特許第6908596号(P6908596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6908596C3塩素化アルカン及びアルケン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908596
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】C3塩素化アルカン及びアルケン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/10 20060101AFI20210715BHJP
   C07C 19/01 20060101ALI20210715BHJP
   B01J 27/128 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   C07C17/10
   C07C19/01
   B01J27/128 Z
【請求項の数】30
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2018-509547(P2018-509547)
(86)(22)【出願日】2016年8月16日
(65)【公表番号】特表2018-525403(P2018-525403A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】CZ2016000091
(87)【国際公開番号】WO2017028826
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年7月24日
(31)【優先権主張番号】PV2015-558
(32)【優先日】2015年8月19日
(33)【優先権主張国】CZ
(31)【優先権主張番号】PV2015-858
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】517132706
【氏名又は名称】スポレク プロ ヘミコウ アー フツニ ブイロブ,アクツィオバ スポレチェノスト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】ズデニェク オンドルス
(72)【発明者】
【氏名】パベル クビツェク
(72)【発明者】
【氏名】ペトル スラデク
【審査官】 武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05705779(US,A)
【文献】 オーストリア国特許発明第00335987(AT,B)
【文献】 国際公開第2013/074394(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/081482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物の製造方法であって、C塩素化アルカン出発物質を塩素化領域において塩素化して該複数のC塩素化アルカン異性体を生成させる工程を含み、該複数のC塩素化アルカン異性体の各々が、該C塩素化アルカン出発物質より少なくとも1つ多い塩素原子を有し、該C塩素化アルカン出発物質の該複数のC塩素化アルカン異性体への変換率が、該塩素化領域に存在する該反応混合物中の該C塩素化アルカン異性体:該C塩素化アルカン出発物質のモル比により表され、かつ60:40を超えないように該C塩素化アルカン出発物質の濃度を制御し、
該C塩素化アルカン出発物質は、1,1,1,3−テトラクロロプロパンであり、該複数のC塩素化アルカン異性体は、第一異性体としての1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、及び、第二異性体としての1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから成り、
該第一異性体:該第二異性体のモル比が、70:30〜99:1であり、
該反応混合物に含まれる過剰に塩素化された不純物が25000ppm未満である、
複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物の製造方法。
【請求項2】
前記C塩素化アルカン出発物質の塩素化が、該出発物質を塩素と反応させることにより行われ、該塩素は、好ましくは、99.5%以上の純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩素が、前記塩素化領域へ前記C塩素化アルカン出発物質に関して不足当量的に供給される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
塩素分子が、前記塩素化領域へ前記C塩素化アルカン出発物質の15モル%〜35モル%又は45モル%の量で供給される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩素化領域へ供給される塩素が、100ppm以下の酸素含有量を有する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記C塩素化アルカン出発物質の塩素化が、UV及び/若しくは可視光への曝露下、並びに/又はルイス酸触媒の存在下で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ルイス酸触媒が、遷移金属又は硫黄のハロゲン化物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ルイス酸触媒が、鉄、アルミニウム、アンチモン、ランタン、スズ、チタン、ホウ素、若しくは黄のハロゲン化物、SClは金属トリフレートである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ルイス酸触媒が、前記反応混合物に100ppm未満の量で存在する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記塩素化領域の動作温度が、−30℃〜200℃である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記C塩素化アルカン出発物質が、20ppm未満の塩化ビニルを含み、かつ/又は塩化ビニルを使わなかった方法から調製された、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一及び第二異性体のモル比が、次の:ルイス酸触媒の使用、前記反応混合物のUV/可視光への曝露、前記塩素化領域における前記反応混合物の滞留時間及び/又は前記塩素化領域内の動作温度の1つ以上により制御される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ルイス酸触媒が、前記塩素化領域に供給されず、かつ該塩素化領域が、UV/可視光に曝される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ルイス酸触媒が前記塩素化領域へ供給され、該塩素化領域が、所望によりUV/可視光へ曝され、該ルイス酸触媒が、例えば遷移金属を該塩素化領域へ加えることにより、所望によりin situで形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記塩素化領域から抽出された前記反応混合物の塩素含有量が、0.05%以下である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物に対する1つ以上の蒸留工程をさらに含み、該1つ以上の蒸留工程が、前記塩素化領域と直通した蒸留装置を用いて行われるか、かつ/又は前記塩素化領域から離れた蒸留装置を用いて前記塩素化領域から抽出された反応混合物に対して行われる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の蒸留工程の結果として、前記複数のC塩素化アルカン異性体に富むか、又は前記複数のC塩素化アルカン異性体から成る複数のC塩素化アルカン異性体流が得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の蒸留工程の結果として、以下の流れ:
前記C塩素化アルカン出発物質に富むか、又は前記C塩素化アルカン出発物質から成る1つ以上の未反応C塩素化アルカン出発物質流;
前記複数のC塩素化アルカン異性体の1つに富むか、又は前記複数のC塩素化アルカン異性体の1つから成る1つ以上の単一異性体流;並びに
過少に塩素化された不純物、過剰に塩素化された不純物及び/若しくは前記異性体とは炭素原子数が異なる不純物に富むか、又は過少に塩素化された不純物、過剰に塩素化された不純物及び/又は前記異性体とは炭素原子数が異なる不純物から成る1つ以上の蒸留残留物流;
の1つ以上が得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
単一異性体流が蒸留により得られ、該単一異性体流が、前記第二異性体に富むか、又は前記第二異性体から成り、結果として、前記複数のC塩素化アルカン異性体中の前記第一及び第二異性体のモル比が変化し、該第二異性体の割合が減少し、該第一異性体の割合が増加する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第一異性体の割合の増加が、少なくとも5%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第一異性体の割合の増加が、少なくとも10%である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
未反応C塩素化アルカン出発物質流が、前記塩素化領域と連通した蒸留装置を用いて、直接蒸留を介して得られる、請求項16〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記複数のC塩素化アルカン異性体流及び/又は1つ以上の単一異性体流(単数又は複数)が、以下の成分:
10000ppm未満の過少に塩素化された不純物;
5000ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
5000ppm未満の塩素化アルケン化合物;
1000ppm未満の、該異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
1000ppm未満の含酸素有機不純物;
500ppm未満の金属;及び/又は
100ppm未満の水;
を含む、請求項16〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記反応混合物が、前記塩素化領域から抽出され、1つ、2つ、3つ又は4つの連続して配列された下流塩素化領域において後続の塩素化工程に供され、該下流塩素化領域のいずれかに存在する該反応混合物中の前記C塩素化アルカン異性体:前記C塩素化アルカン出発物質のモル比が、60:40を超えない、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記塩素化領域が、連続攪拌槽反応器、循環式若しくはループ反応器、及び/若しくは管型反応器内に、又は所望により直列に配列された複数の同一の若しくは異なる種類の前記反応器内に含まれる、請求項16〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記塩素化領域が前記連続攪拌槽反応器に含まれ、塩素化が、UV及び/又は可視光により促進され、前記反応混合物中の前記C塩素化アルカン異性体:前記C塩素化アルカン出発物質のモル比が、60:40を超えない、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記反応混合物中の前記C塩素化アルカン異性体:前記C塩素化アルカン出発物質のモル比が、5:95〜25:75であり、所望により、該反応混合物を蒸留装置へ連通させて該反応混合物を直接蒸留に供することができるように構成された循環式又はループ反応器に前記塩素化領域が含まれ、好ましくは、該塩素化領域の動作温度が120℃を超えない、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記塩素化領域が、流下膜管型光反応器に含まれ、かつ前記反応混合物中の前記C塩素化アルカン異性体:前記C塩素化アルカン出発物質のモル比が、60:40を超えない、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
塩素化及び/又は蒸留が、酸素の不存在下で行われる、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記塩素化領域が、連続運転である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、新世代のフッ素系化学製品の製造のための原料として、使用可能な非常に高い純度のC塩素化アルカン及びアルケン化合物の製造方法に関する。また、本発明は、そのような方法から得られる組成物、及びそれらの組成物のフッ素系化学製品の調製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロアルカンは、幅広い用途において有用性が見出されている。例えば、ハロカーボンが、冷媒、気泡構造形成剤及び発泡剤として広く使用される。20世紀後半を通じて、クロロフルオロアルカンの使用が、それらの環境への影響について、具体的にはオゾン層の減少について懸念が提起された1980年代まで、急激に増加した。
【0003】
その後に、クロロフルオロアルカンの代わりに、ペルフルオロカーボン及びヒドロフルオロカーボンなどのフッ素化炭化水素が使用されてきたが、つい最近になって、そのような化合物種の使用に関する環境的な懸念が提起され、それらの使用を減らすための法案が、EU及び他の場所において制定された。
【0004】
環境に配慮したハロカーボンの新種が生成しており、例えば、それらがオゾン枯渇/地球温暖化の可能性を低くすることについて調査され、そして既に幾つかの場合には、多数の用途において、特に自動車両及び国内生産の分野における冷媒として活用されている。そのような化合物の例としては、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233xf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233zd)、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブテン(HFO−1345zf)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブテン(HFO−1336mzz)、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンテン(HFO−1447fz)、2,4,4,4−テトラフルオロブタ−1−エン(HFO−1354mfy)及び1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロペンテン(HFO−1438mzz)等が挙げられる。当業者であれば、「HFO」がヒドロフルオロオレフィンの略語、すなわち、炭素、水素及びフッ素原子を含む不飽和化合物の略語であることを理解し得る。
【0005】
また、特に明記しない限り、ここに示される構造は、全ての構造異性体、例えば、(Z)及び(E)(又はcis若しくはtrans)二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)(又はcis若しくはtrans)配座異性体などを包含することを意味する。
【0006】
これらの化合物は、相対的に言って、化学的に複雑ではないが、それらを工業規模で要求される水準の純度まで合成することは、重要な課題である。そのような化合物のために提案された多くの合成経路では、出発物質又は中間体として、塩素化アルカン又はアルケンがますます使用されている。そのようなプロセスの例が、国際公開第2012/098420号、国際公開第2013/015068号及び米国特許出願公開第2014/171698号明細書に開示される。通常、塩素化アルカン又はアルケン出発物質のフッ素化対象化合物への変換は、フッ化水素及び所望により遷移金属触媒、例えばクロム系触媒を用いて達成される。
【0007】
所望によりフルオロアルケンを非触媒的に調製するプロセスの例が、国際公開第2013/074324号に開示される。
【0008】
塩素化アルカン/アルケン原料から出発して上記HFO化合物の幾つかを調製する当業者にとって既知のプロセスの例は、以下のとおりである:
・ 1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)→2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf);
・ 1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)→2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf);
・ 1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)→2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf);
・ 1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)→2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf);
・ 1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa)→2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf);
・ 1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa)→2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf);
・ 1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230za)→1,1,1−トリフルオロ−3−クロロ−1−プロペン(HFCO−1233zd)、1,1,1,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234ze)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)及びそれらの混合物;
・ 2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xf)→2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf);
・ 2,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xf)→2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf);
・ 2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf)→2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf);
・ 2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)→2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFCO−1233xf);
・ 2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)→2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf)。
【0009】
水素フッ素化反応中の不純物形成の問題が、知られており、特に、特定の不純物が、工業規模での連続水素フッ素化を妨げることがあり、かつ/又は最終対象HFO化合物からの除去が困難である好ましくないフッ素化化合物の形成につながることがあるという懸念である。それらの好ましくないHFO化合物は、対象HFO化合物(単数又は複数)を不純にするだけでなく、毒作用を有したり、かつ/又はその用途における、例えば気泡構造形成剤又は熱伝導流体(例えば冷媒)としての対象HFOの所望の実施を妨げたりすることもあり得る。
【0010】
HFO製造における好ましくない不純物の形成を抑制又は遅延させる試みが、先行技術において開示される。例えば、米国特許出願公開第2010/331583号明細書及び国際公開第2013/119919号には、部分フッ素化原料における純度のニーズ(並びに純度を向上させるためのアプローチ)が記述される。さらに、米国特許第8252964号明細書には、HFO化合物から不純物を除去するためのモレキュラーシーブスの使用が記述される。国際公開第2013/184865号には、除去し難い不純物を対象HFO化合物から更に分離する更なる反応の使用が言及されている。米国特許出願公開第2014/235903号明細書では、反応器の不純物の問題に取り組んでいる。
【0011】
塩素化出発物質の純度が、好ましいフッ素化生成物の製造プロセス(特に連続プロセス)の成功及び実行可能性に実質的に影響し得る。特定の不純物の存在が、結果として副反応を起こし、対象化合物の収率を最小化し得る。また、塩素化原料中の不純物は、目標HFO化合物においてフッ素化不純物へ変形するであろう。また、蒸留工程の仕様によるこれらの不純物の除去が、重要な課題であるが、非効率的である。さらに、特定の不純物の存在が、例えば触媒毒として機能することにより、触媒寿命を落とし得る。
【0012】
各種の不純物が、塩素化原料、例えば、酸素化化合物、目標化合物以外の塩素化アルカン、塩素化が不十分な化合物(すなわち、目標化合物よりも少ない塩素原子を含む化合物)、過剰に塩素化された化合物(すなわち、目標化合物より多い塩素原子を含む化合物)、対象化合物の異性体、及び/又は任意の使用触媒の残分などに、存在することがある。
【0013】
塩素化原料そのものが多段階プロセスから得られるときに、特に、工業的に許容される生成量を達成するために複数の段階が連結して連続的に行われるならば、累積された副反応に各段階で許容できない不純物を発生させないようにすることが、必要とされ、かつ非常に重要であることが分かった。これは、C塩素化化合物にとって、そのような化合物の従来の製造方法が幅広い副生成物の形成に影響されることが多いので、重要である。それ故に、一般に、そのような化合物の製造方法を、より少ない工程を伴うように合理化することが好ましい。C塩素化化合物の製造方法の効率を向上させる試みの例が、米国特許第8907147号明細書及び国際公開第2014/116562号に開示され、米国特許第8907147号明細書には、1つの反応器システムで2つの反応を組み合わせる反応性蒸留プロセスの使用が記述され、かつ国際公開第2014/116562号には、アンチモン系触媒を用いる250fbの塩素化による240dbの直接生成が記述される。
【0014】
それ故に、上記フッ素化化合物の合成の使用にとって、制御された許容可能な不純物プロファイルを有するC塩素化アルカン及びアルケンに関するニーズがある。精製された塩素化化合物の幾つかの製造方法が、本技術分野で提案された。
【0015】
例えば、国際公開第2013/086262号には、メチルアセチレンガスから1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンを生成する方法が開示される。その出願の実施例から分かるとおり、そこに開示された実験室規模の合成は、合成後の精製プロセスに、具体的には蒸留に供されるにもかかわらず、結果として、約98.5%の純度を有する生成になる。
【0016】
国際公開第2014/130445号には、そのパンフレットの第2頁に従来のプロセスが開示され、その第一工程は、1,1,3−トリクロロプロペンからの1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの形成を伴う。しかし、その中間体生成物の純度プロファイルが、述べられず、その生成物の純度プロファイルに関する重要性もない。国際公開第2014/130445号の実施例2には、96.5〜98.5%の純度を有する240db(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)に富んだ材料が使用される。
【0017】
国際公開第2013/055894号には、テトラクロロプロペン、特に1,1,2,3−テトラクロロプロペンの製造方法が開示され、そこに開示された方法から得られる生成物は、フッ化炭素を生成する下流のプロセスにおいて問題となることがある不純物の濃度が有利に低いことが報告されている。国際公開第2013/055894号の著者らにより問題点として考えられた異なる種類の不純物の検討が、その段落[0016]及び[0017]において行われている。
【0018】
米国特許出願公開第2012/157723号明細書には、3段階プロセスを介した塩素化アルカンの製造方法が開示される。そこに開示された方法に従って、見たところ高い純度のクロロアルカンが調製されたようである。しかし、プロセス効率については取り組まれず、その出願の実施例に存在する純度データは、小数第1位へと四捨五入されたものにすぎない。
【0019】
このようにして提案されたデータ提供から、米国特許出願公開第2012/157723号明細書の実施例において得られた生成物の不純物プロファイルを測定するために使用された分析機器は、検出限界が浅いことが明らかである。従来の分析装置は、炭化水素濃度を1ppmまで(すなわち少数第4位へ)決定させるものである。当業者は、工業規模で使用されるクロロアルカン原料の不純物プロファイルをppm濃度より下まで知らなければならないであろうということに基づくと、米国特許出願公開第2012/157723号明細書に提案されたデータは、役立ち難いであろう。
