【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)革新的研究開発推進プログラム(ImPACT) 「高出力人工筋」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液圧によって膨張及び収縮する筒状のチューブと、所定方向に配向されたコードを編み込んだ筒状の構造体であって前記チューブの径方向外側に位置するスリーブと、によって構成されるアクチュエータ本体部を具え、
前記チューブと前記スリーブとの間に、超高分子量ポリエチレンを含む層を有し、
前記超高分子量ポリエチレンを含む層は、超高分子量ポリエチレンの粒子を前記チューブの外周面に塗布し、又は超高分子量ポリエチレンからなるフィルムで前記チューブの外周面を被覆して形成されていることを特徴とする、液圧式アクチュエータ。
前記超高分子量ポリエチレンを含む層は、超高分子量ポリエチレンの粒子を前記チューブの外周面に塗布して形成されている、請求項1又は2に記載の液圧式アクチュエータ。
前記チューブは、SP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%以上である極性ゴム層及びSP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%未満である非極性ゴム層からなる2層以上の積層構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液圧式アクチュエータ。
前記極性ゴム層が、アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび/または水素化アクリロニトリルブタジエンゴムを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の液圧式アクチュエータ。
前記非極性ゴム層が、ブタジエンゴム、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴムからなる群から選択される1種類以上を含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載の液圧式アクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の液圧式アクチュエータを、その実施形態に基づき、図面を参照しつつ、詳細に例示説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0027】
(1)液圧式アクチュエータの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る液圧式アクチュエータ10の側面図である。
図1に示すように、液圧式アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100、封止機構200及び封止機構300を具える。また、液圧式アクチュエータ10の両端には、連結部20がそれぞれ設けられる。
【0028】
図2は、液圧式アクチュエータ10の一部分解斜視図である。
図2に示すように、液圧式アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100及び封止機構200を具える。
アクチュエータ本体部100は、チューブ110と、スリーブ120と、チューブ110の外周面を被覆する超高分子量ポリエチレンを含む層130と、によって構成される。
【0029】
図1において、アクチュエータ本体部100には、フィッティング400及び通過孔410を介して作動流体が流入する。ここで、本発明のアクチュエータは、液圧式であり、作動流体として液体が用いられ、該液体としては、油や水等が挙げられる。なお、本発明のアクチュエータは、油圧式でも、水圧式でもよいが、油圧式として、好適に使用できる。また、油圧式の場合、作動油としては、従来より油圧駆動システムに使用されている作動油を使用することができる。
【0030】
アクチュエータ本体部100は、チューブ110内へ作動流体が流入することによって、アクチュエータ本体部100の軸方向D
AXに収縮し、径方向D
Rに膨張する。また、アクチュエータ本体部100は、チューブ110から作動流体が流出することによって、アクチュエータ本体部100の軸方向D
AXに膨張し、径方向D
Rに収縮する。このようなアクチュエータ本体部100の形状変化によって、液圧式アクチュエータ10は、アクチュエータとしての機能を発揮する。
【0031】
また、このような液圧式アクチュエータ10は、いわゆるマッキベン型であり、人工筋肉用として適用できることは勿論のこと、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢(上肢や下肢など)用としても好適に用い得る。連結部20には、当該体肢を構成する部材などが連結される。
【0032】
封止機構200及び封止機構300は、軸方向D
AXにおけるアクチュエータ本体部100の両端部を封止する。具体的には、封止機構200は、封止部材210及びかしめ部材230を含む。封止部材210は、アクチュエータ本体部100の軸方向D
AXの端部を封止する。また、かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210と共にかしめる。かしめ部材230の外周面には、治具によってかしめ部材230がかしめられた痕である圧痕231が形成される。
【0033】
封止機構200と封止機構300との相違点は、フィッティング400(及び通過孔410)が設けられているか否かである。
フィッティング400は、液圧式アクチュエータ10の駆動圧力源、具体的には、作動流体のコンプレッサと接続されたホース(管路)を取り付けられるように突出している。フィッティング400を介して流入した作動流体は、通過孔410を通過してアクチュエータ本体部100の内部、具体的には、チューブ110の内部に流入する。
【0034】
チューブ110は、液圧によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ110は、作動流体による収縮及び膨張を繰り返すため、弾性材料、例えば、ゴム等からなる。
【0035】
図3は、アクチュエータ本体部100の一実施形態の部分断面図である。
