(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外力によって前記操作部が操作されたときに、前記外力を弾性エネルギーとして貯蔵し、前記操作部に対する前記外力の印加が解除されたときに、前記貯蔵された弾性エネルギーを解放し、前記操作部を初期位置に戻すよう、前記操作部材を上下運動させる操作部用弾性部材をさらに備え、
前記発電装置は、前記操作部用弾性部材から解放された前記弾性エネルギーを利用して第2回目の発電を実行することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の発電装置および該発電装置を備えた電子デバイスを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る発電装置(電子デバイス)の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す発電装置(電子デバイス)の分解斜視図である。
図3は、
図2に示す発電機構の分解斜視図である。
図4は、
図3に示す操作部および操作部用弾性部材の斜視図である。
図5は、
図3に示す発電機構の発電部の分解斜視図である。
図6は、
図5に示すフレームの一方の面側の構成を示す斜視図である。
図7は、
図5に示すフレームの他方の面側の構成を示す斜視図である。
図8は、
図5に示す第1の回転部材の斜視図である。
図9は、
図5に示すマグネット組立体の分解斜視図である。
図10は、
図5に示す第1の回転部材、第2の回転部材、弾性部材、シャフト、およびマグネット組立体間の連結関係を説明するための図である。
図11は、
図5に示すコイル組立体の分解斜視図である。
図12は、
図5に示すマグネット組立体とコイル組立体と位置関係を説明するための図である。
図13は、
図5に示すマグネット組立体とコイル組立体との間に生じる磁気トルクを説明するための図である。
【0025】
なお、以下の説明では、
図1、
図2、
図3、
図4、
図11、
図12、および
図13の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」または「左側」と言い、右側を「右」または「右側」と言う。
【0026】
図1および
図2に示す本発明の電子デバイス10は、外部から印加された外力を利用して2回の発電を実行する発電装置1と、発電装置1が発電した電力によって駆動され、任意の機能を提供する電子回路20とを含む。
【0027】
なお、電子回路20が提供する機能は特に限定されず、例えば、電子回路20は、発電装置1から供給される電力を利用して、外部機器に信号を無線送信する無線送信機能を提供してもよい。この場合、電子デバイス10は、外部から印加される外力を利用して発電を行い、該電力を用いて外部機器に信号を無線送信するバッテリーレススイッチとして機能する。
【0028】
図2に示すように、本発明の発電装置1は、大略すると、発電装置1の各コンポーネントおよび電子回路20を収納するための上側ケース2Uおよび下側ケース2Lと、上側ケース2Uおよび下側ケース2Lに対して回動可能に設けられたレバー3と、上側ケース2Uおよび下側ケース2Lによって規定される内部空間内への浸水を防ぐための防水パッキン4と、操作者のレバー3に対する操作を介して印加された外力を利用して発電を実行する発電機構5とを備えている。なお、本実施形態において、電子回路20は、発電機構5に接続され、上側ケース2Uおよび下側ケース2Lによって規定される内部空間内に位置している。
【0029】
上側ケース2Uは、底面を欠いた長尺の箱形状を有している。一方、下側ケース2Lは、上面を欠いた長尺の箱形状を有している。上側ケース2Uおよび下側ケース2Lは、下側ケース2Lを上側ケース2Uの内部に挿入可能に構成されており、下側ケース2Lを上側ケース2Uの内部に挿入することにより、発電装置1の各コンポーネントおよび電子回路20を収容するための内部空間が規定される。
【0030】
図2中、上側ケース2Uの奥側および手前側の側面のそれぞれには、複数の矩形状の開口部21とU字型の開口部22とが形成されている。一方、
図2中、下側ケース2Lの奥側および手前側の側面のそれぞれには、上側ケース2Uの矩形状の開口部21に対応する位置に突出部24が形成されており、上側ケース2UのU字型の開口部22に対応する位置に円筒状のレバー支持部25が形成されている。下側ケース2Lが上側ケース2Uの内部に挿入されると、
図1に示すように、上側ケース2Uの矩形状の開口部21のそれぞれから、下側ケース2Lの突出部24が突出し、上側ケース2Uと下側ケース2Lとが組み立てられる。上側ケース2Uと下側ケース2Lとが組み立てられると、上側ケース2Uと下側ケース2Lは、発電装置1(電子デバイス10)の筐体として機能し、そのサイズは、例えば、幅約6.6mm×高さ約12mm×長さ約33mmである。
【0031】
図1に示すように、上側ケース2Uと下側ケース2Lとが組み立てられた状態において、下側ケース2Lのレバー支持部25が上側ケース2UのU字型の開口部22を介して外部に露出する。
【0032】
レバー3は、金属材料または樹脂材料から構成されている。レバー3の右側端部には、レバー3の長尺方向に対して直交する方向(図中Z軸の負方向)に突出する一対の係合部31が形成されており、一対の係合部31のそれぞれには、下側ケース2Lのレバー支持部25の形状に対応した形状を有する円形開口32が形成されている。上側ケース2UのU字型の開口部22を介して外部に露出する下側ケース2Lのレバー支持部25をレバー3の円形開口32に挿入することにより、レバー3が上側ケース2Uおよび下側ケース2Lに対して回動可能に取り付けられる。発電装置1の操作者は、レバー3を上側ケース2Uおよび下側ケース2Lに対して近づくように回動操作し、発電機構5の操作部51を操作(押圧)することにより、発電装置1に対して外力を印加することができる。このように、本発明の発電装置1においては、操作者は、レバー3を回動操作することにより、外力を印加するので、レバー3は、発電装置1の操作部とみなすことができる。
【0033】
上側ケース2Uおよび下側ケース2Lの構成材料としては、樹脂材料、カーボン材等の非磁性材料や弱磁性材料が挙げられる。費用や重量の観点からは、樹脂材料を用いて上側ケース2Uおよび下側ケース2Lを構成することが好ましい。上側ケース2Uおよび下側ケース2Lは、同一の非磁性材料または弱磁性材料で構成されていてもよいし、異なる種類の非磁性材料または弱磁性材料で構成されていてもよい。
【0034】
また、上側ケース2Uの上面には、発電機構5の操作部51を外部に突出させるための円形開口23が形成されている。
図2に示すように、防水パッキン4は、上側ケース2Uの上面と略等しい平面形状を有する板状部材である。防水パッキン4の上面の上側ケース2Uの円形開口23に対応する位置には、発電機構5の操作部51を挿通させるための挿通部41が形成されている。挿通部41は、中空の円錐形状を有しており、その頂点部分に発電機構5の操作部51を挿通させるための貫通孔が形成されている。
【0035】
図1および
図2に示すように、発電装置1が組み立てられた状態において、防水パッキン4は、上側ケース2Uと発電機構5との間に位置し、上側ケース2Uの円形開口23を介して防水パッキン4の挿通部41が外部に突出し、さらに、防水パッキン4の挿通部41を介して発電機構5の操作部51が外部に突出している。このような構成により、防水パッキン4は、発電装置1の内部空間への浸水を防止し、さらに、発電装置1の内部空間への塵や埃等の侵入を防止することができる。防水パッキン4の構成材料としては、ゴム、エラストマー、その他軟質樹脂等の防水性能を有する弾性材料を挙げることができる。
