特許第6908080号(P6908080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908080
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】ヒーターの動作制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20210708BHJP
   F24D 13/02 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H05B3/00 310C
   H05B3/00 365K
   F24D13/02 G
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-166008(P2019-166008)
(22)【出願日】2019年9月12日
(65)【公開番号】特開2021-44174(P2021-44174A)
(43)【公開日】2021年3月18日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】南部 元俊
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−085958(JP,A)
【文献】 特開平04−036516(JP,A)
【文献】 再公表特許第2016/167075(JP,A1)
【文献】 特開2019−046786(JP,A)
【文献】 特開昭58−217130(JP,A)
【文献】 特開平04−239903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00−3/86
F24D 13/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の電極と、
前記一組の電極間に接続され、前記一組の電極間の方向で単位長さあたりの電気抵抗値が等しくなるように配線された面状若しくは線状の電気抵抗体からなるヒーターと、
前記一組の電極に交流若しくは直流の電源電力を出力し、ヒーターを加熱する電源回路と、
前記一組の電極にそれぞれ接続する互いに等しい抵抗値Rの一組の抵抗素子の各他側に、等電圧Vの交流検出信号を出力する交流信号源と、
前記一組の電極の各電位V、Vを検出する電圧検出回路と、
ヒーター動作モードで、前記電源回路と前記一組の電極とを接続するとともに、前記抵抗素子を介した前記交流信号源と前記一組の電極間の接続を切り離し、人体位置検出モードで、前記電源回路と前記一組の電極との接続を切り離すとともに、前記抵抗素子を介した前記交流信号源と前記一組の電極とを接続する接続切換手段と、
前記人体位置検出モードで、前記電圧検出回路が検出した前記一組の電極の各電位V、Vから、前記ヒーターに接近する人体の位置を前記一組の電極間の方向で検出する人体位置検出手段とを備え、
前記人体位置検出手段が検出した前記人体の位置に応じて、前記電源回路から前記一組の電極に出力する電源電力の出力及び/又は電力量を制御することを特徴とするヒーターの動作御装置。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記一組の電極間の方向で複数の領域に分割され、
前記人体の位置が属するいずれか前記領域に応じて、前記電源回路から前記一組の電極に出力する電源電力の電力量を制御することを特徴とする請求項1に記載のヒーターの動作制御装置。
【請求項3】
前記電気抵抗体は、前記一組の電極間の第1方向と直交する第2方向単位長さあたりの電気抵抗値が等しくなるように配線され、
第2方向の両側で前記電気抵抗体にスポット状に接続する一組の第2電極と、
前記一組の第2電極にそれぞれ接続する互いに等しい抵抗値R’の一組の第2抵抗素子の各他側に、等電圧V’の第2交流検出信号を出力する第2交流信号源と、
前記一組の第2電極の各電位V、Vを検出する第2電圧検出回路と、
人体位置検出モードで、前記抵抗素子を介した前記交流信号源と前記一組の電極との接続と、前記第2抵抗素子を介した前記第2交流信号源と前記一組の第2電極との接続とを交互に切り換える第2接続切換手段とを更に備え、
前記人体位置検出手段は、前記人体位置検出モードで、前記一組の電極と前記一組の第2電極に前記交流検出信号と前記第2交流検出信号を交互に出力し、前記電圧検出回路が検出した前記一組の電極の各電位V、Vと、前記第2電圧検出回路が検出した前記一組の第2電極の各電位V、Vとから、前記電気抵抗体に接近する操作者の人体の位置を第1方向と第2方向で検出することを特徴とする請求項1に記載のヒーターの動作制御装置。
