(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
各図を参照して本発明の実施形態に係る電力変換装置について説明する。本明細書における上下左右の用語は、回路図における方向を示すものであり、電力変換装置を実装する際の姿勢を限定するものではない。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0015】
図1には、一般的なDC/DCコンバータ1が示されている。DC/DCコンバータ1は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、インダクタL0、入力コンデンサCi、出力コンデンサCo、第1両極端子11、第2両極端子12、正極端子21および負極端子22を備えている。第2両極端子12と正極端子21との間には、直列接続された第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2が接続されている。各スイッチング素子がMOSFETで構成される場合、第1スイッチング素子S1のドレイン端子が、第2スイッチング素子S2のソース端子に接続される。第1スイッチング素子S1の端子間には、ソース端子側にアノード端子を向けてダイオードD1が接続されている。同様に、第2スイッチング素子S2の端子間には、ソース端子側にアノード端子を向けてダイオードD2が接続されている。ダイオードD1およびD2は、それぞれ、第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2に付随する寄生ダイオードであってよい。第1スイッチング素子S1のソース端子は第2両極端子12に接続され、第2スイッチング素子S2のドレイン端子は正極端子21に接続されている。第1両極端子11および第2両極端子12の間には入力コンデンサCiが接続され、正極端子21および負極端子22の間には出力コンデンサCoが接続されている。第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2との接続点には、インダクタL0の一端が接続されている。インダクタL0の他端は、第1両極端子11および負極端子22に接続されている。インダクタL0は巻線によって形成されてよい。以下のインダクタについても同様である。
【0016】
第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2は交互にオンオフされる。第1スイッチング素子S1がオン、第2スイッチング素子S2がオフの間は、第1両極端子11からインダクタL0、第1スイッチング素子S1を通って第2両極端子12に至る電流が流れる。この状態で第1スイッチング素子S1がオフ、第2スイッチング素子S2がオンになると、インダクタL0に誘導起電力が発生し、この誘導起電力が、第2スイッチング素子S2またはダイオードD2を介して出力コンデンサCoに印加される。さらに、出力コンデンサCoの端子間電圧は、正極端子21および負極端子22から出力電圧Voとして出力される。
【0017】
入力電圧Viに対する出力電圧Voの比率Br0(昇圧比Br0)は、次のように表される。出力電圧Voは、負極端子22の電位を基準とした正極端子21の電圧である。入力電圧Viは、第2両極端子12の電位を基準とした第1両極端子11の電圧である。
【0018】
(数1)Br0=Vo/Vi=(1−D)/D
ただし、Dは、第2スイッチング素子S2のスイッチング周期に対する、第2スイッチング素子S2がオンになる時間の割合(スイッチング素子S2のオン時比率D)である。この式は、第1スイッチング素子S1がオンになることでインダクタL0に印加される電圧の時間平均値(1−D)・Viと、第2スイッチング素子S2がオンになることでインダクタL0に印加される電圧の時間平均値D・Voとが等しくなるという関係に基づいて導かれる。
【0019】
図1に示されたDC/DCコンバータ1では、次のような問題がある。第1両極端子11側を負とする電圧が第1両極端子11および第2両極端子12に印加された場合、DC/DCコンバータ1の状態は、ダイオードD1に順方向の電流が流れる状態に収束する。このとき、インダクタL0に流れる電流を第1スイッチング素子S1によって遮断できず、インダクタL0に誘導起電力を発生させることができない。これによって、第1両極端子11および第2両極端子12から、正極端子21および負極端子22への電力伝送が困難となる。すなわち、
