆部202の外部に導出された際に、塩化合物のうちの一部が繊維状炭素材料を被覆することにより形成されていると考えられる。
【0094】
(割合比W1/W2および断面積比S1/S2)
ここで、複数の第1負極活物質200が複数の接続部203を利用して3次元網目構造を形成している場合において、上記した割合W1.W2の比(割合比)W1/W2と、接続部203の断面積S1に対する保護部205の断面積S2の比(断面積比)S2/S1とは、特に限定されない。この「接続部203の断面積S1」とは、接続部203の延在方向における接続部203の断面積であると共に、「保護部205の断面積S2」とは、接続部203の延在方向における保護部205の断面積である。
【0095】
中でも、割合比W1/W2は、W1/W2≦200という関係を満たしていることが好ましいと共に、断面積比S2/S1は、S2/S1≧0.5という関係を満たしていることが好ましい。複数の第1負極活物質200が複数の接続部203を利用して3次元網目構造を容易に形成しやすくなると共に、その3次元網目構造が維持されやすくなるからである。これにより、複数の第1負極活物質200同士が互いにより強固に結合されると共に、その複数の第1負極活物質200の間において導電性がより向上する。
【0096】
なお、割合比W1/W2の値は、小数点第二位の値を四捨五入した値とする。また、断面積比S2/S1の値は、小数点第三位の値を四捨五入した値とする。
【0097】
ここで説明した断面積S1,S2のそれぞれは、以下で説明するように、接続部203の断面の観察結果に基づいて簡易的に求められる。
【0098】
断面積S1を求める場合には、最初に、顕微鏡などのうちのいずれか1種類または2種類以上を用いることにより、
図5に示したように、繊維部204および保護部205を含む接続部203の断面を観察する。接続部203の断面形状は、主に、長軸aおよび短軸bにより規定される略楕円形であると共に、繊維部204の断面形状は、主に、長軸cおよび短軸dにより規定される略楕円形である。続いて、接続部203の断面の観察結果に基づいて、長軸aの寸法L1および短軸bの寸法L2のそれぞれを測定したのち、直径=(L1+L2)/2という計算式に基づいて、その接続部203の直径を算出する。ここで算出される「直径」は、接続部203の断面が円であると仮定した場合の直径である。続いて、上記した接続部203の直径に基づいて、その接続部203の面積(断面積)を算出する。最後に、上記した接続部203の断面積を算出する工程を10回繰り返したのち、10個の断面積の平均値を算出することにより、その接続部203の断面積S1とする。
【0099】
なお、顕微鏡の種類は、特に限定されないが、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)などである。具体的には、例えば、日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡 JEM−ARM200Fなどを使用可能である。
【0100】
断面積S2を求める場合には、上記した断面積S1を求める手順と同様の手順を用いる。この場合には、最初に、
図5に示したように、接続部203の断面を観察する。続いて、上記した手順により、接続部203の断面積を算出する。続いて、繊維部204の断面の観察結果に基づいて、長軸cの寸法L3および短軸dの寸法L4のそれぞれを測定したのち、直径=(L3+L4)/2という計算式に基づいて、繊維部204の直径を算出する。ここで算出される「直径」は、繊維部204の断面が円であると仮定した場合の直径である。続いて、上記した繊維部204の直径に基づいて、その繊維部204の面積(断面積)を算出する。続いて、接続部203の断面積から繊維部204の断面積を差し引くことにより、保護部205の断面積を算出する。最後に、上記した保護部205の断面積を算出する工程を10回繰り返したのち、10個の断面積の平均値を算出することにより、その保護部205の断面積S2とする。
【0101】
(第2負極活物質)
第2負極活物質300は、炭素系材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この「炭素系材料」とは、炭素を構成元素として含む材料の総称である。
【0102】
第2負極活物質300が炭素系材料を含んでいるのは、電極反応物質の吸蔵時および放出時において炭素系材料が膨張収縮しにくいからである。これにより、炭素系材料の結晶構造が変化しにくくなるため、高いエネルギー密度が安定に得られる。しかも、炭素系材料は後述する負極導電剤としても機能するため、負極活物質層2の導電性が向上する。
【0103】
炭素系材料の種類は、特に限定されないが、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。ただし、難黒鉛化性炭素に関する(002)面の面間隔は、例えば、0.37nm以上であることが好ましいと共に、黒鉛に関する(002)面の面間隔は、例えば、0.34nm以下であることが好ましい。
【0104】
より具体的には、炭素系材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。このコークス類は、例えば、ピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークスなどを含む。有機高分子化合物焼成体は、高分子化合物の焼成(炭素化)物であり、その高分子化合物は、例えば、フェノール樹脂およびフラン樹脂などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。この他、炭素系材料は、例えば、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。
【0105】
第2負極活物質300の形状は、特に限定されないが、例えば、繊維状、球状(粒子状)および鱗片状などである。
図2では、例えば、第2負極活物質300の形状が球状である場合を示している。もちろん、2種類以上の形状を有する第2負極活物質300が混在していてもよい。
【0106】
第2負極活物質300の形状が粒子状である場合、その第2負極活物質300の平均粒径(メジアン径D50)は、特に限定されないが、例えば、約5μm〜40μmである。
【0107】
(負極結着剤)
負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドおよびアラミドなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第1負極活物質200および第2負極活物質300などが十分に結着されるからである。
【0108】
なお、負極は、後述するように、第1負極活物質200、第2負極活物質300および負極結着剤を含む非水性分散液を用いて製造される。この非水性分散液中では、第1負極活物質200および第2負極活物質300のそれぞれが分散されていると共に、負極結着剤が溶解されている。
【0109】
(他の材料)
なお、負極活物質層2は、さらに、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0110】
他の材料は、例えば、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な他の負極活物質である。他の負極活物質は、金属系材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この「金属系材料」とは、金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料の総称である。高いエネルギー密度が得られるからである。ただし、上記したケイ素系材料は、ここで説明する「金属系材料」から除かれる。
【0111】
金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよい。また、金属系材料は、上記した単体、合金および化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に含んでいる材料でもよい。ただし、「単体」の意味は、上記した通りである。
【0112】
合金は、2種類以上の金属元素を構成元素として含んでいてもよいし、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを構成元素として含んでいてもよい。また、上記した合金は、さらに、1種類以上の非金属元素を構成元素として含んでいてもよい。合金の組織は、例えば、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物およびそれらの2種類以上の共存物などである。
【0113】
金属系材料に構成元素として含まれる金属元素および半金属元素は、例えば、電極反応物質と合金を形成することが可能な金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上である。具体的には、例えば、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、ビスマス、カドミウム、銀、亜鉛、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、パラジウムおよび白金などである。
【0114】
中でも、スズが好ましい。スズは優れた電極反応物質の吸蔵放出能力を有しているため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0115】
スズの合金およびスズの化合物に関する詳細は、例えば、上記した通りである。
【0116】
スズの合金は、例えば、スズ以外の構成元素として、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0117】
スズの合金およびスズの化合物は、例えば、SnO
w (0<w≦2)、SnSiO
3 、LiSnOおよびMg
2 Snなどである。
【0118】
スズを構成元素として含む材料は、例えば、第1構成元素であるスズと共に第2構成元素および第3構成元素を含む材料(スズ含有材料)でもよい。第2構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン(Mo)、銀、インジウム、セシウム(Cs)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。第3構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
【0119】
中でも、スズ含有材料は、スズとコバルトと炭素とを構成元素として含む材料(スズコバルト炭素含有材料)であることが好ましい。スズコバルト炭素含有材料の組成は、例えば、以下の通りである。炭素の含有量は、9.9質量%〜29.7質量%である。スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))は、20質量%〜70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0120】
スズコバルト炭素含有材料は、スズとコバルトと炭素とを含む相を含んでおり、その相は、低結晶性または非晶質であることが好ましい。この相は、電極反応物質と反応することが可能な相(反応相)であり、その反応相の存在に起因して、スズコバルト炭素含有材料では優れた特性が得られる。反応相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅(回折角2θ)は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合において、1°以上であることが好ましい。電極反応物質が吸蔵および放出されやすくなると共に、電解液に対する反応性が低減するからである。なお、スズコバルト炭素含有材料は、低結晶性または非晶質である相と共に、他の層を含んでいる場合もある。他の層は、例えば、各構成元素の単体を含む相および各構成元素のうちの一部を含む相などである。
【0121】
X線回折により得られた回折ピークが反応相、すなわち電極反応物質と反応することが可能な相に対応しているか否かに関しては、電極反応物質との電気化学的反応の前後においてX線回折チャートを比較することにより、容易に判断することができる。例えば、電極反応物質との電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化していれば、反応相に対応していると判断することができる。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質である反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の範囲内に検出される。この反応相は、例えば、上記した一連の構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化または非晶質化していると考えられる。
【0122】
スズコバルト炭素含有材料において、構成元素である炭素のうちの一部または全部は、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集および結晶化などが抑制されるからである。元素の結合状態に関しては、例えば、X線光電子分光法(XPS)を用いて確認することができる。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線およびMg−Kα線などが用いられる。炭素のうちの一部または全部が金属元素または半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。ただし、金原子の4f軌道(Au4f)のピークは、84.0eVに得られるようにエネルギー較正されていることを条件とする。この場合には、通常、物質の表面に表面汚染炭素が存在しているため、その表面汚染炭素のC1sのピークをエネルギー基準(284.8eV)とする。XPS測定において、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素に起因するピークとスズコバルト炭素含有材料中の炭素に起因するピークとを含んでいる。このため、例えば、市販のソフトウエアを用いてピークを解析することにより、両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0123】
このスズコバルト炭素含有材料は、例えば、スズ、コバルトおよび炭素に加えて、さらに、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムおよびビスマスなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
