特許第6908565号(P6908565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908565
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20210715BHJP
   E02F 3/39 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   E02F9/00 B
   E02F3/39
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-160553(P2018-160553)
(22)【出願日】2018年8月29日
(65)【公開番号】特開2020-33748(P2020-33748A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 祥紀
(72)【発明者】
【氏名】細川 正一郎
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 朋秀
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−173947(JP,A)
【文献】 特開平5−280201(JP,A)
【文献】 特開2017−2947(JP,A)
【文献】 特開2012−92611(JP,A)
【文献】 特開2017−82417(JP,A)
【文献】 特開昭59−72327(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/127950(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 3/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を有する自走可能な車体と、
前記車体に俯仰動可能に取付けられ前,後方向に延びる筒状のベース筒と、
前記ベース筒の内部に長さ方向に移動可能に設けられた筒状のアームと、
前記アームの先端側に設けられた油圧アクチュエータと、
前記アームに回転可能に設けられたホースリールと、
前記油圧アクチュエータと油圧源との間を接続する主管路の途中に設けられ、パイロット圧に応じて前記油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する方向制御弁と、
前記主管路の一部を構成し前記ホースリールに巻回される油圧ホースと、を備えてなる建設機械において、
前記方向制御弁とパイロット油圧源との間を接続するパイロット管路と、
前記パイロット管路の途中に設けられ、前記方向制御弁に対するパイロット圧の給排を制御するパイロット弁装置と、
前記運転席に連なる乗降口を開放しまたは遮断するゲートロックレバーと、
前記パイロット油圧源と前記パイロット弁装置との間に位置して前記パイロット管路の途中に設けられ、前記ゲートロックレバーが前記乗降口を遮断したときに前記パイロット管路を連通させるゲートロック弁と、
前記ゲートロック弁よりも下流側に位置して前記パイロット管路に接続され、前記ゲートロックレバーが前記乗降口を遮断したときにパイロット圧が供給されることにより前記ホースリールを巻取り方向に回転させる油圧モータと、を備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記アームは、前記ベース筒の内部に回転可能に収容された筒状の外側アームと、
前記外側アーム内に長さ方向に移動可能に設けられ先端側が前記外側アームの外部に突出した内側アームとにより構成され、
前記油圧アクチュエータは前記内側アームの先端側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ゲートロック弁と前記油圧モータとの間には、前記油圧モータに供給されるパイロット圧を制限する減圧装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮式のアームの先端側に油圧アクチュエータが設けられると共に、油圧アクチュエータに接続された油圧ホースが巻回されるホースリールを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石を還元、溶解して銑鉄を製造するための溶鉱炉は、その内壁が耐火煉瓦によって覆われている。この耐火煉瓦は次第に熔解するため、溶鉱炉は、炉内の火を落とした状態で耐火煉瓦を交換する補修作業を定期的に行う必要がある。溶鉱炉の補修作業を行う場合には、熔解した耐火煉瓦を破砕して溶鉱炉の内壁からはがすため、削岩作業等に用いられるブレーカ(破砕機)を備えた建設機械(解体作業機)が好適に用いられる。
【0003】
ここで、溶鉱炉の補修作業等に用いられる解体作業機は、自走可能な車体と、該車体に設けられた作業装置とからなり、作業装置は、車体に俯仰動可能に取付けられ前,後方向に延びる筒状のベース筒と、前記ベース筒の内部に長さ方向に移動可能に設けられた筒状のアームと、長さ方向の一側が外側アーム内に長さ方向に移動可能に収容され長さ方向の他側が外側アームの外部に突出した内側アームと、該内側アームの長さ方向の他側に回動可能に設けられたブレーカとを含んで構成されている。
【0004】
この場合、溶鉱炉は、解体作業機の車体が通過できるほどの大きな開口部は設けられていないため、通常、車体を溶鉱炉の外部に停止させた状態で、作業装置のみを開口部を通じて溶鉱炉の内部に挿入し、ブレーカを用いて溶鉱炉の内壁に設けられた耐火煉瓦を破砕する。
【0005】
例えば溶鉱炉の奥所に設けられた耐火煉瓦を破砕する場合には、ベース筒を車体に対して俯仰動させた状態で、外側アームから内側アームを伸長させ、内側アームに設けられたブレーカによって耐火煉瓦を破砕する。このとき、内側アームを保持する外側アームをベース筒に対して回転させると共に、ブレーカを内側アームに対して回動(首振り)させることにより、溶鉱炉の上面、下面、前面、後面、左,右の側面の内壁に設けられた全ての耐火煉瓦を破砕することができる。
【0006】