【0036】
発電機構5は、操作者のレバー3に対する操作を介して印加された外力を利用して発電を実行する機能を有しており、発電装置1の内部空間において、防水パッキン4と下側ケース2Lとの間に位置している。
【0037】
図3に示すように、発電機構5は、レバー3を介して操作者によって操作(押下)される操作部51と、操作部51を付勢するための操作部用弾性部材52と、発電を実行するための発電部6と、発電部6および電子回路20をカバーするためのインナーカバー53とを備えている。なお、本実施形態において、電子回路20は、発電部6に接続されている。
【0038】
図4には、
図3とは別の角度から見た操作部51および操作部用弾性部材52が示されている。
図4に示すように、操作部51は、発電装置1の組立時において、上側ケース2Uの円形開口23および防水パッキン4の挿通部41を介して外部に突出する円柱型の押圧部511と、押圧部511の下側に押圧部511と一体的に設けられた板状部512と、板状部512の側面に形成されたラック部513と、板状部512上に形成された操作部用弾性部材52を受けるための凹部514とを備えている。
【0039】
操作部用弾性部材52は、長尺のコイルバネであり、発電装置1の組立時において、操作部51の凹部514内に位置し、その上側端部が操作部51の押圧部511の下面に接触し、その下側端部が発電部6に接触する。このような配置により、操作部用弾性部材52は、操作者がレバー3を介して操作部51を押下したときに、操作者から印加される外力を弾性エネルギーとして貯蔵し、さらに、操作者のレバー3を介した操作部51に対する押下が解除されたときに、貯蔵された弾性エネルギーを解放し、操作部51を所定の初期位置に戻すことができる。
【0040】
図3に戻り、インナーカバー53は、発電部6および電子回路20をカバーするために用いられる。インナーカバー53は、板材に対して曲げ加工や打ち抜き加工等の加工処理を施すことにより形成されており、発電部6および電子回路20をカバー可能な形状を有している。インナーカバー53は、後述するシャフトまたは雄ネジを受け入れるための貫通孔531、532、533を有している。インナーカバー53および操作部51は、上側ケース2Uおよび下側ケース2Lと同様に、非磁性材料または弱磁性材料で構成されている。
【0041】
次に、
図5を参照して、発電部6を説明する。
図5には、
図3とは異なる角度から見た発電部6および電子回路20の分解斜視図が示されている。
図5に示すように、発電部6は、発電部6の各コンポーネントを保持するためのフレーム61と、操作部51のラック部513と係合(噛合)し、操作部51に印加された外力によって回転する第1の回転部材62と、第1の回転部材62と同方向に回転可能な第2の回転部材63と、第1の回転部材62および第2の回転部材63用のシャフト64と、第1の回転部材62および第2の回転部材63に連結されている弾性部材65と、第2の回転部材63と係合(噛合)し、第2の回転部材63と共に回転するマグネット組立体66と、フレーム61に対し固定的に取り付けられたコイル組立体67と、を備えている。
【0042】
フレーム61は、上側ケース2Uおよび下側ケース2Lと同様に、非磁性材料または弱磁性材料から構成されている。
図6には、フレーム61の一方の側(図中Y軸の負方向側)の面の構造が示されている。
図7には、フレーム61の他方の側(図中Y軸の正方向側)の面の構造が示されている。
【0043】
図6および
図7に示すように、フレーム61は、操作部51および操作部用弾性部材52を収納するための収納部611と、シャフト64を支持する円柱部612と、円柱部612の一方の側(図中Y軸の負方向側、
図6に示された側)に形成された円状の凹部613と、円柱部612の略中央に形成された貫通孔614と、フレーム61の他方の側(図中Y軸の正方向側、
図7に示された側)に形成された円状の凹部615と、凹部615の略中央に形成された貫通孔616と、雌ネジ部617と、貫通孔618a、618bとを有している。
【0044】
収納部611は、フレームの高さ方向に沿って形成された円筒状の凹部であり、発電装置1が組み立てられた状態において、収納部611とインナーカバー53の内面によって規定される空間内に操作部51および操作部用弾性部材52が位置する。
【0045】
発電装置1が組み立てられた状態において、円柱部612の一方の側(図中Y軸の負方向側、
図6に示された側)に第1の回転部材62が位置し、さらに、他方の側(図中Y軸の正方向側、
図7に示された側)に第2の回転部材63が位置する。また、発電装置1が組み立てられた状態において、円柱部612は、弾性部材65の中央空洞部内に挿入され、弾性部材65用の装着軸としてしても機能する。
【0046】
円柱部612の一方の側(図中Y軸の負方向側、
図6に示された側)には、円柱部612と同心の円状の凹部613が形成されており、さらに、円柱部612の略中央には貫通孔614が形成されている。発電装置1が組み立てられた状態において、凹部613内において第1の回転部材62が支持され、貫通孔614内に第1の回転部材62および第2の回転部材63用のシャフト64が挿入される。
【0047】
凹部615は、フレーム61の他方の側(図中Y軸の正方向側、
図7に示された側)に形成されており、発電装置1が組み立てられた状態において、マグネット組立体66が凹部615内に配置される。さらに、凹部615の略中央には、貫通孔616が形成されており、発電装置1が組み立てられた状態において、マグネット組立体66のシャフト665(
図9参照)が挿入される。
【0048】
雌ネジ部617は、その中央に貫通するネジ孔を有する円筒状の部材であり、フレーム61の他方の側(図中Y軸の正方向側、
図7に示された側)に形成されている。雌ネジ部617のネジ孔には、雄ネジ7(
図11参照)が螺合される。また、発電装置1が組み立てられた状態において、貫通孔618a、618bに、ピン8a、8b(
図11参照)がそれぞれ挿入される。これにより、コイル組立体67および電子回路20が、フレーム61に対して固定的に取り付けられる。
【0049】
第1の回転部材62は、フレーム61の一方の側(図中Y軸の負方向側、
図6に示された側)に取り付けられ、操作部51に印加された外力によって回転する。
図8に示すように、第1の回転部材62は、円板部621と、円板部621上に形成されたギア部622と、ギア部622から延伸するアーム部623と、アーム部623に形成された貫通孔624と、円板部621およびギア部622の略中央に形成されたシャフト挿通孔625を有している。
【0050】
円板部621は、フレーム61の円柱部612上に形成された凹部613に対応する形状を有している。また、円板部621の厚さは、凹部613の深さと略等しい。そのため、発電装置1が組み立てられた状態において、円板部621が凹部613内に収納される。ギア部622は、円板部621上に形成され、発電装置1が組み立てられた状態において、操作部51のラック部513と係合(噛合)する。そのため、操作部51が上下方向に移動すると、操作部51のラック部513と第1の回転部材62のギア部622との係合(噛合)により、第1の回転部材62が回転する。
【0051】
アーム部623は、ギア部622から延伸しており、その先端側には貫通孔624が形成されている。貫通孔624内に弾性部材65の一方の端部651(
図5および
図10参照)が挿入されることにより、第1の回転部材62に弾性部材65が連結される。発電装置1が組み立てられた状態において、シャフト挿通孔625にシャフト64が挿通され、シャフト64が第1の回転部材62の回転軸となる。
【0052】
