特許第6908295号(P6908295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908295
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】湿式クリーナー
(51)【国際特許分類】
   A47L 7/00 20060101AFI20210708BHJP
   A47L 11/30 20060101ALI20210708BHJP
   A47L 9/02 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   A47L7/00 A
   A47L11/30
   A47L9/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-205959(P2019-205959)
(22)【出願日】2019年11月14日
(65)【公開番号】特開2021-78532(P2021-78532A)
(43)【公開日】2021年5月27日
【審査請求日】2021年3月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505060174
【氏名又は名称】有限会社 川本技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】川本栄一
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−505329(JP,A)
【文献】 特開2016−30050(JP,A)
【文献】 特開2011−36277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 7/00
A47L 11/30
A47L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内の電動ファンの回転により吸引される吸引空気をケースの側面の吸い込み口から吸い込む本体部と、
蓋により閉鎖可能な清水タンクと端部が開放された汚水タンクとを具備するタンク部と、
清水タンクの清水を被浄化面に吹き出し、塵芥とともにこれを吸い込む吸引ヘッドと、
前記ケースに着脱自在に接続する第1接続面と、前記タンク部に着脱自在に接続する第2接続面と、前記開放された端部から汚水タンクの内周から離れた状態で汚水タンク内部に侵入する筒部と、前記汚水タンクの端部から汚水タンクの内周から離れた状態で汚水タンク内部に侵入するダクトと、前記筒部の先端に設けられたセパレータとを具備する基体部と、
前記吸引ヘッドにより吸い込まれた塵芥を前記汚水タンク内へ導入する集塵ホースとを有し、
前記セパレータは、周側壁に多数のスリットが設けられたキャップ体と、前記キャップ体の裾の下から汚水タンクに向けて外気を送る逆噴射ファンとを有し、夫々が前記電動ファンの回転により回転し、
前記筒部の中空の一端は前記キャップ体の内側に連通し、他端は前記吸い込み口に連通して、前記キャップ体の内側に取り込まれた吸引空気を前記本体部へ送り、
前記ダクトは、前記基体部の外周面に開口した外気取り入れ口から外気を取り込み、前記逆噴射ファンに供給し、
前記汚水タンクには、前記汚水タンクの天地が変わっても、前記キャップ体のスリットや裾が汚水に浸かることが避けられる位置に汚水の上限を示すマーカが付されていることを特徴とする湿式クリーナー。
【請求項2】
請求項1の湿式クリーナーにおいて、前記集塵ホースが前記汚水タンク内に開口する位置は、前記キャップ体の回転軸の軸線上において、前記キャップ体と重なり、前記マーカよりも上の位置であることを特徴とする湿式クリーナー。
【請求項3】
請求項1の湿式クリーナーにおいて、前記キャップ体と前記逆噴射ファンの回転軸は、クラッチを介して前記電動ファンの回転が伝えられること特徴とする湿式クリーナー。
【請求項4】
請求項1の湿式クリーナーにおいて、前記キャップ体と前記逆噴射ファンの回転軸は、前記吸引空気により回転する羽根車から回転が伝えられることを特徴とする湿式クリーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気体と液体を分離する液体分離機を備えた湿式クリーナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿式クリーナーは、被浄化面に洗浄液(水、洗剤等)を供給し被浄化面を洗浄しながら、被浄化面上の洗浄液及びこれに溶解/分散された汚れを吸引する。このような、湿式クリーナーとして例えば、特許文献1、特許文献2に示されるものが知られている。特許文献1の湿式クリーナーは、汚染水を吸込むための電動送風機と、汚染水を溜める汚水タンクとを掃除機筐体内に備えた湿式専用の掃除機である。一方、特許文献2の湿式クリーナーは、乾式の掃除機の吸引ホースの先に取り付けられ、乾式掃除機のモータの動力を利用して床面に洗浄液を供給して床面を洗浄しながら、床面上の洗浄液及びこれに溶解/分散された汚れを吸引し除去するアタッチメントである。
