特許第6908530号(P6908530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6908530筋萎縮関連タンパク質分子マーカーDkk−3のスクリーニング及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908530
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】筋萎縮関連タンパク質分子マーカーDkk−3のスクリーニング及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20210715BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20210715BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20210715BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20210715BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20210715BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210715BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20210715BHJP
   A61P 21/00 20060101ALN20210715BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20210715BHJP
【FI】
   C12Q1/6876 Z
   C07K16/18
   C12Q1/6844 Z
   C12N15/12ZNA
   C12Q1/02
   G01N33/53 Y
   G01N33/53 D
   !C07K14/47
   !A61P21/00
   !A61K45/00
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-556737(P2017-556737)
(86)(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公表番号】特表2018-515080(P2018-515080A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】CN2016080441
(87)【国際公開番号】WO2016173501
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】201510215819.4
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520304664
【氏名又は名称】中国科学院分子細胞科学卓越創新中心
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲ぴん▼
(72)【発明者】
【氏名】尹 ▲じぇ▼
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−533977(JP,A)
【文献】 特表2005−509402(JP,A)
【文献】 特表2006−524034(JP,A)
【文献】 特表2008−535790(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0121754(KR,A)
【文献】 岡山医学会雑誌,2009年,Vol.121,p.79-83
【文献】 NATURE COMMUNICATIONS,2018年,Vol.9,1752,URL,DOI:10.1038/s41467-018-4038-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6876
C12N 15/12
G01N 33/53
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
老人性筋萎縮を検出する試薬を製造するための、Dkk−3タンパク質に特異的に結合する抗体またはDkk−3転写物を特異的に増幅するプライマーの使用であって、
Dkk−3タンパク質、Dkk−3遺伝子またはDkk−3転写物の高発現が老人性筋萎縮の発症を示すことを特徴とする、
Dkk−3タンパク質に特異的に結合する抗体またはDkk−3転写物を特異的に増幅するプライマーの使用。
【請求項2】
Dkk−3転写物を特異的に増幅するプライマー及び/またはDkk−3タンパク質に特異的に結合する抗体を含むことを特徴とする、老人性筋萎縮を検出するキット。
【請求項3】
前記キットはさらに、
(1)陽性対照と、
(2)陰性対照と、
の群から選ばれる試薬を含むことを特徴とする、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
老人性筋萎縮を検出するためのマーカーとしての、Dkk−3タンパク質、Dkk−3遺伝子またはDkk−3転写物の使用であって、
Dkk−3タンパク質、Dkk−3遺伝子またはDkk−3転写物の高発現が老人性筋萎縮の発症を示すことを特徴とする、
Dkk−3タンパク質、Dkk−3遺伝子またはDkk−3転写物の使用。
【請求項5】
老人性筋萎縮または老人性筋萎縮感受性をインビトロで検出する方法であって、
(1)Dkk−3転写物を特異的に増幅するプライマーを用いて、受試個体筋細胞または組織のcDNAを鋳型として、定量PCR法によって増幅することで、Dkk−3の増幅産物を得て、形成される増幅産物の数が正常対照より高いか否かを検出する工程、または、
抗体複合体の形成に適切な条件下で、Dkk−3タンパク質に特異的に結合する抗体を受試個体のサンプルと接触させ、且つ形成される抗体複合体の数が前記正常対照より高いか否かを検出する工程と、
(2)前記した形成される増幅産物の数、または前記した抗体複合体の数が前記した正常対照より高いとき、前記受試個体が老人性筋萎縮を起こしている、若しくは老人性筋萎縮感受性が健常人より高いことを示す工程と、を含む検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジー分野に関し、具体的に、老人性筋萎縮関連タンパク質分子マーカーDkk−3のスクリーニング及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮の従来の診断方法は主に、病歴を問診し、筋肉の外観検査を行い、線維束性収縮の有無を観察し、患者に明らかな筋肉量減少があるかを観察すると共に、筋電図によって神経伝導速度および誘発電位も考慮して診断を行う。現在、分子診断方法はまだ無い。
Dkk−3はDickkopfタンパク質ファミリーのメンバーであり、細胞外分泌タンパク質に属する。しかし、従来の研究では、Dkk−3の発現量の高さが筋萎縮の発生に関連するかどうかまだ解明されていない。
そのため、治療と診断の目的で、筋萎縮において高発現される遺伝子及び/またはタンパク質を研究・開発することには、重要な意味がある。本分野では、筋萎縮において高発現される遺伝子及び/またはタンパク質が切望されている。
【発明の概要】
【発明を解決しようとする課題】
【0003】
従来技術に存在する課題を克服するために、本発明の目的は、老人性筋萎縮に関連するタンパク質分子マーカーDkk−3のスクリーニング及びその使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は以下の技術方案によって実現される。