【0124】
スズコバルト炭素含有材料の他、スズとコバルトと鉄と炭素とを構成元素として含む材料(スズコバルト鉄炭素含有材料)も好ましい。このスズコバルト鉄炭素含有材料の組成は、任意である。
【0125】
鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成は、例えば、以下の通りである。炭素の含有量は、9.9質量%〜29.7質量%である。鉄の含有量は、0.3質量%〜5.9質量%である。スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))は、30質量%〜70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0126】
鉄の含有量を多めに設定する場合の組成は、例えば、以下の通りである。炭素の含有量は、11.9質量%〜29.7質量%である。スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))は、26.4質量%〜48.5質量%である。コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))は、9.9質量%〜79.5質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0127】
なお、スズコバルト鉄炭素含有材料の物性(半値幅などの条件)は、上記したスズコバルト炭素含有材料の物性と同様である。
【0128】
また、他の負極活物質は、例えば、金属酸化物および高分子化合物などである。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムおよび酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンおよびポリピロールなどである。
【0129】
また、他の材料は、例えば、他の負極結着剤である。他の負極結着剤は、例えば、合成ゴムおよび高分子化合物などである。合成ゴムは、例えば、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子材料は、例えば、ポリイミドおよびポリアクリル酸塩などである。負極結着剤として用いられるポリアクリル酸塩の種類などに関する詳細は、例えば、上記した被覆部202に含まれるポリアクリル酸塩の種類などに関する詳細と同様である。
【0130】
また、他の材料は、例えば、負極導電剤である。この負極導電剤は、例えば、炭素材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。また、炭素材料は、例えば、カーボンナノチューブを含む繊維状カーボンなどでもよい。ただし、負極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料および導電性高分子化合物などでもよい。
【0131】
<1−2.製造方法>
この負極は、例えば、以下で説明する手順により製造される。以下では、負極を構成する一連の構成要素の形成材料に関しては既に詳細に説明したので、その形成材料に関する説明を随時省略する。
【0132】
最初に、ケイ素系材料を含む中心部201と、塩化合物および導電性物質と、水性溶媒などとを混合したのち、その混合物を撹拌する。撹拌方法および撹拌条件は、特に限定されないが、例えば、スターラなどの撹拌装置を用いてもよい。
【0133】
これにより、水性溶媒中に中心部201および導電性物質が分散されると共に、その水性溶媒により塩化合物が溶解されるため、中心部201、塩化合物および導電性物質を含む水性分散液が調製される。
【0134】
水性溶媒の種類は、特に限定されないが、例えば、純水などである。塩化合物としては、例えば、非溶解物を用いてもよいし、溶解物を用いてもよい。この溶解物は、例えば、純水などにより塩化合物が溶解された溶液であり、いわゆる塩化合物の水溶液である。
【0135】
続いて、水性分散液を撹拌しながら乾燥させる。撹拌方法は、例えば、上記した通りである。撹拌条件および乾燥条件は、特に限定されない。
【0136】
水性分散液中では、塩化合物および導電性物質を含む被覆部202が中心部201の表面に形成されるため、第1負極活物質200が形成される。
【0137】
続いて、第1負極活物質200と、炭素系材料を含む第2負極活物質300と、ポリフッ化ビニリデンなどを含む負極結着剤と、非水性溶媒と、必要に応じて負極導電剤などとを混合したのち、その混合物を撹拌する。撹拌方法および撹拌条件は、特に限定されないが、例えば、ミキサなどの撹拌装置を用いてもよい。
【0138】
非水性溶媒の種類は、第1負極活物質200および第2負極活物質300のそれぞれを分散させることが可能であると共に負極結着剤を溶解させることが可能である材料のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。この非水性溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤である。
【0139】
これにより、非水性溶媒により負極結着剤が溶解されるため、第1負極活物質200、第2負極活物質300および負極結着剤を含む非水性分散液が調製される。非水性分散液の状態は、特に限定されないが、例えば、ペースト状である。ペースト状の非水性分散液は、いわゆるスラリーである。
【0140】
最後に、非水性分散液を用いて、負極を製造する。この場合には、例えば、負極集電体1の両面に非水性分散液を塗布したのち、その非水性分散液を乾燥させる。これにより、第1負極活物質200、第2負極活物質300および負極結着剤を含む負極活物質層2が形成されるため、負極が完成する。
【0141】
こののち、ロールプレス機などを用いて負極活物質層2を圧縮成形してもよい。この場合には、負極活物質層2を加熱してもよいし、圧縮成形を複数回繰り返してもよい。圧縮条件および加熱条件は、特に限定されない。
【0142】
なお、上記した負極の製造方法では、第1負極活物質200を得るために他の方法を用いてもよい。この場合には、2種類以上の方法を併用してもよい。
【0143】
具体的には、例えば、スプレードライ法を用いてもよい。スプレードライ法を用いる場合には、例えば、スプレードライ装置を用いて水性分散液を噴霧したのち、その噴霧物を乾燥させる。これにより、中心部201の表面に被覆部202が形成されるため、第1負極活物質200が得られる。
【0144】
特に、スプレードライ法を用いることにより、複数の第1負極活物質200を形成しながら、その複数の第1負極活物質200の集合体である複合粒子200Cを形成することができる。この場合には、例えば、導電性物質(炭素材料)として繊維状炭素材料を用いることにより、
図4に示した3次元網目構造が形成されるため、複合粒子200Cが形成される。
【0145】
また、例えば、粉砕法を用いてもよい。粉砕法を用いる場合には、例えば、水性分散液を乾燥させたのち、粉砕機を用いて乾燥物を粉砕する。これにより、中心部201の表面に被覆部202が形成されるため、第1負極活物質200が得られる。粉砕機の種類は、特に限定されないが、例えば、遊星ボールミルなどである。
【0146】
<1−3.作用および効果>
この負極によれば、第1負極活物質200と、第2負極活物質300と、負極結着剤とを含んでいる。第1負極活物質200は、ケイ素系材料を含む中心部201と、塩化合物および導電性物質を含む被覆部202とを含んでいる。第2負極活物質300は、炭素系材料を含んでいる。負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。
【0147】
この場合には、上記したように、第1負極活物質200および第2負極活物質300などの結着性を確保すると共に、被覆部202の導電性を確保しながら、中心部201が電極反応物質を吸蔵および放出しやすくなると共に、その中心部201の反応性に起因する電解液の分解反応が抑制される。よって、充放電を繰り返しても、二次電池が膨れにくくなると共に、放電容量が低下しにくくなるため、負極を用いた二次電池の電池特性を向上させることができる。
【0148】
特に、複数の第1負極活物質200が複合粒子200Cを形成していれば、複合粒子200Cの電気抵抗が低下すると共に、その複合粒子200Cに含まれている各中心部201が電極反応物質を吸蔵および放出しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0149】
この場合には、複合粒子200Cの比表面積が0.1m
2 /g〜10m
2 /gであれば、放電容量のロスが抑制されると共に高負荷時において負極の電気抵抗の増加が抑制されるため、より高い効果を得ることができる。
【0150】
また、ポリアクリル酸塩がポリアクリル酸リチウムなどを含んでおり、カルボキシメチルセルロース塩がカルボキシメチルセルロースリチウムなどを含んでいれば、中心部201における電極反応物質の吸蔵および放出が確保されながら、その中心部201の反応性に起因する電解液の分解反応が被覆部202により十分に抑制されるため、より高い効果を得ることができる。
【0151】
また、割合W1が0.1重量%以上20重量%未満であれば、充放電時において負極が膨張および収縮しにくくなると共に電解液が分解しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0152】
また、炭素材料がカーボンナノチューブなどを含んでいれば、被覆部202の導電性が十分に向上するため、より高い効果を得ることができる。この場合には、カーボンナノチューブの平均チューブ径が1nm〜300nmであれば、導電性がより向上するため、より高い効果を得ることができる。また、割合W2が0.1重量%以上15重量%未満であれば、高負荷時において電気抵抗の増加が抑制されるため、より高い効果を得ることができる。
【0153】
また、炭素材料がシングルウォールカーボンナノチューブを含んでいれば、被覆部202の導電性が十分に向上するため、より高い効果を得ることができる。この場合には、シングルウォールカーボンナノチューブの平均チューブ径が0.1nm〜5nmであれば、導電性がより向上するため、より高い効果を得ることができる。また、割合W2が0.001重量%以上1重量%未満であれば、高負荷時において電気抵抗の増加が抑制されるため、より高い効果を得ることができる。
【0154】
また、炭素材料が繊維状炭素材料を含んでおり、その繊維状炭素材料の平均繊維径が0.1nm〜50nmであり、繊維部204および保護部205を含む複数の接続部203を利用して複数の第1負極活物質200同士が互いに接続されることにより3次元網目構造が形成されていれば、充放電時において、負極がより膨張収縮しにくくなると共に、その負極の電気抵抗がより増加しにくくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0155】
この場合には、繊維状炭素材料が上記した平均繊維径を有するカーボンナノチューブなどを含んでいれば、接続部203が形成されやすくなることにより、単位重量当たりの容量低下が抑制されるため、さらに高い効果を得ることができる。また、割合比W1/W2がW1/W2≦200を満たしていると共に、断面積比S2/S1がS2/S1≧0.5を満たしていれば、上記した3次元網目構造が容易に形成されやすくなると共に維持されやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。
【0156】
また、金属材料がスズなどを含んでいれば、被覆部202の導電性が十分に向上するため、より高い効果を得ることができる。この場合には、割合W3が0.1重量%〜10重量%であれば、高負荷時において電気抵抗の増加が抑制されるため、より高い効果を得ることができる。
【0157】
<2.二次電池>
次に、上記した本技術の負極を用いた二次電池に関して説明する。
【0158】
<2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
図6は、二次電池の断面構成を表しており、
図7は、
図6に示した巻回電極体20の断面構成のうちの一部を拡大している。
【0159】
ここで説明する二次電池は、例えば、電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出により負極22の容量が得られるリチウムイオン二次電池である。
【0160】
[全体構成]
二次電池は、円筒型の電池構造を有している。この二次電池では、例えば、
図6に示したように、中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の絶縁板12,13と、電池素子である巻回電極体20とが収納されている。巻回電極体20では、例えば、セパレータ23を介して積層された正極21および負極22が巻回されている。この巻回電極体20には、例えば、液状の電解質である電解液が含浸されている。
【0161】
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、例えば、鉄、アルミニウムおよびそれらの合金などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この電池缶11の表面には、ニッケルなどが鍍金されていてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を挟んでいると共に、その巻回電極体20の巻回周面に対して垂直に延在している。
【0162】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、安全弁機構15と、熱感抵抗素子(PTC素子)16とがガスケット17を介してかしめられている。これにより、電池缶11は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料を含んでいる。安全弁機構15および熱感抵抗素子16のそれぞれは、電池蓋14の内側に設けられており、その安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡または外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上になると、ディスク板15Aが反転する。これにより、電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断される。大電流に起因する異常な発熱を防止するために、熱感抵抗素子16の電気抵抗は、温度の上昇に応じて増加する。ガスケット17は、例えば、絶縁性材料を含んでおり、そのガスケット17の表面には、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0163】
