(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
「第1実施形態」
[非水電解液二次電池]
図1は、本実施形態にかかる非水電解液二次電池の模式図である。
図1に示す非水電解液二次電池100は、発電素子10と外装体30とを備える。発電素子10は、外装体30に設けられた収容空間Kに収容される。発電素子10からは2つの端子20(負極端子21と正極端子22)が延出している。
図1では、理解を容易にするために、発電素子10が外装体30内に収容される直前の状態を図示している。
【0019】
(発電素子)
図2は、本実施形態にかかる非水電解液二次電池を負極端子21及び正極端子22が延在する方向であって、
図1において点線で示したA面に沿った切断面から見た模式図である。
図3は、本実施形態にかかる非水電解液二次電池を負極端子21及び正極端子22が延在する方向と直交する面(
図1において点線で示したB面)で切断した断面図である。
図3においては、外装体30は図示を省略している。
【0020】
発電素子10は、負極1と正極2とセパレータ3とを備える。
図3に示すように、負極1は連続した層構造体であり、これが交互に折り返されて、折り返し部1aを有する。その折り返し部1aの袋状部分には、負極1の1回分の折り返し長さより短い長さの正極2と、正極2の両面に枚葉状に配置された2枚のセパレータ3とがそれぞれ挿入されている。隣接する2枚のセパレータ3は、
図2及び
図3に示すように、外周部の少なくとも一部が接着された接着部3aを有する。
外周部の接着箇所について例えば、
図4に示すように、外周部の全辺を行い、接着部3a、3b、3c、3dを有する構成(あるいは、接着部13a、13b、13c、13dを有する構成)としてもよい。また、外周部のうち、対向する2辺のみを接着してもよいし、また、外周部のうち、3辺のみを接着してもよいし、あるいは、角のみを接着してもよい。なお、
図4における符号と、
図2、
図3、あるいは、
図5の符号と同じものは同様な部分を示す。
正極の両面に枚葉状のセパレータを配置し、その外周部を接着する構成とすることにより、正極の位置ずれが抑制されると共に、正極からの剥離物が電解液や負極へ飛散するのを抑制される。電池の特性に対して悪影響を及ぼすのは正極活物質由来の金属含有飛散物の影響が大きいと考えられ、また、負極活物質の正極への混入による短絡等が防止されることから、後述するように、自己放電が低減された非水電解液二次電池となる。
【0021】
接着部における空隙率とセパレータの空隙率との比率は0.5以下であることが好ましい。
接着部における空隙率が特定の範囲にあることで、セパレータの空隙からの飛散物の抑制効果をより得ることができる。また、接続部の空隙率が特定の範囲にあることで、接続部における電解液の消費を低減することにより、電解液枯れを抑制することでより自己放電を抑制することができる。
【0022】
接着部の幅が400〜1000μmにおいて十分な正極の位置ずれを抑制することができる。接着部の幅が少なすぎる場合、接着不足又は充放電による体積膨張に耐え切れず正極の位置ずれを抑制することができない。接着部の幅が多すぎる場合、正極に電解液が均一に含浸せず、充放電容量のばらつきが大きくなる。
【0023】
また、
図3に示す非水電解液二次電池100においては、折り返し部の間に位置する接着部3c、3c同士の少なくとも一部を接着する接着部間接着部3ccを有する。同様に、折り返し部の間に位置する接着部13b、13b同士の少なくとも一部を接着する接着部間接着部13bbを有する。
接着部同士の少なくとも一部がそれぞれ接着された構成とすることにより、より正極の位置ずれを抑制することが可能となる。また、接着を熱融着によって行った場合、接着部同士の一部を再融着することでセパレータ内の空孔が低減し、よりいっそう異物混入を低減でき、自己放電を抑制することが可能となる。
【0024】
正極2は、折り返された負極1の間(折り返し部分の袋状部分)に位置するため、面内方向(積層方向と直交する面内)の動きが制限される。その結果、正極2の位置ずれを抑制することができる。また負極1が正極2を覆うように位置するため、負極1の折り返し部の近傍まで正極2を配置することができ、エネルギー密度を高めることができる。
【0025】
負極1は、板状(膜状)の負極集電体1Aと負極活物質層1Bとを有する。負極活物質層1Bは、全ての位置で負極集電体1Aの両面に形成されていなくてもよい。例えば、負極1の折り返し部の外側は、負極活物質層1Bを備えなくてもよい。当該部分における負極1の厚みが薄くなることで、負極1の折り返しが容易になる。また対向する正極2が存在しない部分も負極活物質層1Bを備えてなくてもよい。
【0026】
負極集電体1Aは、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
【0027】
負極活物質層1Bに用いる負極活物質は、イオンの吸蔵及び放出、イオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、イオンとカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を用いることができる。負極活物質としては、例えば、金属リチウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属、イオンを吸蔵・放出可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、アルミニウム、シリコン、スズ等のリチウム等の金属と化合することのできる金属、SiO
x(0<x<2)、二酸化スズ等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)等を含む粒子が挙げられる。