図3に示すアクチュエータ本体部100は、チューブ110と、チューブ110の径方向D
R外側に位置する超高分子量ポリエチレンを含む層130と、超高分子量ポリエチレンを含む層130の径方向D
R外側に位置するスリーブ120とを有する。このように、本発明においては、チューブ110とスリーブ120との間に超高分子量ポリエチレンを含む層130が位置することで、摺動性に優れる超高分子量ポリエチレンを含む層130がスリーブ120側からの負荷を緩和することによって、チューブ110が保護され、チューブ110の耐久性が向上する。
【0036】
超高分子量ポリエチレンを含む層130に使用される超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量が100万〜700万であることが好ましく、150万〜500万であることが更に好ましい。超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量が100万〜700万の範囲であれば、超高分子量ポリエチレンを含む層130の摺動性が更に向上し、スリーブ120側からの負荷を更に軽減できるため、チューブ110の耐久性が更に向上する。
【0037】
超高分子量ポリエチレンを含む層130は、超高分子量ポリエチレンの他に、老化防止剤(酸化防止剤)、充填剤等の添加剤を含んでもよい。なお、超高分子量ポリエチレンを含む層130における、超高分子量ポリエチレンの含有率は、100質量%でもよいが、80〜100質量%の範囲が好ましく、90〜100質量%の範囲が好ましい。
【0038】
超高分子量ポリエチレンを含む層130は、超高分子量ポリエチレンの粒子をチューブ110の外周面に塗布して形成されることが好ましい。超高分子量ポリエチレンの粒子をチューブ110の外周面に塗布することで、簡便且つ低コストで、超高分子量ポリエチレンを含む層130を形成することができる。なお、超高分子量ポリエチレンの粒子をチューブ110の外周面に塗布した後、所望により加熱及び/又は加圧して、超高分子量ポリエチレンを含む層130を形成してもよい。
ここで、超高分子量ポリエチレンの粒子の平均粒径は、0.05〜100μmの範囲が好ましい。超高分子量ポリエチレンの粒子の平均粒径がこの範囲であれば、取り扱い易い上、所望の厚さの超高分子量ポリエチレンを含む層130を形成し易い。なお、超高分子量ポリエチレンを含む層130の厚みは、摺動性の観点から、0.1〜250μmの範囲が好ましい。
【0039】
また、超高分子量ポリエチレンを含む層130は、チューブ110の外周面の全面を被覆していてもよいが、チューブ110の外周面の30〜99.5%を被覆していることが好ましい。チューブ110の超高分子量ポリエチレンを含む層130による被覆率は、例えば、可視光、赤外光、紫外光、X線等を利用し、必要に応じて、顕微鏡等で適宜拡大することによって測定することができる。チューブ110の超高分子量ポリエチレンを含む層130による被覆率が99.5%以下であれれば、チューブ110の変形に超高分子量ポリエチレンを含む層130が十分に追随でき、所望の効果を長期に渡って維持でき、また、チューブ110の超高分子量ポリエチレンを含む層130による被覆率が30%以上であれば、摺動性が更に向上する。
【0040】
本発明においては、超高分子量ポリエチレンを含む層130の形成方法は、上述の超高分子量ポリエチレンの粒子を用いた方法に限定されず、例えば、超高分子量ポリエチレンからなるフィルムで、チューブ110の外周面を被覆し、所望により加熱及び/又は加圧して、超高分子量ポリエチレンを含む層130を形成してもよいし、超高分子量ポリエチレンからなる繊維で、チューブ110の外周面を被覆し、所望により加熱及び/又は加圧して、超高分子量ポリエチレンを含む層130を形成してもよい。
【0041】
超高分子量ポリエチレンの粒子、フィルム、繊維等を加熱する場合、加熱方法としては、任意の方法を適用できる。例えば、熱源が直接接触する方法においては、金属や樹脂製モールドや、熱コテ(アイロン様の機器)を使用することができ、間接的に加温する方法においては、超音波照射、高周波照射、レーザー照射、赤外線照射、熱ガス、水蒸気、熱水等を利用できる。また、加熱条件は、超高分子量ポリエチレンの軟化点以上であることが好ましく、加熱時間は、超高分子量ポリエチレンがチューブ110と十分に相互作用する時間以上が好ましい。
【0042】
図3に示すように、チューブ110は、単層構造でもよいが、本発明においては、チューブ110は、極性ゴム層及び非極性ゴム層からなる2層以上の積層構造を有することが好ましい。ここで、極性ゴム層は、SP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%以上であり、一方、非極性ゴム層は、SP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%未満である。
【0043】
図4は、チューブ110の2つの実施形態の部分断面図である。
図4(a)に示すチューブ110は、チューブの内面側に位置する極性ゴム層111と、該極性ゴム層111の径方向D
R外側に隣接して、チューブ110の外面側に位置する非極性ゴム層112とからなる2層構造を有する。
【0044】
極性ゴム層111は、SP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%以上であるため、耐液性、特には、耐油性に優れ、例えば、作動流体が油であっても、高い耐久性を有する。
【0045】
一方、非極性ゴム層112は、SP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%未満であり、耐亀裂性、耐摩耗性、摺動性に優れ、スリーブ120側からの負荷に耐え、例えば、スリーブ120と接触しても、高い耐久性を有する。
【0046】
そのため、チューブ110が、極性ゴム層111及び非極性ゴム層112からなる2層以上の積層構造を有する場合、繰り返し伸縮しても、高い耐液性と耐久性を兼ね備えた、液圧式アクチュエータを実現できる。
【0047】
なお、極性ゴム層111は、チューブ110の最内側に配置されていることが好ましい。極性ゴム層111が、チューブ110の最内側に配置されている場合、チューブの耐油性が高く、チューブ110の耐久性が更に向上する。
【0048】
一方、非極性ゴム層112は、極性ゴム層111の径方向D