図1に示されたDC/DCコンバータ1は、第1両極端子11および第2両極端子12に、第1両極端子11側を正とする電圧が印加された場合に限って、第1両極端子11および第2両極端子12から、正極端子21および負極端子22へ電力が伝送される。
【0020】
図2には、本発明の実施形態に係る正負両極型コンバータ30が示されている。正負両極型コンバータ30は、第1両極端子11および第2両極端子12に印加される電圧の極性に関わらず電力伝送を可能としたものである。正負両極型コンバータ30は、
図1に示されているDC/DCコンバータ1に対し、第1スイッチング素子S1からインダクタL0(パラレルインダクタLp)に至る経路にタンクコンデンサCtを挿入し、第1スイッチング素子S1およびタンクコンデンサCtの接続点と、正極端子21との間にもう一つのインダクタとしてシリーズインダクタLsを設けたものである。
【0021】
正負両極型コンバータ30は、第1スイッチング素子S1、タンクコンデンサCt、パラレルインダクタLp、シリーズインダクタLs、第2スイッチング素子S2、入力コンデンサCi、出力コンデンサCo、第1両極端子11、第2両極端子12、正極端子21および負極端子22を備えている。
【0022】
第2両極端子12と正極端子21との間には、直列接続された第1スイッチング素子S1およびシリーズインダクタLsが接続されている。第1スイッチング素子S1とシリーズインダクタLsとの接続点と、第1両極端子11および負極端子22を結ぶシリーズ経路導線26との間には、直列接続されたタンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpが接続されている。タンクコンデンサCtとパラレルインダクタLpの接続点と正極端子21との間には、第2スイッチング素子S2が接続されている。
【0023】
図3および
図4を参照して、正負両極型コンバータ30の動作について説明する。タンクコンデンサCtの上端と出力コンデンサCoの上端との間は、シリーズインダクタLsによって接続されている。また、タンクコンデンサCtの下端と出力コンデンサCoの下端との間は、パラレルインダクタLpによって接続されている。したがって、タンクコンデンサCtは、出力コンデンサCoに直流的に直接並列に接続されており、タンクコンデンサCtの端子間電圧の直流成分は、出力コンデンサCoの端子間電圧の直流成分に等しくなる。したがって、タンクコンデンサCtの端子間電圧の直流成分は、スイッチング素子S1およびS2の状態に関わらず、出力電圧Voの直流成分に等しい。
【0024】
第1スイッチング素子S1がオンであり、第2スイッチング素子S2がオフである間、
図3に示されているように、入力コンデンサCiの下端からパラレルインダクタLp、タンクコンデンサCtおよび第1スイッチング素子S1を経て、入力コンデンサCiの上端に至る電流ループQ1に電流が流れる。
【0025】
この状態で第1スイッチング素子S1がオフとなり、第2スイッチング素子S2がオンになると、電流ループQ1に流れる電流が遮断される。これによって、
図4に示されているようにパラレルインダクタLpに上端側を正とする誘導起電力E1が発生し、この誘導起電力E1が、第2スイッチング素子S2またはダイオードD2を介して出力コンデンサCoに印加される。コンデンサCoに流れる電流の経路は、パラレルインダクタLpの下端から出力コンデンサCoおよび第2スイッチング素子S2を通ってパラレルインダクタLpの上端に至る電流ループF1である。あるいは、コンデンサCoに流れる電流の経路は、パラレルインダクタLpの上端からダイオードD2および出力コンデンサCoを通ってパラレルインダクタLpの下端に至る電流ループF1である。出力コンデンサCoの端子間電圧Voは誘導起電力E1となり、正極端子21および負極端子22から出力される。
【0026】
また、第2スイッチング素子S2がオンである間、タンクコンデンサCtの上端からシリーズインダクタLs、第2スイッチング素子S2を経てタンクコンデンサCtの下端に至る電流ループQ2に電流が流れる。
【0027】
この状態で第2スイッチング素子S2がオフとなり、第1スイッチング素子S1がオンになると、電流ループQ2に流れる電流が遮断される。これによって、