本発明の第一の態様は、老人性筋萎縮を検出する試薬を製造するための、Dkk−3タンパク質、その抗体、そのコーディング遺伝子またはその転写物の使用を提供する。
本発明の第二の態様は、下記工程を含む、受試筋細胞または組織におけるDkk−3遺伝子発現量の異常をインビトロで確定する方法を提供する。
(1)受試筋細胞または組織のmRNAを抽出し、cDNAに逆転写する;
(2)Dkk−3転写物を特異的に増幅するプライマーを用いて、工程(1)のcDNAを鋳型として、定量PCR法によって増幅することで、Dkk−3の増幅産物を得る;
(3)工程(2)の受試筋細胞または組織のDkk−3増幅産物の数を比較し、正常筋細胞または組織のDkk−3増幅産物の数より高いことは、受試筋細胞または組織におけるDkk−3遺伝子発現量の異常を示す。
上記方法は疾患診断を目的としない方法であってもよく、例えば関連のメカニズムの研究のみに用いられてもよい。
【0005】
本発明の第三の態様は、下記工程を含む、受試筋細胞または組織におけるDkk−3タンパク質発現量の異常をインビトロで確定する方法を提供する。
(1)特異的な抗Dkk−3タンパク質抗体で受試筋細胞または組織におけるDkk−3タンパク質の数を計測する;
(2)工程(1)の受試筋細胞または組織のDkk−3タンパク質の数を正常筋細胞または組織のDkk−3タンパク質の数と比較し、正常筋細胞または組織のDkk−3タンパク質の数より高いことは、受試筋細胞または組織におけるDkk−3タンパク質発現量の異常を示す。
上記方法は疾患診断を目的としない方法であってもよく、例えば関連のメカニズムの研究のみに用いられてもよい。
本発明の第四の態様は、Dkk−3転写物を特異的に増幅するプライマー及び/または特異的な抗Dkk−3抗体を含む、老人性筋萎縮を検出するキットを提供する。
本発明の一つの好ましい例において、前記キットはさらに下記の群から選ばれる試薬を含む。
(1)陽性対照;
(2)陰性対照。
【0006】
本発明の第五の態様は、老人性筋萎縮を検出するためのマーカーとしての、Dkk−3タンパク質、そのコーディング遺伝子またはその転写物的使用を提供する。
本発明の第六の態様はは、下記工程を含む、老人性筋萎縮または老人性筋萎縮感受性を検出する方法を提供する。
(1)Dkk−3転写物を特異的に増幅するプライマーを用いて、受試個体筋細胞または組織のcDNAを鋳型として、定量PCR法によって増幅することで、Dkk−3の増幅産物を得て、形成される増幅産物の数が正常対照より高いかを検出する;或いは、抗体複合体の形成に適切な条件下で、特異的な抗Dkk−3タンパク質抗体を受試個体のサンプルと接触させ、且つ形成される抗体複合体の数が正常対照より高いかを検出する;
(2)形成される増幅産物の数または抗体複合体の数が正常対照より高いことは、該個体が老人性筋萎縮を起しており、若しくは老人性筋萎縮感受性が健常人より高いことを示す。
上記方法は疾患診断を目的としない方法であってもよく、例えば関連のメカニズムの研究のみに用いられてもよい。
【0007】
本発明の第七の態様はは、下記工程を含む、老人性筋萎縮を治療する薬物をスクリーニングする方法を提供する。
(1)Dkk−3遺伝子のcDNAを発現ベクターに組み込み、哺乳動物細胞株にトランスフェクトし、Dkk−3タンパク質を発現する細胞株を調製する;
(2)工程(1)におけるDkk−3タンパク質を発現する細胞株の培養液にテスト化合物を加え、投与後に老人性症状の改善または治癒を起したテスト化合物は老人性筋萎縮を治療する候補薬物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有利な効果は、
(1)本発明は初めて、Dkk−3と老人性筋萎縮の関連性、即ち90%以上の筋萎縮症例において高発現され、筋萎縮細胞における発現量:正常筋細胞における発現量≧3.0:1であることを判明し、本発明にかかる方法は、検出の感度、正確性がいずれも従来の診断方法より顕著に優れ、分子診断法による老人性筋萎縮検出の盲点を埋めるだけでなく、操作も便利である。
【0009】
(2)PCRなどの分子診断方法によって筋肉におけるDkk−3の発現レベルを検出することで、老人性筋萎縮症を診断し、老人性筋萎縮の早期で診断を行うことができる。伝統的な診断方法は主に、筋肉形態を観察し、筋力測定も組み合わせることで行う。筋萎縮が相当程度に進んだ場合のみに、筋肉形態および筋力に変化が発生し、老人性筋萎縮を早期で発見して介入することができない。また、筋力検出は一般的に一組の筋肉の収縮力を検出するものであり、筋群における一つの筋肉が老人性萎縮したかを確定する感度は高くない。しかし、分子診断によっては、サンプリング箇所を正確に固定化し、各筋肉の萎縮状況を一つずつ検出することができる。分子診断は、定量的検出を行うことができ、標準化した検出手順を構築し、伝統的な観察診断方法における人為的・主観的な誤差要因を解消できる。また、PCR検出に必要なサンプルは極めて少なく、検出は便利で迅速である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】Dkk−3発現レベルは老人の筋肉において顕著に増加し、筋萎縮特異的遺伝子Atrogin−1およびMurf−1の発現レベルも老人の筋肉において顕著に向上したことを示す。
図2】Lammin B免疫蛍光染色により、老人の筋線維の面積が若者の筋線維より明らかに小さいことを示した。スケールバー: 20μm。
図3】統計学的解析により、老人の筋線維の面積が若者の筋線維より明らかに小さいことを示す。
図4A】インビトロで培養されたマウス筋管において過剰発現されるDkk−3は老人性筋萎縮を起したことを示す。対照群に比べて、Flagタグ付きDkk−3を過剰発現させた後、筋管の直径は顕著に減少したことを示す。
図4B】統計学的解析により、Dkk−3を過剰発現させた後、筋管の直径は顕著に減少したことを示す。
図4C】ウェスタンブロットによって筋管におけるFlagタグ付きDkk−3の過剰発現レベルを検出したことを示す。
図5】インビトロで培養された筋管において過剰発現されるDkk−3は、筋萎縮特異的遺伝子Atrogin−1およびMurf−1の発現量の増加を起したことを示す。
図6A】マウス筋肉において過剰発現されるGFPタグ付きDkk−3は、注射箇所の筋線維面積の顕著な減少を起したことを示す。
図6B】Dkk−3が過剰発現される筋線維面積の統計学的解析。過剰発現されるGFPタグ付きDkk−3は、注射箇所の筋線維面積の顕著な減少を起したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは幅広く深く研究したところ、ヒトのDkk−3遺伝子配列をクローニングしただけでなく、異なるモデルを用いて、筋萎縮過程におけるDkk−3遺伝子の機能について研究した。この結果、意外なことに、Dkk−3が老人性筋萎縮に関連することを見出した。
ヒト筋肉におけるDkk−3遺伝子のcDNA保存領域を参考にして一対のプライマーを設計し、PCRによって老人の筋肉cDNAライブラリーから一つのDNA配列をクローニングした。シーケンシングの結果から分かるように、該配列の長さは1053bpであり、ラットおよびマウスDkk−3のcDNA対応領域とそれぞれ92%および93%の相同性を有する。
【0012】
マウスを実験動物として、実験モデルによってDkk−3遺伝子について機能検出を行った。筋肉にDkk−3遺伝子を発現できるウイルスを注射した結果、Dkk−3遺伝子の発現は、老人性筋萎縮特異的遺伝子Atrogin−1およびMurf−1遺伝子の発現を顕著に向上させることで、老人性筋萎縮を起すことができることを見出した。
Dkk−3 mRNAの筋肉組織における特異的な高発現を鑑み、Dkk−3タンパク質が老人性筋萎縮に関連することは示唆される。ヒトDkk−3遺伝子およびその発現産物に基づいて設計される薬物と診断技術は、ヒトの老人性筋萎縮の診断と治療に有用である。
【0013】
[定義]