【0028】
負極活物質としてシリコン、シリコン合金、ゲルマニウムから選ばれる少なくとも1種を有するものとすることができる。高い充放電容量を得ることができる。また、これらの材料は充放電における負極活物質層の体積膨張が大きいため、本願構造を有する非水電解液二次電池に用いた場合、高い充放電容量を得ると共に、自己放電を抑制することができる。ここで、シリコン合金は、シリコンにNi、Ti、Sn、Fe、Cr、及び、Coの中から選択して添加されたものである。
【0029】
負極1において金属リチウムの析出、溶解反応を用いる場合(金属リチウム負極を用いる場合)、負極活物質層1Bは初期状態では無くてもよい。電解液中のリチウムイオンが負極集電体1Aの一面に金属リチウムとして析出するためである。
図5は、金属リチウム負極を有する非水電解液二次電池101の断面模式図である。
図5に示すように、初期状態で負極1に負極活物質層1Bが存在しないため、負極1の折り返しが容易になる。なお、1回以上充電を行うと析出した金属リチウムが残存する。この金属リチウムを含む層は、負極活物質層1Bとみなされる。充放電に寄与するリチウム量が不足することに備えて、充放電前の初期状態から集電体の一面にリチウム箔を設けてもよい。
【0030】
金属リチウム負極の非水電解液二次電池101が抱える課題の一つとして、デンドライトが知られている。デンドライトは、充電時に金属リチウムが析出開始点を根として樹上に析出したものである。樹上に析出した金属リチウムの枝の部分から金属リチウムが順に溶解すれば問題はないが、根元の部分が先に溶解する場合がある。この場合、根元を失った金属リチウムは非水電解液中に浮遊し、導通が取れなくなる。非水電解液中に浮遊する金属リチウムは、導通が取れない。つまり、以降の充放電には寄与することができず、リチウム二次電池のサイクル特性は低減する。
【0031】
デンドライトは、負極1に対向する正極2が存在しない箇所で生じやすい。金属リチウムの溶解により生じたリチウムイオンの受け入れ先である正極2が存在しないと、金属リチウムが溶解しにくくなるためである。これに対し、本実施形態にかかる非水電解液二次電池101は、負極1の折り返し部において、負極1が正極2を覆うように位置する。そのため、金属リチウムの溶解により生じたリチウムイオンは、正極2へスムーズに移動でき、デンドライトの発生が抑制される。
【0032】
負極活物質層1Bは、導電材を有していてもよい。導電材としては、例えば、カーボンブラック類等のカーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。負極活物質のみで十分な導電性を確保できる場合は、負極活物質層1Bは導電材を含んでいなくてもよい。
【0033】
負極活物質層1Bは、バインダーを含む。バインダーは、公知のものを用いることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、が挙げられる。
【0034】
上記の他に、バインダーとして、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。またセルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂等を用いてもよい。
【0035】
正極2は、板状(膜状)の正極集電体2Aと正極活物質層2Bとを有する。
【0036】
正極集電体2Aは、負極集電体1Aと同様の材料を用いることができる。負極集電体1Aには、例えばアルミニウムを用いることが好ましい。
【0037】
正極活物質層2Bに用いる正極活物質は、イオンの吸蔵及び放出、イオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、イオンとカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を用いることができる。イオンには、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン等を用いることができ、リチウムイオンを用いることが特に好ましい。
【0038】
例えばリチウムイオン二次電池の場合、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMnO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
xCo
yMn
zM
aO
2(x+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMPO
4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、LiNi
xCo
yAl
zO
2(0.9<x+y+z<1.1)等の複合金属酸化物、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンなどを、正極活物質として用いることができる。
【0039】
負極1及び正極2のそれぞれには、外部との電気的接続のための負極端子21と正極端子22とが設けられている(
図1参照)。負極端子21及び正極端子22は、アルミニウム、ニッケル、銅等の導電材料から形成されている。負極端子21は負極1と接続され、正極端子22は正極2と接続される。接続方法は、溶接でもネジ止めでもよい。負極端子21及び正極端子22は短絡を防ぐために、絶縁テープで保護することが好ましい。
【0040】
セパレータ3は、電気絶縁性の多孔質構造から形成されていればよく、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いはセルロース、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
