(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面粗さ制御物質が、ポリスチレン(PST)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1に示すように、本発明形態の被処理基板は、液晶パネル用のガラス基板9である。ガラス基板9は、SiO
2等のシリコン含有物を含む。ガラス基板9における、接触帯電を抑制すべき裏面(
図1において下面)の全域が、被処理領域9aとなっている。該被処理領域9aを表面処理装置1によってエッチング(表面処理)することで、被処理領域9aに所望の表面粗さ(凹凸)を付与する。
なお、ガラス基板9の表面(
図1の上面)は、TFTなどの素子が形成される素子形成面であり、非処理領域9bである。
【0010】
表面処理装置1は、エッチング処理部10と、マスク処理部20を備えている。
エッチング処理部10は、ノズル部11と、HF生成部30と、搬送手段40を含む。
HF生成部30は、互いに対向する一対の電極31,31を含む。図示は省略するが、少なくとも片方の電極31の対向面には、アルミナ(Al
2O
3)などの固体誘電体が設けられている。一対の電極31,31どうし間の空間35の内圧は、大気圧近傍である。
【0011】
一対の電極31の一方は電源33と接続され、他方は電気的に接地されている。電源33は、好ましくはパルス状の高周波電圧を出力する、
電源33からの電圧供給によって、一対の電極31間に大気圧近傍のグロー放電が生成され、電極間空間35が放電空間となる。
なお、放電形式は、グロー放電に限られず、アーク放電、コロナ放電などであってもよい。
【0012】
電極間空間35(放電空間)の上流端に反応性ガス原料供給部32が接続されている。反応性ガス原料供給部32は、フッ素含有原料ガスを放電空間35に供給する。フッ素含有原料ガスは、フッ素含有ガスと、水(H
2O)と、キャリアガスを含む。
フッ素含有ガスとしては、CF
4、C
2F
4、C
2F
6、C
3F
8等のPFC(パーフルオロカーボン)、CHF
3、CH
2F
2、CH
3F等のHFC(ハイドロフルオロカーボン)、SF
6、NF
3、XeF
2、その他のフッ素含有化合物が挙げられる。ここでは、フッ素含有ガスとして、CF
4が用いられている。
キャリアガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、窒素、その他の不活性ガスが挙げられる。ここでは、キャリアガスとして、例えば窒素(N
2)が用いられている。キャリアガスは、フッ素含有ガスを搬送する機能の他、フッ素含有ガスを希釈する希釈ガスとしての機能、及び放電空間35における放電生成ガスとしての機能等を有している。
フッ素含有原料ガスが、放電空間35においてプラズマ化(励起、活性化、ラジカル化、イオン化などを含む)されることで、フッ素含有ガス(CF
4)が分解されて、フッ素系反応成分であるフッ化水素(HF)が生成される。これによって、フッ素含有原料ガスからフッ化水素を含む反応性ガス(反応性流体)が生成される。フッ化水素の生成反応式は、例えば下式である。
CF
4+2H
2O→4HF+CO
2 (式1)
【0013】
電極間空間35(放電空間)の下流端から反応性ガス供給路36がノズル部11へ延びている。
ノズル部11は、
図1の紙面直交方向に沿う幅方向に延びる容器状になっている。ノズル部11の上面に吹出口12が設けられている。吹出口12は、幅方向(
図1の紙面直交方向)に延びるスリット状になっている。吹出口12の長さは、ガラス基板9の幅寸法(
図1の紙面直交方向の寸法)と同程度か、それより少し大きい。
【0014】
図示は省略するが、ノズル部11の内部には、整流部が設けられている。整流部は、チャンバー、スリット、多孔板等を含む。反応性ガス供給路36からの反応性ガスが、整流部を通過することによって、ノズル部11の幅方向(
図1の紙面直交方向)に均一化されたうえで、吹出口12から上方へ吹出される。
【0015】
ノズル部11の上面における吹出口12を挟んで両側に吸込口13が設けられている。吸込口13は、幅方向(
