【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、長波長光から短波長光への波長変換機能を有するランタノイド含有無機材料微粒子であって、コア粒子、及び、シェル層を有し、前記コア粒子は、光吸収機能を有するランタノイドと光発光機能を有するランタノイドとを含有し、前記シェル層は、バンドギャップが3.0〜4.5eVである金属酸化物を含有するランタノイド含有無機材料微粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、コア粒子の外側にバンドギャップが所定の範囲内である金属酸化物を含有するシェル層を形成することによって、紫外線による劣化の抑制できるとともに、耐湿性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明のランタノイド含有無機材料微粒子は、光吸収機能を有するランタノイドと光発光機能を有するランタノイドとを含有するコア粒子を有する。
上記光吸収機能を有するランタノイドと上記光発光機能を有するランタノイドとを有することにより、赤外線等の長波長の光を吸収するとともに、吸収した光のエネルギーを可視光や紫外線等の短波長の光へと変換する「アップコンバージョン機能」を発揮させることができる。
【0013】
上記コア粒子を構成する光吸収機能を有するランタノイドとしては、赤外線等の長波長の光を吸収することができるランタノイドであれば特に限定されないが、例えば、イッテルビウム(Yb)、ネオジム(Nd)等が挙げられる。特に、近赤外線の光を吸収させる光として用いる際には10000cm
−1付近に強い吸収を有することから、イッテルビウムが好ましい。これらのランタノイドは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記コア粒子を構成する光発光機能を有するランタノイドとしては、光吸収機能を有するランタノイドからのエネルギーにより励起されて発光することが可能なランタノイドであれば特に限定されないが、例えば、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)等が挙げられる。特に、その得られる波長が可視光域や紫外光域であるエルビウム、ホルミウム及びツリウムが好ましい。これらのランタノイドは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記コア粒子を構成する上記光吸収機能を有するランタノイドと上記光発光機能を有するランタノイドとの組み合わせは特に限定されない。10000cm
−1付近に強い吸収を有するイッテルビウムと、イッテルビウムからのエネルギー移動を受けて発光し、その得られる光の波長が可視光域や紫外光域であるエルビウム、ホルミウム又はツリウムとの組み合わせが赤外線等の長波長の光を吸収し可視光や紫外線等の短波長の光へと変換する際に好ましい。
【0016】
上記コア粒子は、上記光吸収機能を有するランタノイド及び上記光発光機能を有するランタノイドを含有するものであれば特に限定されないが、例えば、上記光吸収機能を有するランタノイド及び上記光発光機能を有するランタノイドの酸化物、ハロゲン化物等を含有するものが挙げられる。上記ハロゲン化物としては、フッ化物が好ましい。
【0017】
また、上記コア粒子は、上記光吸収機能を有するランタノイド及び上記光発光機能を有するランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素又はその化合物を含有することが好ましい。上記光吸収機能を有するランタノイド及び上記光発光機能を有するランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素としては、上記ランタノイド以外の希土類元素が挙げられ、その化合物としては上記ランタノイド以外の希土類元素の酸化物、ハロゲン化物等が挙げられる。上記ハロゲン化物としては、フッ化物が好ましく、アルカリ金属及び希土類元素を含むフッ化物、又は、酸素、アルカリ金属及び希土類元素を含むフッ化物が好ましい。
上記ランタノイド以外の希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、スカンジウム(Sc)等が挙げられる。上記ランタノイド以外の希土類元素の化合物としては、例えば、イットリウム、ガドリニウム及びスカンジウムの酸化物又はハロゲン化物等が挙げられる。
なかでも、ランタノイド間のエネルギー移動に関して高い効率が期待でき、発光効率の向上が期待できることから、上記コア粒子には、イットリウム、イットリウムの酸化物又はイットリウムのハロゲン化物を含むことが好ましい。イットリウムの酸化物としてはY
2O
3が好ましく、イットリウムのハロゲン化物としては、NaYF
4が好ましい。
【0018】
