特許第6908310号(P6908310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6908310タンク鏡板用断熱材、及びタンク鏡板用断熱材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6908310
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】タンク鏡板用断熱材、及びタンク鏡板用断熱材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20060101AFI20210708BHJP
   B65D 90/02 20190101ALI20210708BHJP
   F16L 59/02 20060101ALN20210708BHJP
【FI】
   F24H9/00 E
   B65D90/02 B
   !F16L59/02
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-97434(P2020-97434)
(22)【出願日】2020年6月4日
【審査請求日】2020年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】516202604
【氏名又は名称】株式会社冨士パーライト
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】大久保 憲
(72)【発明者】
【氏名】吉村 光博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲正
(72)【発明者】
【氏名】嵐 香信
【審査官】 堀川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05575402(US,A)
【文献】 国際公開第2006/130019(WO,A1)
【文献】 特表2008−542651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
B65D 90/02
F16L 59/02
F17C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク鏡板用断熱材であって、
タンク鏡板のうち隅部に位置しており第1の外半径を有する小半径部を覆う複数の小断熱材片であって、前記タンク鏡板の周方向に沿って分割された複数の小断熱材片と、
前記タンク鏡板のうち前記隅部よりも内側に位置しており、前記第1の外半径よりも大きな第2の外半径を有する大半径部を覆う複数の大断熱材片であって、前記タンク鏡板の周方向に沿って分割された複数の大断熱材片と、
を備え、
前記小断熱材片と、前記大断熱材片とは、それぞれ、
前記タンク鏡板の中心から所定距離にある外側辺と、
前記中心から前記所定距離よりも短い距離にあって、前記外側辺と対向すると共に、前記外側辺よりも短い内側辺と、を有する湾曲板状であって、
前記小断熱材片の湾曲の曲率半径は、前記大断熱材片の湾曲の曲率半径よりも小さく、
前記小断熱材片は、前記内側辺と、前記外側辺とのそれぞれについて、外表面側の辺の長さが内表面側の辺の長さよりも長くなるように、前記小断熱材片の厚さ方向に対して傾斜した切断面を有し、
前記大断熱材片は、前記内側辺と、前記外側辺とのそれぞれについて、外表面側の辺の長さが内表面側の辺の長さよりも長くなるように、前記大断熱材片の厚さ方向に対して傾斜した切断面を有する、タンク鏡板用断熱材。
【請求項2】
請求項1に記載のタンク鏡板用断熱材であって、
前記複数の小断熱材片は、
前記タンク鏡板の周方向に沿って前記中心から第1の距離に設けられる複数の第1小断熱材片と、
前記タンク鏡板の周方向に沿って前記中心から前記第1の距離よりも短い第2の距離に設けられる複数の第2小断熱材片と、
を含み、
前記複数の第1小断熱材片は、前記外側辺同士の長さと、前記内側辺同士の長さとがそれぞれ等しく、
前記複数の第2小断熱材片は、前記外側辺同士の長さと、前記内側辺同士の長さとがそれぞれ等しく、
前記第1小断熱材片の前記内側辺の長さと、前記第2小断熱材片の前記外側辺の長さが等しい、タンク鏡板用断熱材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のタンク鏡板用断熱材であって、
前記複数の大断熱材片は、
前記タンク鏡板の周方向に沿って前記中心から第3の距離に設けられる複数の第1大断熱材片と、
前記タンク鏡板の周方向に沿って前記中心から前記第3の距離よりも短い第4の距離に設けられる複数の第2大断熱材片と、
を含み、
前記複数の第1大断熱材片は、前記外側辺同士の長さと、前記内側辺同士の長さとがそれぞれ等しく、
前記複数の第2大断熱材片は、前記外側辺同士の長さと、前記内側辺同士の長さとがそれぞれ等しく、
前記第1大断熱材片の前記内側辺の長さと、前記第2大断熱材片の前記外側辺の長さが等しい、タンク鏡板用断熱材。
【請求項4】
タンク鏡板用断熱材の製造方法であって、
第1の曲率半径を有する湾曲板状の第1断熱板と、前記第1の曲率半径よりも大きな第2の曲率半径を有する湾曲板状の第2断熱板と、を準備する工程と、
前記第1断熱板を切断して複数の小断熱材片を得る第1切断工程であって、それぞれが外側辺と、前記外側辺と対向すると共に前記外側辺よりも短い内側辺と、を有する湾曲板状の複数の小断熱材片を得る第1切断工程と、
前記第2断熱板を切断して複数の大断熱材片を得る第2切断工程であって、それぞれが外側辺と、前記外側辺と対向すると共に前記外側辺よりも短い内側辺と、を有する湾曲板状の複数の大断熱材片を得る第2切断工程と、
を備え
前記第1切断工程では、前記小断熱材片の前記内側辺と、前記外側辺とのそれぞれについて、外表面側の辺の長さが内表面側の辺の長さよりも長くなるように、前記第1断熱板の厚さ方向に対して傾斜した切断面を設け、
前記第2切断工程では、前記大断熱材片の前記内側辺と、前記外側辺とのそれぞれについて、外表面側の辺の長さが内表面側の辺の長さよりも長くなるように、前記第2断熱板の厚さ方向に対して傾斜した切断面を設ける、製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のタンク鏡板用断熱材の製造方法であって、さらに、
前記小断熱材片の前記外側辺と、前記内側辺との各長さを算出する第1算出工程を備え、
前記第1算出工程では、
タンク鏡板の外径と、
前記タンク鏡板のうち隅部に位置している小半径部の第1の外半径と、
前記タンク鏡板のうち前記隅部よりも内側に位置している大半径部の第2の外半径であって、前記第1の外半径よりも大きな第2の外半径と、
前記小断熱材片の、前記内側辺と前記外側辺との間の長さと、
前記タンク鏡板のタンジェントラインから頂点までの高さと、
前記タンク鏡板の周方向における前記小断熱材片の分割数と、
前記タンク鏡板の半径方向における前記小断熱材片の分割数と、
を用いて、前記小断熱材片の前記外側辺と、前記内側辺との各長さを算出する、製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のタンク鏡板用断熱材の製造方法であって、さらに、
前記大断熱材片の前記外側辺と、前記内側辺との各長さを算出する第2算出工程を備え、
前記第2算出工程では、
タンク鏡板の外径と、
前記タンク鏡板のうち隅部に位置している小半径部の第1の外半径と、
前記タンク鏡板のうち前記隅部よりも内側に位置している大半径部の第2の外半径であって、前記第1の外半径よりも大きな第2の外半径と、