【請求項4】
それぞれ、面状若しくは線状の電気抵抗体の両側に第1セル電極と第2セル電極が接続して形成される複数のセルが、同一平面に沿って配設されたヒーターと、
前記各セルの第1セル電極と第2セル電極に交流若しくは直流の電源電力を出力し、前記セルを加熱する電源回路と、
複数の前記セルの各セル毎に第1セル電極と第2セル電極の間に、交流検出信号を出力する交流信号源と、
複数の前記セルの各セル毎に第1セル電極及び/又は第2セル電極の検出電極の電位を検出する電圧検出回路と、
ヒーター動作モードで、前記電源回路から選択的に1又は2以上の前記各セルの第1セル電極と第2セル電極に電源電力を出力するとともに、前記交流信号源と全ての前記セルとの接続を切り離し、人体位置検出モードで、前記電源回路と全ての前記セルの接続を切り離すとともに、前記交流信号源から複数の前記セルの各セル毎に、第1セル電極と第2セル電極の間に交流検出信号を出力する接続切換手段と、
人体位置検出モードで、前記各セル毎に、交流検出信号が流れる第1セル電極及び/又は第2セル電極の検出電極の電位を監視し、前記検出電極の電位が所定値以上に変化した前記セルを人体が接近しているセルと判定し、人体が接近しているセルと判定した1又は2以上の前記セルの各位置からヒーターに接近する人体の位置を検出する人体位置検出手段とを備え、
前記電源回路は、前記人体位置検出手段が人体が接近していると判定した前記セルの第1セル電極と第2セル電極に電源電力を出力し、そのセルを加熱することを特徴とするヒーターの動作御装置。
【請求項5】
複数の前記セルは、互いに直交するXY方向に平行な同一平面に沿って分散して配設され、
互いに絶縁され、前記平面のY方向に配線される複数のX電極線と、前記平面のX方向に配線される複数のY電極線とを更に備え、
前記平面のX方向に沿った複数の前記セルの各第1セル電極は、X方向に配線される同一のY電極線で連続するとともに、前記平面のY方向に沿った複数の前記セルの各第2セル電極は、Y方向に配線される同一のX電極線で連続することにより、全ての前記セルの各セル毎の前記電気抵抗体の両側がそれぞれ異なる組み合わせのX電極線とY電極線に接続し、
人体位置検出モードで、前記交流信号源は、全ての前記セルについて、前記各セル毎に異なる組み合わせのX電極線とY電極線の間に交流検出信号を出力することを特徴とする請求項4に記載のヒーターの動作制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーターの電気抵抗体に人体が接近することによる静電容量の変化を検出し、人体の接近に応じてヒーターの動作を制御するヒーターの動作制御装置に関し、特に、ヒーターに接近する人体の位置に応じて、ヒーターの動作を制御するヒーターの動作制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒーターの電気抵抗体が導電体であることから、人体の一部が電気抵抗体に接近することよる電気抵抗体の浮遊容量の増加を検出し、電気抵抗体を人感センサーの一部として利用してヒーターの動作を制御するヒーターの動作制御装置が、特許文献1や特許文献2で知られている。
【0003】
以下、特許文献1のヒーターの動作制御装置100を図7を用いて説明すると、ヒーターの動作制御装置100は、車両の乗員用シート101の着座部の内方に電気抵抗体からなるヒーター102が配置されている。ヒーター102は、コントローラ103で開閉制御される切り換えスイッチ104を介して直流電力を出力するバッテリ105に接続し、スイッチ104が閉じ動作している間、バッテリー105からの直流電力で加熱され、着座部分を加温する。
【0004】
スイッチ104が開制御されている間に、ヒーター102を構成する電気抵抗体は、浮遊状態となり、人体がヒーター102に接近するとこヒーター102の浮遊容量が変化するので、この浮遊容量の変化から乗員用シート101への着座の有無を判定するため、ヒーター102に、結合コンデンサ106を介して着座検出回路107が接続している。図示するように、着座検出回路107は、一定電圧の交流検出信号を出力する交流信号源108と、負荷抵抗109と、検波・平滑回路110と、増幅回路111と、A/D変換回路112と、マイクロコンピュータ113がそれぞれ直列に接続され、負荷抵抗109と検波・平滑回路110との接続点に、一側がヒーター102に接続する結合コンデンサ106の他側が接続している。これにより、交流信号源108から出力される交流検出信号のわずかな一部が、結合コンデンサ106とヒーター102の浮遊容量を通して流れ、残りの交流検出信号が、検波・平滑回路110と増幅回路111を介して、A/D変換回路112に入力され、マイクロコンピュータ113において交流検出信号のレベルが検出される。