ところで、内側アームを外側アームに対して伸縮させてブレーカの位置を移動させるときには、ブレーカを回動させる油圧シリンダに接続された油圧ホースの弛みを抑える必要がある。このため、外側アームの長さ方向の一側(車体側)にはホースリールが設けられ、このホースリールによって油圧ホースを巻取ることにより、内側アームの伸縮動作に伴う油圧ホースの弛みを抑えるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−82417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術によるホースリールは、油圧ホースが巻回される円筒状のドラムの内部に渦巻ばねが設けられ、この渦巻きばねによって、常にドラムを巻取り方向に付勢することにより、油圧ホースに対し、常に巻き取り方向へのテンションを与える構成となっている。このため、ホースリールから油圧ホースに作用する巻取り力が必ずしも十分でなく、伸長させた内側アームを縮めたときに油圧ホースが弛みを生じ、内側アームや外側アームの内部に設けられた構造物に接触するという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、油圧ホースが弛むことを抑制して、ホースリールにより油圧ホースをさらに確実に巻取ることができるようにした建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、運転席を有する自走可能な車体と、前記車体に俯仰動可能に取付けられ前,後方向に延びる筒状のベース筒と、前記ベース筒の内部に長さ方向に移動可能に設けられた筒状のアームと、前記アームの先端側に設けられた油圧アクチュエータと、前記アームに回転可能に設けられたホースリールと、前記油圧アクチュエータと油圧源との間を接続する主管路の途中に設けられ、パイロット圧に応じて前記油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御する方向制御弁と、前記主管路の一部を構成し前記ホースリールに巻回される油圧ホースと、を備えてなる建設機械に適用される。
【0011】
本発明の特徴は、前記方向制御弁とパイロット油圧源との間を接続するパイロット管路と、前記パイロット管路の途中に設けられ、前記方向制御弁に対するパイロット圧の給排を制御するパイロット弁装置と、前記運転席に連なる乗降口を開放しまたは遮断するゲートロックレバーと、前記パイロット油圧源と前記パイロット弁装置との間に位置して前記パイロット管路の途中に設けられ、前記ゲートロックレバーが前記乗降口を遮断したときに前記パイロット管路を連通させるゲートロック弁と、前記ゲートロック弁よりも下流側に位置して前記パイロット管路に接続され、前記ゲートロックレバーが前記乗降口を遮断したときにパイロット圧が供給されることにより前記ホースリールを巻取り方向に回転させる油圧モータと、を備えたことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゲートロックレバーが乗降口を遮断している間は、パイロット油圧源からのパイロット圧が油圧モータに供給され、ホースリールは巻取り方向に回転する。これにより、ホースリールに巻回された油圧ホースに対して常に巻取り方向へのテンションを作用させることができ、アームの伸縮動作に伴う油圧ホースの弛みを抑え、油圧ホースをホースリールに確実に巻取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態による建設機械を示す正面図である。
図2】建設機械の作業装置を用いて溶鉱炉の補修作業を行う状態を示す正面図である。
図3】作業装置の内部を示す断面図である。
図4図1中のホースリール、支持ブラケット等を示す要部拡大図である。
図5】ホースリール、支持ブラケット等を図4中の矢示V−V方向からみた要部拡大図である。
図6】ホースリール、支持ブラケット等を図4中の矢示VI−VI方向からみた断面図である。
図7】外側アームの端縁部に支持ブラケット、ホースリール、油圧モータを取付けた状態を示す要部拡大図である。
図8図4中のホースリールに油圧ホースを巻回した状態を示す要部拡大図である。
図9図5中のホースリールに油圧ホースを巻回した状態を示す要部拡大図である。
図10】キャブの内部を示す一部破断の斜視図である。
図11】作業具シリンダ、伸縮シリンダ、ブレーカ、油圧モータ等を含む油圧回路図である。
図12】リリーフ弁によるパイロット管路内のリリーフ設定圧力と減圧弁によるモータ用パイロット管路内の設定圧力との関係を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、作業具としてブレーカを備えた解体作業機を例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
解体作業機1は、例えば溶鉱炉の補修作業に用いられるものである。図2に示すように、溶鉱炉101は、開口部102を有する中空な容器からなり、溶鉱炉101の内壁103には、その全面に亘って耐火煉瓦104が設けられている。耐火煉瓦104は経時的に熔解するため、溶鉱炉101は、耐火煉瓦104を交換する補修作業を定期的に行う必要があり、熔解した耐火煉瓦104を破砕して溶鉱炉101の内壁103からはがすために解体作業機1が用いられる。
【0016】
解体作業機1の車体は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより構成されている。上部旋回体3の前側には、後述する作業装置9が設けられている。
【0017】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム4と、旋回フレーム4の前部左側に設けられ運転室を画成するキャブ5と、旋回フレーム4の後端側に設けられ作業装置9との重量バランスをとるカウンタウエイト6と、キャブ5とカウンタウエイト6との間に位置して旋回フレーム4上に設けられ、内部にエンジン、熱交換装置等の搭載機器(いずれも図示せず)を収容する外装カバー7とを含んで構成されている。
【0018】
ここで、旋回フレーム4の前側には、上方に向けて山形に隆起する左,右一対の作業装置ブラケット4Aが一体に設けられ、これら各作業装置ブラケット4Aには、作業装置9を取付けるためのアダプタ8が取付けられている(図3参照)。アダプタ8は、旋回フレーム4の一部を構成するもので、後述するベース筒10の基端側が取付けられるベース筒取付部8Aと、ベース筒取付部8Aの前側に配置され後述するベース筒シリンダ11が取付けられるシリンダ取付部8Bとが設けられている。
【0019】
作業装置9は、上部旋回体3を構成する旋回フレーム4の作業装置ブラケット4Aに、アダプタ8を介して取付けられている。作業装置9は、図3に示すように、後述のベース筒10、ベース筒シリンダ11、外側アーム13、アーム回転装置15、内側アーム17、伸縮シリンダ18、作業具19、作業具シリンダ20、支持ブラケット21、ホースリール26、スイベルジョイント37等を含んで構成されている。
【0020】