【0003】
これらの湿式クリーナーでは、回転式のセパレータを具備して水と気体とを分離している。セパレータは、吸引空気から水を分離し、後段の電動ファン等が水を吸い込むことによる故障を抑止する。電動ファンが動作中にセパレータが水に浸かると、水は瞬間的に電動ファンまで到達する。
【0004】
セパレータは、電動ファンの吸引空気を動力として回転するキャップ体を有している。キャップ体は、周面に多数の傾斜状のスリットが形成されており、回転することにより水をはね飛ばしてキャップ体内部への進入を止め、スリットを通してその内側へ空気を流れ込ませる。内側へ流れ込んだ空気は、電動ファンへと導かれる。
【0005】
また、外気から取り入れた清浄な空気を、回転するキャップ体の裾の下側から汚水タンク内に向けて吹き出し、キャップ体の遠心力の働かない隙間から侵入しようとする水を阻止する動的シールが知られており、特許文献1にその詳細が示されている。
【特許文献1】特許第5209991号公報
【特許文献2】特許第5374631号公報
【特許文献3】実用新案登録第3212852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの従来技術においては、汚水タンクは天地を保った状態で動作させることが前提である。水平姿勢が多少傾いても、セパレータが水に浸からないように、セパレータは汚水タンクの天井に配置されている。特許文献1の湿式専用の掃除機では、使用者が手にする先端ノズルがフレキシブルホースを介して掃除機に接続されており、先端ノズルの天地を替えても掃除機側の天地が変わるような転倒は殆ど起こり得ない。一方、特許文献2のアタッチメントは、掃除機のホース先に接続されており、使用者が手に持って操作するものであり、車の背もたれ部や垂直な壁や、或いは不注意にも天井面を清掃しようとして天地を替えてしまう使用例が想像できる。汚水タンクの天地が入れ替わると、汚水の抵抗で回転不足となり、キャップ体の縁と汚水タンクの隙間から、そしてキャップ体のスリットから、水と塵芥を含んだ吸引空気がセパレータ内部に侵入する。回転不足のキャップ体よる遠心力や、回転不足の逆噴射ファンによる清浄な空気の吹き出しでは、この侵入を防げないのである。セパレータ内部に侵入した水は、吸引空気にのってフレキシブルホースの中を瞬間的に移動し電動ファンへ到達するのである。例えば、特許文献3では、セパレータ内部に侵入した水が電動ファンへ到達することを阻止する装置が示されている。
【0007】
また、近年は、ステック型若しくはハンディ型の掃除機が普及している。このような掃除機を特許文献2のアタッチメントにより利用する場合には、ステック型の掃除機を床置きして、さらにフレキシブルホースを接続して、その先にアタッチメントを付けることで煩雑になり、本来ステック型の掃除機が持つ利便性が喪失する。
本発明は、液体分離機及びこれを利用した湿式クリーナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、ケース内の電動ファンの回転により吸引される吸引空気をケースの側面の吸い込み口から吸い込む本体部と、
蓋により閉鎖可能な清水タンクと端部が開放された汚水タンクとを具備するタンク部と、
清水タンクの清水を被浄化面に吹き出し、塵芥とともにこれを吸い込む吸引ヘッドと、
前記ケースに着脱自在に接続する第1接続面と、前記タンク部に着脱自在に接続する第2接続面と、前記開放された端部から汚水タンクの内周から離れた状態で汚水タンク内部に侵入する筒部と、前記汚水タンクの端部から汚水タンクの内周から離れた状態で汚水タンク内部に侵入するダクトと、前記筒部の先端に設けられたセパレータとを具備する基体部と、
前記吸引ヘッドにより吸い込まれた塵芥を前記汚水タンク内へ導入する集塵ホースとを有し、
前記セパレータは、周側壁に多数のスリットが設けられたキャップ体と、前記キャップ体の裾の下から汚水タンクに向けて外気を送る逆噴射ファンとを有し、夫々が前記電動ファンの回転により回転し、