前記大断熱材片の、前記内側辺と前記外側辺との間の長さと、
前記タンク鏡板のタンジェントラインから頂点までの高さと、
前記タンク鏡板の周方向における前記大断熱材片の分割数と、
前記タンク鏡板の半径方向における前記大断熱材片の分割数と、
を用いて、前記大断熱材片の前記外側辺と、前記内側辺との各長さを算出する、製造方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のタンク鏡板用断熱材の製造方法であって、
前記第1切断工程では、前記第1断熱板の長手方向の一辺上に、それぞれ異なる前記小断熱材片についての、前記内側辺と、前記外側辺とが交互に位置するように、前記第1断熱板の長手軸に対して傾斜した複数の切断面を設け、
前記第2切断工程では、前記第2断熱板の長手方向の一辺上に、それぞれ異なる前記大断熱材片についての、前記内側辺と、前記外側辺とが交互に位置するように、前記第2断熱板の長手軸に対して傾斜した複数の切断面を設ける、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク鏡板用断熱材、及びタンク鏡板用断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスや液体(以降、総称して「流体」とも呼ぶ)の貯蔵のためにタンクが用いられている。タンクは一般的に、円筒形状の直胴部と、直胴部の両端に設けられた半球状の鏡板とを有しており、内部に流体を収容可能に構成されている。このようなタンクは、内部に収容されている流体の保温又は保冷効果を向上させるため、断熱材で覆われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、予め円筒状に成形された上部真空断熱材と、中部真空断熱材と、下部真空断熱材とを用いて、貯湯タンクの直胴部を覆う構造が開示されている。例えば、特許文献2には、発泡材により予め形成された成形断熱材を用いて、貯湯タンクの直胴部と鏡板とを覆う構造が開示されている。例えば、特許文献3には、タンク(容器)の周囲を組立構造体で覆い、タンクと組立構造体の間に粉粒体の断熱材を充填することで、タンクの直胴部と鏡板とを覆う構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−247080号公報
【特許文献2】特開2004−197960号公報
【特許文献3】特開昭60−49198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の構造では、タンク鏡板を覆うことについて何ら考慮されていないため、タンク内部に収容されている流体の保温又は保冷効果が十分に得られないという課題があった。また、特許文献2に記載の構造では、発泡材により形成された成形断熱材を事前に準備する必要があるため、工業・プラント用に用いられる大型タンクへ適用することは困難だという課題があった。具体的には、大型タンク用の成形断熱材は、仕上がり寸法が大きくなることから、製造や運搬にかかる手間やコストが高くなり、現実的でない。また、発泡材による断熱材の成形は、成形断熱材が大きくなればなるほど、発泡ムラの抑制が困難であるため、成形断熱材の品質を維持するためにかかる手間やコストが高くなり、この点からも現実的でない。また、特許文献3に記載の構造では、粉粒体の断熱材を用いるため、施工時に粉粒体が飛散する虞があり、施工現場環境の向上という観点から好ましくないという課題があった。さらに特許文献3に記載の構造では、施工後においても、組立構造体に破損が生じた場合、破損個所から粉粒体が飛散する虞があり、好ましくない。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、大型タンクにも適用可能なタンク鏡板用断熱材であって、施工現場環境を向上させつつ、施工時の手間と時間を低減することが可能なタンク鏡板用断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、タンク鏡板用断熱材が提供される。このタンク鏡板用断熱材は、タンク鏡板のうち隅部に位置しており第1の外半径を有する小半径部を覆う複数の小断熱材片であって、前記タンク鏡板の周方向に沿って分割された複数の小断熱材片と、前記タンク鏡板のうち前記隅部よりも内側に位置しており、前記第1の外半径よりも大きな第2の外半径を有する大半径部を覆う複数の大断熱材片であって、前記タンク鏡板の周方向に沿って分割された複数の大断熱材片と、を備え、前記小断熱材片と、前記大断熱材片とは、それぞれ、前記タンク鏡板の中心から所定距離にある外側辺と、前記中心から前記所定距離よりも短い距離にあって、前記外側辺と対向すると共に、前記外側辺よりも短い内側辺と、を有する湾曲板状であって、前記小断熱材片の湾曲の曲率半径は、前記大断熱材片の湾曲の曲率半径よりも小さい。
【0009】
この構成によれば、タンク鏡板用断熱材は、タンク鏡板の周方向に沿って分割された複数の小断熱材片及び大断熱材片を備えるため、タンク鏡板用断熱材の施工に際しては、複数の小断熱材片及び大断熱材片をタンクに沿って並べて固定するのみで足りる。このため、従来の施工方法(例えば、断熱板をタンクの設置場所に持ち込んで、タンクの形状に沿って断熱板を切断し、並べて、固定する方法)と比較して、施工時の手間と時間を低減できると共に、熟練工でなくとも簡単に施工できる。また、タンク鏡板用断熱材は、タンク鏡板の周方向に沿って分割された複数の小断熱材片及び大断熱材片を備えるため、製造や運搬にかかる手間やコストを抑えつつ、大型タンクにも適用することができる。さらに、タンク鏡板用断熱材を構成する小断熱材片及び大断熱材片は、湾曲板状であるため、粉粒体の断熱材を用いた場合と比較して、施工時に粉粒体が飛散する虞を低減することができ、施工現場環境を向上できる。さらに、粉粒体の断熱材を用いた場合と比較して、タンクを覆う組立構造体を必要とせず、かつ、施工後においても粉粒体が飛散する虞を低減できる。さらに、タンク鏡板用断熱材を構成する小断熱材片及び大断熱材片は、湾曲板状であるため、発泡材により形成された成形断熱材を用いた場合と比較して、発泡ムラが生じる虞がなく、断熱材の品質を維持するためにかかる手間やコストを抑えることができる。さらに、タンク鏡板用断熱材は、タンク鏡板の小半径部を覆う複数の小断熱材片と、タンク鏡板の大半径部を覆う複数の大断熱材片とを有するため、タンク鏡板の一般的な形状(例えば、さら形鏡板や、近似半だ円体形鏡板、正半だ円体形鏡板等)の形状に沿って、タンク鏡板の各部位を覆うことができる。これらの結果、この構成によれば、大型タンクにも適用可能なタンク鏡板用断熱材であって、施工現場環境を向上させつつ、施工時の手間と時間を低減することが可能なタンク鏡板用断熱材を提供することができる。
【0010】
(2)上記形態のタンク鏡板用断熱材において、前記複数の小断熱材片は、前記タンク鏡板の周方向に沿って前記中心から第1の距離に設けられる複数の第1小断熱材片と、前記タンク鏡板の周方向に沿って前記中心から前記第1の距離よりも短い第2の距離に設けられる複数の第2小断熱材片と、を含み、前記複数の第1小断熱材片は、前記外側辺同士の長さと、前記内側辺同士の長さとがそれぞれ等しく、前記複数の第2小断熱材片は、前記外側辺同士の長さと、前記内側辺同士の長さとがそれぞれ等しく、前記第1小断熱材片の前記内側辺の長さと、前記第2小断熱材片の前記外側辺の長さが等しくてもよい。
