特許第6908812号(P6908812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6908812エポキシ基末端ポリサルファイドポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6908812
(24)【登録日】2021年7月6日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】エポキシ基末端ポリサルファイドポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20210715BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20210715BHJP
   C08G 75/02 20160101ALI20210715BHJP
【FI】
   C08G59/32
   C08G59/14
   C08G75/02
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-513885(P2018-513885)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2017045071
(87)【国際公開番号】WO2018131381
(87)【国際公開日】20180719
【審査請求日】2020年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-3207(P2017-3207)
(32)【優先日】2017年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-81205(P2017-81205)
(32)【優先日】2017年4月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】安藤 有美
(72)【発明者】
【氏名】濱田 有紀子
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−128353(JP,A)
【文献】 特開昭60−181123(JP,A)
【文献】 特公昭49−015077(JP,B1)
【文献】 特開2016−169280(JP,A)
【文献】 米国特許第04197395(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00
C08G 75/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表されるエポキシ基末端ポリサルファイドポリマー
【化1】
(ただし、a+b+cの合計が3〜50であり、a、b、cは、互いに独立して、0または1〜50の整数であって、dは1〜3の整数、Xは1〜5であり、Rは下記一般式
−C−O−C−O−C
で示される有機基であり、R、R、Rは、互いに独立して、下記一般式
【化2】
で示される有機基であり、RはHまたはCH、eは0〜3である。)
【請求項2】
重量平均分子量が1000〜10000である請求項1に記載のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマー。
【請求項3】
がHである請求項1記載のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物。
【請求項4】
がCHである請求項1記載のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーに関する。特に、貯蔵安定性が良好で、耐熱性が良好であるエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
メルカプタン末端ポリサルファイドポリマーは、末端にチオール基を持ち、二酸化鉛、二酸化マンガン等の酸化剤によって容易に酸化されて硬化する。ポリサルファイドポリマーが硬化して得られるゴム状の硬化物は、分子の主鎖に硫黄を含んでおり、また、二重結合を含まないことから、耐油性、耐候性、水密性、気密性に優れ、さらに接着力が大きい、シーリング材、接着剤および塗料として広く用いられている。
【0003】
しかし、メルカプタン末端ポリサルファイドポリマーは、末端のメルカプタン基による臭気があり、用途、使用場所が制限される問題があった。この問題を解決した、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーが開発された。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、接着力が大きく、耐薬品性、耐久性、耐衝撃性、ガスバリア性がよいので、広く使用されるようになってきた(特許文献1、2参照)。
【0004】
しかし、従来のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、貯蔵安定性が悪く経時での粘度の上昇が大きい。このため、製造後に粘度が上昇し、長期保管が出来ないという問題があった。さらに、従来のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを使用したシーリング剤や、接着剤は、貯蔵安定性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平01−000411号公報
【特許文献2】特開平06−116387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、貯蔵安定性が良く、耐熱性が良好であるエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】

本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、下記一般式
【0008】
【化1】
【0009】
(ただし、a、b、cは、互いに独立して、0または1〜50の整数であって、a+b+cの合計が3〜50であり、dは1〜3の整数、Xは1〜5であり、Rは下記一般式
−C−O−C−O−C
で示される有機基であり、R、R、Rは、互いに独立して、下記一般式
【0010】
【化2】
【0011】
で示される有機基であり、RはHまたはCH、eは0〜3である。)であるエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、従来のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと比べて、貯蔵安定性が良好で有り、長期間保存しても粘度が増加しない。また、本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、耐熱性が良好である。
【0013】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを硬化剤で硬化させた硬化物は、可とう性が高く、耐水性、耐薬品性、耐候性に優れ、さらに接着力が大きい。本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを硬化剤で硬化させた硬化物は、接着剤、シーリング材、ポッティング材、コーティング材、樹脂用改質材およびプライマーなどに用いることができる。
【0014】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、特に、土木・建築用接着剤、土木・建築用コーティング材、土木・建築用プライマー、電気・電子用接着剤、電気・電子用ポッティング材及び車両用接着剤、車両用プライマーとして使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、下記一般式(1)で表されるエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーである。
【0017】
【化3】
【0018】
は、下記一般式
−C−O−C−O−C
で示される有機基である。
