特許第6908241号(P6908241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908241
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】得点検知標的及び標的シート
(51)【国際特許分類】
   F41J 5/044 20060101AFI20210708BHJP
   F41J 3/00 20060101ALI20210708BHJP
   A63B 67/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   F41J5/044
   F41J3/00
   A63B67/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-161681(P2017-161681)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-39600(P2019-39600A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】517298758
【氏名又は名称】澤田 智之
(73)【特許権者】
【識別番号】510193452
【氏名又は名称】一般社団法人日本スポーツウエルネス吹矢協会
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(74)【代理人】
【識別番号】100076244
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清規
(72)【発明者】
【氏名】澤田 智之
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04244583(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0334195(US,A1)
【文献】 特開昭48−073000(JP,A)
【文献】 特表昭60−500027(JP,A)
【文献】 特開昭50−055199(JP,A)
【文献】 実開平01−136298(JP,U)
【文献】 特開昭48−005497(JP,A)
【文献】 特開平03−163370(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02342592(GB,A)
【文献】 中国特許出願公開第107062995(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 1/00
F41J 1/00− 1/10
F41J 3/00− 3/02
F41J 5/00− 5/02
F41J 11/00−13/02
A63B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に導電部を備えた飛翔体が刺さった際の得点を検知する得点検知標的であって、
交流電源又はアースと接続される電極層と、
前記電極層の後面に積層された電極絶縁層と、
前記電極絶縁層の後面に積層され、前後方向から見て前記電極層と重複する導体層と、
前記交流電源に接続され、前後方向から見て前記導体層の少なくとも一部と重複する位置に配置され、前後方向において前記導体層と離間し、前記導体層に電圧を印加可能な給電部と、
前記給電部に接続され、前記飛翔体の導電部により前記電極層と前記導体層とが短絡した時の前記給電部の電位の変化を検出する検出部と、を有し、
前記交流電源は、周波数が3000kHzから30000kHzの高周波を生ずるものであることを特徴とする得点検知標的。
【請求項2】
前記導体層は、第1の導体層領域と、前後方向から見て前記第1の導体層領域と配置が異なる第2の導体層領域とを備え、
前後方向において、前記第1の導体層領域と前記第2の導体層領域との間には導体絶縁層が介在し、
前記第1の導体層領域及び前記第2の導体層領域は、前後方向から見た前記各導体層領域の境界部分において互いに重複していることを特徴とする請求項1に記載の得点検知標的。
【請求項3】
前記導体層は、前後方向から見て配置が異なる複数の導体層領域を備え、
前記各導体層領域は同一平面上に位置し、前後方向から見た前記各導体層領域の境界部分には互いに離間するようにギャップが形成されていて、前記ギャップは前記飛翔体の導電部の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載の得点検知標的。
【請求項4】
得点を表示する表示部と、
前記検出部からの検出結果に基づいて前記表示部に表示する得点を決定する制御部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記各導体層領域の境界部分において前記飛翔体の導電部により2つ以上の前記導体層領域と前記電極層とが短絡した際、いずれか1つの前記導体層領域に対応する得点を、前記表示部に表示するものとして決定することを特徴とする請求項2又は3に記載の得点検知標的。
【請求項5】
前記電極層の前面に積層され、複数の得点領域を備える標的が印刷された表面層をさらに有し、
前記標的の各得点領域は、前記導体層の各導体層領域と対応する位置に印刷され、
前記表面層と、前記電極層と、前記電極絶縁層と、前記導体層とは標的シートとして一体的に形成され、
前記標的シートが剥離可能に貼付され、前記給電部が設けられたベース部をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の得点検知標的。