【0005】
スイッチ104が開制御され、浮遊電位状態となるヒーター(電気抵抗体)102に、人体が接近すると、ヒーター102の静電容量が増加してインピーダンスが低下し、結合コンデンサ106を介して流れる交流検出信号が増加するので、マイクロコンピュータ113において検出される交流検出信号のレベルは、人が接近していない状態に比べてが低下する。従って、着座検出回路107は、マイクロコンピュータ113で検出される交流検出信号のレベルが所定値以下に低下することから、乗員シート101に乗員が着座していることを検出し、例えば、着座を検出している場合にのみスイッチ104を閉じ制御してヒーター102を加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−24087号公報
【特許文献2】特開2015−131631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来のヒーターの動作制御装置によれば、ヒーターを構成する電気抵抗体を人感センサーの一部に兼用し、人体の接近に応じてヒーターの動作を制御できるが、ヒーターの加熱温度を制御したり、ホットカーペットのような大型のヒーターの特定の領域のみを加熱制御する場合には、別に制御回路や制御スイッチを設ける必要があり、装置全体が大型、複雑化するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、ヒーターを構成する電気抵抗体を利用して、ヒーターに接近する人体の位置を検出し、人体の位置に応じてヒーターの動作を制御するヒーターの動作制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、人が載っている位置のヒーターのみを加熱し、省電力可能なヒーターの動作制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、請求項1のヒーターの動作制御装置は、一組の電極と、一組の電極間に接続され、一組の電極間の方向で単位長さあたりの電気抵抗値が等しくなるように配線された面状若しくは線状の電気抵抗体からなるヒーターと、一組の電極に交流若しくは直流の電源電力を出力し、ヒーターを加熱する電源回路と、一組の電極にそれぞれ接続する互いに等しい抵抗値Rの一組の抵抗素子の各他側に、等電圧Vの交流検出信号を出力する交流信号源と、一組の電極の各電位V、Vを検出する電圧検出回路と、ヒーター動作モードで、電源回路と一組の電極とを接続するとともに、抵抗素子を介した交流信号源と一組の電極間の接続を切り離し、人体位置検出モードで、電源回路と一組の電極との接続を切り離すとともに、抵抗素子を介した交流信号源と一組の電極とを接続する接続切換手段と、
人体位置検出モードで、電圧検出回路が検出した一組の電極の各電位V、Vから、ヒーターに接近する人体の位置を一組の電極間の方向で検出する人体位置検出手段とを備え、
人体位置検出手段が検出した人体の位置に応じて、電源回路から一組の電極に出力する電源電力の出力及び/又は電力量を制御することを特徴とする。
【0011】
電源電力を通電して加熱するヒーターは、導電性の電気抵抗体からなり、電気抵抗体に人体が接近すると、人体の位置により一組の電極に表れる交流検出信号の電位が異なるので、一組の電極の各電位V、Vから人体位置検出手段が検出した人体の位置に応じて一組の電極に出力する電源電力の出力及び/又は電力量を制御する。
【0012】
請求項2のヒーターの動作制御装置は、ヒーターが、一組の電極間の方向で複数の領域に分割され、人体の位置が属するいずれかの領域に応じて、電源回路から一組の電極に出力する電源電力の電力量を制御することを特徴とする。
【0013】
一組の電極の各電位から人体位置検出手段が検出した人体の位置が属する領域に応じて一組の電極に出力する電源電力の電力量を制御する。
【0014】