【0020】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、a、b、cは、互いに独立して、0または1〜50の整数であって、a、b、cの合計が3〜50である。a、b、cの合計が50より大きい場合は、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーの粘度が高くなるので、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを製造することが困難になる。さらに、a、b、cの合計が50より大きい場合は、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーの粘度が高いので、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを、接着剤、シーリング材、ポッティング材、コーティング材、樹脂用改質材およびプライマーなどとして、使用することが困難である。
【0021】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、dは、1〜3の整数である。dが3よりも大きい場合は、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーの粘度が大きくなるので、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを製造することが困難になる。さらに、dが3よりも大きい場合は、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーの粘度が高いので、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを、接着剤、シーリング材、ポッティング材、コーティング材、樹脂用改質材およびプライマーなどとして、使用することが困難である。
【0022】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、Xは1〜5である。本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、xの平均値が1〜2.5であることが好ましい。xの平均値は、より好ましくは、1.1〜2.0であり、さらに好ましくは、1.1〜1.9、さらにより好ましくは、1.1〜1.8である。特に、xの平均値は、好ましくは、1.1〜1.9、より好ましくは、1.1〜1.8であるときには、低粘度、低ガラス転移温度、高耐熱性のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーが得られる。
【0023】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、R、R、Rは、互いに独立して、下記一般式
【0024】
【化4】
【0025】
で示される有機基であり、RはHまたはCH、eは0〜3である。
【0026】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーの重量平均分子量は、好ましくは、1000〜10000であり、より好ましくは、1000〜8000である。
【0027】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、エポキシ等量が、好ましくは、200〜5000であり、より好ましくは、200〜4000である。
【0028】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、好ましくは、1分子中に、1〜6個のエポキシ基を含有し、より好ましくは、1分子中に、3〜5個のエポキシ基を含有する。
【0029】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、メルカプタン末端ポリサルファイドポリマーと、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させることにより製造することができる。反応に用いるメルカプタン末端ポリサルファイドポリマーは、固体ポリサルファイドを経由して製造した液状ポリサルファイドポリマーであっても、固体ポリサルファイドの形成を含まないで製造された液状ポリサルファイドポリマーであっても良い。
【0030】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを製造するためのビスフェノールA型エポキシ樹脂は、エポキシ等量が、好ましくは、170〜3000であり、より好ましくは、170〜600である。
【0031】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを製造するためのビスフェノールA型エポキシ樹脂は、粘度が、好ましくは、1Pa・s〜200Pa・sであり、より好ましくは、1Pa・s〜50Pa・sである。
【0032】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを製造するためのビスフェノールA型エポキシ樹脂は、分子量が、好ましくは、320〜6000であり、より好ましくは、320〜1200である。
【0033】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを製造するためのメルカプタン末端ポリサルファイドポリマーは、粘度が、好ましくは、0.1Pa・s〜150Pa・sであり、より好ましくは、0.1Pa・s〜20Pa・sである。
【0034】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂と任意の割合で混合できる。
【0035】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと混合するビスフェノールA型エポキシ樹脂は、粘度が、好ましくは、1Pa・s〜200Pa・sであり、より好ましくは、1Pa・s〜50Pa・sである。
【0036】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと混合するビスフェノールA型エポキシ樹脂は、エポキシ等量が、好ましくは、170〜3000であり、より好ましくは、170〜600である。
【0037】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと混合するビスフェノールA型エポキシ樹脂は、分子量が、好ましくは、320〜6000であり、より好ましくは、320〜1200である。
【0038】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマー100重量部に対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を25〜400重量部混合することが好ましい。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマー100重量部に対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を45〜400重量部混合することで、硬度が高く、かつ可とう性を持つ硬化物が得られる。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマー100重量部に対するビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合量は、より好ましくは、33〜300重量部、さらにより好ましくは、42〜233重量部である。
【0039】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を25〜400重量部混合することが好ましい。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を33〜400重量部混合することで、硬度が高く、かつ可とう性を持つ硬化物が得られる。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマー100重量部に対するビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合量は、より好ましくは、45〜300重量部、さらにより好ましくは、45〜233重量部である。