図5に戻り、第2の回転部材63は、円板状の胴体部631と、胴体部631の円周上に形成されたギア部632と、胴体部631の外周近辺に形成された貫通孔633と、胴体部631の略中央に形成されたシャフト挿通孔634を有している。
【0053】
本実施形態では、第2の回転部材63の胴体部631の径は、第1の回転部材62の円板部621の径よりも大きいが、本発明はこれに限られない。第2の回転部材63の胴体部631の径と、第1の回転部材62の円板部621の径との比は、外力による操作部51の移動距離、必要とされる第1の回転部材62および第2の回転部材63の回転角、弾性部材65のバネ係数等の要因に応じて適宜設定することができる。
【0054】
ギア部632は、胴体部631の円周上に形成されており、発電装置1が組み立てられた状態において、マグネット組立体66と係合(噛合)する。これにより、第2の回転部材63の回転をマグネット組立体66に伝達させること、および、マグネット組立体66の回転を第2の回転部材63に伝達させることができる。
【0055】
貫通孔633は、胴体部631の外周近辺に形成されている。貫通孔633内に弾性部材65の他方の端部652(
図5および
図10参照)が挿入されることにより、第2の回転部材63に弾性部材65が連結される。上述のように、弾性部材65の一方の端部651が第1の回転部材62の貫通孔624内に挿通され、第1の回転部材62と弾性部材65とが連結されているので、第1の回転部材62と第2の回転部材63は、弾性部材65を介して連結されている。
【0056】
シャフト挿通孔634は、胴体部631の略中央に形成されており、発電装置1が組み立てられた状態において、シャフト挿通孔634にシャフト64が挿通され、シャフト64が第2の回転部材63の回転軸となる。前述のように、発電装置1が組み立てられた状態において、シャフト64は、第1の回転部材62の回転軸としても機能するので、第2の回転部材63は、第1の回転部材62と同軸回転可能となっている。
【0057】
シャフト64は、円柱状の胴体部641と、胴体部641の端部に形成された拡径部642とを有している。胴体部641の径は、フレーム61の貫通孔614の径よりも大きく、胴体部641は、フレーム61の貫通孔614内に圧入される。また、胴体部641の径は、第1の回転部材62のシャフト挿通孔625よりも小さい。一方、拡径部642の径は、第2の回転部材63のシャフト挿通孔634の径よりも小さく、拡径部642は、第2の回転部材63のシャフト挿通孔634内に挿入される。
【0058】
シャフト64の胴体部641がフレーム61の貫通孔614および第1の回転部材62のシャフト挿通孔625に挿通され、さらに、シャフト64の拡径部642が第2の回転部材63のシャフト挿通孔634に挿通される。この状態において、第1の回転部材62および第2の回転部材63は、回転可能に支持される。また、発電装置1が組み立てられた状態において、シャフト64の拡径部642の端部は、インナーカバー53の貫通孔531内に挿入され、支持される。このような構成により、第1の回転部材62、シャフト64、および第2の回転部材63が同心配置され、第1の回転部材62と第2の回転部材63がシャフト64を中心として同心回転可能となる。
【0059】
弾性部材65は、中央空洞部を有する円筒状のコイルバネである。弾性部材65の内径は、フレーム61の円柱部612の外径よりも大きい。そのため、発電装置1が組み立てられた状態において、弾性部材65の中央空洞部内にフレーム61の円柱部612が位置し、フレーム61の円柱部612が弾性部材65用の装着軸として機能する。
【0060】
前述のように弾性部材65の一方の端部651は、第1の回転部材62の貫通孔624内に挿通され、第1の回転部材62に連結されている。弾性部材65の他方の端部652は、第2の回転部材63の貫通孔633内に挿通され、第2の回転部材63に連結されている。このような構成により、操作部51の運動によって第1の回転部材62が回転すると、弾性部材65を介して、第2の回転部材63に回転トルクが加えられ、第2の回転部材63が、第1の回転部材62と同方向に回転する。
【0061】
図5および
図9に示すように、マグネット組立体66は、中央に貫通孔を有するマグネットギア661と、マグネットギア661上に取り付けられた円筒状のマグネット664と、マグネットギア661の貫通孔および円筒状のマグネット664の中央空洞部内に挿通されるシャフト665とを有している。
【0062】
図9に示すように、マグネットギア661は、中央に貫通孔を有する円板部662と、円板部662の他方の側(図中Y軸の正方向側)の面上に形成されたギア部663とを有している。ギア部663は、発電装置1が組み立てられた状態において、第2の回転部材63のギア部632と係合(噛合)するよう構成されている。このような構成により、第2の回転部材63の回転をマグネット組立体66に伝達させること、および、マグネット組立体66の回転を第2の回転部材63に伝達させることが可能となる。また、マグネットギア661の円板部662の径は、第2の回転部材63の径よりも小さい。そのため、マグネットギア661のギア部663の歯数をN
1、第2の回転部材63のギア部632の歯数をN
2としたとき、N
2>N
1の関係が成立している。なお、
図5に示すように、第2の回転部材63の胴体部631の円周上であって、貫通孔633が形成されている部分の近辺には、ギア部632が形成されていない。第2の回転部材63の歯数N
2は、胴体部631の円周全面にギア部632が形成されているものと仮定したときの歯数である。
【0063】
マグネット664は、円筒状の永久磁石であり、マグネットギア661の他方の側(図中Y軸の負方向側)の面上に接着剤等により固定的に取り付けられている。
図9に示すように、マグネット664は、マグネット664の平面方向の一方の側がN極、他方の側がS極となるように着磁されている。
【0064】
シャフト665は、拡径部666と、縮径部667とを有している。拡径部666および縮径部667は、同軸の円柱部材であって、一体的に成形されている。拡径部666の径は、縮径部667の径よりも大きい。また、拡径部666の径は、マグネット664の中央空洞部の径よりも小さく、マグネットギア661の貫通孔の径よりも大きい。縮径部667の径は、マグネットギア661の貫通孔の径よりも小さい。拡径部666がマグネット664の中央空洞部内に挿入され、縮径部667がマグネットギア661の貫通孔に挿入される。これにより、マグネット664は、マグネットギア661が回転したときに、マグネットギア661と同時に同軸回転することができる。また、発電装置1が組み立てられた状態において、シャフト665の縮径部667の端部は、インナーカバー53の貫通孔532内に挿入、支持され、シャフト665の拡径部666の端部は、フレーム61の貫通孔616内に挿入、支持される。
【0065】
マグネットギア661は、非磁性材料または弱磁性材料から構成されている。シャフト665は、非磁性材料、弱磁性材料、または磁性材料から構成することができるが、磁性材料でシャフト665を構成ことが好ましい。マグネット664の中央空洞部内に挿入されるシャフト665を磁性材料で構成することにより、マグネット664から発生する磁力線の数を増加させることができ、発電装置1の発電効率を向上させることができる。
【0066】
図10には、発電装置1が組み立てられた状態における第1の回転部材62、第2の回転部材63、シャフト64、弾性部材65、およびマグネット組立体66の連結関係が示されている。なお、説明のため、
図10中では、第1の回転部材62、第2の回転部材63、シャフト64、弾性部材65、およびマグネット組立体66以外のコンポーネントは省略されている。
【0067】