【0020】
これらの進歩にもかかわらず、上述の方法から得られる塩素化化合物の使用を通じて、未だに課題があり得る。特に不純物の存在、特に(例えば、類似の又はより高い沸点の結果として)対象化合物からの分離が容易ではない不純物の存在が、貯蔵、輸送、及び/若しくは水素フッ素化などの下流プロセスにおける使用中に副生成物の形成につながり、かつ/又は下流プロセスに使用される触媒の有効若しくは実働寿命を減らすので、問題となることがある。
【0021】
国際公開第2016/058566号、国際公開第2016/058567号及び国際公開第2016/058568号(それらの内容は、参照によりここに援用される)には、著しく高い純度を有するC3−6塩素化アルカン及びアルケンを含む組成物を、高収率で、副生成物への損失を最小限にして製造する方法が記述される。
【発明の概要】
【0022】
著しく高い純度の塩素化アルカン及びアルケン化合物、並びにそのような化合物の効率的かつ選択的かつ信頼性の高い製造方法、特に連続的な工業的製造を可能する製造方法が、依然として求められている。
【0023】
また、下流プロセスでの問題が知られているか、又は予想されている不純物の濃度が、著しく低いか、又は理想的には全く含まれない連続モードを含む、著しく高純度の塩素化アルカン及びアルケン化合物の更なる製造方法が、依然として求められている。
【0024】
したがって、本発明の第一態様によれば、塩素化領域でC塩素化アルカン出発物質を塩素化して、複数のC塩素化アルカン異性体を生成させる工程を含む、複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物の製造方法であって、前記複数のC塩素化アルカン異性体は、それぞれ、前記C塩素化アルカン出発物質より少なくとも1つ多い塩素原子を有し、かつ前記C塩素化アルカンの前記複数のC塩素化アルカン異性体への変換率が、前記塩素化領域に存在する前記反応混合物中の前記C塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比として表され、約40:60を超えないように、前記C塩素化アルカン出発物質の濃度が制御される製造方法が提供される。
【0025】
本発明のこの態様の方法は、有利には、好ましくは(出発物質及び触媒を含まずに)約98質量%以上、約98.5%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、又は約99.9質量%以上の純度(すなわち、複数のC塩素化アルカン異性体の濃度)を有する複数の対象C塩素化アルカン異性体を含む反応混合物の生成を可能にする。
【0026】
誤解を避ける為に、(複数のC塩素化アルカン異性体を含む)組成物又は材料の純度が、割合(%)又はppmにより表される場合には、特に明記しない限り、これは、質量割合(%)/質量ppmである。
【0027】
問題のある副生成物/不純物の形成を最小化して、上記の方法を連続モードで行うときでさえも、高品質の生成物の製造を可能にするためには、C3塩素化アルカン出発物質の塩素化を、その出発物質:複数の異性体のモル比が約40:60を超えないように制御することが必須であることが、発明者らにより見出された。
【0028】
先行技術の多くの方法の着眼点は、特にC3塩素化アルカン異性体が従来技術を用いても典型的には分離し難いという前提において、単一異性体を含む組成物を高純度で製造することである。しかし、そのような化合物の異性体の高純度混合物は、水素フッ素化、デヒドロ塩素化及び/又は異性化プロセスなどの下流プロセスにおいて実行可能に利用されることができ、有利には、本発明の方法は、高純度の化合物を製造するために、連続的及び効率的に、かつ合理化された態様で実行可能であることが、発明者らにより見出された。
【0029】
例えば、複数の塩素化アルカン異性体は、1234yf、1234zeE及び/又は1233zdEなどの冷媒又は気泡構造形成剤成分の調製において原料として、実行可能に利用されることができる。これらの成分を高水準の純度で含む冷媒/気泡構造形成剤組成物は、工業的に価値があり、したがって、そのような化合物の製造用原料として使用可能な高純度な塩素化化合物を確実かつ効率的に提供するのに使用することができる方法が、有意に注目されている。本発明のこの態様の方法は、単一製造ラインから2つ以上の重要な原料を製造するために採用されることができる。
【0030】
追加的に又は代替的に、本発明の方法は、工業的に価値のある高純度C塩素化化合物、例えば、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230za)、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)、1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa)、1,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230zd)、及びそれらの混合物、例えば米国特許出願公開第2014/0221704号明細書に開示されるもの等を効率的に製造するために使用されることができる。
【0031】
本発明の方法から得られるであろう塩素化アルカン材料の1つの重要な利点は、本発明でなければ経時的な分解を触媒的に促進したり、貯蔵/輸送容器と相互作用して他の触媒を製造したりすることがある不純物が、全く存在しないか、又は許容できるほど低濃度でしか存在しないので、塩素化アルカン材料の高純度が、それらを安全かつ容易に取り扱うことを可能にする。したがって、それらの塩素化材料は輸送が、より容易であり、国際公開第2014/120865号に開示されるような専門的な対策を要しない。
【0032】
また、異性体C塩素化アルカン化合物の使用は、製造を単純化するので、有利である。より具体的には、そのような組成物の使用が、一般的な上流出発物質を用いて(後述されるように)多数の原料を製造可能にする。一例として、仮に当業者が、工業的に価値のある塩素化アルケン、1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230za)及び1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa)の生成を望むのであれば、これらの化合物を1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)から製造する方法に気付くべきであった。しかし、通常は、HCC−240faは、塩化ビニル及び四塩化炭素から製造され、HCC−240dbは、エチレン、四塩化炭素及び塩素から製造される。本発明者らは、多数の塩素化アルケンを単一C塩素化アルカン出発物質から実行可能かつ確実に製造することができるということを確認し、それらの塩素化アルケンの製造全体を単純化し、出発物質及び製造ラインの数を減らし、かつ(毒性が高く、不安定であり、貯蔵/輸送に課題のあることが知られている)塩化ビニルのような潜在的に好ましくない化合物の使用を回避させる。むしろ本発明は、所望の塩素化アルケンを得る為に、基本的な出発物質(例えば、エチレン及び塩素)の工業規模での使用を可能にする。
【0033】
本発明の有利な方法の結果として、本発明のこの態様の方法で製造される複数のC塩素化アルカン異性体は、高純度を有する。これは、それらの化合物自体を下流反応において、お互いからの分離の有無を問わず使用して、所望の不純物プロファイルから恩恵を受けた化合物を製造することができ、下流精製工程の必要を最小限にすることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、C塩素化アルカン出発物質の塩素化を達成するために本発明の方法に採用されることができる配列の模式図である。
図2図2は、複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物から有用な生成物流を蒸留するために本発明の方法に利用されることができる配列の模式図である。
図3図3は、複数のC塩素化アルカン異性体に存在する1つの異性体を選択的にデヒドロ塩素化するために本発明の方法に利用されることができる配列の模式図である。
図4図4は、複数のC塩素化アルカン異性体に存在する1つの異性体を選択的にデヒドロ塩素化するために本発明の方法に利用されることができる配列の模式図である。
図5図5は、C塩素化アルケン含有混合物を水性処理に供してよい本発明の方法に利用されることができる配列の模式図である。
図6図6は、C塩素化アルケン含有混合物から有用な生成物流を蒸留するために本発明の方法に利用されることができる配列の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
明確にするために、用語「複数のC塩素化アルカン異性体」及びその類似語は、本明細書で使用されるときには、複数のC 塩素化アルカン異性体が任意の量で存在する任意の混合物を意味するような広い意味で解釈されるものではない。
【0036】
当業者であれば、例えば2つの異性体(それらの異性体の一方が微量に存在するにすぎない)を含む混合物が、本発明のための「複数」を包含しないことを考慮し得る。したがって、用語「複数のC塩素化アルカン異性体」、又はその均等語は、本明細書で使用されるときには、少なくとも2つのC塩素化アルカン異性体(それぞれ同数の塩素及び水素原子を有し、それらの異性体の全混合物の1質量%以上の量でそれぞれ存在する)を含むC塩素化アルカン異性体のグループを意味する。さらに、誤解を避ける為に、異性体の全量の1質量%未満の量で混合物に存在する任意の異性体は、その「複数」の成分異性体としては考慮されず、不純物(「異性体不純物」)として考慮される。本発明の好ましい実施形態では、塩素化領域で生成する反応混合物中の異性体不純物(単数又は複数)の含有量は、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満である。
【0037】
同様に、反応混合物は、好ましくは、塩素化が不十分な不純物(すなわち、複数の異性体よりも1つ以上少ない塩素原子を有し、C出発物質を含まない(単数又は複数の)C化合物)を少量、例えば、約25000ppm未満、約20000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満で含む。
【0038】
さらに、反応混合物は、好ましくは、過剰に塩素化された不純物(すなわち、複数のアルカン異性体より1つ以上多い追加の塩素原子を有する(単数又は複数の)C化合物)を少量、例えば、約50000ppm未満、約30000ppm未満、約25000ppm未満、約20000ppm未満、約15000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満又は約1000ppm未満で含む。
【0039】
さらに、反応混合物は、好ましくは、上記異性体とは異なる数の炭素原子を有する化合物を少量、例えば、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満で含む。
【0040】
追加的に又は代替的に、反応混合物は、塩素化アルケン化合物を少量、例えば、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満で含んでよい。
【0041】
本発明の実施形態では、複数のC塩素化アルカン異性体は、任意の数の成分異性体(すなわち、複数の異性体の合計質量に対して1質量%以上の量で存在する異性体)を含んでよい。例えば、複数のC 塩素化アルカン異性体は、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上の成分異性体を含んでよい。本発明の実施形態では、複数のC塩素化アルカン異性体は、2つの異性体(第一異性体及び第二異性体)を含む。
【0042】
本発明の実施形態では、複数の異性体は、典型的には、均衡比では存在しない(すなわち、各異性体の濃度が、或る異性体が更に多量に存在する状態で、変わり得る)個別の異性体で形成される。したがって、複数のC塩素化アルカン異性体が、2つの異性体を含む実施形態では、一方が他方より多い量で存在するであろう。そのような実施形態では、異性体比(例えば、塩素化領域で生成した第一異性体:第二異性体又は第二異性体:第一異性体のモル比)が、約60:40、約65:35又は約70:30から約90:10、約95:5又は約98:2までの範囲内でよい。本明細書で議論されるとおり、本発明の方法は、例えば、触媒作用の方法及び/又は使用反応器の種類を変えることにより、異性体比の制御を許可する。したがって、より均衡した異性体比が好ましい別の実施形態では、これが、本発明の方法を用いて達成されることができる。そのような実施形態では、塩素化領域で生成した第一異性体:第二異性体又は第二異性体:第一異性体のモル比が、約40:60から約60:40までの範囲内でよい。
【0043】
上記複数で存在する成分異性体は、それぞれ同数の炭素、塩素及び水素原子を含み得る。それらの構造的類似性によって、多くの場合には、上記複数で存在する成分異性体の間の沸点の変動が比較的制限され得るとしても、それらの沸点は、変化してよい。例えば、本発明の実施形態では、上記複数で存在する少なくとも2つの成分異性体の沸点は、≦約20℃まで、≦約15℃まで、≦約10℃まで、又は≦約5℃まで変わり得る。本発明の追加的な又は代替的な実施形態では、上記複数で存在する成分異性体の全てのうちで最高沸点を有する成分異性体の沸点は、上記複数で存在する成分異性体の全てのうちで最低沸点を有する成分異性体の沸点よりも、≦約20℃、≦約15℃、≦約10℃又は≦約5℃の範囲内で高いであろう。
【0044】
本発明の実施形態では、上記複数のC塩素化アルカン異性体の1つ、幾つか又は全てが、その分子の末端炭素原子に3つの塩素原子を含む。
【0045】
本発明の方法によって製造又は利用してよい複数のC 塩素化異性体の例としては、i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン、並びにiii)1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパン等が挙げられる。本段落で述べられる異性体対において、最初に列挙された異性体は、第一異性体又は第二異性体でよく、二番目に列挙された異性体は、もう一方の第一異性体又は第二異性体でよい。
【0046】
有利には、本発明の方法では、これらの複数の塩素化アルカン異性体の調製は、高選択性である。過剰に塩素化された又は過少に塩素化されたアルカン不純物の形成は、例えば、対象異性体以外のペンタクロロプロパン異性体の形成は、最小限である。
【0047】
本発明の方法では、例えば、グループi)が、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素化することにより、調製されることができる。グループii)が、1,2,3−トリクロロプロパン、1,2,2,3−テトラクロロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロプロパン、又は1,1,2,3−テトラクロロプロパンと1,2,2,3−テトラクロロプロパンの混合物を塩素化することにより、調製されることができる。グループiii)が、1,2−ジクロロプロパン又は1,1,2,2−テトラクロロプロパン及び1,2,2,3−テトラクロロプロパンを塩素化することにより、調製されることができる。これらの化合物又はこれらの混合物のいずれかを、本発明の方法における出発物質として採用してよい。
【0048】
本発明の方法の更なる利点は、下流プロセスで問題となり得る不純物形成が制限されるか、又は理想的に抑制されるということである。例えば、反応混合物に存在する化合物の連続塩素化から起きる不純物形成は、塩素化領域で混合物に存在するC塩素化アルカン出発物質の濃度を制御することにより抑制される。
【0049】
したがって、例えば、本発明のこの態様の方法に採用された塩素化工程で形成された反応混合物に存在する塩素化アルカン異性体が、塩素化アルカン出発物質より1つ多い塩素原子を含む場合には、出発物質より2つ以上多い塩素原子を含む化合物の生成が、抑えられる。
【0050】
そのような実施形態では、塩素化領域に存在する反応混合物は、C塩素化アルカン出発物質よりも塩素原子が2つ以上多い化合物を、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.02%未満、又は約0.01%未満で含んでよい。
【0051】
発明者らは、特定の操作条件下、塩素化領域に存在する反応混合物中のC 塩素化出発物質の塩素化により得られるC塩素化アルカン出発物質:C 塩素化アルカン異性体のモル比を、40:60を超えないように、すなわち、C塩素化アルカン出発物質の複数の異性体への変換率が60%に制限されるように維持することは、高反応性材料の形成につながりかねない出発物質の連続塩素化を抑制することにおいて重要な役割を担うことを見出した。誤解を避ける為に、本願では、出発物質:生成物のモル比を、それが特定の水準を超えないように制御又は制限することに言及する場合には、これは、出発物質の特定生成物への変換率が、所定の比率で特定された水準へ制限されることを意味する。
【0052】
本発明の実施形態では、塩素化領域に存在する/それから抽出される反応混合物中のC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比が、約99:1、約97:3、約95:5〜約90:10、約85:15、約80:20又は約75:25の範囲内で維持されることができる。代替的に、塩素化領域に存在する/それから抽出される反応混合物中のC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比は、約90:10、約80:20、又は約70:30〜約65:35、約60:40又は約55:45の範囲内で維持されることができる。別の実施形態では、その比は、約90:10、約80:20、約70:30〜約60:40、約50:50〜約40:60でよい。例8では、出発物質の対象異性体への変換度の不純物形成における影響が確認される。
【0053】
当業者が察するとおり、塩素化プロセス全体に亘る制御が、出発物質と異性体生成物のモル比に関連して本明細書では特徴付けられ、また、それは、出発物質の生成物への変換全体に亘る制御としても見なされ、したがって、75:25の出発物質:異性体生成物のモル比は、25%の変換率と同一視される。発明者らは、上述の出発物質の変換率の制限が、好ましくない不純物の形成を最小化することを見出した。
【0054】
塩素化領域に存在する反応混合物の組成を決定するために、任意の技術又は機器が当業者により使用されることができる。例えば、反応混合物の直接決定は、例えば、反応混合物サンプルを分析のために抽出できるポートを塩素化領域に提供することにより行われることができる。追加的に又は代替的に、反応混合物は、塩素化から抽出されて、更なる処理工程へ供される。そのような実施形態では、反応混合物サンプルは、塩素化領域からの反応混合物の抽出時に、例えば、塩素化領域の出口に又はその付近に配置されたポートを介して、取り出されることができる。追加的に又は代替的に、組成の間接決定が、例えば、温度が定圧では組成の関数であるため、温度制御により行われることができる。組成決定は、反応混合物を塩素化領域から抽出するポイントで、又は反応領域の反応混合物からC塩素化アルカン異性体を直接抽出する実施形態では抽出が起こるポイントで、行われるべきである。
【0055】
出発物質の連続塩素化の課題は、本発明の方法により解決される。より具体的には、国際公開第98/05614号には、複数のC塩素化アルカン異性体の混合物、具体的には1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの形成が開示される。しかし、本発明者らは、国際公開第98/05614号の実施例を再生し、そこに開示される方法は、必然的にヘキサクロロプロパン類、特に1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパンを形成する結果になることを見出した。この連続塩素化生成物は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(240db)と沸点が非常に近く、課題の対象となるペンタクロロプロパンからの分離を行うことになる。さらに、それは、金属の存在下で著しく不安定であり、したがって、蒸留など下流の処理工程中、及び/又は高温で、さらなる分解生成物(例えば1,1,3,3,3−ペンタクロロプロペン)を生成する。
【0056】
本発明者らは、塩素化領域においてC塩素化アルカン原料(例えば、1,1,1,3−テトラクロロプロパン)と生成ペンタクロロプロパン異性体のモル比を40:60へ制限することにより、不安定な1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパンなどの過剰に塩素化された副生成物の形成が最小化されることを見出した。
【0057】
例えば、i)塩素化領域からC塩素化アルカン異性体を取り出すことにより(反応混合物の抽出により、及び/又は例えば直接蒸留を介して、C塩素化アルカンに富む流れを抽出することにより);ii)塩素化領域の反応条件(例えば、温度、露光、触媒濃度及び/又は圧力)を制御することにより;及び/又はiii)塩素化領域に存在する塩素化アルカン出発物質及び/又は塩素の量を制御することにより;反応混合物中の塩素化アルカン出発物質の濃度は、制御されることができる。
【0058】
この列挙は網羅的ではなく、反応速度を制御するために任意の方法又は技術を利用することができ、過剰に塩素化された不純物の形成及び/又は更に高級な付加化合物への連続付加を避けることができる。
【0059】
本発明の実施形態では、反応混合物は、塩素化領域から抽出され、かつ/又は直接蒸留に供される(すなわち、蒸留装置は、塩素化領域と直通する)ことができる。そのような実施形態では、出発物質の複数の異性体への変換全体に亘る制御によって、塩素化領域され、かつ/又は直接蒸留に供される反応混合物は、上述のC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比を有し、すなわち、40:60を超えないか、又は特定の実施形態では、繰り返しになるが、上述のとおり、より狭い範囲でよいモル比を有する。
【0060】
塩素化領域の撹拌又はスターラーによる攪拌の速度が、塩素化プロセスを遅らせるために、追加的に又は代替的に減らされることがある。
【0061】
塩素化領域に存在する塩素量の制御により、塩素化アルカン出発物質の対象の塩素化アルカン異性体への変換度を制御(すなわち制限)する本発明の実施形態では、塩素化領域から抽出される反応混合物中の塩素含有率が、著しく低くてよく、例えば約1%以下、約0.5%以下、約0.1%以下、約0.05%以下又は約0.01%以下でよい。
【0062】
追加的に又は代替的に、出発物質の対象異性体への変換度を制御するために、塩素化領域中へ提供される塩素分子の量は、C塩素化アルカン出発物質と比べて、不足当量的でよい。例えば、塩素化領域中へ提供される塩素分子の量は、塩素化領域中へ提供されるC塩素化アルカン出発物質のモルの約5%、約10%、約15%又は約20%〜約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約60%、又は約70%でよい。
【0063】
本発明のこの態様の実施形態では、出発物質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの塩素原子を含むC塩素化アルカンである。本発明のこの態様の方法に採用された塩素化工程では、C塩素化アルカン出発物質は、出発物質と同数の炭素原子及び出発物質より1つ、2つ、又は3つ以上多い塩素原子を有する複数の異性体へ変換されることができる。
【0064】
塩素化アルカン出発物質は、好ましくは、高純度を有する。例えば、出発物質は、約98%以上、約98.5%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.9%以上の純度を有してよい。そのような組成物の製造方法及びそのように規定された不純物を有する組成物が、国際公開第2016/058566号に開示され、その内容は、参照によりここに援用される。
【0065】
本発明のこの態様の方法に採用されたC塩素化アルカン出発物質は、任意の合成経路から得られることができるが、一般には、その出発物質を、塩素化アルケン(例えば、塩化ビニル)を出発原料として採用する経路から得ないことが好ましい。これは、C3塩素化アルカン出発物質は、残量の塩素化アルケン(例えば、塩化ビニル)を含むことがあり得るが、塩素化アルケン(例えば、塩化ビニル)は、毒性であり、かつ重合して、下流プロセスで反応器を詰まらせることがあるポリマー(例えば、ポリビニルクロリド)を形成することがあるため、問題となるからである。また、塩化ビニルモノマーは、貯蔵/輸送が課題であり、安全性の問題を抱え、したがって、そのようなモノマーを含む出発物質の使用を回避することが好ましい。
【0066】
したがって、本発明のこの態様の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質は、塩素化アルケンを含まない(例えば、塩化ビニルを含まない)プロセス(すなわち、塩化ビニルなどの塩素化アルケンを反応物質として利用しないプロセス)、及び/又は約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満又は約2ppm未満の塩素化アルケン(例えば、塩化ビニル)を含むプロセスから、得られる。
【0067】
そのような出発物質の製造方法の例が、国際公開第2016/058566号に開示され、その内容は参照によりここに援用される。その国際出願に提供された方法は、高純度C塩素化アルカンの製造を可能にする。そのような原料は、そのような方法に従って製造されたか否かを問わず、本発明の方法に出発物質として利用されることができ、次の成分を含んでよい。