【0040】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、さらにビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂、および、反応性希釈剤と混合することができる。反応性希釈剤としてはブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェノールグリシジルエーテル、グリシドール、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0041】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを硬化させる硬化剤は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を使用することができる。本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを硬化させる硬化剤は、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジセニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族3級アミン類、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジンなどの脂環族3級アミン類、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの芳香族3級アミン類、エポキシ樹脂を過剰なアミンと反応させて製造されるポリアミンエポキシ樹脂アダクト、ポリアミン−エチレンオキサイドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキサイドアダクト、シアノエチル化ポリアミン、主鎖がシリコンであるジアミン、または、ポリアミン類とフェノール類及びアルデヒド類などとを反応させて得られる脱水縮合物などの変性ポリアミン、2―エチル―4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水トリメリット酸などの酸無水物類などが挙げられる。本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを硬化させる硬化剤として、大都産業(株)製、ダイトクラールX−2392またはダイトクラールX−7906などの変性脂肪族ポリアミンを使用することができる。
【0042】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂との混合物を硬化させる硬化剤は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を使用することができる。本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂との混合物を硬化させる硬化剤は、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジセニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族3級アミン類、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジンなどの脂環族3級アミン類、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの芳香族3級アミン類、エポキシ樹脂を過剰なアミンと反応させて製造されるポリアミンエポキシ樹脂アダクト、ポリアミン−エチレンオキサイドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキサイドアダクト、シアノエチル化ポリアミン、主鎖がシリコンであるジアミン、または、ポリアミン類とフェノール類及びアルデヒド類などとを反応させて得られる脱水縮合物などの変性ポリアミン、2―エチル―4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水トリメリット酸などの酸無水物類などが挙げられる。本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂との混合物を硬化させる硬化剤として、大都産業(株)製、ダイトクラールX−2392またはダイトクラールX−7906などの変性脂肪族ポリアミンを使用することができる。
【実施例】
【0043】
本発明を以下の実施例により、さらに詳細に説明する。
【0044】
粘度の測定
東機産業製粘度計U−EIIを用いて、25℃で、粘度を測定した。
【0045】
ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)分析、重量平均分子量(Mw)の測定
カラムは、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL、TSKgelG1000HXLを直列につないだものを使用し、検出器にはGLサイエンス(株)製MODEL504R RI Detectorと日立(株)製L−D4000 UV Detectorを用いた。サンプルをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解して1%THF(テトラヒドロフラン)溶液としたものを、流速1.0ml/分の THF(テトラヒドロフラン)を移動相として、カラム温度40℃にて測定した。分子量はポリエチレングリコールを標品として、昭光サイエンティフィック(株)製GPCデータ処理ソフトウェアSIC480IIデータステーションを用いて、重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0046】
SH含有率の測定
試料をトルエンとピリジンの混合溶液に溶解し、ヨウ化カリウム水溶液を加えた後にヨウ素標準溶液を用いて滴定した。
【0047】
エポキシ当量の測定
試料0.2gをビーカーに計り取り、トルエン10mlと酢酸20mlを加え撹拌溶解した。これにテトラエチルアンモニウムブロマイド酢酸溶液10mlを加え撹拌し、さらにクリスタルバイオレット指示薬溶液を2〜3滴加えた。0.1mol/L過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定し、試料溶液の色が緑色につき始める点を終点とし、滴定量を読み取った。エポキシ当量は下記式によって
エポキシ当量={1000×試料重さ(g)}/{0.1×滴定量(ml)×力価}
算出した。
【0048】
50℃保存時の安定性の測定
試料を50℃の恒温槽で保管し、経時での粘度変化を測定した。
【0049】
硬度の測定
硬化剤として、変性脂肪族ポリアミン(大都産業(株)製 ダイトクラールX−2392またはダイトクラールX−7906)を使用した。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと変性脂肪族ポリアミン(大都産業(株)製 ダイトクラールX−2392またはダイトクラールX−7906)を混合したサンプルをポリプロピレン製カップにいれ、23℃50%RH雰囲気下で5日間硬化させた。硬化後の試料をポリプロピレン製カップから脱型し、表面を金属やすりを用いて平滑にした後に、高分子計器(株)製「デジタルゴム硬度計DD2−D型」を用いて23℃雰囲気下での「D硬度」値を測定し記録した。
【0050】
ハジキの測定
硬化剤として、変性脂肪族ポリアミン(大都産業(株)製 ダイトクラールX−2392またはダイトクラールX−7906)を使用した。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと変性脂肪族ポリアミン(大都産業(株)製 ダイトクラールX−2392またはダイトクラールX−7906)を混合した試料を溶融亜鉛メッキ鋼板へバーコーターを用い120μmの厚さに塗布した。23℃50%RH雰囲気下で5日間硬化後、表面を目視で観察しハジキの有無を測定した。ハジキの直径1mm以上のハジキの数が6個未満のサンプルを○(良)、6個以上のサンプルを×(不良)と判定した。
【0051】
耐屈曲性の測定
硬化剤として、変性脂肪族ポリアミン(大都産業(株)製 ダイトクラールX−2392またはダイトクラールX−7906)を使用した。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーと変性脂肪族ポリアミン(大都産業(株)製 ダイトクラールX−2392またはダイトクラールX−7906)を混合した試料を溶融亜鉛メッキ鋼板へバーコーターを用い120μmの厚さに塗布した。23℃50%RH雰囲気下で5日間硬化後、直径2mmの心棒を用い、JIS K 5600−5−1に従い、耐屈曲性の測定を行った。塗膜の屈曲部に割れ、はがれが認められなかった試料を○(良)、割れ、はがれが認められた試料を×(不良)と判定した。