図1の紙面直交方向)へスリット状に延びている。吸込口13は、吸引路17を介して排気処理部14に接続されている。排気処理部14は、真空ポンプなどの吸引手段や、除害手段を含む。
【0016】
ノズル部11の上方に離れて天板16が配置されている。天板16は、水平な板状に形成され、ノズル部11と平行に幅方向(
図1の紙面直交方向)へ延びている。天板16とノズル部11との間に扁平な処理空間15が画成されている。処理空間15は、幅方向(
図1の紙面直交方向)へ延びている。
なお、図示は省略するが、処理空間15の幅方向の両端部(
図1の紙面手前側の端部及び奥側の端部)は、一対の端壁によって塞がれている。
前記幅方向と直交する搬送方向(
図1において左右)における、処理空間15の両端部は開口されて、外部に連なっている。これによって、処理空間15の内圧が、大気圧近傍になっている。搬送方向(
図1において左右)における処理空間15の中央部には吹出口12が連通され、両側部には吸込口13が連通されている。
【0017】
ノズル部11の前後(
図1において左右)に搬送手段40が設けられている。搬送手段40は、例えば円盤形状のコロ41を有するコロコンベアによって構成されている。搬送手段40によって、ガラス基板9が
図1の左右方向に沿う搬送方向に搬送され、処理空間15に通される。
【0018】
図2に示すように、マスク処理部20は、例えばスピンコーター21によって構成されている。
【0019】
表面処理装置1によって、ガラス基板9が次のようにして表面処理される。
<マスク工程>
エッチング処理部10によるエッチング処理に先立ち、
図1の仮想線に示すように、マスク処理部20によってマスク工程を行なう。マスク工程では、ガラス基板9の被処理領域9aを表面粗さ制御物質によってマスクする。
表面粗さ制御物質は、目標の表面粗さRaに応じた極性の有機化合物を含むことが好ましい。
表面粗さ制御物質は、ポリスチレン(PST)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)から選択された少なくとも1つを含むことが好ましい。
これらの有機化合物を極性の高い順に並べると、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PST)となる。
前記有機化合物からなる表面粗さ制御物質は、溶媒に溶解させておくことが好ましい。
溶媒としては、水、エタノール、アセトン、クメンなどが挙げられる。
【0020】
図2に示すように、ガラス基板9を、被処理領域9aを上にしてスピンコーター21のスピンテーブル22に設置する。
次いで、スピンテーブル22を高速回転駆動することで、ガラス基板9を高速回転させる。
次いで、滴下ノズル23から前記表面粗さ制御物質の溶液24を被処理領域9aの中央部に滴下し、高速回転の遠心力で被処理領域9aに行き渡らせる。
これによって、被処理領域9aが、表面粗さ制御物質によるマスクで覆われる。
【0021】
前記表面粗さ制御物質によるマスクの厚みは、反応性ガス中のフッ化水素がガラス基板9の表面成分と相互作用可能な厚みとする。つまり、マスクは、フッ化水素が透過可能な程度に極めて薄い。
具体的には、表面粗さ制御物質によるマスクの厚みは、オングストロームオーダーであることが好ましく、5オングストローム〜1000オングストロームであることがより好ましい。
目標の表面粗さRaに応じて、マスクの厚みを調節してもよい。
【0022】
<エッチング工程>
次に、ガラス基板9をエッチング処理部10へ送る。
エッチング処理部10においては、HF生成部30でのフッ素含有原料ガスのプラズマ化によって、フッ化水素(HF)を含む反応性ガスが生成される。該反応性ガスが、反応性ガス供給路36を経てエッチング処理部10に送られ、吹出口12から処理空間15に供給される(反応性ガス供給工程)。
【0023】
併行して、搬送手段40によって、ガラス基板9を処理空間15に通す。
処理空間15内においてガラス基板9の裏面(