上記コア粒子は、上記光吸収機能を有するランタノイド及び上記光発光機能を有するランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素の化合物として、Y
2O
3又はNaYF
4を含有することが好ましい。また、上記光吸収機能を有するランタノイドとしてイッテルビウム、上記光発光機能を有するランタノイドとしてエルビウム、ホルミウム及びツリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有することが好ましい。
【0019】
上記コア粒子における上記光吸収機能を有するランタノイドの含有量は、上記コア粒子に含まれるランタノイドと上記ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素との合計に対し、好ましい下限が2モル%、より好ましい下限が2.5モル%、好ましい上限が50モル%、より好ましい上限が25モル%である。上記光吸収機能を有するランタノイドの含有量が、上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であることにより、コア粒子に到達した光のエネルギーを効率よく吸収することができる。
上記コア粒子を構成するランタノイドの含有量は、例えば、蛍光X線分析装置(島津製作所社製、EDX−800HS)を用いて測定することができる。
【0020】
上記コア粒子における上記光発光機能を有するランタノイドの含有量は、上記コア粒子に含まれるランタノイドと上記ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素との合計に対し、好ましい下限が0.005モル%、より好ましい下限が0.01モル%、好ましい上限が20モル%、より好ましい上限が10モル%である。上記光発光機能を有するランタノイドの含有量が、上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であることにより、吸収したエネルギーを受けて、効率よく発光機能を発揮させることができる。
【0021】
上記コア粒子を構成する上記光吸収機能を有するランタノイド及び上記光発光機能を有するランタノイドとの合計含有量は、上記コア粒子に含まれるランタノイドと上記ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素との合計に対し、好ましい下限が2モル%、好ましい上限が50モル%である。また、より好ましい下限が2.5モル%、より好ましい上限が25モル%である。上記コア粒子を構成するランタノイドの含有量の合計が、上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であることにより、上記コア粒子におけるランタノイドが、ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素によって構成される結晶構造を崩すことなく置換及びドープできる。そのため、ランタノイド含有無機材料微粒子内におけるエネルギー移動の効率を損なうことなく保持することができる。
【0022】
上記コア粒子において、上記光吸収機能を有するランタノイドの含有量と上記光発光機能を有するランタノイドの含有量との比率(光吸収機能を有するランタノイドの含有量/光発光機能を有するランタノイドの含有量)は、モル比で好ましい下限が2、より好ましい下限が5、好ましい上限が100、より好ましい上限が75である。
上記比率が好ましい下限以上、且つ、好ましい上限以下であることにより、光吸収機能を有するランタノイドにより吸収されたエネルギーを過不足なく均一に光発光機能を有するランタノイドに移動できるため、得られる波長変換機能の効率を高くすることができる。
【0023】
上記ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素の含有量は、上記コア粒子に含まれる希土類元素の合計に対し、好ましい下限が5モル%、より好ましい下限が10モル%、好ましい上限が98モル%、より好ましい上限が80モル%である。上記ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素の含有量が、上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であることにより、上記ランタノイドをドープするホスト材料として結晶構造の規則配列構造を形成でき、ランタノイド含有無機材料微粒子内におけるエネルギー移動の効率を高くすることができ、発光効率が向上する。
上記コア粒子を構成するランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素の含有量は、例えば、蛍光X線分析装置(島津製作所社製、EDX−800HS)を用いて測定することができる。
【0024】