請求項3のヒーターの動作制御装置は、電気抵抗体が、一組の電極間の第1方向と直交する第2方向単位長さあたりの電気抵抗値が等しくなるように配線され、第2方向の両側で電気抵抗体にスポット状に接続する一組の第2電極と、一組の第2電極にそれぞれ接続する互いに等しい抵抗値R’の一組の第2抵抗素子の各他側に、等電圧V’の第2交流検出信号を出力する第2交流信号源と、一組の第2電極の各電位V、Vを検出する第2電圧検出回路と、人体位置検出モードで、抵抗素子を介した交流信号源と一組の電極との接続と、第2抵抗素子を介した第2交流信号源と一組の第2電極との接続とを交互に切り換える第2接続切換手段とを更に備え、
人体位置検出手段は、人体位置検出モードで、一組の電極と一組の第2電極に交流検出信号と第2交流検出信号を交互に出力し、電圧検出回路が検出した一組の電極の各電位V、Vと、第2電圧検出回路が検出した一組の第2電極の各電位V、Vとから、電気抵抗体に接近する操作者の人体の位置を第1方向と第2方向で検出することを特徴とする。
【0015】
ヒーターに接近する人体の位置が、一組の電極間の第1方向と、第1方向に直交する第2方向のいずれの方向でも検出する。
【0016】
請求項4のヒーターの動作制御装置は、それぞれ、面状若しくは線状の電気抵抗体の両側に第1セル電極と第2セル電極が接続して形成される複数のセルが、同一平面に沿って配設されたヒーターと、各セルの第1セル電極と第2セル電極に交流若しくは直流の電源電力を出力し、セルを加熱する電源回路と、複数のセルの各セル毎に第1セル電極と第2セル電極の間に、交流検出信号を出力する交流信号源と、複数のセルの各セル毎に第1セル電極及び/又は第2セル電極の検出電極の電位を検出する電圧検出回路と、ヒーター動作モードで、電源回路を選択的に1又は2以上の各セルの第1セル電極と第2セル電極に電源電力を出力するとともに、交流信号源と全てのセルとの接続を切り離し、人体位置検出モードで、電源回路と全てのセルの接続を切り離すとともに、交流信号源から複数のセルの各セル毎に、第1セル電極と第2セル電極の間に交流検出信号を出力するか接続切換手段と、人体位置検出モードで、各セル毎に、交流検出信号が流れる第1セル電極及び/又は第2セル電極の検出電極の電位を監視し、検出電極の電位が所定値以上に変化したセルを人体が接近しているセルと判定し、人体が接近しているセルと判定した1又は2以上のセルの各位置からヒーターに接近する人体の位置を検出する人体位置検出手段とを備え、
電源回路は、人体位置検出手段が人体が接近していると判定したセルの第1セル電極と第2セル電極に電源電力を出力し、そのセルを加熱することを特徴とする。
【0017】
電気抵抗体に接近する人体の位置により各セルの第1セル電極及び/又は第2セル電極の検出電極に表れる交流検出信号の電位が異なるので、検出電極の電位の所定値以上の変化から人体が接近していると判定したセルの第1セル電極と第2セル電極に電源電力を出力し、そのセルを加熱する。
【0018】
請求項5のヒーターの動作制御装置は、複数のセルが、互いに直交するXY方向に平行な同一平面に沿って分散して配設され、互いに絶縁され、平面のY方向に配線される複数のX電極線と、平面のX方向に配線される複数のY電極線とを更に備え、
平面のX方向に沿った複数のセルの各第1セル電極は、X方向に配線される同一のY電極線で連続するとともに、平面のY方向に沿った複数のセルの各第2セル電極は、Y方向に配線される同一のX電極線で連続することにより、全てのセルの各セル毎の電気抵抗体の両側がそれぞれ異なる組み合わせのX電極線とY電極線に接続し、人体位置検出モードで、交流信号源は、全てのセルについて、各セル毎に異なる組み合わせのX電極線とY電極線の間に交流検出信号を出力することを特徴とする。
【0019】
複数の全てのセルについて各セル毎の第1セル電極と第2セル電極を配線することなく、X方向に沿った複数のセルの各第1セル電極を同一のY電極線で連続するとともに、Y方向に沿った複数のセルの各第2セル電極を同一のX電極線で連続するので、少ない電極線で各セルの第1セル電極と第2セル電極間に交流検出信号が流れる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、ヒーターの動作を制御する制御回路への入力スイッチを用意することなく、ヒーターの特定位置へ指等の人体の一部を接近させる操作で、ヒーターの動作を制御することができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、ヒーターのいずれかの領域に、指等の人体の一部を接近させるだけで、その領域で特定される加熱温度にヒーターの加熱動作を制御できる。
【0022】