ベース筒10は、旋回フレーム4の一部を構成するアダプタ8に俯仰動可能に取付けられている。ベース筒10は、前,後方向に延びる円筒状の筒体からなり、長さ方向(前,後方向)の両側が開口している。即ち、ベース筒10の長さ方向の一側(上部旋回体3側)は基端側開口10Aとなり、長さ方向の他側は先端側開口10Bとなっている。基端側開口10Aの外周側には、長さ方向の一側の端縁部となる略円板状の基端側フランジ10Cが設けられ、この基端側フランジ10Cには、後述の各ローラ部材14が設けられている。先端側開口10B近傍の外周側には、円板状の先端側フランジ10Dが設けられている。ベース筒10の下面側には、長さ方向の全域に亘って前,後方向に延びる取付ブラケット10Eが設けられている。取付ブラケット10Eの後側は、アダプタ8のベース筒取付部8Aに、ベース筒支持軸10Fを用いて上,下方向に回動可能(俯仰動可能)に連結されている。
【0021】
ベース筒シリンダ11は、アダプタ8とベース筒10の取付ブラケット10Eとの間に設けられている。ベース筒シリンダ11のボトム側は、ボトム側連結ピン11Aを用いてアダプタ8のシリンダ取付部8Bに連結され、ベース筒シリンダ11のロッド側は、ロッド側連結ピン11Bを用いてベース筒10の取付ブラケット10Eの前側に連結されている。従って、ベース筒シリンダ11を伸縮させることにより、ベース筒10は、ベース筒支持軸10Fを中心として上,下方向に回動(俯仰動)する。
【0022】
アーム12は、ベース筒10の内部に長さ方向に移動可能に、かつ回転可能に設けられている。アーム12は、後述する外側アーム13と、内側アーム17とを含んで構成されている。
【0023】
外側アーム13は、前,後方向に延びる中空な筒体からなり、長さ方向の一側(基端側)がベース筒10の内部に回転可能に収容されている。外側アーム13の長さ方向の他側(先端側)は、ベース筒10の先端側開口10Bを通じてベース筒10の外部に突出している。外側アーム13の長さ方向の一側となる基端側は、基端側開口端13Aとなり、ベース筒10の基端側開口10Aを通じてベース筒10の外部に突出している。一方、外側アーム13の長さ方向の中間部から長さ方向の他側は、ベース筒10の先端側開口10Bを通じてベース筒10の外部に突出し、外側アーム13の長さ方向の他側となる先端側は先端側開口端13Bとなっている。
【0024】
基端側開口端13Aの外周側には、長さ方向の一側の端縁部となる大径な円筒状の基端側円筒13Cが一体に設けられ、この基端側円筒13Cは、ベース筒10の基端側フランジ10Cと前,後方向で隣接している(図4ないし図6参照)。また、外側アーム13の長さ方向の中間部の外周側には、ベース筒10の外側に位置して円板状の中間フランジ13Dが設けられ、この中間フランジ13Dは、ベース筒10の先端側フランジ10Dと前,後方向で隣接している。
【0025】
図4ないし図6に示すように、ベース筒10の基端側フランジ10Cには、周方向に均等な間隔をもって複数個(例えば8個)のローラ部材14が設けられている。各ローラ部材14は、基端側フランジ10Cに締結された支持軸14Aと、支持軸14Aに回転可能に支持された円筒状のローラ14Bとにより構成され、各ローラ14Bは、外側アーム13の基端側に設けられた基端側円筒13Cを回転可能に支持している。
【0026】
アーム回転装置15は、ベース筒10の先端側に設けられ、外側アーム13をベース筒10に対して回転させるものである。アーム回転装置15は、ベース筒10の先端側フランジ10Dと外側アーム13の中間フランジ13Dとの間に設けられている。アーム回転装置15は、ベース筒10に対して外側アーム13を360°回転可能に支持する旋回輪15Aと、旋回輪15Aによって支持された外側アーム13を回転させる旋回モータ15Bとにより構成されている。
【0027】
従って、外側アーム13は、ベース筒10の基端側フランジ10Cに設けられた各ローラ部材14と、ベース筒10の先端側フランジ10Dとの間に設けられた旋回輪15Aとによって回転可能に支持され、アーム回転装置15の旋回モータ15Bを作動させることにより、ベース筒10に対して360°回転(全旋回)する構成となっている。
【0028】
外側アーム13の先端側開口端13Bには、内側アームガイド16が設けられている。内側アームガイド16は、複数のローラ16A等を含んで構成されている。内側アームガイド16は、外側アーム13の先端側開口端13Bから外部に突出する内側アーム17を、各ローラ16A等によって移動可能に支持するものである。
【0029】
内側アーム17は、前,後方向に延びる中空な筒体からなり、長さ方向の一側(基端側)が、外側アーム13の内部に、長さ方向に移動可能に設けられている。内側アーム17の長さ方向の他側(先端側)は、外側アーム13の先端側開口端13Bを通じて外側アーム13の外部に突出している。内側アーム17の長さ方向の一側となる基端側は基端側開口端17Aとなり、内側アーム17の長さ方向の他側となる先端側は先端側開口端17Bとなっている。また、内側アーム17の先端部には、後述の作業具19を取付けるための作業具取付ブラケット17Cが突設されている。
【0030】
基端側開口端17Aの外周側には、複数個(例えば4個)の案内ローラ17Dが設けられている。これら各案内ローラ17Dは、外側アーム13の内周面に沿って転動することにより、内側アーム17の基端側を外側アーム13に対して長さ方向に移動可能に支持するものである。従って、内側アーム17は、基端側開口端17Aに設けられた各案内ローラ17Dと、外側アーム13の先端側開口端13Bに設けられた内側アームガイド16とにより、外側アーム13に対し長さ方向に移動可能に支持されている。
【0031】
伸縮シリンダ18は、内側アーム17内に位置して外側アーム13と内側アーム17との間に設けられ、外側アーム13に対して内側アーム17を長さ方向に移動(伸縮)させるものである。伸縮シリンダ18は、油圧シリンダからなり、伸縮シリンダ18のボトム側は、ボトム側連結ピン18Aを用いて内側アーム17の長さ方向の中間部に連結され、伸縮シリンダ18のロッド側は、ロッド側連結ピン18Bを用いて外側アーム13の基端側に連結されている。従って、伸縮シリンダ18を伸縮させることにより、内側アーム17は、各案内ローラ17Dと、内側アームガイド16とに支持された状態で、外側アーム13に対して長さ方向に移動(伸縮)する。
【0032】
作業具19は、内側アーム17の先端側に設けられている。作業具19は、内側アーム17の作業具取付ブラケット17Cに支持軸19Aを用いて回動可能に支持されたホルダ19Bと、ホルダ19Bに保持されたブレーカ(破砕機)19Cとにより構成され、ブレーカ19Cは、アーム12の先端側に設けられた油圧アクチュエータを構成している。ホルダ19Bは、後述の作業具シリンダ20により支持軸19Aを中心として上,下方向に回動する。ブレーカ19Cは、後述する油圧ポンプ44からの圧油が油圧ホース52,53を通じて供給されることにより高速で振動し、溶鉱炉101の内壁103に設けられた耐火煉瓦104を破砕する。
【0033】