上記コア粒子の平均粒子径は、好ましい下限が5nm、より好ましい下限が7.5nm、好ましい上限が250nm、より好ましい上限が200nmである。上記コア粒子の平均粒子径が、上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であることにより、例えば他の材料(透明性バインダー)と複合化して用いる場合に分散性と光学的な透過性とを両立することができる。上記コア粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡を用いてコア粒子の粒子径を測定することにより求めることができる。
【0025】
本発明のランタノイド含有無機材料微粒子は、更に、シェル層を有する。上記シェル層を有することにより、上記コア粒子の紫外線による劣化を抑制することができ、また、耐湿性をも向上させることができる。
【0026】
上記シェル層は、金属酸化物を含有する。上記シェル層が金属酸化物を含有することで、得られるランタノイド含有無機材料微粒子は、極性溶媒及び非極性溶媒のどちらにも分散しやすく、また、シランカップリング剤等の分散剤との反応性を高めることができ、得られる波長変化インクの印刷性を向上させることができる。
上記金属酸化物は、バンドギャップの下限が3.0eV、上限が4.5eVである。
上記金属酸化物のバンドギャップが上記下限以上、且つ、上記上限以下であると、得られるシェル層の紫外線透過率を低下させることができるとともに、可視光や赤外線の透過率を充分に高いものとすることができ、コア粒子の劣化の抑制と高い発光強度を両立させることができる。
【0027】
上記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン(バンドギャップ:3.2eV)、酸化亜鉛(バンドギャップ:3.37eV)、酸化セリウム(バンドギャップ:3.1eV)、等が挙げられる。
【0028】
また、本発明のランタノイド含有無機材料微粒子において、上記シェル層に含まれる上記金属酸化物の含有量は、好ましい下限が25モル%、好ましい上限が100モル%である。上記シェル層における上記金属酸化物の含有量が、上記好ましい下限以上であることにより、シェル層での紫外線透過を充分に抑制することができる。
【0029】
上記シェル層の厚みは、好ましい下限が2nm、好ましい上限が20nmである。上記シェル層の厚みが、上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であることにより、赤外線等の長波長の光が光吸収機能を有するコア粒子に到達することを阻害することがなく、また発光時のロスを少なくすることができる。また、紫外線の透過を充分に抑制して、コア粒子の波長変換機能の低下を抑制することができる。上記シェル層の厚みは、より好ましい下限が2.5nm、より好ましい上限が10nmである。なお、上記シェル層の厚みは、電子顕微鏡を用いて上記コア粒子の表面に上記シェル層が形成された微粒子の粒子径を測定し上記コア粒子の平均粒子径との差を算出することにより測定することができる。
【0030】
上記コア粒子の平均粒子径と上記シェル層の厚みとの比(上記コア粒子の平均粒子径/上記シェル層の厚み)は、好ましい下限が2、より好ましい下限が2.5、好ましい上限が50、より好ましい上限が25である。上記厚みとの比が、上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であることにより、コア粒子への光の到達を阻害せずエネルギーのロスを少なくすることができる。また、発光時のエネルギーのロスをより少なくすることができる。更に、紫外線の透過を抑制して、コア粒子の波長変換機能の低下を充分に抑制することができる。
【0031】
本発明のランタノイド含有無機材料微粒子の平均粒子径は、好ましい下限が10nm、より好ましい下限が15nm、好ましい上限が300nm、より好ましい上限が200nmである。上記コア粒子の平均粒子径が、上記好ましい下限以上、且つ、上記好ましい上限以下であることにより、例えば他の材料(透明性バインダー)と複合化して用いる場合に分散性と光学的な透過性とを両立することができる。上記ランタノイド含有無機材料微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡を用いてランタノイド含有無機材料微粒子の粒子径を測定することにより求めることができる。
【0032】
本発明のランタノイド含有無機材料微粒子を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、光吸収機能を有するランタノイドと光発光機能を有するランタノイドとを含有するコア粒子を作製した後、更に、コア粒子の表面にシェル層を形成する方法等が考えられる。
【0033】