この構成によれば、複数の小断熱材片を、第1小断熱材片と、第1小断熱材片よりも内側(タンク鏡板の中心側)に配置するための第2小断熱材片とに分割できる。このため、より大きなタンクにも適用可能なタンク鏡板用断熱材を提供できる。
【0011】
(3)上記形態のタンク鏡板用断熱材において、前記複数の大断熱材片は、前記タンク鏡板の周方向に沿って前記中心から第3の距離に設けられる複数の第1大断熱材片と、前記タンク鏡板の周方向に沿って前記中心から前記第3の距離よりも短い第4の距離に設けられる複数の第2大断熱材片と、を含み、前記複数の第1大断熱材片は、前記外側辺同士の長さと、前記内側辺同士の長さとがそれぞれ等しく、前記複数の第2大断熱材片は、前記外側辺同士の長さと、前記内側辺同士の長さとがそれぞれ等しく、前記第1大断熱材片の前記内側辺の長さと、前記第2大断熱材片の前記外側辺の長さが等しくてもよい。
この構成によれば、複数の大断熱材片を、第1大断熱材片と、第1大断熱材片よりも内側(タンク鏡板の中心側)に配置するための第2大断熱材片とに分割できる。このため、より大きなタンクにも適用可能なタンク鏡板用断熱材を提供できる。
【0012】
(4)本発明の一形態によれば、タンク鏡板用断熱材の製造方法が提供される。このタンク鏡板用断熱材の製造方法は、第1の曲率半径を有する湾曲板状の第1断熱板と、前記第1の曲率半径よりも大きな第2の曲率半径を有する湾曲板状の第2断熱板と、を準備する工程と、前記第1断熱板を切断して複数の小断熱材片を得る第1切断工程であって、それぞれが外側辺と、前記外側辺と対向すると共に前記外側辺よりも短い内側辺と、を有する湾曲板状の複数の小断熱材片を得る第1切断工程と、前記第2断熱板を切断して複数の大断熱材片を得る第2切断工程であって、それぞれが外側辺と、前記外側辺と対向すると共に前記外側辺よりも短い内側辺と、を有する湾曲板状の複数の大断熱材片を得る第2切断工程と、を備え、前記第1切断工程では、前記第1断熱板の長手方向の一辺上に、それぞれ異なる前記小断熱材片についての、前記内側辺と、前記外側辺とが交互に位置するように、前記第1断熱板の長手軸に対して傾斜した複数の切断面を設け、前記第2切断工程では、前記第2断熱板の長手方向の一辺上に、それぞれ異なる前記大断熱材片についての、前記内側辺と、前記外側辺とが交互に位置するように、前記第2断熱板の長手軸に対して傾斜した複数の切断面を設ける。
この構成によれば、大型タンクにも適用可能なタンク鏡板用断熱材であって、施工現場環境を向上させつつ、施工時の手間と時間を低減することが可能なタンク鏡板用断熱材を製造できる。
【0013】
(5)上記形態のタンク鏡板用断熱材の製造方法では、さらに、前記小断熱材片の前記外側辺と、前記内側辺との各長さを算出する第1算出工程を備え、前記第1算出工程では、タンク鏡板の外径と、前記タンク鏡板のうち隅部に位置している小半径部の第1の外半径と、前記タンク鏡板のうち前記隅部よりも内側に位置している大半径部の第2の外半径であって、前記第1の外半径よりも大きな第2の外半径と、前記小断熱材片の、前記内側辺と前記外側辺との間の長さと、前記タンク鏡板のタンジェントラインから頂点までの高さと、前記タンク鏡板の周方向における前記小断熱材片の分割数と、前記タンク鏡板の半径方向における前記小断熱材片の分割数と、を用いて、前記小断熱材片の前記外側辺と、前記内側辺との各長さを算出してもよい。
この構成によれば、タンク鏡板の各部の情報と、得ようとする小断熱材片の情報とを用いて、小断熱材片の内側辺と外側辺とを算出できる。
【0014】
(6)上記形態のタンク鏡板用断熱材の製造方法では、さらに、前記大断熱材片の前記外側辺と、前記内側辺との各長さを算出する第2算出工程を備え、前記第2算出工程では、タンク鏡板の外径と、前記タンク鏡板のうち隅部に位置している小半径部の第1の外半径と、前記タンク鏡板のうち前記隅部よりも内側に位置している大半径部の第2の外半径であって、前記第1の外半径よりも大きな第2の外半径と、前記大断熱材片の、前記内側辺と前記外側辺との間の長さと、前記タンク鏡板のタンジェントラインから頂点までの高さと、前記タンク鏡板の周方向における前記大断熱材片の分割数と、前記タンク鏡板の半径方向における前記大断熱材片の分割数と、を用いて、前記大断熱材片の前記外側辺と、前記内側辺との各長さを算出してもよい。
この構成によれば、タンク鏡板の各部の情報と、得ようとする大断熱材片の情報とを用いて、大断熱材片の内側辺と外側辺とを算出できる。
【0015】
(7)上記形態のタンク鏡板用断熱材の製造方法において、前記第1切断工程では、前記第1断熱板の長手方向の一辺上に、それぞれ異なる前記小断熱材片についての、前記内側辺と、前記外側辺とが交互に位置するように、前記第1断熱板の長手軸に対して傾斜した複数の切断面を設け、前記第2切断工程では、前記第2断熱板の長手方向の一辺上に、それぞれ異なる前記大断熱材片についての、前記内側辺と、前記外側辺とが交互に位置するように、前記第2断熱板の長手軸に対して傾斜した複数の切断面を設けてもよい。
この構成によれば、第1切断工程では、第1断熱板の長手方向の一辺上に、それぞれ異なる小断熱材片についての内側辺と外側辺とが交互に位置するように、第1断熱板の長手軸に対して傾斜した複数の切断面を設ける。このため、第1断熱板から無駄なく複数の小断熱材片を切り出すことができる。第2切断工程においても同様に、第2断熱板から無駄なく複数の大断熱材片を切り出すことができる。
【0016】
(8)上記形態のタンク鏡板用断熱材の製造方法において、前記第1切断工程では、前記小断熱材片の前記内側辺と、前記外側辺とのそれぞれについて、外表面側の辺の長さが内表面側の辺の長さよりも長くなるように、前記第1断熱板の厚さ方向に対して傾斜した切断面を設け、前記第2切断工程では、前記大断熱材片の前記内側辺と、前記外側辺とのそれぞれについて、外表面側の辺の長さが内表面側の辺の長さよりも長くなるように、前記第2断熱板の厚さ方向に対して傾斜した切断面を設けてもよい。
この構成によれば、第1切断工程では、外表面側の辺の長さが内表面側の辺の長さよりも長くなるように、第1断熱板の厚さ方向に対して傾斜した切断面を設ける。このため、第1切断工程によって得られた複数の小断熱材片をタンク鏡板に配置した際に、各小断熱材片の間に生じる隙間をなくすことができる。第2切断工程においても同様であるため、各大断熱材片の間に生じる隙間をなくすことができる。
【0017】
本発明は、断熱部材以外の種々の形態で実現できる。本発明は、例えば、タンク鏡板用断熱材とタンク直胴部用断熱材とからなるタンク断熱材、タンク鏡板用断熱材を備えるタンク、タンク鏡板用断熱材の製造装置、タンク鏡板用断熱材を用いた断熱材の施工方法などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】タンク鏡板用断熱材が設けられたタンクの断面構成を例示した説明図である。
図2】タンクの鏡板の断面構成を例示した説明図である。
図3】タンク鏡板用断熱材の構成を例示した説明図である。
図4】小断熱材片及び大断熱材片の内側辺及び外側辺について説明する図である。
図5】タンク鏡板用断熱材の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6】第1切断工程について説明する図である。
図7】第2切断工程について説明する図である。
図8】タンク鏡板用断熱材の施工方法の一例を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態のタンク鏡板用断熱材の構成を例示した説明図である。
図10】第3実施形態のタンクの鏡板の断面構成を例示した説明図である。