R外側であって、チューブ110の最外側に配置されていることが好ましい。非極性ゴム層112が、極性ゴム層111の径方向D
R外側に配置されている場合、耐亀裂性、耐摩耗性、摺動性に優れる非極性ゴム層112がスリーブ120側からの負荷に耐えることによって、極性ゴム層111が保護され、チューブ110全体としての強度が向上し、チューブ110の耐久性が更に向上する。
【0049】
また、チューブ110は、
図4(b)に示すように、3層以上の積層構造(
図4(b)では、4層構造)を有してもよい。
ここで、チューブ110が3層以上の積層構造を有する場合、極性ゴム層111が、チューブ110の最内側に配置されていることが好ましく、また、非極性ゴム層112が、チューブ110の最外側に配置されていることが好ましい。作動流体に接するチューブ110の最内側に、極性ゴム層111を配置することで、極性ゴム層111の耐液性が十分に発揮され、また、スリーブ120に接するチューブ110の最外側に、非極性ゴム層112を配置することで、非極性ゴム層112の耐亀裂性、耐摩耗性、摺動性が十分に発揮される。
【0050】
図4(a)及び(b)に示すチューブ110は、極性ゴム層111と非極性ゴム層112のみからなるが、極性ゴム層と非極性ゴム層との間に接着層を設けて、極性ゴム層と非極性ゴム層との間の接着性を向上させてもよい。ここで、接着層には、極性ゴム層と非極性ゴム層の性質に応じて適切な接着剤を用いればよく、例えば、株式会社東洋化学研究所製の「メタロックR−17」等が好適に使用できる。
【0051】
また、極性ゴム層111の総厚みは、チューブ110の総厚みの10%〜90%であることが好ましく、20%〜80%の範囲が更に好ましく、また、非極性ゴム層112の総厚みは、チューブ110の総厚みの90%〜10%であることが好ましく、80%〜20%の範囲が更に好ましい。この場合、チューブ110の耐液性と耐久性が向上し、アクチュエータとしての耐久性が更に向上する。
なお、チューブ110の総厚みは、目的に応じて適宜設定できるが、アクチュエータの耐久性と動作長の観点から、1.0mm〜6.0mmの範囲が好ましい。また、チューブ110の直径(外径)は、目的とする用途に応じて、適宜選択できる。
【0052】
スリーブ120は、円筒状であり、チューブ110の外周面を覆う。スリーブ120は、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ120は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ110の収縮及び膨張を規制しつつ追従する。
【0053】
スリーブ120を構成するコードとしては、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)繊維、ポリカプロラクタム(ナイロン6)繊維等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維等のポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、レーヨン、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維から選ばれる少なくとも1種の繊維材料からなる繊維コードを用いることが好ましい。これらの中でも、スリーブ120の強度の観点から、アラミド繊維からなるコードを用いることが特に好ましい。
但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維などの高強度繊維や、極細のフィラメントによって構成される金属製のコードを用いてもよい。
【0054】
また、上述の繊維コードや金属製のコードは、その表面を、ゴムや、熱硬化性樹脂とラテックスとの混合物等で被覆してもよい。これらの材料でコードの表面が被覆されている場合、コードの耐久性を向上させつつ、コードの表面の摩擦係数を適度に低下させることができる。
なお、熱硬化性樹脂とラテックスとの混合物中の固形分率は、15質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下が更に好ましい。また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、ラテックスとしては、ビニルピリジン(VP)ラテックス、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ラテックス等が挙げられる。
【0055】
なお、スリーブは単層構造であっても、複数層構造であってもよく、後者の場合は断面が同心円状になるよう積層されたものであっても、断面が渦巻き状になるよう巻きつけられた構造のものでもよい。
【0056】
図2において、封止機構200は、アクチュエータ本体部100の軸方向D
AXにおける端部を封止する。封止機構200は、封止部材210、第1係止リング220及びかしめ部材230によって構成される。
【0057】
封止部材210は、胴体部211及び鍔部212を有する。封止部材210としては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0058】
胴体部211は、円管状であり、胴体部211には、作動流体が通過する通過孔215が形成される。通過孔215は、通過孔410(
図1参照)に連通する。胴体部211には、チューブ110が挿通される。
【0059】
鍔部212は、胴体部211に連なっており、胴体部211よりも液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXにおける端部側に位置する。鍔部212は、胴体部211よりも径方向D
Rに沿った外径が大きい。鍔部212は、胴体部211に挿通されたチューブ110及び第1係止リング220を係止する。
【0060】
胴体部211の外周面には、凹凸部213が形成される。凹凸部213は、胴体部211に挿通されたチューブ110の滑り抑制に寄与する。凹凸部213による凸部分が3つ以上形成されることが好ましい。
【0061】
また、胴体部211の鍔部212寄りの位置には、胴体部211よりも外径が小さい第1小径部214が形成される。なお、第1小径部214の形状については、
図5以降においてさらに説明する。
【0062】
第1係止リング220は、スリーブ120を係止する。具体的には、スリーブ120は、第1係止リング220を介して径方向D
R外側に折り返される(