【0068】
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満又は約100ppm未満又は50ppm未満の塩素化アルカン不純物(すなわち、塩素化Cアルカン出発物質以外の塩素化アルカン化合物)、例えば、クロロブタン;
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満又は約100ppm未満、又は約50ppm未満、10ppm未満の塩素化アルケン化合物、例えば、パークロロエチレン;
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満又は約100ppm未満又は約50ppm未満、10ppm未満の含酸素有機化合物;
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満又は約100ppm未満の、臭素化化合物;
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満 又は約20ppm未満の水;
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満又は約20ppm未満の 金属触媒;及び/又は
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満又は約20ppm未満の助触媒。
【0069】
有利には、本発明の実施形態では、1つの三塩素化末端炭素原子を有するC3塩素化アルカン出発物質の使用によって、形成される塩素化アルカン異性体の数を最小化する。したがって、本発明の実施形態では、C3塩素化アルカン出発物質は、三塩素化末端炭素原子を有する化合物である。
【0070】
本発明の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質は、1,1,1,3−テトラクロロプロパン(本発明の実施形態では、四塩化炭素及びエチレンから取得可能である)、1,1,2,3−テトラクロロプロパンと1,2,2,3−テトラクロロプロパンの混合物(3−クロロプロペン由来の1,2,3−トリクロロプロパンから取得可能である)、1,1,2,3−テトラクロロプロパン(1,3−ジクロロプロペンから取得可能である)、1,1,2,2−テトラクロロプロパンと1,2,2,3−テトラクロロプロパンの混合物(2−クロロプロペン由来の1,2,2−トリクロロプロパンから又は1,2−ジクロル(dichlor)プロパンから取得可能である)でよい。1,1,1,3−テトラクロロプロパンがC塩素化アルカン出発物質として利用される実施形態では、その物質は、好ましくは、特定の量の過塩素化エチレン、塩素化ブチル化合物、鉄残留物を、上述の制限の範囲内で含む。
【0071】
本発明のこの態様の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質の塩素化が、出発物質を塩素と反応させることにより行われることができる。例えば、これは、塩素化領域において塩素とC塩素化アルカン出発物質を接触させることにより、例えば、当業者に知られた任意の技術又は機器を用いて、例えば分散装置を介して、例えば単数又は複数の管(例えば、単数又は複数の浸漬管)、単数又は複数のノズル、多孔質プレート、放射器、静的混合装置、及び/又は単数又は複数のスパージャーなどを介して、それらの反応物質をその領域中へ供給することにより、達成されることができる。そのような実施形態では、塩素及び/又はC塩素化アルカン出発物質の供給は、連続的又は断続的でよい。反応混合物の存在する塩素化領域中への供給物として供給される塩素は、液体及び/又は気体状態でよい。同様に、C塩素化アルカン出発物質は、液体及び/又は気体状態でよい。塩素化領域には1つ以上の塩素供給物を供給してよい。追加の積極的な攪拌を使用して、液体反応混合物中への塩素の良好な混合及び/又は溶解を確実にしてよい。
【0072】
塩素化領域の反応混合物が液体である場合には、塩素をガスとして塩素化領域のヘッドスペース中へ供給してよい。追加的に又は代替的に、塩素は、塩素化領域の上流で、反応混合物、溶媒、プロセス中間体、及び/又はC出発物質の供給流中へ供給されて、そこに溶解又は同伴することができる。
【0073】
本発明の実施形態では、塩素化領域で行われる反応は、液相においてであり、すなわち、そこに存在する反応混合物は、大部分が又は完全に液体である。反応混合物は、当業者に知られた任意の技術、例えば、クロマトグラフィーを用いて分析されることができる。
【0074】
本発明の方法に出発物質として使用される塩素は、好ましくは高純度である。本発明の実施形態では、塩素は、好ましくは、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%の純度を有する。
【0075】
追加的に又は代替的に、本発明の方法に使用される塩素は、臭素又は臭化物を、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、又は約10ppm以下の量で含んでよい。
【0076】
少量(例えば、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、又は約10ppm以下)の酸素を含む塩素ガスの使用も予想される。しかし、本発明の実施形態では、本発明の方法の最終生成物が許容できないほどに高い濃度の酸素化不純物を含むことなく、より低品質の塩素(より高い濃度の酸素、例えば1000ppm以上の酸素を含む)を利用できる。
【0077】
本発明の実施形態では、塩素化領域内の塩素含有率を制御し、これにより、副生成物の形成を最小化することが見出された。そのような実施形態では、塩素化領域は、その領域内に及び/又は反応器出口に塩素濃度を検出する監視手段を備えることが好ましい。
【0078】
本発明の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質の塩素化を触媒的に促進してよい。例えば、塩素化は、UV及び/又は可視光への曝露下で行われる(「光塩素化」される)ことができる。例えば、これは、塩素化領域にUV及び/又は可視光源を包含させることにより、例えば塩素化領域内の光導入用ガラス管により、達成されることができる。追加的に又は代替的に、反応器壁を透明にして、UV及び/又は可視光を反応器内の塩素化領域中へ通過させてよい。一実施形態では、反応が低温で行われるときに、反応混合物の露光(例えば紫外光)が反応を促進する。
【0079】
光塩素化を行う実施形態では、塩素化領域中への光束、光力及び波長が、好ましくは制御される。
【0080】
追加的に又は代替的に、C塩素化アルカン出発物質の塩素化は、金属及び/又はハイブリッド金属触媒などのルイス酸型触媒により触媒的に促進されることができる。そのような触媒の例としては、遷移金属、例えば、鉄、アルミニウム、アンチモン、ランタン、スズ、チタン等、又はホウ素、又は硫黄若しくはヨウ素等の元素の1つ以上のハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、フッ化物又はヨウ化物)等が挙げられる。利用可能な触媒の具体例としては、FeCl、AlCl、SbCl、SnCl、TiCl、BF、SOCl及び/又は金属トリフレート等が挙げられる。塩化第二鉄も、反応混合物中への鉄触媒前駆体(例えば固体鉄)の直接的又は間接的添加の手段により、その場(in situ)で調製可能である。
【0081】
そのような触媒は、使用される場合には、反応の効果的な触媒作用であるならば、任意の量で利用されることができる。しかし、本発明の実施形態では、比較的少量の触媒を使用してよく、例えば、1000ppm未満、750ppm未満、500ppm未満、400ppm未満、300ppm未満、200ppm未満、150ppm未満又は100ppm未満、さらには約2ppm超、約5ppm超、約7ppm超、又は約10ppm超の触媒でよい。
【0082】
発明者らは、塩素化中の触媒作用の種類が、生成されるCクロロアルカン異性体の比率に影響することを予想外に見出した。一般的に言えば、ルイス酸触媒などの他の触媒の不存在下で光塩素化を使用する場合には、これは、第一塩素化アルカン異性体を形成する傾向にあるのに対して、もしもルイス酸触媒をUV/可視光と併用するならば、これは、第二塩素化アルカン異性体を形成する傾向にある。したがって、本発明の実施形態では、第二異性体に対する第一異性体の約60%、約70%又は約75%の選択性の傾向を達成するために、UV及び/又は可視光のみを用いて、塩素化反応を触媒的に活性化させる(又は促進させる)。別の実施形態では、第一異性体に対する第二異性体の約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%の選択性の傾向を達成するために、ルイス酸とUV及び/又は可視光を併用して、塩素化反応を触媒的に活性化させる。
【0083】
したがって、本発明の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質の塩素化は、i)UV/可視光への曝露及びii)ルイス酸により促進される/触媒的に活性化される。そのような実施形態では、本方法は、i)UV/可視光の露光期間及び/又は露光範囲、波長、光束及び/又は出力、及び/又はii)反応混合物中のルイス酸の濃度を制御する工程を追加的に含む。
【0084】
そのような系の一例として、発明者らは、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンのモル比を(UV露光のみを用いるときに) 80:20から、(UVとルイス酸を含む促進された/触媒的に活性化された塩素化の組み合わせを用いるときに)70:30、60:40、50:50、40:60を通じて、2:98まで首尾よく制御した。この手法は、対象ではないペンタクロロパン異性体が形成されないように、所定の比率で、また選択的に塩素化アルカン異性体の生成を可能にする。
【0085】
後述の実施例で実証されるとおり、本発明の方法において形成される異性体のモル比に影響する他の反応条件が、塩素化領域での反応混合物の滞留時間並びに塩素化領域内の動作温度を追加的に含む。
【0086】
したがって、本発明の実施形態では、塩素化領域での反応混合物の平均滞留時間は、約60分以下、約45分以下、約30分以下、約20分以下、約15分以下又は約10分以下でよい。代替的に、塩素化領域での反応混合物の平均滞留時間は、約60分以上、約75分以上、約90分以上、又は約120分以上でよい。本発明の実施形態では、塩素化領域での反応混合物の平均滞留時間は、約10分〜約40分、約40分〜約80分、又は約80分以上でよい。
【0087】
追加的に又は代替的に、塩素化領域の動作温度は、約60℃以下、約45℃以下、約30℃以下、約20℃以下、約15℃以下又は約10℃以下でよい。代替的に、塩素化領域の動作温度は、約60℃以上、約75℃以上、約90℃以上、又は約120℃以上でよい。本発明の実施形態では、塩素化領域の動作温度は、約10℃〜約40℃、約40℃〜約80℃、80℃以上でよい。
【0088】
本発明の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質の塩素化が結果として第一及び第二C塩素化アルカン異性体の形成になる場合には、それらの異性体は、約95:5、約90:10、約80:20、約70:30、約60:40、約50:50、約40:60、約30:70、約20:80、約10:90、又は約5:95から、約5:95、約10:90、約20:80、約30:70、約40:60、約50:50、約60:40、約70:30、約80:20、約90:10又は約95:5までのモル比で存在してよい。
【0089】
塩素化は、出発物質の対象の塩素化アルカン異性体への変換を可能にする任意の温度で行われることができる。最適温度は、採用される特定の塩素化アルカン出発物質、及び/又は必要とされる塩素化度(例えば、出発物質へ付加される塩素原子の数)に応じて決まり得る。
【0090】
本発明の実施形態では、比較的穏やかな反応条件が、反応の進行の制御を可能にし、塩素化反応を許容可能な速度で進行させ、かつ過剰に塩素化された不純物などの好ましくない不純物の生成を最小化することが見出された。例えば、約−30℃、約−20℃、約−10℃、約0℃又は約20℃から約40℃、約60℃、約80℃、約100℃、約120℃、約150℃、約170℃又は約200℃までの範囲内の動作温度が、塩素化領域内で採用されることがきる。
【0091】
反応器の種類、複数の異性体の予定されるモル比、出発物質及び/又は使用触媒の種類に応じて、本発明の方法における塩素化工程は、低温度範囲(例えば、約−30℃、約−20℃、約−10℃から約10℃、約20℃又は約30℃まで)、中間温度範囲(例えば、約−30℃、約−20℃、約−10℃、約0℃、約10℃、約20℃又は約30℃から約50℃、約70℃又は約100℃まで)、又は高温度範囲(例えば、約50℃、約70℃、約90℃又は約110℃から約150℃、約170℃又は約200℃まで)で行われることができる。
【0092】
純粋に例示として、発明者らは、UV及び/又は可視光のみにより触媒的に活性化された塩素化反応は、上述の低温度範囲で行われることができるのに対して、ルイス酸触媒のみにより触媒的に活性化された塩素化反応は、上述の高温度範囲で行われることができるということを見出した。本発明の塩素化反応がUV及び/又は可視光 とルイス酸により触媒的に活性化される代替的な場合には、中間温度範囲を利用してよい。
【0093】
発明者らは、そのような温度で、例えば、連続モードにおいて、塩素化反応を実行することにより、良好な反応効率と好ましくない不純物の形成の減少とのバランスを有利に取れることを見出した。
【0094】
塩素化領域を大気圧未満、大気圧、又は大気圧超で動作させてよい。
【0095】
塩素化アルカン異性体を含む反応混合物を生成するC塩素化アルカン出発物質の塩素化を達成可能な塩素化領域を提供できる任意の種類の反応器が、本発明の方法に利用されることができる。塩素化領域を提供するために本発明の方法に使用してよい反応器の具体例は、カラム反応器(例えば、カラム気体−液体反応器)、管型反応器、バブルカラム反応器、プラグ/フロー反応器(例えば、管型プラグ/フロー反応器)及び攪拌槽反応器(例えば、連続攪拌槽反応器)及び光反応器(例えば、流下膜光反応器)である。
【0096】
本発明の方法は、単一塩素化領域又は複数の塩素化領域において行われることができる。複数の塩素化領域(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、又は6以上の塩素化領域)を利用する場合には、これらを順次に(すなわち、反応混合物が、複数の塩素化領域に沿って通過するように)及び/又は平行に作動させてよい。本発明の一実施形態では、出発物質の塩素化は、順次に動作する一連の連続的攪拌槽反応器において達成される。
【0097】
塩素化アルカン出発物質の光塩素化を行う実施形態では、反応器は、好ましくは、UV及び/又は可視光源、及び/又は光が塩素化領域中を通過できるポートを備える。固体(例えば、粒子)触媒(例えば、ルイス酸触媒)又は液体触媒を利用する場合には、これを塩素化領域中に直接供給してよい。追加的に又は代替的に、塩素化領域の上流で、これをC塩素化アルカン出発物質に溶解又は分散させてよい。
【0098】
当業者は、異なる種類の反応器を使用する場合には、操作条件及び/又はC塩素化アルカン出発物質の塩素化アルカン異性体生成物への変換度を改良して、塩素化プロセスを最適化してよいことを理解し得る。純粋な例示として、標準的な真空蒸留を利用しながらUV及び/又は可視光を使用して反応を触媒的に活性化する(例えば、塩素化領域を連続的攪拌槽光反応器に提供する)連続塩素化プロセスにおいて、C塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比を60:40へ制限してよく、かつ/又は塩素化領域の動作温度は約−30℃〜約30℃の範囲内でよい。循環式又はループ反応器を使用して塩素化領域を提供し、かつ反応混合物を直接蒸留に供する代替的な場合には、C塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比を90:10へ制限してよく、かつ/又は塩素化領域の動作温度は、約120℃と同程度の高温でよい。光反応器、例えば流下膜管型光反応器を使用する更に別の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比を40:60へ制限してよい。
【0099】
本発明に使用される反応器を、それぞれ異なるフローパターン及び/又は異なる動作温度/圧力を有する異なる複数の領域へ分割してよい。例えば、塩素化工程は、複数の反応領域を含む反応器において行われることができる。それらの領域は、異なる温度及び/又は圧力で作動させられることができる。
【0100】
追加的に又は代替的に、本発明の方法に使用される反応器が、外部循環ループを備えてよい。外部循環ループは、所望により、冷却及び/又は加熱手段を、及び/又は塩素化領域からの塩素化アルカン異性体の選択的な抽出/取り出し用装置を備えてよい。
【0101】
当業者が理解し得るとおり、塩素化領域は、冷却管、冷却ジャケット、冷却スパイラル、熱交換器、加熱ファン、加熱ジャケットなどのような冷却/加熱機器の使用によって、対象温度で維持されることができる。光塩素化を行い、かつガラス管を用いてUV及び/又は可視光を塩素化領域へ供給する実施形態では、その管は、それを通過する冷媒(例えば、水)の流れを可能にするように追加的に構成されることができる。
【0102】
塩素化領域の動作温度は、当業者に知られる任意の温度制御手段、例えば加熱及び/又は冷却手段、例えば、加熱/冷却ジャケット、加熱/冷却ループ(それぞれ反応器の内部又は外部にある)、冷却スパイラル、熱交換器、加熱ファンなどにより制御されることができる。追加的に又は代替的に、その温度は、塩素化領域中に加えられる材料(単数又は複数)の温度を制御して、したがって、そこで反応混合物の温度を制御することにより制御されることができる。反応混合物は、塩素化アルカン出発物質の塩素化アルカン異性体への所望の変換度を達成するのに十分な時間及び条件で塩素化領域に維持される。
【0103】
当業者は、特定の実施形態では、本発明の方法における任意の段階(例えば、塩素化及び/又はデヒドロ塩素化)で利用される反応領域には、撹拌手段、例えば、スターラー、従動機器、フローチャネリング手段などを採用してよいことを理解し得る。
【0104】
上述のとおり、塩素化領域に存在する反応混合物に存在する塩素化アルカン出発物質の割合は、塩素化領域から対象異性体を抽出することにより制御されることができる。この抽出は、回分的に又は連続的に行われることができる。誤解を避ける為に、本願において、本発明の方法に利用される領域からの物質の連続抽出に言及する場合には、これは、単純に文言上の意味を割り当てられるべきではない。当業者は、そのような実施形態では、塩素化領域の操作条件のままで、その目的が定常状態反応を設けることであるならば、そこで反応混合物が所望の定常状態に達した時点で、反応混合物を実質的に連続な基準で取り出してよいことを理解し得る。
【0105】
塩素化領域に存在する反応混合物からの対象異性体の分離が、当業者に知られる任意の技術を用いて達成されることができる。例えば、1つ以上の蒸留工程を採用してよい。
【0106】
塩素化領域において生成する反応混合物は、未反応C塩素化アルカン出発物質;複数のC塩素化アルカン異性体;上述の物のような潜在的不純物、例えば、異性体不純物、過少に塩素化された不純物、過剰に塩素化された不純物、対象異性体とは異なる数の炭素原子を有する化合物、及び/又は塩素化アルケン異性体などを含み得る。
【0107】
塩素化後の蒸留を行う実施形態では、1つ以上の蒸留工程を行ってよい。そのような工程は、任意の塩素化後処理工程(例えば水性処理工程)の前及び/又は後に、塩素化領域に存在する反応混合物に対して、及び/又は塩素化領域から抽出された反応混合物に対して、直接に行われることができる。
【0108】
塩素化後蒸留の結果として、複数のC塩素化アルカン異性体流が得られ、それらは、対象となる複数の異性体(例えば、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン)に富むか、又は対象となる複数の異性体から成る。
【0109】
さらに、以下の流れの1つ以上が得られることができる:
・未反応C塩素化アルカン出発物質(例えば、1,1,1,3−テトラクロロプロパン)流;C塩素化アルカン出発物質に富むか、又はそれから成る。
・対象異性体の1つ(例えば、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン又は1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン)に富むか、又はそれから成る1つ以上の単一異性体流;異性体の沸点及び/又は蒸留条件によれば、少なくとも異性体の一分留を選択的に蒸留することが可能な場合である。
・塩素化が不十分な不純物、過剰に塩素化された不純物、及び/又は対象異性体とは異なる数の炭素原子を有する不純物に富むか、又はそれらから成る1つ以上の蒸留残留物流。
【0110】
当業者は、特定の化合物(又はそのような複数の化合物)に富む流れは、主成分として特定された化合物を含み得るし、すなわち、それらは、少なくとも50%の特定された化合物(単数又は複数)を含み得ることを理解し得る。好ましい実施形態では、上記流れの1つ、幾つか又は全てが、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%の特定された化合物(単数又は複数)を含む。
【0111】
誤解を避ける為に、本明細書で使用されるときには、用語「流」は、広義に解釈されるべきであり、したがって、蒸留技術などを用いて少なくとも幾つかの選択度で反応混合物から抽出された化合物の(単数又は複数の)部分を包含し、対象となる蒸留技術によって、その(単数又は複数の)部分が、実際に分留又は流れとして集められたかどうかを問うべきではない。
【0112】
好ましい実施形態では、複数のC塩素化アルカン異性体流及び/又は1つ以上の単一異性体流(単数又は複数)は、取得される場合には、以下の成分を含む:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過少に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の塩素化アルケン化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、本異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水。
【0113】
誤解を避ける為に、上述の流れの1つ、幾つか又は全ては、同一の又は異なる蒸留において得られることができる。例えば、全部で4つの流れが、蒸留物の多数の流れを同時に又は連続して得られるようにする蒸留装置を利用する単一蒸留工程において、得られることができる。
【0114】
代替的に、上述の各流が、別々の蒸留工程において個々に集められることができる。
【0115】
さらなる代替としては、上述の流れの1つは、第一蒸留工程、例えば、塩素化領域に存在する反応混合物に対して直接に行われる工程において、得られることができる。次に、反応混合物は、塩素化領域から離れた蒸留装置へ供給され、単一又は複数の蒸留工程に供されて、上述の1つ以上の他の流れになることができる。
【0116】
一実施形態では、単一又は複数の塩素化後工程を行う場合には、単一異性体流を集めてよい。当業者は、単一異性体流が混合物から蒸留分取される実施形態では、これは、混合物中の複数の異性体に存在する異性体比率に影響し得るということを理解し得る。
【0117】
これは、上述のとおり塩素化触媒の任意的選択とともに、上記複数で存在する異性体比の慎重な制御を可能にして、下流プロセス用途にとって最適な異性体比を達成できる。
【0118】
したがって、本発明の実施形態では、第一異性体比を有する複数の異性体を含む混合物から単一異性体を分離してよく、結果として、混合物において、それらの複数の異性体の異性体比を、混合物に残存する他の異性体(単数又は複数)にとって好ましいものに変えてよい。例えば、 そのような実施形態では、混合物に残存する他の異性体(単数又は複数)の割合は、少なくとも約2%、約5%、約7%、約10%、約15%、約25%、又は約50%増やしてよい。
【0119】
言い換えれば、複数のC塩素化アルカン異性体が一対の異性体(第一及び第二異性体)から成る本発明の実施形態では、第二異性体に富むか、又は第二異性体から成る単一異性体流を得る混合物の蒸留が、複数のC塩素化アルカン異性体中の第一異性体の割合を増やすであろう。代替的に、第一異性体に富むか、又は第一異性体から成る単一異性体流を得る混合物の蒸留を行う場合には、これは、複数のC塩素化アルカン異性体中の第二異性体の割合を増やすであろう。そのような実施形態では、複数の異性体中の第一又は第二異性体の割合は、約3%以上、約5%以上、約10%以上、又は約20%以上増加する。
【0120】
そのような実施形態では、単一異性体流を得た後に、任意の他の流れを混合物から得てよい。これは、複数のC塩素化アルカン異性体流及び任意の他の流れを得るために使用される装置とは分けられた蒸留装置を用いて、達成されることができる。代替的に、同じ装置を使用して、複数のC塩素化アルカン異性体流及び任意の他の流れの取得前又は取得と同時に、単一異性体流を得てよい。
【0121】
取得時に、未反応C塩素化アルカン出発物質流を塩素化領域へ戻してよい。追加的に又は代替的に、複数のC塩素化アルカン異性体流及び/又は(得られるならば)単一異性体流(単数又は複数)を下流の処理工程に、例えば、後述の選択的デヒドロ塩素化プロセスに供されることができる。
【0122】