図11】第3実施形態のタンク鏡板用断熱材の構成を例示した説明図である。
図12】第4実施形態の第1及び第2切断工程について説明する図である。
図13】第4実施形態の第1及び第2切断工程について説明する図である。
図14】第4実施形態の効果について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態
図1は、タンク鏡板用断熱材10が設けられたタンク20の断面構成を例示した説明図である。タンク20は、任意のガスや液体(以降、総称して「流体」とも呼ぶ)の貯蔵のために用いられる容器であり、小型のタンク20は例えば家庭用の給湯タンクとして、大型のタンク20は例えば工業・プラント用のガスタンクとして用いられ得る。タンク20は、内部に収容されている流体の保温又は保冷効果を向上させるため、タンク鏡板用断熱材10及び直胴部用断熱材30により覆われている。なお、図1には、タンク20、タンク鏡板用断熱材10及び直胴部用断熱材30の上側半分の概略断面を図示している。また、図1には、相互に直交するXYZ軸を図示している。X軸は、タンク20の幅方向に対応し、Y軸は、タンク20の高さ方向に対応し、Z軸は、タンク20の奥行き方向に対応している。図1の軸線Oは、タンク20の中心軸を表す。
【0020】
タンク20は、±Y軸方向が解放した円筒形状の直胴部22と、直胴部22の両端(±Y軸方向の各端部)に設けられた一対の鏡板21と、を備えている。直胴部22と一対の鏡板21とは、溶接等により接合されて一体化されている。直胴部22と一対の鏡板21との内部20is(すなわち、タンク20の内部)には、流体が収容される。なお、直胴部22には、タンク20の内部20isと外部とを連通する開口が設けられているが、図1では開口の図示を省略している。タンク20の大きさ、具体的には、内部20isの容積、X軸方向の幅、Y軸方向の高さ、及びZ軸方向の奥行きは、任意に決定できる。
【0021】
図2は、タンク20の鏡板21の断面構成を例示した説明図である。タンク20に設けられる一対の鏡板21は、同じ形状を有しているため、以降は1枚の鏡板21(及びこれを覆うタンク鏡板用断熱材10)について説明する。本実施形態では、日本工業規格JIS B 8247に規定されている標準的な鏡板のひとつである、さら形鏡板を例示する。
【0022】
図2に示すように鏡板21は、大半径部211と、小半径部212とを有している。小半径部212は、鏡板21の隅部(外周部)に位置している一部分である。図示の断面において、小半径部212の外表面は、半径rの仮想円C2に沿って湾曲している。換言すれば、小半径部212は、第1の外半径rを有している。大半径部211は、小半径部212よりも内側(タンク20の中心軸O側)に位置している残余の部分である。図示の断面において、大半径部211の外表面は、半径Rの仮想円C1に沿って湾曲している。換言すれば、大半径部211は、第2の外半径Rを有している。ここで、第2の外半径Rは、第1の外半径rよりも大きい。
【0023】
以降の説明では、鏡板21の+X軸方向の端部から−X軸方向の端部までの長さを「鏡板21の外径D」とも呼ぶ。また、鏡板21のタンジェントラインTLから、鏡板21の頂点までの長さを「頂点までの高さh」とも呼ぶ。鏡板21について、第1の外半径r、第2の外半径R、鏡板21の外径D、頂点までの高さh、及び鏡板21の板厚tについては、任意に定めることができる。
【0024】
図3は、タンク鏡板用断熱材10の構成を例示した説明図である。図3では、図示の便宜上、鏡板21の小半径部212を覆う断熱材片(以降「小断熱材片11」とも呼ぶ)の一部分と、鏡板21の大半径部211を覆う断熱材片(以降「大断熱材片12」とも呼ぶ)の一部分と、鏡板21の中心(軸線O)を覆う断熱材片(以降「中心断熱材13」とも呼ぶ)とを、床面に載置した様子を示している。図3では、中心断熱材13の全周(すなわち鏡板21の全周)に対して、約30〜45度分の小断熱材片11及び大断熱材片12を図示するが、実際には、中心断熱材13の全周に対して、中心断熱材13の外側に小断熱材片11及び大断熱材片12が360度敷き詰められる。なお、図3の軸線Oは、図1の軸線Oと対応している。中心断熱材13は、鏡板21のうち、小断熱材片11及び大断熱材片12により覆われなかった部分を覆う調整代として機能する。
【0025】
図3に示すように、小断熱材片11は、第1小断熱材片111a〜nと、第2小断熱材片112a〜nとを含んでいる。ここで、nは任意の自然数であり、図3では111a〜cのみを図示している。第1小断熱材片111a〜nは、鏡板21の周方向に沿って、鏡板21の中心Oから第1の距離D1に設けられた湾曲板状の断熱片である。距離D1は、鏡板21の中心Oと、各第1小断熱材片111a〜nの重心を通る仮想円VC1との間の距離である。第2小断熱材片112a〜nは、鏡板21の周方向に沿って、鏡板21の中心Oから第2の距離D2に設けられた湾曲板状の断熱片である。距離D2は、鏡板21の中心Oと、各第2小断熱材片112a〜nの重心を通る仮想円VC2との間の距離である。
【0026】
図4は、小断熱材片11及び大断熱材片12の内側辺及び外側辺について説明する図である。ここで、小断熱材片11と、後述する大断熱材片12とのそれぞれについて、鏡板21の中心Oから所定距離にある辺を「外側辺」と呼び、中心Oから所定距離よりも短い距離にあって外側辺と対向する辺を「内側辺」と呼ぶ。例えば、図4に示す第1小断熱材片111aは、外側辺が辺L10であり、内側辺が辺L11である。同様に、第2小断熱材片112aは、外側辺が辺L11であり、内側辺が辺L12である。同様に、第1大断熱材片121bは、外側辺が辺L20であり、内側辺が辺L21である。同様に、第5大断熱材片125aは、外側辺が辺L30であり、内側辺が辺L31である。同様に、第6大断熱材片126は、外側辺が辺L40であり、内側辺が辺L41である。
【0027】
図3に戻り、説明を続ける。第1小断熱材片111a〜nは、外側辺L10同士の長さが、それぞれ等しい。また、第1小断熱材片111a〜nは、内側辺L11同士の長さも、それぞれ等しい。第2小断熱材片112a〜nについても同様に、外側辺L11同士の長さと、内側辺L12同士の長さとが、それぞれ等しい。さらに、第1小断熱材片111a〜nの内側辺L11の長さと、第2小断熱材片112a〜nの外側辺L11の長さとは、それぞれ等しい。なお、本実施形態において「等しい」とは、寸法が完全に一致する場合だけでなく、製造誤差の範囲内で相違する場合をも含む。すなわち、本実施形態の小断熱材片11は、鏡板21の周方向にn分割されており、かつ、鏡板21の半径方向に2分割されている。
【0028】
図3に示すように、大断熱材片12は、第1大断熱材片121a〜xと、第2大断熱材片122a〜xと、第3大断熱材片123a〜xと、第4大断熱材片124a〜xと、第5大断熱材片125a〜yと、第6大断熱材片126a〜zとを含んでいる。ここで、x,y,zは任意の自然数であり、図3では第1〜4大断熱材片121〜124a,b、第5大断熱材片125a〜c、及び第6大断熱材片126a,bのみを図示している。
【0029】