【請求項6】
請求項5に記載の得点検知標的に使用するための標的シートであって、
先端に導電部を備えた飛翔体の前記導電部が通過する標的が印刷された表面層と、
前記表面層の後面に積層され、周波数が3000kHzから30000kHzの高周波を生ずる交流電源又はアースと接続可能な電極層と、
前記電極層の後面に積層された電極絶縁層と、
前記電極絶縁層の後面に積層され、第1の導体層領域と、前後方向から見て前記第1の導体層領域と配置が異なる第2の導体層領域とを備え、前後方向から見て前記電極層及び前記標的と重複する導体層と、
前記第1の導体層領域と前記第2の導体層領域とを前後方向に介在する導体絶縁層と、を有し、
前記第1の導体層領域及び前記第2の導体層領域は、前後方向から見た前記各導体層領域の境界部分において互いに重複していることを特徴とする標的シート。
【請求項7】
請求項5に記載の得点検知標的に使用するための標的シートであって、
先端に導電部を備えた飛翔体の前記導電部が通過する標的が印刷された表面層と、
前記表面層の後面に積層され、周波数が3000kHzから30000kHzの高周波を生ずる交流電源又はアースと接続可能な電極層と、
前記電極層の後面に積層された電極絶縁層と、
前記電極絶縁層の後面に積層され、前後方向から見て配置が異なる複数の導体層領域を備え、前後方向から見て前記電極層及び前記標的と重複する導体層と、を有し、
前記導体層の各導体層領域は同一平面上に位置し、前後方向から見た前記各導体層領域の境界部分には互いに離間するようにギャップが形成されていて、前記ギャップは前記飛翔体の導電部の幅よりも狭いことを特徴とする標的シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は得点検知標的及び標的シートに関し、特に吹矢ゲームやダーツゲーム等で使用される得点検知標的及び標的シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダーツの得点を検知するための的が知られている(例えば、特許文献1)。的は、一対の電極層の間に絶縁層を介在させることにより構成され、各電極層は直流電源に接続されている。ダーツの矢が的に刺さると、電極が互いに電気的に接続され電圧が変化する。この電圧変化を検出し、安定化回路で電圧を増幅するとともに電圧波形を整形して、判定回路により得点を検知する。
【0003】
また、特許文献2に記載のダーツゲーム装置の的では、一対の導電層の間に絶縁層が挟持されている。ダーツのポイント先端に設けられた所定の長さの導電部は、ダーツが的に刺さった時に一時的に導電層を導通させ、ダーツが完全に刺着すると導電層が非導通状態になる。これにより、同一のエリアに複数のダーツが刺着しても得点を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−23195号公報
【特許文献2】実開平1−136298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のダーツの矢の速度は約20km/hであるため、電極層が電気的に接続されたことによる電圧の変化を直流電源によって検出することができる。特許文献2に記載されている的においても、ダーツの矢の速度であれば一時的な導電層の導通を検出することができる。しかし、かかる技術を矢の速度が速い他の競技に適用することは困難であった。例えば、吹矢ゲームの矢の速度は約100km/hであり、アーチェリーの矢の速度は約150km/hであり、射撃の弾についてはそれ以上となるため、これらの競技では導電層の導通が瞬間的となる。例えば、導電層間の距離を100μmである場合には、吹矢ゲームの矢先が当該距離を通過する時間は3.6μsecとなる。
【0006】
特許文献1の的では電源として直流電源を用いているため、瞬間的な電圧の変化を検出するためには広域帯のオペアンプが必要になる。高速でスループットの高いオペアンプを用いると製造コストがかさむとともに、高速な立ち上がりの波形を再現するためには回路規模も大きくなってしまうため実用化が困難だった。
【0007】
そこで、本発明は、矢の速度が速い競技であっても、得点を検知することができる得点検知標的及び標的シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうちの第1の発明に係る得点検知標的は、先端に導電部を備えた飛翔体が刺さった際の得点を検知する得点検知標的であって、交流電源又はアースと接続される電極層と、前記電極層の後面に積層された電極絶縁層と、前記電極絶縁層の後面に積層され、前後方向から見て前記電極層と重複する導体層と、前記交流電源に接続され、前後方向から見て前記導体層の少なくとも一部と重複する位置に配置され、前後方向において前記導体層と離間し、前記導体層に電圧を印加可能な給電部と、前記給電部に接続され、前記飛翔体の導電部により前記電極層と前記導体層とが短絡した時の前記給電部の電位の変化を検出する検出部と、を有し、前記交流電源は、周波数が3000kHzから30000kHzの高周波を生ずるものであることを特徴としている。
【0009】
また、第2の発明に係る得点検知標的は、前記の第1の発明に係る得点検知標的であって、前記導体層は、第1の導体層領域と、前後方向から見て前記第1の導体層領域と配置が異なる第2の導体層領域とを備え、前後方向において、前記第1の導体層領域と前記第2の導体層領域との間には導体絶縁層が介在し、前記第1の導体層領域及び前記第2の導体層領域は、前後方向から見た前記各導体層領域の境界部分において互いに重複していることを特徴としている。