本発明の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質流は、塩素化領域と連通した蒸留装置を用いて、直接蒸留により得られる。そのような実施形態では、次に、反応混合物は、塩素化領域/直接蒸留装置から抽出されて、下流の蒸留工程及び/又は他の処理工程に供されることができる。当業者は、そのような実施形態では、C塩素化アルカン出発物質流の蒸留の結果として、混合物に存在する複数のC塩素化アルカン異性体の割合が、潜在的には60%のモル比制限を超えて、増加し得るということを理解し得る。
【0123】
蒸留残留物流(単数又は複数)は、廃棄されるか、かつ/又は更なる処理工程に、例えば(有用物質(例えば、国際公開第2016/058566号に開示されるプロセスを介して、1,1,1,3−テトラクロロプロパンなどの出発塩素化アルカン、及び/又はテトラクロロエテン等の生成に使用されることができる四塩化炭素)を高純度で生成させる)焼却又は高温塩素化分解などに供されることができる。
【0124】
この流れに含まれる不純物を対象異性体から分離することは、過剰に塩素化された不純物(例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン)を含む反応性不純物の下流変換工程(例えばデヒドロ塩素化工程)に対する悪影響ゆえに、それらが、対象の最終生成物を汚染し得る更に好ましくない不純物を生成することがあるので、好ましい。
【0125】
ここに述べたとおり、本発明により提供される利点の1つは、複数のC塩素化アルカン異性体が高純度で生成されるということであり、従来技術の方法と比較して、下流プロセス(水素フッ素化反応など)に使用可能な高品質原料を得る為に精製工程をほとんど要しないということを意味する。それ故に、本発明の実施形態では、C塩素化アルカン出発物質の塩素化の後、かつC塩素化アルカン異性体を下流化学変換反応(例えば、デヒドロ塩素化)に使用する前に、C塩素化アルカン異性体に対して行われる蒸留工程の数は、3、2又は1に限られる。
【0126】
上述のとおり、反応混合物の蒸留は直接蒸留でよく、すなわち、蒸留装置は、塩素化領域と直通し、反応混合物に蒸留装置中を直接通過させる。
【0127】
追加的に又は代替的に、反応混合物は、塩素化領域から離れた蒸留装置中へ供給される前に、塩素化領域から抽出されることができる。
【0128】
対象C塩素化アルカン異性体に富む流れを、塩素化領域に存在する反応混合物から選択的に抽出するために使用可能な任意の蒸留装置又は技術を採用してよい。
【0129】
反応混合物を蒸留してC塩素化アルカン異性体に富む流れを生成するのに使用してよい代替的な一例として、「循環」又は「ループ」塩素化反応器を採用することができ、そこでは、反応混合物を反応領域から連続的に取り出し、外部循環に位置して好適には真空下で稼働する蒸留装置を用いて処理する。蒸留装置において、C塩素化アルカン出発物質を蒸留し尽くして塩素化領域へ戻し、一方で、異性体混合物は、蒸留残留物として、さらなる処理へ、例えば、C塩素化アルカン異性体流(単数又は複数)、単一異性体流(単数又は複数)及び/又は蒸留残留物流(単数又は複数)を取得する反応器から離れた蒸留装置において行われる1つ以上の蒸留工程へ進められる。そのような装置の使用は、有利には、そうしないと過剰に塩素化された副生成物の形成につながりかねない連続反応を抑制し、かつ反応熱の幾つか又は全てを利用できて、有利には作業コストを減らすことができる。
【0130】
本発明の実施形態では、上述の流れの1つ、幾つか又は全てを取得する蒸留は、単一蒸留装置において、例えば、回分カラム、ボイラー、濃縮器及び留分タンクなどを含む回分蒸留システムにおいて達成されることができる。代替的に、それらの流れの1つ、幾つか又は全ては、例えば、カラム、ボイラー、濃縮器、及び留分タンクなどを含む、一連の連続蒸留システムを用いて、得られるであろう。
【0131】
特定の操作条件下、高い蒸留温度の使用が、好ましくない不純物の形成を導くことがあるということが見出された。したがって、蒸留工程(単数又は複数)を本発明の方法に利用する場合には、蒸留は、約130℃以下、約120℃以下、約110℃以下、約105℃以下、約100℃以下、約90℃以下又は約80℃以下の温度で(すなわち、被蒸留液体が、これらの温度を超える温度に曝されないように)行われることができる。
【0132】
蒸留を最適温度で促進するために、蒸留を減圧で行ってよい。例えば、蒸留を真空下で行ってよい。真空蒸留の場合には、蒸留を低温で行えるように真空条件を選択してよい。
【0133】
上述のとおり、当業者に知られる任意の蒸留機器を本発明の方法に利用してよく、例えば、蒸留ボイラー/カラム配列などでよい。しかし、特定の材料で形成された蒸留装置を避けると、塩素化アルカン分解生成物の形成を最小化できることが予想外に見出された。
【0134】
塩素化アルカン化合物を含む混合物を1つ以上の蒸留工程に供する本発明の実施形態では、それらの工程の1つ、幾つか又は全てに採用される蒸留装置は、蒸留装置の使用において蒸留物又はプロセス流体と接触し得る成分の全て又は幾つかがフルオロポリマー、フルオロクロロポリマー、ガラス、エナメル、フェノール樹脂含浸グラファイト、炭化ケイ素及び/又はフルオロポリマー含浸グラファイトから製造されるように構成されることができる。
【0135】
有利には、金属含有量が著しく低い塩素化アルカン出発物質と、使用中に作動流体と接する金属成分を含まない蒸留装置とを用いると、対象生成物への変換を改良して、副生成物への損失を減らすことにつながる。
【0136】
本発明の方法の実施形態では、利用される蒸留技術/装置は、多数の流れを反応混合物から抽出させることができる。例えば、複数の対象異性体が幅広い沸点を有する場合には、対象異性体の多数の流れを反応混合物から抽出してよい。次に、これらの流れ又は留分をブレンドして、複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物を、所望により、異性体の好ましい比率で形成することができる。
【0137】
発明者らは、特定の操作条件下、C塩素化アルカン異性体を含む反応混合物に溶解又は混入した塩素の存在が、結果として、それらの異性体(又はそれらから形成される化合物)を利用する下流反応において、好ましくない不純物を形成するということを決定した。したがって、本発明の実施形態では、塩素化領域から抽出されるか、又は蒸留時にC塩素化アルカン異性体に富む流れとして得られる複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物は、約0.1%未満、約0.05%未満又は約0.01%未満の塩素を含んでよい。これらの混合物中の塩素含有量の制御は、当業者に知られた任意の技術を用いて達成されることができる。例えば、上記塩素含有量は、塩素化領域へ供給される塩素の量の慎重な制御により、又は塩素化領域における塩素化アルカン出発物質:塩素化アルカン生成物異性体の比率の制御により制御されることができる。ここに述べられるとおり、塩素化に供給される塩素の量の慎重な制御は、有利には、C塩素化アルカン出発物質の変換速度の制御も可能にする。
【0138】
また、発明者らは、特定の操作条件下、本発明の方法に使用される反応物質並びにそれらのプロセスで形成される化合物を、空気、水蒸気及び/又は水を含む酸素及び/又は水分源へ曝露すると、好ましくない不純物の形成につながり得ることを見出した。したがって、本発明の実施形態では、塩素化及び/又は蒸留を酸素の不存在下で行ってよい。
【0139】
本発明の方法の反応物質/生成物の酸素及び/又は水分への曝露を最小限にする工程を行う場合でさえも、特定の操作条件下では(本発明者らによって、本発明の方法の生成物を利用してよい特定の下流プロセスにおいて問題となることが見出された)含酸素有機化合物の形成を完全に防ぐことはできない。それ故に、そのような化合物が反応混合物及び/又はC塩素化アルカン異性体リッチ流に存在する場合には、その混合物/流れを処理して、それから望ましくない含酸素有機化合物を除去してよい。
【0140】
確かに、当然のことながら、C塩素化アルカン異性体の混合物をどのように調製するかによらず、そのような工程は、それらの混合物から含酸素有機化合物を減らす(又は理想的には除去する)ために利用されることができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、少なくとも2つのC塩素化アルカン異性体及び1つ以上の含酸素有機化合物を含む混合物を精製する方法であって、混合物を水性処理領域中へ供給する工程;混合物を水性溶媒と接触させる工程;及び酸素化化合物の濃度が減少した処理混合物を抽出する工程を含む方法が、提供される。
【0141】
水性処理工程は、実行するならば、任意の蒸留工程を行わないうちに、又は任意の蒸留工程の1つ、幾つか若しくは全てを行う前に、行われることができる。
【0142】
有利には、水性処理工程は、2つの方法で酸素化不純物の除去を達成できる。第一に、水性溶媒は、酸素化化合物の物理的プロセス抽出を達成できる。さらに、幾つかの化合物については、加水分解によって、これらをより分離し易い化合物へ変換してよい。プロパノイルクロリドが、先ず加水分解されて対応するカルボン酸を形成する化合物の例であり、次いでカルボン酸は、水性相へ抽出されることができる。
【0143】
そのような実施形態では、水性処理工程に供する混合物は、塩素化領域から抽出された反応混合物でよい。代替的に、混合物は、蒸留を介して反応混合物から得られた複数のC塩素化アルカン異性体流でよい。さらに別の代替案では、水性処理に供する混合物は、部分的に蒸留された反応混合物でよく、すなわち、1つ以上の未反応C塩素化アルカン出発物質流、1つ以上の単一異性体流及び/又は1つ以上の蒸留残留物流が蒸留を介して既に得られている塩素化領域から取得された反応混合物でよい。
【0144】
そのような水性処理工程を実行する本発明の方法では、その工程を任意の回数で繰り返して、許容可能な純度の処理混合物を得てよい。例えば、混合物を水性溶媒と接触させて、そこから処理混合物を抽出する工程を1回以上、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上繰り返してよい。この処理のための温度は、アルカンのために約0〜約100℃の範囲内でよい。対応するバッチ時間又は平均滞留時間は、この工程のために約0.01〜約10時間でよい。
【0145】
水性処理工程を行う本発明の実施形態では、処理混合物は、含酸素有機化合物を約1000ppm以下、約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、約10ppm以下、約5ppm以下又は約2ppm以下の量で含んでよい。
【0146】
また、処理混合物は、好ましくは、複数のC塩素化アルカン異性体を約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、又は約99.9%以上の純度で含み、さらに以下の成分を含む:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過少に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の塩素化アルケン化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、上記異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水。
【0147】
水性処理工程に利用されることができる水性溶媒の例としては、水及び蒸気等が挙げられる。追加的に又は代替的に、酸(鉱酸、有機酸など)を添加して、水性処理領域の混合物のpHを約6以下、約4以下、又は約2以下にしてよい。
【0148】
水性処理工程の性能は、複数のC塩素化アルカン異性体を含む組成物に不純物として存在する含酸素有機化合物の含有量を減らす程度であることが好ましい。含酸素有機化合物の例としては、塩素化アルカノール、塩素化酸クロリド、塩素化酸、塩素化ケトン又は塩素化アルデヒド等が挙げられる。
【0149】
水性処理工程を行う本発明の方法では、水性処理領域中へ供給される混合物が、低い塩素含有量、例えば、約0.8%以下、約0.5%以下、約0.1%以下、約0.05%以下又は約0.01%以下の塩素含有量を有してよい。誤解を避ける為に、この文脈で塩素について言及する場合には、これは、遊離塩素、未反応塩素、及び溶解塩素を包含するものとする。塩素以外の元素と結合した塩素は、考慮すべきでない。
【0150】
本発明の実施形態では、水性処理領域は、洗浄タンクに、例えば洗浄攪拌槽にある。そのような実施形態では、混合物を水及び/又は蒸気で洗浄してよい。
【0151】
混合物を水性溶媒と接触させるとすぐに、1つ以上の処理工程に供してよい。例えば、混合物を水性処理領域から抽出し、(好ましくは、減圧及び/又は低温下で)蒸留して処理混合物を提供することができる。
【0152】
追加的に又は代替的に、本発明の実施形態では、二相性混合物が、水性処理領域において形成されることができる。次に、相分離が起こることがあり、例えば、好ましくない極性又は中間極性酸素化化合物の水中への加水分解及び抽出を伴う抽出分離を行うことができる。
【0153】
そのような実施形態では、相分離工程は、水性不用相から分離された塩素化アルカン異性体を含む有機相を伴う。これは、水性処理領域からのそれらの相の逐次抽出により達成されることができる。代替的に、二相性混合物を水性処理領域から抽出して、水性処理領域とは別の相分離工程に供することができるであろう。
【0154】
必要に応じて、水性処理工程を、例えば、1回以上、2回以上、3回以上又は定期的に、抽出カラムにおいて、所望により適切な化学反応ともに、繰り返すことができる。
【0155】
所望により、例えば塩化カルシウムなどの乾燥剤を用いて、水性処理工程から得られる有機相を乾燥させてよい。
【0156】
上述のとおり、水性処理工程の主な目的は、実行されるのであれば、その工程を受ける混合物に存在する酸素化不純物の含有量を減らすことである。
【0157】
ルイス酸を触媒として塩素化反応に利用する実施形態では、触媒除去工程を行ってよい。これは、洗浄工程として行われ、デヒドロ塩素化後の洗浄工程と関連して後述される条件、技術及び装置の幾つか又は全てを利用することができる。
【0158】
有利には、洗浄工程を行う実施形態では、その洗浄工程は、洗浄工程に供された混合物からの触媒抽出だけでなく、混合物から酸素化不純物の含有量も減らす役割も担い、したがって水性処理工程の機能も追加的に有するという両方の結果を得られるように行われる。
【0159】
本発明の実施形態では、塩素化工程(又は、実行されるのであれば(単数又は複数の)水性処理工程)から得られるC塩素化アルカン異性体を含む混合物を、精製工程へ、例えば蒸留工程へ供する。その蒸留工程は、上述の塩素化後蒸留工程において利用されたものと同じ(又は異なる)装置及び条件を用いて行われることができる。したがって、本発明の実施形態では、処理混合物を蒸留して、複数のC塩素化アルカン異性体を含む流れを、水性処理領域中へ供給された混合物より高い純度で得る工程を行ってよい。その蒸留を約130℃以下の温度で行ってよい。
【0160】
ここに述べた方法は、複数のC塩素化アルカン異性体を提供する。
【0161】
当業者は、C塩素化アルカン出発物質の塩素化が、採用された反応条件に応じて、典型的には、かつある程度までは、同じ複数の異性体を(すなわち、同じ化合物を広義には同じ比率で)着実に生成させることを理解し得る。
【0162】
本発明は、発明者らの識別する下流反応における複数のC塩素化アルカン異性体の利用性に基づく。そのような異性体は、対象異性体が混合物中の成分として提供され、かつ多くの場合には他の異性体から分離し難いという基準では、例えば類似する沸点という基準では、好ましくないものとして事前に把握されていた。確かに、多大な労力をささげて、そのような可能な限り高い純度を有するアルカンを提供した。
【0163】
上述のとおり、発明者らは、本発明の異性体混合物が、産業上利用可能かつ工業的に実行可能な幅広いプロセスにおいて利用されることができるということを決定した。
【0164】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、C塩素化アルケンの製造方法が提供され、その製造方法は、複数のC塩素化アルカン異性体の少なくとも2つの沸点が≦約15℃で異なる複数のC塩素化アルカン異性体の混合物を提供する工程を含み;かつ上記混合物をデヒドロ塩素化領域において選択的デヒドロ塩素化に供し、そのデヒドロ塩素化領域において、上記少なくとも2つのC塩素化アルカン異性体の一方(第一C塩素化アルカン異性体)を個別の第一C塩素化アルケンへ選択的に変換し、かつ上記複数のC塩素化アルカン異性体の他方のいずれかを実質的にデヒドロ塩素化させないという工程を含む。
【0165】
有利には、本発明のこの態様の方法は、塩素化アルカン異性体の沸点とは十分に異なる(典型的には、より低い)沸点を有する第一塩素化アルケン異性体を形成する。したがって、例えば蒸留によって、対象の塩素化アルケン生成物を効率的かつ容易に単離できる。
【0166】
この態様の方法は、そうしないと分離が困難になりかねないC塩素化アルカン異性体を高選択度でデヒドロ塩素化させ、一方の塩素化アルカン異性体を対応するアルケンへ変換し、存在する他のアルカン異性体のいずれかを実質的に変換しないので、有利である。「実質的に変換しない」ことは、個別のアルカン異性体の質量を基準として、混合物に存在する他のC塩素化アルカン異性体のいずれかの約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.02%未満又は約0.01%未満が、それらの個別のアルケンへとデヒドロ塩素化されることを意味する。
【0167】
誤解を避ける為に、デヒドロ塩素化領域に存在する第一及び第二C塩素化アルカン異性体と、デヒドロ塩素化工程の下流の混合物とに言及する場合には、これらの用語は、ここに述べられた塩素化工程で形成されたC塩素化アルカン異性体に必ずしも当てはまるものではなく、逆の場合も同様である。例えば、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの異性体対が、塩素化工程において生成され、(デヒドロ塩素化前の)その反応及び下流処理工程の文脈内では、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが第一異性体と呼ばれることができ、かつ1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンが第二異性体と呼ばれることができるであろう。しかし、次いで、その複数の異性体がデヒドロ塩素化工程に利用されるならば、その反応及びその下流処理工程の文脈内では、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンは、第一C塩素化アルカン異性体と呼ばれるかもしれないし、かつ1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、第二C塩素化アルカン異性体と呼ばれるかもしれない。代替的に、デヒドロ塩素化反応及びその下流の処理工程の文脈内では、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、第二C塩素化アルカン異性体と呼ばれるかもしれないし、かつ1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンは、第一C塩素化アルカン異性体と呼ばれるかもしれない。
【0168】
塩素化アルカン異性体の1つの選択的デヒドロ塩素化は、好ましくは、混合物に存在する一異性体の選択的変換率が、少なくとも約95%、約98%、約99%、約99.5%又は約99.7%の傾向にある。
【0169】
米国特許第8987535号明細書には、潜在的に有用な異性体混合物の製造方法が提供されるものの、この混合物を処理して高品質の個別の化合物を得ることには成功していなかった。本発明者らは、副生不純物の形成を最小限にするか、又は理想的に防ぐ高品質な異性体混合物の製造方法を開発した。本発明の方法によれば、それらの異性体の1つは、その個別のC塩素化アルケンへ選択的に変換されることができ、次いで、その個別のC塩素化アルケンは、工場規模で、好ましくは連続モードで、かつ通常の上流原料を用いて容易に単離されることができる。
【0170】
参照し易いように、個別の塩素化アルケンを得る為に選択的にデヒドロ塩素化されることになる第一C塩素化アルカン異性体を、第一C塩素化アルカン異性体という。同様に、デヒドロ塩素化工程から得られるアルケンを第一C塩素化アルケンという。
【0171】
上述のとおり、複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物は、任意の数の成分異性体(すなわち、合計異性体混合物の1質量%以上の量で存在する異性体)を含んでよい。しかし、本発明のこの態様では、成分異性体の少なくとも2つのが、≦約20℃で異なる沸点を有しなければならない。本発明の実施形態では、少なくとも2つの成分異性体の沸点は、より低い水準で、例えば、≦約15℃、≦約10℃又は≦約5℃で異なることができる。
【0172】
塩素化アルカン異性体の1つをその個別の塩素化アルケンへ選択的に変換することが、そのアルケンをその塩素化アルカンから容易に分離することを促進するのに対して、本発明のこの態様から得られることができる塩素化アルカンと塩素化アルケンの混合物は、商業的に価値があるということが見出された。そのような特定の組み合わせの例としては、i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa);ii)1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230za)と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db);iii)1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230za)と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)と1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230xa);iv)1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230za)、及び/又は1,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(HCO−1230zd);等が挙げられる。
【0173】
本発明のこの態様のデヒドロ塩素化工程は、液相又は気相などの任意の相で行われることができる。
【0174】
誤解を避ける為に、複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物は、ここに述べた方法から得られることができる。追加的に又は代替的に、それらの複数の異性体が、そのような組成物を製造する代替的な方法から得られることができる。
【0175】
複数のC3塩素化アルカン異性体を含む混合物をどのように調製したかによらず、それは、好ましくは、不純物の濃度が低い。
【0176】
例えば、複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物は、好ましくは、約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、又は約99.9%以上の純度(すなわち、質量%としての含有量)を有し、かつ好ましくは、さらに以下の成分を含む:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過少に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の塩素化アルケン化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、上記異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水。
【0177】
本発明のこの方法の実施形態では、選択的デヒドロ塩素化に供される混合物は、約95:5、約90:10、約80:20、約70:30、約60:40、約50:50、約40:60、約30:70、約20:80、約10:90又は約5:95から約5:95、約10:90、約20:80、約30:70、約40:60、約50:50、約60:40、約70:30、約80:20、約90:10又は約95:5までのモル比で存在する第一及び第二異性体を含んでよい。
【0178】
本発明の実施形態では、塩素化領域において生成した塩素化アルカン異性体の1つ、2つ又は全てが、三塩素化末端炭素原子を有する化合物である。
【0179】
混合物中の複数の異性体は、i)1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン;ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン;又はiii)1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンでよい。この段落で述べられる異性体対では、一番目に列挙された異性体が、第一C塩素化アルカン異性体又は第二C塩素化アルカン異性体でよく、二番目に列挙された異性体が、もう一方の第一C塩素化アルカン異性体又は第二C塩素化アルカン異性体でよい。
【0180】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物のデヒドロ塩素化工程における使用が提供され、その混合物は、約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、又は約99.9%以上の純度(すなわち、質量%としての含有量)の複数のC塩素化アルカン異性体を有し、そして好ましくは、さらに以下の成分を含む:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過少に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の塩素化アルケン化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、上記異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水。
