(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908811
(24)【登録日】2021年7月6日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】ツーバイフォー建物のアンカーガイド工法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/61 20060101AFI20210715BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20210715BHJP
E04B 1/10 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
E04B1/61 506A
E04G21/16
E04B1/10 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-221002(P2016-221002)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-71331(P2018-71331A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】504196492
【氏名又は名称】株式会社高橋監理
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲橋▼ 龍夫
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−136961(JP,A)
【文献】
特開2003−119884(JP,A)
【文献】
特開平05−339982(JP,A)
【文献】
特開平04−315636(JP,A)
【文献】
特開平07−062870(JP,A)
【文献】
特開2015−108259(JP,A)
【文献】
特開昭59−150843(JP,A)
【文献】
特開2009−057776(JP,A)
【文献】
特開2008−106493(JP,A)
【文献】
特開昭58−168758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/61
E04B 1/10
E04G 21/14−21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツーバイフォー建物の壁起こし工法において、壁パネルの下枠のアンカーボルトを挿入する位置にアンカーボルト貫通孔を開けると共に、基礎に埋め込んだアンカーボルトの土台上部の床合板から突き出した部分に所定の外径、内径、パイプ肉厚、長さを有する金属製のパイプの中央部を所定寸法の半径で90度に折り曲げたアンカーパイプの一端を挿入し、前記アンカーパイプの他端を、床合板の上に水平に載置された壁パネルの下枠に空けたアンカーボルト貫通孔に挿入し、壁パネルの上枠に、壁起こし工具の受けを挿入し、壁起こし工具にツーバイフォー材を差し込み、ツーバイフォー材の下端に止め板を固定し、ハンドルを上下に動かすことにより、壁起こし工具がツーバイフォー材を抱え込むようにして除々に上昇し、壁起こし工具の受けが上枠を持ち上げることにより壁パネルが下枠を中心として回動し壁パネルを立て起こすことにより壁パネルの下枠に開けたアンカーボルト貫通孔がアンカーパイプの曲がった形状に沿って案内されて、アンカーボルト貫通孔にアンカーパイプの前記一端が挿入され土台上部の床合板に壁パネルの下枠を載せたあと、アンカーパイプを壁パネルの下枠から引き抜き、アンカーボルトに座金とナットを取り付け、壁パネルを基礎に固定したことを特徴とするツーバイフォー建物のアンカーガイド工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツーバイフォー建物の壁起こし工法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでツーバイフォー建物の床の上に水平に載置きされた壁パネルを垂直に建て起こす方法としては、一般に市販されている壁起こし工具、商品名「スーパージャッキ」又は「ウォールジャッキ」等を使用して、大工さんが現場で壁パネルを垂直に建て起こしてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−108259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近頃、3階建てのツーバイフォー建物が多く建築されるようになってきた。