【0010】
さらに、第3の発明に係る得点検知標的は、前記第1の発明に係る得点検知標的であって、前記導体層は、前後方向から見て配置が異なる複数の導体層領域を備え、前記各導体層領域は同一平面上に位置し、前後方向から見た前記各導体層領域の境界部分には互いに離間するようにギャップが形成されていて、前記ギャップは前記飛翔体の導電部の幅よりも狭いことを特徴としている。
【0011】
また、第4の発明に係る得点検知標的は、前記第2の発明又は前記第3の発明に係る得点検知標的であって、得点を表示する表示部と、前記検出部からの検出結果に基づいて前記表示部に表示する得点を決定する制御部と、をさらに有し、前記制御部は、前記各導体層領域の境界部分において前記飛翔体の導電部により2つ以上の前記導体層領域と前記電極層とが短絡した際、いずれか1つの前記導体層領域に対応する得点を、前記表示部に表示するものとして決定することを特徴としている。
【0012】
さらに、第5の発明に係る得点検知標的は、前記の第1の発明から前記第4の発明のいずれかに係る得点検知標的であって、前記電極層の前面に積層され、複数の得点領域を備える標的が印刷された表面層をさらに有し、前記標的の各得点領域は、前記導体層の各導体層領域と対応する位置に印刷され、前記表面層と、前記電極層と、前記電極絶縁層と、前記導体層とは標的シートとして一体的に形成され、前記標的シートが剥離可能に貼付され、前記給電部が設けられたベース部をさらに有することを特徴としている。
【0013】
また、第6の発明に係る標的シートは、前記第5の発明に係る得点検知標的に使用するための標的シートであって、先端に導電部を備えた飛翔体の前記導電部が通過する標的が印刷された表面層と、前記表面層の後面に積層され、周波数が3000kHzから30000kHzの高周波を生ずる交流電源又はアースと接続可能な電極層と、前記電極層の後面に積層された電極絶縁層と、前記電極絶縁層の後面に積層され、第1の導体層領域と、前後方向から見て前記第1の導体層領域と配置が異なる第2の導体層領域とを備え、前後方向から見て前記電極層及び前記標的と重複する導体層と、前記第1の導体層領域と前記第2の導体層領域とを前後方向に介在する導体絶縁層と、を有し、前記第1の導体層領域及び前記第2の導体層領域は、前後方向から見た前記各導体層領域の境界部分において互いに重複していることを特徴としている。
【0014】
また、第7の発明に係る標的シートは、前記第5の発明に係る得点検知標的に使用するための標的シートであって、先端に導電部を備えた飛翔体の前記導電部が通過する標的が印刷された表面層と、前記表面層の後面に積層され、周波数が3000kHzから30000kHzの高周波を生ずる交流電源又はアースと接続可能な電極層と、前記電極層の後面に積層された電極絶縁層と、前記電極絶縁層の後面に積層され、前後方向から見て配置が異なる複数の導体層領域を備え、前後方向から見て前記電極層及び前記標的と重複する導体層と、を有し、前記導体層の各導体層領域は同一平面上に位置し、前後方向から見た前記各導体層領域の境界部分には互いに離間するようにギャップが形成されていて、前記ギャップは前記飛翔体の導電部の幅よりも狭いことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
前記の第1の発明に係る得点検知標的よれば、電源として交流電源の周波数が3000kHzから30000kHzの高周波を用いることにより、飛翔体の導電部による電極層と導体層との短絡が瞬間的であっても、当該短絡を検出することができる。平常状態では、交流電源又はアースに接続された電極層と給電部との間に導体層が存在するため、給電部には交流電流の高周波電流が流れないが、飛翔体の導電部により電極層と導体層とが短絡すると、給電部と導体層とがコンデンサとして機能し、交流電源から給電部に高周波電流が流れる。当該電流を検出部で検出することにより、飛翔体が刺さった際の得点を検知することができる。
【0016】
前記の第2の発明に係る得点検知標的によれば、第1の導体層領域と第2の導体層領域とが、それらの境界部分において互いに重複しているため、かかる境界部分を飛翔体の導電部の少なくとも一部が通過した場合であっても、検出部が第1の導体層領域及び第2の導体層領域に対応する給電部の電位の変化を検出することができる。これにより、境界部分においても確実に得点を検知することができる。また、第1の導体層領域と第2の導体層領域との間に導体絶縁層が介在しているため、第1の導体層領域と電極層とが短絡した場合と、第2の導体層領域と電極層とが短絡した場合と、を区別して検出器で検出することにより、複数の得点を検出することができる。
【0017】
前記の第3の発明に係る得点検知標的によれば、複数の導体層領域が同一平面上に位置しているため、導体層の厚みを薄くすることができるとともに、得点検知標的の製造コストを低減することができる。また、各導体層領域の間のギャップが飛翔体の導電部の幅よりも狭いため、境界部分を飛翔体の導電部が通過した場合であっても、検出部が各導体層領域に対応する給電部の電位の変化を検出することができる。これにより、境界部分においても確実に得点を検知することができる。さらに、複数の導体層領域が同一平面上において互いに離間しているため、いずれか1つの導体層領域と電極層とが短絡した場合と、その他の導体層領域と電極層とが短絡した場合とを区別して検出器で検出することにより、複数の得点を検出することができる。
【0018】