【0181】
本発明のこの態様に利用される複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物は、本発明の他の態様と関連して、ここに述べられたデヒドロ塩素化反応のための出発物質として使用される任意の特性の混合物を追加的に含んでよい。
【0182】
当業者は、デヒドロ塩素化反応に利用されることができる技術及び装置に詳しいであろう。そのようなプロセスは、第一C塩素化アルカン異性体の選択的デヒドロ塩素化を可能にし、混合物に存在する他の異性体のいずれかを実質的に変換しないのであれば、本発明のこの態様の方法に利用されることができる。デヒドロ塩素化技術及び装置が知られていたとしても、複数の異性体から一異性体を選択的にデヒドロ塩素化するためのそのようなプロセスの使用は、事前に行われたことがなく、直感的に理解できるものでもなかった。このようなプロセスの実行が、高品質な個別の生成物の成功的かつ有効な回収を可能にする。
【0183】
先行技術において採用されたようなアルカリ性デヒドロ塩素化は、経済上及び環境上の欠点の結果として、本発明の方法では産業上実現可能ではないであろうということが見出された。さらに、相当な量の(本発明者らによって、下流プロセスにおいて特に問題があることが見出された)カルボニル化合物が、アルカリ性水酸化物デヒドロ塩素化中に形成される。さらに、特定のアルケン(例えば、1,1,3,3−テトラクロロプロペン)を形成するアルカリ性剤がデヒドロ塩素化において存在することは、結果として、爆発性混合物を形成することがある。発明者らにより行われた試験では、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの混合物(比率:80:20)のアルカリ性デヒドロ塩素化は、1つの塩素化アルケンへ向けた所望の選択性を与えず、1,1,3,3−テトラクロロプロペンと2,3,3,3−テトラクロロプロペンの両方が生成されるということが見出された。
【0184】
特に好ましいデヒドロ塩素化プロセスが、国際公開第2016/0580567号に開示されており、その内容は参照によりここに援用される。
【0185】
反応混合物は、デヒドロ塩素化領域に、所望の完成度へ進行する反応(第一C塩素化アルカンの第一C塩素化アルケンへの変換)を可能にするのに十分な時間に亘って維持される。デヒドロ塩素化が液相で起こる本発明の実施形態では、デヒドロ塩素化領域における反応混合物の滞留時間は、約0.1、約0.2、約0.5、約1、約1.5、約2、約2.5又は約3時間から約5時間、約7時間、約9時間又は約10時間の範囲内でよい。
【0186】
デヒドロ塩素化を液相で行う実施形態では、デヒドロ塩素化領域の動作温度は、約50℃、約70℃、約100℃又は約120℃から約150℃、約170℃、約200℃又は約250℃までの範囲内でよい。
【0187】
デヒドロ塩素化領域を大気圧未満、大気圧、又は大気圧超で運転してよい。本発明の実施形態では、デヒドロ塩素化領域を大気圧で、又は約10kPa〜約400kPa、約40kPa〜約200kPa、若しくは約70kPa〜約150kPaの圧力で運転する。
【0188】
デヒドロ塩素化反応速度を増加させる任意の触媒が、本発明の方法に利用されることができる。実施形態では、触媒は金属を含む。そのような実施形態では、金属は、固体状態(例えば、触媒が鉄である場合には、それは、粒子鉄(例えば、鉄片又は鉄粉)、鉄メッシュ、鉄ワイヤー、充填体(構造化されたものであるが、又はランダム体)、固定床、流動床、液体中の分散液等として、又は任意の方法で形成された鉄含有合金、例えば、炭素鉄等として、存在してよい)で、及び/又は塩(例えば、触媒が鉄である場合には、それは、塩化第二鉄、塩化第一鉄等として存在してよい)として、存在してよい。追加的に又は代替的に、本発明の方法を行う装置は、部分的に又は完全に触媒材料で形成された構成要素、例えば装置内カラム等を備えてよい。
【0189】
金属が反応混合物中に塩として存在する本発明の実施形態では、金属を塩形態で反応混合物へ加えてよく、かつ/又は固体金属を反応混合物へ加えてから、反応混合物に溶解させて、その場(in situ)で塩を形成してよい。触媒は、塩形態で存在するときには、非晶質形態、結晶形態、無水物形態及び/又は水和形態(例えば、塩化第二鉄六水和物)で添加されることができる。液体形態の触媒も利用してよい。
【0190】
デヒドロ塩素化工程(単数又は複数)に利用してよい触媒の例としては、鉄、アルミニウム、アンチモン、ランタン、スズ、チタン等の遷移金属の1つ以上のハロゲン化物(例えば、塩素化物、臭素化物、フッ素化物又はヨウ素化物)等が挙げられる。利用可能な触媒の具体例としては、FeCl、AlCl、SbCl、SnCl、TiCl等が挙げられる。
【0191】
本発明の実施形態では、混合物は、複数の異性体として、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを、好ましくは80:20、90:10、93:7、又は95:5のモル比で含む。1,1,2,3−テトラクロロプロペン (HCO−1230xa)よりも1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)を選択的に生成させて、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの大部分を変換させないままにするように、混合物を選択的デヒドロ塩素化に供する。得られた塩素化アルケンである1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)を、混合物から容易に分離することができる。残留混合物は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンに富み、処理工程に供されることができる。
【0192】
塩素化アルカン異性体及び/又は触媒を含む混合物のデヒドロ塩素化領域中への供給は、反応混合物の抽出時点などでは、連続的又は断続的でよい。実施形態では、連続モードが好ましい。
【0193】
本発明の方法の一つの利点は、デヒドロ塩素化領域を連続プロセス又は回分プロセスのいずれで運転するとしても、所望の結果を得られるということである。用語「連続プロセス」及び「回分プロセス」は当業者に理解されるものである。実施形態では、連続モードが好ましい。
【0194】
本発明のさらなる利点は、アルカリ性水酸化物を使用することなく高純度塩素化アルケン化合物の生成を可能にするということである。これは、アルカリ性水酸化物の使用の回避によってカルボニル化合物の形成を減少又は省略することができるので、有利である。さらに、かつ予想外に、本発明者らは、アルカリ性水酸化物を含まないデヒドロ塩素化工程が、アルカリ性水酸化物を利用する場合よりも選択性であることを見出した。さらに、塩素化アルケンとアルカリ性剤の潜在的爆発性混合物の形成の可能性を最小限にすることができる。
【0195】
したがって、本発明の実施形態では、アルカリ性水酸化物がデヒドロ塩素化領域へ加えられないか、かつ/又はデヒドロ塩素化領域に存在する反応混合物は、アルカリ性水酸化物を含まない。
【0196】
反応が進むと、第一C塩素化アルケンがデヒドロ塩素化領域において生成し得ることが明らかであろう。本発明の実施形態では、第一C塩素化アルケンは、デヒドロ塩素化領域から(例えば蒸留などを介して、直接に、又は先ず反応混合物をデヒドロ塩素化領域から抽出して次にそこから第一C塩素化アルケンを抽出することにより)抽出される。この抽出は、連続的又は断続的に行われることができる。
【0197】
誤解を避ける為に、反応混合物からの「連続抽出」又はデヒドロ塩素化領域から「直接に」に関して言及する場合には、厳密な文言解釈が意図されず、当業者は、その用語は、デヒドロ塩素化領域が対象操作条件に達し、かつ反応混合物が定常状態に達すると、抽出(デヒドロ塩素化領域からの反応混合物の抽出、又は第一C塩素化アルケンの直接抽出を介して、例えば蒸留などを介して)が実質的に連続な基準で起こるということを意味して使用されることを理解し得る。
【0198】
追加的に又は代替的に、第一C塩素化アルケンをデヒドロ塩素化領域において(例えば直接蒸留を介して)反応混合物から直接に抽出することができ、かつ/又は先ず反応混合物の一部分をデヒドロ塩素化領域から抽出して、その後に、デヒドロ塩素化領域から離された混合物から塩素化アルケンを抽出することができる。反応混合物がデヒドロ塩素化領域から抽出される実施形態では、蒸留の前及び/又は後に、1つ以上の処理工程(例えば、後述の洗浄工程)を行ってよい。
【0199】
本発明の実施形態では、第一C塩素化アルケンは、反応混合物から蒸留により取り出されることができる。当業者に知られる任意の技術及び装置が、このような方法で反応混合物からの第一C塩素化アルケンの抽出を達成するために利用されることができる。本発明の実施形態では、例えば精留カラムなどの蒸留カラムを使用してよい。デヒドロ塩素化領域からの反応混合物の抽出後、反応混合物は、(直接蒸留の場合には)カラム底部を通過させられるか、又はカラム底部中へ供給されることができ、対象の第一C塩素化アルケンは、カラム上部から液体蒸留物として取り出されることができる。
【0200】
例えば、例えばデヒドロ塩素化領域における動作温度のために、反応混合物が完全に又は部分的に気体状である「直接蒸留」実施形態では、デヒドロ塩素化領域が蒸留装置と流体連通するように装置を構成してよい。そのような実施形態では、蒸留装置は、デヒドロ塩素化領域と連結することができる。便宜上、これは、デヒドロ塩素化領域から蒸留装置中へ、気体状の第一C塩素化アルケン含有混合物が直接に通過する(又は通過させられる)ことを可能にする。代替的に、蒸留装置は、デヒドロ塩素化領域から離れて配置されることができ、これは、気体状混合物をデヒドロ塩素化領域から抽出して蒸留装置を通過させなければならないことを意味する。
【0201】
追加的に又は代替的に、反応混合物がデヒドロ塩素化領域において部分的に又は完全に液体形態で存在する場合には、液体反応混合物の一部分をデヒドロ塩素化領域から抽出して蒸留装置を通過させてよい。そのような実施形態では、反応混合物は、蒸留の前及び/又は後に、1つ以上の処理工程(例えば、後述の洗浄工程)へ供されることができる。
【0202】
第一C塩素化アルケンを反応混合物から蒸留により抽出する実施形態では、蒸留を受ける反応混合物に存在する第一C塩素化アルケンの少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%又は少なくとも約90質量%が、その混合物から抽出される。
【0203】
反応混合物からの第一C塩素化アルケンの蒸留は、連続的、半連続的又は回分的に行われることができる。
【0204】
本発明のさらなる利点は、デヒドロ塩素化反応が、塩素化アルケン混合物から高純度な気体状の塩化水素を生成させ、それを所定の技術を用いて、例えば上部蒸気の濃縮により回収できるということである。
【0205】
したがって、塩化水素がデヒドロ塩素化反応中に生成する本発明の実施形態では、塩化水素を抽出してよい。これは、当業者に知られている任意の装置及び/又は技術を用いて達成されることができる。例えば、反応混合物を蒸留に供するならば、蒸留装置が濃縮器(例えば部分濃縮器)を備えてよく、又は濃縮器(例えば部分濃縮器)が、塩化水素ガスの除去を可能にするために、反応装置の下流に提供されることができる。
【0206】
塩化水素ガスが、デヒドロ塩素化領域から、又はデヒドロ塩素化領域から抽出された反応混合物から抽出される本発明の実施形態では、これは、深冷処理の使用によって、すなわち、そのガスを反応混合物から抽出して次に約0℃以下、約−10℃以下又は約−20℃以下の温度へ冷却することにより、達成されることができる。
【0207】
冷却装置(例えば、第二濃縮器)が、例えば、第一濃縮器の下流で、追加的に利用されることができる。このようにして装置を配置することは、第一濃縮器が、塩素化アルケンの大部分を濃縮するために使用されることができ、第二濃縮器が、塩素化アルケンの痕跡を濃縮することによりガスを精製するために使用されることができるので、有利である。
【0208】
得られた濃縮物は、デヒドロ塩素化領域へ戻されて再利用されることができ、又は所望により、他の連結した反応領域において使用されることができる。
【0209】
所望により、著しく純度の高い塩化水素ガスを生成させるために、第一の部分濃縮後の粗塩化水素ガスが、塩素化アルケン異性体の残留痕跡とともに、塩素化工程へ供されることができ、好ましくは、UV光により、より重い塩素化分子を生成させるために、塩素化工程へ供され、より重い塩素化分子は、第二の部分濃縮において容易に濃縮されることができるので、HClガスから十分に分離されることができる。そのような重塩素化分子を含む濃縮生成物は、例えば高温塩素化分解プラント又は焼却プラントにおいて、さらに加工又は処理されることができる。
【0210】
追加的に又は代替的に、活性炭素吸着カラムが、塩化水素ガスから塩素化アルケンの痕跡を吸収するために利用されることができる。
【0211】
追加的に又は代替的に、吸収カラムが、塩化水素ガスを吸収して塩酸溶液を形成するために、利用されることができる。
【0212】
したがって、有利には、ここに述べられるとおりに抽出された塩化水素は、高純度であり、したがって、同じ工業プラントにおける上流又は下流反応で使用されることができる。下流での使用の例は、グリセロールのヒドロ塩素化のために、モノクロロヒドリン及び/又はジクロロヒドリンを形成して、その後にエピクロロヒドリン、グリシドール及びエポキシ類へ導くことである。
【0213】
本発明の実施形態では、デヒドロ塩素化領域からの高品質な第一C塩素化アルケンの抽出が、直接蒸留により達成されることができる。追加的に又は代替的に、反応混合物は、先ずデヒドロ塩素化領域から抽出され、次に(所望により、後述の洗浄工程のような1つ以上の処理工程の後に)高品質な第一C塩素化アルケンを州出するために蒸留されることができる。第一C塩素化アルケンをデヒドロ塩素化領域(又はその領域から抽出された反応混合物)から抽出するのに有効な任意の蒸留装置又は技術が、利用されることができる。
【0214】
特定の操作条件下、第一C塩素化アルカン異性体が個別の第一C塩素化アルケンへの完全変換を達成しないようにデヒドロ塩素化領域内で混合物を制御することによって、存在する他のC塩素化アルカン異性体の不用意で望ましくないデヒドロ塩素化を抑制できるということが、発明者らにより見出された。したがって、本発明の実施形態では、デヒドロ塩素化領域の反応条件は、第一C塩素化アルカン異性体の完全変換が起こらないように制御される。そのような実施形態では、その個別の第一C塩素化アルケンへの第一C 塩素化アルカン異性体の変換度が、約95%、約90%、約80%、約75%又は約70%を超えないように抑制される。
【0215】
その個別の第一C塩素化アルケンへの第一C塩素化アルカン異性体の変換度は、次の方法の1つ以上により制御されることができる:
i)より高い水準の塩素化アルケン形成が好ましくないデヒドロ塩素化領域の操作条件(例えば、温度、圧力、撹拌速度、滞留時間など)の制御;及び/又は
ii)デヒドロ塩素化領域に存在する塩素化アルカン出発物質及び/又は触媒の量の制御。
塩素化アルカン異性体混合物出発物質の量の制御は、デヒドロ塩素化領域中への出発物質の供給割合の制御により達成されることができる。
【0216】
本発明の実施形態では、第一C塩素化アルカン異性体、1つ以上の追加の塩素化アルカン異性体、所望により第一C塩素化アルケン、及び所望により触媒を含む残留混合物が、デヒドロ塩素化領域及び/又は蒸留装置から抽出されることができる。デヒドロ塩素化領域から抽出された反応混合物に存在する第一C塩素化アルカン異性体:1つ以上の追加の塩素化アルカン異性体のモル比が、10:1、7:1又は5:1から約4:1、3:1、2:1、約1:1又は約0.5:1までの領域内でよい。
【0217】
デヒドロ塩素化領域及び/又は蒸留装置から抽出された混合物は、次に、追加の処理工程へ供されることができる。言い換えれば、洗浄工程は、第一C塩素化アルケンに富むか、又は第一C塩素化アルケンから成る流れを抽出するために行われる任意の蒸留工程の前又は後に、行われることができる。
【0218】
例えば、残留混合物は、洗浄工程へ供されることができる。そのような工程では、残留混合物は、触媒(存在するならば)を不活性化する役割を果たす水性処理領域において、水性溶媒と接触させられる。また、所望により、残留混合物は、水性処理領域において、酸と、例えば硫酸、リン酸及び/又は塩酸などの無機酸と接触させられることができる。酸は、純品又は希釈品でよい。水性処理工程は、そうしないと問題になる特定の種類の不純物、特に酸素化不純物を残留物から除去するという有利な効果を奏する。
【0219】
そのような実施形態では、触媒失活は、低温で水を要するが、短い接触時間でさえも、例えば約5分、約10分、約20分又は約30分でさえも達成されることができる。塩素化及び酸素化された不純物の加水分解及び抽出のためには、水との接触時間が、より長く、例えば、最大で、約1時間、約2時間、約5時間若しくは約10時間になるか、かつ/又は、その温度が約50℃以下、約40℃以下若しくは約30℃以下である。
【0220】
希釈酸を利用する場合、これには、残留混合物が接触する水性溶媒を追加的に提供してよい。追加的に又は代替的に、水性溶媒は、水性処理領域中へ独立して加えられることができる水(任意の形態、例えば、蒸気などでよい)を含んでよい。
【0221】
酸を水性処理領域中へ加える実施形態では、これは、好ましくは、そこに存在する混合物のpHを約5以下、約4以下、約2以下又は約1以下へ減少させる。
【0222】
残留混合物(第一C塩素化アルカン異性体、1つ以上の追加の塩素化アルカン異性体、所望により第一C塩素化アルケン、及び所望により触媒を含む)を水性溶媒と接触させると、二相性混合物が形成される。
【0223】
水性相と有機相を含む二相性混合物は、水性溶媒と大部分の有機残分の両方が存在する結果として、水性処理領域において(又は特定の実施形態では、 それから離れて)形成されることができる。
【0224】
そのような二相性混合物が形成される実施形態では、有機相は、当業者に知られる相分離技術及び/又は装置を用いて、二相性混合物から抽出されることができる。二相性混合物が形成される場合、水性処理領域において、有機相は、水性処理領域からの逐次的な相抽出により水性相から分離されることができる。残留物から除去された不純物を含む水性相は、さらに処理されることができる。
【0225】
相分離効率を最大化して、二相性混合物からの相抽出を促進するために、当業者に知られた技術及び/又は装置を用いて、断続的又は連続的のいずれかで、ハロアルカン抽出剤及び/又は相分離強化剤(例えば、C塩素化アルカン異性体の1つ、幾つか若しくは全て、及び/又は各種のアルコール、及び/又は各種のケトン)を水性処理領域へ加えてよい。C塩素化アルカン異性体の使用は、これらの化合物が、生成物プロセスの一部分であり、特定の分離工程を用いる除去を要しないので好ましい。所望により、反応混合物に存在する塩素化アルケン及び塩素化アルカンとは沸点が十分に異なる相分離強化剤(例えば、極性アルコール及び/又はケトンなど)を利用してよい。沸点の差は、少なくとも20℃、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃又は少なくとも約60℃であるものとする。利用可能な相分離強化剤の例としては、脂肪族ケトン、例えばアセトンなど;及び脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール(単独種又は複数種)、ブタノール(単独種又は複数種)などが挙げられる。
【0226】
本発明の実施形態では、抽出された有機相は、次に蒸留工程に供されることができ、その工程では、第一C塩素化アルケン(この時点では著しく精製されている)及び別のC塩素化アルカン異性体の流れ又は留分が、蒸留し尽くされる。重い最終残留物が、蒸留装置から抽出されることができ、所望により、ろ過及び焼却され、かつ/又は高温塩素化分解されることができる。そのようなプロセスを行う特定の実施形態を例7に示す。
【0227】
他の塩素化アルカン異性体が、そのように第一塩素化アルカン異性体から分離され、蒸留後に、それ自体で使用されることができ、又は、本明細書に開示されるか、若しくは例えば国際公開第2016/058567号に記述されるデヒドロ塩素化法を用いて、対応する塩素化アルケンへ変換されることができる。
【0228】
本発明の方法に従って形成された塩素化アルケンの安定性を向上させるために、安定化化合物を加えることができる。これは、その化合物が酸素含有環境に貯蔵又は輸送されることになる場合に特に適する。安定化剤の例としては、芳香族、アミン、チアジンなどのヒドロキシル誘導体が挙げられる。安定化剤は、利用される場合には、約1〜100ppm又は約2〜約50ppmの量で存在してよい。
【0229】
塩素化アルケンの含水量を減らすと、安定性に役立つことが見出された。したがって、本発明の実施形態では、反応条件は、得られた塩素化アルケン生成物(単数又は複数)が約100ppm未満、約50ppm未満、又は約10ppm未満の水を含むように制御される。
【0230】
本発明の実施形態では、デヒドロ塩素化反応が、気相(すなわち、第一C塩素化アルカンと第一C塩素化アルケンの両方が気体状態である)において行われる。そのような実施形態では、デヒドロ塩素化領域を約250℃〜約500℃、約300℃〜約425℃又は約350℃〜約400℃の温度で運転してよい。
【0231】
デヒドロ塩素化領域を大気圧未満、大気圧、又は大気圧超で運転してよい。
【0232】
デヒドロ塩素化反応が気相において起こる本発明の実施形態では、デヒドロ塩素化領域における反応混合物の滞留時間は約0.5秒〜約10秒の範囲でよい。追加的に又は代替的に、金属触媒を使用してよく、例えば、鉄を50質量%以上の濃度で含むものなどを使用してよい。本発明の方法に利用されることができる触媒の例としては、ステンレス鋼、例えばフェライト系及び/又はオーステナイト系(austenic)鋼等が挙げられる。本発明の方法に利用される触媒は、好ましくは、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%又は少なくとも約95質量%の鉄含有量を有する。純鉄を触媒として採用してよい。
【0233】
触媒は、任意の形態で、例えば、流動床配列及び/又は固定床配列などで利用されることができる。追加的に又は代替的に、触媒を含むデヒドロ塩素化領域のコンポーネントを利用することができる。
【0234】
デヒドロ塩素化工程が気相において行われる実施形態では、デヒドロ塩素化領域から抽出された反応混合物が、典型的には気相である。それらの熱生成ガスが、液体状態の塩素化有機化合物を得るために、当業者に知られた任意の技術及び/又は装置を用いて、濃縮されることができる。
【0235】
デヒドロ塩素化を液相と気相のいずれで行うかによらず、第一C塩素化アルケン及び未反応塩素化アルカン異性体並びに不純物を含む塩素化有機混合物が、次に、精製された第一C塩素化アルケンを得るために、上述のとおり、デヒドロ塩素化後の(蒸留及び/又は加水分解工程を含む)処理工程の1つ以上に供されることができる。
【0236】
当業者に知られた任意の種類の反応器が、本発明の方法に利用されることができる。デヒドロ塩素化領域を提供するために使用されることができる反応器の具体例は、カラム反応器、管型反応器、バブルカラム反応器、プラグフロー反応器及び連続的攪拌槽反応器である。
【0237】
本発明の方法は、単一のデヒドロ塩素化領域又は複数のデヒドロ塩素化領域において、行われることができる。複数のデヒドロ塩素化領域(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上のデヒドロ塩素化領域)が利用される場合には、これらを順次に(すなわち、反応混合物が複数のデヒドロ塩素化領域に沿って流れるように)及び/又は並列に運転してよい。
【0238】
本発明の実施形態では、複数のデヒドロ塩素化領域が利用される場合には、所望により、直列モードにおいて、これらは、同一の又は異なる反応器に存してよい。例えば、複数のデヒドロ塩素化領域が利用される場合には、これらは、それぞれ最適化操作条件(例えば、温度、滞留時間など)を有するように構成されることができる複数(例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上)の反応器(例えば、連続的攪拌槽反応器)において提供されることができる。
【0239】
実施形態では、複数のデヒドロ塩素化領域が、本発明の方法に利用可能な蒸留カラムに存在してよい。そのような実施形態では、デヒドロ塩素化は、反応性蒸留により達成されることができ、例えば、デヒドロ塩素化反応は、蒸留カラム内のトレイ上で及び/又はカラムに提供されたパッキン上で行われる場合がある。反応性蒸留が行われる実施形態では、蒸留カラムは、好ましくは、アルケンがアルカンから分離されるストリッピング領域を含む。ストリッピング領域は、液体供給部より低い位置にあることができる。
【0240】
本発明の方法において行われるデヒドロ塩素化反応から得られる反応混合物の成分(例えば、塩素化アルケン、塩化水素及び/又はC塩素化アルカン異性体出発物質)は、余り好ましいことではないが、特定の材料と相互作用する場合があるということが見出された。したがって、本発明の実施形態では、反応混合物と接触するデヒドロ塩素化領域の部品は、約20%以下、約10%以下若しくは約5%以下の鉄分を有してよく、かつ/又は非金属材料から、例えばエナメル、ガラス、含浸グラファイト(例えば、フェノール樹脂が含侵されたもの)、炭化ケイ素及び/若しくはプラスチック材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ化物及び/若しくはポリフッ化ビニリデンなど)から形成される。