本文に用いられるように、「核酸」とは、一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボ核酸の重合体を指す。特に断らない限り、該用語には、天然ヌクレオチドと類似の方式で機能できる天然ヌクレオチド類縁体が含まれている。
「ハイブリダイゼーション」とは、相補的塩基対の形成によって二本の一本鎖核酸を結合させることを指す。
【0014】
「実質的に結合する」または「特異的に結合する」または「選択的に結合する」または「特異的にハイブリダイズする」とは、オリゴヌクレオチドと標的配列の間の相補的なハイブリダイゼーション反応を指し、且つハイブリダイゼーション媒体のストリンジェンシーを下げることで所望の標的ポリヌクレオチド配列の検出を達成できる小数のミスマッチを含む。該用語は、ストリンジェンシー条件下で、1つの分子が特定のヌクレオチド配列に結合、複合若しくはハイブリダイズすることも意味し、当該配列が複合混合物(例えば全細胞DNAまたはRNA)に存在する場合、用語「ストリンジェンシー条件」とは、プローブが標的配列にハイブリダイズするが、他の配列にハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェンシー条件は配列に依存するものであり、且つ状況によって異なっている。長い配列ほど、より高い温度で特異的にハイブリダイズできる。
【0015】
通常、選択されるストリンジェンシー条件は、限定されたイオン強度およびpHで推定される配列の融解温度(Tm)より約5℃低いものである。該Tmは、バランスになった時、標的配列と相補的なプローブの約50%が標的配列にハイブリダイズした場合の(限定されたイオン強度、pHおよび核酸濃度での)温度である。通常、短いプローブにとって、ストリンジェンシー条件とは、塩濃度が少なくとも約0.02mol/L Naイオン濃度・0.0015mol/L Mg2+(若しくは他の塩)で、pH7.0〜8.3で、且つ温度が少なくとも約60℃の条件である。さらに、ストリンジェンシー条件は例えばホルムアミド、DMSOなどの不安定化剤の添加によっても実現できる。
当業者に理解できるように、ここに記載の具体的なプライマーとプローブの確定の配列は、開示されたプライマーやプローブと「実質的に同様」にするが、標的配列と実質的に結合する能力を保留するように、ある程度に修飾されてもよい。
【0016】
(Dkk−3タンパク質および遺伝子)
本発明によって判明されたDkk−3と老人性筋萎縮の関連性およびDkk−3の配列情報に基づき、当業者は本分野で常用の技術によってDkk−3遺伝子、タンパク質またはそれらの断片を調製できる。
本発明において、用語「Dkk−3タンパク質」、「Dkk−3ポリペプチド」、「老人性筋萎縮における高発現タンパク質Dkk−3」または「本発明にかかるタンパク質」等は互いに交換して使用することができ、いずれもヒトまたは他の哺乳動物のDkk−3タンパク質(Genebank登録番号はAAQ88744.1;NCBI登録番号はAY358378.1)を指す。
【0017】
一つの特に好ましいDkk−3タンパク質はヒトのDkk−3タンパク質であり、そのアミノ酸配列は配列番号1に示され、具体的には以下のようである。
MQRLGATLLCLLLAAAVPTAPAPAPTATSAPVKPGPALSYPQEE ATLNEMFREVEELMEDTQHKLRSAVEEMEAEEAAAKASSEVNLANLPPSYHNETNTDT KVGNNTIHVHREIHKITNNQTGQMVFSETVITSVGDEEGRRSHECIIDEDCGPSMYCQ FASFQYTCQPCRGQRMLCTRDSECCGDQLCVWGHCTKMATRGSNGTICDNQRDCQPGL CCAFQRGLLFPVCTPLPVEGELCHDPASRLLDLITWELEPDGALDRCPCASGLLCQPH SHSLVYVCKPTFVGSRDQDGEILLPREVPDEYEVGSFMEEVRQELEDLERSLTEEMAL GEPAAAAAALLGGEEI。
【0018】
前記Dkk−3タンパク質をコードするヌクレオチド配列は配列番号2に示され、具体的には以下のようである。
atgcagcg gcttggggcc accctgctgtgcctgctgct ggcggcggcg gtccccacgg cccccgcgcc cgctccgacg gcgacctcggctccagtcaa gcccggcccg gctctcagct acccgcagga ggaggccacc ctcaatgagatgttccgcga ggttgaggaa ctgatggagg acacgcagca caaattgcgc agcgcggtggaagagatgga ggcagaagaa gctgctgcta aagcatcatc agaagtgaac ctggcaaacttacctcccag ctatcacaat gagaccaaca cagacacgaa ggttggaaat aataccatccatgtgcaccg agaaattcac aagataacca acaaccagac tggacaaatg gtcttttcagagacagttat cacatctgtg ggagacgaag aaggcagaag gagccacgag tgcatcatcgacgaggactg tgggcccagc atgtactgcc agtttgccag cttccagtac acctgccagccatgccgggg ccagaggatg ctctgcaccc gggacagtga gtgctgtgga gaccagctgtgtgtctgggg tcactgcacc aaaatggcca ccaggggcag caatgggacc atctgtgacaaccagaggga ctgccagccg gggctgtgct gtgccttcca gagaggcctg ctgttccctgtgtgcacacc cctgcccgtg gagggcgagc tttgccatga ccccgccagc cggcttctggacctcatcac ctgggagcta gagcctgatg gagccttgga ccgatgccct tgtgccagtggcctcctctg ccagccccac agccacagcc tggtgtatgt gtgcaagccg accttcgtggggagccgtga ccaagatggg gagatcctgc tgcccagaga ggtccccgat gagtatgaagttggcagctt catggaggag gtgcgccagg agctggagga cctggagagg agcctgactgaagagatggc gctgggggag cctgcggctg ccgccgctgc actgctggga ggggaagagatttag
【0019】
Dkk−3ヌクレオチド完全長配列またはその断片は通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成の方法によって獲得できる。PCR増幅法の場合、既知のヒトDkk−3、マウスDkk−3またはラットDkk−3のヌクレオチド配列、特にオープンリーディングフレーム配列に基づいてプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリーまたは当業者に既知の常法で調製されたcDNA配列を鋳型として増幅し、相応の配列を獲得することができる。配列が長い場合、2回または複数回のPCR増幅を行い、その後に各回で増幅された断片を正確な順序でライゲートすることが多い。
相応の配列を獲得すると、組換え法で相応の配列を大量に獲得することができる。通常、それをベクターにクローニングし、次に細胞にトランスフェクトし、その後に常法によって増殖された宿主細胞から相応の配列を分離して獲得する。