【0041】
セパレータ3の厚みは5μm以上30μm以下であることが好ましく、8μm以上20μm以下であることがより好ましく、10μmであることがさらに好ましい。
【0042】
(外装体)
外装体30は、その内部に発電素子10及び電解液を密封するものである。外装体30は、電解液の外部への漏出や、外部からの非水電解液二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。
【0043】
例えば
図2に示すように、外装体30として金属箔を高分子膜で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを用いてもよい。
図2に示す外装体30は、金属箔31と、金属箔31の発電素子10側の内面を被覆する樹脂層32と、金属箔31の発電素子10と反対側の外面を被覆する樹脂層33と、を有する。
【0044】
金属箔31としては例えばアルミ箔を用いることができる。樹脂層32及び樹脂層33には、ポリプロピレン等の高分子膜を利用できる。樹脂層32を構成する材料と樹脂層33を構成する材料は異なっていてもよい。例えば、外側の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等を用い、内側の高分子膜の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。
【0045】
図1に示す外装体30は、凹部を有する第1面と第2面とが折りたたまれて収容空間Kを構成する。第1面と第2面とは、外周をシールして密着する。外装体30は、
図1に示すものに限られず、二枚のフィルムを接合したものでもよい。凹部は、二枚のフィルムのそれぞれに設けてもよいし、一方のフィルムのみに設けてもよい。
【0046】
(非水電解液)
非水電解液は、外装体30内に封入され発電素子10内に含浸する。
非水電解液には、リチウム塩等を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いため、充電時の耐用電圧が低く制限される。そのため、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解液溶液)であることが好ましい。
【0047】
非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されており、非水溶媒として環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有してもよい。
【0048】
環状カーボネートとしては、電解質を溶媒和することができるものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができる。環状カーボネートは、プロピレンカーボネートを少なくとも含むことが好ましい。
【0049】
鎖状カーボネートは、環状カーボネートの粘性を低下させることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられる。
その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどを混合して使用してもよい。
【0050】
非水溶媒中の環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は体積にして1:9〜1:1にすることが好ましい。
【0051】
電解質としては、金属塩を用いることができる。例えば、LiPF
6、LiClO
4、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiCF
3CF
2SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiN(CF
3CF
2CO)
2、LiBOB等のリチウム塩が使用できる。なお、これらのリチウム塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に、電離度の観点から、電解質としてLiPF
6を含むことが好ましい。
【0052】
LiPF
6を非水溶媒に溶解する際は、非水電解液中の電解質の濃度を、0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましい。電解質の濃度が0.5mol/L以上であると、非水電解液のリチウムイオン濃度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすい。また、電解質の濃度が2.0mol/L以内に抑えることで、非水電解液の粘度上昇を抑え、リチウムイオンの移動度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすくなる。
【0053】
LiPF
6をその他の電解質と混合する場合にも、非水電解液中のリチウムイオン濃度が0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましく、LiPF
6からのリチウムイオン濃度がその50mol%以上含まれることがさらに好ましい。
【0054】
また、非水電解液として、イオン液体を用いてもよい。
イオン液体は、カチオンとアニオンの組合せによって得られる100℃未満でも液体状の塩である。イオン液体は、イオンのみからなる液体であるため、静電的な相互作用が強く、不揮発性、不燃性と言う特徴を有する。電解質としてイオン液体を用いたリチウム二次電池100は、安全性に優れる。
【0055】