巻回電極体20の巻回中心に形成された空間には、例えば、センターピン24が挿入されている。ただし、センターピン24は挿入されていなくてもよい。正極21には、正極リード25が接続されていると共に、負極22には、負極リード26が接続されている。正極リード25は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料を含んでいる。この正極リード25は、例えば、安全弁機構15に接続されていると共に、電池蓋14と電気的に導通している。負極リード26は、例えば、ニッケルなどの導電性材料を含んでいる。この負極リード26は、例えば、電池缶11に接続されており、その電池缶11と電気的に導通している。
【0164】
(正極)
正極21は、例えば、
図7示したように、正極集電体21Aと、その正極集電体21Aの上に設けられた正極活物質層21Bとを含んでいる。
【0165】
なお、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよいし、正極集電体21Aの両面に設けられていてもよい。
図7では、例えば、正極活物質層21Bが正極集電体21Aの両面に設けられている場合を示している。
【0166】
正極集電体21Aは、例えば、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどの金属材料であり、その金属材料のうちの2種類以上を含む合金でもよい。なお、正極集電体21Aは、単層でもよいし、多層でもよい。
【0167】
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。なお、正極活物質層21Bは、単層でもよいし、多層でもよい。
【0168】
正極材料は、リチウム含有化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。このリチウム含有化合物の種類は、特に限定されないが、中でも、リチウム含有複合酸化物およびリチウム含有リン酸化合物が好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0169】
「リチウム含有複合酸化物」とは、リチウムと1種類または2種類以上の他元素とを構成元素として含む酸化物であり、「他元素」とは、リチウム以外の元素である。このリチウム含有酸化物は、例えば、層状岩塩型およびスピネル型などのうちのいずれか1種類または2種類以上の結晶構造を有している。
【0170】
「リチウム含有リン酸化合物」とは、リチウムと1種類または2種類以上の他元素とを構成元素として含むリン酸化合物である。このリチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型などのうちのいずれか1種類または2種類以上の結晶構造を有している。
【0171】
他元素の種類は、任意の元素(リチウムを除く。)のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。中でも、他元素は、長周期型周期表における2族〜15族に属する元素のうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より具体的には、他元素は、ニッケル、コバルト、マンガンおよび鉄のうちのいずれか1種類または2種類以上の金属元素であることがより好ましい。高い電圧が得られるからである。
【0172】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(1)〜式(3)のそれぞれで表される化合物などである。
【0173】
Li
a Mn
(1-b-c) Ni
b M1
c O
(2-d) F
d ・・・(1)
(M1は、コバルト、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンのうちの少なくとも1種である。a〜eは、0.8≦a≦1.2、0<b<0.5、0≦c≦0.5、(b+c)<1、−0.1≦d≦0.2および0≦e≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0174】
Li
a Ni
(1-b) M2
b O
(2-c) F
d ・・・(2)
(M2は、コバルト、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンのうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.8≦a≦1.2、0.005≦b≦0.5、−0.1≦c≦0.2および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0175】
Li
a Co
(1-b) M3
b O
(2-c) F
d ・・・(3)
(M3は、ニッケル、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンのうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.8≦a≦1.2、0≦b<0.5、−0.1≦c≦0.2および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0176】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、LiNiO
2 、LiCoO
2 、LiCo
0.98Al
0.01Mg
0.01O
2 、LiNi
0.5 Co
0.2 Mn
0.3 O
2 、LiNi
0.8 Co
0.15Al
0.05O
2 、LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2 、Li
1.2 Mn
0.52Co
0.175 Ni
0.1 O
2 およびLi
1.15(Mn
0.65Ni
0.22Co
0.13)O
2 などである。
【0177】
なお、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物がニッケル、コバルト、マンガンおよびアルミニウムを構成元素として含む場合には、そのニッケルの原子比率は、50原子%以上であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。
【0178】
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(4)で表される化合物などである。
【0179】
Li
a Mn
(2-b) M4
b O
c F
d ・・・(4)
(M4は、コバルト、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンのうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.9≦a≦1.1、0≦b≦0.6、3.7≦c≦4.1および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0180】
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、LiMn
2 O
4 などである。
【0181】
オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物は、例えば、下記の式(5)で表される化合物などである。
【0182】
Li
a M5PO
4 ・・・(5)
(M5は、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、ニオブ、銅、亜鉛、モリブデン、カルシウム、ストロンチウム、タングステンおよびジルコニウムのうちの少なくとも1種である。aは、0.9≦a≦1.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
【0183】
オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物は、例えば、LiFePO
4 、LiMnPO
4 、LiFe
0.5 Mn
0.5 PO
4 およびLiFe
0.3 Mn
0.7 PO
4 などである。
【0184】
なお、リチウム含有複合酸化物は、下記の式(6)で表される化合物などでもよい。
【0185】
(Li
2 MnO
2 )
x (LiMnO
2 )
1-x ・・・(6)
(xは、0≦x≦1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、xは完全放電状態の値である。)
【0186】
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物および導電性高分子などでもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムおよび二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンおよび硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンおよびポリチオフェンなどである。
【0187】
ただし、正極材料は、上記した材料に限られず、他の材料でもよい。
【0188】
正極結着剤に関する詳細は、例えば、上記した負極結着剤および他の負極結着剤に関する詳細と同様である。また、正極導電剤に関する詳細は、例えば、上記した負極導電剤に関する詳細と同様である。
【0189】
(負極)
負極22は、上記した本技術の負極と同様の構成を有している。
【0190】
具体的には、負極22は、例えば、
図7に示したように、負極集電体22Aと、その負極集電体22Aの上に設けられた負極活物質層22Bとを含んでいる。負極集電体22Aの構成は、負極集電体1の構成と同様であると共に、負極活物質層22Bの構成は、負極活物質層2の構成と同様である。
【0191】
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22との間に配置されている。これにより、セパレータ23は、その正極21と負極22との接触に起因する短絡の発生を防止しながら、リチウムイオンを通過させる。
【0192】
このセパレータ23は、例えば、合成樹脂およびセラミックなどの多孔質膜のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
【0193】
なお、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜(基材層)と、その基材層の上に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、巻回電極体20が歪みにくくなるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても電気抵抗が上昇しにくくなると共に二次電池が膨れにくくなる。
【0194】
高分子化合物層は、基材層の片面だけに設けられていてもよいし、基材層の両面に設けられていてもよい。この高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ポリフッ化ビニリデンは、物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。高分子化合物層を形成する場合には、例えば、有機溶剤などにより高分子材料が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。
【0195】
(電解液)
電解液は、例えば、溶媒および電解質塩を含んでいる。溶媒の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。電解質塩の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。なお、電解液は、さらに、添加剤などの各種材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0196】
溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒を含んでいる。非水溶媒を含む電解液は、いわゆる非水電解液である。
【0197】
この溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステルおよびニトリル(モノニトリル)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0198】
環状炭酸エステルは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよび炭酸ブチレンなどである。鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸メチルプロピルなどである。ラクトンは、例えば、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどである。鎖状カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。ニトリルは、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリルおよび3−メトキシプロピオニトリルなどである。
【0199】
この他、溶媒は、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルおよびジメチルスルホキシドなどでもよい。同様の利点が得られるからである。
【0200】
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルなどの炭酸エステルのうちのいずれか1種類または2種類以上が好ましい。より優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0201】
この場合には、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどの環状炭酸エステルである高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジエチルなどの鎖状炭酸エステルである低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0202】
また、溶媒は、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルホン酸エステル、酸無水物、ジニトリル化合物、ジイソシアネート化合物およびリン酸エステルなどでもよい。電解液の化学的安定性が向上するからである。