このような高いツーバイフォー建物では地震時等に壁体の下端に作用する引き抜き力が大きくなるため、あらかじめ基礎コンクリートにアンカーボルトを植設することで、アンカーボルトの引き抜き耐力を高めた工法が用いられている。
【0005】
特許文献1に記載された壁体建て起こし装置では、壁体を建て起こした状態で壁体の底面を支持すると共に、壁体を降下させる壁体降下手段を備えるので、建て起こした壁体をアンカーボルトの上から降下させて壁体の貫通孔にアンカーボルトを挿通することができる。そのため、基礎に予めアンカーボルトを植設したツーバイフォー建物の場合でも壁体の建て起こしが可能となった。
【0006】
しかし、特許文献1に記載された壁体建て起こし装置では、施工現場で油圧発生装置を必要とすると共に、壁パネルに壁建て起こし装置を設置、取り外すため多くの手間と時間が必要であり費用と効率の面で問題があった。
【0007】
このような問題を解決するため、床にアンカーボルトが植設されている場合でも、壁パネルを壁起こしすることが可能な壁起こし工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ツーバイフォー建物の壁起こし工法において、壁パネルの下枠のアンカーボルトを挿入する位置にアンカーボルト貫通孔を開けると共に、基礎に埋め込んだアンカーボルトの土台上部の床合板から突き出した部分に
所定の外径、内径、パイプ肉厚、長さを有する金属製のパイプの中央部を
所定寸法の半径で90度に折り曲げたアンカーパイプの一端を挿入し、前記アンカーパイプの他端を、床合板の上に水平に載置された壁パネルの下枠に空けたアンカーボルト貫通孔に挿入し、壁パネルの上枠に、壁起こし工具の受けを挿入し、壁起こし工具にツーバイフォー材を差し込み、ツーバイフォー材の下端に止め板を固定し、ハンドルを上下に動かすことにより、壁起こし工具がツーバイフォー材を抱え込むようにして除々に上昇し、壁起こし工具の受けが上枠を持ち上げることにより壁パネルが下枠を中心として回動し壁パネルを立て起こすことにより壁パネルの下枠に開けたアンカーボルト貫通
孔がアンカーパイプの曲がった形状に沿って
案内されて、アンカーボルト貫通孔にアンカーパイプの前記一端が挿入され土台上部の床合板に壁パネルの下枠を載せたあと、アンカーパイプを壁パネルの下枠から引き抜き、アンカーボルトに座金とナットを取り付け、壁パネルを基礎に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ツーバイフォー建物の壁起こし工法において、壁パネルの下枠のアンカーボルトを挿入する位置にアンカーボルト貫通孔を開けると共に、基礎に埋め込んだアンカーボルトの土台上部の床合板から突き出した部分に
所定の外径、内径、パイプ肉厚、長さを有する金属製のパイプの中央部を
所定寸法の半径で90度に折り曲げたアンカーパイプの一端を挿入し、前記アンカーパイプの他端を、床合板の上に水平に載置された壁パネルの下枠に空けたアンカーボルト貫通孔に挿入し、壁パネルの上枠に、壁起こし工具の受けを挿入し、壁起こし工具にツーバイフォー材を差し込み、ツーバイフォー材の下端に止め板を固定し、ハンドルを上下に動かすことにより、壁起こし工具がツーバイフォー材を抱え込むようにして除々に上昇し、壁起こし工具の受けが上枠を持ち上げることにより壁パネルが下枠を中心として回動し壁パネルを立て起こすことにより壁パネルの下枠に開けたアンカーボルト貫通
孔がアンカーパイプの曲がった形状に沿って
案内されて、アンカーボルト貫通孔にアンカーパイプの前記一端が挿入され土台上部の床合板に壁パネルの下枠を載せたあと、アンカーパイプを壁パネルの下枠から引き抜き、アンカーボルトに座金とナットを取り付け、壁パネルを基礎に固定したことにより、簡単な構造で安価な工具を用いて大工さんが一人で容易に壁パネルを壁起こしすることが可能となった。
【実施例1】
【0014】