前記の第4の発明に係る得点検知標的によれば、2つ以上の導体層領域の境界部分を飛翔体の導電部が通過した場合には、制御部がいずれか1つの導体層領域に対応する得点を表示部に表示させるものとして決定するため、表示部に正確な得点を表示させることができる。得点検知標的を用いる競技のうち、例えば吹矢ゲームでは2つの得点領域の境界部分に矢が刺さった際は、より得点の高い領域の得点を得るというルールであるため、本発明を用いることにより境界線に矢が刺さった場合でも正確に高い方の得点を表示部に表示させることができる。
【0019】
前記の第5の発明に係る得点検知標的によれば、標的の各得点領域が導体層の各導体層領域と対応する位置に印刷された表面層を有しているため、得点検知標的に飛翔体が刺さった場合に、その刺さった位置の属する得点領域に応じた得点を検知することができる。また、表面層と、電極層と、電極絶縁層と、導体層とが標的シートとして一体的に形成されベース部に剥離可能に貼付されているため、使用済の標的シートを剥がし取って新しい標的シートに張り替えるだけで、簡易かつ低コストで新たな標的にすることができる。
【0020】
前記の第6の発明に係る標的シートによれば、表面層と、電極層と、電極絶縁層と、第1の導体層領域と、導体絶縁層と、第2の導体層領域とが、当該順番で積層されているため、電極層を周波数が3000kHzから30000kHzの高周波の交流電源に接続することにより、飛翔体の導電部の通過速度が速く、当該導電部による電極層と第1又は第2の導体層領域との短絡が瞬間的であっても、標的シートにおいて飛翔体の導電部が通過した部分の得点を検知することができる。さらに、第1の導体層領域と第2の導体層領域とが、それらの境界部分において互いに重複しているため、かかる境界部分を飛翔体の導電部が通過した場合であっても得点を検知することができる。また、第1の導体層領域と第2の導体層領域との間に導体絶縁層が介在しているため、第1の導体層領域と電極層とが短絡した場合と、第2の導体層領域と電極層とが短絡した場合とを区別して検出することにより、複数の得点を検出することができる。
【0021】
前記の第7の発明に係る標的シートによれば、表面層と、電極層と、電極絶縁層と、導体層とが当該順番で積層されているため、簡易な構造によって標的シートの得点を検知することができる。また、電極層を周波数が3000kHzから30000kHzの高周波の交流電源に接続することにより、飛翔体の速度が速い場合であっても標的シートを通過した飛翔体の得点を検知することができる。
さらに、各導体層領域がそれらの境界部分において互いに離間しているため、いずれか1つの導体層領域と電極層とが短絡した場合と、その他の導体層領域と電極層とが短絡した場合とを区別して検出することにより、複数の得点を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る得点検知標的の斜視図である。
図2図1に示した得点検知標的の分解斜視図である。
図3図1に示した得点検知標的の断面図である。
図4図1に示した得点検知標的の回路図である。
図5図3に示した得点検知標的の標的シートを矢の導電部が通過中の状態を示す断面図である。
図6図3に示した得点検知標的の第1の外側導体層領域と第2の内側導体層領域との境界部分を矢の導電部が通過中の状態を示す断面図である。
図7図7(a)はフィルタ部における電圧波形であり、図7(b)は検出部における電圧波形である。
図8】得点検知標的に矢が刺さった時の得点を示すタイムチャートである。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る第2センサーシートの正面図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る得点検知標的の境界部分を矢の導電部が通過中の状態を示す断面図である。
図11図11(a)は本発明の第3の実施の形態に係る得点検知標的の回路図であり、図11(b)は本発明の第4の実施の形態に係る得点検知標的の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施の形態に係る得点検知標的1を、図1乃至図8に基づき説明する。なお、図2に示すように、上下、前後、左右方向を定義する。得点検知標的1は、吹矢ゲームに使用される標的であって、先端に導電部40が設けられた飛翔体である矢4(図5)が刺さった時の得点を表示する表示部10にケーブル10Cにより電気的に接続されている。表示部10は、得点を表示する得点表示部10Aと、合計得点を表示する合計表示部10Bとを有している。
【0024】
得点検知標的1は、図2に示すように、表面層11と、電極層12と、電極絶縁層13と、第1の導体層領域14と、導体絶縁層15と、第2の導体層領域16と、ベース部17と、から構成されている。表面層11、電極層12、電極絶縁層13、第1の導体層領域14、導体絶縁層15、及び第2の導体層領域16は、前方から後方に向かって当該順番で一体的に積層形成され標的シート33となる。
【0025】
表面層11は、図1に示すように、略矩形であって前面には標的2が印刷されている。表面層11は、紙、織布、不織布、樹脂製のフィルム又はシートのうちから任意の素材を選択できる。標的2はグラビア印刷又はフレキソ印刷等によって表面層11に印刷され、7点領域21と、5点領域22と、3点領域23と、1点領域24と、各領域の境界となる境界線25とを備えている。各領域は、標的2の中心軸Cを同心円とする円環形状であって、径方向の幅がそれぞれ略同一である。標的2の視認性を上げるために、5点領域22及び1点領域24は着色されている。中心軸Cの軸方向は、図2における前後方向であって本発明の積層方向に相当する。
【0026】