【0203】
不飽和環状炭酸エステルは、1個または2個以上の不飽和結合(炭素間二重結合)を有する環状炭酸エステルである。この不飽和環状炭酸エステルは、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)および炭酸メチレンエチレン(4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン)などである。溶媒中における不飽和環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。
【0204】
ハロゲン化炭酸エステルは、1個または2個以上のハロゲンを構成元素として含む環状または鎖状の炭酸エステルである。ハロゲンの種類は、特に限定されないが、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。環状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。鎖状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)および炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜50重量%である。
【0205】
スルホン酸エステルは、例えば、モノスルホン酸エステルおよびジスルホン酸エステルなどである。モノスルホン酸エステルは、環状モノスルホン酸エステルでもよいし、鎖状モノスルホン酸エステルでもよい。環状モノスルホン酸エステルは、例えば、1,3−プロパンスルトンおよび1,3−プロペンスルトンなどのスルトンである。鎖状モノスルホン酸エステルは、例えば、環状モノスルホン酸エステルが途中で切断された化合物などである。ジスルホン酸エステルは、環状ジスルホン酸エステルでもよいし、鎖状ジスルホン酸エステルでもよい。溶媒中におけるスルホン酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0206】
酸無水物は、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物およびカルボン酸スルホン酸無水物などである。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸および無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸および無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸および無水スルホ酪酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0207】
ジニトリル化合物は、例えば、NC−R1−CN(R1は、アルキレン基およびアリーレン基のうちのいずれかである。)で表される化合物である。このジニトリル化合物は、例えば、スクシノニトリル(NC−C
2 H
4 −CN)、グルタロニトリル(NC−C
3 H
6 −CN)、アジポニトリル(NC−C
4 H
8 −CN)およびフタロニトリル(NC−C
6 H
5 −CN)などである。溶媒中におけるジニトリル化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0208】
ジイソシアネート化合物は、例えば、OCN−R2−NCO(R2は、アルキレン基およびアリーレン基のうちのいずれかである。)で表される化合物である。このジイソシアネート化合物は、例えば、OCN−C
6 H
12−NCOなどである。溶媒中におけるジイソシアネート化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0209】
リン酸エステルの具体例は、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルおよびリン酸トリアリルなどである。溶媒中におけるリン酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
【0210】
電解質塩は、例えば、リチウム塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。このリチウム以外の塩は、例えば、リチウム以外の軽金属の塩などである。
【0211】
リチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4 )、過塩素酸リチウム(LiClO
4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C
6 H
5 )
4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH
3 SO
3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3 SO
3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl
4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li
2 SiF
6 )、塩化リチウム(LiCl)および臭化リチウム(LiBr)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0212】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちのいずれか1種類または2種類以上が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
【0213】
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0214】
[動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。
【0215】
充電時には、正極21からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、負極22からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0216】
[製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0217】
正極21を作製する場合には、最初に、正極活物質と、正極結着剤および正極導電剤などとを混合することにより、正極合剤とする。続いて、有機溶剤などに正極合剤を加えたのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーとする。最後に、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成形してもよい。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいし、圧縮成形を複数回繰り返してもよい。
【0218】
負極22を作製する場合には、上記した本技術の負極の製造方法と同様の手順により、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成する。
【0219】
二次電池を組み立てる場合には、溶接法などを用いて正極集電体21Aに正極リード25を接続させると共に、溶接法などを用いて負極集電体22Aに負極リード26を接続させる。続いて、セパレータ23を介して積層された正極21および負極22を巻回させることにより、巻回電極体20を形成する。続いて、巻回電極体20の巻回中心に形成された空間に、センターピン24を挿入する。
【0220】
続いて、一対の絶縁板12,13により巻回電極体20を挟みながら、その巻回電極体20を電池缶11の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて正極リード25を安全弁機構15に接続させると共に、溶接法などを用いて負極リード26を電池缶11に接続させる。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入することにより、その電解液を巻回電極体20に含浸させる。最後に、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめる。これにより、円筒型の二次電池が完成する。
【0221】
[作用および効果]
この二次電池によれば、負極22が上記した本技術の負極と同様の構成を有しているので、充放電を繰り返しても、二次電池が膨れにくくなると共に、放電容量が低下しにくくなる。よって、二次電池の電池特性を向上させることができる。
【0222】
これ以外の作用および効果は、本技術の負極に関する作用および効果と同様である。
【0223】
<2−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)>
図8は、他の二次電池の斜視構成を表しており、
図9は、
図8に示したIX−IX線に沿った巻回電極体30の断面構成を表している。なお、
図8では、巻回電極体30と外装部材40とが互いに離間された状態を示している。
【0224】
以下の説明では、既に説明した円筒型の二次電池の構成要素を随時引用する。
【0225】
[全体構成]
二次電池は、ラミネートフィルム型の電池構造を有するリチウムイオン二次電池である。この二次電池では、例えば、
図8に示したように、フィルム状の外装部材40の内部に、電池素子である巻回電極体30が収納されている。巻回電極体30では、例えば、セパレータ35および電解質層36を介して積層された正極33および負極34が巻回されている。正極33には、正極リード31が接続されていると共に、負極34には、負極リード32が接続されている。巻回電極体30の最外周部は、保護テープ37により保護されている。
【0226】
正極リード31および負極リード32のそれぞれは、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。負極リード32は、例えば、銅、ニッケルおよびステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。これらの導電性材料は、例えば、薄板状または網目状である。
【0227】
外装部材40は、例えば、
図8に示した矢印Rの方向に折り畳むことが可能な1枚のフィルムであり、その外装部材40の一部には、巻回電極体30を収納するための窪みが設けられている。この外装部材40は、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。二次電池の製造工程では、融着層同士が巻回電極体30を介して対向するように外装部材40が折り畳まれると共に、その融着層の外周縁部同士が融着される。ただし、外装部材40は、接着剤などを介して互いに接続された2枚のラミネートフィルムでもよい。融着層は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのフィルムのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。金属層は、例えば、アルミニウム箔などの金属箔のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。表面保護層は、例えば、ナイロンおよびポリエチレンテレフタレートなどのフィルムのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0228】
中でも、外装部材40は、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。ただし、外装部材40は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムでもよいし、金属フィルムでもよい。
【0229】
外装部材40と正極リード31との間には、例えば、外気の侵入を防止するために密着フィルム41が挿入されている。また、外装部材40と負極リード32との間には、例えば、上記した密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32の双方に対して密着性を有する材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。密着性を有する材料は、例えば、ポリオレフィン樹脂などであり、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンなどである。
【0230】
(正極、負極およびセパレータ)
正極33は、例えば、
図9に示したように、正極集電体33Aおよび正極活物質層33Bを含んでいる。負極34は、上記した本技術の負極と同様の構成を有しており、例えば、
図9に示したように、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bを含んでいる。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bのそれぞれの構成は、例えば、正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bのそれぞれの構成と同様である。セパレータ35の構成は、例えば、セパレータ23の構成と同様である。
【0231】
(電解質層)
電解質層36は、電解液および高分子化合物を含んでいる。この電解液は、上記した円筒型の二次電池に用いられた電解液と同様の構成を有している。ここで説明する電解質層36は、いわゆるゲル状の電解質であり、その電解質層36中では、高分子化合物により電解液が保持されている。高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、電解液の漏液が防止されるからである。なお、電解質層36は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0232】
高分子化合物は、単独重合体および共重合体などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。単独重合体は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどである。共重合体は、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体などである。中でも、単独重合体は、ポリフッ化ビニリデンであることが好ましいと共に、共重合体は、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体であることが好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0233】