図2において不図示、
図5参照)。
【0063】
第1係止リング220の外径は、胴体部211の外径よりも大きい。第1係止リング220は、胴体部211の第1小径部214の位置においてスリーブ120を係止する。つまり、第1係止リング220は、胴体部211の径方向D
R外側であって、鍔部212に隣接する位置において、スリーブ120を係止する。
【0064】
第1係止リング220は、胴体部211よりも小さい第1小径部214に係止させるため、本実施形態では、二分割の形状としている。なお、第1係止リング220は、二分割に限らず、より多くの部分に分割してもよいし、一部の分割部分が回動可能に連結されていてもよい。
【0065】
第1係止リング220としては、封止部材210と同様の金属や硬質プラスチック材料などを用いることができる。
【0066】
かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210と共にかしめる。かしめ部材230としては、アルミニウム合金、真鍮及び鉄などの金属を用いることができる。かしめ部材230には、かしめ用の治具によってかしめ部材230がかしめられると、
図1に示したような圧痕231が形成される。
【0067】
(2)封止機構の構成
次に、
図5〜
図12を参照して、封止機構200の実施形態について説明する。
【0068】
(2.1)実施形態1−1
図5は、実施形態1−1に係る封止機構200を含む液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXに沿った一部断面図である。
【0069】
前述したように、封止部材210は、胴体部211の外径よりも小さい外径を有する第1小径部214を有する。
【0070】
第1係止リング220は、第1小径部214の径方向D
R外側に配置される。第1係止リング220の内径R1は、胴体部211の外径R3よりも小さい。なお、第1係止リング220の外径R2も、胴体部211の外径R3より小さくてもよい。
【0071】
チューブ110は、鍔部212に当接するまで胴体部211に挿通される。チューブ110の外周面は、超高分子量ポリエチレンを含む層130で被覆されている。一方、スリーブ120は、第1係止リング220を介して径方向D
R外側に折り返されている。この結果、スリーブ120は、軸方向D
AXの端部において第1係止リング220を介して折り返された第1折り返し部120aを有する。具体的には、スリーブ120は、前記超高分子量ポリエチレンを含む層130の外周面を覆うスリーブ本体部120bと、該スリーブ本体部120bの軸方向D
AXの端部で折り返されてスリーブ本体部120bの外周側に配置された第1折り返し部120aと、から構成される。
【0072】
第1折り返し部120aは、超高分子量ポリエチレンを含む層130の径方向D
R外側に位置するスリーブ本体部120bと接着されている。具体的には、スリーブ本体部120bと第1折り返し部120aとの間には、接着層240が形成され、この接着層240によって、スリーブ本体部120bと第1折り返し部120aとが接着されている。ここで、接着層240には、スリーブ120を構成するコードの種類によって適切な接着剤を用いればよい。
なお、本発明においては、接着層240は、必須ではなく、第1折り返し部120aは、スリーブ本体部120bと接着されていなくてもよい。
【0073】
かしめ部材230は、封止部材210の胴体部211の外径よりも大きく、胴体部211に挿通された上で治具によってかしめられる。かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210と共にかしめる。具体的には、かしめ部材230は、胴体部211に挿通されたチューブ110、超高分子量ポリエチレンを含む層130、スリーブ本体部120b、及び第1折り返し部120aをかしめる。つまり、かしめ部材230は、チューブ110、超高分子量ポリエチレンを含む層130、スリーブ本体部120b及び第1折り返し部120aを封止部材210と共にかしめる。
【0074】
(2.2)実施形態1−2
図6は、実施形態1−2に係る封止機構200を含む液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXに沿った一部断面図である。以下、実施形態1−1との相違点について主に説明する。
実施形態1−2では、スリーブ120の第1折り返し部120aと、かしめ部材230との間には、シート状の弾性部材が設けられる。具体的には、第1折り返し部120aとかしめ部材230との間には、ゴムシート250が設けられる。ゴムシート250は、円筒状の第1折り返し部120aの外周面を覆うように設けられる。ゴムシート250の種類は特に限定されないが、チューブ110と同様の種類のゴムを用いることができる。かしめ部材230は、ゴムシート250も含めて、アクチュエータ本体部100を封止部材210と共にかしめる。
【0075】
(2.3)実施形態1−3
図7は、実施形態1−3に係る封止機構200を含む液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXに沿った一部断面図である。
実施形態1−3では、実施形態1−1の接着層240に代えてゴムシート260が用いられる。ゴムシート260は、シート状の弾性部材であり、スリーブ本体部120bと、第1折り返し部120aとの間に設けられる。ゴムシート260には、ゴムシート250と同様の種類のゴムを用いることができる。
【0076】
(2.4)実施形態2−1
図8は、実施形態2−1に係る封止機構200Aを含む液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXに沿った一部断面図である。
【0077】
実施形態2−1では、実施形態1の封止機構200に代えて、封止機構200Aが用いられる。封止機構200と封止機構200Aとの相違点は、封止部材210のような第1小径部214が形成されていないことである。
封止機構200Aは、封止部材210A、第1係止リング220A及びかしめ部材230Aによって構成される。
【0078】
封止部材210Aの胴体部211Aには、チューブ110が挿通される。チューブ110の外周面は、超高分子量ポリエチレンを含む層130で被覆されている。封止部材210Aには、封止部材210のような第1小径部214が形成されていないため、第1係止リング220Aの外径は、胴体部211Aの外径よりも大きい。このため、第1係止リング220Aは、鍔部212Aとかしめ部材230Aとによって係止される。