作業具シリンダ20は、内側アーム17と作業具19のホルダ19Bとの間に設けられている。作業具シリンダ20は、作業具19のブレーカ19Cと共にアーム12の先端側に設けられた油圧アクチュエータを構成している。作業具シリンダ20のボトム側は、ボトム側連結ピン20Aを用いて内側アーム17の長さ方向の中間部に連結され、作業具シリンダ20のロッド側は、ロッド側連結ピン20Bを用いて作業具19のホルダ19Bに連結されている。作業具シリンダ20は、後述する油圧ポンプ44からの圧油が油圧ホース60,61を通じて供給されることにより、作業具19のホルダ19Bを支持軸19Aを中心として上,下方向に回動(首振り動作)させ、ブレーカ19Cを所望の破砕対象(耐火煉瓦104)に対向させるものである。
【0034】
支持ブラケット21は、外側アーム13の長さ方向の一側の端縁部となる基端側円筒13Cに取付けられている。支持ブラケット21は、後述するホースリール26を回転可能に支持するものである。従って、アーム回転装置15によって外側アーム13をベース筒10に対して回転させたときには、支持ブラケット21とホースリール26とは、外側アーム13と一緒に回転する構成となっている。支持ブラケット21は、後述する下枠体22と、上枠体23と、第1の軸支持板24と、第2の軸支持板25とを含んで構成されている。
【0035】
下枠体22は、外側アーム13の基端側円筒13Cの端面に取付けられている。下枠体22は、図7に示すように、前,後方向に延びる角筒状の2本の脚部22A,22Bと、各脚部22A,22B間を連結する連結部22Cとにより、全体としてU字状に形成されている。各脚部22A,22Bの基端側(基端側円筒13C側)には、平板状のフランジ22Dがそれぞれ設けられ、各フランジ22Dはボルト22Eを用いて基端側円筒13Cの端面に締結されている。各脚部22A,22Bの長さ方向の中間部には、平板状の取付板22Fがそれぞれ固着されている(図4参照)。
【0036】
上枠体23は、下枠体22の上側に位置して外側アーム13の基端側円筒13Cの端面に取付けられている。上枠体23は、下枠体22と同一形状を有し、2本の脚部23A,23Bと連結部23Cとにより、全体としてU字状に形成されている。各脚部23A,23Bの基端側にはフランジ23Dがそれぞれ設けられ、各フランジ23Dはボルト23Eを用いて基端側円筒13Cの端面に締結されている。各脚部23A,23Bの長さ方向の中間部には取付板23Fがそれぞれ固着されている。
【0037】
第1の軸支持板24は、下枠体22の脚部22Aと上枠体23の脚部23Aとの間に設けられ、後述するホースリール26を構成する支持軸27の一端27Aを支持するものである。第1の軸支持板24は、下枠体22の取付板22Fに取付けられる平板状の下板24Aと、上枠体23の取付板23Fに取付けられる平板状の上板24Bと、下板24Aと上板24Bとの間を連結する中間連結板24Cとを含んで構成されている。下板24Aは、下枠体22の取付板22Fにボルト24Dを用いて締結され、上板24Bは、上枠体23の取付板23Fにボルト24Eを用いて締結されている。また、中間連結板24Cの中央部には、支持軸27の一端27Aを支持する軸支持孔24Fが設けられている。
【0038】
第2の軸支持板25は、第1の軸支持板24と軸方向で対面した状態で下枠体22の脚部22Bと上枠体23の脚部23Bとの間に設けられ、支持軸27の他端27Bを支持するものである。第2の軸支持板25は、第1の軸支持板24と同様に、下板25Aと、上板25Bと、中間連結板25Cとを有し、前,後方向の長さ寸法が第1の軸支持板24よりも長尺に形成されている。下板25Aは、下枠体22の取付板22Fにボルト25Dを用いて締結され、上板25Bは、上枠体23の取付板23Fにボルト25Eを用いて締結されている。また、中間連結板25Cの中央部には、支持軸27の他端27Bを支持する軸支持孔25Fが設けられている。さらに、中間連結板25Cの軸支持孔25Fよりも後側となる部位は、後述の油圧モータ33を取付けるためのモータ取付部25Gとなっている。
【0039】
ホースリール26は、アーム12を構成する外側アーム13の基端側円筒13Cに支持ブラケット21を介して回転可能に取付けられている。図7等に示すように、ホースリール26は、支持軸27と、支持軸27の外周側に回転可能に挿嵌された回転軸28と、回転軸28に取付けられた4個の鍔付き円筒状をなすドラム29,30,31,32と、油圧モータ33とにより構成されている。
【0040】
支持軸27は、支持ブラケット21の第1の軸支持板24と第2の軸支持板25とに架渡して設けられている。支持軸27の軸方向の一端27Aは、第1の軸支持板24の軸支持孔24Fに挿通された状態で第1の軸支持板24に固定されている。支持軸27の軸方向の他端27Bは、第2の軸支持板25の軸支持孔25Fに挿通された状態で第2の軸支持板27に固定されている。支持軸27の内部には、軸方向に延びる4本の油路(図示せず)が形成され、支持軸27の両端には、それぞれ2本の油路が開口している。
【0041】
回転軸28は、支持軸27の外周側に回転可能に挿嵌されている。回転軸28は、第1の軸支持板24の中間連結板24Cと第2の軸支持板25の中間連結板25Cとの間に回転可能に配置されている。
【0042】
4個のドラム29,30,31,32は、それぞれ回転軸28の外周側に取付けられている。これら4個のドラム29〜32は、軸方向の両端に円板状の鍔(フランジ)が設けられた鍔付き円筒体からなっている。4個のドラム29〜32は、その中心部が回転軸28に固定されることにより、回転軸28と一体に回転する。ドラム29には後述する油圧ホース52のブレーカ側ホース52Bが巻回され、ドラム30には後述する油圧ホース53のブレーカ側ホース53Bが巻回され、ドラム31には後述する油圧ホース60のシリンダ側ホース60Bが巻回され、ドラム32には後述する油圧ホース61のシリンダ側ホース61Bが巻回されている。そして、これらブレーカ側ホース52B,53B、シリンダ側ホース60B,61Bの端部は、回転軸28を介して支持軸27に設けられた4本の油路に接続されている。
【0043】
油圧モータ33は、支持ブラケット21を構成する第2の軸支持板25に取付けられている。油圧モータ33は、後述するパイロットポンプ46からのパイロット圧が供給されることにより、ホースリール26の回転軸28及び4個のドラム29〜32を、支持軸27を中心として回転させる。油圧モータ33は、第2の軸支持板25の中間連結板25Cに設けられたモータ取付部25Gに固定され、油圧モータ33の出力軸33Aは、中間連結板25Cを通過してドラム29側に突出している。出力軸33Aの突出端にはプーリ34が取付けられ、プーリ34と回転軸28との間にはベルト35が巻回されている。従って、油圧モータ33(出力軸33A)の回転は、プーリ34及びベルト35を通じて回転軸28に伝達され、4個のドラム29〜32は巻取り方向(ブレーカ側ホース52B,53B、シリンダ側ホース60B,61Bを巻取る方向)に回転する構成となっている。
【0044】