電極層12は、表面層11と同一形状の略矩形であって、導電性を有する金属箔を表面層11に積層することにより表面層11の後面に形成される。電極層12は、金属箔を接着剤で張り合わせる接着法、又は金属箔を熱プレスにより貼り付けるラミネート法によって表面層11の後面に積層される。電極層12の厚みは、検出精度を向上させるために5μm以上であることが望ましい。
電極層12は、導電部40の先端部分が標的シート33を通過した際にコンデンサの電極として機能し、アース12Aに電気的に接続されている。電極層12における円形の点線は1点領域24の外縁に対応しており、電極絶縁層13、導体絶縁層15、及びベース部17における点線も同様である。
【0027】
電極絶縁層13は、表面層11と同一形状の略矩形であって絶縁性を有し、紙、織布、不織布、樹脂製のフィルム又はシート等の絶縁性の任意の素材を選択できる。電極絶縁層13は、電極層12と第1の導体層領域14とを絶縁するための層であって、電極層12とともに接着法またはラミネート法によって表面層11に積層される。表面層11、電極層12、及び電極絶縁層13が一体的に形成されることにより、第1センサーシート31がシート状に構成される。
【0028】
第1の導体層領域14は、第1の内側導体層領域14Aと、第1の内側導体層領域14Aと径方向に離間した第1の外側導体層領域14Bとから構成される。第1の内側導体層領域14Aは円形状をなし、標的2の7点領域21に対応するように配設されていて、前後方向から見て7点領域21と略一致している。第1の外側導体層領域14Bは円環形状をなし、標的2の3点領域23に対応するように配設されていて、前後方向から見て3点領域23と略一致している。第1の導体層領域14は、金属薄膜の他、導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インクを用い、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版、又はインクジェット印刷等により導体絶縁層15の前面に積層することができる。金属を真空蒸着させる蒸着法、スパッタリング法、CVD法、または導電性ペーストを用いたブレード法によって第1の導体層領域14を積層してもよい。
【0029】
導体絶縁層15は、電極絶縁層13と同一形状の略矩形であって絶縁性を有し、紙、織布、不織布、樹脂製のフィルム又はシートのうち任意の素材を選択できる。導体絶縁層15は、第1の導体層領域14と第2の導体層領域16とを絶縁するための層であって、その前面に第1の導体層領域14が積層され、後面に第2の導体層領域16が積層される。
【0030】
第2の導体層領域16は、第2の内側導体層領域16Aと、第2の内側導体層領域16Aと径方向に離間した第2の外側導体層領域16Bとから構成される。第2の内側導体層領域16Aは円環形状をなし、標的2の5点領域22に対応するように配設されていて、前後方向から見て5点領域22と略一致している。第2の内側導体層領域16Aの内径は第1の内側導体層領域14Aの外径よりも僅かに小さく、外径は第1の外側導体層領域14Bの内径よりも僅かに大きい。第2の外側導体層領域16Bは円環形状をなし、標的2の1点領域24に対応するように配設されていて、前後方向から見て1点領域24と略一致している。第2の外側導体層領域16Bの内径は、第1の外側導体層領域14Bの外径よりも僅かに小さい。図3の点線で示すように、第2の内側導体層領域16A及び第2の外側導体層領域16Bは、前後方向から見て第1の内側導体層領域14A及び第1の外側導体層領域14Bと少なくとも一部が重なっている。換言すると、第1の導体層領域14と第2の導体層領域16とは、前後方向から見て互いの境界部分において重複していて、当該境界部分は標的2の境界線25と重複している。導体絶縁層15の前後面に、第1の導体層領域14及び第2の導体層領域16がそれぞれ積層されることにより、第2センサーシート32が形成される。
【0031】
第1センサーシート31と第2センサーシート32とを接着法、又はラミネート法等によって貼り合わせることにより、標的シート33となる。標的シート33は、ベース部17に対して剥離可能に貼付される。なお、標的シート33を1枚のシート状にした状態において、電極層12と第1の導体層領域14との前後方向の距離は約100μmとなる。
【0032】
ベース部17には、4つの給電部18が径方向に等間隔で並ぶように埋設されている。図3に示すように、4つの給電部18は、それぞれ第1の内側導体層領域14A、第2の内側導体層領域16A、第1の外側導体層領域14B、第2の外側導体層領域16Bに対応するように配置されている。
詳細には、図2の点線で示すように、4つの給電部18は前後方向から見て、それぞれ第1の内側導体層領域14A、第1の外側導体層領域14B、第2の内側導体層領域16A、及び第2の外側導体層領域16Bと重複している。給電部18は、ベース部17の前端面17Aよりも後方に窪んだ位置に配置されることにより、対応する第1の導体層領域14及び第2の導体層領域16と前後方向に離間している。
【0033】
次に、図4に基づいて得点検知標的1の回路構成について説明する。交流電源41は、ISM帯の周波数を有する高周波であって、増幅回路42によって信号が増幅される。交流電源41の周波数は、3000kHzから30000kHzが好ましく、7000kHzから20000kHzがより好ましく、11000kHzから15000kHzが最も好ましい。増幅回路42で分岐された4つの配線は、それぞれ標的2の7点領域21、5点領域22、3点領域23、1点領域24に刺さった矢4の得点を検知するための回路であって、それぞれ負荷抵抗44に接続されるとともにフィルタ回路43を介して給電部18に接続される。フィルタ回路43は、特定の周波数を検出するための回路であって、その出力は信号波形を検波する検出回路45に入力される。