また、特に断片の長さが短い場合、人工合成の方法によって相応の配列を合成することもできる。通常、複数の小さな断片を合成しておき、その後にライゲーションを行うことにより、配列が非常に長い断片を獲得できる。
【0020】
現在、化学的合成の方法によって本発明にかかるタンパク質(またはその断片、またはそれらの誘導体)をコードするDNA配列を得ることは既に可能になっている。その後、該DNA配列を本分野で既知の各種の従来のDNA分子(例えばベクター)や細胞に導入することができる。さらに、化学的合成によって本発明にかかるタンパク質配列中に突然変異を導入することもできる。
本発明に用いられるDkk−3タンパク質は、相応のコーディング配列を宿主細胞に導入し(直接に導入するまたはDkk−3コーディング配列含有ベクターを導入する)、適切な条件下で形質転換された宿主細胞を培養してDkk−3タンパク質を発現させ、その後にDkk−3タンパク質を分離・精製することができる。
【0021】
(抗Dkk−3タンパク質抗体)
一方、本発明は更に、Dkk−3 DNAまたはその断片によってコードされるポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、特にモノクローナル抗体を含む。ここで、「特異的な」とは、抗体がDkk−3遺伝子産物またはその断片に結合できることを指す。好ましくは、Dkk−3遺伝子産物またはその断片に結合できるが、他の非関連抗原分子を認識・結合しない抗体を指す。本発明において、抗体には、Dkk−3タンパク質に結合してそれを阻害できる分子も含まれるし、Dkk−3タンパク質の機能に影響しない抗体も含まれる。
本発明は、完全なモノクローナル抗体だけでなく、免疫原性を有する抗体断片、例えばFab1やFab2断片;抗体重鎖;抗体軽鎖;またはマウス抗体との結合特異性を有しながらもヒト由来の抗体部分も保留した抗体のようなキメラ抗体なども含む。
【0022】
本発明にかかる抗体は、当業者に既知の各種の技術によって調製できる。
抗Dkk−3タンパク質抗体は、免疫組織化学技術に用いて、生検検体におけるDkk−3タンパク質を検出することができる。また、ヒトDkk−3タンパク質に結合するモノクローナル抗体は、放射性同位体や蛍光で標識してもよく、生体内に注射されると、その位置と分布が追跡できる。このような放射性または蛍光標識抗体は、非侵襲的な診断方法として筋萎縮細胞の位置決めに用いることができる。
本発明にかかる抗体は、例えば老人性筋萎縮のようなヒトDkk−3タンパク質関連疾患の検出に用いることができる。抗体は生体内の一つの特殊な部位に対する阻害剤に設計することもできる。例えば、ヒトDkk−3タンパク質と高い親和性を持つモノクローナル抗体は、阻害剤と共有結合することができる。本発明にかかるDkk−3タンパク質は筋細胞または組織に特異的に高発現しているため、このようなキメラ抗体はヒトDkk−3タンパク質レベルの低減に用いることができる。
ポリクローナル抗体の生産では、ヒトDkk−3タンパク質またはポリペプチドでウサギ、マウス、ラットなどの動物を免疫することができる。フロインドアジュバントを含む多種のアジュバントは、免疫反応の増強に用いることができるが、それに限定されない。
【0023】
(医薬組成物)
本発明にかかるタンパク質の拮抗剤(例えば抗体)は、治療で施用(投与)されると、治療効果を提供できる。通常、これらの物質は無毒で、不活性で、薬学的に許容される水性担体媒体に配合され、ただし、pH値は配合される物質の性質および治療しようとする疾患によって変化できるが、通常は約5〜8であり、好ましいpHは約6〜8である。配合された医薬組成物は、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、皮内または局所を含む通常の経路で投与することができるが、それらに限定されない。
本発明にかかるポリペプチドの拮抗剤は老人性筋萎縮の治療に用いることができる。本発明にかかるDkk−3タンパク質を用いる際に、他の治療剤も同時に使用できる。
【0024】
本発明は更に、安全で有効な量(例えば0.01〜99wt%)の本発明にかかるDkk−3タンパク質の拮抗剤、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容される佐剤は、薬学的に許容される担体、希釈剤、充填剤、結合剤およびその他の賦形剤を含むが、それらに限定されない。当業者に既知の治療用の不活性の無機または有機担体は、乳糖、コーンスターチまたはその誘導体、タルク、植物油、ワックス、脂肪、例えばポリエチレングリコール、水、蔗糖、エタノール、グリセリンのようなポリヒドロキシ化合物、各種の防腐剤、滑沢剤、分散剤、矯味剤を含むが、それらに限定されない。保湿剤、酸化防止剤、甘味剤、着色剤、安定化剤、塩、緩衝液なども加えることができ、それらの物質は必要に応じて、処方の安定化のために用いられ、或いは活性やバイオアベイラビリティの向上、若しくは経口投与の場合に許容される食感や匂の産生に関与する。
【0025】
本発明にかかる医薬組成物は、例えばカプセル、錠剤、分散錠、バッカル錠、チュアブル錠、発泡錠、徐放錠、顆粒剤などの経口投与製剤であってもよい。これで、外見が悪く、携帯に不便で、飲みにくく、投与量が大きいという伝統的な煎剤の欠点を有効に改善することができ、慢性腎炎を治療するための投与量が小さく、薬効が強く、安定性がいい新規剤型の開発に新たな経路を提供する。
本発明にかかる医薬組成物は常法で調製することができ、例えば、各有効成分を均一に混合して、或いは各種の製剤の通常の調製方法により薬効成分と相応の佐剤を配合して調製する。本発明にかかる医薬組成物は、他の治療剤と併用することもできる。
本発明にかかる医薬組成物は老人性筋萎縮の治療に用いることができる。
本発明にかかる医薬組成物の有効な治療投与量は勿論、投与経路や患者の健康状況等の要素を考慮すべきであり、それらは熟練した医者の技術の範囲内にある。
【0026】
ヒトDkk−3タンパク質のポリヌクレオチドは多種の治療目的に用いることもできる。遺伝子治療技術は、Dkk−3タンパク質の異常発現によって起きる・代表される細胞の増殖、発育または代謝の異常(例えば老人性筋萎縮)の治療に用いることができる。
ヒトDkk−3 mRNAを阻害するオリゴヌクレオチド(アンチセンスRNAおよびDNAを含む)およびヌクレアーゼも本発明の範囲内にある。ヌクレアーゼは特定のRNAを特異的に分解できる酵素であり、そのメカニズムは、ヌクレアーゼ分子が相補的な標的RNAと特異的にハイブリダイズして核酸内部切断作用を発揮する。アンチセンスRNAおよびDNA並びにヌクレアーゼは、従来のいずれかのRNAまたはDNA合成技術によって獲得できる。
ポリヌクレオチドを組織または細胞内に導入する方法は、ポリヌクレオチドを生体内の組織に直接に注入すること、或いは生体外でベクター(例えばウイルス、ファージやプラスミドなど)によりポリヌクレオチドを細胞に導入しておき、次に細胞を生体内に移植すること、或いはTALEN、CRSP/Cas9または他の遺伝子編集方法によってゲノム配列を変更させてノックアウトや競合的突然変異体などを産生することを含む。
【0027】
本タンパク質によれば、各種の通常のスクリーニング方法により、例えば阻害剤、作動薬や拮抗剤など、Dkk−3タンパク質と相互作用する物質をスクリーニングすることができる。スクリーニングの際に、Dkk−3タンパク質をバイオアナリシスアッセイに加え、Dkk−3タンパク質とその受容体の間の相互作用に対する化合物の影響を測定することで、化合物が拮抗剤であるかを確定することができる。また、テスト化合物をDkk−3タンパク質と共に実験動物に投与することもでき、対照に比べて動物の筋萎縮変化が存在すると、該化合物がDkk−3タンパク質の作動薬または拮抗剤であることは判明される。