以下、この発明の実施の形態1について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0015】
図1は、従来、大工さんがツーバイフォー建物の壁パネルを、壁起こし工具(商品名「スーパージャッキ」又は「ウォールジャッキ」と呼ばれている)を使って立て起こしていた施工方法を立体図で示す。
【0016】
床合板10の上に水平に載置きされた壁パネル1の下枠5の建物外側に転び止めの木材(図示せず)を固定し、上枠6に、壁起こし工具8の受け13を挿入し、壁起こし工具8にツーバイフォー材7を差し込みツーバイフォー材7の下端に止め板12を固定し、ハンドル9を上下に動かすことにより、壁起こし工具8がツーバイフォー材7を抱え込むようにして除々に上昇し、壁起こし工具8の受け13が上枠6を持ち上げることにより壁パネル1が下枠5を支点として回動して壁パネル1を立て起こしてきた。
【0017】
しかしながら、前記のような壁起こし工法では、基礎に配筋するアンカーボルトが土台と床合板を貫通して壁パネルを固定する工法では床合板の上に突き出たアンカーボルトが壁パネルの下枠と接触して妨げとなり、前記した、壁起こし工法で壁パネルを起こすことは困難だった。
【0018】
図2乃至
図6には、この発明の実施の形態1を示す。
【0019】
図2は、基礎20に植設されたアンカーボルト21が基礎パッキン22と土台23と床合板10を挿通して床合板10の上部に突き出した状態を示すと共に、アンカーボルト21のねじ先部24に取り付けるためのキャップナット25と、アンカーボルト21のねじ先部24に差し込むためのパイプアンカー26と、土台23に取り付けられた大引き27と、その大引き27を支えるための鋼製束29を側面図で示す。
側面図で示す。
【0020】
金属製のキャップナット25(ねじの呼び径M12のアンカーボルト21を使用する場合、キャップナットの寸法は六角対辺13.0mm、全長12mmの六角キャップナットを使用する。また、ねじの呼び径M16のアンカーボルト21を使用する場合、キャップナットの寸法は六角対辺17.0mm、全長15mmの六角キャップナットを使用する。)は、アンカーボルト21のねじ先部24に取り付けて、ねじ先部24のねじ山を保護するための部材で、アンカーパイプ26が押され、揺すられることによりねじ先部24のねじ山が損傷するのを防ぐ役目をする。
【0021】
アンカーパイプ26の形状は、
図2aで示すようにパイプを90度に曲げた形状で、R寸法は半径60mm、L1寸法、L2寸法は共に100mmである。また、アンカーボルト21にねじの呼び径M12のアンカーボルトを使用する場合のアンカーパイプ26は、外径19.1mm、内径16.7mm、パイプ肉厚1.2mmのパイプを使用する。また、アンカーボルト21にねじの呼び径M16のアンカーボルトを使用する場合のアンカーパイプ21は、外径22.2mm、内径19.8mm、パイプ肉厚1.2mmのパイプを使用する。
【0022】
図3は、
図2で説明したアンカーボルト21のねじ先部24にキャップナット25を取り付けると共に、アンカーボルト21にアンカーパイプ26を差し込んだ状態を側面図で示す。
【0023】
図4は、
図3で説明した床合板4の上に壁パネル1の下枠5に開けたアンカーボルト貫通孔34(アンカーボルト貫通孔34は、直径19.1mmのアンカーパイプ26を使用する場合には、直径23mmの穴を開け、直径22.2mmのアンカーパイプ26を使用する場合には、直径26mmの穴を開ける。)の中心とアンカーパイプ26のパイプの中心が一致する高さになるような高さの置き台33を、壁パネル1の前後に配置すると共に、置き台33の上に、複数のたて枠3と上枠6と下枠5と壁合板4で壁パネル1を水平に載置きした状態で組み立て、下枠5にはアンカーパイプ26を挿入する位置にアンカーボルト貫通孔34が開けられる。
【0024】
図5は、
図4で説明した壁パネル1を、
図1で説明した壁起こし工具8で起こした状態を示す。
図1で説明した通り、上枠6に、壁起こし工具8の受け13を挿入し、壁起こし工具8にツーバイフォー材7を差し込みツーバイフォー材7の下端に止め板12を固定し、ハンドル9を上下に動かすことにより、壁起こし工具8がツーバイフォー材7を抱え込むようにして除々に上昇し、壁起こし工具8の受け13が上枠6を持ち上げることにより壁パネル1が下枠5を中心として回動し壁パネル1を立て起こす。このように壁パネル1の下枠5に開けたアンカーボルト貫通