【0079】
また、第1係止リング220Aの外径が胴体部211Aの外径よりも大きいため、かしめ部材230Aは、鍔部212Aと当接しない。すなわち、スリーブ120が折り返された第1係止リング220Aの部分は、外部に露出する。さらに、第1係止リング220Aの外径が胴体部211Aの外径よりも大きいため、実施形態1の第1係止リング220のように分割されていなくてもよい。
【0080】
なお、スリーブ本体部120bと第1折り返し部120aとの間には、実施形態1−1と同様に、接着層240が形成される。
【0081】
(2.5)実施形態2−2
図9は、実施形態2−2に係る封止機構200Aを含む液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXに沿った一部断面図である。以下、実施形態2−1との相違点について主に説明する。
実施形態2−2では、スリーブ120の第1折り返し部120aと、かしめ部材230Aとの間には、シート状の弾性部材が設けられる。具体的には、第1折り返し部120aとかしめ部材230Aとの間には、ゴムシート250Aが設けられる。ゴムシート250Aは、実施形態1−2のゴムシート250と同様に、円筒状の第1折り返し部120aの外周面を覆うように設けられる。
【0082】
(2.6)実施形態2−3
図10は、実施形態2−3に係る封止機構200Aを含む液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXに沿った一部断面図である。
実施形態2−3では、実施形態2−1の接着層240に代えてゴムシート260が用いられる。ゴムシート260は、実施形態1−3と同様に、シート状の弾性部材であり、スリーブ本体部120bと、第1折り返し部120aとの間に設けられる。
【0083】
(2.7)実施形態3−1
図11は、実施形態3−1に係る封止機構200Bを含む液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXに沿った一部断面図である。実施形態3(3−1及び3−2)では、2つの係止リングが用いられる。
【0084】
図11に示すように、封止機構200Bは、封止部材210B、第1係止リング220B、かしめ部材230B及び第2係止リング270によって構成される。
【0085】
このように、封止機構200Bは、第1係止リング220Bに加えて第2係止リング270を有する。第2係止リング270は、胴体部211Bの径方向D
R外側であって、第1係止リング220Bよりもアクチュエータ本体部100の軸方向D
AXにおける中央側の位置において、スリーブ120を係止する。
【0086】
具体的には、封止部材210Bは、胴体部211Bの外径よりも小さい外径を有する第2小径部216Bを有する。
【0087】
第2係止リング270は、第2小径部216Bの径方向D
R外側に配置される。第2係止リング270の内径は、胴体部211Bの外径よりも小さいことが好ましい。なお、第2係止リング270の外径も、胴体部211Bの外径よりも小さくてもよい。これにより、第2係止リング270は、第2小径部216Bによって係止される。
【0088】
スリーブ120は、第2係止リング270を介して折り返された第2折り返し部120cを有する。第2折り返し部120cは、第1折り返し部120aに連なっている。つまり、第2折り返し部120cは、前記第1折り返し部120aにおける軸方向D
AXの端部で折り返されて第1折り返し部120aの外周側に配置されている。
具体的には、スリーブ120は、第1係止リング220Bを介して、アクチュエータ本体部100の軸方向D
AXにおける中央側に折り返されることによって第1折り返し部120aを形成する。さらに、スリーブ120は、第1折り返し部120aがアクチュエータ本体部100の軸方向D
AXにおける端部側に折り返されることによって第2折り返し部120cを形成する。
【0089】
かしめ部材230Bは、胴体部211Bに挿通されたチューブ110、チューブ110の径方向D
R外側に位置する超高分子量ポリエチレンを含む層130、超高分子量ポリエチレンを含む層130の径方向D
R外側に位置するスリーブ本体120b、第1折り返し部120a、及び第2折り返し部120cを、封止部材210Bと共にかしめる。
【0090】
スリーブ本体120bと、第1折り返し部120aとの間には、実施形態1−3と同様のゴムシート260が設けられる。
【0091】
また、第1折り返し部120aと、第2折り返し部120cとの間にもシート状の弾性部材が設けられる。具体的には、第1折り返し部120aと第2折り返し部120cとの間には、ゴムシート280が設けられる。ゴムシート280は、円筒状の第1折り返し部120aの外周面を覆うように設けられる。
【0092】
さらに、第2折り返し部120cと、かしめ部材230Bとの間には、実施形態1−3のゴムシート250と概ね同形状のゴムシート290が設けられる。ゴムシート290は、円筒状の第2折り返し部120cの外周面を覆うように設けられる。
【0093】
(2.8)実施形態3−2
図12は、実施形態3−2に係る封止機構200Cを含む液圧式アクチュエータ10の軸方向D
AXに沿った一部断面図である。以下、実施形態3−1との相違点について主に説明する。
【0094】
実施形態3−2では、第1小径部214B及び第2小径部216Bが形成されていない封止部材210Cが用いられる。
【0095】
封止部材210Cは、胴体部211Cを有する。封止部材210Cには、封止部材210Bのような第1小径部214B及び第2小径部216Bが形成されていないため、第1係止リング220Cの内径及び第2係止リング270Cの内径は、胴体部211Cの外径よりも大きい。
【0096】
かしめ部材230Cは、軸方向D
AXにおいて、第1係止リング220Cと第2係止リング270Cとの間に位置する。すなわち、スリーブ120が折り返された第1係止リング220Cの部分及び第2係止リング270C部分は、外部に露出する。
【0097】
なお、第1折り返し部120aと第2折り返し部120cとの間には、実施形態3−1のゴムシート280と概ね同形状のゴムシート281が設けられる。また、スリーブ120の第2折り返し部120cと、かしめ部材230Cとの間には、実施形態3−1のゴムシート290と概ね同形状のゴムシート291が設けられる。