前記筒部の中空の一端は前記キャップ体の内側に連通し、他端は前記吸い込み口に連通して、前記キャップ体の内側に取り込まれた吸引空気を前記本体部へ送り、
前記ダクトは、前記基体部の外周面に開口した外気取り入れ口から外気を取り込み、前記逆噴射ファンに供給し、
前記汚水タンクには、前記汚水タンクの天地が変わっても、前記キャップ体のスリットや裾が汚水に浸かることが避けられる位置に汚水の上限を示すマーカが付されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筒部とダクトによりセパレータを汚水タンクの開放端よりも奥側に配置出来るので、セパレータを汚水タンクの容量のほぼ中心に持ってくることができる。この結果、汚水の上限を示すマーカを適当に定めれば、湿式クリーナーの天地がひっくり返っても、セパレータが水に浸かることを避けることが可能になる。また、集塵ホースの開口は、キャップ体に重なる位置に配置されているため、横倒し状態であっても、集塵ホースの開口は汚水に浸からないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1による湿式クリーナーの側面切断図である。
図2】セパレータの分解図である。
図3】逆噴射ファンの詳細図である。
図4】湿式クリーナーの使用方法を示す図である。
図5】湿式クリーナーの作用を示す図である。
図6】実施例2による湿式クリーナーの側面切断図である。
図7】他の改良点を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を示して説明する。各実施例の湿式クリーナー1では、フレキシブルホースを介さないため、特許文献3に示すような対応を取ることが難しい。各実施例では、汚水タンクとセパレータの位置関係の見直しを行い、改良した構成を取り入れている。各実施例の湿式クリーナー1は、所謂ステック型若しくはハンディ型と呼ばれるクリーナーである。
【実施例1】
【0012】
図1は本実施例による湿式クリーナー1の側面切断図である。湿式クリーナー1は、本体部10、基体部20、タンク部80、吸引ヘッド90とを有している。本体部10のケース13内には、電動モータ11と、電動モータ11の軸に連結して回転するファン12とからなる電動ファン9が設けられている。ファン12の回転により吸引空気を発生する。図において左側に位置するケース13の側面(以下、取付側面14と称する)の吸い込み口14aは、吸引空気を吸い込む入り口であり、右に位置する排気口15に排出する。ケース13には、使用者が手で把持出来るハンドル16が設けられており、又、ハンドル16には電動モータ11のスイッチ17が取り付けられている。本体部10の電源は、商用電源でも、電池でも良い。
【0013】
基体部20は、ケース13に接続する第1接続面21と、タンク部80に接続する第2接続面22とを有している。第1接続面21と第2接続面22とは、互いに背中合わせの面である。第2接続面22からは筒部30が突出しており、また、筒部30の外周には、基体部20の外周面23から外気に開口した外気取り入れ口24に連続するダクト33(図1Aにおいて、筒部30の外周に180度離れて単管一対がダクト33として設けている。)が設けられている。筒部30の先端32には、セパレータ100が取り付けられており、基体部20がタンク部80と接続したときに、筒部30及びダクト33の長さに応じてセパレータ100はタンク部80の内部に侵入するようになっている。このとき、筒部30及びダクト33は、汚水タンク81の内周から離れた状態になっている。筒部30は、他端31が第2接続面22側に開口している。基体部20には、羽根車50が設けられており、ファン12により発生した吸引空気により回転し、回転軸51を介してセパレータ100のキャップ体70を回転させる(以降、回転軸51の軸線Cとする)。本実施例では、羽根車50は筒部のセパレータ側に先端32側の内周に設けられている。尚、軸線Cは、電動モータ11やファン12の回転軸の軸線と一致しても、しなくても良い。
【0014】
基体部20は、ケース13の取付側面14に対して着脱自在に取り付けられる。基体部20の第1接続面21とケースの取付側面14とが対向して接続するとき、ケース13の取付側面14と第1接続面21との夫々の第1包囲部材19、25は、吸い込み口14aの周囲および、筒部30の他端31側の開口の周囲を取り囲んで互い包囲し、筒部30を通してキャップ体70の内部に取り込まれた空気が本体部10側に送られ、ファン12による吸引動作が行われるよう連通する。本実施例では、第1包囲部材19、25はリングであって、一方の内周が他方の外周を外嵌する寸法になっている。第1包囲部材19、25の結合を維持できるように、ケース13側のレバー18が、基体部20側の突起26に嵌合して、基体部20を固定している。