ジョイント取付具36は、ベース筒10の長さ方向の一側の端縁部となる基端側フランジ10Cに設けられ、後述のスイベルジョイント37が取付けられるものである。ジョイント取付具36は、基端側フランジ10Cから支持ブラケット21に沿って後側(上部旋回体3側)に突出して延びる角筒状の複数本(例えば3本)の腕部36Aと、各腕部36A間を連結する連結部36Bと、各腕部36Aの突出端に取付けられた平板状の取付板部36Cとを有し、支持ブラケット21の上半分を外側から取囲む枠状に形成されている。ジョイント取付具36の取付板部36Cには、スイベルジョイント37の外筒37Aが取付けられている。
【0045】
スイベルジョイント37は、ジョイント取付具36の取付板部36Cに設けられている。スイベルジョイント37は、ベース筒10に対して外側アーム13が回転するときに、外側アーム13側に配置された伸縮シリンダ18、ブレーカ19C、作業具シリンダ20に対し、油圧ポンプ44からの圧油を供給すると共に、外側アーム13側に配置された油圧モータ33に対し、パイロットポンプ46からのパイロット圧を供給するものである。
【0046】
ここで、スイベルジョイント37は、ジョイント取付具36の取付板部36Cに固定された円筒状の外筒37Aと、外筒37Aの内周側に回転可能に挿通され、外筒37Aから突出した部位が取付具38を介して支持ブラケット21に取付けられた内筒(スピンドル)37Bとを有している。内筒37Bの回転軸線は、外側アーム13の回転軸線と同一軸線上に配置され、内筒37Bは外側アーム13と一緒に回転する。
【0047】
図11に示すように、スイベルジョイント37の外筒37Aには、伸縮シリンダ18に接続された後述する油圧ホース56,57の油圧源側ホース56A,57A、ブレーカ19Cに接続された後述する油圧ホース52,53の油圧源側ホース52A,53A、作業具シリンダ20に接続された後述する油圧ホース60,61の油圧源側ホース60A,61A、油圧モータ33に接続された後述するモータ用パイロット管路62,63の油圧源側パイロット管路62A,63Aが接続されている。一方、スイベルジョイント37の内筒37Bには、伸縮シリンダ18に接続された油圧ホース56,57のシリンダ側ホース56B,57B、ブレーカ19Cに接続された油圧ホース52,53のブレーカ側ホース52B,53B、作業具シリンダ20に接続された油圧ホース60,61のシリンダ側ホース60B,61B、油圧モータ33に接続されたモータ用パイロット管路62,63のモータ側パイロット管路62B,63Bが接続されている。
【0048】
これにより、ベース筒10に対して外側アーム13が回転し、この外側アーム13と一緒に伸縮シリンダ18、作業具シリンダ20、作業具19のブレーカ19C、油圧モータ33が回転したときに、伸縮シリンダ18に接続された油圧ホース56,57、ブレーカ19Cに接続された油圧ホース52,53、作業具シリンダ20に接続された油圧ホース60,61、油圧モータ33に接続されたモータ用パイロット管路62,63は、スイベルジョイント37を通じて圧油を円滑に流通させることができる。
【0049】
ホースガイド39は、外側アーム13の基端側円筒13Cとホースリール26との間に位置して支持ブラケット21に設けられている。ホースガイド39は、ブレーカ19Cに接続されたブレーカ側ホース52B,53Bをドラム29,30に向けて案内すると共に、作業具シリンダ20に接続されたシリンダ側ホース60B,61Bをドラム31,32に向けて案内するものである。
【0050】
次に、キャブ5内に設けられたゲートロックレバー43について説明する。図10に示すように、キャブ5内には、オペレータが着席する運転席40が設けられている。キャブ5の左側面には運転席40に連なる乗降口5Aが設けられ、この乗降口5Aはドア5Bによって開,閉される。オペレータは、ドア5Bを開いた状態で、乗降口5Aを通じてキャブ5に乗降する。運転席40の前側には走行用操作レバー・ペダル41が配置され、この走行用操作レバー・ペダル41を操作することにより、下部走行体2の走行動作を制御することができる。運転席40の左,右両側には左,右の作業用操作レバー42が配置され、この作業用操作レバー42を操作することにより、上部旋回体3の旋回動作、作業装置9の動作を制御することができる。
【0051】
ゲートロックレバー43は、運転席40の左側で、キャブ5の乗降口5A側に設けられている。ゲートロックレバー43は、オペレータの傾転操作により、乗降口5Aを開放するロック位置と、乗降口5Aを遮断するロック解除位置とに切換えられる。ゲートロックレバー43は、ゲートロックレバー43の傾転操作によって機械的にオン、オフされる後述のゲートロックスイッチ67を含んで構成されている。これにより、ゲートロックレバー43をロック位置としたときには、後述する方向制御弁49,54,58へのパイロット圧の供給が禁止され、ゲートロックレバー43をロック解除位置としたときには、方向制御弁49,54,58へのパイロット圧の供給が許可される構成となっている。
【0052】
次に、作業装置9を構成する伸縮シリンダ18、作業具19のブレーカ19C、作業具シリンダ20、油圧モータ33に作動用の圧油を供給するための油圧回路について、図11を参照して説明する。
【0053】
油圧ポンプ44は、タンク45と共にメインの油圧源を構成し、パイロットポンプ46は、タンク45と共にパイロット油圧源を構成している。油圧ポンプ44とパイロットポンプ46とは、エンジン(図示せず)によって駆動される。伸縮シリンダ18、ブレーカ19C、作業具シリンダ20は、油圧ポンプ44及びタンク45からなる油圧源に、主管路47,48を介して接続されている。
【0054】
ブレーカ19Cと油圧源との間を接続する主管路47,48の途中には、ブレーカ19Cに供給される圧油の方向を制御する方向制御弁49が設けられている。方向制御弁49は、例えば4ポート3位置の油圧式方向制御弁からなり、方向制御弁49の油圧パイロット部49A,49Bは、パイロット管路50を介してパイロットポンプ46に接続されている。パイロット管路50のうち、方向制御弁49の油圧パイロット部49A,49Bとパイロットポンプ46との間に位置する途中部位には、パイロット弁装置51が設けられている。パイロット弁装置51は、キャブ5内に配置された作業用操作レバー42によって操作され、パイロットポンプ46からのパイロット圧を方向制御弁49の油圧パイロット部49A,49Bに供給する。パイロット圧が油圧パイロット部49Aに供給されたときには、方向制御弁49は中立位置から切換位置(a)に切換えられる。一方、パイロット圧が油圧パイロット部49Bに供給されたときには、方向制御弁49は中立位置から切換位置(b)に切換えられる。これにより、油圧ポンプ44からの圧油が、主管路47,48を介してブレーカ19Cに供給され、ブレーカ19Cは高速で振動する。
【0055】