第1大断熱材片121a〜xは、鏡板21の周方向に沿って、鏡板21の中心Oから第3の距離D3に設けられた湾曲板状の断熱片である。距離D3は、鏡板21の中心Oと、各第1大断熱材片121a〜xの重心を通る仮想円VC3との間の距離である。第2大断熱材片122a〜xは、鏡板21の周方向に沿って、鏡板21の中心Oから第4の距離D4に設けられた湾曲板状の断熱片である。距離D4は、鏡板21の中心Oと、各第2大断熱材片122a〜xの重心を通る仮想円VC4との間の距離である。第3大断熱材片123a〜x、第4大断熱材片124a〜x、第5大断熱材片125a〜y、及び第6大断熱材片126a〜zについても同様に、鏡板21の中心Oからそれぞれ異なる距離に設けられた湾曲板状の断熱片である。すなわち、本実施形態の大断熱材片12は、鏡板21の周方向にx,y,z分割されており、かつ、鏡板21の半径方向に6分割されている。
【0030】
第1大断熱材片121a〜xは、外側辺L20同士の長さと、内側辺L21同士の長さとが、それぞれ等しい。第2大断熱材片122a〜x、第3大断熱材片123a〜x、第4大断熱材片124a〜x、第5大断熱材片125a〜y、第6大断熱材片126a〜zの各々についても同様に、外側辺同士の長さと、内側辺同士の長さとが、それぞれ等しい。さらに、第1大断熱材片121a〜xの内側辺L21の長さと、第2大断熱材片122a〜xの外側辺L21の長さとは、それぞれ等しい。第3大断熱材片123a〜x、第4大断熱材片124a〜x、第5大断熱材片125a〜y、第6大断熱材片126a〜zの各々についても同様に、隣り合う断熱片について、一方の内側辺の長さと、他方の外側辺の長さとは、それぞれ等しい。
【0031】
ここで、小断熱材片11のそれぞれ(具体的には、第1小断熱材片111a〜n、第2小断熱材片112a〜n)は、同一の曲率半径を有している。また、大断熱材片12のそれぞれ(具体的には、第1大断熱材片121a〜x、第2大断熱材片122a〜x、第3大断熱材片123a〜x、第4大断熱材片124a〜x、第5大断熱材片125a〜y、第6大断熱材片126a〜z)は、同一の曲率半径を有している。一方で、小断熱材片11と大断熱材片12とは、異なる曲率半径を有しており、小断熱材片11の湾曲の曲率半径は、大断熱材片12の湾曲の曲率半径よりも小さい。
【0032】
なお、図3において、大断熱材片12のうち、第1〜4大断熱材片121,122,123,124a〜xと、第5大断熱材片125a〜yと、第6大断熱材片126a〜zとは、それぞれ、鏡板21の中心Oに対する角度が異なる。これは、後述する大断熱材片12の製造において、断熱板の切断回数を減らすためである。具体的には、第5大断熱材片125a〜yの中心Oに対する角度と、第1〜4大断熱材片121,122,123,124a〜xの中心Oに対する角度とを同じにした場合、中心Oに近づけば近づくほど、1つの大断熱材片12の面積が小さくなる(換言すれば、例えば、第5大断熱材片125aの外側辺及び内側辺が短くなる)。これを回避し、断熱板の切断回数を減らすために、第5大断熱材片125a〜yの中心Oに対する角度を、第1〜4大断熱材片121,122,123,124a〜xの中心Oに対する角度よりも大きくしている。第6大断熱材片126a〜zについても同様である。なお、このような角度の調整は、省略してよい。
【0033】
図5は、タンク鏡板用断熱材10の製造方法の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS10において作業者は、小断熱材片11用の条件を取得する。小断熱材片11用の条件とは、小断熱材片11を構成する各断熱片の外側辺及び内側辺の長さ(図4の例では、辺L10,L11,L12の各長さ)を算出するための条件である。
【0034】
小断熱材片11用の条件には、例えば、次の条件(a1)〜(a7)を用いることができる。ここで、条件a4の長さC1は、図4に示す直線距離C1であり、タンク20の大きさから作業者が任意に定めた整数を用いる。条件a6の分割数nと、条件a7の分割数n1とは、分割数の予定値であり、タンク20の大きさから作業者が任意に定めた自然数を用いる(図4の例では、条件a6=n、条件a7=2)。なお、鏡板21の径方向において小断熱材片11を分割しない場合(すなわち、条件a7=1の場合)、条件a7は省略してよい。残余の各条件については、図2で説明した通りであり、鏡板21の実測値やカタログ値を用いる。
(a1)鏡板21の外径D、
(a2)鏡板21の小半径部212の第1の外半径r、
(a3)鏡板21の大半径部211の第2の外半径R、
(a4)第1小断熱材片111a〜nの、内側辺L11と外側辺L10との間の長さC1、
(a5)鏡板21のタンジェントラインTLから頂点までの高さh、
(a6)鏡板21の周方向における小断熱材片11の分割数n、
(a7)鏡板21の半径方向における小断熱材片11の分割数n1。
【0035】
ステップS12において作業者は、ステップS10で取得した条件を用いて、小断熱材片11を構成する各断熱片の外側辺及び内側辺の長さを算出する。具体的には、例えば、周知の幾何学理論を用いた次のような計算プロセスにより、外側辺及び内側辺の長さを算出できる。まず、条件a1,a2,a3,a5を用いて、タンク鏡板用断熱材10の断面(図1)において、大断熱材片12の全体(図3の例では、第1大断熱材片121〜第6大断熱材片126)が、大半径部211の仮想円C1(図2)の中心に占める角度αを求める。次に、角度αから、小断熱材片11の全体(図3の例では、第1小断熱材片111及び第2小断熱材片112)が、小半径部212の仮想円C2(図2)の中心に占める角度βを求める。次に、条件a2と角度βとから、小断熱材片11の全体の円弧長さCを求める。
【0036】
次に、条件a2,a4,a7から、角度βに対して小断熱材片11の1片あたりが占める角度β0を求める。次に、条件a4,a7と円弧長さCとから、長さC1の断熱片を設定した分割数n1だけ敷き詰めた場合の余剰又は不足寸法Aを求める。次に、条件a7と、角度β及び角度β0から、余剰又は不足寸法Aが、小半径部212の仮想円C2(図2)の中心に占める角度βaを求める。その後、条件a1,a2,a6,角度β0,βaとから、小断熱材片11を構成する各断熱片の外側辺及び内側辺の長さを求める。具体的には、図3の例では、
・第1小断熱材片111a〜nの外側辺L10の長さと、
・第1小断熱材片111a〜nの内側辺、及び第2小断熱材片112a〜nの外側辺L11の長さと、
・第2小断熱材片112a〜nの内側辺L12の長さと、を求める。
【0037】
ステップS20において作業者は、大断熱材片12用の条件を取得する。大断熱材片12用の条件とは、大断熱材片12を構成する各断熱片の外側辺及び内側辺の長さ(図4の例では、辺L20〜L24の各長さ)を算出するための条件である。
【0038】
大断熱材片12用の条件には、例えば、次の条件(b1)〜(b7)を用いることができる。ここで、条件b1,b2,b3,b5については、小断熱材片11用の条件a1,a2,a3,a5と同じである。また、条件b4の長さC2は、図4に示す直線距離C2であり、タンク20の大きさから作業者が任意に定めた整数を用いる。条件b6の分割数xと、条件b7の分割数x1とは、分割数の予定値であり、タンク20の大きさから作業者が任意に定めた自然数を用いる(図4の例では、条件b6=x、条件b7=4)。なお、鏡板21の径方向において大断熱材片12を分割しない場合(すなわち、条件b7=1の場合)、条件b7は省略してよい。
(b1)鏡板21の外径D、
(b2)鏡板21の小半径部212の第1の外半径r、
(b3)鏡板21の大半径部211の第2の外半径R、
(b4)第1大断熱材片121a〜xの、内側辺L21と外側辺L20との間の長さC2、
(b5)鏡板21のタンジェントラインTLから頂点までの高さh、
(b6)鏡板21の周方向における大断熱材片12の分割数x、
(b7)鏡板21の半径方向における大断熱材片12の分割数x1。