請求項3の発明によれば、ヒーターの二次元の位置で特定される特定位置へ指等の人体の一部を接近させる操作で、特定位置に応じてヒーターの動作をより細かく制御することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、人が載っている位置のヒーターのみを加熱し、省電力でヒーターを動作させることができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、セル毎に交流検出信号を流す電極線の総配線数を減じて、ヒーターの動作制御装置の全体を簡易構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施の形態に係るヒーターの動作御装置1の模式図である。
図2】人体位置検出モードのヒーターの動作御装置1の回路図である。
図3】第2実施の形態に係るヒーターの動作御装置20の要部平面図である。
図4】第3実施の形態に係るヒーターの動作御装置30の要部平面図である。
図5】第4実施の形態に係るヒーターの動作御装置40のヒーター41の平面図である。
図6】ヒーターの動作御装置40の切替制御部42の回路図である。
図7】従来のヒーターの動作制御装置100のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態に係るヒーターの動作制御装置(以下、ヒーター装置という)1を、図1図2を用いて説明する。尚、図1においては、説明の便宜上、ヒーター装置1に通常備えられる温度センサーやAC/DCコンバータなどを省略している。このヒーター装置1は、図示しない長方形の透明な絶縁シートの表面に被着された薄膜の電気抵抗体からなるヒーター2を、窓ガラスや水槽に沿って貼り付けて、室内や水槽を一定温度に保温する目的で用いられる。
【0027】
ヒーター2を構成する薄膜の電気抵抗体は、例えばITO(酸化インジウムスズ)やCNT(カーボンナノチューブ)を均一膜厚で絶縁シートの表面に沿って形成され、これにより、ヒーター2の平面の任意の2点間の抵抗値は、ヒーター2の平面に沿った2点間の距離に比例するものとなっている。図1に示すように、ヒーター2をジュール熱で発熱させるため、ヒーター2の両側には一組の帯状の電極3A、3Bが接続し、一組の電極3A、3Bは、それぞれマイコン10のポートP1、P8でON/OFF制御されるリレーA、リレーBを介して商用交流電源4に接続している。従って、マイコン10でリレーA、リレーBをON制御すると、一組の電極3A、3B間に接続するヒーター2に交流の電源電力が通電し、ヒーター2は、電気抵抗体のジュール熱で発熱する。
【0028】
ヒーター2に接近する操作者の指Pの位置を検出すため、一組の電極3A、3Bは、それぞれマイコン10のポートP2、P5でON/OFF制御されるリレーC、リレーDに接続している。更に、リレーCは、マイコン10のポートP3と、抵抗値Rの抵抗5Aを介してポートP4に接続し、リレーDは、マイコン10のポートP7と、抵抗5Aと同じ抵抗値Rの抵抗5Bを介してポートP6に接続している。
【0029】
マイコン10は、ポートP1、P2、P5、P8からリレーA、リレーC、リレーD、リレーBをON/OFF制御する制御信号を出力するとともに、ポートP4、P6から交流電圧Vの同一の交流検出信号を出力する交流信号源と、ポートP3、P7の各電位V、Vを検出し、検出した各電位V、Vから後述する方法でヒーター2に接近する人体の位置を一組の電極3A、3Bの方向で検出する人体位置検出部と、検出した人体の位置に応じて、リレーA、リレーBをON制御するヒーター加熱期間を制御するヒーター動作制御部を備えている。
【0030】
マイコン10でリレーCをON制御する間は、ポートP4から交流電圧Vの交流検出信号を抵抗5Aの一端に出力し、ポートP3から抵抗5Aの他側の電極3Aの電位Vを検出する。また、マイコン10がリレーDをON制御する間は、ポートP6から交流電圧Vの交流検出信号を抵抗5Bの一端に出力し、ポートP7から抵抗5Bの他側の電極3Bの電位Vを検出する。
【0031】
マイコン10は、リレーA、リレーBをON制御し、リレーC、リレーDをOFF制御するヒーター動作モードと、リレーA、リレーBをOFF制御し、リレーC、リレーDをON制御する人体位置検出モードとを、例えば、100msecの周期で交互に切り換える。
【0032】
人体位置検出モードでは、ポートP3、P7で検出する一組の電極3A、3Bの各電位V、Vからヒーター2に接近する人体Pの位置xを電極3Aから電極3Bに向かうX方向で検出する。以下、各電位V、Vからヒーター2上の人体の位置xを検出する方法を図1と人体位置検出モードのヒーター装置1を示す図2を用いて説明する。