【0052】
耐熱性の測定
試料を、熱重量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント製 TGA−Q50)で、窒素雰囲気下で加熱による重量減量を測定した。昇温温度は10℃/分であった。
【0053】
メルカプタン末端ポリサルファイドポリマーの合成
合成例1
2Lの4つ口フラスコにポリ硫化ナトリウム水溶液(2.06mol/L)482.1g、テトラブチルアンモニウムブロマイド50wt%水溶液1.9g、1,2−ビス(2−クロロエトキシ)エタン224.5g、1,2,3−トリクロロプロパン2.4gを仕込み、混合撹拌しながら80℃で4時間反応させた。その後、15.6wt%亜硫酸ナトリウム276.2g、46%水硫化ナトリウム水溶液53.8gを添加し、更に80℃で4時間反応後、水分を除去し、淡黄色透明の液状ポリサルファイドポリマーを得た。得られたポリマーは粘度が730 mPa・s、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)が1500、SH含量が6.8重量%であった。
【0054】
合成例2
2Lの4つ口フラスコにポリ硫化ナトリウム水溶液(2.06mol/L)482.1g、テトラブチルアンモニウムブロマイド50wt%水溶液3.9g、1,2−ビス(2−クロロエトキシ)エタン224.5g、1,2,3−トリクロロプロパン44.2gを仕込み、混合撹拌しながら80℃で4時間反応させた。その後、15.6wt%亜硫酸ナトリウム439.2g、46%水硫化ナトリウム水溶液206.7gを添加し、更に80℃で4時間反応後、水分を除去し、淡黄色透明の液状ポリサルファイドポリマーを得た。得られたポリマーは粘度が180 mPa・s、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)が880、SH含量が15.4重量%であった。
【0055】
合成例3
2Lの4つ口フラスコにポリ硫化ナトリウム水溶液(2.06mol/L)553.1g、テトラブチルアンモニウムブロマイド50wt%水溶液3.9g、1,2−ビス(2−クロロエトキシ)エタン224.5g、1,2,3−トリクロロプロパン3.0gを仕込み、混合撹拌しながら80℃で4時間反応させた。その後、15.6wt%亜硫酸ナトリウム321.7g、46%水硫化ナトリウム水溶液13.5gを添加し、更に80℃で4時間反応後、水分を除去し、淡黄色透明の液状ポリサルファイドポリマーを得た。得られたポリマーは粘度が1220 mPa・s、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)が5100、SH含量が2.3重量%であった。
【0056】
合成例4
2Lの4つ口フラスコにポリ硫化ナトリウム水溶液(2.06mol/L)482.1g、テトラブチルアンモニウムブロマイド50wt%水溶液1.9g、ビス(2−クロロエチル)ホルマール207.6g、1,2,3−トリクロロプロパン2.4gを仕込み、混合撹拌しながら80℃で4時間反応させた。その後、15.6wt%亜硫酸ナトリウム439.2g、46%水硫化ナトリウム水溶液53.8gを添加し、更に80℃で4時間反応後、水分を除去し、淡黄色透明の液状ポリサルファイドポリマーを得た。得られたポリマーは粘度が1060 mPa・s、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)が5100、SH含量が6.8重量%であった。
【0057】
合成例5
2Lの4つ口フラスコにポリ硫化ナトリウム水溶液(2.06mol/L)553.1g、テトラブチルアンモニウムブロマイド50wt%水溶液3.9g、ビス(2−クロロエチル)ホルマール207.6g、1,2,3−トリクロロプロパン3.0gを仕込み、混合撹拌しながら80℃で4時間反応させた。その後、15.6wt%亜硫酸ナトリウム321.7g、46%水硫化ナトリウム水溶液13.5gを添加し、更に80℃で4時間反応後、水分を除去し、淡黄色透明の液状ポリサルファイドポリマーを得た。得られたポリマーは粘度が1600 mPa・s、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)が5600、SH含量が2.5重量%であった。
【0058】
エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーの合成
実施例1
1Lの4つ口フラスコに合成例1のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER807、エポキシ当量170)69重量部を仕込み、80℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が80/20(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は95Pa・s、エポキシ当量807であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は4400であった。
【0059】
実施例2
1Lの4つ口フラスコに合成例1のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER807、エポキシ当量170)125.5重量部を仕込み、70℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が60/40(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は51Pa・s、エポキシ当量403はであった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は3200であった。
【0060】
実施例3
1Lの4つ口フラスコに合成例1のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールF型タイプのエポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER807、エポキシ当量170)170.6重量部を仕込み、70℃で混合撹拌しながらSH含有率価が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は17Pa・s、エポキシ当量314はであった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は2200であった。
【0061】
実施例3のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を用いて、50℃保存時の15日後、30日後、45日後、60日後の粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
実施例3のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が50/50(重量比)のポリマー混合物を用い、150℃、200℃、250℃での加熱による重量減量%を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
比較例1
1Lの4つ口フラスコに合成例4のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER807、エポキシ当量170)170.6重量部を仕込み、80℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は22Pa・s、エポキシ当量322であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は2500であった。
【0064】
比較例1のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を用いて、実施例3と同様にして50℃保存時の15日後、30日後、45日後、60日後の粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