図3に示されているようにシリーズインダクタLsには右端側を正とする誘導起電力E2が発生し、この誘導起電力E2から入力電圧Viが減算された電圧が、出力コンデンサCoに印加される。すなわち、シリーズインダクタLsの左端と入力コンデンサCiの上端が第1スイッチング素子S1によって短絡され、シリーズインダクタLsに発生した誘導起電力E2から、入力コンデンサCiの充電電圧Viが減算された電圧E2−Viが、出力コンデンサCoに印加される。出力コンデンサCoに流れる電流の経路は、シリーズインダクタLsの左端から第1スイッチング素子S1、入力コンデンサCi、出力コンデンサCoを経て、シリーズインダクタLsの右端に至る電流ループF2である。あるいは、出力コンデンサCoに流れる電流の経路は、シリーズインダクタLsの右端から出力コンデンサCo、入力コンデンサCiおよびダイオードD1を経てシリーズインダクタLsの左端に至る電流ループF2である。出力コンデンサCoの端子間電圧Voは、正極端子21および負極端子22から出力される。定常状態の動作では、誘導起電力E2は、入力電圧Viに出力電圧Voを加算した値に等しく、E2=Vo+Viが成立する。
【0028】
正負両極型コンバータ30では、第1両極端子11からパラレルインダクタLp、タンクコンデンサCt、および第1スイッチング素子S1を経て第2両極端子12に至る電流ループQ1において、タンクコンデンサCtが第1スイッチング素子S1側を正とした電圧で充電されている。したがって、第1両極端子11および第2両極端子12に印加される入力電圧Viの大きさが所定範囲内であれば、入力電圧Viの極性に関わらず、ダイオードD1に順方向電流が流れない。そのため、入力電圧Viの極性に関わらず、第1スイッチング素子S1によってパラレルインダクタLpに流れる電流がスイッチングされ得る。これによって、第1両極端子11および第2両極端子12から、正極端子21および負極端子22へ電力が伝送される。したがって、正負両極型コンバータ30は、交流成分を含む電圧を直流電圧に変換するインバータとして用いられてよい。例えば、振動発電によって得られる電圧は交流成分を含んでおり、正負両極型コンバータ30は、振動発電によって得られる電圧を直流電圧に変換するインバータとして用いられてよい。正負両極型コンバータ30についての昇圧比Brは次のように表される。
【0029】
(数2)Br=Vo/Vi=(1−D)/(2D−1)
【0030】
この式は、第1スイッチング素子S1がオンになることによってシリーズインダクタLsに印加される電圧の時間平均値(1−D)・(Vi+Vo)と、第2スイッチング素子S2がオンになることによってシリーズインダクタLsに印加される電圧の時間平均値D・Voとが等しくなるという関係に基づいて導かれる。
【0031】
図5には、DC/DCコンバータ1の昇圧比Br0と、正負両極型コンバータ30の昇圧比Brが示されている。横軸は、第2スイッチング素子S2のオン時比率Dを示し、縦軸は、昇圧比Br0およびBrの数値を示す。昇圧比Br0は、オン時比率Dが0に近い程大きく、オン時比率Dが大きくなるにつれて0に近付き、オン時比率Dが1のときに0となる。昇圧比Brは、第2両極端子12の電位を基準とした入力電圧Viが正であるときは、オン時比率Dが0.5に近い程大きく、オン時比率Dが0.5よりも大きくなるにつれて0に近付き、オン時比率Dが1のときに0となる。昇圧比Brが、0よりも大きく1よりも小さいときは、正負両極型コンバータ30は降圧コンバータとして動作する。昇圧比Brが1よりも大きいときは、正負両極型コンバータ30は昇圧コンバータとして動作する。また、昇圧比Brは、第2両極端子12の電位を基準とした入力電圧Viが負であるときは、オン時比率Dが0.5に近い程負方向に大きく、オン時比率Dが0に向けて小さくなるにつれて−1に近付く。
【0032】
一般に、スイッチング素子は、オン時比率が0.5に近い程、電力損失が小さくなる。第1スイッチング素子S1のオン時比率1−Dおよび第2スイッチング素子S2のオン時比率Dを0.5に近い値で動作させることで、正負両極型コンバータ30の電力損失が抑制される。
【0033】
図6(a)〜
図6(c)には、正負両極型コンバータ30についてのシミュレーション結果が示されている。各図の横軸は時間を示し、縦軸はシミュレーションによって得られた数値を示す。
【0034】
図6(a)には入力電圧Viが示されている。入力電圧Viは、時間経過と共に正負に変動している。
図6(b)には、入力電力Pinおよび出力電力Poutが示されている。入力電力Pinは、第1両極端子11および第2両極端子12から入力される電力をいい、出力電力Poutは、正極端子21および負極端子22から出力される電力をいう。
図6(c)には出力電圧Voが示されている。これらの図に示されているように、入力電圧Viが正負に変動しても、極性が一定の出力電力Poutおよび出力電圧Voが得られている。
【0035】