ゲル状の電解質である電解質層36において、電解液に含まれる「溶媒」とは、液状の材料だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。このため、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
【0234】
なお、電解質層36の代わりに、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液が巻回電極体30に含浸される。
【0235】
[動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。
【0236】
充電時には、正極33からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解質層36を介して負極34に吸蔵される。一方、放電時には、負極34からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解質層36を介して正極33に吸蔵される。
【0237】
[製造方法]
ゲル状の電解質層36を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
【0238】
第1手順では、正極21および負極22のそれぞれの作製手順と同様の手順により、正極33および負極34を作製する。具体的には、正極33を作製する場合には、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成すると共に、負極34を作製する場合には、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成する。続いて、電解液と、高分子化合物と、有機溶剤などとを混合することにより、前駆溶液を調製する。続いて、正極33に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させることにより、ゲル状の電解質層36を形成する。また、負極34に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させることにより、ゲル状の電解質層36を形成する。続いて、溶接法などを用いて正極集電体33Aに正極リード31を接続させると共に、溶接法などを用いて負極集電体34Aに負極リード32を接続させる。続いて、セパレータ35を介して積層された正極33および負極34を巻回させることにより、巻回電極体30を形成したのち、その巻回電極体30の最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、巻回電極体30を挟むように外装部材40を折り畳んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40の外周縁部同士を接着させることにより、その外装部材40の内部に巻回電極体30を封入する。この場合には、正極リード31と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入すると共に、負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入する。
【0239】
第2手順では、溶接法などを用いて正極33に正極リード31を接続させると共に、溶接法などを用いて負極34に負極リード32を接続させる。続いて、セパレータ35を介して積層された正極33および負極34を巻回させることにより、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製したのち、その巻回体の最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、巻回電極体30を挟むように外装部材40を折り畳んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40のうちの一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を接着させることにより、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを混合することにより、電解質用組成物を調製する。続いて、袋状の外装部材40の内部に電解質用組成物を注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40を密封する。続いて、モノマーを熱重合させることにより、高分子化合物を形成する。これにより、高分子化合物により電解液が保持されるため、ゲル状の電解質層36が形成される。
【0240】
第3手順では、多孔質膜(基材層)に高分子化合物層が形成されたセパレータ35を用いることを除いて、上記した第2手順と同様の手順により、巻回体を作製したのち、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、外装部材40の内部に電解液を注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40の開口部を密封する。続いて、外装部材40に加重をかけながら、その外装部材40を加熱することにより、セパレータ35を正極33に密着させると共に、セパレータ35を負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物層に含浸すると共に、その高分子化合物層がゲル化するため、電解質層36が形成される。
【0241】
この第3手順では、第1手順と比較して、二次電池が膨れにくくなる。また、第3手順では、第2手順と比較して、溶媒およびモノマー(高分子化合物の原料)などが電解質層36中に残存しにくくなるため、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35のそれぞれが電解質層36に対して十分に密着する。
【0242】
[作用および効果]
この二次電池によれば、負極34が上記した本技術の二次電池用負極と同様の構成を有しているので、充放電を繰り返しても、二次電池が膨れにくくなると共に、放電容量が低下しにくくなる。よって、二次電池の電池特性を向上させることができる。
【0243】
これ以外の作用および効果は、本技術の負極に関する作用および効果と同様である。
【0244】
<3.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例に関して説明する。
【0245】
二次電池の用途は、その二次電池を駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして利用可能である機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、例えば、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、必要に応じて主電源から切り替えられる電源でもよい。二次電池を補助電源として用いる場合には、主電源の種類は二次電池に限られない。
【0246】
二次電池の用途は、例えば、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、二次電池の用途は、上記以外の用途でもよい。
【0247】
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器などに適用されることが有効である。これらの用途では優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることにより、有効に性能向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源である。この電池パックは、後述するように、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されているため、その電力を利用して家庭用の電気製品などを使用することが可能である。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
【0248】
ここで、二次電池のいくつかの適用例に関して具体的に説明する。なお、以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、その適用例の構成は、適宜変更可能である。
【0249】
<3−1.電池パック(単電池)>
図10は、単電池を用いた電池パックの斜視構成を表しており、
図11は、
図10に示した電池パックのブロック構成を表している。なお、
図10では、電池パックが分解された状態を示している。
【0250】
ここで説明する電池パックは、1つの本技術の二次電池を用いた簡易型の電池パック(いわゆるソフトパック)であり、例えば、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。この電池パックは、例えば、
図10に示したように、ラミネートフィルム型の二次電池である電源111と、その電源111に接続される回路基板116とを備えている。この電源111には、正極リード112および負極リード113が取り付けられている。
【0251】
電源111の両側面には、一対の粘着テープ118,119が貼り付けられている。回路基板116には、保護回路(PCM:Protection・Circuit・Module )が形成されている。この回路基板116は、タブ114を介して正極112に接続されていると共に、タブ115を介して負極リード113に接続されている。また、回路基板116は、外部接続用のコネクタ付きリード線117に接続されている。なお、回路基板116が電源111に接続された状態において、その回路基板116は、ラベル120および絶縁シート121により保護されている。このラベル120が貼り付けられることにより、回路基板116および絶縁シート121などは固定されている。
【0252】
また、電池パックは、例えば、
図11に示しているように、電源111と、回路基板116とを備えている。回路基板116は、例えば、制御部121と、スイッチ部122と、PTC素子123と、温度検出部124とを備えている。電源111は、正極端子125および負極端子127を介して外部と接続されることが可能であるため、その電源111は、正極端子125および負極端子127を介して充放電される。温度検出部124は、温度検出端子(いわゆるT端子)126を用いて温度を検出する。
【0253】
制御部121は、電池パック全体の動作(電源111の使用状態を含む)を制御する。この制御部121は、例えば、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでいる。
【0254】
この制御部121は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断させることにより、電源111の電流経路に充電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、充電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断させることにより、充電電流を遮断する。
【0255】
一方、制御部121は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断させることにより、電源111の電流経路に放電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、放電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断させることにより、放電電流を遮断する。
【0256】
なお、過充電検出電圧は、例えば、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、例えば、2.4V±0.1Vである。
【0257】
スイッチ部122は、制御部121の指示に応じて、電源111の使用状態、すなわち電源111と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ部122は、例えば、充電制御スイッチおよび放電制御スイッチなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチのそれぞれは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。なお、充放電電流は、例えば、スイッチ部122のON抵抗に基づいて検出される。
【0258】
温度検出部124は、電源111の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部121に出力する。この温度検出部124は、例えば、サーミスタなどの温度検出素子を含んでいる。なお、温度検出部124により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部121が充放電制御を行う場合、残容量の算出時において制御部121が補正処理を行う場合などに用いられる。
【0259】
なお、回路基板116は、PTC素子123を備えていなくてもよい。この場合には、別途、回路基板116にPTC素子が付設されていてもよい。
【0260】
<3−2.電池パック(組電池)>
図12は、組電池を用いた電池パックのブロック構成を表している。
【0261】
この電池パックは、例えば、筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。この筐体60は、例えば、プラスチック材料などを含んでいる。
【0262】
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御する。この制御部61は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源62は、2以上の本技術の二次電池を含む組電池であり、その2以上の二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの二次電池を含んでいる。
【0263】
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて、電源62の使用状態、すなわち電源62と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチのそれぞれは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