【0039】
ステップS22において作業者は、ステップS20で取得した条件を用いて、大断熱材片12(具体的には、第1大断熱材片121〜第4大断熱材片124)を構成する各断熱片の外側辺及び内側辺の長さを算出する。詳細は、小断熱材片11の場合(ステップS12)と同様である。
【0040】
また、本実施形態では、第1〜4大断熱材片121,122,123,124a〜xと、第5大断熱材片125a〜yと、第6大断熱材片126a〜zとは、それぞれ、鏡板21の中心Oに対する角度を相違させている。このため、作業者は、まず上述のようにして大断熱材片12のうちの、第1大断熱材片121〜第4大断熱材片124について、各断熱片の外側辺及び内側辺の長さを算出する。次に、条件b6,b7を変更(図4の例では、条件b6=y、条件b7=1)したのち、大断熱材片12のうちの、第5大断熱材片125について、各断熱片の外側辺及び内側辺の長さを算出する。さらに、再び条件b6,b7を変更(図4の例では、条件b6=z、条件b7=1)したのち、大断熱材片12のうちの、第6大断熱材片126について、各断熱片の外側辺及び内側辺の長さを算出すればよい。
【0041】
なお、ステップS10及びS12を総称して「第1算出工程」とも呼び、ステップS20及びS22を総称して「第2算出工程」とも呼ぶ。また、ステップS12,S22の算出方法はあくまで一例であり、条件a1〜a7、b1〜b7の少なくとも一部を用いた、幾何学理論を用いた任意の算出方法を採用できる。また、ステップS12,S22の算出処理は、幾何学理論を用いた計算アルゴリズムを実装したコンピューターを利用して実施してもよい。
【0042】
図6は、第1切断工程について説明する図である。図7は、第2切断工程について説明する図である。図5のステップS30において作業者は、第1断熱板100と、第2断熱板200とを準備する。図6及び図7に示すように、第1断熱板100と、第2断熱板200とはそれぞれ、円筒を縦割りにした湾曲板状の部材であり、例えば、無機多孔質材料(パーライト、ケイ酸カルシウムなど)を主成分として形成されている。第1断熱板100は、第1の曲率半径rAを有し、第2断熱板200は、第2の曲率半径rBを有する。第2の曲率半径rBは、第1の曲率半径rAよりも大きい(第2の曲率半径rB>第1の曲率半径rA)。すなわち、第2断熱板200を所定個数並べた際に形成される円筒の直径は、第1断熱板100を所定個数並べた際に形成される円筒の直径よりも大きい。なお、曲率半径rA,rBの具体的な値は、タンク20の大きさから作業者が任意に決定できる。
【0043】
図5のステップS32において作業者は、第1断熱板100を切断する。具体的には、図6(A)において破線で示すように、第1断熱板100の長手方向の一辺101上に、それぞれ異なる第1小断熱材片111(111a,111b,111c)についての、内側辺L11と、外側辺L10とが交互に位置(L11,L10,L11)するように、第1断熱板100の長手軸O1に対して傾斜した複数の切断面で、切断を行う。同様に、図6(B)において破線で示すように、他の第1断熱板100の長手方向の一辺101上に、それぞれ異なる第2小断熱材片112(112a,112b,112c,112d)についての、内側辺L12と、外側辺L11とが交互に位置(L12,L11,L12,L11)するように、第1断熱板100の長手軸O1に対して傾斜した複数の切断面で、切断を行う。なお、ステップS32は「第1切断工程」とも呼ぶ。
【0044】
図5のステップS34において作業者は、第2断熱板200を切断する。具体的には、図7(A)において破線で示すように、第2断熱板200の長手方向の一辺201上に、それぞれ異なる第1大断熱材片121(121a,121b,121c)についての、内側辺L21と、外側辺L20とが交互に位置するように、第2断熱板200の長手軸O2に対して傾斜した複数の切断面で、切断を行う。同様に、図7(B)において破線で示すように、他の第2断熱板200の長手方向の一辺201上に、それぞれ異なる第2大断熱材片122(122a,122b,122c,122d)についての、内側辺L22と、外側辺L21とが交互に位置するように、第2断熱板200の長手軸O2に対して傾斜した複数の切断面で、切断を行う。なお、ステップS34は「第2切断工程」とも呼ぶ。
【0045】
図8は、タンク鏡板用断熱材10の施工方法の一例を示すフローチャートである。図8に示す施工方法は、通常、タンク20が設置されている現場で行われる。このため、図8に示す施工方法に先立って、図5で説明した方法でタンク鏡板用断熱材10を製造し(タンク鏡板用断熱材10の製造は、タンク20とは別の場所にある工場等で実施できる)、製造されたタンク鏡板用断熱材10を施工現場に運搬しておく。
【0046】
まず、ステップS50において作業者は、タンク20の鏡板21の小半径部212に、小断熱材片11を配置する。具体的にはまず、小半径部212の下側の部分に、第1小断熱材片111a〜nを、周方向に並べて敷設していく。このとき、第1小断熱材片111a〜nの内側面(鏡板21との対向する側の面)に、接着剤等を塗布しておく。次に、敷設した第1小断熱材片111a〜nに隣り合うようにして、予め接着剤等を塗布した第2小断熱材片112a〜nを、周方向に並べて敷設していく。
【0047】
ステップS52において作業者は、タンク20の鏡板21の大半径部211に、第2小断熱材片112を配置する。具体的にはまず、敷設した第2小断熱材片112a〜nに隣り合うようにして、予め接着剤を塗布した第1大断熱材片121a〜xを、周方向に並べて敷設していく。以降、同様に、第2大断熱材片122a〜x、第3大断熱材片123a〜x、第4大断熱材片124a〜x、第5大断熱材片125a〜y、第6大断熱材片126a〜z、と続ける。
【0048】
ステップS54において作業者は、第6大断熱材片126a〜zにより覆われなかった鏡板21の中心Oの部分に、予め接着剤等を塗布した中心断熱材13を敷設する。中心断熱材13は、予め図3に示す円盤状に加工しておいてもよく、施工現場において第6大断熱材片126a〜zにより覆われなかった範囲に応じて加工してもよい。なお、ステップS50〜S54は、一対の鏡板21の両方に対して実施する。
【0049】
ステップS56において作業者は、タンク20の直胴部22に、直胴部用断熱材30を配置する。具体的には、ステップS50で敷設した第1小断熱材片111a〜nに隣り合うようにして、予め接着剤等を塗布した直胴部用断熱材30を敷設する。なお、直胴部用断熱材30の構成は、任意に定めることができる。直胴部用断熱材30は、例えば、二つ割りにした半円筒状の断熱材であってもよく(割り数は任意であり、例えば四つ割りでもよい)、平板状の断熱材であってもよい。直胴部用断熱材30は、例えば、無機多孔質材料(パーライト、ケイ酸カルシウムなど)を主成分として形成されている。
【0050】
ステップS58において作業者は、配置したタンク鏡板用断熱材10及び直胴部用断熱材30に、針金を巻回することで、タンク鏡板用断熱材10及び直胴部用断熱材30を固定する。その後、作業者は、タンク鏡板用断熱材10及び直胴部用断熱材30の外表面を被覆する。被覆の際には、アルミニウム等の金属製シートや、防湿樹脂製シート等を用いることができる。なお、ステップS58の針金による固定と、被覆との少なくとも一方は、省略してもよい。なお、作業者は、上述した各ステップにおいて、各小断熱材片11、各大断熱材片12、中心断熱材13、各直胴部用断熱材30の隣接部分に隙間が生じた場合、当該隙間を、繊維系断熱材(グラスウール等)等により埋める処理をしてもよい。