図10に示すように、第1の回転部材62、第2の回転部材63、および弾性部材65は、シャフト64を中心として同心配置されている。弾性部材65は、第1の回転部材62と第2の回転部材63との間に位置している。弾性部材65の一方の端部651は、第1の回転部材62の貫通孔624内に挿入され、第1の回転部材62に連結されている。弾性部材65の他方の端部652は、第2の回転部材63の貫通孔633内に挿入され、第2の回転部材63に連結されている。また、第2の回転部材63のギア部632は、マグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663と係合(噛合)している。
【0068】
このような連結関係によって、第1の回転部材62の回転を利用して、マグネット組立体66のマグネット664を回転させることができる。より具体的には、第1の回転部材62の回転は、以下のようにしてマグネット組立体66に伝達される。最初に、外部から印加された外力によって操作部51が上下方向に移動されると、操作部51のラック部513と第1の回転部材62のギア部622との係合(噛合)によって、第1の回転部材62が回転する。第1の回転部材62が回転すると、第1の回転部材62に連結された弾性部材65が弾性変形し、弾性部材65から第2の回転部材63に回転トルクが加えられる。加えられた回転トルクによって、第2の回転部材63が第1の回転部材62の回転と同方向に回転されると、第2の回転部材63のギア部632とマグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663との係合(噛合)によって、マグネットギア661が回転する。マグネット664は、マグネットギア661に取り付けられているので、マグネットギア661が回転すると、マグネット664も回転する。
【0069】
図5に戻り、コイル組立体67は、雄ネジ7およびピン8a、8bによって、電子回路20と共に発電部6のフレーム61に対して固定的に設けられている。
図11に示すように、コイル組立体67は、ボビン671と、ボビン671に巻き付けられたコイル672と、コイル672(ボビン671)の中央空洞部内に挿通されるコイルコア673とを備えている。
【0070】
コイルコア673は、磁性材料から構成された複数の板材を積層することによって形成されている。コイルコア673用の板材を構成する磁性材料としては、例えば、フェライト系ステンレス鋼(例えば、JIS SUS430)、マルテンサイト系ステンス鋼(例えば、JIS SUS403)、純鉄(例えば、JIS SUY)、軟鉄、炭素鋼、電磁鋼(ケイ素鋼)、高速度工具鋼、構造鋼(例えば、JIS SS400)、パーマロイ、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの中でも、電磁的およびコスト的な観点から、電磁鋼を用いてコイルコア673用の板材を構成することが特に好ましい。
【0071】
図11に示すように、コイルコア673は、一方の側(図中のX軸の負方向側)に向かって開放する略コの字形状を有している。コイルコア673は、円弧部674を有し、互いに離間して対向する上下一対の延伸部675と、ピン8a、8bを挿通させるための貫通孔676a、676bを有している。
【0072】
一対の延伸部675の図中X軸の正方向側の端部は、接続部によって接続され、略コの字形状を形成している。円弧部674は、マグネット組立体66のマグネット664に対応した形状を有しており、一対の延伸部675の途中に形成されている。発電装置1が組み立てられた状態において、互いに離間して対向する一対の延伸部675によって規定される空間にマグネット組立体のマグネット664が位置する。また、発電装置1が組み立てられた状態において、コイルコア673の上側の延伸部675は、コイル672(ボビン671)の中央空洞部内に挿通される。
【0073】
電子回路20は、コイルコア673に固定され、コイル672の両端部(電力引き出し線)が電子回路20に接続されている。これにより、コイル672内に発生した電力を電子回路20に供給し、電子回路20を駆動することができる。
【0074】
電子回路20は、雄ネジ7を挿通させるための貫通孔201と、ピン8a、8bを挿通させるための貫通孔202a、202bとを有している。発電装置1が組み立てられた状態において、雄ネジ7は、電子回路20の貫通孔201に挿通された状態で、フレーム61の雌ネジ部617と螺合される。ピン8aは、電子回路20の貫通孔202aおよびコイルコア673の貫通孔676aに挿通された状態で、一方の側(図中Y軸の負方向側)の端部がフレーム61の貫通孔618a内に挿入され、支持される。ピン8bは、電子回路20の貫通孔202bおよびコイルコア673の貫通孔676bに挿通された状態で、一方の側(図中Y軸の負方向側)の端部がフレーム61の貫通孔618b内に挿入され、支持される。このような構成により、コイル組立体67および電子回路20が発電部6のフレーム61に対して固定的に設けられる。
【0075】
図12には、発電装置1が組み立てられた状態におけるマグネット組立体66とコイル組立体67(および電子回路20)の位置関係が示されている。なお、説明のため、
図12中では、マグネット組立体66とコイル組立体67(および電子回路20)以外のコンポーネントは省略されている。
【0076】
図12に示すように、発電装置1が組み立てられた状態において、マグネット組立体66のマグネット664は、コイルコア673の一対の延伸部675の間に規定される空間内に位置している。一対の円弧部674は、マグネット664の円周部分の一部分に対向しており、一対の延伸部675は、マグネット664から離間する方向に直線状に延伸している。上述のように、コイルコア673は、板状の磁性材料を複数積層することにより形成されている。そのため、マグネット664のN極から発せられた磁力線は、コイルコア673を通過して、マグネット664のS極に入る。すなわち、本発明においては、コイルコア673、マグネット664、およびコイル672によって磁気回路が形成されている。
【0077】
コイルコア673は、マグネット664の円周部分の一部分に対向する円弧部674と、マグネット664から離間する方向に直線状に延伸している延伸部675を有しているので、マグネット664の回転によってマグネット664のN極またはS極の磁力が最も強い部分と、コイルコア673との離間距離が変化する。このため、マグネット664が回転するとコイルコア673を通過する磁力線の数(磁束密度)が変化する。
【0078】
上述のようにコイルコア673の上側の延伸部675は、コイル672(ボビン671)の中央空洞部内に挿通されているので、マグネット664の回転によりコイルコア673を通過する磁力線の数(磁束密度)が変化すると、誘電効果によりコイル672内に電力が発生する。
【0079】
また、マグネット664とコイルコア673との間には引き付けあう磁力が発生する。上述のようにコイルコア673は、マグネット664の円周部分の一部分に対向する円弧部674と、マグネット664から離間する方向に延伸している延伸部675を有しているので、マグネット664とコイルコア673との間には、マグネット664を、マグネット664とコイルコア673との間の磁力が最も強くなるような回転位置にマグネット664を回転させる磁気トルクが発生する。
【0080】
また、マグネット664の回転によってマグネット664のN極またはS極の磁力が最も強い部分と、コイルコア673との離間距離が変化することから、マグネット664とコイルコア673との間に生じる磁気トルクは、マグネット664の回転(回転位置の変化)によって変化する。
【0081】