また、Dkk−3遺伝子のcDNAを発現ベクターに組み込み、哺乳動物細胞株にトランスフェクトし、Dkk−3タンパク質を高発現する細胞株を調製し、且つ該細胞株におけるDkk−3タンパク質を標的として、Dkk−3タンパク質に作動または阻害作用を持つ薬物をスクリーニングすることもできる。且つ、前記Dkk−3タンパク質を発現する細胞株の培養液にテスト化合物を加え、Dkk−3タンパク質発現量の変化を計測する。Dkk−3タンパク質の発現を阻害する化合物は老人性筋萎縮の治療に用いることができる。
【0028】
(検出方法)
本発明は更に、ヒトDkk−3タンパク質レベルを定量的に位置決め・検出する診断試験方法に関する。それらの試験は本分野でよく知られるもので、免疫蛍光測定、免疫組織化学および放射免疫測定を含む。試験で検出されるDkk−3タンパク質レベルは、検出される個体が老人性筋萎縮感受性を有する確率は健常人より高いかを確定するための指標の一つとして用いることができる。
サンプルにDkk−3タンパク質が存在するかを検出する一つの方法は、Dkk−3タンパク質の特異性による検出であり、サンプルをDkk−3タンパク質特異的抗体と接触させることと、抗体複合体が形成されるかを観察することと、を含み、抗体複合体が形成されたことは、サンプルにDkk−3タンパク質が存在することを示す。
【0029】
Dkk−3タンパク質をコードするポリヌクレオチドはDkk−3タンパク質関連疾患の診断と治療に用いることができる。診断について、Dkk−3タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、Dkk−3転写物の発現の有無、或いは疾患状態におけるDkk−3転写物の異常発現の検出に用いることができる。例えば、Dkk−3 DNA配列は、生検検体にハイブリダイズすることで、Dkk−3タンパク質の異常発現の判断に用いることができる。ハイブリダイゼーション技術はサザンブロット法、ノーザンブロット法、インシチュ・ハイブリダイゼーションなどを含む。それらの技術・方法はいずれも公開されている既成技術であり、関連するキットはいずれも市販されている。本発明にかかるポリヌクレオチドの一部または全部は、プローブとしてマイクロアレイやジーンチップに固定し、組織における遺伝子の発現差異解析および遺伝子診断に用いることができる。Dkk−3タンパク質特異的プライマーを用いてRT−PCRインビトロ増幅を行うことによっても、Dkk−3遺伝子の転写産物を検出できる。
【0030】
Dkk−3タンパク質の老人性筋萎縮における高い発現率により、Dkk−3ポリヌクレオチド、Dkk−3タンパク質およびその抗体、並びにDkk−3タンパク質に関連する拮抗剤、作動薬などは、老人性筋萎縮の治療に新たな治療経路を提供することができるので、それらの応用は前途有望である。
【0031】
(キット)
本発明は更に、Dkk−3の発現が異常であるかを診断する診断キットを提供する。好ましい例において、キットは、Dkk−3転写物を特異的に増幅するプライマー及び/または特異的な抗Dkk−3抗体を含む。前記キットは、どうやってキットを用いてDkk−3を検出するかを記述する説明書類をさらに含んでもよい。さらに、前記キットは、検出を助力するための各種のマーカーや標識試薬、PCR用試薬(緩衝液を含む)、免疫ハイブリダイゼーション用試薬、および陽性と陰性対照などからなる群から選ばれるいずれか1種または多種をさらに含んでもよい。
本発明によってDkk−3遺伝子の異常発現と老人性筋萎縮の関連性が初めて判明された以上、当業者はDkk−3を特異的に増幅できるプライマーを便利に設計し、その後に定量的検出などの方法によってその発現量を確定することができる、ということは理解すべきである。通常、プライマーの長さは15〜50bp、好ましくは18〜30bpである。プライマーと鋳型が完全に相補的であるほうは好ましいからといって、当業者によく知られるように、プライマーと鋳型がある程度に(特にプライマーの5’末端で)非相補的である場合にも、特異的な増幅(即ち所望の断片のみを増幅すること)が可能である。それらのプライマーを含むキット、およびそれらのプライマーを使用する方法はいずれも本発明の範囲内にある。
【0032】
増幅産物の長さは特に限定されないが、通常、増幅産物の長さは100〜3000bp、好ましくは150〜2000bp、より好ましくは200〜1000bpである。
従来の筋萎縮を診断するための他の方法に比べて、本発明の利点は主に、Dkk−3と老人性筋萎縮の関連性、即ち90%以上の筋萎縮症例において高発現され、筋萎縮細胞における発現量:正常筋細胞における発現量≧3.0:1であることを判明したことにあり、本発明にかかる方法は、検出の感度、正確性がいずれも従来の診断方法より顕著に優れ、分子診断法による老人性筋萎縮検出の盲点を埋めるだけでなく、操作も便利である。
【0033】
以下、特定の具体的な実施例により本発明の実施形態を説明するが、当業者は本明細書で開示された内容により本発明の他の利点と効果を簡単に了解できる。本発明は他の異なる具体的な実施形態により実施または応用することもでき、本明細書における各ディテールも、異なる観点と応用に基づいて本発明の精神を逸脱しない範囲内で各種の修飾や変更を行うことができる。
本発明の具体的な実施形態をさらに記述する前に、本発明の保護範囲は下記特定の具体的な実施形態に制限されないことを理解すべきであり、且つ、本発明の実施例で使用される用語は特定の具体的な実施形態を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、本発明の明細書および特許請求の範囲において、特に断らない限り、単数形の「一つ」、「1つ」および「この」は複数形も含む、ということも理解すべきである。
実施例で数値範囲がある場合、本発明で特に断らない限り、各数値範囲ごとに、2つの端点および2つの端点の間の任意の数値はいずれも適用できる、ということを理解すべきである。別途に定義しない限り、本発明で使用される全ての技術と科学的用語は本発明の所属分野の当業者が通常に理解する意味と一致する。実施例で使用される具体的な方法、装置、材料以外に、本発明の所属分野の当業者の従来技術に対する把握および本発明の記載に基づき、本発明の実施例に記載の方法、装置、材料と相似または均等の従来技術のいずれかの方法、装置、材料を用いて本発明を実現することもできる。
【0034】
特に断らない限り、本発明において開示された実験方法、検出方法、調製方法はいずれも、本分野で常用の分子生物学、生化学、クロマチンの構造と解析、分析化学、細胞培養、DNA組換え技術および関連する分野で常用の技術を採用する。それらの技術は従来の文献において既に完全に説明されており、具体的には、SambrookらMOLECULAR CLONING :A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989 and Third edition,2001 ;Aμsμbelら,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987 and periodic μpdates ;the series METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego ;Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998 ;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,Chromatin (P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds.),Academic Press,San Diego,1999 ;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,Chromatin Protocols(P.B.Becker,ed.)Humana Press,Totowa,1999などを参照できる。