図7には、変形例に係る正負両極型コンバータ32が示されている。正負両極型コンバータ32は、正負両極型コンバータ30に対し、シリーズインダクタLsとパラレルインダクタLpとが結合する点が異なる。シリーズインダクタLsおよびパラレルインダクタLpの傍らに付された黒丸は、黒丸側の端子から流入する電流が増加したときに、黒丸が付された側の端子を正とする誘導起電力が発生することを意味している。インダクタの傍らに付された黒丸が有する意味は、以下の説明においても同様である。
【0036】
図8には、タンクコンデンサCt、シリーズインダクタLsおよびパラレルインダクタLpに対する等価回路が示されている。シリーズインダクタLsおよびパラレルインダクタLpは、それぞれ、漏れインダクタLLsおよびLLpに置き換えられている。シリーズインダクタLsおよびパラレルインダクタLpの自己インダクタンスを、それぞれ、L1およびL2とし、結合係数をkとする。このとき、漏れインダクタLLsのインダクタンスLd1はLd1=(1−k)・L1である。漏れインダクタLLpのインダクタンスLd2はLd1=(1−k)・L2である。
【0037】
この等価回路では、漏れインダクタLLsの一端と漏れインダクタLLpの一端との間にタンクコンデンサCtが接続されている。漏れインダクタLLsの他端は正極端子21に接続され、漏れインダクタLLpの他端は負極端子22に接続され、正極端子21と負極端子22との間には、出力コンデンサCoが接続されている。漏れインダクタLLs、漏れインダクタLLpおよび出力コンデンサCoは、ローパスフィルタLPFを構成する。タンクコンデンサCtから出力されるノイズ電圧およびノイズ電流は、ローパスフィルタLPFによって減衰された上で正極端子21および負極端子22から出力される。
【0038】
このように、シリーズインダクタLsおよびパラレルインダクタLpは、昇降圧インダクタとして用いられる他、出力コンデンサCoと共にローパスフィルタLPFを構成する。このローパスフィルタLPFが正負両極型コンバータ32から出力されるノイズ電圧およびノイズ電流を低減する。昇降圧インダクタをLPFを構成するインダクタとして用いているため、LPFを構成するためのインダクタが必ずしも追加される必要はない。
【0039】
漏れインダクタLLsおよびLLpは、タンクコンデンサCtおよび出力コンデンサCoに流れる電流の変化を抑制する。そのため、出力電力Poが急激に変化したときや、入力電力Piの投入時には、タンクコンデンサCtの端子間電圧と出力コンデンサCoの端子間電圧が同一になるまでの時間が長くなる場合がある。そこで、結合係数kを0より大きく1より小さい適切な値とすることで、ローパスフィルタLPFを実現すると共に、タンクコンデンサCtの端子間電圧と出力コンデンサCoの端子間電圧を迅速に同一値に収束させることができる。
【0040】
図9には、本発明の第2実施形態に係る正負両極型コンバータ34が示されている。正負両極型コンバータ30に対し、正負両極型コンバータ34は、シリーズインダクタLsの中途点Tsに正極端子21が設けられ、パラレルインダクタLpの中途点Tpに負極端子22が設けられた点が異なる。正極端子21および負極端子22との間には、出力コンデンサCoが設けられている。シリーズインダクタLsの右端とシリーズ経路導線26との間には第2タンクコンデンサCt2が設けられている。第2タンクコンデンサCt2は、正負両極型コンバータ30における出力コンデンサCoに対応する。シリーズインダクタLsのセンタータップを中途点Tsとし、パラレルインダクタLpのセンタータップを中途点Tpとすることで、中途点Tsと中途点Tpとの間の電圧に含まれる交流成分が抑制される。これによって、正極端子21および負極端子22から出力される出力電圧Voのリプル成分が抑制される。
【0041】
図10には、変形例に係る正負両極型コンバータ36が示されている。正負両極型コンバータ36は、正負両極型コンバータ34に対し、シリーズインダクタLsとパラレルインダクタLpとが結合する点が異なる。シリーズインダクタLsとパラレルインダクタLpとを結合させることで、タンクコンデンサCtおよび出力コンデンサCoの各端子間電圧が迅速に収束する。
【0042】
図11(a)〜
図11(d)には、正負両極型コンバータ36についてのシミュレーション結果が示されている。各図の横軸は時間を示し、縦軸はシミュレーションによって得られた数値を示す。
【0043】
図11(a)には、シリーズインダクタLsを構成する第1シリーズインダクタLsaおよび第2シリーズインダクタLsbの端子間電圧VsaおよびVsbと、パラレルインダクタLpを構成する第1パラレルインダクタLpaおよび第2パラレルインダクタLpbの端子間電圧VpaおよびVpbが示されている。これらの端子間電圧は同一となる。各インダクタについては、黒丸が付された側の端子から流入する電流を正とし、黒丸が付された側の端子から流入する電流が増加するときに、黒丸が付された側を正とする誘導起電力が発生する。また、各インダクタの端子間電圧は、黒丸が付されていない側の端子の電位を基準とする。各コンデンサについては、「+」の符号が付されている側に流入する電流を正とする。