【0015】
タンク部80は、汚水タンク81と清水タンク82とを有しており、透明な樹脂素材により一体作成されている。タンク部80の汚水タンク81が基体部20に結合する。清水タンク82は、蓋83を閉じた時に閉鎖的な空間を内部に有しており、蓋83を開いて清水の補給が可能である。さらに、清水タンク82内から清水を吸引ヘッドへ送るパイプ84が設けられている。また、清水タンク82には、弁89が設けられており、パイプ84を経て清水が吸引ヘッド90送られるときに、清水タンク82内が負圧になると外気が取り込まれるようになっている。
【0016】
汚水タンク81は端部が開放された開放端85を有する容器であり、開放端85及び基体部20の第2接続面22の夫々には、筒部30、ダクト33及びセパレータ100の周囲を離間して包囲する第2包囲部材86、27が設けられている。第2包囲部材86、27は、夫々がリングであって、互いが着脱自在に結合するように雄雌の螺子87、28が設けられている。また、基体部20側には、開放端85が当接するパッキン29が設けられており、汚水タンク81と基体部20が接続したときに閉鎖的な水密空間が形成できようになっている。
【0017】
吸引ヘッド90は、清水タンクからの清水を被浄化面に吹きだし、塵芥とともにこれを吸い込む。吸引ヘッド90から続く集塵ホース91は、汚水タンク81の中央位置に開口92を有し、吸引ヘッド90から吸い込んだ塵芥を汚水タンク81に導入する。この開口位置は、キャップ体70の頭頂面71に重なるが(図5E参照)、頭頂面71とは回転軸51の軸線C上でやや離れた位置である。さらにマーカ88よりもキャップ体70に近い位置が望ましく、開口92が開いた方向はキャップ体70の反対方向である。このマーカ88は、汚水タンク81には、汚水を溜める上限(吸引ヘッド90を下とし、本体部10を上と下とした場合)を示している。マーカ88は、湿式クリーナー1が起立状態(回転軸51の軸線Cが鉛直方向に沿ってハンドル16が上側になる状態)において、セパレータ100の高さ位置よりも下側に付されている。集塵ホース91は、フレキシブルでは無く固体式のものがよい。また、吸引ヘッド90は、集塵ホース91に対して着脱自在にしておくことが望ましい。
【0018】
次に、図2を用いてセパレータ100について説明する。
セパレータ100は、逆噴射ファン60とキャップ体70及びセパレータシャーシ40を有している。ファン12が回転を始めると、その吸引力により羽根車50が回転軸51を回転させる。回転軸51には逆噴射ファン60とキャップ体70がナット73により固定されている。セパレータシャーシ40には、回転軸51と同軸に、清浄空気の気体通路となる回廊46を内部に有する外周壁41、外周壁41の内周側に逆噴射ファン60の通路となる円周状の溝42、及びさらに内周側同軸にリング状壁43が設けられている。外周壁41の頂面47の直上付近をキャップ体70の裾74が間隔を一定にして周回している。図2Cは、セパレータシャーシ40の一部断面であり、かつダクト33を取り外している。外周壁41には溝42に向けて、等角度間隔を置いて空気穴44が設けられており、外周壁41内の回廊46と溝42とが連通している。また、外周壁41にも空気穴45が設けられており、ダクト33に連通している。尚、開口48は、キャップ体70の内側に入った吸引空気が筒部30の中空へ流れる通路である。
【0019】
図3において、逆噴射ファン60は、溝42の中で回転する筒状のファンで有り、図3Aに示すように回転軸51から放射状に延びるスポーク61に連結している。また、図3Bに示すように、逆噴射ファン60の周壁63には、回転した際に図中下側から上側に気体を案内するための傾斜面を持つ複数のリブ62が等角度間隔に設けられている。図3Cは、逆噴射ファンのX−X断面であり、外周壁41、溝42との関係を示している。逆噴射ファン60、溝42及びリング状壁43は、筒部30へ到る吸引空気の通路に対するラビリンスシールを構成する。ダクト33を介して回廊46へ、そして空気穴44を通して溝42へは外気が取り込まれており、逆噴射ファン60のリブ62は、キャップ体70の裾74の下からこの外気を汚水タンク81に向けて押し出す。キャップ体70の裾74の下からキャップ体70の内側に入り込もうとする水は、この空気の流れにより押し出されるように作用する。このように、ラビリンスシールと逆噴射ファン60の作用により気体を動的に動かす動的シールが形成されている。