【0051】
以上説明したように、第1実施形態のタンク鏡板用断熱材10は、鏡板21の周方向に沿って分割された複数の小断熱材片11及び大断熱材片12を備える。このため、タンク鏡板用断熱材10の施工に際しては、図8で説明したように、複数の小断熱材片11及び大断熱材片12を、タンク20(より具体的には鏡板21)に沿って並べて固定するのみで足りる。このため、従来の施工方法(例えば、断熱板をタンク20の設置場所に持ち込んで、タンク20の形状に沿って断熱板を切断し、並べて、固定する方法)と比較して、施工時の手間と時間を低減できると共に、熟練工でなくとも簡単に施工できる。
【0052】
また、タンク鏡板用断熱材10は、鏡板21の周方向に沿って分割された複数の小断熱材片11及び大断熱材片12を備えるため、タンク鏡板用断熱材10の製造や運搬にかかる手間やコストを抑えつつ、大型タンクにも適用することができる。
【0053】
さらに、タンク鏡板用断熱材10を構成する小断熱材片11及び大断熱材片12は、湾曲板状であるため、粉粒体の断熱材を用いた場合と比較して、施工時に粉粒体が飛散する虞を低減することができ、施工現場環境を向上できる。さらに、粉粒体の断熱材を用いた場合と比較して、タンク20を覆う組立構造体を必要とせず、かつ、施工後においても粉粒体が飛散する虞を低減できる。さらに、タンク鏡板用断熱材10を構成する小断熱材片11及び大断熱材片12は、湾曲板状であるため、発泡材により形成された成形断熱材を用いた場合と比較して、発泡ムラが生じる虞がなく、断熱材の品質を維持するためにかかる手間やコストを抑えることができる。
【0054】
さらに、タンク鏡板用断熱材10は、鏡板21の小半径部212を覆う複数の小断熱材片11と、鏡板21の大半径部211を覆う複数の大断熱材片12とを有する。このため、鏡板21の一般的な形状(例えば、上記実施形態で例示したさら形鏡板や、近似半だ円体形鏡板、正半だ円体形鏡板等)の形状に沿って、鏡板21の各部位(すなわち小半径部212と大半径部211)を覆うことができる。
【0055】
これらの結果、第1実施形態のタンク鏡板用断熱材10によれば、大型タンクにも適用可能なタンク鏡板用断熱材10であって、施工現場環境を向上させつつ、施工時の手間と時間を低減することが可能なタンク鏡板用断熱材10を提供することができる。
【0056】
また、第1実施形態のタンク鏡板用断熱材10によれば、複数の小断熱材片11を、第1小断熱材片111と、第1小断熱材片111よりも内側(鏡板21の中心O側)に配置するための第2小断熱材片112とに分割できる。換言すれば、複数の小断熱材片11を、鏡板21の周方向に加えてさらに、鏡板21の半径方向に分割できる。このため、より大きなタンク20にも適用可能なタンク鏡板用断熱材10を提供できる。
【0057】
さらに、第1実施形態のタンク鏡板用断熱材10によれば、複数の大断熱材片12を、第1大断熱材片121と、第1大断熱材片121よりも内側(鏡板21の中心O側)に配置するための第2大断熱材片122とに分割できる。換言すれば、複数の大断熱材片12を、鏡板21の周方向に加えてさらに、鏡板21の半径方向に分割できる。このため、より大きなタンク20にも適用可能なタンク鏡板用断熱材10を提供できる。
【0058】
さらに、第1実施形態のタンク鏡板用断熱材10の製造方法(図5)によれば、大型タンクにも適用可能なタンク鏡板用断熱材10であって、施工現場環境を向上させつつ、施工時の手間と時間を低減することが可能なタンク鏡板用断熱材10を製造できる。また、第1切断工程(ステップS32)では、第1断熱板100の長手方向の一辺101上に、それぞれ異なる小断熱材片11についての内側辺と外側辺とが交互に位置するように、第1断熱板100の長手軸O1に対して傾斜した複数の切断面を設ける。このため、第1断熱板100から無駄なく(換言すれば、効率よく)複数の小断熱材片11を切り出すことができる。第2切断工程(ステップS34)においても同様に、第2断熱板200から無駄なく複数の大断熱材片12を切り出すことができる。
【0059】
さらに、第1実施形態のタンク鏡板用断熱材10の製造方法(図5)によれば、鏡板21の各部の情報(条件a1,a2,a3,a5)と、得ようとする小断熱材片11の情報(条件a4,a6,a7)とを用いた幾何学理論によって、小断熱材片11の内側辺と外側辺とを算出できる(ステップS10,S12)。同様に、鏡板21の各部の情報(条件b1,b2,b3,b5)と、得ようとする大断熱材片12の情報(条件b4,b6,b7)とを用いた幾何学理論によって、大断熱材片12の内側辺と外側辺とを算出できる(ステップS20,S22)。
【0060】
B.第2実施形態
図9は、第2実施形態のタンク鏡板用断熱材10Aの構成を例示した説明図である。第2実施形態のタンク鏡板用断熱材10Aは、第1実施形態の構成において、小断熱材片11に代えて小断熱材片11Aを、大断熱材片12に代えて大断熱材片12Aを備える。小断熱材片11Aは、鏡板21の周方向にのみn分割されている。大断熱材片12Aは、鏡板21の周方向にx分割されており、かつ、鏡板21の半径方向に4分割されている。また、大断熱材片12Aは、鏡板21の中心Oに対する角度が均一である。換言すれば、大断熱材片12Aは、第1実施形態で説明した第5大断熱材片125a〜yと、第6大断熱材片126a〜zとを備えていない。
【0061】
このように、タンク鏡板用断熱材10Aの構成は種々の変更が可能であり、小断熱材片11Aは、鏡板21の周方向にのみ分割されていてもよい。大断熱材片12Aについても同様に、鏡板21の周方向にのみ分割されていてもよい。このような第2実施形態のタンク鏡板用断熱材10Aは、図5と同様の方法(条件を変更した同じ方法)により製造でき、図8と同様の方法により施工できる。第2実施形態のタンク鏡板用断熱材10Aにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態のタンク鏡板用断熱材10Aによれば、より小さなタンク20に適したタンク鏡板用断熱材10Aを提供できる。
【0062】
C.第3実施形態
図10は、第3実施形態のタンク20の鏡板21Bの断面構成を例示した説明図である。鏡板21Bは、日本工業規格JIS B 8247に規定されている平鏡板である。図10に示すように、鏡板21Bの大半径部211Bは、湾曲のない円盤状であり、大半径部211Bの第2の外半径Rは、無限大である。すなわち、本実施形態においても第1実施形態と同様に、鏡板21Bの大半径部211の第2の外半径R(無限大)は、小半径部212の第1の外半径rよりも大きい。
【0063】
図11は、第3実施形態のタンク鏡板用断熱材10Bの構成を例示した説明図である。第3実施形態のタンク鏡板用断熱材10Bは、第1実施形態の構成において、大断熱材片12に代えて大断熱材片12Bを備える。大断熱材片12Bは、鏡板21Bの周方向にのみx分割されている。また、大断熱材片12Bは、湾曲のない板状の断熱片である。すなわち、本実施形態においても第1実施形態と同様に、小断熱材片11の湾曲の曲率半径は、大断熱材片12Bの湾曲の曲率半径(無限大)よりも小さい。大断熱材片12Bを作製するために用いられる第2断熱板200(図7)は、曲率半径が無限大の湾曲板状、換言すれば平板状の断熱板である。
【0064】