上記光吸収機能を有するランタノイドと光発光機能を有するランタノイドとを含有するコア粒子を作製する方法としては、特に限定されない。例えば、光吸収機能を有するランタノイドを含有する金属塩、光発光機能を有するランタノイドを含有する金属塩、ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素を含有する金属塩、アルカリ溶液、及び、フッ化物溶液を有機化合物からなる溶媒中に溶解して金属イオン含有溶液を調製する。更に、得られた金属イオン含有溶液を高温で加熱することによってフッ化物からなるコア粒子を析出させる方法が挙げられる。
【0034】
上記光吸収機能を有するランタノイドを含有する金属塩及び光発光機能を有するランタノイドを含有する金属塩としては、例えば、ランタノイドの硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、バナジン酸塩等の酸素酸塩等が挙げられる。また、ランタノイドの酢酸塩等のカルボン酸塩、スルホン酸塩、フェノール塩、スルフィン酸塩、1,3−ジケトン形化合物の塩、チオフェノール塩、オキシム塩、芳香族スルホンアミドの塩、第一級及び第二級ニトロ化合物の塩等の有機酸塩、ランタノイドの塩化物等が挙げられる。なかでも、酢酸塩等のカルボン酸塩が好ましい。
【0035】
上記金属イオン含有溶液に用いられる溶媒としては、例えば、脂肪酸、有機リン化合物、有機硫黄化合物、アミン化合物からなる群より選ばれる有機化合物のうち少なくとも2種の有機化合物を含む混合溶媒であることが好ましい。上記混合溶媒を用いることにより、無機材料微粒子表面に強固に配位することで、得られるコア粒子の表面における酸化等による汚染を効果的に抑制することができる。
上記混合溶媒は、更に、オクタデセン等の希釈を目的とした有機溶媒を含有することが好ましい。
【0036】
上記ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素を含有する金属塩としては、上記ランタノイドと類似のイオン半径や結晶化時の構造を有する元素の硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、バナジン酸塩等の酸素酸塩、酢酸塩等のカルボン酸塩等が挙げられる。また、スルホン酸塩、フェノール塩、スルフィン酸塩、1,3−ジケトン形化合物の塩、チオフェノール塩、オキシム塩、芳香族スルホンアミドの塩、第一級及び第二級ニトロ化合物の塩等の有機酸塩、塩化物等が挙げられる。なかでも、酢酸塩等のカルボン酸塩が好ましい。
【0037】
上記アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、フッ化アンモニウム等を含むものが挙げられる。
また、上記アルカリ溶液の添加量は、上記金属イオン含有溶液の種類、濃度によって適宜選択することができる。
【0038】
上記フッ化物溶液としては、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム等を含むものが挙げられる。また、上記フッ化物溶液の添加量は、上記金属イオン含有溶液の種類、濃度によって適宜選択することができる。
【0039】
上記コア粒子に、更に上記シェル層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、分散媒に界面活性剤とコア粒子を加えて得られた溶液に、アルカリ水溶液、金属アルコキシド等の金属酸化物前駆体等を加えてコア粒子の表面に金属酸化物を含有するシェル層を形成する方法を用いることができる。
【0040】
上記分散媒としては、シクロヘキサン、ベンゼンなどの炭化水素、ヘキサノールなどの直鎖アルコール、アセトンなどのケトン類が挙げられる。
【0041】
上記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル系界面活性剤等が挙げられる。また、ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等のポリオキシエチレンソルビタン系界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、ジ−2−エチレンヘキシルスルフォ琥珀酸ナトリウム等が挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムクロライドやセチルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0042】
上記アルカリ水溶液としては、アンモニア水等が挙げられる。
【0043】
上記金属アルコキシドとしては、上記金属酸化物の担体となるものであればよく、チタン、亜鉛、セリウム、等のメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等が挙げられる。
具体的には、チタンテトライソプロポキシド、亜鉛ジプロポキシド、セリウムトリイソプロポキシド等が挙げられる。
【0044】
本発明のランタノイド含有無機材料微粒子は、例えば、バイオマーカー等の医療用途や、色素増感太陽電池等の太陽電池、セキュリティインク等の波長変換インクに用いることができる。