【0020】
図2に戻り、キャップ体70を説明する。キャップ体70は、回転軸51と同軸若しくはやや傘状の周側壁75に内側と外側を貫通する複数のスリット(貫通孔)72が等角度間隔で穿設されている。図では、スリットは、放射状であるが、斜めのスリットにしても良い。また、キャップ体70は、円筒状でも円錐台状でも、太鼓状でもよいが、底面が抜けて開放されていることが必要で有り、この底面が開放されることにより、吸引空気の通り道になり、キャップ体70を通過した吸引空気が、筒部30の中空へ導入されるのである。そして、この通り道を裾74が囲っているのである。キャップ体70の頭頂面71は、スリットとなるような貫通孔は設けられていない。キャップ体70は回転した際に、汚水タンク81内において飛び散った水を遠心力により振り払い、スリット72を通して水が吸い込まれないように働く。
【0021】
集塵ホース91には吸引ヘッド90が取り付けられている。このような吸引ヘッド90に関しては、例えば、特許第6391106号公報等に記載されている吸引ヘッドが好適に使用することができる。
【0022】
次に、本実施例による湿式クリーナー1の使用方法について、図4を用いて説明する。湿式クリーナー1の本体部10は、乾式クリーナーとしても利用可能なように、フィルタを備えた集塵部若しくはサイクロン分離機を、接続面部に対して接続出来るようになっている。そして、通常においては、乾式クリーナーとして専ら利用される。図4において例示した集塵部200は内部にフィルタ(ゴミパック)を備えており、ケース13側のレバー18が、集塵部200側の突起26に嵌合して着脱自在に固定されている。そして、必要に応じて、集塵部200を取り外し、基体部20、タンク部80、吸引ヘッド90を取り付ける。通常においては、基体部、タンク部、吸引ヘッドは一体的にして保管しておくのである。
【0023】
次に、湿式クリーナー1の作用について、図5を用いて説明する。筒部30とダクト33は、セパレータ100を汚水タンク81の容量のほぼ中心に持ってくるために採用された構成である。容量のほぼ中心とは、汚水タンク81の縦横、上下左右において、ほぼ中心であるということである。筒部30とダクトがなす縦断面積は、汚水タンク81の直径よりも小さくかつ、汚水の上限を示すマーカ88は、湿式クリーナー1の天地がひっくり返ったとき(図5A)、基体部20からセパレータ100のスリット72若しくは裾74を汚水が超えないような高さに設定されている。また、湿式クリーナー1が天地逆で斜め上向き(図5B)、横倒し状態(図5C、5D)でも、スリット72若しくは裾74が汚水に浸からないように、マーカ88の高さが定められている。尚、図5A−5Dにおいて、2点鎖線は、マーカ88まで溜められた汚水の水面を、各状態において示したものである。ところで、マーカの高さは、湿式クリーナー1の停止時にスリット72若しくは裾74が汚水に浸からない高さで決めて良い。湿式クリーナー1の運転時には、汚水タンク81内の汚水は、キャップ体70の回転に誘導されて回転しており、遠心力によりすり鉢状になっており、汚水タンク81の中央付近では液面は低下するからである。
【0024】
また、集塵ホース91の開口92は、軸線Cの延長線上でキャップ体70に重なる位置に配置されているため、図5Dのように横倒し状態であっても、集塵ホース91の開口92は汚水に浸からないようになっている。このため、汚水が吸引ヘッド90から逆流することはない。また、図5A図5Bのような位置関係であっても、キャップ体70が回転している限りにおいては、セパレータ100のスリット72若しくは裾74に水が降りかかったとしても、水に浸からない限りは水の浸入を妨げることが出来る。
【実施例2】
【0025】
本実施例1においては羽根車50が筒部30のセパレータ100側に設けられていたが、本実施例においては、羽根車50を第1接続面21側に設け、取付側面14と対向するようにした。他の構成要素については、実施例と同一である。羽根車50を第1接続面21側に設けているため、回転軸51が筒部30内を延在している。本実施例においては、羽根車50を汚水タンク81内に設けなくても良いため、基体部20からセパレータ100のスリット若しくは外周壁41の頂面47までの容量を大きくできる。また、実施例1では羽根車50の周辺部に吸引空気を当てることが望ましいが、このため筒部30自体の直径が大きくなりがちであったが、本実施例においては、その必要が無いため、筒部30の直径を小さくできるという効果がある。