【0034】
4つに分岐された各回路は同一の構成であるため、以下、1つの回路についてのみ説明する。増幅回路42は、キャリア信号を増幅するためのオペアンプ42Aと、整合抵抗42Bと、から構成されている。フィルタ回路43は、増幅回路42によって増幅された高周波信号を適切な信号レベルに減衰させる減衰器43Aと、減衰器43Aからの出力信号を変圧するトランス43Bと、トランス43Bによって変圧された信号を増幅するオペアンプ43Cとから構成されている。検出回路45は、所定の周波数信号を抽出するバンドパスフィルタ45Aと、バンドパスフィルタ45Aを通過した高周波信号を包絡線検波するダイオード45Bとから構成されている。標的シート33において、給電部18とアースに接続されている電極層12との間には、交流電源にもアースにも接続されていない第1の導体層領域14及び第2の導体層領域16が配設されているため、増幅回路42からの高周波電流は給電部18に流れることなく負荷抵抗44に流れる。フィルタ回路43及び検出回路45は、本発明の検出部に相当する。
【0035】
検出回路45によって検出されたバースト信号は、GPIO46(General Purpose Input/Ouput)によって処理されSBC47(Server Based Computing)に出力される。SBC47は、本発明の制御部に相当する。
【0036】
次に、得点検知標的1に矢4が刺さった際の得点検知の方法について説明する。矢4の導電部40の先端部分は、表面層11、電極層12、第1の導体層領域14、導体絶縁層15、第2の導体層領域16、を当該順番で通過し、最終的にベース部17に刺着する。
図5に示すように、矢4が標的2の5点領域22に刺さると、瞬間的に電極層12と第2の内側導体層領域16Aとが短絡する。そうすると、給電部18と第2の内側導体層領域16Aとがコンデンサとして機能し、給電部18に瞬間的に高周波電流が流れる。吹矢ゲームの矢4の速度は、時速約100km/hと極めて高速であり、電極層12と第2の内側導体層領域16Aとが短絡している時間は約3.6μsecである。これによって高周波電流がパルス変調されてスペクトラムが広がり、その帯域幅も拡張される。高周波電流の電流波形が広帯域の状態で受信した場合、波形の再現に必要となる帯域以外の周波数も増幅されてしまい受信感度が低下するため、本実施の形態では、フィルタ回路43及び検出回路45による狭帯域受信方式によって余分な帯域の成分を除去し、受信感度を高めている。
【0037】
フィルタ回路43に流入した高周波電流は、トランス43Bの一次巻線と、給電部18及び第2の内側導体層領域16Aのコンデンサと、によるLC共振回路によって特定の周波数領域のバースト信号が抽出される(図7(a))。t0は、電極層12と第2の内側導体層領域16Aとが短絡してフィルタ回路43に高周波電流が流入した時を示す。フィルタ回路43から出力された信号は、バンドパスフィルタ45Aによって波形再現に必要な帯域の周波数を取り出し、ダイオード45Bで包絡線検波を行うことにより復調する。
【0038】
検波波形は、図7(b)に示すようなパルス波形となり、変化部分を微分してGPIO46を介してSBC47に入力されると同時に、得点に対応したLED点灯の信号もSBC47に入力される。SBC47は、図8に示すように、t1で7点の信号が入力されると表示部10の得点表示部10Aに7点を表示させる。t2は、図6に示すように第1の外側導体層領域14Bと第2の内側導体層領域16Aとの重複部分、つまり5点領域22と3点領域23との境界部分に矢4の導電部40が通過中の状態である。このとき、GPIO46及びSBC47には、3点と5点の両方の信号が入力される。SBC47は、点数が高い方である5点を得点表示部10Aに表示し、t1のときの7点に5点を加算した12点を合計表示部10Bに表示する。同様に、t3では得点表示部10Aに7点を表示し、合計表示部10Bに19点を表示する。t4では得点表示部10Aに3点を表示し、合計表示部10Bに22点を表示する。t5では、得点表示部10Aに3点を表示し、合計表示部10Bに25点を表示する。
【0039】
上述した得点検知標的によると、電源として交流電源41の周波数が3000kHzから30000kHzの高周波を用いることにより、矢4が得点検知標的1に刺さった際の電極層12と第1の導体層領域14又は第2の導体層領域16との短絡が瞬間的であっても、簡易な回路構成によって当該短絡を検出することができる。平常状態では、交流電源41又はアース12Aに接続された電極層12と給電部18との間に、交流電源41にもアース12Aにも接続されていない第1の導体層領域14と第2の導体層領域とが配設されているため、給電部18には交流電源41の高周波電流が流れないが、得点検知標的1に矢4が刺さると電極層12と第1の導体層領域14又は第2の導体層領域16とが瞬間的に短絡して給電部18と第1の導体層領域14又は第2の導体層領域16とがコンデンサとして機能し、交流電源41から給電部18に高周波電流が流れる。当該電流をフィルタ回路43及び検出回路45で検出することにより、吹矢ゲームの得点を検知することができる。
【0040】