図1において下面)すなわち被処理領域9aに反応性ガスが接触する。これによって、反応性ガス中のフッ化水素(HF)と、被処理領域9aにマスクされた表面粗さ制御物質との相互作用が起き、更には、前記フッ化水素と、被処理領域9aにおけるシリコン(Si)等の表面成分との相互作用が起き、被処理領域9aが所望の表面粗さRaにエッチングされる。反応式は、例えば下式である。
SiO
2+4HF+H
2O→SiF
4+3H
2O (式2)
【0024】
発明者の知見によれば、マスク材料がポリエチレングリコールなどの極性の高い表面粗さ制御物質であるほど、表面粗さRaが小さくなる。マスク材料がポリスチレンなどの極性の低い表面粗さ制御物質であるほど、表面粗さRaが大きくなる。したがって、表面粗さ制御物質の選択によって、表面粗さRaを能動的に制御することができる。
同じマスク材料(表面粗さ制御物質)であっても、マスクの厚みを調節することによって、表面粗さRaを制御できる。
要するに、マスク工程で導入した表面粗さ制御物質と反応性ガス中のフッ化水素との相互作用を利用して、前記フッ化水素とガラス基板9との相互作用を制御することで、ガラス基板9の表面粗さRaを制御することができる。
【0025】
思うに、ポリエチレングリコールなどの極性の高い有機マスクの場合、高極性のフッ化水素(HF)の多くが、前記高極性の有機マスクに引き寄せられてガラス基板9の表面まで到達しにくく、全体的にエッチング反応が抑えられるものと考えられる。
これに対し、ポリスチレンなどの極性の低い有機マスクの場合、前記引き寄せが起きにくい。そのため、フッ化水素(HF)が有機マスクの分子間又は原子間を透過してガラス基板9の表面まで到達しやすい。したがって、ガラス基板9の表面のうち、前記有機マスクの分子又は原子の陰になっていない箇所ではエッチング反応が進み、陰になっている箇所ではエッチング反応が抑えられ、その結果、表面粗化(凹凸形成)が促進されるものと考えられる。
したがって、アルミニウムなどの混合成分が少なく表面粗化しにくい組成のガラス基板9の場合、ポリスチレンなどの極性の低い有機マスクを用いることで、確実に表面粗化できる。
逆に粗化され過ぎる組成のガラス基板9については、ポリエチレングリコールなどの極性の高い有機マスクを用いることで、粗化を抑制できる。
液晶パネル用のガラス基板9においては、接触帯電を抑制すべき裏面9aには極性の低いマスク材料を被膜し、TFTなどの素子が形成される表面9bには極性の高いマスク材料を被膜しておいてもよい。そうすることで、裏面9aの表面粗さRaを高めるとともに、表面9bは粗化を抑制できる。
【0026】
未反応のままで吸込口13まで流れて来た反応性ガスあるいは反応により生成したガスは、吸込口13に吸い込まれて排出される。
<マスク除去工程>
前記エッチング処理後、ガラス基板9を水洗いする。前記有機マスクは、エッチングによって形成された凸部の頂点上に載った状態であるから、水洗によってガラス基板9から簡単に除去できる。
【0027】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態では、マスク処理部として、スリットコーター25が用いられている。スリットコーター25は、タンク25aと、コーターノズル25bを含む。タンク25aからノズル25bへ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PST)等の有機マスク材料が供給される。
【0028】
コーターノズル25bは、搬送手段40による搬送方向におけるノズル部11より上流側(
図3において右側)に配置されている。搬送中のガラス基板9の被処理領域9aに、コーターノズル25bから有機マスク材料が塗布される。
【0029】
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3実施形態を示したものである。第3実施形態では、マスク処理部として、ロールコーター26が用いられている。ロールコーター26は、搬送手段40におけるノズル部11より搬送方向の上流側(
図4において右側)の部分に介在されている。
ロールコーター26は、タンク26aと、コーターロール26bを含む。タンク26aにポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PST)等の有機マスク材料が溜められている。