【実施例1】
【0035】
老人性筋萎縮におけるDkk−3の高発現)
(1)RT−qPCRによってDkk−3が老人の筋肉に高発現しているかを検出した。老人の筋肉を取り、全RNAを抽出し、逆転写してcDNAを得た。cDNAを鋳型として、リアルタイム定量PCR(qPCR)によってDkk−3 mRNAのレベルを検出し、若者の筋肉におけるDkk−3レベルと比較した。発現レベルが3倍以上向上したと、Dkk−3発現レベルが増加したことを示す。
具体的な実験方法:老人(>65歳)の筋肉サンプルを40つ、成年(18〜30歳)の筋肉サンプルを10つ(<50mg)取り、1.5ml EPチューブに入れ、1ml Trizolを加え、組織ホモジナイザーで2分間ホモジナイズした。13200rpm/min・4℃で10分間遠心し,上澄をもう一つの清浄EPチューブに転移した。フェノール:クロロホルム(24:1)200μlを加え、渦巻き振盪で充分に混合し、13200rpm/min・4℃で15分間遠心した。上澄を清浄EPチューブに転移し、イソプロパノール500μlを加え、充分に混合し、13200rpm/min・4℃で15分間遠心した。上澄を捨て、75%エタノールで二回洗浄し、毎回につき13200rpm/min・4℃で5分間遠心した。上澄を捨て、室温で5〜10分間放置して乾かし、30〜50μlのDEPC水に入れて溶解させ、全RNAとした。
【0036】
その後、全RNAをcDNAに逆転写した。RNA 1μgを取り、NEB社のMuLV逆転写酵素およびその1x反応緩衝液1μl(200ユニット)、dNTP混合物0.5mM、Oligo dT 4μM、RNaseインヒビター1μlを加え、42℃で1時間インキュベートし、cDNAに逆転写した。cDNAを90℃で10分間不活性化させ、PCR鋳型とした。配列番号3と4に示されるフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いて、リアルタイム蛍光定量PCRにより標的遺伝子の発現量を検出した。PCR条件は、95℃で10分間、95℃で30秒、60℃で60秒、第2と第3ステップのサイクルは40回繰り返した。
フォワードプライマー:tgaggcagtggctacacaag 配列番号3
リバースプライマー:gctggtatggggttgagaga 配列番号4
GAPDHを内部標準として、用いられるプライマー配列は
GAPDHフォワード:ACCCAGAAGACTGTGGATGG 配列番号5
GAPDHリバース:ACACATTGGGGGTAGGAACA 配列番号6
であった。
【0037】
筋肉における筋萎縮特異的遺伝子atroginの発現を同時に検出して、筋萎縮の標識とした。用いられるプライマーは
Atrogin-1フォワ:AGAGAGGCAGATTCGCAAGCGT 配列番号7
Atrogin-1リバース:TGCAAAGCTGCAGGGTGACCC 配列番号8
であった。
RT−qPCR結果は図1に示すように、Dkk−3発現レベルは老人の筋肉において顕著に増加し(即ち、筋萎縮が発生した筋肉におけるDkk−3発現レベルは正常筋肉におけるDkk−3発現レベルの11.83倍であった)、筋萎縮特異的遺伝子atrogin−1の発現レベルも老人の筋肉において顕著に向上した。
【0038】
(2)免疫蛍光染色によってDkk−3発現レベルと筋肉直径の間の関係を確定した。老人(65歳)の筋肉を取り、OCT埋め込みで凍結切片を作製した。Dkk−3抗体およびLammin B抗体を用いて免疫蛍光染色を行った。Dkk−3抗体染色はDkk−3の発現レベルを表し、Lammin Bは筋線維輪郭を表した。筋線維面積の大きさを統計することにより、Dkk−3発現レベルと筋線維面積の関係を確定した。
100mg未満の老人または成年の筋肉をOCTに埋め込み、液体窒素中において30秒凍結し、凍結サンプルを作製し、凍結切片の作製に適用し、厚さを8μmとした。切片をlammin B免疫蛍光染色に用いて、筋線維輪郭を確定し、筋線維の大きさを統計した。染色方法は以下の通りであった:凍結切片をPBSで3回洗浄した。4%ホルムアルデヒドを用いて、室温で15分間固定した。
【0039】
PBSで3回洗浄し、1% Tween20を加え、室温で10分間置いた。PBSで3回洗浄し、1%BSA含有PBSで200倍希釈したラミニン抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。PBSで1回につき5分間、3回洗浄した。1%BSA含有PBS溶液で1:1000で希釈した蛍光標識ロバ抗ウサギ二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。PBSで1回洗浄し、20μM DAPI含有PBSを加え、室温で5分間置き、PBSで1回につき5分間、3回洗浄した。消光防止剤を加えてから封着した。ツァイスレーザー共焦点顕微鏡で観察して写真を撮った。図2に示すように、老人の筋線維のほうは明らかに小さかった。統計学的解析を行った結果、図3に示すように、老人のマウスの筋線維のほうは明らかに小さかった。
【実施例2】
【0040】
(Dkk−3と筋萎縮の関連性)
成年(<60歳)の筋肉におけるDkk−3の発現量は低いが、老人(>65歳)の筋肉におけるDkk−3の発現量は成年の筋肉より明らかに増加したことは見出された。細胞実験において、生体内から直接に分離した初代筋線維、および生体外で筋肉幹細胞の分化を誘導して得られる最終分化筋管におけるDkk−3の発現量はいずれも低かった。最終分化筋管において過剰発現されるDkk−3は筋萎縮を起した。インビボ実験により分かるように、マウス筋肉においてアデノウイルスベクターによって過剰発現されるDkk−3も筋萎縮を起した。
【0041】
(細胞実験):
(1)生長培地を調製する:DMEM高グルコース培地に10%ウシ胎児血清を加えてから、均一に混合し、使用に備えた。
(2)分化培地を調製する:DMEM高グルコース培地に2%ウマ血清を加えてから、均一に混合し、使用に備えた。
(3)Dkk−3を発現できるアデノウイルス(力価:1.3x1010 Tu/ml)をパッケージングし、具体的な方法は以下のようであった:
まず、NCBIからDkk−3 CDS配列(NM_015814)を入手し、且つPCRプライマーを設計した:
プライマー-F:GGGGTACCATGGACTACAAAGACCATGAC (配列番号9);
プライマー-R:GCTCTAGACTAAATCTCCTCCTCTCCGCC (配列番号10);
1つの10cm培養ディッシュにおけるC2C12細胞を取り、培養液を吸って捨て、1ml Trizolを加えて細胞を溶解させた;クロロホルム200ulを加え、充分に振盪して混合し、12000回転/分・4℃で15分間遠心し、上層の清澄液体を取り、新しいEPチューブに転移した;イソプロパノール500ulを加え、充分に混合し、12000回転/分・4℃で15分間遠心し、上澄を捨て、沈殿に75%エタノール1mlを加えて一回洗浄し、上澄を捨てた後、室温で10分間乾かした;RNaseフリー水40ulを加えて溶解させ、全mRNAを得た。
【0042】
分光光度法でmRNA濃度を測定した後、全RNA 1μgを取り、NEB社のMuLV逆転写酵素およびその1x反応緩衝液1μl(200ユニット)、dNTP混合物0.5mM、Oligo dT 4μM、RNaseインヒビター1μlを加え、42℃で1時間インキュベートし、cDNAに逆転写した。cDNAを75℃で10分間不活性化させ、PCR鋳型とした。設計したPCRプライマーを用いて、KODポリメラーゼ1ulとdNTP 1ul(10mM)を加え、PCRでDkk−3を発現する遺伝子を得た。(1.95℃で5min;2.95℃で30s変性;3.58℃で30sアニーリング;4.68℃で2min伸長;5.68℃で10min;第2〜4ステップのサイクルは30回とした)