主管路47,48のうち方向制御弁49とブレーカ19Cとの間を接続する部位は、油圧ホース52,53によって構成されている。ブレーカ19Cは、外側アーム13と共にベース筒10に対して回転するため、油圧ホース52,53の途中部位はスイベルジョイント37に接続されている。これにより、油圧ホース52,53は、方向制御弁49とスイベルジョイント37との間が油圧源側ホース52A,53Aとなり、スイベルジョイント37とブレーカ19Cとの間がブレーカ側ホース52B,53Bとなっている。
【0056】
ここで、ブレーカ19Cは、外側アーム13に対する内側アーム17の伸縮動作に伴って外側アーム13の長さ方向に移動する。このため、ブレーカ側ホース52Bは、ホースリール26のドラム29に巻回され、ブレーカ側ホース53Bは、ホースリール26のドラム30に巻回されている。これにより、内側アーム17が外側アーム12内に移動(縮小)したときに、ホースリール26のドラム29,30が巻取り方向に回転することにより、ブレーカ側ホース52B,53Bが弛みを生じるのを抑える構成となっている。
【0057】
伸縮シリンダ18と油圧源との間を接続する主管路47,48の途中には、伸縮シリンダ18に供給される圧油の方向を制御する方向制御弁54が設けられている。方向制御弁54は、例えば4ポート3位置の油圧式方向制御弁からなり、方向制御弁54の油圧パイロット部54A,54Bは、パイロット管路50を介してパイロットポンプ46に接続されている。パイロット管路50のうち、方向制御弁54の油圧パイロット部54A,54Bとパイロットポンプ46との間に位置する途中部位には、パイロット弁装置55が設けられている。パイロット弁装置55は、キャブ5内に配置された作業用操作レバー42によって操作され、パイロットポンプ46からのパイロット圧を方向制御弁54の油圧パイロット部54A,54Bに供給する。パイロット圧が油圧パイロット部54Aに供給されたときには、方向制御弁54は中立位置から切換位置(c)に切換えられる。一方、パイロット圧が油圧パイロット部54Bに供給されたときには、方向制御弁54は中立位置から切換位置(d)に切換えられる。これにより、油圧ポンプ44からの圧油が、主管路47,48を介して伸縮シリンダ18に供給され、伸縮シリンダ18の伸縮動作に応じて内側アーム17が外側アーム13の軸方向に移動する。
【0058】
主管路47,48のうち方向制御弁54と伸縮シリンダ18との間を接続する部位は、油圧ホース56,57によって構成されている。伸縮シリンダ18は、外側アーム13と共にベース筒10に対して回転するため、油圧ホース56,57の途中部はスイベルジョイント37に接続されている。これにより、油圧ホース56,57は、方向制御弁54とスイベルジョイント37との間が油圧源側ホース56A,57Aとなり、スイベルジョイント37と伸縮シリンダ18との間がシリンダ側ホース56B,57Bとなっている。
【0059】
作業具シリンダ20と油圧源との間を接続する主管路47,48の途中には、作業具シリンダ20に供給される圧油の方向を制御する方向制御弁58が設けられている。方向制御弁58は、例えば4ポート3位置の油圧式方向制御弁からなり、方向制御弁58の油圧パイロット部58A,58Bは、パイロット管路50を介してパイロットポンプ46に接続されている。パイロット管路50のうち、方向制御弁58の油圧パイロット部58A,58Bとパイロットポンプ46との間に位置する途中部位には、パイロット弁装置59が設けられている。パイロット弁装置59は、キャブ5内に配置された作業用操作レバー42によって操作され、パイロットポンプ46からのパイロット圧を方向制御弁58の油圧パイロット部58A,58Bに供給する。パイロットポンプ46からのパイロット圧が油圧パイロット部58Aに供給されたときには、方向制御弁58は中立位置から切換位置(e)に切換えられる。一方、パイロット圧が油圧パイロット部58Bに供給されたときには、方向制御弁58は中立位置から切換位置(f)に切換えられる。これにより、油圧ポンプ44からの圧油が、主管路47,48を介して作業具シリンダ20に供給され、作業具シリンダ20の伸縮に応じて作業具19のホルダ19Bが支持軸19Aを中心として上,下方向に回動する。
【0060】
主管路47,48のうち方向制御弁58と作業具シリンダ20との間を接続する部位は、油圧ホース60,61によって構成されている。作業具シリンダ20は、外側アーム13と共にベース筒10に対して回転するため、油圧ホース60,61の途中部はスイベルジョイント37に接続されている。これにより、油圧ホース60,61は、方向制御弁58とスイベルジョイント37との間が油圧源側ホース60A,61Aとなり、スイベルジョイント37と作業具シリンダ20との間がシリンダ側ホース60B,61Bとなっている。
【0061】
ここで、作業具シリンダ20は、外側アーム13に対する内側アーム17の伸縮動作に伴って外側アーム13の長さ方向に移動する。このため、シリンダ側ホース60Bは、ホースリール26のドラム31に巻回され、シリンダ側ホース61Bは、ホースリール26のドラム32に巻回されている。これにより、内側アーム17が外側アーム12内に移動したときに、ホースリール26のドラム31,32が巻取り方向に回転することにより、シリンダ側ホース60B,61Bが弛みを生じるのを抑える構成となっている。
【0062】
ホースリール26を回転させる油圧モータ33は、パイロット管路50の一部を構成するモータ用パイロット管路62,63を介してパイロット油圧源に接続されている。モータ用パイロット管路62は、接続点50Aにおいてパイロット管路50に接続され、油圧モータ33は、後述のゲートロック弁64よりも下流側に位置してモータ用パイロット管路62,63に接続されている。油圧モータ33は、パイロットポンプ46から吐出したパイロット圧が供給されることにより、ホースリール26のドラム29,30,31,32を巻取り方向に回転させる。
【0063】
図7に示すように、油圧モータ33は、支持ブラケット21を介して内側アーム17に固定され、外側アーム13と共にベース筒10に対して回転する。従って、モータ用パイロット管路62,63の途中部はスイベルジョイント37に接続されている。これにより、モータ用パイロット管路62,63は、パイロット油圧源とスイベルジョイント37との間が油圧源側パイロット管路62A,63Aとなり、スイベルジョイント37と油圧モータ33との間がモータ側パイロット管路62B,63Bとなっている。
【0064】
ゲートロック弁64は、各パイロット弁装置51,55,59とパイロットポンプ46との間に位置してパイロット管路50の途中に設けられている。ゲートロック弁64は、例えば3ポート2位置の電磁式方向制御弁からなり、電磁パイロット部64Aを有している。ゲートロック弁64の電磁パイロット部64Aは、ケーブル65を介してバッテリ等の電源66に接続されている。ゲートロック弁64は、電磁パイロット部64Aに対し電源66からの給電が行われないときには遮断位置(g)を保持し、パイロット管路50を遮断する。一方、ゲートロック弁64は、電磁パイロット部64Aに対し電源66からの給電が行われたときには連通位置(h)に切換られ、パイロット管路50を連通させる。