このように、タンク鏡板用断熱材10Bの構成は種々の変更が可能であり、大断熱材片12Bの湾曲の曲率半径は無限大であってもよい。このような第3実施形態のタンク鏡板用断熱材10Bは、図5と同様の方法(条件と、使用する第2断熱板200を変更した同じ方法)により製造でき、図8と同様の方法により施工できる。第3実施形態のタンク鏡板用断熱材10Bにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態のタンク鏡板用断熱材10Bによれば、平鏡板に適したタンク鏡板用断熱材10Bを提供できる。
【0065】
D.第4実施形態
図12及び図13は、第4実施形態の第1及び第2切断工程について説明する図である。第4実施形態のステップS32(図5)において、作業者は、第1実施形態で説明した方法に代えて、次の方法により、第1断熱板100を切断する。
【0066】
具体的には、図12(A)に示すように、第1断熱板100の長手方向の一辺101上に、それぞれ異なる第1小断熱材片111(111a,111b,111c)についての、内側辺L11が位置するように、第1断熱板100の長手軸O1に対して傾斜した複数の切断面で、切断を行う。また、このとき、図13に示すように、第1小断熱材片111の内側辺L11と、外側辺L10とのそれぞれについて、第1断熱板100の外表面100о側の辺の長さL10о,L11о(L11оについては図示省略)が、第1断熱板100の内表面100i側の辺の長さL10i,L11i(L11iについては図示省略)よりも長くなるように、第1断熱板100の厚さ100t方向に対して傾斜した切断面とする(すなわち、L10о>L10i、かつ、L11о>L11i)。なお、第4実施形態では、例えば、第1算出工程で求めた第1小断熱材片111の外側辺L10の長さが、L10о及びL10iの平均と等しくなるよう処理すればよい。
【0067】
第4実施形態のステップS34(図5)において、作業者は、第1実施形態で説明した方法に代えて、次の方法により、第2断熱板200を切断する。具体的には、図12(B)に示すように、第2断熱板200の長手方向の一辺201上に、それぞれ異なる第1大断熱材片121(121a,121b,121c)についての、内側辺L21が位置するように、第2断熱板200の長手軸O2に対して傾斜した複数の切断面で、切断を行う。また、このとき、図13で説明した第1小断熱材片111と同様に、第1大断熱材片121の内側辺L21と、外側辺L20とのそれぞれについて、第2断熱板200の外表面側の辺の長さが、第2断熱板200の内表面側の辺の長さよりも長くなるように、第2断熱板200の厚さ方向に対して傾斜した切断面とする。なお、第4実施形態では、例えば、第2算出工程で求めた第1大断熱材片121の外側辺L20の長さが、外表面側の辺の長さ及び内表面側の辺の長さの平均と等しくなるよう処理すればよい。
【0068】
なお、上述の例では、第1小断熱材片111及び第1大断熱材片121について例示したが、第2小断熱材片112、第2〜第6大断熱材片122〜126についても同様である。このように、タンク鏡板用断熱材の製造方法は種々の変更が可能であり、第1実施形態で説明した第1及び第2切断工程に代えて、上述した第1及び第2切断工程が実行されてもよい。第4実施形態により得られたタンク鏡板用断熱材10Cは、図8と同様の方法により施工できる。第4実施形態のタンク鏡板用断熱材10Cにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0069】
図14は、第4実施形態の効果について説明する図である。図14(A)には、第4実施形態により得られたタンク鏡板用断熱材10Cを鏡板21に設置した様子を示す。図14(B)には、比較例のタンク鏡板用断熱材10xを鏡板21に設置した様子を示す。上述の通り、第4実施形態のタンク鏡板用断熱材10Cは、各小断熱材片11と各大断熱材片12とについて、外表面側の辺の長さが内表面側の辺の長さよりも長い。このため、各小断熱材片11と各大断熱材片12とを鏡板21に設置した際に、隣り合う断熱片(図示の例では、第2大断熱材片122aと第3大断熱材片123a、第3大断熱材片123aと第4大断熱材片124a)の間に、比較例の場合に生じていた隙間Eをなくす(または小さくする)ことができる。このような効果は、特に、第1及び第2断熱板100,200の厚さが厚い場合に顕著である。この結果、第4実施形態のタンク鏡板用断熱材10Cによれば、断熱効果をより一層向上できる。
【0070】
E.変形例
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0071】
上記第1〜4実施形態では、タンク鏡板用断熱材の構成について一例を示した。しかし、タンク鏡板用断熱材の構成は種々の変形が可能である。例えば、タンク鏡板用断熱材は、中心断熱材を備えていなくてもよい。この場合、大断熱材片(大断熱材片が半径方向に複数に分割される場合には、最も中心O側に位置する大断熱材片)を、二等辺三角形状としてもよい。
【0072】
上記第1〜4実施形態、及び、上記変形例の構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態や第2実施形態の構成において、大断熱材片の湾曲の曲率半径は無限大であってもよい。なお、上述したタンク鏡板用断熱材の材料(第1断熱板及び第2断熱板の材料)は任意に変更できる。上述したタンク鏡板用断熱材の材料(第1断熱板及び第2断熱板の材料)は、日本工業規格JIS A 9501:2014、JIS A 9510:2009、JIS A 9511:2009およびJIS A 9504:2011に規定される材料が好ましく、無機多孔質材料(パーライト、ケイ酸カルシウムなど)以外にも、例えば、発泡プラスチック材料(硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなど)や、繊維材料(ガラス繊維、ロックウールなど)であってもよい。
【0073】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0074】
10,10A,10B,10C…タンク鏡板用断熱材
11,11A…小断熱材片
12,12A,12B…大断熱材片
13…中心断熱材
20…タンク
21,21B…鏡板
22…直胴部
30…直胴部用断熱材
100…第1断熱板
111,111a〜n…第1小断熱材片
112,112a〜n…第2小断熱材片
121,121a〜x…第1大断熱材片
122,122a〜x…第2大断熱材片
123,123a〜x…第3大断熱材片
124,124a〜x…第4大断熱材片
125,125a〜y…第5大断熱材片
126,126a〜z…第6大断熱材片
200…第2断熱板
211,211B…大半径部
212…小半径部
【要約】
【課題】大型タンクにも適用可能なタンク鏡板用断熱材であって、施工現場環境を向上させつつ、施工時の手間と時間を低減することが可能なタンク鏡板用断熱材を提供する。
【解決手段】タンク鏡板用断熱材は、タンク鏡板のうち隅部に位置しており第1の外半径を有する小半径部を覆う複数の小断熱材片であって、タンク鏡板の周方向に沿って分割された複数の小断熱材片と、タンク鏡板のうち隅部よりも内側に位置しており、第1の外半径よりも大きな第2の外半径を有する大半径部を覆う複数の大断熱材片であって、タンク鏡板の周方向に沿って分割された複数の大断熱材片と、を備える。小断熱材片と、大断熱材片とはそれぞれ、外側辺と、外側辺と対向すると共に外側辺よりも短い内側辺とを有する湾曲板状であって、小断熱材片の湾曲の曲率半径は、大断熱材片の湾曲の曲率半径よりも小さい。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14