マグネット664(マグネット組立体66)は、第2の回転部材63の回転に伴って回転するため、マグネット664とコイルコア673との間に生じる磁気トルクは、マグネット組立体66から第2の回転部材63に伝達し、第2の回転部材63の回転に影響を与える。そのため、以下、
図13を参照して、マグネット664とコイルコア673との間に生じる磁気トルクについて詳述する。
【0082】
図13の右側には、マグネット664とコイルコア673との間に生じる磁気トルクの変化を説明するためのグラフが示されている。なお、
図13のグラフのY軸において、正側の磁気トルクは、反時計回り方向の磁気トルクを意味し、負側の磁気トルクは、時計回り方向の磁気トルクを意味する。
【0083】
また、
図13の左図の矢印を回転角θの基準とする。すなわち、マグネット664のN極の磁力が最も強い部分がコイルコア673の上側の円弧部674に対向し、かつ、マグネット664のS極の磁力が最も強い部分がコイルコア673の下側の円弧部674に対向している状態を「0°」とする。このとき、磁気トルクは、0[mN]となる。
【0084】
第2の回転部材63の回転によってマグネット664が反時計周り(θが増加する方向)に回転すると、マグネット664とコイルコア673との間に、マグネット664をθ=0°の状態に戻そうとする時計回り方向の磁気トルクが発生する。
図13に示されているように、マグネット664とコイルコア673との間に発生する時計回り方向の磁気トルクは、マグネット664の回転に伴い増加する(
図13のグラフ中、θ=0°〜約45°までの範囲)。
【0085】
マグネット664とコイルコア673との間に発生する時計回り方向の磁気トルクが増大している間、マグネット664のN極側とコイルコア673との間の磁力は、マグネット664のN極側とコイルコア673の上側の円弧部674および延伸部675との間の磁力が支配的となっている。同様に、マグネット664とコイルコア673との間に発生する時計回り方向の磁気トルクが増大している間、マグネット664のS極側とコイルコア673との間の磁力は、マグネット664のS極側とコイルコア673の下側の円弧部674および延伸部675との間の磁力が支配的となっている。そのため、第2の回転部材63の回転によってマグネット664が回転し、マグネット664のN極側とコイルコア673の上側の円弧部674および延伸部675との間の離間距離、および、マグネット664のS極側とコイルコア673の下側の円弧部674および延伸部675との間の離間距離が増大するにつれて、マグネット664とコイルコア673との間に生じる時計回り方向の磁気トルクが増大する(
図13のグラフ中、θ=0°〜約45°までの範囲)。
【0086】
その後、マグネット664が一定以上回転する(
図13のグラフ中、θ=約45°〜90°までの範囲)と、マグネット664のN極側とコイルコア673の上側の円弧部674および延伸部675との間の磁力が減少し、逆に、マグネット664のN極側とコイルコア673の下側の円弧部674および延伸部675との間の磁力が増加する。同様に、マグネット664のS極側とコイルコア673の下側の円弧部674および延伸部675との間の磁力が減少し、逆に、マグネット664のS極側とコイルコア673の上側の円弧部674および延伸部675との間の磁力が増加する。これにより、時計回り方向の磁気トルクが減少する。
【0087】
図13に示すように、マグネット664の回転角θが90°に到達すると、時計回り方向の磁気トルクが0[mN]となる。マグネット664の回転角θが90°を超えると(
図13のグラフ中、θ=90°〜約135°の範囲)、マグネット664のN極側とコイルコア673の下側の円弧部674および延伸部675との間の磁力、および、マグネット664のS極側とコイルコア673の上側の円弧部674および延伸部675との間の磁力が増加するので、マグネット664に対する反時計回り方向の磁気トルクがマグネット664とコイルコア673との間に発生する。この反時計回り方向の磁気トルクは、マグネット664の回転角θが0〜90°の範囲にある場合と同様のメカニズムによって増減する。
【0088】
ここまで、第2の回転部材63の回転によってマグネット664が反時計回り方向に回転する場合のマグネット664とコイルコア673との間に発生する磁気トルクについて説明したが、第2の回転部材63の回転によってマグネット664が時計回り方向に回転する場合も、第2の回転部材63の回転によってマグネット664が反時計回り方向に回転する場合と同様のメカニズムによって、マグネット664とコイルコア673との間に発生する磁気トルクが変化する。
【0089】
このように、マグネット664とコイルコア673との間に発生する磁気トルクは、マグネット664の回転によって変化し、マグネット664の回転角θの大きさによって、マグネット664の回転を妨げる作用またはマグネット664の回転を促進する作用を提供する。したがって、本発明において、マグネット664とコイルコア673との間に発生する磁気トルクは、マグネット664が所定の量だけ回転するまでは、マグネット664の回転を妨げるストッパーとして機能し、マグネット664が所定の量だけ回転した後は、マグネット664の回転を促進する回転加速手段として機能する。
【0090】
図10において示したように、マグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663は、第2の回転部材63のギア部632と係合(噛合)している。そのため、マグネット664とコイルコア673との間に発生する磁気トルクは、マグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663と第2の回転部材63のギア部632との係合(噛合)によって、第2の回転部材63に伝達される。また、前述のように、マグネットギア661の円板部662の径は、第2の回転部材63の径よりも小さいことから、マグネット664とコイルコア673との間に発生する磁気トルクは、増幅されて第2の回転部材63に伝達される。
【0091】
本発明の発電装置1では、このような構成により、マグネット664とコイルコア673との間に発生する磁気トルクと、第1の回転部材62および第2の回転部材63に連結された弾性部材65とを利用し、従来技術のような弾き機構なしに、マグネット664を急速に回転させ、発電に実行することができる。以下、
図14〜
図16を参照して、発電装置1の発電動作について説明する。
【0092】
図14は、
図1に示す発電装置の第1回目の発電における動作を説明するための図である。
図15は、
図14に示す発電装置の第1回目の発電における動作の間のマグネットの回転角を示す図である。
図16は、
図1に示す発電装置の第2回目の発電における動作を説明するための図である。なお、
図14および
図16では、発電装置1の内部構造を説明するため、上側ケース2U、下側ケース2L、インナーカバー53、およびフレーム61が省略されている。
【0093】
最初に、
図14および
図15を参照して、発電装置1の第1回目の発電について説明する。
図14(a)には、操作者によって操作部51に外力が付与されていない待機状態の発電装置1が示されている。操作者によってレバー3が操作され、発電装置1の操作部51に外力が印加されると、発電装置1は、
図14(b)に示す状態に移行する。
【0094】
図14(b)に示す状態では、レバー3を介して印加された外力によって、操作部51が押下される。操作部51が押下されると、操作部51とフレーム61との間に保持されている操作部用弾性部材52が弾性変形され、操作者によって印加された外力が、操作部用弾性部材52内に弾性エネルギーとして貯蔵される。
【0095】