【0098】
(3)チューブ110の材質
チューブ110は、作動流体による収縮及び膨張を繰り返すため、弾性材料、例えば、ゴム等からなる。例えば、チューブ110は、ゴム成分に、所望により選択した配合剤を配合してゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を用いて、押出し成形機により、押出しすることで製造できる。ここで、ゴム成分としては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR、「ニトリルゴム」とも呼ぶ)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化NBR、「水素化ニトリルゴム」とも呼ぶ)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム等が挙げられ、また、配合剤としては、カーボンブラック、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、可塑剤、硫黄、スコーチ防止剤、加硫促進剤、有機過酸化物等が挙げられる。
【0099】
また、上述のように、チューブ110は、SP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%以上である極性ゴム層111及びSP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%未満である非極性ゴム層112からなる2層以上の積層構造を有することが好ましい。
【0100】
前記SP値が8.7以上である極性ゴムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム等が挙げられる。これらの極性ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0101】
極性ゴム層111は、アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび/または水素化アクリロニトリルブタジエンゴムを含むことが好ましい。アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび水素化アクリロニトリルブタジエンゴムは、前記極性ゴムの中でも、耐油性が特に高く、また、加工性が優れる。従って、極性ゴム層111がアクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび/または水素化アクリロニトリルブタジエンゴムを含む場合、極性ゴム層111の耐油性が更に向上する。また、アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび水素化アクリロニトリルブタジエンゴムは、ニトリル含量、すなわちアクリロニトリル単位の含有量が20質量%〜50質量%であると、耐油性が更に高くなるため好ましい。アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび/または水素化アクリロニトリルブタジエンゴムは、一般的に、アクリロニトリル単位の含有量が25質量%未満の低ニトリルタイプ、アクリロニトリルの含有量が25質量%以上35質量%未満の中ニトリルタイプ、アクリロニトリル単位の含有量が35質量%以上の高ニトリルタイプに分類される。
前記アクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび/または水素化アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリル単位の含有量が異なる2種類以上のアクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび/または水素化アクリロニトリルブタジエンゴムを含むことが好ましい。2種類以上のアクリロニトリル−ブタジエンゴムおよび/または水素化アクリロニトリルブタジエンゴムを使用することで、所望のニトリル含量を容易に達成できる。
【0102】
水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、アクリロニトリル−ブタジエンゴムに水素を添加したものである。水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、通常、アクリロニトリル−ブタジエンゴムと同様の耐油性を有し、かつアクリロニトリル−ブタジエンゴムに比較して耐熱性等が優れる点で好ましい。
【0103】
クロロプレンゴムは、前記極性ゴム中でも、引張強さ、伸び等の機械的特性や加工性に優れる点で好ましい。
【0104】
エピクロロヒドリンゴムは、前記極性ゴム中でも、耐オゾン性及び接着性に優れる点で好ましい。
【0105】
極性ゴム層111は、SP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%以上であり、好ましく60〜100質量%、より好ましくは60〜95質量%である。極性ゴム層111における、極性ゴムの含有率がこの範囲であれば、極性ゴム層111の耐油性が更に向上する。
一方、非極性ゴム層112は、SP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%未満であり、好ましく0〜10質量%である。非極性ゴム層112における、極性ゴムの含有率がこの範囲であれば、SP値が8.7未満である非極性ゴムの含有率を上昇させることができる。
【0106】
極性ゴム層111は、前記ゴム成分の加重平均ニトリル含量が20質量%以上45質量%以下であることが好ましい。この場合、極性ゴム層111の耐油性が更に向上し、チューブの耐久性が更に向上する。
【0107】
極性ゴム層111及び非極性ゴム層112は、ゴム成分として、上述したSP値が8.7以上である極性ゴム以外のゴム、例えば、SP値が8.7未満である非極性ジエン系ゴムを含んでもよい。
【0108】
ここで、極性ゴム層111に含有させるSP値が8.7未満である非極性ジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、特には、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(VC−BR)が好ましい。