【0044】
スイッチングの周期をTとすると、各端子間電圧Vsa、Vsb、VpaおよびVpbは1周期TのうちのD・Tの間はハイ電圧Hとなり、1周期Tのうち(1−D)・Tの間はロー電圧Wとなる。各端子間電圧は、ハイ電圧Hおよびロー電圧Wを繰り返す。ハイ電圧Hは入力電圧Viおよび出力電圧Voを加算した値の半分に等しく、ロー電圧Wは出力電圧Voの極性を反転した値−Voの半分に等しい。
【0045】
図11(b)には、第1シリーズインダクタLsaおよび第2シリーズインダクタLsbに流れる電流IsaおよびIsbが示されている。
図11(c)には、第1パラレルインダクタLpaおよび第2パラレルインダクタLpbに流れる電流IpaおよびIpbが示されている。各電流は、第1スイッチング素子S1がオンであり第2スイッチング素子S2がオフであるときに増加し、第1スイッチング素子S1がオフであり第2スイッチング素子S2がオンのときに減少する。
【0046】
図11(d)には、タンクコンデンサCtに流れる電流Ic1、第2タンクコンデンサCt2に流れる電流Ic2、第1両極端子11に流入する入力電流Iin、および正極端子21から流出する出力電流Ioutが示されている。ただし、電流Ic1は、タンクコンデンサCtの上端から流入する電流を正とし、電流Ic2は、第2タンクコンデンサCt2の上端から流入する電流を正とする。
【0047】
図10を参照してシミュレーション結果について説明する。第2スイッチング素子S2がオフであり、第1スイッチング素子S1がオンである間、第1両極端子11からパラレルインダクタLp、タンクコンデンサCtおよび第1スイッチング素子S1を介して第2両極端子12に至る電流Ic1が流れる。また、第1両極端子11から、第2タンクコンデンサCt2およびシリーズインダクタLsおよび第1スイッチング素子S1を流れる電流Ic2が流れる。第1シリーズインダクタLsaに流れる電流Isaから第2シリーズインダクタLsbに流れる電流Isbを減算した電流は、第1パラレルインダクタLpaに流れる電流Ipaから第2パラレルインダクタLpbに流れる電流Ipbを減算した電流に等しい。この電流は、出力コンデンサCoに流れる出力電流Ioutである。そして、電流Ic1、電流Ic2および出力電流Ioutに応じた入力電流Iinが、第1両極端子11および第2両極端子12に流れる。
【0048】
第2スイッチング素子S2がオンであり、第1スイッチング素子S1がオフである間、入力電流Iinは0である。このとき、タンクコンデンサCtの上端からシリーズインダクタLs、第2スイッチング素子S2を経てタンクコンデンサCtの下端に至る電流Ic1が流れる。また、パラレルインダクタLpの下端から第2タンクコンデンサCt2および第2スイッチング素子S2を通ってパラレルインダクタLpの上端に至る電流Ic2、あるいは、パラレルインダクタLpの上端からダイオードD2および第2タンクコンデンサCt2を通ってパラレルインダクタLpの下端に至る電流Ic2が流れる。第1シリーズインダクタLsaに流れる電流Isaから第2シリーズインダクタLsbに流れる電流Isbを減算した電流、すなわち、第1パラレルインダクタLpaに流れる電流Ipaから第2パラレルインダクタLpbに流れる電流Ipbを減算した電流が出力電流Ioutとして流れる。
【0049】
第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2のオンオフに関わらず、出力電流Ioutは一定であり、リプル成分が抑制されている。
【0050】
図12(a)〜
図12(d)には、正負両極型コンバータ501(30)に加えて、変形例に係る正負両極型コンバータ502〜504が示されている。
図12(a)に示されている正負両極型コンバータ501は、
図2に示されている正負両極型コンバータ30と同一のものである。
図12(b)に示されている正負両極型コンバータ502は、正負両極型コンバータ501において第2両極端子12とシリーズインダクタLsとの間に接続されていた第1スイッチング素子S1を、第1両極端子11とパラレルインダクタLpとの間に接続したものである。
図12(c)に示されている正負両極型コンバータ503は、