また、操作部51が押下されると、操作部51のラック部513と第1の回転部材62のギア部622との係合(噛合)により、第1の回転部材62が反時計回り方向に回転する。第1の回転部材62が反時計回り方向に回転すると、弾性部材65を介して第2の回転部材63に反時計回り方向の回転トルクが加えられる。
【0096】
弾性部材65から第2の回転部材63に反時計回り方向の回転トルクが加えられると、第2の回転部材63が第1の回転部材62と同様に反時計回り方向に回転する。第2の回転部材63が反時計回り方向に回転すると、第2の回転部材63のギア部632とマグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663との係合(噛合)によって、マグネットギア661が時計回り方向に回転する。マグネットギア661が時計回り方向に回転すると、マグネットギア661上のマグネット664も時計回り方向に回転する。
【0097】
マグネット664が時計回り方向に回転すると、
図13を参照して説明したメカニズムにより、マグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の磁気トルクが増大する。この際のマグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の磁気トルクは、マグネット664(マグネット組立体66)の回転を妨げるよう作用する反時計回り方向の回転トルクである。このマグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の反時計回り方向の磁気トルクは、第2の回転部材63のギア部632とマグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663との係合(噛合)によって、マグネット組立体66から第2の回転部材63に伝達される。弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクが、マグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)よりも大きい場合、第2の回転部材63およびマグネット組立体66は回転する。
【0098】
図14(b)に示す状態から操作部51がさらに押下されると、マグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の反時計回り方向の磁気トルクがさらに増大する。その結果、マグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)が弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクと略等しくなると、発電装置1は、
図14(c)に示す状態に移行する。
【0099】
図14(c)に示す状態では、マグネット664の時計回り方向の回転により、マグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の反時計回り方向の磁気トルクが増大した結果、マグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)が弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクと略等しくなっている。そのため、第2の回転部材63の回転速度が急激に低下し、第2の回転部材63およびマグネット664の回転が実質的に停止する。
図14(c)に示す状態で操作部51がさらに押下されると、発電装置1は、
図14(d)に示す状態に移行する。
【0100】
図14(d)に示す状態では、操作部51がさらに押下され、操作部51のラック部513と第1の回転部材62のギア部622との係合(噛合)により、第1の回転部材62が反時計回り方向にさらに回転する。一方、第2の回転部材63は、実質的に回転しないので、第1の回転部材62と第2の回転部材63とに連結された弾性部材65が弾性変形し、弾性部材65内に弾性エネルギーが貯蔵される。なお、この際、第2の回転部材63(およびマグネット664)の回転が完全に停止しないのは、操作部51のさらなる押下によって弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクが増大するのに伴い、増大した回転トルクと略等しい磁気トルクが発生するよう、第2の回転部材63およびマグネット664もわずかに回転するためである。
【0101】
弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクは、弾性部材65の弾性変形量、すなわち、弾性部材65内に貯蔵されている弾性エネルギーの量に依存する。そのため、弾性部材65内に貯蔵された弾性エネルギーが増大するにつれて、弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクが増大する。
図14(d)に示す状態から操作部51がさらに押下され、弾性部材65内に貯蔵された弾性エネルギーが増大し、弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクがマグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)よりも大きくなると、発電装置1は、
図14(e)に示す状態に移行する。
【0102】
図14(e)に示す状態では、弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクがマグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)よりも大きくなった結果、弾性部材65内に貯蔵された弾性エネルギーが解放され、第2の回転部材63およびマグネット664が急速に回転される。前述したように、マグネット664の回転角θが所定の値を越えて増大するとマグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の反時計回り方向の磁気トルクが減少するので、第2の回転部材63およびマグネット664が時計回り方向に急速に回転する。
【0103】
マグネット664が急速に回転するとコイルコア673内を流れる磁力線の密度(磁束密度)が急速に変化する。この際、コイル672の中央空洞部内を通過する磁力線の密度(磁束密度)が急速に変化するので、電磁誘導効果によって、コイル672内に起電圧が発生する。また、発電装置1は、マグネット664の回転により、マグネット664のN極およびS極が反転するよう構成されている。そのため、マグネット664の回転によるコイル672の中央空洞部内を通過する磁力線の密度(磁束密度)の変化が大きく、発電装置1は、効率的な発電を実行することができる。以上のような動作により、発電装置1では第1回目の発電が実行される。第1回目の発電が実行され、弾性部材65から解放された弾性エネルギーによるマグネット664の回転が終了すると、発電装置1は、
図14(f)に示す状態に移行し、第1回目の発電が終了する。
【0104】
図15には、マグネット664の回転角θと、操作部51の変位量(押下距離)との関係が示されている。操作部51が変位すると、第1の回転部材62、第2の回転部材63、およびマグネット664(マグネット組立体66)が回転し、マグネット664の回転角θが増加する。その後、操作部51の変位量が増加し、
図14(c)に対応する図中の点線を超えると、マグネット664の回転が実質的に停止し、マグネット664の回転角θの増加速度は、減少する。その後、
図14(d)に対応する領域では、マグネット664は実質的に回転しない。一方、