【0033】
これらの図に示すように、一組の電極3A、3B間の長さをL、一組の電極3A、3B間のヒーター2の抵抗値をr、電極3Aから人体Pの位置xまでのヒーター2の抵抗値をr、人体Pの位置xから電極3Bまでのヒーター2の抵抗値をr、人体Pの位置xでの電位をVとすると、
ポートP4から、ヒーター2と人体Pとの間の静電容量Cfを通して流れる交流検出信号の電流iは、ポートP4に接続する抵抗5Aにも流れるので、
=(V−V)/R ・・・(1)
と、
ポートP6から、ヒーター2と人体との間の静電容量Cfを通して流れる交流検出信号の電流iは、ポートP6に接続する抵抗5Bにも流れるので、
=(V−V)/R ・・・(2)
で、それぞれ表される。
【0034】
また、交流検出信号の交流電圧Vと人体Pの位置xでの電位Vの電位差V−Vは、図2に示すように、
−V=(R+r)i=(R+r)i ・・・(3)
で表され、(3)式のi、iに(1)式と(2)式を代入し、r=r−rであるので、rについて求めると、
=(R+r)(V−V)/(2V−V−V) ・・・(4)
となる。
【0035】
ヒーター2の2点間の抵抗値は、X方向の2点間の距離に比例し、電極3Aから人体の位置xまでのヒーター2の抵抗値rは、
=r・x/L ・・・(5)
で表されるので、(4)式に(5)式を代入し、電極3Aから人体の位置xについて求めれば、
x=L(R+r)(V−V)/{r(2V−V−V)} ・・・(6)
となる。ここで、(6)式において、R、r、Vは、既知の値であるので、ポートP3、P7で検出する各電位V、Vから、電極3AからX方向の人体の位置xを求めることができる。
【0036】
マイコン10は、各電位V、Vから求めた人体の位置xに応じて、100msecのヒーター動作モード期間中のリレーA、リレーBをON制御するヒーター加熱期間を決定し、例えば、位置xに比例してヒーター加熱期間を定める。その結果、ヒーター2へ接近させる操作者の指を、電極3Aから電極3Bに近づけるほど、ヒーター2の加熱時間が長くなり、昇温制御される。
【0037】
人体の位置xに応じたヒーター2の動作の制御は、各電位V、Vから求めた人体の位置xが、ヒーター2を分割したいずれの領域に属するかに応じて制御することもできる。以下、ヒーター装置1の一組の電極3A、3B間のヒーター2を3つの領域F1、F2、F3に分割した第2実施の形態に係るヒーター装置20を、図3を用いて説明する。
【0038】
ヒーター2は、図中「強」と表示された電極3AからX方向にx1までの領域F1と、「中」と表示されたx1からx2までの領域F2と、「弱」と表示されたx2から電極3Bまでの領域F3に分割される。これによりマイコン10は、人体位置検出モードにおいて、各電位V、Vから求めた人体の位置xが、0からx1までの範囲内である場合には、領域F1に属すると、x1からx2までの範囲内である場合には、領域F2に属すると、x2からx3までの範囲内である場合には、領域F3に属すると判定し、人体Pの位置xが属する領域F毎に、商用交流電源4とリレーA、リレーB間に接続された図示しない電力制御回路を制御し、次の周期のヒーター動作モード期間に、一組の電極3A、3B間のヒーター2に通電する交流の電力を制御する。
【0039】
すなわち、人体の位置xが領域F1に属すると判定した場合には、次の周期のヒーター動作モード期間で、一組の電極3A、3B間のヒーター2に通電する交流の電力を設定値の最大とし、領域F3に属すると判定した場合には、ヒーター2に通電する交流の電力を設定値の最小とし、領域F2に属すると判定した場合には、その中間の電力とする。これにより、操作者は、領域F1、F2、F3のいずれかに指や体を近づけることにより、ヒーター2の発熱温度を操作できる。
【0040】
次に、本発明の第3実施の形態に係るヒーター装置30を、図4を用いて説明する。ヒーター装置30は、ヒーター2のX方向の人体の位置xを検出する第1実施の形態に係るヒーター装置1について、X方向に直交するY方向の人体の位置yを検出可能としたもので、ヒーター装置1と同一若しくは同様に作用する構成は同一の番号を付してその説明を省略する。
【0041】
ヒーター装置30は、X方向の両側に沿って帯状に配線される一組の電極3A、3Bの中間で、ヒーター2のY方向の両側の部位にスポット状に接続する一組の第2電極3C、3Dを更に備えている。第2電極3C、3Dは、Y方向の人体Pの位置yを検出する目的でヒーター2に接続されるものであり、ヒーター動作モード期間に、一組の電極3A、3B間に流れる交流の電源電流が、ヒーター2を通電せずに第2電極3C、3Dを経由して流れることがないように、スポット状に形成される。