イオン液体は、カチオンとアニオンの組合せによって様々な種類がある。例えば、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩等の窒素系のイオン液体、ホスホニウム塩等のリン系のイオン液体、スルホニウム塩等の硫黄系のイオン液体等が挙げられる。窒素系のイオン液体は、環状の第四級アンモニウム塩と鎖状の第四級アンモニウム塩とに分けることができる。
【0056】
イオン液体のカチオンとしては、窒素系、リン系、硫黄系等のものが報告されている。
イオン液体のカチオンは、第四級アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。これらのカチオンは、還元側の電位窓が広い。そのため、これらのカチオンは負極30表面で還元分解されにくい。
【0057】
[非水電解液二次電池の製造方法]
まず、負極1及び正極2を作製する。負極1と正極2とは、活物質となる物質が異なるだけであり、同様の製造方法で作製できる。
【0058】
活物質、バインダー及び溶媒を混合して塗料を作製する。必要に応じ導電材を更に加えても良い。溶媒としては例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
【0059】
上記塗料を、負極集電体1Aと正極集電体2Aに塗布する。負極集電体1Aは連続する一枚の金属箔として準備し、正極集電体2Aは所定の長さに揃えた複数の金属箔として準備する。塗布方法は、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
【0060】
続いて、負極集電体1A及び正極集電体2A上に塗布された塗料中の溶媒を除去する。
除去方法は特に限定されない。例えば、塗料が塗布された負極集電体1A及び正極集電体2Aを、80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。そして、負極1及び正極2が完成する。
【0061】
次いで、作製した負極1を交互に折り返す。そして折り返した負極1の間に、所定の長さに揃えられた正極2と正極2を挟むセパレータ3とを挿入し、発電素子10を作製する。
セパレータ3の接着は公知の方法で行うことができる。例えば、熱融着で行ってもよいし、接着剤を用いてもよい。
セパレータを熱融着する場合、例えば、温度が90℃から200℃に達したシールバーを使用し熱融着をする。接着する幅についてはシールバーの幅で決定される。シールされる部分についてはシールバーに凹みを設け、凹み部分がシールされないようにする。
【0062】
最後に、発電素子10を外装体30に封入する。非水電解液は外装体30内に注入する。非水電解液を注入後に減圧、加熱等を行うことで、発電素子10内に非水電解液が含浸する。外装体30は、熱等を加えて封止する。
【0063】
上述のように、本実施形態にかかる非水電解液二次電池100,101は、折り返された負極1の間に正極2が位置するため、正極2の面内方向(積層方向と直交する面内)の動きが制限される。その結果、充放電時に正極2が膨張、収縮しても、正極2の位置ずれが抑制される。また負極1が正極2を覆うように位置するため、負極1の折り返し部の近傍まで正極2を配置することができ、エネルギー密度を高めることができる。
【0064】
また非水電解液二次電池101が金属リチウム負極の場合は、デンドライトの発生も抑制できる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例】
【0066】
「実施例1」
(正極の作製)
正極活物質には、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)を用いた。この正極活物質を1.90質量部と、アセチレンブラックを5質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部と、をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散させ、スラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ20μmのアルミ箔の両面に塗工した。その後、温度140℃で30分間乾燥した。
【0067】
次に、ロールプレス装置を用いて線圧1000kgf/cmでプレス処理し正極のロールを得た。そして、正極のロールから一端側に10mm角のタブ溶接箇所を有する正極を切り出した。正極の長さは77mm、幅は70mmとした。そして正極のタブ溶接箇所から正極活物質(塗膜)を、メチルエチルケトン(MEK)を染み込ませた綿棒で擦り剥がした。
【0068】
(負極の作製)
天然黒鉛粉末(負極活物質)を90質量部と、PVDFを10質量部とを、NMP中に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmの銅箔上に塗工した。
その後温度140℃で30分間減圧乾燥した。
【0069】
次いで、ロールプレス装置を用いてプレス処理することにより、負極ロールを得た。負極ロールから一端側に10mm角のタブ溶接箇所を有する負極を切り出した。負極の長さは79mm、幅は825mmであった。そして負極のタブ溶接箇所から負極活物質(塗膜)を、MEKを染み込ませた綿棒で擦り剥がし、負極を得た。
【0070】
(セパレータの準備)
膜厚20μmのポリエチレン微多孔膜(空孔率(空隙率):40%、シャットダウン温度:134℃)を用意した。このセパレータを長さ81mm、幅72mmに切り出した。
【0071】
(発電素子の作製)
図3に示すように、負極を交互に75mm間隔で10回折り返した。そして、折り返された負極の間に、正極と正極を挟む2枚のセパレータとを挿入した。負極の折り返し数は、負極の積層数に対応する。
セパレータの接着は、セパレータの外周部の全辺を熱融着によって行った。接着部の幅は表1に示した通りである。接着部間の接着は行わなかった。
【0072】
(空隙率の測定)