【0065】
ゲートロックスイッチ67は、ゲートロック弁64の電磁パイロット部64Aと電源66との間を接続するケーブル65の途中に設けられている。ゲートロックスイッチ67は、ゲートロックレバー43の操作に連動する機械的なスイッチにより構成され、ゲートロックレバー43の傾転操作によってオン、オフされる。例えばゲートロックレバー43がロック位置となったときには、ゲートロックスイッチ67はオフ状態(非通電状態)となり、ゲートロック弁64を遮断位置(g)に保持する。これにより、パイロット管路50が遮断され、各パイロット弁装置51,55,59及び油圧モータ33へのパイロット圧の供給が禁止される。
【0066】
一方、ゲートロックレバー43がロック解除位置となったときには、ゲートロックスイッチ67はオン状態(通電状態)となり、ゲートロック弁64を連通位置(g)に切換える。これにより、パイロット管路50が連通し、各パイロット弁装置51,55,59及び油圧モータ33に対してパイロット圧が供給される。
【0067】
減圧装置としての減圧弁68は、ゲートロック弁64と油圧モータ33との間に位置してモータ用パイロット管路62の途中に設けられている。減圧弁68は、モータ用パイロット管路62を通じて油圧モータ33に供給されるパイロット圧を、リリーフ弁69によって設定されるリリーフ圧よりも低い値に制限するものである。
【0068】
即ち、図12に示すように、ゲートロック弁64が遮断位置(g)と連通位置(h)とに切換えられたときに、モータ用パイロット管路62を通じて油圧モータ33に供給されるパイロット圧の圧力は、特性線70のように変化する。即ち、減圧弁68が出力する設定圧力P1は、ホースリール26を介して油圧ホース52,53,60,61へ安定した適切なテンションを与えるために、リリーフ弁69によるリリーフ設定圧力P0よりも低く設定されている。これにより、ゲートロック弁64が連通位置(h)となってパイロット圧が油圧モータ33に供給された場合でも、各パイロット弁装置51,55,59の操作に応じて各方向制御弁49,54,58の油圧パイロット部49A,49B,54A,54B,58A,58Bに十分なパイロット圧を供給することができる構成となっている。
【0069】
本実施の形態による解体作業機1は、上述の如き構成を有するもので、以下、解体作業機1を用いて溶鉱炉101の補修作業を行う場合について説明する。
【0070】
まず、オペレータは、解体作業機1のキャブ5に設けられドア5Bを開き、乗降口5Aを通って運転席40に着席する。このとき、ゲートロックレバー43は、乗降口5Aを遮断するロック位置を保持しているため、オペレータは、ゲートロックレバー43をロック解除位置に切換えて乗降口5Aを開放する。ゲートロックレバー43がロック解除位置に保持されることにより、ゲートロックスイッチ67がオン状態(通電状態)となり、ゲートロック弁64が連通位置(g)に切換えられる。これにより、パイロット管路50が連通し、パイロットポンプ46からのパイロット圧は、モータ用パイロット管路62、スイベルジョイント37を通じて油圧モータ33に供給され、油圧モータ33が回転する。油圧モータ33(出力軸33A)の回転は、ベルト35を介してホースリール26の回転軸28に伝達され、回転軸28に取付けられたドラム29〜32は、巻取り方向に回転し得る状態となる。
【0071】
この状態で、走行用操作レバー・ペダル41の操作に応じて下部走行体3が走行し、解体作業機1は、溶鉱炉101に設けられた開口部102の近傍において溶鉱炉101の外部に停止する。次に、例えば作業用操作レバー42を操作してベース筒シリンダ11を伸長させることにより、ベース筒10をベース筒支持軸10Fを中心として上向きに回動させ、水平方向に対して上向きの姿勢に保持する。
【0072】
この状態で、伸縮シリンダ18を伸長させることにより、外側アーム13に対して内側アーム17を伸ばし、内側アーム17の先端側に設けられた作業具19を、溶鉱炉101の開口部102から離れた奥所へと移動させる。次に、アーム回転装置15を作動させることにより、外側アーム13に対して内側アーム17を回転させ、作業具19を溶鉱炉101の上面に向ける。
【0073】
さらに、作業具シリンダ20を伸縮させることにより、作業具19のホルダ19Bを支持軸19Aを中心として回動させ、ホルダ19Bに保持されたブレーカ19Cを、溶鉱炉101の上面の内壁103に設けられた耐火煉瓦104に対向させる。この状態で、ブレーカ19Cに圧油を供給することにより、ブレーカ19Cが高速で振動し、耐火煉瓦104を破砕することができる。
【0074】
このように、ベース筒シリンダ11によってベース筒10の水平方向に対する傾きを変化させ、伸縮シリンダ18によって内側アーム17を外側アーム13に対して伸縮させる。また、アーム回転装置15によって内側アーム17を外側アーム13に対して回転させ、作業具シリンダ20によって内側アーム17に対する作業具19の角度を変化させる。これにより、作業具19のブレーカ19Cを、溶鉱炉101の上面、下面、前面、後面、左,右の側面の内壁103に設けられた全ての耐火煉瓦104に対向させることができ、これら多数の耐火煉瓦104のうち熔解した耐火煉瓦104を、ブレーカ19Cによって選択的に破砕して内壁103からはがすことができる。
【0075】
この溶鉱炉101の補修作業時において、内側アーム17を外側アーム13に対して伸縮させたときには、作業具シリンダ20が内側アーム17の長さ方向に移動する。これに対し、ブレーカ19Cに接続された油圧ホース52,53のブレーカ側ホース52B,53Bは、ホースリール26のドラム29,30に巻回されている。また、作業具シリンダ20に接続された油圧ホース60,61のシリンダ側ホース60B,61Bは、ホースリール26のドラム31,32に巻回されている。
【0076】
ここで、解体作業機1の作動時において、ゲートロックレバー43がロック解除位置にあるときには、ゲートロック弁64が連通位置(g)を保持し、パイロットポンプ46からのパイロット圧は、常に油圧モータ33に供給されている。油圧モータ33の回転は、ベルト35を介してホースリール26の回転軸28に伝達されるので、回転軸28に取付けられたドラム29〜32は、常に巻取り方向に回転し得る状態にある。このため、ドラム29,30に巻回された油圧ホース52,53のブレーカ側ホース52B,53Bと、ドラム31,32に巻回された油圧ホース60,61のシリンダ側ホース60B,61Bに対し、常に一定のテンションを作用させることができる。
【0077】