比較例1のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を用いて、実施例3と同様にして、150℃、200℃、250℃での加熱による重量減量%を測定し、結果を表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物は、50℃で60日保存後もほぼ粘度が変わらず、安定なポリマーであることを示した。比較例1のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物は、50℃で60日保存すると、大きく粘度が上昇した。
【0068】
実施例4
1Lの4つ口フラスコに合成例3のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER807、エポキシ当量170)179.3重量部を混合し、60℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が40/60(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は13Pa・s、エポキシ当量は270であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は5100であった。
【0069】
実施例4のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が40/60(重量比)のポリマー混合物を用い、150℃、200℃、250℃での加熱による重量減量%を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2に示すように、本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物は、比較例1のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物と比較して、各温度における重量減少率が小さく、高温加熱での熱分解が少ない事が示された。
【0072】
実施例5
1Lの4つ口フラスコに合成例2のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールF型タイプのエポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER807、エポキシ当量170)259.0重量部を仕込み、50℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は134Pa・s、エポキシ当量は328であった。また混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は2900であった。
【0073】
実施例6
1Lの4つ口フラスコに合成例3のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER807、エポキシ当量170)86.2重量部を混合し、70℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂が60/40(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は29Pa・s、エポキシ当量は410であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのGPCによる重量平均分子量(Mw)は6500であった。
【0074】
実施例7
1Lの4つ口フラスコに合成例1のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)132.2重量部を仕込み、70℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が60/40(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は68Pa・s、エポキシ当量491はであった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は2900であった。
【0075】
実施例7のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が60/40(重量比)の混合物を用いて、50℃保存時の60日後、80日後の粘度を測定した。結果を表3に示す。
【0076】
実施例7のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が60/40(重量比)のポリマー混合物を用い、150℃、200℃、250℃での加熱による重量減量%を測定した。結果を表4に示す。
【0077】
実施例8
1Lの4つ口フラスコに合成例1のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型タイプのエポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)248重量部を仕込み、70℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が40/60(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は33Pa・s、エポキシ当量は311であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は2300であった。
【0078】
実施例8のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が40/60(重量比)の混合物を用いて、50℃保存時の60日後、80日後の粘度を測定した。結果を表3に示す。
【0079】
比較例2
1Lの4つ口フラスコに合成例4のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)178.6重量部を仕込み、80℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は54Pa・s、エポキシ当量356であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は2200であった。
【0080】
比較例2のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を用いて、実施例7と同様にして50℃保存時の60日後、80日後の粘度を測定した。結果を表3に示す。
【0081】
比較例2のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を用いて、実施例7と同様にして150℃、200℃、250℃での加熱による重量減量%を測定し、結果を表4に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
表3に示すように、本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物は、50℃で80日保存後もほぼ粘度が変わらず、安定なポリマーであることを示した。比較例2のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物は、50℃で60日保存すると、大きく粘度が上昇し、80日目にはゲル化し粘度測定が不可能であった。
【0084】
実施例9
1Lの4つ口フラスコに合成例2のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)276.8重量部を混合し、60℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が50/50(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は172Pa・s、エポキシ当量は390であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は3100であった。
【0085】
実施例9のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が50/50(重量比)のポリマー混合物を用い、150℃、200℃、250℃での加熱による重量減量%を測定した。結果を表4に示す。
【0086】
実施例10