表1中のP2/P1において、P2はセパレータの接着部の空隙率であり、P1はセパレータの平坦部の空隙率である。
セパレータの接着部の空隙率は、熱融着によって低減する。低減の程度は、熱融着の加熱温度と加熱時間によって決まる。そこで、予め、熱融着の加熱条件と空隙率の関係を確認しておき、所定のP2/P1とするために必要な接着部の空隙率P2を得る加熱条件によって熱融着を行った。
なお、表1の空隙率は、セパレータの断面において、任意に5枚のSEM像を得て、各SEM像の画像解析によって得られた空隙率の平均である。
【0073】
(非水電解液)
電解質としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒に、LiPF
6を1.0mol/Lとなるように溶解させた非水電解質溶液を用意した。混合溶媒におけるECとDECとの体積比は、EC:DEC=30:70とした。
【0074】
(電池の作製)
発電素子を非水電解液と共にアルミラミネートに封入し、実施例1の電池セルを作製した。
【0075】
「実施例2〜実施例13」
表1に示した条件の違い以外は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0076】
なお、表1中の接着部の「対向2辺」は、
図4における接着部3a(13a)及び3d(13d)に対応し、「3辺」は、
図4における接着部3a(13a)、3b(13b)、3c(13c)に対応する。
また、表1中の接着部同士の接着の「挿入方向と垂直な2辺」における挿入方向とは、
図2に示した「y軸」方向に相当し、「挿入方向と垂直な2辺」は、
図2中の接着部3a間の接着、及び、
図2中の端子側の接着部(不図示)間の接着を指す。また、「挿入方向の反対辺」は、
図3に示した接着部間接着部3cc(13bb)に対応する。
また、表1中の「積層ズレ」において、「〇」は、±0.2mm以内、「△」は、±0.3〜0.6mm以内、「×」は、0.7mm以上、である。
【0077】
「比較例1」
比較例1は、セパレータの接着を行わなかった以外の条件は、実施例1と同様にして電池セルを作製した。
【0078】
(自己放電試験)
実施例及び比較例で作製したリチウムイオン二次電池について、以下に示す方法により、48時間後の電圧降下量を調べた。電池セルの自己放電が少ないほど、48時間後の電圧降下量が少なくなる。
【0079】
「48時間後の電圧降下量」
電池セルを、25℃の恒温槽内で、電流密度として0.1Cに相当する電流値で4.2Vまで定電流で充電し、4.2Vで定電圧充電を行った。定電圧充電は、電流密度が0.01Cに相当する値に低下するまで続けた。
その後、25℃で24時間待機した後のリチウムイオン二次電池の電圧をV1とし、さらに25℃で48時間保管した後の電圧をV2として記録した。48時間後の電圧降下量をV1−V2により計算し、これを電池セルの48時間後の電圧降下量とした。その結果を表1に示す。
【0080】
(100サイクル後維持率)
実施例及び比較例で作製したリチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、25℃の環境下でサイクル特性の測定を行った。0.5Cで4.3Vまで定電流定電圧充電し、1Cで3.0Vまで定電流放電する充放電サイクルを100サイクル繰り返し、100サイクル後の容量維持率を測定し、サイクル特性をサイクル維持率(単位:%)として評価した。なお、サンプルは各水準についてそれぞれn=5で測定を実施し、その平均値を評価値とした。その結果を表1にまとめた。
【0081】
(レート特性)
実施例及び比較例で作製したリチウムイオン二次電池について、放電レートを0.1C(25℃で定電流放電を行ったときに10時間で放電終了となる電流値)とした場合の放電容量を100%とした場合の1C(25℃で定電流放電を行ったときに1時間で放電終了となる電流値)での放電容量の比率(%)をレート特性として求めた。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
「実施例16〜実施例19」
実施例16〜実施例19はそれぞれ、非水電解質として、イオン液体のカチオンとしてピロリジニウム(P13)、イオン液体のアニオンとしてビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、リチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を用いた違い以外は、実施例1〜実施例4のそれぞれと同様にして電池セルを作製した。
【0084】
表2に、得られた特性を示す。
本発明の構成では、正極を包むためのセパレータの接着部は空隙率が低下することで電解液が染み込みにくい。特にイオン液体は粘度が高く染込みにくい。そのため接着部と重なる負極部分にはLi析出がしにくくなり、負極エッジ部分でのLi析出が抑えられ、析出したLiの滑落なども無くなり、サイクル特性(100サイクル後の維持率)が向上している。
【0085】
【表2】
【0086】
「実施例20〜実施例23及び比較例2〜5」
実施例20〜実施例23はそれぞれ、負極活物質が表3に示したものである以外は、実施例13〜16のそれぞれと同様にして電池セルを作製した。
なお、実施例21の「シリコン合金」は、シリコンにNiが添加されたものを用いた。
また、比較例2〜5はそれぞれ、セパレータの接着を行わなかった以外は、実施例20〜実施例23のそれぞれと同様にして電池セルを作製した。
【0087】
表3に、得られた特性を示す。
本発明の構成では、実施例20〜実施例23に用いられたシリコンをはじめとする負極活物質は膨張するが、接着部同士が接着することで正極負極間が広がることを防止し、むしろ電極間が膨張によって狭くなることでレート特性がしている。
【0088】
【表3】