【0241】
本発明の実施形態では、本発明の方法に利用される塩素化アルケンが接触し得る全装置の表面が、上記で特定されたものなどの適切な材料から形成される。起こり得る例外は、本発明の方法に利用される装置の1つ以上の領域が、触媒として働くように選択される金属材料で形成される場合である。
【0242】
本発明の方法の一つの利点は、所望の結果が、塩素化及び/又はデヒドロ塩素化領域を連続(定常状態)と回分的プロセスのいずれで運転するかによらず得られるということである。用語「連続プロセス」及び「回分的プロセス」は、当業者により理解され得る。
【0243】
ここに提供される開示から明らかなとおり、本発明の進歩的プロセスは、統合プロセスとして、十分に連続なモードで、所望により、他のプロセスとの併用で、行われることができる。本発明のプロセス工程は、出発化合物を利用してよく、出発化合物を高純度な中間体へ変換し、中間体自体をさらに処理して、商業的価値を最大化するように所定の比率を有する複数の所望の対象塩素化化合物を得てよい。それらの化合物は、幅広い下流プロセスに、例えば水素フッ素化変換に原料として利用されるのに必要な純度を有する。
【0244】
本発明の方法は、生成物の純度を、高純度な対象化合物に達するように制御することを可能にする。本方法は、有利には、高収率、高選択性、及び特に連続プロセスにおいて課題となる高効率のバランスを取る。本発明の方法は、高純度塩素化アルケン化合物を工業規模で経済的に生産されるようにして、それらの化合物の各種の不純物濃度を著しく低くすることを可能にする。
【0245】
ここでの開示から明らかなとおり、説明された進歩的な塩素化及びデヒドロ塩素化工程の使用は、高純度な、工業的に価値のあるC塩素化化合物を製造する効率的な合理化プロセスを提供する。それらの工程の両方が、それぞれ進歩的であるが、特に有利な結果は、それらの工程を順次に行うときに認められる。
【0246】
したがって、本発明のさらなる態様によれば:
複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物を調製する工程であって、塩素化領域においてC塩素化アルカン出発物質を塩素化して、複数のC塩素化アルカン異性体を生成させることを含み、複数のC塩素化アルカン異性体の各々が、C塩素化アルカン出発物質より少なくとも1つ多い塩素原子を有し、塩素化領域に存在する反応混合物においてC塩素化出発物質の塩素化により得られるC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比が、約40:60を超えない(すなわち、C塩素化アルカン出発物質の変換率が60%を超えない)ように、C塩素化アルカン出発物質の濃度が制御される工程;
反応混合物を1つ以上の第一蒸留工程に供して、C塩素化アルカン出発物質流、複数のC塩素化アルカン異性体流及び所望により単一のC塩素化アルカン異性体流を生成させる工程;
複数のC塩素化アルカン異性体流を選択的デヒドロ塩素化工程に供して、そこでC塩素化アルカン異性体の1つ(第一C塩素化アルカン異性体)を個別の第一C塩素化アルケンへ変換し、他の複数のC塩素化アルカン異性体のいずれかを実質的にデヒドロ塩素化させない工程;並びに
第一C塩素化アルケンを、デヒドロ塩素化工程において調製された混合物から分離する工程;
を含む方法が、提供される。
【0247】
誤解を避ける為に、本発明のこの態様に利用される塩素化、蒸留、デヒドロ塩素化及び分離工程は、本明細書における類似の工程と関連して示されたような条件、装置、試薬、触媒などを用いて、行われることができる。
【0248】
本発明のこの態様の実施形態では、上記とは別の追加の蒸留工程が、塩素化工程後及びデヒドロ塩素化工程前には行われない。
【0249】
第一C塩素化アルケンの分離は、好ましくは、蒸留技術、例えば本明細書に述べられたようなもの等を用いて、達成される。
【0250】
本発明のこの態様の方法の一例として、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの混合物は、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素化することにより、高純度で生成されることができる。次に、混合物を蒸留して、以下の成分を提供する:
・1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの混合物であり、この混合物は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン:1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの比が、塩素化領域に存在する反応混合物よりも高い;
・未反応1,1,1,3−テトラクロロプロパン出発物質の流れであり、この流れは、塩素化領域へ戻されて再利用されることができる;
・純1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンであり、下流の塩素化アルケン及び/又はフッ化炭素の生成に有用である;並びに
・重最終生成物であり、さらに処理されることになり、例えば高温塩素化分解又は焼却されることになる。
【0251】
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの比が増加した(例えば、93:7)複数のペンタクロロプロパン異性体の混合物は、次に、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの存在下で1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンのみをそれに対応するアルケン(1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン)変換するような条件下で、選択的にデヒドロ塩素化されることができる。
【0252】
1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの混合物(未変換1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの濃度が低い)は、首尾よく、より容易に蒸留により分離されて、高純度1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン(1230za)、及び未変換の1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの混合物を提供し、次いで、未変換混合物を、塩素化後蒸留工程で再利用することができ、代替的には塩素化工程で再利用することができる。単離された1230zaは、次に、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン気泡構造形成剤を製造するための原料として使用されることができる。
【0253】
本発明の方法は、当業者が詳しく知る単純で容易な技術及び装置を用いて、高純度な塩素化アルカン異性体混合物及びアルケンを生成させることを可能にするので、特に有利である。
【0254】
本発明の統合的合理化かつ所望により連続的なプロセスに従って、(毒性塩化ビニルを使用せず、エチレンから)調製された制御済みの不純物プロファイルを有する高純度な化合物の例としては:
1,1,3,3−テトラクロロプロペン(気泡構造形成剤1233zdの生成に有用である);
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(高純度な1230xaへの変換又は1234yf合成に有用である);
等が挙げられる。
【0255】
当業者にとって明らかなとおり、複数のC塩素化アルカン及びアルケンを製造する従来の方法は、幾つかの分離工程を伴い、かつ、より幅広い出発原料の使用を要する。上記の所望の塩素化生成物の製造には、ばらつきがあり得る。一方で、本発明の方法は、最小数の出発物質を用いて、単一製造ラインから、幅広い工業的に価値のある生成物を製造することを達成できる。さらに、本方法は、有利には、以下のプロセスにおいて広範な処理なしに使用可能な原料を提供する:
・塩素化分解プロセス(上述の塩素化後蒸留工程から得ることができる蒸留残留物流に由来する重副生成物を利用して、有用な出発原料である四塩化炭素(CTC)を調製する);
・上述の塩素化後蒸留工程から得ることができる単一異性体流からの塩素化アルケンの生成(C塩素化原料プロセスは、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,3,3−テトラクロロプロペン及び1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製する);並びに
・下流プロセスにおける塩化水素ガスの利用、例えば、 HCl電気分解、オキシ塩素化、グリセロール由来のジクロロプロパノール、グリセロール由来のエピクロロヒドリン、及び純塩酸の製造。
【0256】
本発明の実施形態では、本発明の方法を使用して、高純度な塩素化アルカン組成物、例えば、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを製造することができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、本明細書で説明されたプロセスから得ることができるC塩素化アルカン化合物を含む組成物が提供され、その組成物は、以下の成分を含む:
・少なくとも約95%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、少なくとも約99.9%、又は少なくとも約99.95%の量のC塩素化アルカン、及び下記成分の1つ以上;
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、又は約10ppm以下の量の含酸素有機化合物;
・約500ppm未満、約250ppm以下、又は約100ppm以下の量の、対象の塩素化アルカンの異性体;
・約500ppm未満、約250ppm以下、又は約100ppm以下の量の非異性化アルカン不純物;
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、又は約50ppm以下の量の塩素化アルケン;
・約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下又は約50ppm以下の量の水;
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下又は約10ppm以下の量の、塩素の無機化合物;
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下又は約10ppm以下の量の臭素化有機化合物;及び/又は
・約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、約10ppm以下又は約5ppm以下の量の鉄。
【0257】
本発明の実施形態では、本発明の方法を使用して、高純度な塩素化アルケン組成物、例えば、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、2,3,3,3−テトラクロロプロペン、1,1,2,3−テトラクロロプロペン又は1,3,3,3−テトラクロロプロペンを製造することができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、本明細書で説明されたプロセスから得ることができるC塩素化アルケンを含む組成物が提供され、その組成物は、以下の成分を含む:
約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.2%以上、約99.5%以上又は約99.7%以上のC塩素化アルケン;
約50000ppm未満、約25000ppm未満、約20000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルカン出発物質;
約50000ppm未満、約25000ppm未満、約20000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化Cアルカン及びCアルケン、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化C5−6アルカン不純物;
約5000ppm未満、1000ppm、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルケン不純物(すなわち、目標化合物以外の塩素化アルケン);
約1000ppm未満、約500ppm未満、約250ppm未満、又は約100ppm未満の含酸素有機化合物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水。
【0258】
本発明のさらなる態様によれば、以下の工程:上述のとおりであるか、又は本発明のデヒドロ塩素化プロセスから得られるような高純度な塩素化アルケン組成物を提供する工程;及び塩素化アルケンをヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィンへ変換する工程を含む、ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィンの製造方法が提供される。
【0259】
この変換は、当業者に知られる任意の方法によって達成されることができる。本発明の実施形態では、その変換は、水素フッ素化プラントにおいて行われる。
【0260】
好ましい実施形態では、本組成物の主成分として存在する塩素化アルケンは、二塩素化末端炭素原子を有し、例えば1,1,3,3−テトラクロロプロペンであり、そしてヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィンは、好ましくは、三フッ素化末端炭素原子を有し、例えば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである。
【0261】
また、本発明の方法では、下流反応において有用性を見出せる複数のC塩素化アルカン異性体の高純度な組み合わせの調製が、許容される。さらに、本発明の方法は、商業的に価値のあるプロセスにおいて、そのような組み合わせを原料として利用することができる。
【0262】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、純度(すなわち、質量割合としての含有率)が約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、又は約99.9%以上の複数のC塩素化アルカン異性体(例えば、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン又は1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン)を含む(本発明の方法から得られるかどうかはを問わない)組成物が提供され、その組成物は、好ましくは、さらに以下の成分を含む:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過少に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の塩素化アルケン化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、上記異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水。
【0263】
本発明のさらなる態様によれば、所望により1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから選択されるC塩素化アルカンと、所望により1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン、1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン、及び1,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペンから選択されるC塩素化アルケンとを含む(本発明の方法から得られるかどうかはを問わない)組成物であって、C塩素化アルカンとC塩素化アルケンは、共に約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、又は約99.9%の純度を有する組成物が提供され、その組成物は、さらに以下の成分を含む:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、第一C塩素化アルカンよりも塩素原子が少ないC塩素化アルカン化合物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、C塩素化アルカンよりも塩素原子が多いC塩素化アルカン化合物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、C塩素化アルケン化合物以外の塩素化アルケン化合物;
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、C塩素化アルカン化合物とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水。
【0264】
上記で確認されたとおり、本発明の組成物、及び本発明の方法から得られる生成物は、有利には、著しく高純度で許容可能な複数の不純物の組み合わせから恩恵を受ける。これは、それらを下流反応での使用、特にヒドロフッ素化又はヒドロクロロフッ素化アルカン又はアルケン化合物の調製において適合させる。
【0265】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、ここに説明された組成物又はここに説明された方法の生成物の、フッ素化アルカン又はアルケン化合物の調製における使用が提供される。本発明のこの態様の実施形態では、フッ素化アルカン又はアルケン化合物は、三フッ素化末端炭素原子を有してよく、例えば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO−1233zd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO−1233xf)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)又は1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)などである。
【0266】
本発明のこの好ましい態様では、本発明のデヒドロ塩素化工程は、結果として、例えば上記で説明されたような1,1,3,3,−テトラクロロプロペンを含む高純度組成物を生成させ、それは、ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィン、好ましくは、三フッ素化末端炭素原子を含むもの、例えば、1−クロロ−3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン及び/又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンなどの直接又は間接生成に使用される。以下、本発明の実施形態の例を列記する。
〔1〕複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物の製造方法であって、C塩素化アルカン出発物質を塩素化領域において塩素化して複数のC塩素化アルカン異性体を生成させる工程を含み、該複数のC塩素化アルカン異性体の各々が、該C塩素化アルカン出発物質より少なくとも1つ多い塩素原子を有し、該C塩素化アルカン出発物質の該複数のC塩素化アルカン異性体への変換率が、該塩素化領域に存在する反応混合物中のC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比により表され、かつ約40:60を超えないように該C塩素化アルカン出発物質の濃度を制御する、複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物の製造方法。
〔2〕前記C塩素化アルカン出発物質の塩素化が、該出発物質を塩素と反応させることにより行われ、該塩素は、好ましくは、約99.5%以上の純度を有する、項目1に記載の方法。
〔3〕前記塩素が、前記塩素化領域へ前記C塩素化出発物質に関して不足当量的に供給される、項目2に記載の方法。
〔4〕塩素分子が、前記塩素化領域へC塩素化アルカン出発物質の約15モル%〜約35モル%又は約45モル%の量で供給される、項目2又は3に記載の方法。
〔5〕前記塩素化領域へ供給される塩素が、約100ppm以下の酸素含有量を有する、項目2〜4のいずれかに記載の方法。
〔6〕前記C塩素化アルカン出発物質の塩素化が、UV及び/若しくは可視光への曝露下、並びに/又はルイス酸触媒の存在下で行われる、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
〔7〕前記ルイス酸が、遷移金属又は硫黄のハロゲン化物である、項目6に記載の方法。
〔8〕前記ルイス酸触媒が、鉄、アルミニウム、アンチモン、ランタン、スズ、チタン等の遷移金属又はホウ素、硫黄若しくはヨウ素等の元素のハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、フッ化物又はヨウ化物)、例えば、FeCl、AlCl、SbCl、SnCl、TiCl、BF、SOCl及び/又は金属トリフレートである、項目6又は7に記載の方法。
〔9〕前記ルイス酸触媒が、前記反応混合物に約100ppm未満、約75ppm未満、約50ppm未満、又は約25ppm未満の量で存在する、項目6〜8のいずれかに記載の方法。
〔10〕前記塩素化領域の動作温度が、約−30℃〜200℃である、項目1〜8のいずれかに記載の方法。
〔11〕前記反応混合物が、約25000ppm未満の過剰に塩素化された不純物を含む、項目1〜10のいずれかに記載の方法。
〔12〕前記C塩素化アルカン出発物質が、三塩素化末端炭素原子を含む、項目1〜11のいずれかに記載の方法。
〔13〕前記C塩素化アルカン出発物質が、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、1,2,2,3−テトラクロロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロプロパン、1,2,2−トリクロロプロパン、1,2−ジクロロプロパン、又は1,1,2,2−テトラクロロプロパンと1,2,2,3−テトラクロロプロパン若しくは1,1,2,3−テトラクロロプロパンと1,2,2,3−テトラクロロプロパンの混合物、又はそれらの混合物である、項目1〜12のいずれかに記載の方法。
〔14〕前記C塩素化アルカン出発物質が、20ppm未満の塩化ビニルを含み、かつ/又は塩化ビニルを使わなかった方法から調製された、項目1〜13のいずれかに記載の方法。
〔15〕前記複数のC塩素化アルカン異性体が、2つの異性体として第一及び第二異性体を含むか、又は第一及び第二異性体から成る、項目1〜14のいずれかに記載の方法。
〔16〕前記塩素化領域において生成した前記複数の異性体において、第一異性体が、第二異性体より多い量で存在する、項目1〜15のいずれかに記載の方法。
〔17〕前記第一及び第二異性体のモル比が、次の:ルイス酸触媒の使用、前記反応混合物のUV/可視光への曝露、前記塩素化領域における前記反応混合物の滞留時間及び/又は前記塩素化領域内の動作温度の1つ以上により制御される、項目16に記載の方法。
〔18〕前記塩素化領域において生成した前記複数の異性体中の第一異性体:第二異性体のモル比が、約60:40又は約70:30から約95:5又は約98:2までである、項目1〜17のいずれかに記載の方法。
〔19〕前記塩素化領域において生成した前記複数の異性体中の第一異性体:第二異性体のモル比が、40:60〜約60:40である、項目1〜18のいずれかに記載の方法。
〔20〕前記複数のC塩素化アルカン異性体が:
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン、又は
1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパン、
から成る、項目1〜19のいずれかに記載の方法。
〔21〕前記複数のC塩素化アルカン異性体が、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから成り、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンが第一異性体であり、かつ1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが第二異性体である、項目15〜20のいずれかに記載の方法。
〔22〕前記第一異性体:前記第二異性体のモル比が、70:30〜99:1である、項目21に記載の方法。
〔23〕ルイス酸触媒が、塩素化領域に供給されず、かつ該塩素化領域が、UV/可視光に曝される、項目21又は22に記載の方法。
〔24〕前記複数のC塩素化アルカン異性体が、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから成り、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが第一異性体であり、かつ1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンが第二異性体である、項目15〜20のいずれかに記載の方法。
〔25〕前記第一異性体:前記第二異性体のモル比が、70:30〜99:1である、項目24に記載の方法。
〔26〕ルイス酸触媒が塩素化領域へ供給され、該塩素化領域が、所望によりUV/可視光へ曝され、該ルイス酸触媒が、例えば遷移金属を該塩素化領域へ加えることにより、所望によりin situで形成される、項目25に記載の方法。