従って、内側アーム17が外側アーム13内へと縮小し、ブレーカ19C及び作業具シリンダ20が、後側(ホースリール26側)に移動したときには、ブレーカ19Cに接続された油圧ホース52,53のブレーカ側ホース52B,53Bは、ホースリール26のドラム29,30によって巻取ることができる。同様に、作業具シリンダ20に接続された油圧ホース60,61のシリンダ側ホース60B,61Bは、ホースリール26のドラム31,32によって巻取ることができる。従って、ブレーカ19Cに接続された油圧ホース52,53、作業具シリンダ20に接続された油圧ホース60,61が、内側アーム17や外側アーム13の内部で弛みを生じるのを抑えることができる。この結果、各油圧ホース52,53,60,61が、内側アーム17や外側アーム13の内部に設けられた構造物に接触するのを回避することができ、その耐久性を高めることができる。
【0078】
しかも、ホースリール26は、油圧モータ33に供給されるパイロットポンプ46からのパイロット圧によって緩やかに巻取り方向に回転する。このため、油圧ポンプ44から供給される圧油によって伸縮シリンダ18が伸縮するときの推力は、ホースリール26を巻取り方向に回転させるときの回転力よりも大きい。従って、伸縮シリンダ18を伸長させて内側アーム17を前側に移動させる場合には、ブレーカ19Cに接続された油圧ホース52,53のブレーカ側ホース52B,53Bを、ホースリール26のドラム29,30から円滑に巻出すことができ、作業具シリンダ20に接続された油圧ホース60,61のシリンダ側ホース60B,61Bを、ホースリール26のドラム31,32から円滑に巻出すことができる。
【0079】
そして、解体作業機1の動作を停止させた後には、ゲートロックレバー43がロック位置に切換えられることにより、ゲートロック弁64が遮断位置(g)を保持する。この状態でエンジンを停止させることにより、溶鉱炉101の補修作業が終了する。
【0080】
かくして、実施の形態による解体作業機1は、方向制御弁49,54,58とパイロットポンプ46及びタンク45からなるパイロット油圧源との間を接続するパイロット管路50と、パイロット管路50の途中に設けられ、方向制御弁49,54,58に対するパイロット圧の給排を制御するパイロット弁装置51,55,59と、運転席40に連なるキャブ5の乗降口5Aを開放しまたは遮断するゲートロックレバー43と、パイロット油圧源とパイロット弁装置51,55,59との間に位置してパイロット管路50の途中に設けられ、ゲートロックレバー43が乗降口5Aを遮断したときにパイロット管路50を連通させるゲートロック弁64と、ゲートロック弁64よりも下流側に位置してモータ用パイロット管路62に接続され、ゲートロックレバー43が乗降口5Aを遮断したときにパイロット圧が供給されることによりホースリール26を巻取り方向に回転させる油圧モータ33とを備えている。
【0081】
この構成によれば、解体作業機1の作動時に、ゲートロックレバー43をキャブ5の乗降口5Aを遮断するロック解除位置に切換えることにより、パイロットポンプ46からのパイロット圧が油圧モータ33に供給される。これにより、ゲートロックレバー43がロック解除位置を保持している間、ホースリール26を常に巻取り方向に付勢することができる。従って、ホースリール26のドラム29,30に巻回されたブレーカ19Cの油圧ホース52,53(ブレーカ側ホース52B,53B)と、ドラム31,32に巻回された作業具シリンダ20の油圧ホース60,61(シリンダ側ホース60B,61B)に対し、常に一定のテンションを作用させることができる。
【0082】
これにより、内側アーム17が外側アーム13内へと縮小した場合には、ブレーカ19Cの油圧ホース52,53(ブレーカ側ホース52B,53B)をドラム29,30によって巻取り、作業具シリンダ20の油圧ホース60,61(シリンダ側ホース60B,61B)をドラム31,32によって巻取ることができる。この結果、ブレーカ19Cの油圧ホース52,53、作業具シリンダ20の油圧ホース60,61が、内側アーム17や外側アーム13の内部で弛みを生じるのを抑え、内側アーム17や外側アーム13の内部に設けられた構造物に接触するのを回避することができるので、その耐久性を高めることができる。
【0083】
実施の形態では、解体作業機1のアーム12は、ベース筒10の内部に回転可能に収容された筒状の外側アーム13と、外側アーム13内に長さ方向に移動可能に設けられ先端側が外側アーム13の外部に突出した内側アーム17とにより構成され、ブレーカ19C及び作業具シリンダ20は、内側アーム17の先端側に設けられている。この構成によれば、外側アーム13に対して内側アーム17を回転させることにより、例えば溶鉱炉101の上面、下面、前面、後面、左,右の側面の内壁103に設けられた全ての耐火煉瓦104にブレーカ19Cを対向させ、これら多数の耐火煉瓦104のうち熔解した耐火煉瓦104を、ブレーカ19Cによって選択的に破砕することができる。
【0084】
実施の形態では、ゲートロック弁64と油圧モータ33との間には、油圧モータ33に供給されるパイロット圧を制限する減圧弁68が設けられている。この構成によれば、ゲートロック弁64が連通位置(h)となってパイロット圧が油圧モータ33に供給された場合でも、各パイロット弁装置51,55,59の操作に応じて各方向制御弁49,54,58の油圧パイロット部49A,49B,54A,54B,58A,58Bに十分なパイロット圧を供給することができる。
【0085】
なお、実施の形態では、溶鉱炉101の内壁103に設けられた耐火煉瓦104を破砕するため、作業具19としてブレーカ19Cを用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば建築物の内部を解体するために、圧油の給排によって作動するグラップル(把持装置)、カッター(切断装置)等を作業具として用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
5 キャブ
5A 乗降口
10 ベース筒
12 アーム
13 外側アーム
17 内側アーム
19C ブレーカ(油圧アクチュエータ)
20 作業具シリンダ(油圧アクチュエータ)
26 ホースリール
33 油圧モータ
40 運転席
43 ゲートロックレバー
44 油圧ポンプ(油圧源)
45 タンク(油圧源、パイロット油圧源)
46 パイロットポンプ(パイロット油圧源)
47,48 主管路
49,54,58 方向制御弁
50 パイロット管路
51,55,59 パイロット弁装置
52,53,56,57,60,61 油圧ホース
62,63 モータ用パイロット管路(パイロット管路)
64 ゲートロック弁
68 減圧弁
図1
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