PCR産物をアガロースゲル電気泳動で回収した後、NEBのKpn1およびXbal1制限エンドヌクレアーゼ1ulを用いて37℃で2時間切断し、1ugのベクターpadTrack−GFPもNEBのKpn1およびXbal1制限エンドヌクレアーゼ1ulを用いて37℃で2時間切断し、アガロースゲル電気泳動で回収した後、NEBのT4DNAリガーゼ1ulを用いて室温で5時間ライゲーションした後、コンピテント細胞BJ5183を形質転換し、Kpn1およびXbal1制限エンドヌクレアーゼで切断して同定した後、DH5αコンピテント細胞にトランスフェクトしてプラスミドを増幅し、プラスミドを抽出した後、Pac1制限エンドヌクレアーゼで線形化し、ゲルから回収した後、ウイルスをパッケージングするための細胞293Aへのトランスフェクションに用いた。
【0043】
線形化した発現プラスミド10ugを取り、リン酸カルシウム共沈殿法によって293A細胞にトランスフェクトし(プラスミド10ugを水250ulに加え、塩化カルシウム溶液250ulを加え、充分に混合して使用に備えた;50ml遠心チューブを取り、2xHBS溶液500ulを入れ、調製したプラスミド−カルシウム溶液をHBS溶液に1滴ずつ滴下しながら、充分に振盪した;滴下が終わった後、室温で20分間放置して使用に備えた。
約60%のディッシュ面積まで生長した293A細胞を取り、旧培養液を吸って捨て、生長培地(DMEM+10%FBS)10mlを加え、調製しておいたプラスミドのカルシウム沈殿懸濁液を培地にゆっくり加え、軽くて均一に振盪した後、37度・5%二酸化炭素インキュベーターにおいて培養した;トランスフェクションの16時間後、新しい生長培地を交換し、培養を続けた。48時間後から、顕微鏡で全ての細胞が緑色蛍光を発するまで、毎日に蛍光顕微鏡で観察した(一般的には7〜10日間が必要である)。
【0044】
細胞および細胞培養液を全て収集し、1500回転/分で室温で5分間遠心し、上澄を捨て、細胞沈殿を保留した。PBSで二回洗浄した後、500ul PBSで再懸濁させ、液体窒素−37度の反復凍結融解法によって細胞を溶解させ(3回の凍結・融解)、2000回転/分で室温で5分間遠心し、上澄を新しいチューブに転移し、使用に備えた(即ちP1ウイルス)。
40ディッシュ(10cm培養ディッシュ)の293A細胞を60%のディッシュ面積に生長したまで培養し、ディッシュごとにP1ウイルス10ulを加えて感染させ、24時間後に、全ての細胞が緑色蛍光を発するまで(一般的には2〜3日間が必要である)、毎日顕微鏡で観察し、その後、P1ウイルスの回収と同様な方法で回収して溶解させ、ウイルスを放出させ(一般的には2ml PBSを加えて細胞を溶解させ、ウイルスを獲得する)、これによりP2ウイルスを得た。力価を測定した後で使用できた(今後で更なるウイルスが必要であったら、P2ウイルスの獲得方法に従って増幅すればよい)。
【0045】
(4)細胞系培養:C2C12細胞を液体窒素から取り出した後、速やかに37℃水浴ポットで溶解させ、生長培地9mlに入れ、1500rpm/minで室温で5分間遠心した後、上澄を捨て、生長培地1mlを加えて再懸濁させた後、10cm培養ディッシュに転移し、生長培地9mlを追加し、在37oC・5%二酸化炭素の条件下で培養した。C2C12細胞系の筋管への分化:C2C12細胞は全培養ディッシュがそれで満ちたまで成長した後、PBSで3回洗浄し、分化培地10mlを加え、37oC・5%二酸化炭素の条件下で分化を3日間誘導した。
(5)過剰発現されるDkk−3によって、C2C12から分化した筋管において筋萎縮の発生を誘導した:新鮮な分化培地10mlを交換し、対照群に10μl PBSを加え、実験群にDkk−3アデノウイルス(力価:1.3x1010TU/ml、MOI: 1:5)を加え、37℃・5%二酸化炭素の条件下で72時間培養した。ツァイス蛍光顕微鏡で観察して写真を撮り、且つ筋管の直径を計測した(図4A、B)。それと共に、細胞を収集し、全タンパク質を抽出し、全タンパク質40μgを取ってSDS−PAGE電気泳動を行い、膜に転写した後、Flag抗体でハイブリダイズし(1:2000希釈、室温で1時間)、過剰発現されるFlagタグ付きDkk−3を検出した。
PBSで3回洗浄した(10分/回)後、1:1000で希釈されたロバ抗マウス二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した(10分/回)後、発色させ、過剰発現されるFlagタグ付きDkk−3の発現を検出した(図4C)。
【0046】
その結果は図4Aに示すように、空白対照群に比べて、Flagタグ付きDkk−3を過剰発現させた後、筋管の直径は顕著に減少した。図4Bに示すように、統計学的解析により、Dkk−3を過剰発現させた後、筋管の直径は顕著に減少した。図4Cに示すように、ウェスタンブロットによって、筋管におけるFlagタグ付きDkk−3の過剰発現レベルを確実に検出した。
(6)Dkk−3アデノウイルスを加えた実験群と対照群の細胞をそれぞれ1ディッシュ取り、1ml Trizolを加えた後、全RNAを抽出し、全RNAをそれぞれ1μg取り、NEB社のMuLV逆転写酵素およびその1x反応緩衝液1μl(200ユニット)、dNTP混合物0.5mM、Oligo dT 4μM、RNaseインヒビター1μlを加え、42℃で1時間インキュベートし、cDNAに逆転写した。cDNAを90℃で10分間不活性化させ、PCR鋳型とした。上記のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いて、リアルタイム蛍光定量PCRにより標的遺伝子の発現量を検出した。PCR条件は、95℃で10分間、95℃で30秒、60℃で60秒、第2と第3ステップのサイクルは40回繰り返した。
GAPDHを内部標準として、用いられるプライマーの配列は
GAPDHフォワード: ACCCAGAAGACTGTGGATGG (配列番号5)
GAPDHリバース: ACACATTGGGGGTAGGAACA (配列番号6)
であった。
【0047】
筋肉における筋萎縮特異的遺伝子Atrogin1(NM_026346.3)およびAtrogin1(NM_026346.3)の発現を同時に検出して、筋萎縮の標識とした。
用いられるプライマーの配列は
Atrogin-1フォワード: AGAGAGGCAGATTCGCAAGCGT(配列番号7)
Atrogin-1リバース: TGCAAAGCTGCAGGGTGACCC(配列番号8)
であった。
NEBのMuLV逆転写酵素でcDNAに逆転写し、リアルタイム蛍光定量PCRにより筋萎縮マーカーであるAtroign1のmRNA発現レベルを検出した。結果は図5に示すように、過剰発現されるDkk−3はAtrogin1の発現レベルを向上させ、筋萎縮を起すことができる。
【0048】
(動物実験):
GFPタグ付きDkk−3アデノウイルスを発現させ、力価を1.3x1010TU/mlとした。
Dkk−3を発現できるアデノウイルス(力価:1.3x1010 Tu/ml)をパッケージングする具体的な方法は以下のようであった:
まず、NCBIからDkk−3 CDS配列(NM_015814)を入手し、PCRプライマーを設計した:
プライマー-F:GGGGTACCATGGACTACAAAGACCATGAC(配列番号7);
プライマー-R:GCTCTAGACTAAATCTCCTCCTCTCCGCC(配列番号7)。
1つの10cm培養ディッシュにおけるC2C12細胞を取り、培養液を吸って捨て、1ml Trizolを加えて細胞を溶解させた;クロロホルム200ulを加え、充分に振盪して混合し、12000回転/分・4度で15分間遠心し、上層の清澄液体を取り、新しいEPチューブに転移した;イソプロパノール500ulを加え、充分に混合し、12000回転/分・4度で15分間遠心し、上澄を捨て、沈殿に75%エタノール1mlを加えて一回洗浄し、上澄を捨てた後、室温で10分間乾かした;RNaseフリー水40ulを加えて溶解させ、全mRNAを得た。