【0042】
図4に示すように、一組の第2電極3C、3Dは、それぞれマイコン10でON/OFF制御されるリレーE、リレーFに接続している。更に、リレーEの他側は、抵抗値R’の第2抵抗素子5Cを介して交流電圧V’の第2交流検出信号を出力するマイコン10のポートと、第2電極3Cの電位Vを検出するマイコン10のポートに接続し、リレーFの他側は、抵抗値R’の第2抵抗素子5Dを介して交流電圧V’の第2交流検出信号を出力するマイコン10のポートと、第2電極3Dの電位Vを検出するマイコン10のポートに接続している。Y方向の一組の第2抵抗素子5C、5Dの抵抗値は、同一の抵抗値R’とするが、一組の抵抗素子5A、5Bの抵抗値Rと同一であってもよい。また、一組の第2抵抗素子5C、5Dに出力される交流電圧V’の第2交流検出信号も同一の交流検出信号であるが、マイコン10のポートP4とポートP6から出力される交流電圧Vの交流検出信号と同一であってもよい。
【0043】
マイコン10は、リレーA、リレーBをOFF制御して人体位置検出モードとしている間に、リレーC及びリレーDをON制御するx位置検出モードと、リレーE及びリレーFをON制御するy位置検出モードとを交互に切り換え、x位置検出モードでX方向の人体Pの位置xを、y位置検出モードでY方向の人体Pの位置yを検出する。Y方向の人体Pの位置yを検出する方法は、上述したX方向の人体Pの位置xの検出方法とXY方向を変更するだけで同一であるので、その説明を省略する。
【0044】
このヒーター装置30によれば、ヒーター2に接近する人体Pの位置をXY方向の二次元の位置(x、y)で検出できるので、二次元の位置(x、y)に応じてヒーター2の加熱動作を制御できる。
【0045】
次に、本発明の第4実施の形態に係るヒーター装置40を、図5図6を用いて説明する。このヒーター装置40は、床面に配置し、ヒーター41に載る人を保温するホットカーペットとして用いられる。
【0046】
ヒーター装置40のヒーター41は、図5に示すように、直交するXY平面に沿って4行4列のマトリックス状に配置された16枚のセル44からなり、各セル44は、各セル44の図中上辺に沿って配線された第1セル電極45と、図中右辺に沿って配線された第2セル電極46と、第1セル電極45と第2セル電極46との間にU字連鎖状に配線され、ニッケルクロム合金、鉄クロム合金などから形成される発熱線(電気抵抗体)43とから構成される。以下、説明の便宜上、i行j列(i=1〜4、j=1〜4)の位置に配置されたセル44をセル44ijと、セル44ijの第1セル電極45を第1セル電極45ijと、セル44ijの第2セル電極46を第2セル電極46ijとして説明する。
【0047】
全てのセル44について、各セル44の第1セル電極45と第2セル電極46を相互に絶縁させて配線するのは煩雑な配線となるので、Y方向に沿った4枚のセル44の各第2セル電極461j、462j、463j、464jを同一のX電極線Xで連続させて配線し、X方向に沿った4枚のセル44の各第1セル電極45i1、45i2、45i3,45i4を同一のY電極線Yで連続させて配線する。例えば、Y方向に沿った第2列の4枚のセル4412、4422、4432、4442の各第2セル電極4612、4622、4632、4642は、1本のX電極線Xで連続し、X方向に沿った第4行の4枚のセル4441、4442、4443、4444の各第1セル電極4541、4542、4543、4544は、1本のY電極線Yで連続する。
【0048】
各セル44毎に人体Pの接近を検出し、各セル44毎の発熱線43に交流電源電力を通電して加熱制御することが可能なように、全てのX電極線X(j=1〜4)は、図6に示すように、切替制御部42のマイコン48によりON/OFF制御されるリレーA1乃至A4とリレーC1乃至C4に、全てのY電極線Y(i=1〜4)は、マイコン48によりON/OFF制御されるリレーB1乃至B4、リレーD1乃至D4に接続している。
【0049】
各X電極線X(j=1〜4)が接続するリレーAjの他側は、商用交流電源49に接続し、リレーCjの他側は、所定の交流電圧Vの交流検出信号を出力するマイコン48のポートT1に接続している。また、各Y電極線Y(i=1〜4)が接続するリレーBiの他側は、商用交流電源49に接続し、リレーDiの他側は、マイコン48を介して一側が接地されたコイル47の他側と、Y電極線Yの電位VYiを検出するマイコン48のポートT2とに接続している。マイコン48のポートT2は、セル44ijについて、リレーCjとリレーDiがON制御され、セル44ijの発熱線43とコイル47とを交流検出信号が流れる際のY電極線Y(セル44ijの第2セル電極46ij)の電位VYiを検出する。