図12(b)に示されている正負両極型コンバータ502における入力電圧Viおよび出力電圧Voの極性を逆にし、さらに、第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2の極性を逆にしたものである。ここでスイッチング素子の極性を逆にするとは、Nチャネル型のMOSFETをPチャネル型のMOSFETに置き換えたり、NPN型のトランジスタをPNP型のトランジスタに置き換えたりする等、半導体のP型およびN型を逆にすることをいう。
図12(d)に示されている正負両極型コンバータ504は、
図12(c)に示されている正負両極型コンバータ503において第2両極端子12とパラレルインダクタLpとの間に接続されていた第1スイッチング素子S1を、第1両極端子11とシリーズインダクタLsとの間に接続したものである。
【0051】
図13(a)〜
図13(d)には、正負両極型コンバータ601(34)に加えて、変形例に係る正負両極型コンバータ602〜604が示されている。
図13(a)に示されている正負両極型コンバータ601は、
図9に示されている正負両極型コンバータ34と同一のものである。
図13(b)に示されている正負両極型コンバータ602は、正負両極型コンバータ601において第2両極端子12とシリーズインダクタLsとの間に接続されていた第1スイッチング素子S1を、第1両極端子11とパラレルインダクタLpとの間に接続したものである。
図13(c)に示されている正負両極型コンバータ603は、
図13(b)に示されている正負両極型コンバータ602における入力電圧Viおよび出力電圧Voの極性を逆にし、さらに、第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2の極性を逆にしたものである。
図13(d)に示されている正負両極型コンバータ604は、
図13(c)に示されている正負両極型コンバータ603において第2両極端子12とパラレルインダクタLpとの間に接続されていた第1スイッチング素子S1を、第1両極端子11とシリーズインダクタLsとの間に接続したものである。
【0052】
図14(a)〜
図14(d)には、それぞれ、変形例に係る正負両極型コンバータ701〜704が示されている。正負両極型コンバータ701〜704は、それぞれ、
図12(a)〜
図12(d)に示された正負両極型コンバータ501〜504において出力コンデンサCoの両端に設けられていた正極端子21および負極端子22を、タンクコンデンサCtの両端に設けたものである。
【0053】
図15(a)〜
図15(d)には、正負両極型コンバータ801(32)に加えて、変形例に係る正負両極型コンバータ802〜804が示されている。
図15(a)に示されている正負両極型コンバータ801は、
図7に示されている正負両極型コンバータ32と同一のものである。
図15(b)〜
図15(d)に示されている正負両極型コンバータ802〜804は、それぞれ、
図12(b)〜
図12(d)に示されている正負両極型コンバータ502〜504について、シリーズインダクタLsとパラレルインダクタLpを結合させたものである。
【0054】
図16(a)〜
図16(d)には、正負両極型コンバータ901(36)に加えて、変形例に係る正負両極型コンバータ902〜904が示されている。
図16(a)に示されている正負両極型コンバータ901は、
図10に示されている正負両極型コンバータ36と同一のものである。
図16(b)〜
図16(d)に示されている正負両極型コンバータ902〜904は、それぞれ、
図13(b)〜
図13(d)に示されている正負両極型コンバータ602〜604について、シリーズインダクタLsとパラレルインダクタLpを結合させたものである。
【0055】
図17(a)〜
図17(d)には、変形例に係る正負両極型コンバータ101〜104が示されている。正負両極型コンバータ101〜104は、それぞれ、
図14(a)〜
図14(d)に示されている正負両極型コンバータ701〜704について、シリーズインダクタLsとパラレルインダクタLpを結合させたものである。
【0056】
本発明の各実施形態に係る正負両極型コンバータは、より一般的には、次のような回路構成を有しているといえる。正負両極型コンバータは、一対の両極端子として第1両極端子11および第2両極端子12を備えている。また、一対の直流端子として正極端子21および負極端子22を備えている。正負両極型コンバータでは、一対の両極端子のうちの一方に一端が接続された第1シリーズ経路と、一対の両極端子のうちの他方に一端が接続された第2シリーズ経路が形成されている。
【0057】