【0264】
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定すると共に、その電流の測定結果を制御部61に出力する。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部61に出力する。この温度の測定結果は、例えば、異常発熱時において制御部61が充放電制御を行う場合、残容量の算出時において制御部61が補正処理を行う場合などに用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定すると共に、アナログ−デジタル変換された電圧の測定結果を制御部61に供給する。
【0265】
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66のそれぞれから入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御する。
【0266】
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断することにより、電源62の電流経路に充電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電だけが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れると、充電電流を遮断する。
【0267】
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断することにより、電源62の電流経路に放電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電だけが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れると、放電電流を遮断する。
【0268】
なお、過充電検出電圧は、例えば、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、例えば、2.4V±0.1Vである。
【0269】
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどを含んでいる。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値、製造工程段階において測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)などが記憶されている。なお、メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部61が残容量などの情報を把握できる。
【0270】
温度検出素子69は、電源62の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部61に出力する。この温度検出素子69は、例えば、サーミスタなどを含んでいる。
【0271】
正極端子71および負極端子72のそれぞれは、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)、電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)などに接続される端子である。電源62は、正極端子71および負極端子72を介して充放電される。
【0272】
<3−3.電動車両>
図13は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。
【0273】
この電動車両は、例えば、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および前輪86と、後輪用駆動軸87および後輪88とを備えている。
【0274】
この電動車両は、例えば、エンジン75およびモータ77のうちのいずれか一方を駆動源として用いて走行することが可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合には、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して、エンジン75の駆動力(回転力)が前輪86および後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力が発電機79に伝達されるため、その回転力を利用して発電機79が交流電力を発生すると共に、その交流電力がインバータ83を介して直流電力に変換されるため、その直流電力が電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合には、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換されるため、その交流電力を利用してモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86および後輪88に伝達される。
【0275】
なお、制動機構を介して電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達されるため、その回転力を利用してモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換されるため、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
【0276】
制御部74は、電動車両全体の動作を制御する。この制御部74は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1または2以上の本技術の二次電池を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続されていると共に、その外部電源から電力供給を受けることにより、電力を蓄積させてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御すると共に、スロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサおよびエンジン回転数センサなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0277】
なお、電動車両がハイブリッド自動車である場合を例に挙げたが、その電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
【0278】
<3−4.電力貯蔵システム>
図14は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。
【0279】
この電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅および商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
【0280】
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続されることが可能である。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続されることが可能である。
【0281】
なお、電気機器94は、例えば、1または2以上の家電製品を含んでおり、その家電製品は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビおよび給湯器などである。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機および風力発電機などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクおよびハイブリッド自動車などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所および風力発電所などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0282】
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御する。この制御部90は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1または2以上の本技術の二次電池を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信することが可能である。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、外部と通信しながら、家屋89における電力の需要と供給とのバランスを制御することにより、高効率で安定したエネルギー供給を可能とする。
【0283】
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部90の指示に応じて電気機器94および電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、その電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
【0284】
電源91に蓄積された電力は、必要に応じて使用することが可能である。このため、例えば、電気使用料が安い深夜において、集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、電気使用料が高い日中において、その電源91に蓄積された電力を用いることができる。
【0285】
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
【0286】
<3−5.電動工具>
図15は、電動工具のブロック構成を表している。
【0287】
ここで説明する電動工具は、例えば、電動ドリルである。この電動工具は、例えば、工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
【0288】
工具本体98は、例えば、プラスチック材料などを含んでいる。制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御する。この制御部99は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2以上の本技術の二次電池を含んでいる。この制御部99は、動作スイッチの操作に応じて、電源100からドリル部101に電力を供給する。
【実施例】
【0289】
本技術の実施例に関して説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池の作製および評価(導電性物質:炭素材料)
2.二次電池の作製および評価(導電性物質:金属材料)
【0290】
<1.二次電池の作製および評価(導電性物質:炭素材料)>
(実験例1−1〜1−38)
[二次電池の作製]
以下の手順により、導電性物質として炭素材料を用いて、
図8および
図9に示したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0291】
(正極の作製)
正極33を作製する場合には、最初に、正極活物質(コバルト酸リチウム)95質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(アモルファス性炭素粉であるケッチェンブラック)2質量部とを混合することにより、正極合剤とした。続いて、有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体33A(10μm厚のアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを温風乾燥させることにより、正極活物質層33Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層33Bを圧縮成型したのち、その正極活物質層33Bが形成された正極集電体33Aを帯状(幅=70mm,長さ=800mm)となるように切断した。
【0292】
(負極の作製)
負極34を作製する場合には、最初に、中心部201(ケイ素系材料)と、塩化合物の水溶液(ポリアクリル酸塩の水溶液およびカルボキシメチルセルロース塩の水溶液)と、導電性物質(炭素材料)と、水性溶媒(純水)とを混合したのち、その混合物を撹拌した。これにより、中心部201、塩化合物および導電性物質を含む水性分散液が得られた。
【0293】
ケイ素系材料として、ケイ素の単体(Si:メジアン径D50=3μm)およびケイ素の合金(SiTi
0.01:メジアン径D50=3μm)を用いた。ポリアクリル酸塩として、ポリアクリル酸リチウム(LPA)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)およびポリアクリル酸カリウム(KPA)を用いた。カルボキシメチルセルロース塩として、カルボキシメチルセルロースリチウム(CMCL)を用いた。導電性物質(炭素材料)として、カーボンナノチューブ(CNT1,昭和電工株式会社製のVGCF−H,平均チューブ径=約150nm)、カーボンナノチューブ(CNT2,ShenZhen SUSN Sinotech New Materials Co.,Ltd.製のCNTs10,平均チューブ径=約10nm)、カーボンナノファイバー(CNF,Cnano Technology社製のLB200,平均ファイバー径=約10nm〜15nm)、カーボンブラック(CB,ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製のEC300J)、アセチレンブラック(AB,デンカ株式会社製のHS−100)およびシングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT,OCSiAl社製のTUBALL(登録商標),平均チューブ径=約1nm〜2nm)を用いた。すなわち、繊維状炭素材料として、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびシングルウォールカーボンナノチューブを用いた。
【0294】
なお、水性分散液を調製する場合には、比較のために、塩化合物の水溶液および導電性物質を用いなかった。また、比較のために、塩化合物の水溶液の代わりに、非塩化合物の水溶液を用いた。非塩化合物として、ポリアクリル酸(PA)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。