また、境界部分において第1の導体層領域14と第2の導体層領域16とが互いに重複しているため、境界部分を矢4の導電部40が通過した場合であってもフィルタ回路43及び検出回路45が第1の導体層領域14及び第2の導体層領域16に対応する給電部18の電位の変化を検出することができる。これにより、境界部分においても確実に得点を検知することができる。また、第1の導体層領域14と第2の導体層領域16との間に導体絶縁層15が介在しているため、第1の導体層領域14と電極層12とが短絡した場合と、第2の導体層領域16と電極層12とが短絡した場合と、を区別して検出することにより、複数の得点を検出することができる。
【0041】
さらに、第1の導体層領域14と第2の導体層領域16との境界部分を矢4の導電部40が通過した場合には、SBC47が第1の導体層領域14又は第2の導体層領域16のいずれか一方に対応する得点を、表示部10に表示する得点として決定するため、表示部10に確実に得点を表示させることができる。得点検知標的1を用いる競技のうち、例えば吹矢ゲームでは、複数の得点領域の境界部分に矢4が刺さった場合は、より点数の高い領域の得点を得るとことができるルールであるため、本発明を用いることにより、標的2の境界線25に矢4が刺さった場合でも、点数の高い領域の得点を正確に表示部10に表示させることができる。
【0042】
さらに、第1の導体層領域14及び第2の導体層領域16に対応する複数の得点領域を備える標的2が印刷された表面層11を有しているため、標的2の各得点領域に矢4が刺さった際に、第1の導体層領域14及び第2の導体層領域と電極層12との短絡に基づいて得点を検知することができる。
また、表面層11と、電極層12と、電極絶縁層13と、第1の導体層領域14と、導体絶縁層15と、第2の導体層領域16とが標的シート33として一体的に形成されベース部17に剥離可能に貼付されているため、使用済みの標的シート33を剥がし取り新たな標的シート33を張り替えることにより、簡易かつ低コストで新たな標的にすることができる。
【0043】
また、表面層11と、電極層12と、電極絶縁層13と、第1の導体層領域14と、導体絶縁層15と、第2の導体層領域16とが当該順番で積層されているため、簡易な構造によって標的シート33において矢4の導電部40が通過した部分の得点を検知することができる。また、電極層12を周波数が3000kHzから30000kHzの高周波の交流電源41に接続することにより、矢4の速度が速い場合であっても標的シート33において矢4の導電部40が通過した部分の得点を検知することができる。
【0044】
さらに、境界部分において第1の導体層領域14と第2の導体層領域16とが互いに重複しているため、境界部分を矢4の導電部40が通過した場合であっても得点を確実に検知することができる。また、第1の導体層領域14と第2の導体層領域16との間に導体絶縁層15が介在しているため、第1の導体層領域14と電極層12とが短絡した場合と、第2の導体層領域16と電極層12とが短絡した場合と、を区別して検出することにより、複数の得点を検出することができる。
【0045】
次に、図9及び図10に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同一の構成は、同一の符号を付し説明を省略する。
【0046】
第2の実施の形態の標的シート133は、図10に示すように、第1センサーシート31と、導体層114と、から構成される。導体層114は金属箔製の導体であって、複数の導体層領域、すなわち中心導体層領域115と、第1中間導体層領域116と、第2中間導体層領域117と、外縁導体層領域118とから構成されている。第2の実施の形態では、導体層114として厚さ7μm程度のアルミニウム箔を用いている。中心導体層領域115は標的2の7点領域21に対応し、第1中間導体層領域116は5点領域22に対応し、第2中間導体層領域117は3点領域23に対応し、外縁導体層領域118は1点領域24に対応している。
【0047】
各導体層領域は同一平面上に位置し、各導体層領域の間には略円弧形状の間隙であるギャップ114aが形成されている。ギャップ114aの幅は、矢4の導電部40の先端部分の直径Lよりも狭い。各ギャップ114aには、各導体層領域を繋ぐとともに各導体層領域が互いに分離しないよう保持するブリッジ部114Aが設けられている。
なお、ブリッジ部114Aは、第1センサーシート31と導体層114とを貼り合わせた後、すべて除去される。これにより、各ギャップ114aが円環形状となり、各導体層領域は対応するギャップ114aによって離間され、互いに絶縁した状態となる。
【0048】
図10に示すように、第1中間導体層領域116と第2中間導体層領域117との間のギャップ114aの部分を矢4の導電部40の先端部分が通過すると、ギャップ114aの幅が導電部40の直径Lよりも狭いため、第1中間導体層領域116及び第2中間導体層領域117と電極層12とが短絡し、図8のt2と同様の状態となる。このとき、SBC47は、点数が高い方である第1中間導体層領域116の5点を得点として決定し、得点表示部10Aに表示させる。
【0049】
上述した導体層114では、中心導体層領域115、第1中間導体層領域116、第2中間導体層領域117、及び外縁導体層領域118が同一平面上に位置しているため、導体層114の厚みを薄くするとともに得点検知標的101の製造コストを削減することができる。また、各導体層領域の間のギャップ114aが導電部40の直径Lよりも狭いため、境界部分を矢4の導電部40が通過した場合であっても各導体層領域に対応する給電部18の電位の変化を検出することができる。これにより、境界部分においても確実に得点を検知することができる。
【0050】