正負両極型コンバータ(501,504,801,804)は、第1シリーズ経路に設けられた第1スイッチング素子S1およびシリーズインダクタLsと、第1スイッチング素子S1とシリーズインダクタLsとの間のパラレル経路に設けられたタンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpとを備えている。タンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpについては、シリーズインダクタLs側にタンクコンデンサCtが設けられ、第2シリーズ経路側にパラレルインダクタLpが設けられている。正負両極型コンバータ(501,504,801,804)は、さらに、シリーズインダクタLsよりも第1シリーズ経路の他端側の点と、タンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpとの間の点に設けられた第2スイッチング素子S2と、第1シリーズ経路の他端および第2シリーズ経路の他端に設けられた一対の直流端子とを備えている。
【0058】
正負両極型コンバータ(502,503,802,803)は、第1シリーズ経路に設けられた第1スイッチング素子S1と、第2シリーズ経路に設けられたシリーズインダクタLsと、第1スイッチング素子S1よりも第1シリーズ経路の他端側の点と、シリーズインダクタLsよりも両極端子側の点との間のパラレル経路に設けられたタンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpとを備えている。タンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpについては、シリーズインダクタLs側にタンクコンデンサCtが設けられ、第1シリーズ経路側にパラレルインダクタLpが設けられている。正負両極型コンバータ(502,503,802,803)は、さらに、シリーズインダクタLsよりも第2シリーズ経路の他端側の点と、タンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpとの間の点に設けられた第2スイッチング素子S2と、第1シリーズ経路の他端および第2シリーズ経路の他端に設けられた一対の直流端子とを備えている。
【0059】
正負両極型コンバータ(601,604,701,704,901,904,101,104)は、第1シリーズ経路に設けられた第1スイッチング素子S1およびシリーズインダクタLsと、第1スイッチング素子S1とシリーズインダクタLsとの間のパラレル経路に設けられたタンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpとを備えている。タンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpについては、シリーズインダクタLs側にタンクコンデンサCtが設けられ、第2シリーズ経路側にパラレルインダクタLpが設けられている。正負両極型コンバータ(601,604,701,704,901,904,101,104)は、さらに、シリーズインダクタLsよりも第1シリーズ経路の他端側の点と、タンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpとの間の点に設けられた第2スイッチング素子S2を備えている。また、タンクコンデンサCtの両端、あるいは、シリーズインダクタLsの中途点およびパラレルインダクタLpの中途点に設けられた一対の直流端子と、第1シリーズ経路の他端および第2シリーズ経路の他端の間に設けられた第2タンクコンデンサCt2とを備えている。
【0060】
正負両極型コンバータ(602,603,702,703,902,903)は、第1シリーズ経路に設けられた第1スイッチング素子S1と、第2シリーズ経路に設けられたシリーズインダクタLsと、第1スイッチング素子S1よりも第1シリーズ経路の他端側の点と、シリーズインダクタLsよりも両極端子側の点との間のパラレル経路に設けられたタンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpとを備えている。タンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpについては、シリーズインダクタLs側にタンクコンデンサCtが設けられ、第1シリーズ経路側にパラレルインダクタLpが設けられている。正負両極型コンバータ(602,603,702,703,902,903)は、さらに、シリーズインダクタLsよりも第1シリーズ経路の他端側の点と、タンクコンデンサCtおよびパラレルインダクタLpとの間の点に設けられた第2スイッチング素子S2を備えている。また、タンクコンデンサCtの両端、あるいは、シリーズインダクタLsの中途点およびパラレルインダクタLpの中途点に設けられた一対の直流端子と、第1シリーズ経路の他端および第2シリーズ経路の他端の間に設けられた第2タンクコンデンサCt2とを備えている。