【0026】
上記実施例1、2において、ダクト33を筒部30と一体となった一対の単管として示したが、1本でも多数本でも又はダクト33は筒部30とは分離したチューブ(例えば、シリコンチューブ)でも良い。また、二重同心の筒管を用いて、内側の空間を筒部30用に、外側の空間をダクト33用に利用しても良い。また、第1包囲部材25、19及び第2包囲部材86、27の連結に関しては、螺子式、レバー式いずれでも良く、他の如何なる結合手段も電気掃除機として目的とする程度の気密性、水密性に保てるならば、利用可能である。また、本実施例においては、汚水タンク81と清水タンク82は一体であったが、分離可能としても良い。
【0027】
また、上記実施例1、2においては、吸引空気により羽根車50を回すようにして、吸引空気を介して電動ファン9の回転を間接的に回転軸51に伝えていたが、電動ファン9の回転を直接的に回転軸51に伝えてもよい。この場合、電動ファン9からシャフトを伸ばして、その延長先に逆噴射ファン60とキャップ体70の回転軸51と着脱可能に連結できるクラッチを設けて、電動モータ11により直接的に逆噴射ファン60とキャップ体70を回転させる。例えば、電動モータ11側にクラッチシュウ、回転軸51側にクラッチドラムを取り付けて、電動モータ11の回転によりクラッチシュウとクラッチドラムが連結するような遠心クラッチが利用出来る。また、噛み合いクラッチ、摩擦クラッチ等を利用しても良い。このような構成により、羽根車50なしで逆噴射ファン60とキャップ体70を回転させることができることになり、羽根車50周りの部品の削減が可能である。尚、実施例1、2の羽根車50は、空気を媒介としたクラッチと言うことも出来るかもしれないが、この欄では機械的な連結を行うクラッチについて説明した。
【0028】
上記実施例1、2に対して、図7に示すように次のような変更を採用しても良い。図7においては、実施例1への変更を例にして説明する。
(1)タンク部80の汚水タンク81に対して、基体部20からセパレータ100のスリット72若しくは裾74の範囲の直径を清水タンク82の直径よりも膨大させる。この変更により、基体部20からセパレータ100のスリット72若しくは裾74の範囲における貯水量を増加させることが出来る。
(2)清水を吸引ヘッドへ送るパイプ84について、清水タンク82内において、柔軟なチューブ(例えば、シリコンチューブ)95と、その先端に付けられた錘94との構成を具備させる。このような構造により、湿式クリーナー1の天地がひっくり返ったとしても、常にパイプ84の入り口は清水の中に浸漬しているから、清水を清水タンク82から安定的に汲み上げることができる。
(3)清水タンク82内に設けられた弁89に替えて、清水タンク82の壁を貫通するパイプ93の出入り口を蓋83側と汚水タンク81側に開口させるように変更できる。図においては、蓋83側においてパイプ93は清水タンク82内に開口し、汚水タンク81側においては外気に向けて開口している。この逆でも良い。
(4)清水を吸引ヘッドへ送るパイプ84の途中箇所において、パイプ84を閉塞するレバー96を設ける。レバー96によりパイプ84による給水が停まり、湿式クリーナー1は水を噴出しないクリーナーとなるが、例えば、パイプ84にて給水して掃除することにより濡れた被浄化面を乾燥させるために用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 湿式クリーナー
9 電動ファン
10 本体部
14 取付側面
14a 吸い込み口
15 排気口
18 レバー
19、25 第1包囲部材
20 基体部
21 第1接続面
22 第2接続面
24 外気取り入れ口
30 筒部
33 ダクト
40 セパレータシャーシ
41 外周壁
42 溝
43 リング状壁
44、45 空気穴
46 回廊
47 頂面
48 開口
50 羽根車
51 回転軸
60 逆噴射ファン
62 リブ
63 周壁
70 キャップ体
71 頭頂面
72 スリット
74 裾
75 周側壁
80 タンク部
81 汚水タンク
82 清水タンク
85 開放端
86、27 第2包囲部材
88 マーカ
89 弁
90 吸引ヘッド
91 集塵ホース
92 開口
93 パイプ
94 錘
96 レバー
100 セパレータ
200 集塵部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7