【0050】
マイコン48は、全てのリレーCj、リレーDiをOFF制御するとともに、いずれか1又は2以上のリレーAjとリレーBiを選択的にON制御するヒーター動作モードと、
全てのリレーAj、リレーBiをOFF制御するとともに、全てのリレーCjとリレーDiの異なる組み合わせについて、リレーCjとリレーDiとを順にON制御する人体位置検出モードで動作する。
【0051】
マイコン19は、所定の周期でヒーター動作モードと人体位置検出モードを交互に繰り返して動作し、先に人体位置検出モードで、マイコン48は、16通りのリレーCjとリレーDiの異なる組み合わせについて、順にリレーCjとリレーDiをON制御する。その結果、ON制御するリレーCjとリレーDiにそれぞれ接続するX電極線XとY電極線Yから特定されるセル44ijの発熱線(電気抵抗体)43とリレーDiに接続するコイル47に交流検出信号が流れる。
【0052】
リレーDiに接続するマイコン48のポートT2は、この発熱線43に交流検出信号が流れるセル44ijの第2セル電極46ijの電位VYiを監視する。そのセル44ijの発熱線43に人体が接近していない場合には、リレーCjに接続するマイコン48のポートから出力される交流検出信号のほぼ全てがコイル47を流れ、第2セル電極46ijの電位VYiは一定の電位に保たれる。一方、そのセル44ijに人が載って、セル44ijの発熱線(電気抵抗体)43に人体Pが接近していると、接近する人体Pと発熱線(電気抵抗体)43間の静電容量Cfを通して人体Pに交流検出信号の一部が流れ、第2セル電極46ijの電位VYiが低下する。従って、マイコン48は、この電位VYiが所定値以上に低下することから、ON制御したリレーCjとリレーDiで特定されるセル44ijに人が載っていると判定する。同様にして全ての組み合わせでリレーCjとリレーDiをON制御し、全てのセル44ijについて人が載っているか否かを判定し、人が載っていると判定した1又は2以上のセル44ijの位置から、ヒーター41の全体で人が載っている位置を検出する。
【0053】
続く、ヒーター動作モードで、マイコン48は、全てのリレーCj、リレーDiをOFF制御し、上記人体位置検出モードで、人が載っていると判定した1又は2以上のセル44ijについて、そのセル44ijを通過するX電極線XとY電極線Yが接続するリレーAjとリレーBiをON制御し、セル44ijの発熱線43に商用交流電源49の交流電源電力を通電させ、人Pの載っているセル44ijのみを加熱制御する。
【0054】
本実施の形態によれば、発熱させるヒーター41を、人体の接近を検出する人感センサーの一部に兼用するので、ヒーターに重ねて別の検出電極を配置する必要がない。
【0055】
また、人が載っている領域にのみヒーター41を通電し、加熱制御するので無駄な電力消費がない。
【0056】
上述の実施の形態では、複数の各セル44ijの第1セル電極45ijと第2セル電極46ijを、共通のY電極線YとX電極線Xで連続させて配線して、配線を簡略化しているが、各セル44ijの第1セル電極45ijと第2セル電極46ij毎に別に配線しても良い。
【0057】
また、複数のセル44ijを平面上にマトリックス状に配置しているが、互いに重ならなければ、平面上の任意の位置に分散配置するものであちてもよい。
【0058】
また、上述の各実施の形態では、交流の電源電力を電気抵抗体であるヒーター2や発熱線43に通電し、ヒーター2や発熱線43を加熱しているが、直流の電源電力を通電させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ヒーターに接近する人体の位置に応じてヒーターを加熱する電源電力や電力量が制御されるヒーターの動作制御装置に適している。
【符号の説明】
【0060】
1 ヒーターの動作制御装置(第1実施の形態)
2 ヒーター(電気抵抗体)
4 商用交流電源
20 ヒーターの動作制御装置(第2実施の形態)
30 ヒーターの動作制御装置(第3実施の形態)
40 ヒーターの動作制御装置(第4実施の形態)
43 発熱線(電気抵抗体)
44 セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7