【0049】
濃度を測定した後、全RNA 1μgを取り、NEB社のMuLV逆転写酵素およびその1x反応緩衝液1μl(200ユニット)、dNTP混合物0.5mM、Oligo dT 4μM、RNaseインヒビター1μlを加え、42℃で1時間インキュベートし、cDNAに逆転写した。cDNAを75℃で10分間不活性化させ、PCR鋳型とした。
設計したPCRプライマーを用いてPCRを行い、Dkk−3を発現する遺伝子を得、Kpn1およびXbal1制限エンドヌクレアーゼを用いて37℃で2時間切断し、ベクターpadTrack−GFPもKpn1およびXbal1制限エンドヌクレアーゼを用いて37℃で2時間切断し、アガロースゲル電気泳動で回収した後、T4DNAリガーゼを用いて室温で5時間ライゲーションした後、コンピテント細胞BJ5183を形質転換し、Kpn1およびXbal1制限エンドヌクレアーゼで切断して同定した後、DH5αコンピテント細胞にトランスフェクトしてプラスミドを増幅し、プラスミドを抽出した後、Pac1制限エンドヌクレアーゼで線形化し、ゲルから回収した後、ウイルスをパッケージングするための細胞293Aへのトランスフェクションに用いた。
【0050】
線形化した発現プラスミド10ugを取り、リン酸カルシウム共沈殿法によって293A細胞にトランスフェクトし(プラスミド10ugを水250ulに加え、塩化カルシウム溶液250ulを加え、充分に混合して使用に備えた;50ml遠心チューブを取り、2xHBS溶液500ulを入れ、調製したプラスミド−カルシウム溶液をHBS溶液に1滴ずつ滴下しながら、充分に振盪した;滴下が終わった後、室温で20分間放置して使用に備えた。
約60%のディッシュ面積まで生長した293A細胞を取り、旧培養液を吸って捨て、生長培地(DMEM+10%FBS)10mlを加え、調製しておいたプラスミドのカルシウム沈殿懸濁液を培地にゆっくり加え、軽くて均一に振盪した後、37度・5%二酸化炭素インキュベーターにおいて培養した;トランスフェクションの16時間後、新しい生長培地を交換し、培養を続けた。48時間後から、顕微鏡で全ての細胞が緑色蛍光を発するまで、毎日に蛍光顕微鏡で観察した(一般的には7〜10日間が必要である)。
【0051】
細胞および細胞培養液を全て収集し、1500回転/分で室温で5分間遠心し、上澄を捨て、細胞沈殿を保留した。PBSで二回洗浄した後、500ul PBSで再懸濁させ、液体窒素−37度の反復凍結融解法によって細胞を溶解させ(3回の凍結・融解)、2000回転/分で室温で5分間遠心し、上澄を新しいチューブに転移し、使用に備えた(即ちP1ウイルス)。
40ディッシュ(10cm培養ディッシュ)の293A細胞を60%のディッシュ面積に生長したまで培養し、ディッシュごとにP1ウイルス10ulを加えて感染させ、24時間後に、全ての細胞が緑色蛍光を発するまで(一般的には2〜3日間が必要である)、毎日顕微鏡で観察し、その後、P1ウイルスの回収と同様な方法で回収して溶解させ、ウイルスを放出させ(一般的には2ml PBSを加えて細胞を溶解させ、ウイルスを獲得する)、これによりP2ウイルスを得た。力価を測定した後で使用できた(今後で更なるウイルスが必要であったら、P2ウイルスの獲得方法に従って増幅すればよい)。
【0052】
(方法):
力価が1.3x1010 TU/mlであるDkk−3を発現するアデノウイルス50μlを、筋肉内注射によってマウスの左足の前脛骨筋に注射し、力価が1.3x1010 TU/mlである空ベクターアデノウイルス50μlを、対照として右足の前脛骨筋に注射し、1日に一回注射し、7日間連続に注射した後、10日間待った。その後、マウスの前脛骨筋を取り、埋め込み剤OCTに埋め込み、凍結切片を作製した。
ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)によって筋線維輪郭を示し、筋線維直径の大きさを比較した。染色方法は以下の通りであった:凍結切片をPBSで5分/回で二回洗浄した;ヘマトキシリンで1分間染色し、水道水で20分間リンスした;30%エタノールで5分間インキュベートした;50%エタノールで5分間インキュベートした;70%エタノールで5minインキュベートした;95%エタノールで5minインキュベートした;エオジン染料で10秒染色した;95%エタノールで5分間インキュベートした;100%エタノールで5分間インキュベートした;100%エタノールで5分間インキュベートした;キシレン:EtOH=1:1溶液で10分間インキュベートした;キシレンで10分間インキュベートした;乾かしてからバルサムで封入した。
【0053】
顕微鏡で写真を撮り、筋線維の直径を統計した(図6)。具体的には、図6Aに示すように、マウス筋肉において過剰発現されるGFPタグ付きDkk−3は、筋萎縮を起した;図6Bに示すように、統計学的解析により、GFPタグ付きDkk−3を過剰発現する筋肉は、GFPのみを発現する筋肉に比べて、直径が明らかに小さかった。
【実施例3】
【0054】
(キットの製造)
実施例1と2に記載されたように、Dkk−3タンパク質の異常発現は筋萎縮と密切に関連する。よって、それに基づいてDkk−3遺伝子特異的プライマーを設計し、患者のDNAを鋳型として増幅し、検出を行うことができる。
下記のものを含むキット(延べ100人)を製造した。
名称 配列 濃度
フォワードプライマー 配列番号3 100μM
リバースプライマー 配列番号4 100μM
受試患者の筋肉組織を取り、常法または特定の抽出キットでそれからmRNAを抽出しcDNAに逆転写した。筋萎縮キットにおけるPCRプライマーを希釈し、Dkk−3発現量を検出し、正常対照と比較することで、Dkk−3タンパク質の発現量の高さを確定した。
検出の結果、Dkk−3タンパク質の発現量が正常対照より高い(発現量が3倍高い)検出対象は、筋萎縮感受性が健常人より高かった。
【実施例4】
【0055】
(キットの製造)
検出キットの製造
本実施例において、抗Dkk−3タンパク質抗体を用いて、以下の検出キットを製造した:
実施例1と2に記載されたように、Dkk−3タンパク質の異常発現は筋萎縮と密切に関連する。よって、それに基づいて市販または自力で調製したDkk−3抗体を用いて、免疫組織化学方法によって筋肉組織におけるDkk−3タンパク質の発現を検出することができる。
下記のものを含むキット(延べ100人)を製造した。
成分 数量
ヒツジ抗ヒトDkk−3ポリクローナル抗体(R&D社から購入) 0.5mL、濃度200μg/ml 使用前に1:1000希釈した。
使用前、臨床の新鮮筋肉検体から凍結切片を常法で調製し、ヒツジ抗ヒトDkk−3ポリクローナル抗体を加え、室温でインキュベートし、陽性シグナルを検出し、顕微鏡で陽性細胞の比率を算出して採点し、点数が正常筋肉組織の3倍を超えると、有意差があると評価した。
その結果、85%以上(検出を受けた筋萎縮症例28例のうちの25例)の筋萎縮症例におけるDkk−3は高発現され、筋萎縮組織における発現量:正常筋肉組織における発現量≧3.0。
【0056】
以上の実施例は本発明で開示される実施形態を説明するためのものであり、本発明に対する限定であると理解されるべきではない。また、本文で挙げられる各種の変更および発明にかかる方法、組成物の変化は、本発明の範囲と精神を逸脱しない限り、当業者にとって自明なものである。本発明の多種の具体的な好ましい実施例により本発明を具体的に説明したが、本発明はそれらの具体的な実施例に限定されるものではないと理解すべきである。実際、当業者にとって自明な上記各種の変更により得られる発明は全て本発明の範囲内に含まれる。



図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]