【0295】
水性分散液の組成、すなわち水性分散液を調製するために用いた一連の材料の混合比(重量%)と、割合W1,W2(重量%)と、割合比W1/W2とは、表1および表2に示した通りである。水性分散液を調製する場合には、塩化合物の水溶液の混合比および導電性物質の混合比などを変更することにより、割合W1,W2および割合比W1/W2のそれぞれを調整した。ただし、表1および表2では、一部の実験例に関する割合比W1/W2だけを示している。
【0296】
【表1】
【0297】
【表2】
【0298】
続いて、スプレードライ装置(藤崎電気株式会社製)を用いて水性分散液を噴霧したのち、その水性分散液を乾燥させた。これにより、塩化合物および導電性物質を含む被覆部202が中心部201の表面を被覆するように形成されため、その中心部201および被覆部202を含む第1負極活物質200が得られた。また、第1負極活物質200の形成方法としてスプレードライ法を用いたことに起因して、複数の第1負極活物質200が互いに密着したため、複合粒子200Cが形成された。
【0299】
ここで、塩化合物を用いて複合粒子200Cを形成した場合において、透過型電子顕微鏡を用いて複合粒子200Cを観察した。この結果、導電性物質として平均繊維径が小さい繊維状炭素材料(CNT2,CNF,SWCNT)を用いた場合には、
図4に示した3次元網目構造が観察された。これに対して、導電性物質として平均繊維径が大きい繊維状炭素材料(CNT1)を用いた場合には、上記した3次元網目構造が観察されなかった。すなわち、導電性物質として平均繊維径が適正な範囲内である繊維状炭素材料を用いると、繊維部204および保護部205を含む接続部203を利用して複数の第1負極活物質200同士が互いに接続されることにより、3次元網目構造が形成されていた。断面積比S2/S1は、表1および表2に示した通りである。複合粒子200C(3次元網目構造)を形成する場合には、割合比W1/W2などを調整した場合と同様の方法により、断面積比S2/S1を調整した。ただし、表1および表2では、一部の実験例に関する断面積比S2/S1だけを示している。
【0300】
続いて、上記した第1負極活物質200と、第2負極活物質300(炭素系材料であるメソカーボンマイクロビーズ(MCMB),メジアン径D50=21μm)と、負極結着剤と、負極導電剤(繊維状カーボン)と、非水性溶媒(N−メチル−2−ピロリドン)とを混合したのち、自転公転ミキサを用いて混合物を混練および撹拌した。これにより、第1負極活物質200、第2負極活物質300、負極結着剤および負極導電剤を含む非水性分散液が得られた。
【0301】
負極結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)およびアラミド(AR)を用いた。
【0302】
非水性分散液の組成、すなわち非水性分散液を調製するために用いた一連の材料の混合比(重量%)は、表3〜表5に示した通りである。負極導電剤の混合比は、1重量%とした。
【0303】
【表3】
【0304】
【表4】
【0305】
【表5】
【0306】
続いて、コーティング装置を用いて負極集電体34A(8μm厚の銅箔)の両面に非水性分散液を塗布したのち、その非水性分散液を温風乾燥させることにより、負極活物質層34Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層34Bを圧縮成型したのち、その負極活物質層34Bが形成された負極集電体34Aを帯状(幅=72mm,長さ=810mm)となるように切断した。
【0307】
(電解液の調製)
電解液を調製する場合には、溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸エチルメチル)に電解質塩(LiPF
6 )を加えることにより、その溶媒を撹拌した。この場合には、溶媒の混合比(重量比)を炭酸エチレン:炭酸エチルメチル=50:50とした。電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/dm
3 (=1mol/l)とした。
【0308】
(二次電池の組み立て)
二次電池を組み立てる場合には、最初に、正極集電体33Aにアルミニウム製の正極リード31を溶接すると共に、負極集電体34Aに銅製の負極リード32を溶接した。続いて、セパレータ35(25μm厚の微多孔性ポリエチレンフィルム)を介して正極33と負極34とを積層させることにより、積層体を得た。続いて、積層体を長手方向に巻回させたのち、その積層体の最外周部に保護テープ37を貼り付けることにより、巻回電極体30を作製した。続いて、巻回電極体30を挟むように外装部材40を折り畳んだのち、その外装部材40のうちの3辺の外周縁部同士を熱融着した。外装部材40として、25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとが外側からこの順に積層されたアルミラミネートフィルムを用いた。この場合には、正極リード31と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入すると共に、負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入した。最後に、外装部材40の内部に電解液を注入することにより、その電解液を巻回電極体30に含浸させたのち、減圧環境中において外装部材40の残りの1辺の外周縁部同士を熱融着した。
【0309】
これにより、外装部材40の内部に巻回電極体30が封入されたため、ラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池が完成した。
【0310】
[二次電池の設計]
二次電池を作製する場合には、容量比が0.9となるように、正極活物質層33Bの厚さおよび負極活物質層34Bの厚さのそれぞれを調整した。容量比の算出手順は、以下の通りである。
【0311】
図16は、試験用の二次電池(コイン型)の断面構成を表している。この二次電池では、外装カップ54の内部に試験極51が収容されていると共に、外装缶52の内部に対極53が収容されている。試験極51および対極53は、セパレータ55を介して積層されていると共に、外装缶52および外装カップ54は、ガスケット56を介してかしめられている。電解液は、試験極51、対極53およびセパレータ55のそれぞれに含浸されている。
【0312】
容量比を設計する場合には、最初に、正極集電体の片面に正極活物質層が形成された試験極51を作製した。続いて、試験極51と共に、対極53としてリチウム金属を用いて、
図16に示したコイン型の二次電池を作製した。正極集電体、正極活物質層およびセパレータ55のそれぞれの構成は、上記したラミネートフィルム型の二次電池に用いられた正極集電体33A、正極活物質層33Bおよびセパレータ35のそれぞれの構成と同様にした。また、電解液の組成は、上記したラミネートフィルム型の二次電池に用いられた電解液の組成と同様にした。続いて、二次電池を充電させることにより、電気容量を測定したのち、正極活物質層の厚さ当たりの充電容量(正極の充電容量)を算出した。充電時には、0.1Cの電流で電圧が4.4Vに到達するまで定電流充電した。
【0313】
続いて、同様の手順により、負極の充電容量を算出した。すなわち、負極集電体の片面に負極活物質層が形成された試験極51を作製すると共に、その試験極51および対極53(リチウム金属)を用いてコイン型の二次電池を作製したのち、その二次電池を充電させることにより、電気容量を測定した。こののち、負極活物質層の厚さ当たりの充電容量(負極の充電容量)を算出した。充電時には、0.1Cの電流で電圧が0Vに到達するまで定電流充電したのち、0Vの電圧で電流が0.01Cに到達するまで定電圧充電した。
【0314】
「0.1C」とは、電池容量(理論容量)を10時間で放電しきる電流値である。「0.01C」とは電池容量を100時間で放電しきる電流値である。
【0315】
最後に、正極の充電容量および負極の充電容量に基づいて、容量比=正極の充電容量/負極の充電容量を算出した。
【0316】
[電池特性の評価]
二次電池の電池特性としてサイクル特性、負荷特性および初回容量特性を調べたところ、表3〜表5に示した結果が得られた。
【0317】
サイクル特性を調べる場合には、最初に、電池状態を安定化させるために、常温環境中(23℃)において二次電池を1サイクル充放電させた。続いて、同環境中において二次電池を再び1サイクル充放電させることにより、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、同環境中においてサイクル数の合計が100サイクルになるまで二次電池を繰り返して充放電させることにより、100サイクル目の放電容量を測定した。最後に、サイクル維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。
【0318】
1サイクル目の充電時には、0.2Cの電流で電圧が4.35Vに到達するまで充電したのち、さらに4.35Vの電圧で電流が0.025Cに到達するまで充電した。1サイクル目の放電時には、0.2Cの電流で電圧が3Vに到達するまで放電した。
【0319】
2サイクル目以降の充電時には、0.5Cの電流で電圧が4.35Vに到達するまで充電したのち、さらに4.35Vの電圧で電流が0.025Cに到達するまで充電した。2サイクル目以降の放電時には、0.5Cの電流で電圧が3Vに到達するまで放電した。
【0320】
「0.2C」とは、電池容量(理論容量)を5時間で放電しきる電流値である。「0.025C」とは電池容量を40時間で放電しきる電流値である。「0.5C」とは、電池容量を2時間で放電しきる電流値である。
【0321】
なお、表3〜表5では、実験例1−1〜1−30,1−32〜1−38におけるサイクル維持率の値として、実験例1−31におけるサイクル維持率の値を100として規格化した値を示している。
【0322】
負荷特性を調べる場合には、サイクル特性を調べた場合と同様の手順により電池状態が安定化された二次電池(1サイクル充放電済み)を用いて、常温環境中(23℃)において放電時の電流を変更しながら二次電池をさらに3サイクル充放電させることにより、2サイクル目および4サイクル目のそれぞれにおいて放電容量を測定した。この測定結果から、負荷維持率(%)=(4サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。
【0323】
2サイクル目〜4サイクル目のそれぞれの充電時には、0.2Cの電流で電圧が4.35Vに到達するまで充電したのち、さらに4.35Vの電圧で電流が0.025Cに到達するまで充電した。2サイクル目の放電時には、0.2Cの電流で電圧が3Vに到達するまで放電した。3サイクル目の放電時には、0.5Cの電流で電圧が3Vに到達するまで放電した。4サイクル目の放電時には、2Cの電流で電圧が3Vに到達するまで放電した。「2C」とは、電池容量を0.5時間で放電しきる電流値である。
【0324】
なお、表3〜表5では、実験例1−1〜1−30,1−32〜1−38における負荷維持率の値として、実験例1−31における負荷維持率の値を100として規格化した値を示している。
【0325】
初回容量特性を調べる場合には、試験極51として負極34を用いて、上記したコイン型の二次電池を作製したのち、その二次電池を充放電させることにより、初回容量を測定した。試験極51の構成以外の二次電池の構成は、上記した通りである。コイン型の二次電池の充電条件は、上記した通りである。放電時には、0.1Cの電流で電圧が1.5Vに到達するまで放電した。
【0326】
なお、表3〜表5では、実験例1−1〜1−30,1−32〜1−38における初回容量の値として、実験例1−31における初回容量の値を100として規格化した値を示している。
【0327】
[評価結果の考察]
表3〜表5に示したように、サイクル維持率、負荷維持率および初回容量のそれぞれは、負極34の構成に応じて大きく変動した。
【0328】
具体的には、中心部201の表面に被覆部202が設けられていても、その被覆部202が非塩化合物と共に導電性物質を含んでいる場合(実験例1−32,1−33)には、その被覆部202が設けられていない場合(実験例1−31)と比較して、サイクル維持率、負荷維持率および初回容量のそれぞれが減少した。
【0329】
これに対して、中心部201の表面に被覆部202が設けられており、その被覆部202が塩化合物と共に導電性物質を含んでいる場合(実験例1−1〜1−30,1−34〜1−38)には、その被覆部202が設けられていない場合(実験例1−31)と比較して、初回容量が減少することを最小限に抑えながら、サイクル維持率および負荷維持率のそれぞれが増加した。この結果は、ケイ素系材料の種類、塩化合物の種類、導電性物質の種類および負極結着剤の種類に依存せずに、同様に得られた。
【0330】
被覆部202が塩化合物と共に導電性物質を含んでいる場合には、特に、以下の傾向が得られた。
【0331】
第1に、割合W1が0.1重量%以上20重量%未満であると、高いサイクル維持率を維持しながら、負荷維持率および初回容量のそれぞれがより増加した。
【0332】
第2に、導電性物質(炭素材料)としてカーボンナノチューブなどを用いた場合には、割合W2が0.1重量%以上15重量%未満であると、高いサイクル維持率および高い負荷維持率を維持しながら、初回容量がより増加した。
【0333】
第3に、導電性物質(炭素材料)としてシングルウォールカーボンナノチューブを用いた場合には、割合W2が0.001重量%以上1重量%未満であると、高いサイクル維持率および高い負荷維持率を維持しながら、初回容量がより増加した。
【0334】
第4に、導電性物質(炭素材料)として、平均繊維径が0.1nm〜50nmである繊維状炭素材料(シングルウォールカーボンナノチューブなど)を用いることにより、複数の第1負極活物質200同士が複数の接続部203を介して互いに接続されたため、3次元網目構造を有する複合粒子200Cが形成された。
【0335】
第5に、3次元網目構造が形成された場合には、割合比W1/W2がW1/W2≦200を満たしていると共に、断面積比S2/S1がS2/S1≧0.5を満たしていると、高い初回容量を維持しながら、サイクル維持率および負荷維持率のそれぞれがより増加した。
【0336】
これらの結果が得られた理由は、以下の通りであると考えられる。
【0337】