VC−BRは、シス−1,4構造を繰り返し単位とするポリブタジエンと、1,2−ビニル構造を繰り返し単位とするポリブタジエンとで構成されたゴムである。VC−BRの1,2−ビニル構造以外のミクロ構造におけるシス−1,4構造の比率は、通常97質量%以上である。極性ゴム層111にVC−BRを含有させると、極性ゴム層111の機械的強度が向上する。
【0109】
非極性ゴム層112は、上述したSP値が8.7以上である極性ゴムの含有率がゴム成分中50質量%未満であるため、他のゴム成分を含むが、ここで、他のゴム成分としては、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム等が挙げられる。非極性ゴム層112がこれら他のゴム成分を含む場合、非極性ゴム層112の耐亀裂性、耐摩耗性、摺動性が向上し、チューブの耐久性が更に向上する。
【0110】
極性ゴム層111及び非極性ゴム層112は、上述したゴム成分の他に、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリル酸亜鉛、脂肪族樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の材料を、用途に合わせて、添加することが好ましい。極性ゴム層及び非極性ゴム層が、これら材料を含む場合、チューブの機械的強度が向上する。なお、前記脂肪族樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0111】
極性ゴム層111及び非極性ゴム層112は、上述したゴム成分の他に、更に他の配合剤を含んでもよい。かかる他の配合剤としては、例えば、カーボンブラック、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、可塑剤、硫黄、スコーチ防止剤、加硫促進剤、有機過酸化物等が挙げられる。
【0112】
極性ゴム層111及び非極性ゴム層112は、カーボンブラックを含むことが好ましい。極性ゴム層111及び非極性ゴム層112がカーボンブラックを含む場合、極性ゴム層111及び非極性ゴム層112の強度が向上して、チューブ110の耐久性が向上する。ここで、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30〜70質量部の範囲が好ましく、40〜60質量部の範囲が更に好ましい。前記カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。これらカーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
非極性ゴム層112に含まれるカーボンブラックは、窒素吸着比表面積が34m
2/g〜155m
2/gであることが好ましく、40m
2/g〜155m
2/gであることが好ましく、70m
2/g〜145m
2/gであることが更に好ましい。非極性ゴム層112に含まれるカーボンブラックの窒素吸着比表面積がこの範囲であれば、非極性ゴム層112の耐亀裂性、耐摩耗性、摺動性が更に向上する。
一方、極性ゴム層111に含まれるカーボンブラックは、特に限定されるものではないが、窒素吸着比表面積が70m
2/g〜145m
2/gであることが好ましい。極性ゴム層111に含まれるカーボンブラックの窒素吸着比表面積がこの範囲であれば、極性ゴム層111の強度が更に向上する。
【0114】
非極性ゴム層112は、更にシリカを含むことが好ましい。非極性ゴム層112がシリカを含む場合、非極性ゴム層112の強度が向上して、チューブ110の耐久性が向上する。ここで、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10〜30質量部の範囲が好ましく、15〜25質量部の範囲が更に好ましい。前記シリカとしては、特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0115】
非極性ゴム層112がシリカを含む場合、非極性ゴム層112は、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。非極性ゴム層112がシリカと共にシランカップリング剤を含む場合、非極性ゴム層112の強度が向上して、チューブ110の耐久性が向上する。前記シランカップリング剤の配合量は、前記シリカ100質量部に対して1〜15質量部の範囲が好ましく、2〜10質量部の範囲が更に好ましい。前記シランカップリング剤としては、特に限定はなく、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
また、前記老化防止剤としては、例えば、N−フェニル−N’1,3−ジフェニルブチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられ、前記可塑剤としては、例えばオイル等が挙げられ、前記スコーチ防止剤としては、例えば、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等が挙げられ、前記加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)等が挙げられる。
【0117】
極性ゴム層111及び非極性ゴム層112からなる積層構造を有するチューブ110は、例えば、上述したゴム成分に配合剤を配合して、極性ゴム層用のゴム組成物と、非極性ゴム層用のゴム組成物とをそれぞれ調製し、これらゴム組成物を用いて、押出し成形機により、共押出しすることで製造できる。
【実施例】
【0118】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0119】
(ゴム組成物の調製)
表1に示す配合処方に従い、ゴム成分と配合剤をバンバリーミキサーで混練りしてゴム組成物を調製した。
【0120】
【表1】
【0121】
*1 NBR1(極高ニトリル): アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル単位の含有量=50.0質量%、日本ゼオン株式会社製「Nipol(登録商標)DN003」、SP値=11.0(cal/cm
3)
1/2