〔27〕前記塩素化領域から抽出された前記反応混合物の塩素含有量が、約0.05%以下である、項目1〜26のいずれかに記載の方法。
〔28〕前記反応混合物に対する1つ以上の蒸留工程をさらに含み、該1つ以上の蒸留工程が、前記塩素化領域と直通した蒸留装置を用いて行われるか、かつ/又は前記塩素化領域から離れた蒸留装置を用いて前記塩素化領域から抽出された反応混合物に対して行われる、項目1〜27のいずれかに記載の方法。
〔29〕前記1つ以上の蒸留工程の結果として、前記複数のC塩素化アルカン異性体に富むか、又は前記複数のC塩素化アルカン異性体から成る複数のC塩素化アルカン異性体流が得られる、項目28に記載の方法。
〔30〕前記1つ以上の蒸留工程の結果として、以下の流れ:
前記C塩素化アルカン出発物質に富むか、又は前記C塩素化アルカン出発物質から成る1つ以上の未反応C塩素化アルカン出発物質流;
前記複数のC塩素化アルカン異性体の1つに富むか、又は前記複数のC塩素化アルカン異性体の1つから成る1つ以上の単一異性体流;並びに
過少に塩素化された不純物、過剰に塩素化された不純物及び/若しくは前記異性体とは炭素原子数が異なる不純物に富むか、又は過少に塩素化された不純物、過剰に塩素化された不純物及び/又は前記異性体とは炭素原子数が異なる不純物から成る1つ以上の蒸留残留物流;
の1つ以上が得られる、項目29に記載の方法。
〔31〕単一異性体流が蒸留により得られ、該単一異性体流が、第二異性体に富むか、又は第二異性体から成り、結果として、前記複数のC塩素化アルカン異性体中の第一及び第二異性体のモル比が変化し、該第二異性体の割合が減少し、該第一異性体の割合が増加する、項目30に記載の方法。
〔32〕前記第一異性体の割合の増加が、少なくとも約5%である、項目31に記載の方法。
〔33〕前記第一異性体の割合の増加が、少なくとも約10%である、項目31又は32に記載の方法。
〔34〕未反応C塩素化アルカン出発物質流が、前記塩素化領域と連通した蒸留装置を用いて、直接蒸留を介して得られる、項目28〜33のいずれかに記載の方法。
〔35〕複数のC塩素化アルカン異性体流及び/又は1つ以上の単一異性体流(単数又は複数)が、得られる場合には、以下の成分:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過少に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の塩素化アルケン化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、前記異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水;
を含む、項目28〜34のいずれかに記載の方法。
〔36〕前記反応混合物が、前記塩素化領域から抽出され、1つ、2つ、3つ又は4つの連続して配列された下流塩素化領域において後続の塩素化工程に供され、該下流塩素化領域のいずれかに存在する該反応混合物中のC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比が、約40:60を超えない、項目1〜35のいずれかに記載の方法。
〔37〕以下の工程:
混合物を水性処理領域中へ供給する工程;
該混合物を水性溶媒と接触させる工程;及び
減少した濃度の酸素化化合物を含む処理混合物を抽出する工程;
をさらに含み、
該混合物が、前記塩素化領域から抽出された反応混合物であり、
複数のC塩素化アルカン異性体流が、
該反応混合物から、又は
部分的に蒸留された反応混合物、すなわち、1つ以上の未反応C塩素化アルカン出発物質流、1つ以上の単一異性体流及び/若しくは1つ以上の蒸留残留物流が既に蒸留を介して得られている塩素化領域から抽出された反応混合物から、
蒸留を介して得られる、項目28〜34のいずれかに記載の方法。
〔38〕少なくとも2つのC塩素化アルカン異性体と含酸素有機化合物とを含む混合物を水性処理領域中へ供給する工程;
該混合物を水性溶媒と接触させる工程;及び
減少した濃度の酸素化化合物をい含む処理混合物を抽出する工程;
を含む、少なくとも2つのC塩素化アルカン異性体と含酸素有機化合物とを含む混合物の処理方法。
〔39〕前記処理混合物が、含酸素有機化合物を約1000ppm以下、約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、又は約10ppm以下の量で含む、項目37又は38に記載の方法。
〔40〕項目23〜25のいずれかに記載の水性処理工程が、前記蒸留工程(単数又は複数)の無し、1つ、幾つか又は全てに先行する、項目37〜39のいずれかに記載の方法。
〔41〕前記塩素化領域が、連続攪拌槽反応器、循環式若しくはループ反応器、及び/若しくは管型反応器内に、又は所望により直列に配列された複数の同一の若しくは異なる種類の前記反応器内に含まれる、項目28〜40のいずれかに記載の方法。
〔42〕前記塩素化領域が連続攪拌槽反応器に含まれ、塩素化が、UV及び/又は可視光により促進され、前記反応混合物中のC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比が、約60:40を超えない、項目41に記載の方法。
〔43〕前記反応混合物中のC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比が、95:5〜75:25であり、所望により、該反応混合物を蒸留装置へ連通させて該反応混合物を直接蒸留に供することができるように構成された循環式又はループ反応器に前記塩素化領域が含まれ、好ましくは、塩素化領域の動作温度が約120℃を超えない、項目41に記載の方法。
〔44〕前記塩素化領域が、流下膜管型光反応器に含まれ、かつ前記反応混合物中のC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比が、約40:60を超えない、項目41に記載の方法。
〔45〕塩素化及び/又は蒸留が、酸素の不存在下で行われる、項目1〜44のいずれかに記載の方法。
〔46〕C塩素化アルケンの製造方法であって、
複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物を提供する工程を含み、該複数のC塩素化アルカン異性体の少なくとも2つの沸点が、≦15℃で異なり、
該混合物をデヒドロ塩素化領域において選択的デヒドロ塩素化工程に供する工程を含み、該デヒドロ塩素化領域において、該少なくとも2つのC塩素化アルカン異性体の一方として第一C塩素化アルカン異性体が、個別の第一C塩素化アルケンへ選択的に変換され、かつ該複数のC塩素化アルカン異性体の他方のいずれかが、実質的にデヒドロ塩素化しない、C塩素化アルケンの製造方法。
〔47〕デヒドロ塩素化が、液相において行われ、所望により、前記デヒドロ塩素化領域の動作温度が、約50℃、約70℃又は約80℃から約120℃又は約150℃までである、項目46に記載の方法。
〔48〕前記複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物が、項目1〜23のいずれかに記載の方法から得られる、項目46又は47に記載の方法。
〔49〕前記複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物が、項目17〜31のいずれかに記載の方法から得られる複数のC塩素化アルカン異性体流である、項目48に記載の方法。
〔50〕前記複数のC塩素化アルカン異性体を含む混合物が、約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、又は約99.9%以上の純度を有し、さらに以下の成分:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過少に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の塩素化アルケン化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、前記異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水;
を含む、項目46〜49のいずれかに記載の方法。
〔51〕金属含有触媒が、前記選択的デヒドロ塩素化工程において使用される、項目46〜50のいずれかに記載の方法。
〔52〕前記触媒が、元素鉄及び/又はFeClなどの鉄塩を含む、項目51に記載の方法。
〔53〕前記デヒドロ塩素化領域が、アルカリ性水酸化物を含まない、項目46〜52のいずれかに記載の方法。
〔54〕デヒドロ塩素化が、1つ以上の反応器に含まれてよい一連のデヒドロ塩素化領域において行われ、該一連のデヒドロ塩素化領域を直列として運転させる、項目46〜53のいずれかに記載の方法。
〔55〕前記デヒドロ塩素化領域において生成した反応混合物が、第一C塩素化アルカン異性体の割合が減少した前記複数のC塩素化アルカン異性体、第一C塩素化アルケン、所望により触媒及び所望により不純物を含む、項目46〜54のいずれかに記載の方法。
〔56〕第一C塩素化アルケンに富むか、又は第一C塩素化アルケンから成る流れが、前記反応混合物から蒸留を介して得られる、項目46〜55のいずれかに記載の方法。
〔57〕第一C塩素化アルカン異性体に富むか、又は第一C塩素化アルカン異性体から成る単一異性体流が、前記反応混合物から蒸留を介して得られる、項目56に記載の方法。
〔58〕前記複数のC塩素化アルカン異性体が、第二C塩素化アルカン異性体を含み、該第二C塩素化アルカン異性体に富むか、又は該第二C塩素化アルカン異性体から成る単一異性体流が、前記反応混合物から蒸留を介して得られる、項目56又は57に記載の方法。
〔59〕前記単一異性体流(単数又は複数)及び/若しくは、前記第一C塩素化アルケンに富むか、若しくは前記第一C塩素化アルケンから成る流れが、同一の又は異なる蒸留工程を介して得られる、項目57又は58に記載の方法。
〔60〕蒸留が、前記デヒドロ塩素化領域と直接連通した蒸留装置を用いて行われ、かつ/又は前記塩素化領域から離れた蒸留装置を用いて前記デヒドロ塩素化領域から抽出された反応混合物に対して行われる、項目56〜59のいずれかに記載の方法。
〔61〕前記反応混合物が、1つ以上の追加の処理工程に供され、該追加の処理工程の少なくとも1つが、所望により、該反応混合物を蒸留に供する前に行われる、項目56〜60のいずれかに記載の方法。
〔62〕前記1つ以上の追加の処理工程が、水性処理領域において前記反応混合物を水性溶媒と接触させて、二相性混合物を生成させる工程;及び該二相性混合物から有機相を抽出する工程を含む、項目61に記載の方法。
〔63〕前記水性処理領域における前記混合物/二相性混合物のpHが、酸の添加後、約4以下である、項目62に記載の方法。
〔64〕前記混合物/二相性混合物が、ハロアルカン抽出剤で行われる、項目62又は63に記載の方法。
〔65〕前記第一C塩素化アルケンが、前記有機相から抽出される、項目61〜64のいずれかに記載の方法。
〔66〕前記方法を行う装置であって任意の塩素化アルケン含有混合物が該装置の使用中に接触することになる装置の幾つか又は全ての表面が、約20%以下、約10%以下若しくは約5%以下の鉄含有量を有し、かつ/又は非金属材料、例えば、エナメル、ガラス、含浸グラファイト(例えばフェノール樹脂で含侵されたもの)、炭化ケイ素、及び/若しくはプラスチック材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシフッ化物及び/又はポリフッ化ビニリデン等)から形成される、項目46〜65のいずれかに記載の方法。
〔67〕前記複数のC塩素化アルカン異性体が:
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン;
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン;又は
1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパン;
から成る、項目46〜66のいずれかに記載の方法。
〔68〕前記複数のC塩素化アルカン異性体が、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから成り、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンが第一C塩素化アルカン異性体であり、かつ1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが第二C塩素化アルカン異性体である;
前記複数のC塩素化アルカン異性体が、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンから成り、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが第一C塩素化アルカン異性体から成り、1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンが第二塩素化アルカン異性体である;又は
前記複数のC塩素化アルカン異性体が、1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンから成り、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパンが第一C塩素化アルカン異性体であり、かつ1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパンが第二塩素化アルカン異性体である;
項目46〜67のいずれかに記載の方法。
〔69〕以下の工程:
複数のC塩素化アルカン異性体を含む反応混合物を調製する工程であって、C塩素化アルカン出発物質を塩素化領域において塩素化して該複数のC塩素化アルカン異性体を生成させる工程を含み、該複数のC塩素化アルカン異性体の各々が、該C塩素化アルカン出発物質よりも少なくとも1つ多い塩素原子を有し、該C塩素化アルカン出発物質の該複数のC塩素化アルカン異性体への変換率が、該塩素化領域に存在するC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比により表され、かつ約40:60を超えないように該C塩素化アルカン出発物質の濃度が制御される工程;
該反応混合物を1つ以上の第一蒸留工程に供して、複数のC塩素化アルカン異性体流、1つ以上の単一C塩素化アルカン異性体流、及び所望によりC塩素化アルカン出発物質流を生成させる工程;
該複数のC塩素化アルカン異性体流を選択的デヒドロ塩素化工程に供して、該選択的デヒドロ塩素化工程において、該複数のC塩素化アルカン異性体の一方として第一C塩素化アルカン異性体が、個別の第一C塩素化アルケンへ変換され、該複数のC塩素化アルカン異性体の他方のいずれかが、実質的にデヒドロ塩素化しない工程;並びに
該第一C塩素化アルケンに富むか、又は該第一C塩素化アルケンから成る流れを、該デヒドロ塩素化工程において調製された混合物から得る工程;
を含む方法。
〔70〕前記第一C塩素化アルケンが、1,1,3,3−テトラクロロプロペンである、項目46〜69のいずれかに記載の方法。
〔71〕前記塩素化領域及び/又は前記デヒドロ塩素化領域が、連続運転である、項目1〜70のいずれかに記載の方法。
〔72〕項目46〜70のいずれかに記載の方法の生成物であるC塩素化アルケンを提供する工程;及び該C塩素化アルケンをヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィンへ変換する工程を含む、ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィンの製造方法。
〔73〕前記C塩素化アルケンが、1,1,3,3−テトラクロロプロペンであり、かつ前記ヒドロフルオロオレフィンが、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン若しくは2,3,3,3−テトラフルオロプロペンであるか、又は前記ヒドロクロロフルオロオレフィンが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、項目72に記載の方法。
〔74〕前記C塩素化アルケンの前記ヒドロフルオロオレフィン又は前記ヒドロクロロフルオロオレフィンへの変換が、水素フッ素化プラントにおいて行われる、項目72又は73に記載の方法。
〔75〕複数のC塩素化アルカン異性体を約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、又は約99.9%以上の純度で含み、さらに以下の成分:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過少に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の過剰に塩素化された不純物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の塩素化アルケン化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、前記異性体とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水;
を含む組成物。
〔76〕前記組成物が、項目1〜45のいずれかに記載の方法から得られる、項目75に記載の組成物。
〔77〕複数のC塩素化アルカン異性体が、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから成る、項目75又は76に記載の組成物。
〔78〕1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン:1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンのモル比が、約85:15又は約90:10から約95:5又は約98:2までである、項目77に記載の組成物。
〔79〕a)2つのC塩素化アルカン異性体の一方としての第一C塩素化アルカン異性体が、個別の第一C塩素化アルケンへ選択的に変換され、かつ複数のC塩素化アルカン異性体の他方のいずれかが、実質的にデヒドロ塩素化しない選択的デヒドロ塩素化プロセス;又は
b)項目46〜71のいずれかに記載の選択的デヒドロ塩素化プロセス;
のための原料としての項目75〜78のいずれかに記載の組成物の使用。
〔80〕ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィン化合物の製造における原料としての項目75〜78のいずれかに記載の組成物の使用。
〔81〕前記ヒドロフルオロオレフィン化合物が、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、かつ前記ヒドロクロロフルオロオレフィンが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、項目80に記載の使用。
〔82〕1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから選択されるC塩素化アルカンと、1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン、1,1,3,3−テトラクロロ−1−プロペン及び1,3,3,3−テトラクロロ−1−プロペンから選択されるC塩素化アルケンとを含む組成物であって、該C塩素化アルカンと該C塩素化アルケンが共に約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上又は約99.9%の純度を有し、さらに以下の成分:
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、該C塩素化アルカンよりも少ない塩素原子を含むC塩素化アルカン化合物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、該C塩素化アルカンより多い塩素原子を含むC塩素化アルカン化合物;
約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、該C塩素化アルケン化合物以外の塩素化アルケン化合物;
約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の、該C塩素化アルカン化合物とは炭素原子数が異なる化合物;
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、約5ppm未満、又は約2ppm未満の含酸素有機不純物;
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の金属;及び/又は
約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満又は約5ppm未満の水;
を含む組成物。
〔83〕前記組成物が、項目46〜71のいずれかに記載の方法から得られる、82に記載の組成物。
〔84〕ヒドロフルオロオレフィン又はヒドロクロロフルオロオレフィン化合物の製造における原料としての項目82又は83に記載の組成物の使用。
〔85〕前記ヒドロフルオロオレフィン化合物が、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンであるか、又は前記ヒドロクロロフルオロオレフィンが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、項目84に記載の使用。
【0267】
以下の実施例において、本発明をさらに説明し、かつ図面についても言及する。
【実施例】
【0268】
実施例
【表1】
【0269】
例1.ペンタクロロプロパン混合物を生成するための1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化
外部冷却循環(3,7)を備えるバッチバブルカラムガラス反応器(2)において図1に示されるとおりに塩素化を行った。反応器は、カラム反応器内に石英管を用いて埋設された250W中圧水銀ランプを備えた。クーラー(4,8)用冷却媒体は、エチレングリコール溶液であった。ノズル一式を用いて気体状塩素(1)を反応器底部で導入し、管路(6)を用いて液体原料を先ず充填した。反応器内の温度を約25℃へ制御した。反応器内の圧力は大気圧であった。排出ガス(10)(微量の塩素を伴う塩化水素)を苛性スクラバーへ導き、排出ガスを介したHCl形成及び塩素損失を確認するために、その苛性物をNaOCl及びアルカリ性について定期的に分析した。
【0270】
純度98.4%の1,1,1,3−テトラクロロプロパン460.7kgを先ず塩素化反応器中へ充填した。塩素ガス(83.1kg)を供給速度8kg/hで塩素化領域中へ導入した。その1,1,1,3−テトラクロロプロパン出発物質は、国際公開第2016/058566号に記載された方法及び純度プロファイルを用いて調製された。
【0271】
生成した塩化水素の量は、39.8kgであり、塩素損失は、ほぼゼロ(0)であった。塩素:1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモル比が、47%であった。約10時間後、反応を停止し、502.7kgの生成反応混合物をGCにより分析したところ、次の結果を得た:
【表2】

算出された11133PCPaに対する選択性は79%であった。
【0272】
以上のとおり、出発物質(1,1,1,3−テトラクロロプロパン):塩素化アルカン異性体(1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)のモル比の制御を59:41へ制限して、有利に、過剰に塩素化された不純物の大量の形成を抑制した。
【0273】
例2.例1からの反応混合物の精製
図2に示されるとおり、付属品(5,6,7,8,9)を備えるバッチ真空ガラス蒸留カラム(4)に、約25理論段効率と等しい複数のプラスチックリングを充填した。カラム内の真空度を適切な水準に設定して、ボイラー(2)の底部温度を110℃より低く維持した。
【0274】
35.164kgの反応混合物を例1で使用された反応器から抽出し、先ず管路(1)を介してカラムボイラー(2)へ充填した。合計で約5の還流比を用いて、蒸留物F1(10.1),F2(10.2),F3(10.3),F4(10.4)として4つの留分、及び蒸留残留物(3)として1つの留分F5(DR)を集めた。それらの留分の組成及び質量は以下のとおりであった:
【表3】

0.00は、0.005質量%未満の濃度を意味し、空白欄は、検出不能=1ppm未満を意味する。
【0275】
次に、下記の再利用スキームを適用した:
留分F1:未反応出発物質流、塩素化の例1で再利用されることになる。
留分F2:塩素化アルカン異性体生成物流、次のプロセス工程(例3,4,5参照)用原料として使用されることになる。
留分F3:単一異性体生成物流(第二の主生成物11123−PCPa)、下流プロセス用原料として、例えば塩素化又はフッ素化アルケンの前駆体として、使用されることになる。
留分F4:111333−HCPa不純物の濃度を高めるために、この例2に従って、次の蒸留試験で再利用されることになり、その後、例えば塩素値を戻すための高温塩素化分解プロセスを用いて、さらに処理されることになるか、又は焼却されることになる。
留分F5蒸留残留物:例えば塩素値を戻すための高温塩素化分解プロセスを用いて、さらに処理されることになるか、又は焼却されることになる。
【0276】
得られた1,1,1,3,3−及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの合計を考慮すると、蒸留(再利用スキームなし)の計算収率が99.45%である。
【0277】