1Lの4つ口フラスコに合成例3のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型タイプのエポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)182.5重量部を仕込み、50℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が40/60(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は25Pa・s、エポキシ当量は297であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は5200であった。
【0087】
実施例10のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が50/50(重量比)のポリマー混合物を用い、150℃、200℃、250℃での加熱による重量減量%を測定した。結果を表4に示す。
【0088】
比較例3
1Lの4つ口フラスコに合成例5のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)182.6重量部を仕込み、70℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が40/60(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は32Pa・s、エポキシ当量313であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は5500であった。
【0089】
比較例3のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が40/60(重量比)の混合物を用いて、実施例7と同様にして、150℃、200℃、250℃での加熱による重量減量%を測定し、結果を表4に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
表4に示すように、本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマービスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物は、比較例2および比較例3のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマービスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物と比べ、各温度における加熱による重量減少率が小さく、高温加熱での熱分解が少ない事が示された。
【0092】
実施例11
1Lの4つ口フラスコに合成例3のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)88.3重量部を混合し、70℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が60/40(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は45Pa・s、エポキシ当量は469であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は6200であった。
【0093】
実施例12
1Lの4つ口フラスコに合成例3のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)41.2重量部を混合し、80℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が80/20(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は88Pa・s、エポキシ当量は775であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は7600であった。
【0094】
実施例13
1Lの4つ口フラスコに合成例1のポリマー100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)74重量部を仕込み、80℃で混合撹拌しながらSH含有率が0.2%以下になるまで反応させ、エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂が80/20(重量比)の混合物を得た。得られた混合物の粘度は143Pa・s、エポキシ当量895であった。混合物中のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(Mw)は4700であった。
【0095】
実施例14〜19
実施例1〜6のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物に、硬化剤(大都産業(株)製 ダイトクラールX−2392)を合成例のポリマーのエポキシ当量と硬化剤のアミン当量が1:1になるように配合し、混合撹拌した。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物と硬化剤の混合比は、表5に示した。23℃50%RH雰囲気下で5日間硬化後、硬度、ハジキ、耐屈曲性の測定を行った。結果を表5に示す。
【0096】
比較例4
ビスフェノールF型タイプのエポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER807、エポキシ当量170)を使用し、実施例14と同様にして、硬度、ハジキ、耐屈曲性の測定を行った。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物と硬化剤の混合比は、表5に示した。結果を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
表5に示すように、本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物の硬化物は、比較例4のビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用した硬化物に比べ、ハジキがなく、溶融亜鉛メッキ鋼板への塗装性が良好であり、耐屈曲性が良好であった。
【0099】
実施例20〜26
実施例7〜13のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物に、硬化剤(大都産業(株)製 ダイトクラールX−7906)を混合物のエポキシ当量と硬化剤のアミン当量が1:1になるように配合し、混合撹拌した。エポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物と硬化剤の混合比は、表6に示した。23℃50%RH雰囲気下で5日間硬化後、硬度、ハジキ、耐屈曲性の測定を行った。結果を表6に示す。
【0100】
比較例5
ビスフェノールA型タイプのエポキシ樹脂(三菱化学(株)製jER828、エポキシ当量190)を使用し、実施例20と同様にして、硬度、ハジキ、耐屈曲性の測定を行った。ビスフェノールA型エポキシ樹脂と硬化剤の混合比は、表6に示した。結果を表6に示す。
【0101】
【表6】
【0102】
表6に示すように、本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーとビスフェノールA型エポキシ樹脂の混合物の硬化物は、比較例5のビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した硬化物に比べ、ハジキがなく、溶融亜鉛メッキ鋼板への塗装性が良好であり、耐屈曲性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを硬化剤で硬化させた硬化物は、可とう性が高く、耐水性、耐薬品性、耐候性に優れ、さらに接着力が大きい。本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーを硬化させた硬化物は、接着剤、シーリング材、ポッティング材、コーティング材、樹脂用改質材およびプライマーなどに用いることができる。
【0104】
本発明のエポキシ基末端ポリサルファイドポリマーは、特に、土木・建築用接着剤、土木・建築用コーティング材、土木・建築用プライマー、電気・電子用接着剤、電気・電子用ポッティング材及び車両用接着剤、車両用プライマーとして使用することができる。