【0061】
各実施形態に係る正負両極型コンバータは、一対の両極端子の間に設けられた第1コンデンサとしての入力コンデンサCiと、一対の直流端子の間に設けられた第2コンデンサとしての出力コンデンサCoとを備えている。
【0062】
本発明の各実施形態に係る正負両極型コンバータは、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載されたバッテリを充電する装置に用いられてよい。この場合、第1両極端子11および第2両極端子12には、入力電圧Viとして交流電圧が入力される。入力電圧は、必ずしも正弦波電圧でなくてもよく、歪み成分を含んだ交流電圧であってよい。正極端子21および負極端子22には、負荷としてバッテリまたはバッテリを充電するための回路が接続されてよい。正負両極型コンバータは、入力電圧力Viを直流電圧に変換し、正極端子21および負極端子22から出力する。
【0063】
また、本発明の各実施形態に係る正負両極型コンバータは、電動車両を駆動するモータジェネレータに電力供給する電力変換装置として用いられてよい。
【0064】
図18には、正負両極型コンバータ30が用いられた非接触給電システム38が示されている。
図18には、正負両極型コンバータ30が用いられた例が示されているが、他の実施形態に係る正負両極型コンバータが用いられてもよい。
【0065】
非接触給電システム38は、交流電力源40、結合コンデンサ41、送電コイル42、受電コイル44、正負両極型コンバータ30および負荷ZLを備えている。交流電力源40の一端は、結合コンデンサ41を介して送電コイル42の一端に接続され、交流電力源40の他端は、送電コイル42の他端に接続されている。第1両極端子11と第2両極端子12との間には受電コイル44が接続されている。送電コイル42および受電コイル44は電気的または磁気的に結合する。結合コンデンサ41および送電コイル42は共振回路を構成してもよい。送電コイル42および受電コイル44は共鳴(結合共振)するように構成されてもよいし、共鳴をせず磁気結合するように構成されてもよい。正極端子21と負極端子22との間には負荷ZLが接続されている。
【0066】
送電コイル42および受電コイル44が電気的または磁気的に結合することで、交流電力源40から出力された電力は送電コイル42および受電コイル44を介して、第1両極端子11および第2両極端子12に伝送される。正負両極型コンバータ30は、受電コイル44から入力された交流電圧を昇圧または降圧しながら直流電圧に変換し、正極端子21および負極端子22に接続された負荷ZLに出力する。これによって、交流電力源40からは、送電コイル42、受電コイル44、および正負両極型コンバータ30を介して負荷ZLに電力が供給される。
【0067】
非接触給電システム38は、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載されたバッテリの充電を、非接触給電によって行うシステムに用いられてよい。この場合、交流電力源40、結合コンデンサ41および送電コイル42が、サービスステーションに設けられる。そして、受電コイル44および正負両極型コンバータ30および負荷ZLが自動車に搭載される。負荷ZLは、駆動用のモータジェネレータやインバータ等を含んでもよい。
【0068】
上記の各実施形態では、スイッチング素子として一方方向の電流を遮断することができるものが用いられている。スイッチング素子としては、双方向の電流を遮断することができる双方向スイッチが用いられてよい。双方向スイッチは、例えば、
図19に示されている2つのMOSFET1およびMOSFET2によって構成される。MOSFET1のソース端子は、MOSFET2のドレイン端子に接続されている。MOSFET1およびMOSFET2のそれぞれのソース端子とドレイン端子との間には、ソース端子側にアノード端子を向けて、ダイオードDdが接続されている。2つのMOSFETの代わりに、その他の半導体スイッチング素子が用いられてもよい。半導体スイッチング素子としてバイポーラトランジスタが用いられた場合、MOSFETのドレイン端子、ソース端子およびゲート端子が、それぞれ、コレクタ端子、エミッタ端子およびベース端子に対応する。