図14(d)に対応する領域では、弾性部材65内に貯蔵された弾性エネルギーが増加する。
【0105】
その後、操作部51の変位量がさらに増大し、
図14(e)に示す状態に対応する図中の点線部分を超えると、弾性部材65内に貯蔵された弾性エネルギーが解放され、マグネット664が急激に回転し、マグネット664の回転角θが急激に増加する。このように、本発明の発電装置1においては、弾性部材65は、第1の回転部材62が回転するときに弾性エネルギーを貯蔵し、さらに、貯蔵された弾性エネルギーを解放することにより第2の回転部材63およびマグネット664を急速に回転させるよう、第1の回転部材62および第2の回転部材63に連結されている。したがって、発電装置1では、マグネット664とコイルコア673との間に発生する磁気トルクと、第1の回転部材62および第2の回転部材63に連結された弾性部材65とを利用することによって、マグネット664を急速に回転させ、発電に実行することができる。
【0106】
次に、
図16を参照して、発電装置1の第2回目の発電について説明する。
図16(a)には、
図14(f)に示す第1回目の発電の後、操作者が操作部51を押し切った状態の発電装置1が示されている。操作者によるレバー3を介した操作部51への外力の印加が解除されると、発電装置1は、
図16(b)に示す状態に移行する。
【0107】
図16(b)に示す状態では、操作者によるレバー3を介した操作部51への外力の印加が解除され、操作部用弾性部材52が弾性復元することにより、操作部用弾性部材52内に貯蔵されていた弾性エネルギーが解放され、操作部51が押し上げられる。操作部51が押し上げられると、操作部51のラック部513と第1の回転部材62のギア部622との係合(噛合)により、第1の回転部材62が時計回り方向に回転する。第1の回転部材62が時計回り方向に回転すると、弾性部材65を介して第2の回転部材63に時計回り方向の回転トルクが加えられる。
【0108】
弾性部材65から第2の回転部材63に時計回り方向の回転トルクが加えられると、第2の回転部材63が第1の回転部材62と同様に時計回り方向に回転する。第2の回転部材63が時計回り方向に回転すると、第2の回転部材63のギア部632とマグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663との係合(噛合)によって、マグネットギア661が反時計回り方向に回転する。マグネットギア661が反時計回り方向に回転すると、マグネットギア661上のマグネット664も反時計回り方向に回転する。
【0109】
マグネット664が回転すると、
図13を参照して説明したメカニズムにより、マグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の磁気トルクが増大する。この際のマグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の磁気トルクは、マグネット664(マグネット組立体66)の回転を妨げるよう作用する時計回り方向の回転トルクである。このマグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の時計回り方向の磁気トルクは、第2の回転部材63のギア部632とマグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663との係合(噛合)によって、マグネット組立体66から第2の回転部材63に伝達される。弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクが、マグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)よりも大きい場合、第2の回転部材63およびマグネット組立体66は回転する。
【0110】
図16(b)に示す状態から操作部51がさらに押し上げられると、マグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の時計回り方向の磁気トルクがさらに増大する。その結果、マグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)が弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクと略等しくなると、発電装置1は、
図16(c)に示す状態に移行する。
【0111】
図16(c)に示す状態では、マグネット664の反時計回り方向の回転により、マグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の時計回り方向の磁気トルクが増大した結果、マグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルクが弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクと略等しくなっている。そのため、第2の回転部材63の回転速度が急激に低下し、第2の回転部材63およびマグネット664の回転が実質的に停止する。
図16(c)に示す状態で操作部51がさらに押し上げられると、発電装置1は、
図16(d)に示す状態に移行する。
【0112】
図16(d)に示す状態から操作部51がさらに押し上げられ、弾性部材65内に貯蔵された弾性エネルギーが増大し、弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクがマグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルクよりも大きくなると、発電装置1は、
図16(e)に示す状態に移行する。
【0113】
図16(e)に示す状態では、弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクがマグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルクよりも大きくなった結果、弾性部材65内に貯蔵された弾性エネルギーが解放され、第2の回転部材63およびマグネット664が急速に回転される。前述したように、マグネット664の回転角θが所定の値を越えて増大するとマグネット664とコイル組立体67のコイルコア673との間の時計回り方向の磁気トルクが減少するので、第2の回転部材63およびマグネット664が反時計回り方向に急速に回転する。
【0114】
マグネット664が急速に回転するとコイルコア673内を流れる磁力線の密度(磁束密度)が急速に変化する。この際、コイル672の中央空洞部内を通過する磁力線の密度(磁束密度)が急速に変化するので、電磁誘導効果によって、コイル672内に起電圧が発生する。以上のような動作により、発電装置1では第2回目の発電が実行される。第2回目の発電が実行され、弾性部材65から解放された弾性エネルギーによるマグネット664の回転が終了すると、発電装置1は、
図16(f)に示す状態に移行し、第2回目の発電が終了する。このように、発電装置1の第2回目の発電における動作では、マグネット664の回転方向が第1回目の発電における動作と逆になっている。
【0115】