本発明のランタノイド含有無機材料微粒子を含有する波長変換インクもまた、本発明の1つである。
【0045】
本発明の波長変換インクは、本発明のランタノイド含有無機材料微粒子及び溶媒を含有する。
本発明の波長変換インクは、本発明のランタノイド含有無機材料微粒子を含有することにより、被印刷物に印刷した際に、長波長光を照射されることで読み取り可能な強い発光強度を長期間維持することができる。また、本発明の波長変換インクを印刷した塗工物が水に濡れた際にも、波長変換インクが水を弾くため、ランタノイド含有無機材料微粒子が溶出したり、インクが塗工された部分が崩壊したりすることを抑制して、印刷パターンを良好な状態に保持することができる。
【0046】
本発明の波長変換インクにおける上記ランタノイド含有無機材料微粒子の含有量の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は75重量%である。
【0047】
上記溶媒としては、ランタノイド含有無機材料微粒子が分散しやすければ特に制限されないが、例えば、エタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、トルエン、へキサン、シクロヘキサン、ヘプタン 、シクロヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、トリメチルペンタン、ベンゼン、キシレン等があげられる。
【0048】
本発明の波長変換インクにおける上記溶媒の含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は99.99重量%である。
【0049】
本発明の波長変換インクは、更に、バインダー、分散剤、粘度調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0050】
本発明の波長変換インクの用途は特に限定されない。可視光に対して透明であり、赤外線等の長波長の光を照射されることによって発光する第2情報を被印刷物に付与でき、また、波長変換インクを構成するランタノイド含有無機材料微粒子の組成によって発光スペクトルを調整可能であることから、偽造防止を目的としたセキュリティインクとして特に有用である。
【0051】
本発明の波長変換インクを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記ランタノイド含有無機材料微粒子、及び、必要に応じて配合されるバインダー等の添加剤を、超音波分散機等を用いて上記溶媒に分散及び溶解させてインクとする方法等が挙げられる。
【0052】
本発明の波長変換インクを基材に塗工することで、可視光に対しては透明であり、赤外線等の長波長の光によって発光するパターンを印刷することができる。
本発明の波長変換インクが印刷された塗工物もまた本発明の1つである。
【0053】
本発明の塗工物は、本発明の波長変換インクと基材とを有する。
上記基材としては、特に限定されないが、パルプ、コットン、及び、その他植物繊維を使用した紙等や、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスティックフィルム等が挙げられる。
【0054】
上記基材上に本発明の波長変換インクを印刷する方法は特に限定されず、従来公知の印刷方法を用いることができる。
【0055】
本発明の塗工物に印刷された波長変換インクの印刷パターンは、赤外線を照射することによって確認することができる。本発明の波長変換インクは、波長変換機能を有するため、赤外線を照射することにより、可視光を発して印刷パターンを視認することが可能となる。また、本発明の塗工物に印刷された波長変換インクの発光スペクトルと印刷パターンを判定することにより、基材上に印刷された情報の真正性を詳細に分析することができる。
本発明の塗工物に印刷された波長変換インクの発光スペクトルと印刷パターンを判定する判定装置もまた本発明の1つである。
【0056】
本発明の判定装置は、本発明の塗工物に赤外線を照射する照射手段と、赤外線の照射によって生じる発光スペクトル及び波長変換インクの印刷パターンを検出する検出手段とを有する。
【0057】
本発明の判定装置を構成する照射手段としては、本発明の波長変換インクに含まれるランタノイド含有無機材料微粒子を発光させることが可能な赤外線を照射できるものであれば特に限定されず、従来公知の赤外線照射装置を用いることができる。
【0058】
本発明の判定装置を構成する検出手段としては、本発明の波長変換インクに含まれるランタノイド含有無機材料微粒子が発する発光スペクトル、色座標等を検出する機能及び波長変換インクの印刷パターンを検出する機能を有していればよい。
上記検出手段としては、発光パターンの検出及び印刷パターンの検出を行う装置を単独で用いてもよく、発光スペクトルを検出する装置と印刷パターンを検出する装置とを組み合わせて用いてもよい。