【0030】
コーターロール26bは、搬送手段40の搬送コロの1つを兼ねている。コーターロール26bの外周の下側部が、タンク26a内の有機マスク材料に漬けられている。コーターロール26bの外周の上側部は、搬送中のガラス基板9の下面と接触可能である。
コーターロール26bが搬送手段40の他の搬送コロ41と同期して回転されることで、ガラス基板9の被処理領域9aに有機マスク材料が塗布される。
【0031】
<第4実施形態>
図5は、本発明の第4実施形態を示したものである。第4実施形態では、マスク処理部として、蒸着処理部27が用いられている。蒸着処理部27は、搬送手段40におけるノズル部11より搬送方向の上流側(
図5において右側)の部分に介在されている。
蒸着処理部27は、蒸着槽27aと、ヒーター27bを含む。蒸着槽27aにポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PST)等の有機マスク材料が溜められている。
【0032】
ヒーター27bで蒸着槽27aを加熱することによって、有機マスク材料を気化させる。これによって、搬送中のガラス基板9の被処理領域9aに有機マスク材料が蒸着される。
【0033】
<第5実施形態>
図6は、本発明の第5実施形態を示したものである。第5実施形態では、マスク処理部として、噴霧器28が用いられている。噴霧器28は、タンク28aと、噴霧ノズル28bを含む。タンク28aから噴霧ノズル28bへ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PST)等の有機マスク材料が供給される。
【0034】
噴霧ノズル28bは、搬送手段40による搬送方向におけるノズル部11より上流側(
図6において右側)に配置されている。該噴霧ノズル28bから有機マスク材料が微細な霧状になって噴射されることで、搬送中のガラス基板9の被処理領域9aに有機マスク材料の薄膜が形成される。
【0035】
<第6実施形態>
図7は、本発明の第6実施形態を示したものである。第6実施形態では、マスク処理部として、プラズマ処理部50が用いられている。プラズマ処理部50は、搬送手段40におけるノズル部11より搬送方向の上流側(
図7において右側)の部分に介在されている。
プラズマ処理部50は、互いに対向する一対の電極51,51を含む。図示は省略するが、少なくとも片方の電極51の対向面には、アルミナ(Al
2O
5)などの固体誘電体が設けられている。一対の電極51,51どうし間の空間55の内圧は、大気圧近傍である。電極間空間55には、処理ガスとして、酸素含有分子及び水素含有分子を含むガス(例えば空気)が供給される。プラズマ処理部50の吹出部54は、搬送中のガラス基板9の裏面(被処理領域9a)に向けられている。
【0036】
一対の電極51の一方は電源53と接続され、他方は電気的に接地されている。電源53は、好ましくはパルス状の高周波電圧を出力する、
電源53からの電圧供給によって、一対の電極51間に大気圧近傍のグロー放電が生成され、電極間空間55が放電空間となる。
なお、放電形式は、グロー放電に限られず、アーク放電、コロナ放電などであってもよい。
【0037】
放電空間55内において処理ガスがプラズマ化(励起、分解、活性化、ラジカル化、イオン化などを含む)される。プラズマ化された処理ガスは、吹出部54から吹き出されて、搬送中のガラス基板9に接触される。これによって、ガラス基板9の被処理領域9aがOH基などの極性基によって修飾(マスク)される。該極性基が、表面粗さ制御物質となる。極性基の面密度(単位面積あたりの個数)を調節することによって、所望の表面粗さRaを得ることができる。
なお、
図7のプラズマ処理部50は、処理対象のガラス基板9が放電空間55の外部に配置されるリモート式大気圧プラズマ処理装置であるが、処理対象のガラス基板9が電極間の放電空間の内部に配置されて直接プラズマ照射されるダイレクト式大気圧プラズマ処理装置を用いてもよい。