さらに、各導体層が同一平面上において互いに離間しているため、中心導体層領域115と電極層12とが短絡した場合と、第1中間導体層領域116と電極層12とが短絡した場合と、第2中間導体層領域117と電極層12とが短絡した場合と、外縁導体層領域118と電極層12とが短絡した場合とを、それぞれ区別して検出することにより、4つの得点を検出することができる。また、電極層12を周波数が3000kHzから30000kHzの高周波の交流電源41に接続することにより、矢4の速度が速い場合であっても標的シートにおいて矢4の導電部40が通過した部分の得点を検知することができる。
【0051】
次に、本発明の第3の実施の形態について図11(a)を参照して説明する。第1の実施の形態と同一の構成は、同一の符号を付し説明を省略する。
【0052】
第3の実施の形態の回路図では、トランス43Bは可変トランスであって、一次側のコイル243Bとコンデンサ248とが並列共振回路となっている。トランス43Bのインダクタンスは、平常状態において、コイル243Bとコンデンサ248とが並列共振状態となるように設定される。コンデンサ248の一端は減衰器243Aに接続し他端は負荷抵抗244に接続するとともに、コイル243Bの一端も減衰器243Aに接続し他端は負荷抵抗244に接続している。トランス43Bの二次側のコイル243Cは、コンデンサ249に接続されている。バンドパスフィルタ45Aからの信号は、第1の実施の形態と同様にGPIO46及びSBC47に出力される(図4)。
【0053】
平常状態では、交流電源41からの高周波は、給電部18に流れることなく負荷抵抗244に流れる。このとき、コイル243Bとコンデンサ248とが並列共振状態であるため、回路に流れる電流は最小となる。矢4が標的2に刺さって標的シート33が瞬間的に仮想コンデンサ233として機能すると、仮想コンデンサ233にはコンデンサ248が並列に接続されているため、交流電源41から見た静電容量が増加する。これにより、回路に流れる高周波電流の周波数が共振周波数からズレて、共振回路のインピーダンスが減少して回路に流れる高周波電流の振幅が増加する。トランス43Bによってかかる高周波電流を帯域増幅し、以降の回路によって振幅の変化分を検出する。
【0054】
次に、本発明の第4の実施の形態について図11(b)を参照して説明する。第1の実施の形態及び第3の実施の形態と同一の構成は、同一の符号を付し説明を省略する。
【0055】
図11(b)に示すように、第4の実施の形態の回路図では、トランス43Bの一次側のコイル243Bとコンデンサ348とが直列共振回路となっている。トランス43Bのインダクタンスは、平常状態において、コイル243Bとコンデンサ348とが直列共振状態となるように設定される。コンデンサ348の一端はコイル243Bに接続し他端はアースに接続するとともに、コイル243Bの一端は減衰器243Aに接続し他端はコンデンサ348及び給電部18に接続している。バンドパスフィルタ45Aからの信号は、第1の実施の形態及び第3の実施の形態と同様にGPIO46及びSBC47に出力される(図4)。
【0056】
平常状態では、交流電源41からの高周波は、給電部18に流れることなくコンデンサ348に流れるため、給電部18の静電容量は小さくなる。このとき、コイル243Bとコンデンサ348とが直列共振状態であるため、回路に流れる電流は最大となる。矢4が標的2に刺さって標的シート33が瞬間的に仮想コンデンサ233として機能すると、仮想コンデンサ233にはコンデンサ348が並列に接続されているため、交流電源41から見た静電容量が増加する。これにより、回路に流れる高周波電流の周波数が共振周波数からズレて、共振回路のインピーダンスが増加して回路に流れる高周波電流の振幅が減少する。トランス43Bによって高周波電流を帯域増幅し、以降の回路によって振幅の変化分を検出する。
【0057】
本発明による得点検知標的及び標的シートは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0058】
上述の各実施の形態では、給電部18と各導体層領域とを前後方向に離間して絶縁していたが、給電部18と各導体層領域との間に給電絶縁層を介在させることで絶縁してもよい。
【0059】
また、上述の実施の形態では、給電部18はベース部17に埋設されていたが、給電部18を給電層としてベース部17の上に積層形成してもよい。この場合には、導体層と給電層との間に絶縁層を配設する。
【0060】
さらに、上述の実施の形態では、得点検知標的1はケーブル10Cにより表示部10に接続されたが、wifiやBluetooth(登録商標)等の無線通信によって互いに接続してもよい。また、得点検知標的1の得点は、スマートフォンやタブレットなどの端末に直接表示し、アプリケーションソフトウェアによって得点の判定を行ってもよい。さらに、表示部10に所定時間の経過を音声で知らせる音声タイマーを搭載してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る得点検知標的及び標的シートは、吹矢ゲーム、ダーツゲーム、アーチェリー、弓道、射的等において利用される。
【符号の説明】
【0062】
1 得点検知標的
2 標的
10 表示部
11 表面層
12 電極層
12A アース
13 電極絶縁層
14 第1の導体層領域
14A 第1の内側導体層領域
14B 第1の外側導体層領域
15 導体絶縁層
16 第2の導体層領域
16A 第2の内側導体層領域
16B 第2の外側導体層領域
17 ベース部
18 給電部
33,133 標的シート
41 交流電源
45 検出回路
47 SBC
114 導体層


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11