以上のとおり、蒸留に供された初期混合物(具体的には、1,1,1,3−テトラクロロプロパン出発物質、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン及び過剰に塩素化された不純物を含む)から、1,1,1,3−テトラクロロプロパン原料が、主留分F1として分離されて、塩素化反応領域へ戻される。留分F2は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの混合物であり、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン含有率が減少する(留分F3としての高純度1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの抽出によるものである)。留分F3は、下流プロセスにおいて有用な生成物として単離される高純度1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンである。微小留分F4及びF5は回収され、例えば高温塩素化分解プロセスにおいて、再利用されるか、又は塩素分の回収のために送致されるかのいずれかである。
【0278】
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの留分F2の調製は、この合成における対象最終生成物が、その対応するアルケン、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(1230za)である(その調製は後述される)ため、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン異性体への選択性がより大きくなるように設計された。重要なことに、留分F2は、出発アルカン材料(1,1,1,3−テトラクロロプロパン,250fb)を含まないが、250fbは、下流のデヒドロ塩素化工程において1,1,3−トリクロロプロペンを形成することがある。1,1,3−トリクロロプロペンは、より反応性の塩素化アルケンであり、それが、下流のヒドロフッ素化プロセスについて、例えば、1,1,3,3−テトラクロロプロペンの、例えば1,1,1−トリフルオロ−3−クロロ−1−プロペン(HFCO−1233zd)、1,1,1,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234ze)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)及びそれらの混合物への変換については、触媒毒となり得るので、所望の1,1,3,3−テトラクロロプロペンからの1,1,3−トリクロロプロペンの分離が問題である。
【0279】
例3. 1,1,1,3,3−及び1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの混合物の高選択的デヒドロ塩素化
図3に示すとおり、例2からの留分F2(10.2)を連続攪拌槽ガラス反応器(2)中へ供給した。反応器(2)は、マグネチックスターラー、温度計、バッククーラー(4)、供給及び排出パイプ、並びに熱油浴を備えた四つ口ガラスフラスコから成るものであった。原料(1)は、留分F2と(原料を基準として)約100ppmの追加触媒(FeCl)から成るものであった。そのような液体原料を投与ポンプにより反応器中へ連続的に供給した。形成されたHClガス(3)をバッククーラー/濃縮器(4)によって冷却し、次に吸収カラムにおいて水中へ吸収(6)させて、HCl形成割合を確認した。反応混合物(7)を反応器からクーラー(8)を介してガラス回収容器(9)へ連続的かつ自動的に抽出して、反応器における液量を一定値に維持した。反応温度は約102℃、サブクール反応混合物の温度は20℃未満、かつ反応圧力は大気圧であった。算出された平均滞留時間は2:09時間であった。
【0280】
例2からの4230gの留分F2を、追加触媒とともに、反応器中へ145g/hの速度で連続供給した。次に、合計で450gのHClを生成させて、吸収カラムに吸収させた。3724gの生成混合物を抽出し、GCにより分析したところ、次の結果を得た。
【表4】

【表5】
【0281】
この例から明らかなとおり、1,1,3,3−テトラクロロプロペンの生成を選択するデヒドロ塩素化工程の選択率は、著しく高く、99.7%であった。
【0282】
例4.例2からのペンタクロロプロパン混合物の高選択的触媒活性デヒドロ塩素化
上記例3で説明したものと類似の態様であるが、図4に示すとおり、順次又は直列の3つの連続的攪拌槽ガラス反応器(2,8,14)において、このデヒドロ塩素化工程を行った。液体反応混合物(7)を、管路(7)を介して第一反応器(2)から連続的に抽出し、次に第二反応器(8)へ供給し、次に第二反応器から第三反応器(14)へ管路(13)を介して供給した。
【0283】
第三反応器から液体反応混合物(19)を、クーラー(20)を介して抽出して、ガラスフラスコに集めた。各反応器は、例3と同じ付属品を備えた。触媒(FeCl)を100ppmの量で液体供給(1)のみとして第一反応器へ加えた。各反応器からの抽出時に、複数の反応混合物サンプルをGCにより分析した。各反応器から形成された塩化水素ガス(3,9,15)をバッククーラー/濃縮器(4,10,16)により別々に冷却し、次に、分離した吸収カラムにおいて水中に吸収(6,12,18)させて、各反応器におけるHCl形成割合を確認した(したがって変換率に関連した)。反応器内の動作温度は、それぞれ101℃、100℃及び103℃であった。サブクール反応混合物の温度は20℃未満、圧力は常に大気圧であった。
【0284】
例2からの留分2(複数のペンタクロロプロパンを含む塩素化アルカン異性体流)の混合物5301gを、追加触媒とともに、第一反応器中へ552g/hの速度で連続供給した。679gの塩化水素を生成させて3つの吸収カラムに吸収させ、4573gの生成混合物を第三反応器から抽出した。この生成混合物をGCにより分析したところ、次の結果を得た:
【表6】

【表7】
【0285】
例3及び4では、出発物質としてペンタクロロプロパン異性体混合物を用いる高選択性触媒活性デヒドロ塩素化工程が示される。1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン:1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの異性体比としての93:7は、塩素化後の反応混合物の効率的な蒸留により達成され、結果として、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンに富む単一異性体流が得られ、かつ1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン:1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの異性体比が増加した複数のC塩素化アルカン異性体流が得られた。実証されたとおり、デヒドロ塩素化は、例3のような1つの反応器、又は例4に示したような直列の3つの反応器のいずれかにおいて、行われることができ、例4では、1,1,2,3−テトラクロロプロペンから1,1,3,3−テトラクロロプロペンへの選択率として99.8%が、より高い原料変換率及びより低い滞留時間により達成された。
【0286】
例5−例1で得られたペンタクロロプロパン異性体混合物の選択的デヒドロ塩素化
ペンタクロロプロパン混合物の高選択的触媒活性デヒドロ塩素化を例4と類似する態様で行った。しかし、異なる原料を使用し、その原料は、複数のペンタクロロプロパン異性体が例1で生成した比率でそれらを含んだ。
【0287】
5879gの混合ペンタクロロプロパン異性体原料(異性体比11133:11123−PCPa=78.95:20.97)を、追加触媒とともに、第一反応器中へ920g/hの速度で連続供給した。631gの塩化水素を生成させて3つの吸収カラムに吸収させた。5194gの生成混合物を第三反応器から得て、GCにより分析したところ、次の結果を得た:
【表8】

【表9】
【0288】
例5には、さらに高い選択性のデヒドロ塩素化工程を示す。所望のC塩素化アルケンの選択率として99.2%を達成した。
【表10】
【0289】
例6.C塩素化アルケン含有混合物の水性処理
水処理工程を用いて、例3、4及び5で行われたデヒドロ塩素化工程から得られた反応混合物を精製したが、その水処理工程は、図5に示されるとおり、高回転速度スターラー及び温度制御システムを備えるバッチ攪拌ガラス反応器において行われた。2%塩化水素溶液を蒸留水(2)と混ぜた。デヒドロ塩素化工程(1)から得られた冷混合物を酸性溶液と1:1の比で混ぜて、得られた混合物を約5時間に亘って攪拌した。この水性処理は、結果として、触媒活性系の失活並びに中間極性又は極性化合物(特に酸素化塩素化副生成物)の加水分解及び除去になる。この処理は、約20〜25℃、好ましくは約50℃以下の温度で行われる。攪拌後、スターラーを停止したところ、混合物は2層(上部水性層と下部有機層)に分離した。次に、下層を反応器から抽出(4)して、塩化カルシウムを用いて乾燥させた。次に、乾燥有機層を例7において蒸留工程へ供した。
【0290】
例7.水性処理されたC塩素化アルケン含有混合物の蒸留
例6の水性処理工程の後に、例4で得られた混合物の精製を、図6に示されるとおりに付属品を有するバッチ真空ガラス蒸留カラム(4)において効率的に行った。
【0291】
カラムに約30理論段効率と等しい複数のセラミックBerlサドルを充填した。真空度を適切な水準に設定して、ボイラー底部を110℃より低い温度で維持した。6430gの塩素化アルケン含有混合物(1)をカラムボイラー(2)へ供給した。蒸留物F1(10.1),F2(10.2),F3(10.3)としての3つの留分と蒸留残留物としての1つの留分F4(DR)を、約5の還流比を用いて回収(3)した。それらの留分の組成及び質量は、以下のとおりであった:
【表11】
【0292】
次に、留分を下記のように処理した:
留分F1:軽量最終物の濃度を高めるために、この例7で行ったものと対応する後続の蒸留工程において再利用された。その後に、軽量最終物をパージして、例えば高温塩素化分解プロセス又は焼却を用いて、さらに処理することができる。
【0293】
留分F2は、対象塩素化アルケン(高純度の1,1,3,3−テトラクロロプロペン)と許容できる程度に低濃度の1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む主生成物流である。この生成物流は、下流プロセスにおいて原料として、例えばヒドロフッ素化アルケンの前駆体として、使用されることができる。
【0294】
留分F3:1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び他の不純物の濃度を高めるために、この例で行われたものと対応する後続の蒸留工程において再利用され、その後に、例えば高温塩素化分解プロセス又は焼却を用いて処理されることができ、又は本発明の塩素化工程(例えば例1で説明されたもの)における使用のために戻されることができる。
【0295】
留分F4(DR)は、例2の蒸留工程で再利用された。
【0296】
蒸留(再利用スキームなし)の計算収率:80.2%
【0297】
例8:塩素化工程中の反応混合物におけるC塩素化アルカン出発物質:C塩素化アルカン異性体のモル比の影響
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む混合物を形成する1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化をガラスバッチ攪拌反応器において行った。
【0298】
反応器は、125W中圧水銀ランプを備えた。反応器内の温度は約12℃で維持され、かつ反応器内の圧力は大気圧であった。排出ガスを苛性スクラバー中にバブリングして、塩化水素形成量を確認するために、この苛性物を定期的にアルカリ性について分析した。塩素ガスを反応器中へガラスディップパイプを介してノズルで誘導して、反応器内で十分に消費した。
【0299】
99.9%の純度を有する1,1,1,3−テトラクロロプロパン出発物質504.4gを先ず反応器へ充填した。198gの塩素を同様に33g/時の速度で供給した。反応器から複数のサンプルを定期的に取り出して、GCにより分析したところ、次の結果を得た:
【表12】
【0300】
上記結果から、原料1,1,1,3−テトラクロロプロパンと異性体生成物混合物のモル比は、望ましくないヘキサクロロプロパン化合物の形成及びそれによる収率に有意に影響することが観察される。1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンに近い沸点を有する好ましくない1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパンは、除去が難しく、また金属痕跡の存在下で極めて反応性である。ここに示されるデータから明らかなとおり、出発物質の変換の制御が、これらの問題のある不純物の形成を抑制する。
【0301】
したがって、問題のある過剰に塩素化された不純物の生成を最小限にするために、
原料クロロアルカンの生成クロロプロパンへの変換率(原料クロロアルカンと生成クロロプロパンのモル比により表される)は、約40:60を超えないように、より有利には約60:40を超えないように維持されるべきである。
【0302】
例9 塩素化中の反応温度の影響
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの混合物を生成させるための幅広い温度での1,1,1,3−テトラクロロプロパンの一連の塩素化を、ガラスバッチ攪拌反応器内で行った。反応器は、125W中圧水銀ランプを備えた。反応器内の動作温度を10℃、25℃、50℃、60℃、95℃及び115℃で維持した。反応器内の圧力は大気圧であった。排出ガスを苛性スクラバー中へバブリングして、塩化水素形成を確認するために、その苛性物を定期的にアルカリ性について分析した。塩素を反応器中へガラスディップパイプを介してノズルで導入して、反応器において十分に消費した。
【0303】
99.9%の純度を有する1,1,1,3−テトラクロロプロパン600gを先ず反応器中へ充填した。塩素を反応中へ60化学量論%と等しい量で100g/時の供給速度で供給した。完了後の反応混合物を反応器からサンプリングしてGCにより分析した。GC分析結果及び速度論的検査結果を次の表に示す:
【表13】

【表14】
【0304】
上記結果によって、塩素化領域における反応温度は、ヘキサクロロプロパン形成割合及びそれによる収率に影響することが実証される。ペンタクロロプロパン異性体選択性は、上記温度範囲に亘って比較的安定なままである(すなわち、驚くべきことに、選択性は、この特定の温度により抑制されるわけではない)。それ故に、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの効率的な合成のためには、適度な動作温度が、例えば、好ましくは60℃より低く、より好ましくは40℃より低い。
【0305】
例10−異性体混合物を生成させるための1,1,1,3−テトラクロロプロパンの連続塩素化
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む混合物を生成させるための1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化を、ガラスCSTR攪拌反応器において連続的に行った。
【0306】
反応器は、六つ口ガラスフラスコから成るものであり、メカニカルスターラー、バッククーラー、一式の注入口と吸気口と排気パイプ接続部、測温プローブ、及び石英ガラスパイプに収容されて反応器中に埋設された125W高圧水銀ランプを備えた。反応器内の温度をサーモスタットを用いて維持した。反応器内の圧力は大気圧であった。排出ガスをバッククーラーを通じてHClスクラバー中に連通させ、次に苛性スクラバー中へ連通させた。形成されたHCl並びに任意の未反応塩素の量を監視するために、両方のスクラバーを定期的にHCl及び塩素含有量に関して分析した。塩素ガスを、ノズル口を備えるガラスディップパイプを介して反応器中へ導入して、塩素を反応器においてほぼ完全に消費した。
【0307】
液体供給物を定量ポンプを用いて反応器に導入した。液体反応混合物は、反応器からオーバーフローパイプを介して出て、回収タンク中へ移行した。液体供給混合物と塩素の両方の質量を監視した。反応混合物をGCにより分析した。
【0308】
反応器内の温度は約34℃であった。液体供給物には金属系触媒を利用しなかった。反応器における平均滞留時間が約63分であった。投与された塩素のモル量は、導入された液体1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモルを基準として、約22%であった。
定常状態に至った後の結果(単位:モル%)を下記表に示す:
【表15】
【0309】
この表に示されるとおり、出発物質のペンタクロロプロパン異性体への変換を塩素供給により制御することは、結果として、形成される不純物を低濃度にし、かつ1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンについて高選択性になった。
【0310】
この例において得られた組成の詳細を下記に提供する。明らかに、反応は、対象となる2つのペンタクロロプロパン異性体(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン)へ向かう選択性が高かった。言い換えれば、著しく低濃度の六塩素化プロパン不純物が生成し、かつ対象異性体以外のペンタクロロプロパン異性体は、検出可能な濃度では得られなかった。
【表16】
【0311】
例11−触媒及び温度の影響
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む混合物を生成させるための1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化をガラスCSTR攪拌反応器において連続的に行った。
【0312】
反応器は、六つ口ガラスフラスコから成るものであり、メカニカルスターラー、バッククーラー、一式の注入口と吸気口と排気パイプ接続部、測温プローブ、及び石英ガラスパイプに収容されて反応器中へ埋設された125W高圧水銀ランプを備えた。反応器内の温度をサーモスタットを用いて維持した。反応器内の圧力は大気圧であった。排出ガスを、バッククーラーを通じてHClスクラバー中へ連通させて、次に苛性スクラバー中へ連通させた。両方のスクラバーを定期的にHCl及び塩素含有量に関して分析して、形成されたHCl並びに未反応塩素の量を監視した。塩素ガスを、ノズル口を備えたガラスディップパイプを介して反応器中へ誘導して、塩素を反応器においてほぼ完全に消費した。
【0313】
液体供給物を反応器に定量ポンプを用いて導入した。液体反応混合物は、反応器からオーバーフローパイプを介して出て、回収タンク中へ移行した。液体供給混合物と塩素の両方の質量を監視した。金属系触媒を失活させるために、規定量の塩酸を反応混合物回収タンク中へ加えた。液体供給混合物と塩素の両方の質量を監視した。反応混合物をGCにより分析した。
【0314】
液体供給物を先ずCaClにより乾燥させ、ろ過後、規定量の金属触媒(無水FeCl)によりドープした。次に、大気水分による汚染を防ぐために、この液体供給物を乾燥窒素環境下で保持した。液体供給物中の水分量は、約12〜46ppmw(複数の試験間の変動)であった。供給物中の1,1,1,3−テトラクロロプロパンの含有量は、99.9%を超えた。
【0315】
第一試験のために、幅広い温度、すなわち、それぞれ約40℃、55℃、90℃、105℃を採用した。液体供給物中の無水FeClの量は、12.5ppmwであった。反応器中の平均滞留時間は、約30分であった。投与された塩素のモル量は、導入された液体1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモルを基準として、約20%であった。定常状態に至った後の結果を下記表に示す(全ての比率の単位:モル%)。
【表17】
【0316】
以上のとおり、異性体選択性は、温度制御に影響されることがある。また、(供給塩素量の制御によって)出発物質の対象異性体への変換を最小限にすることによって、形成される不純物の濃度に対する制御が提供される。
【0317】
下記表に、この例における実行から得られる全組成を示す。明らかに有利に、六塩素化プロパンの濃度が著しく低かった。さらに、対象異性体(1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)以外のペンタクロロプロパン異性体は、得られなかった。したがって、それらの対象異性体への著しく高い選択性が、有利に達成された。
【表18】
【0318】
例12−出発物質及び塩素供給物の変換の副生成物形成に対する影響
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む混合物を生成させるため1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化を、例10に従うが塩素量を増加させて行って、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの変換率を増加させた。投与された塩素のモル量は、1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモルを基準として、約40%であった。定常状態に至った後の結果を下記表に示す(全ての比率の単位:モル%)。
【表19】
【0319】
例10との比較において、反応器への供給物中の塩素:1,1,1,3−TCPaのモル比をより大きくすると、形成された副生成物、例えば111333−HCPaの量は、より高いことが分かる。
【0320】
下記表には、この例における実行から得られた全組成を示す。明らかに有利には、得られた六塩素化プロパンの濃度は、著しく低かった。さらに、対象異性体(1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)以外のペンタクロロプロパン異性体は得られなかった。したがって、それらの対象異性体への著しく高い選択性が、有利に達成された。
【表20】
【0321】
例13 1,1,1,3−テトラクロロプロパンの変換率及び滞留時間の影響
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む混合物を生成させるための1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化を、例10に従って行った。しかし、原料1,1,1,3−テトラクロロプロパンの変換率を増加させるために、増加させた量の塩素を導入した。投与された塩素のモル量は、1,1,1,3−テトラクロルプロパンのモルを基準として、約40%であった。平均滞留時間は約54分であった。定常状態に至った後の結果を下記表に示す(全ての比率の単位:モル%)。
【表21】
【0322】
例10及び11で得られた結果との比較において、1,1,1,3−テトラクロロプロパン出発物質の対象異性体への変換率が増加する場合及びより高い量の塩素が系中へ供給される場合には、形成された副生成物の量がより大きい。明らかに、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンへの選択性は、滞留時間に影響される。
【0323】
下記表に、この例における実行から得られた全組成を示す。明らかに有利には、得られた六塩素化プロパン濃度は低かった。さらに、対象異性体(1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)以外のペンタクロロプロパン異性体は得られなかった。したがって、それらの対象異性体への著しく高い選択性が、有利に達成された。
【表22】
【0324】
例14−触媒量の増加の影響
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む混合物を生成させるための1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化を、例10に従うが液体原料中への触媒FeCl量を50ppmwに増加させて行った。定常状態に至った後の結果を下記表に示す(全ての比率の単位:モル%)。
【表23】
【0325】
例10との比較において、触媒使用量の増加は、異性体選択性には任意の有意な変化なしで、塩素化をより低い反応温度で進行させることが分かる。
【0326】
下記表に、この例における実行から得られた全組成を示す。明らかに有利には、得られた六塩素化プロパン濃度は著しく低かった。さらに、対象異性体(1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)以外のペンタクロロプロパン異性体は、得られなかった。したがって、それらの対象異性体への著しく高い選択性が、有利に達成された。
【表24】
【0327】
例15−連続塩素化領域の順次運転
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンと1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む混合物を生成させるための1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化を、上記例10で説明された手順に従って、反応器において連続的に行った。1,1,1,3−テトラクロロプロパンの塩素化を、順次に運転させた2つのCSTR反応器において行った。第一CSTRから反応混合物を集めて、次に第二CSTRための液体原料として使用した。全量で20モル%の塩素を2つの工程においてまとめて加えた。定常状態に至った後の結果を下記表に示す(全ての比率の単位:モル%)。
【表25】
【0328】
これらの結果を例10で得られたものと比べることにより、順次に運転される2つの塩素化領域において塩素化反応を行うと、同程度の変換率を達成しつつ副生成物をほとんど生成させないことが分かる。
【表26】
図1
図2
図3
図4
図5
図6