【0038】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、マスク方法としては、前記実施形態に挙げたものの他、UV照射、熱CVD、プラズマCVD、プラズマ重合、ゾルゲル反応、薬液処理などを適用してもよい。
エッチング方法としては、真空プラズマエッチング、ウェットエッチングなどを適用してもよい。
フッ化水素水溶液をバブリング等によって気化させたガスを反応性ガス(反応性流体)として用いてもよい。
反応性流体は、反応性ガスすなわち気体に限られず、液体でもよい。反応性流体としてHF水溶液を用いて、ウェットエッチングを行なってもよい。
【実施例1】
【0039】
実施例を説明する。本発明が、以下の実施形態に限定されるものではない。
<表面粗さ制御物質>
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PST)の4種類の有機化合物を表面粗さ制御物質として用いた。
これら有機化合物をそれぞれ溶媒に溶かし、表面粗さ制御物質溶液24を得た。
ポリエチレングリコール及びポリアクリル酸の溶媒には、エタノールを用いた。
ポリメチルメタクリレート及びポリスチレンの溶媒には、クメンを用いた。
【0040】
<マスク工程>
マスク処理部20としてスピンコーター21(
図2)を用い、各溶液24をガラス基板9からなるサンプルに塗布し、マスクを形成した。
各溶液24の量は、0.2mlとした。
スピンコーター21の回転数は8000rpmであり、回転時間はサンプル1つあたり1minとした。
マスクの厚みは、溶液24中の表面粗さ制御物質濃度で調整し、段差計にて測定した。なお、数十オングストローム以下の厚みについては段差計では測定できないため、段差計で測定可能な厚み(数百オングストローム)が得られたときの溶液濃度(1%)に基づいて比例推定した。具体的には、マスクの厚みは、表1〜表4の通りであった。
【0041】
<エッチング工程>
その後、
図1に示すエッチング処理部10を用い、大気圧プラズマにより発生させたフッ化水素含有ガスをサンプルに接触させた。
原料ガスの組成は下記の通り。
CF
4 1slm
N
2 11slm
H
2O 210mg/min
サンプルの搬送速度は、7m/minであった。
<マスク除去工程>
エッチング工程後のサンプルを純水で洗浄した。
【0042】
<評価>
その後、原子間力顕微鏡(AFM)にて各サンプルの平均粗さ(Ra)を測定した。
測定結果は、表1〜表4及び
図8の通りである。
マスクの厚みが5オングストローム〜1000オングストロームの範囲において、表面粗さ制御物質及びマスク厚によって表面粗さRaを制御可能であることが確認された。
極性の低い表面粗さ制御物質であるほど、粗さRaのピークが大きく現れた。特に、ポリスチレンにおけるピークが大きかった。
<比較例1>
比較例1として、マスク無しで、エッチング工程だけを実施例1と同一条件で行なったサンプルについて平均粗さ(Ra)を測定したところ、Ra=0.2339nmであった。
ポリエチレングリコールなどの極性の高い表面粗さ制御物質を用いることで、マスク無しの場合よりも表面粗化を抑制可能であることが確認された。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【実施例2】
【0047】
実施例2では、有機マスク材料の重合度の影響を調べた。
有機マスク材料(表面粗さ制御物質)として、重合度1000のポリスチレン(PST)を用いた。
なお、実施例1におけるポリスチレン(PST)の重合度は2000であった。
溶媒には実施例1と同じクメンを用いた。
実施例1と同様にして、マスク工程、エッチング工程、マスク除去工程、及び平均粗さ(Ra)の測定工程を順次行なった。
表5及び
図9は、実施例1(重合度2000)と実施例2(重合度1000)の平均粗さ(Ra)の測定結果を比較したものである。
【0048】
【表5】
【0049】
重合度1000の場合、表面粗さRaのピークが重合度2000の場合よりも厚膜側へシフトした。
マスク厚が1000オングストローム程度であっても、重合度を低くすれば、粗化度を制御可能であることが確認された。