*2 NBR2(中高ニトリル): アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル単位の含有量=33.5質量%、日本ゼオン株式会社製「Nipol(登録商標)1042」、SP値=10.0(cal/cm
3)
1/2
*3 BR1: ビニルシス−ブタジエンゴム(VC−BR)、宇部興産株式会社製「UBEPOL(登録商標)BR150」、シス−1,4結合含有量98質量%、SP値=8.3(cal/cm
3)
1/2
*4 BR2: ブタジエンゴム、JSR株式会社製「BR01」、SP値=8.3(cal/cm
3)
1/2
*5 NR: 天然ゴム、RSS#3、SP値=8.2(cal/cm
3)
1/2
*6 SBR: スチレン−ブタジエンゴム、JSR株式会社製「#1500」、SP値=8.4(cal/cm
3)
1/2
*7 カーボンブラック1: SAF級カーボンブラック、東海カーボン株式会社製「シースト9H」、窒素吸着比表面積=145m
2/g
*8 カーボンブラック2: HAF級カーボンブラック、東海カーボン株式会社製「シースト3」、窒素吸着比表面積=79m
2/g
*9 カーボンブラック3: GPF級カーボンブラック、東海カーボン株式会社製「シーストV」、窒素吸着比表面積=27m
2/g
*10 ステアリン酸: 新日本理化株式会社製「ステアリン酸50S」
*11 老化防止剤: 大内新興化学工業株式会社製「ノクラック6C」
*12 ワックス: 精工化学株式会社製「サンタイト S」
*13 樹脂: 日本ゼオン株式会社製「クレイトン100」
*14 シリカ: 東ソー・シリカ株式会社製「Nipsil AQ」
*15 シランカップリグ剤: Evonic社製「Si69」
*16 可塑剤1: 新日本理化株式会社製「サンソサイザーDOA」
*17 可塑剤2: 三協油化工業株式会社製「A/O MIX」
*18 亜鉛華: ZnO、白水化学工業株式会社製「亜鉛華3号」
*19 硫黄: 鶴見化学工業株式会社製「Sulfax Z」
*20 加硫促進剤1: 加硫促進剤CBS、大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーCZ」
*21 加硫促進剤2: 加硫促進剤DPG、大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーD」
*22 加硫促進剤3: 加硫促進剤TOT、大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーTOT−N」
*23 加硫促進剤4: 加硫促進剤MTBS、大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーDM」
*24 スコーチ防止剤: 大内新興化学工業株式会社製「リターダーCTP」
【0122】
(チューブの作製)
得られたゴム組成物を押出し成形機で加工することにより、長さ300mmの円筒形状のチューブを作製した。なお、実施例1及び比較例6〜9については、
図3に示すような単層構造のチューブを作製し、実施例2〜4、比較例1〜5及び比較例10については、
図4(a)に示すような内層と外層の2層構造のチューブを作製した。
また、実施例1〜4については、チューブの外周面の全面に、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の粒子を塗布し、150℃で10分間加熱して、超高分子量ポリエチレンからなる層を形成した。
また、比較例5については、チューブの外周面の全面に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粒子を塗布し、150℃で10分間加熱して、ポリテトラフルオロエチレンからなる層を形成した。
各層に使用したゴム組成物の配合、チューブの被覆材料、並びに、チューブの内径及び外径、チューブの内層及び外層の厚み、被覆層の厚みを表2に示す。
【0123】
(スリーブの作製)
原糸として、2200dtexのアラミド繊維を2本を用い、12回/10cmの下撚りをけ、更に12回/10cmの上撚りをかけて、直径0.7mmのアラミド繊維コードを作製した。該アラミド繊維コード64本を編み込んで作製した網目状のスリーブを用意した。このスリーブは、横断面において円周上にアラミド繊維コードが64本観察される網目状筒状体であった。具体的には、このスリーブは、等間隔、平行かつ螺旋状に配置された32本のアラミド繊維コードと、この32本のアラミド繊維コードと斜交するとともに、等間隔、平行かつ螺旋状に配置された他の32本のアラミド繊維コードとが交互に編み込まれてなる網目状筒状体であり、各コードのスリーブの軸方向に対する角度は25度であった。
【0124】
(アクチュエータの作製)
前記チューブと前記網目状のスリーブとを用いて、
図1及び
図2に示す構造のアクチュエータを作製した。なお、封止機構200と封止機構300との間の長さは250mmである。アクチュエータに組み込まれたチューブの作動油としては、コスモスーパーエポック株式会社製UF46を用いた。作製したアクチュエータの耐久性を、以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0125】
<アクチュエータの耐久性の評価方法>
作動油をチューブ内に注入して、チューブ内の空気を作動油で十分に置換した。チューブ内の作動油の圧力が0MPaと5MPaとをそれぞれ3秒ごとに繰り返すように作動油の注入操作を行い、チューブに亀裂が入りアクチュエータの機能を発現できなくなるまでの回数を測定した。比較例6の回数を100として、指数表示した。指数値が大きい程、耐久性が高いことを示す。
【0126】
【表2】
【0127】
*25 UHMWPE1: 超高分子量ポリエチレンの粒子、三井化学社製「ミペロンXM220」、平均粒子径=30μm、重量平均分子量=200万
*26 UHMWPE2: 超高分子量ポリエチレンの粒子、三井化学社製「廃エックスミリオン630M」、平均粒子径=160μm、重量平均分子量=570万
*27 PTFE: ポリテトラフルオロエチレンの粒子、旭硝子社製「FluonG163」、平均粒子径=25μm
【0128】
表2の実施例1と比較例6との対比、並びに、実施例2と比較例1との対比から、チューブとスリーブとの間に、超高分子量ポリエチレンからなる層を設けることで、液圧式アクチュエータの耐久性が向上することが分かる。
また、実施例2及び3と比較例5との対比から、熱可塑性樹脂の中でも、超高分子量ポリエチレンが特に優れていることが分かる。