孔34がアンカーパイプ26の曲がった形状に沿って挿入されることにより安定した状態で簡単に壁パネル1を起こすことが可能になった。
【0025】
また、大きな壁パネルを建て起こす場合には、複数の壁起こし工具8を使用して壁パネル1を除々に上昇させることにより、安定した状態で壁パネル1を起こすことが可能になった。
【0026】
図6は、
図5で説明したアンカーパイプ26をアンカーボルト貫通孔34から取り外すと共に、アンカーパイプ26のねじ先部24に取り付けたキャップナット25を取り外し、アンカーボルト貫通孔34の中にアンカーボルト21と壁パネル1の下枠5との結合を頑強なものにするため、補強パイプ42(補強パイプ42の寸法は、下枠5のアンカーボルト貫通
孔34の寸法が直径23mmの場合には、直径23mm、パイプ肉厚5.25mm、長さ37.5mmのパイプを使用し、下枠5のアンカーボルト貫通
孔34の寸法が直径26mmの場合には、直径26mm、パイプ肉厚4.75mm、長さ37.5mmのパイプを使用する。)を挿入すると共に、アンカーボルト21のねじ先部24に座金41を挿入し、ナット40で壁パネル1を基礎20に固定した状態を示す。
【0027】
このように構成することにより、簡単で安価な工具を用いて大工さんが一人で容易に壁パネルを壁起こしすることが出来るようになり、施工時間の短縮と費用の削減に多大なる効果を生み出すことが可能となった。
【実施例2】
【0028】
以下、この発明の実施の形態2について説明する。
[発明の実施の形態2]
【0029】
図7には、この発明の実施の形態2を示す。上記発明の実施の形態1では、
図2において、アンカーボルト21のねじ先部24に金属製のキャップナット25を取り付けたがこの発明の実施の形態2では、樹脂製のボルト化粧キャップ51(一般には、商品名が、「ねじカバーキャップ」の名称で販売されている。)を、ねじ先部52に嵌め込むことにより、アンカーパイプ50が揺すられることによりねじ先部52のねじ山が損傷するのを防ぐ役目をする。その他の構造に関しては、この発明の実施の形態1と同様である。
【0030】
以上、実施の形態に基づいて、本発明に係るツーバイフォー建物のアンカーガイド工法について詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る、従来、大工さんが壁起こし工具を用いて壁パネルをおこしている状態の外観斜視図である。
【
図2】同実施の形態に係る、基礎に植設されたアンカーボルトに取り付けるためのキャップナットとパイプアンカーを側面図で示す。
【
図3】同実施の形態に係る、
図2で示したキャップナットをねじ先部に取り付けパイプアンカーをねじ先部に挿入した状態を側面図で示す。
【
図4】同実施の形態に係る、
図3で示した床合板の上に壁パネルを水平に載置きした状態を側面図で示す。
【
図5】同実施の形態に係る、
図4で示した壁パネルに取り付けたアンカーパイプを利用して壁起こしした状態を側面図で示す。
【
図6】同実施の形態に係る、
図5で示したアンカーパイプを取り外し壁パネルをアンカーボルトに固定した状態を側面図で示す。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る、
図2で示したキャップナットに代えてボルト化粧キャップを配置した状態を側面図で示す。
【符号の説明】
【0032】
L1 寸法
L2 寸法
R 半径
1 壁パネル
2 頭つなぎ
3 たて枠
4 壁合板
5 下枠
6 上枠
7 ツーバイフォー材
8 壁起こし工具
9 ハンドル
10 床合板
11 ネジ
12 止め板
13 受け
20 基礎
21 アンカーボルト
22 基礎パッキン
23 土台
24 ねじ先部
25 キャップナット
26 アンカーパイプ
27 大引き
28 ネジ
29 鋼製束
33 置き台
34 アンカーボルト貫通孔
40 ナット
41 座金
42 補強パイプ
50 アンカーパイプ
51 ボルト化粧キャップ
52 ねじ先部
53 土台
54 基礎パッキン
55 アンカーボルト
56 基礎
57 大引き
58 鋼製束
59 ネジ
60 床合板