非塩化合物と共に導電性物質(炭素材料)を含む被覆部202が中心部201の表面に設けられていると、その被覆部202は、保護膜兼結着剤として機能する。これにより、中心部201の表面は、被覆部202により電解液から保護されると共に、中心部201同士は、被覆部202を介して結着される。また、導電性物質である炭素材料を含んでいることに起因して被覆部202の電気抵抗が低下するため、第1負極活物質200の電気抵抗が増加しにくくなる。よって、充放電を繰り返しても、中心部201の表面の反応性に起因する電解液の分解反応が抑制されると共に、その中心部201の膨張収縮に起因する負極活物質層34Bの崩落が抑制される。
【0338】
しかしながら、非塩化合物は弱酸性を示すため、その非塩化合物中において高分子鎖が凝集しやすくなる。この場合には、非塩化合物により中心部201の表面が十分に被覆されにくいため、その中心部201の表面において電解液が分解しやすくなる。よって、サイクル維持率および負荷維持率がいずれも減少してしまう。この他、弱酸性である非塩化合物は、二次電池を製造するために用いられる装置などを腐食してしまう。また、非塩化合物は、二次電池の製造工程において生じる熱に起因して過度に膨潤するため、著しく劣化してしまう。
【0339】
これに対して、塩化合物は、上記した非塩化合物とは異なり、酸性を示さないため、その塩化合物中において高分子鎖が凝集しにくくなる。この場合には、塩化合物により中心部201の表面が被覆されやすいため、その中心部201の表面において電解液が分解しにくくなる。よって、サイクル維持率および負荷維持率がいずれも増加する。もちろん、この場合には、装置が腐食しにくくなると共に、塩化合物の著しい劣化も防止される。しかも、塩化合物の被膜中に導電性物質が含まれているため、充放電を繰り返しても放電容量が低下しにくくなる。
【0340】
特に、塩化合物を用いた場合において3次元網目構造が形成されると、複数の第1負極活物質200同士が互いに強固に結合されると共に、その複数の第1負極活物質200の間において導電性が向上する。よって、サイクル維持率および負荷維持率のそれぞれが十分に増加する。
【0341】
<2.二次電池の作製および評価(導電性物質:金属材料)>
(実験例2−1〜2−55)
表6〜表12に示したように、導電性物質として炭素材料の代わりに金属材料を用いたことを除いて同様の手順により、二次電池を作製したのち、その二次電池の電池特性(サイクル特性、負荷特性および初回容量特性)を調べた。
【0342】
金属材料として、スズ(Sn,SIGMA−ALDRICH社製,メジアン径D50=150nm)、アルミニウム(Al,株式会社高純度化学研究所製,メジアン径D50=150nm)、ゲルマニウム(Ge,SIGMA−ALDRICH社製,メジアン径D50=150nm)、銅(Cu,株式会社高純度化学研究所製,メジアン径D50=150nm)およびニッケル(Ni,株式会社高純度化学研究所製,メジアン径D50=150nm)のそれぞれの粉末を用いた。なお、金属材料を用いる場合には、その金属材料を適宜粉砕することにより、メジアン系D50が上記した値となるように調整した。
【0343】
導電性物質として金属材料を用いて調製された水性分散液の組成、すなわち水性分散液を調製するために用いた一連の材料の混合比(重量%)と、割合W1,W3とは、表6および表7に示した通りである。水性分散液を調製する場合には、塩化合物の水溶液の混合比および導電性物質の混合比などを変更することにより、割合W1,W3のそれぞれを調整した。
【0344】
【表6】
【0345】
【表7】
【0346】
導電性物質として金属材料を用いて調製された非水性分散液の組成、すなわち非水性分散液を調製するために用いた一連の材料の混合比(重量%)は、表8〜表12に示した通りである。
【0347】
【表8】
【0348】
【表9】
【0349】
【表10】
【0350】
【表11】
【0351】
【表12】
【0352】
なお、表8〜表12では、実験例2−1〜2−55におけるサイクル維持率、負荷維持率および初回容量のそれぞれの値として、実験例1−31におけるサイクル維持率、負荷維持率および初回容量のそれぞれの値を100として規格化した値を示している。
【0353】
表8〜表12に示したように、導電性物質として金属材料を用いた場合においても、導電性物質として炭素材料を用いた場合(表3〜表5)と同様の結果が得られた。
【0354】
すなわち、中心部201の表面に被覆部202が設けられていても、その被覆部202が非塩化合物と共に導電性物質を含んでいる場合(実験例2−49,2−50)には、その被覆部202が設けられていない場合(実験例1−31)と比較して、サイクル維持率、負荷維持率および初回容量のそれぞれが減少した。
【0355】
これに対して、中心部201の表面に被覆部202が設けられており、その被覆部202が塩化合物と共に導電性物質を含んでいる場合(実験例2−1〜2−48,2−51〜2−55)には、その被覆部202が設けられていない場合(実験例1−31)と比較して、初回容量が減少することを最小限に抑えながら、サイクル維持率および負荷維持率のそれぞれが増加した。
【0356】
被覆部202が塩化合物と共に導電性物質を含んでいる場合には、特に、割合W1が0.1重量%20重量%未満であると、高いサイクル維持率を維持しながら、負荷維持率および初回容量のそれぞれがより増加した。また、割合W3が0.1重量%〜10重量%であると、高いサイクル維持率、高い負荷維持率および高い初回容量が得られた。
【0357】
これらの結果が得られた理由は、塩化合物と共に導電性物質(金属材料)を含む被覆部202も、上記した塩化合物と共に導電性物質(炭素材料)を含む被覆部202と同様の機能を発揮するからであると考えられる。
【0358】
表1〜表12に示したように、負極が第1負極活物質(ケイ素系材料を含む中心部、ならびに塩化合物および導電性物質を含む被覆部)、第2負極活物質(炭素系材料)および負極結着剤(ポリフッ化ビニリデンなど)を含んでいると、サイクル特性、負荷特性および初回容量特性のそれぞれが改善された。よって、二次電池において優れた電池特性が得られた。
【0359】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術を説明したが、本技術は一実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
【0360】
例えば、本技術の二次電池の構成を説明するために、電池構造が円筒型、ラミネートフィルム型およびコイン型であると共に、電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げた。しかしながら、本技術の二次電池は、角型およびボタン型などの他の電池構造を有する場合に適用可能であると共に、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合にも適用可能である。
【0361】
また、例えば、本技術の一実施形態の二次電池用電解液は、二次電池に限定されず、他の電気化学デバイスに適用されてもよい。他の電気化学デバイスは、例えば、キャパシタなどである。
【0362】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0363】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
正極および負極と共に電解液を備え、
前記負極は、第1負極活物質と、第2負極活物質と、負極結着剤とを含み、
前記第1負極活物質は、ケイ素(Si)を構成元素として含む材料を含有する中心部と、その中心部の表面に設けられると共に塩化合物および導電性物質を含有する被覆部とを含み、
前記塩化合物は、ポリアクリル酸塩およびカルボキシメチルセルロース塩のうちの少なくとも一方を含有し、
前記導電性物質は、炭素材料および金属材料のうちの少なくとも一方を含有し、
前記第2負極活物質は、炭素(C)を構成元素として含む材料を含有し、
前記負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドおよびアラミドのうちの少なくとも1種を含有する、
二次電池。
(2)
前記負極は、複数の前記第1負極活物質を含むと共に、その複数の第1負極活物質が互いに密着し合うことにより形成された複合粒子を含む、
上記(1)に記載の二次電池。
(3)
前記複合粒子の比表面積は、0.1m
2 /g以上10m
2 /g以下である、
上記(2)に記載の二次電池。
(4)
前記ポリアクリル酸塩は、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリアクリル酸カリウムのうちの少なくとも1種を含み、
前記カルボキシメチルセルロース塩は、カルボキシメチルセルロースリチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカリウムのうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池。
(5)
前記中心部の重量に対して、前記被覆部に含まれている前記塩化合物の重量が占める割合W1は、0.1重量%以上20重量%未満である、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の二次電池。
(6)
前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンブラックおよびアセチレンブラックのうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
(7)
前記カーボンナノチューブの平均チューブ径は、1nm以上300nm以下である、
上記(6)に記載の二次電池。
(8)
前記中心部の重量に対して、前記被覆部に前記導電性物質として含まれている前記炭素材料の重量が占める割合W2は、0.1重量%以上15重量%未満である、
上記(6)または(7)に記載の二次電池。
(9)
前記炭素材料は、シングルウォールカーボンナノチューブを含む、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
(10)
前記シングルウォールカーボンナノチューブの平均チューブ径は、0.1nm以上5nm以下である、
上記(9)に記載の二次電池。
(11)
前記中心部の重量に対して、前記被覆部に前記導電性物質として含まれている前記炭素材料の重量が占める割合W2は、0.001重量%以上1重量%未満である、
上記(9)または(10)に記載の二次電池。
(12)
前記炭素材料は、繊維状炭素材料を含み、
前記繊維状炭素材料の平均繊維径は、0.1nm以上50nm以下であり、
前記負極は、複数の前記第1負極活物質を含み、
前記複数の第1負極活物質は、その複数の第1負極活物質の間において延在する複数の接続部を介して互いに接続されることにより、3次元網目構造を形成しており、
前記複数の接続部のそれぞれは、前記複数の第1負極活物質の間において延在すると共に前記繊維状炭素材料を含有する繊維部と、前記繊維部の表面に設けられると共に前記塩化合物を含有する保護部とを含む、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
(13)
前記繊維状炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびシングルウォールカーボンナノチューブのうちの少なくとも1種を含む、
上記(12)に記載の二次電池。
(14)
前記中心部の重量に対して、前記被覆部に含まれている前記塩化合物の重量が占める割合W1と、前記中心部の重量に対して、前記被覆部に前記導電性物質として含まれている前記繊維状炭素材料の重量が占める割合W2とは、W1/W2≦200を満たすと共に、
前記接続部の延在方向における前記接続部の断面積S1と、前記接続部の延在方向における前記保護部の断面積S2とは、S2/S1≧0.5を満たす、
上記(12)または(13)に記載の二次電池。
(15)
前記金属材料は、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)およびニッケル(Ni)のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
(16)
前記中心部の重量に対して、前記被覆部に前記導電性物質として含まれている前記金属材料の重量が占める割合W3は、0.1重量%以上10重量%以下である、
上記(15)に記載の二次電池。
(17)
リチウムイオン二次電池である、
上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の二次電池。
(18)
第1負極活物質と、第2負極活物質と、負極結着剤とを含み、
前記第1負極活物質は、ケイ素を構成元素として含む材料を含有する中心部と、その中心部の表面に設けられると共に塩化合物および導電性物質を含有する被覆部とを含み、
前記塩化合物は、ポリアクリル酸塩およびカルボキシメチルセルロース塩のうちの少なくとも一方を含有し、
前記導電性物質は、炭素材料および金属材料のうちの少なくとも一方を含有し、
前記第2負極活物質は、炭素を構成元素として含む材料を含有し、
前記負極結着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドおよびアラミドのうちの少なくとも1種を含有する、
二次電池用負極。
(19)
上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と、
前記制御部の指示に応じて前記二次電池の動作を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(20)
上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
前記駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(21)
上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(22)
上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(23)
上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。
【0364】
本出願は、日本国特許庁において2017年2月9日に出願された日本特許出願番号第2017−021883号、2017年6月8日に出願された日本特許出願番号第2017−113451号および2017年8月29日に出願された日本特許出願番号第2017−164381号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0365】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲の趣旨やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。