以上説明したように、発電装置1においては、第2の回転部材63およびマグネット664の回転は、以下の3つの段階を経る。第1の段階、すなわち、弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクがマグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)よりも大きい段階においては、第1の回転部材62の回転に伴い、第2の回転部材63およびマグネット664が回転する。第2の段階、すなわち、マグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)が弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクと略等しくなる段階においては、第1の回転部材62が回転しても、第2の回転部材63およびマグネット664は実質的に回転せず、弾性部材65が弾性変形され、弾性部材65内に弾性エネルギーが貯蔵される。最後に、第3の段階、すなわち、弾性部材65から第2の回転部材63に加えられる回転トルクがマグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)よりも再度大きくなった段階においては、弾性部材65内の弾性エネルギーが解放され、第2の回転部材63およびマグネット664が急速に回転されて、発電が実行される。
【0116】
このように、発電装置1では、マグネット664を急速に回転(または移動)させるために従来技術において用いられていた弾き機構を用いる必要がない。発電装置1は、従来の弾き機構を用いた発電装置と比較して、部品点数が少なく、構造が単純で小型である。そのため、発電装置の製造時の不具合品率を低下させることができる。さらに、発電装置1では、マグネットの衝突や弾き機構の弾き動作に起因する外部から印加された外力の損失がなく、外部から印加された外力を発電のために有効に利用できる。また、発電装置1では、マグネットの衝突や弾き機構の弾き動作に起因する音が発生しない。さらに、発電装置1では、マグネットの衝突に起因する衝撃が発生しないため、該衝撃によってマグネットが減磁し、発電装置が故障するという問題も発生しない。
【0117】
なお、発電装置1においては、上述した第1回目および第2回目の発電における動作を実行可能とするため、マグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663の歯数N
1と、第2の回転部材63のギア部632の歯数N
2との比(ギア比)N
2/N
1は、以下のような考えに基づいて設定されている。
【0118】
図17は、
図1に示す発電装置におけるマグネット組立体のマグネットギアのギア部の歯数N
1と、第2の回転部材のギア部の歯数N
2との比(ギア比)N
2/N
1を決定するための方法を説明するための図である。
図17(a)には、発電装置1の内部構造を示すための正面図が示されている。
図17(b)には、発電装置1の内部構造を示すための背面図が示されている。なお、
図17(a)および
図17(b)では、発電装置1の内部構造を説明するため、上側ケース2U、下側ケース2L、インナーカバー53、およびフレーム61が省略されている。
【0119】
図示のように、操作部51の移動量(押下量または押し上げ量)をx、弾性部材65のバネ定数をk、弾性部材65の初期角度をθ
0、マグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663の角度をθ
1、第2の回転部材63の角度をθ
2、第1の回転部材62の角度をθ
3、マグネット664とコイルコア673との間の磁気トルクをT
m(θ
1)とする。
【0120】
操作部51を押下または押し上げることによって、操作部51がxだけ移動されると、第1の回転部材62が角度θ
3=θ
3(x)だけ回転する。この際、弾性部材65の力による回転トルクは、第1の回転部材62の角度θ
3(x)と第2の回転部材63の角度θ
2の差からさらに自由角度θ
0を引いたΔθ=θ
3(x)−θ
2−θ
0から、kΔθとなる。
【0121】
一方、マグネット組立体66から第2の回転部材63に加えられる磁気トルク(回転トルク)T
m(θ
1)は、マグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663の歯数N
1と、第2の回転部材63のギア部632の歯数N
2との比(ギア比)N
2/N
1によって増幅され、N
2/N
1×T
m(θ
1)となる。また、マグネット664とコイルコア673との間の磁気トルクの最大値をT
maxとすれば、マグネット664が回転する前には、以下のような不等式(1)が成立する。
kΔθ≦N
2/N
1×T
max (1)
【0122】
また、弾性部材65内に貯蔵される弾性エネルギーは、1/2×kΔθ
2となる。次に、弾性部材65内に貯蔵される弾性エネルギーの条件に付いて考える。弾性部材65内に貯蔵される弾性エネルギーは、1/2×kΔθ
2なので、発電装置1の発電効率をαとすると、発電装置1で発電されるエネルギーは、1/2×αkΔθ
2である。ここで、目標となる発電量をWとすると、以下のような不等式(2)が成立しなければならない。
1/2×αkΔθ
2>W (2)
【0123】
上記不等式(1)の条件より、Δθの最大値(すなわち、等号成立時のΔθの値)が決定されるので、Δθが最大となったときに、上記不等式(2)が満足されるか否かを確認する。上記不等式(2)が満足されない場合には、ギア比N
2/N
1を調整して、上記不等式(2)が満足されるようにする。このようにして、マグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663の歯数N
1と、第2の回転部材63のギア部632の歯数N
2とのギア比N
2/N
1が設定される。このようにして、マグネット組立体66のマグネットギア661のギア部663の歯数N
1と、第2の回転部材63の歯数をN
2とのギア比N
2/N
1を設定することにより、発電装置1の発電量Wを所望の値にすることができる。
【0124】
以上、本発明の発電装置および電子デバイスを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0125】
また、上述した実施形態における発電装置および電子デバイスの構成要素の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の構成要素が追加、若しくは組み合わされ、または任意の構成要素が削除された様態も、本発明の範囲内である。
【0126】
例えば、上述した実施形態において、電子回路20は、発電装置1の内部に設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、電子回路20が発電装置1の外部に設けられており、発電装置1から外部に延伸している電力引出線に電子回路20が直接または他の機器を介して接続されている様態も本発明の範囲内である。
【0127】
また、上述した実施形態において、第1の回転部材62および第2の回転部材63は、操作部51の移動に伴って回転するギア状の部材であるが、本発明はこれに限られない。例えば、第1の回転部材62および第2の回転部材63は、操作部51の移動に伴って回転する回転レバーであってもよい。
【0128】
さらに、上述した実施形態において、第2の回転部材63は、第1の回転部材62と同軸回転可能となっているが、本発明はこれに限られない。第2の回転部材63は、第1の回転部材62と同じ方向に回転可能となっていればよい。例えば、第2の回転部材63の回転軸と、第1の回転部材62の回転軸とがずれている構成も本発明の範囲内である。
【0129】
また、上述した実施形態において、マグネット664は円筒磁石であるが、本発明に限られない。例えば、マグネット664は、棒磁石であってもよい。また、上述した実施形態において、弾性部材としてコイルバネを用いたが、本発明はこれに限定されず、他の構成のバネ、ゴム、エアシリンダ等を用いた弾性機構を弾性部材として用いることができる。